【課題】切削時または破砕時に例えば金属等の異物の混入により瞬時に許容負荷を超えて非常なる過負荷となるのを確実に防ぐことができる過負荷防止装置およびそれを備える木材チップ製造装置を提供する。
【解決手段】木材Wをチッパナイフ12で切削する際に固定刃20に作用する力の方向に固定刃20の刃先が移動可能となるように固定刃20を固定刃ホルダ21に取り付け、チッパナイフ12の刃先の軌跡Lに対し固定刃20の刃先が近接して配置された状態を保持するためのシャーピン26を固定刃20と固定刃ホルダ21とに差し込み、切削時の負荷が許容負荷を超える前の所定負荷のときに固定刃20と固定刃ホルダ21とからシャーピン26に対し作用する所定の剪断力によってシャーピン26が折損して、切削時に固定刃20に作用する力の方向に固定刃20の刃先が移動するようにする。
刃先が所定の軌跡を描いて移動するチッパナイフと、このチッパナイフの刃先の軌跡に対し刃先が近接するように配置される固定刃と、この固定刃を保持する固定刃ホルダとを備え、前記固定刃の刃先に被切削物を押し当てた状態でその被切削物を前記チッパナイフで切削するようにした切削機構における過負荷防止装置であって、
被切削物を前記チッパナイフで切削する際に前記固定刃に作用する力の方向に前記固定刃の刃先が移動可能となるように前記固定刃を前記固定刃ホルダに取り付け、前記チッパナイフの刃先の軌跡に対し前記固定刃の刃先が近接して配置された状態を保持するためのシャーピンを前記固定刃と前記固定刃ホルダとに差し込み、
切削時の負荷が許容負荷を超える前の所定負荷のときに前記固定刃と前記固定刃ホルダとから前記シャーピンに対し作用する所定の剪断力によって前記シャーピンが折損して、切削時に前記固定刃に作用する力の方向に前記固定刃の刃先が移動するようにしたことを特徴とする過負荷防止装置。
ビット先端が所定の軌跡を描いて移動する破砕ビットと、この破砕ビットのビット先端の軌跡に対し刃先が近接するように配置される固定刃と、この固定刃を保持する固定刃ホルダとを備え、前記固定刃の刃先に被破砕物を押し当てた状態でその被破砕物を前記破砕ビットで破砕するようにした破砕機構における過負荷防止装置であって、
被破砕物を前記破砕ビットで破砕する際に前記固定刃に作用する力の方向に前記固定刃の刃先が移動可能となるように前記固定刃を前記固定刃ホルダに取り付け、前記破砕ビットのビット先端の軌跡に対し前記固定刃の刃先が近接して配置された状態を保持するためのシャーピンを前記固定刃と前記固定刃ホルダとに差し込み、
破砕時の負荷が許容負荷を超える前の所定負荷のときに前記固定刃と前記固定刃ホルダとから前記シャーピンに対し作用する所定の剪断力によって前記シャーピンが折損して、破砕時に前記固定刃に作用する力の方向に前記固定刃の刃先が移動するようにしたことを特徴とする過負荷防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、切削時または破砕時に例えば金属等の異物の混入により瞬時に許容負荷を超えて非常なる過負荷となるのを確実に防ぐことができる過負荷防止装置およびそれを備える木材チップ製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、第1発明による過負荷防止装置は、
刃先が所定の軌跡を描いて移動するチッパナイフと、このチッパナイフの刃先の軌跡に対し刃先が近接するように配置される固定刃と、この固定刃を保持する固定刃ホルダとを備え、前記固定刃の刃先に被切削物を押し当てた状態でその被切削物を前記チッパナイフで切削するようにした切削機構における過負荷防止装置であって、
被切削物を前記チッパナイフで切削する際に前記固定刃に作用する力の方向に前記固定刃の刃先が移動可能となるように前記固定刃を前記固定刃ホルダに取り付け、前記チッパナイフの刃先の軌跡に対し前記固定刃の刃先が近接して配置された状態を保持するためのシャーピンを前記固定刃と前記固定刃ホルダとに差し込み、
切削時の負荷が許容負荷を超える前の所定負荷のときに前記固定刃と前記固定刃ホルダとから前記シャーピンに対し作用する所定の剪断力によって前記シャーピンが折損して、切削時に前記固定刃に作用する力の方向に前記固定刃の刃先が移動するようにしたことを特徴とするものである(第1発明)。
【0009】
前記目的を達成するために、第2発明による過負荷防止装置は、
ビット先端が所定の軌跡を描いて移動する破砕ビットと、この破砕ビットのビット先端の軌跡に対し刃先が近接するように配置される固定刃と、この固定刃を保持する固定刃ホルダとを備え、前記固定刃の刃先に被破砕物を押し当てた状態でその被破砕物を前記破砕ビットで破砕するようにした破砕機構における過負荷防止装置であって、
被破砕物を前記破砕ビットで破砕する際に前記固定刃に作用する力の方向に前記固定刃の刃先が移動可能となるように前記固定刃を前記固定刃ホルダに取り付け、前記破砕ビットのビット先端の軌跡に対し前記固定刃の刃先が近接して配置された状態を保持するためのシャーピンを前記固定刃と前記固定刃ホルダとに差し込み、
破砕時の負荷が許容負荷を超える前の所定負荷のときに前記固定刃と前記固定刃ホルダとから前記シャーピンに対し作用する所定の剪断力によって前記シャーピンが折損して、破砕時に前記固定刃に作用する力の方向に前記固定刃の刃先が移動するようにしたことを特徴とするものである(第2発明)。
【0010】
次に、第3発明による木材チップ製造装置は、
第1発明に係る過負荷防止装置を備え、被切削物として木材を前記チッパナイフで切削して切削チップを製造するようにした木材チップ製造装置であって、
前記切削機構を駆動する駆動装置と、この駆動装置を制御する制御装置と、切削時に前記固定刃に作用する力の方向に前記固定刃の刃先が移動したことを検知する検知手段とを備え、前記制御装置は、前記検知手段からの検知信号に基づいて駆動停止信号を前記駆動装置へと出力し、前記駆動装置を停止させることを特徴とするものである。
【0011】
次に、第4発明による木材チップ製造装置は、
第2発明に係る過負荷防止装置を備え、被切削物として木材を前記破砕ビットで破砕してピンチップを製造するようにした木材チップ製造装置であって、
前記破砕機構を駆動する駆動装置と、この駆動装置を制御する制御装置と、切削時に前記固定刃に作用する力の方向に前記固定刃の刃先が移動したことを検知する検知手段とを備え、前記制御装置は、前記検知手段からの検知信号に基づいて駆動停止信号を前記駆動装置へと出力し、前記駆動装置を停止させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の過負荷防止装置によれば、切削時または破砕時の負荷が許容負荷を超える前の所定負荷のときに固定刃と固定刃ホルダとからシャーピンに対し作用する所定の剪断力によってシャーピンが折損されて、切削時または破砕時に固定刃に作用する力の方向に固定刃の刃先が移動されるので、被切削物とてして例えば木材を切削または破砕する際に、例えば金属等の異物が混入し、チッパナイフまたは破砕ビットと、固定刃との間に異常な負荷が瞬時にかかり、切削時または破砕時の負荷が許容負荷を超えようとしたとしても、非常なる過負荷になる前に固定刃に作用する力がその固定刃の刃先の移動によって抜け、これによって切削時または破砕時の負荷が非常なる過負荷となるのを瞬時に確実に防ぐことができる。
【0013】
また、本発明の木材チップ製造装置によれば、切削時または破砕時の負荷が非常なる過負荷となる前に瞬時に切削機構または破砕機構を駆動する駆動装置が停止されるので、駆動装置が損傷するのを確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明による過負荷防止装置およびそれを備える木材チップ製造装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
図1には、本発明の第1の実施形態に係る木材チップ製造装置の要部の内部構造を示す側面図が示されている。
【0017】
<木材チップ製造装置の概略説明>
図1に示される木材チップ製造装置1Aは、主に、搬入コンベヤ2、送りローラ装置3、切削ロータ4、および送りローラ装置3や切削ロータ4等を収容するケーシング5を備え、搬入コンベヤ2によって水平方向の一側から他側に向かってケーシング5内に運び込まれる丸棒状の木材Wを、搬入コンベヤ2と送りローラ装置3とによって挟持した状態で切削ロータ4に向けて真っ直ぐに送り出し、切削ロータ4でその木材Wを切削し砕片化して切削チップを製造するように構成されている。なお、以下の説明においては、木材Wの送り方向(
図1において右方向)を前方向とする。
【0018】
<搬入コンベヤの説明>
搬入コンベヤ2は、図示されないホッパと切削ロータ4との間に無限軌道を形成するように配されるコンベアチェーン6上に鉄履帯プレートを備えてなる搬入コンベアであって、図示されない搬送モータによってコンベアチェーン6が駆動されることにより、図示されないホッパを介して投入されてコンベアチェーン6上に取り付けられた鉄履帯プレート上に載置された木材Wを下側から支えながら切削ロータ4へと搬送するように構成されている。なお、搬入コンベヤ2としては、その他に、例えば、単なるドラッグチエーンにて木材Wを搬送するようにしたものや、ゴムベルト等によって木材Wを搬送するようにしたもの、傾斜シュートを用いて木材Wを重力作用を利用して搬送するものなどが挙げられる。
【0019】
<送りローラ装置の説明>
送りローラ装置3は、ローラ本体7aの外周部に複数のブレード7bが固着されてなる送りローラ7と、基端部が枢支軸8を介してケーシング5の両側壁に取り付けられて先端側が上下に揺動可能な揺動アーム9とを備えて構成されている。
送りローラ7は、揺動アーム9の先端部に回転支軸10を介して回転可能に取り付けられており、搬入コンベヤ2の搬送方向下流側端部の上方位置で上下に揺動可能とされている。
送りローラ装置3においては、木材W上に乗り上げた送りローラ7を介して木材Wに対し自重による押付力を付与しながら図示されない送りモータの作動によって送りローラ7が
図1中記号R
A矢印方向に回転されることにより、木材Wを切削ロータ4へと強制的に送り出すことができるようになっている。
【0020】
<切削ロータの説明>
切削ロータ4は、ロータ11に所要(本例では6つ)のチッパナイフ12が装着されて構成されている。
ロータ11は、木材Wの搬送方向と直交する水平軸線を有してケーシング5の両側壁に回転自在に支持されるロータ軸13と、このロータ軸13と同心を成してそのロータ軸13に取り付けられるチッパドラム14とを備えてなるものである。ロータ軸13には、ロータ駆動用の油圧モータ44(
図5参照)が直結されており、油圧モータ44からの回転動力がロータ軸13に伝達されると、チッパドラム14が
図1中記号R
B矢印方向(
図1において反時計回りの方向)に回転され、チッパナイフ12の刃先が、チッパドラム14の直径よりも僅かに大きい直径の
図1において一点鎖線で示される円形の軌跡Lを描いて移動するようになっている。
チッパドラム14は、所定角度(例えば60°)間隔で外周寄りの部位が切り欠かれた複数(本例では6つ)の切欠き部を有し、各切欠き部には、チッパドラム14の回転方向に刃先を向けた状態でチッパナイフ12が配され、チッパナイフ12に対し挟持力を作用させて固定する固定手段によってチッパナイフ12がチッパドラム14に固定されている。
【0021】
<固定刃および固定刃ホルダの説明>
搬入コンベヤ2と切削ロータ4との間には、チッパナイフ12の刃先の軌跡Lに対し刃先が近接するように固定刃20が配置されるとともに、この固定刃20を保持する固定刃ホルダ21が配置されている。
固定刃20は、断面略四角形状で横方向に延び、前側部の上側角が刃先とされている。
固定刃ホルダ21は、送りローラ7から切削ロータ4へと送られる木材Wの前端部が乗り上げ可能な大きさの上面を有するブロック部材からなるものである。
なお、チッパナイフ12、固定刃20および固定刃ホルダ21を含む構成が本発明の「切削機構」に相当する。
【0022】
図3に示されるように、固定刃ホルダ21における上面と前面との交わりの角部には、固定刃20の上面と固定刃ホルダ21の上面とが面一状態(
図2参照)で固定刃20が収容可能な固定刃収容部22が形成されている。固定刃ホルダ21における固定刃収容部22の左右両側には、固定刃20の左右両側を支持する支持部23がそれぞれ形成されている。固定刃ホルダ21における固定刃収容部22の底部を構成する面24(以下、「ストッパ面24」と称する)には、前側に向かって下方に傾斜が付されている。
【0023】
図4(a)および(b)に示されるように、固定刃ホルダ21における左右の支持部23と固定刃20の後側部とには、枢支軸25が差し込まれており、固定刃20の上面と固定刃ホルダ21の上面とが面一状態(
図2参照)でチッパナイフ12の刃先の軌跡Lに対し固定刃20の刃先が近接した固定刃20の
図4(a)に示される状態位置(以下、「通常使用位置」と称する。)と、この通常使用位置から下方に枢支軸25を支点として所定角度回動して固定刃20の下面が固定刃ホルダ21のストッパ面24に接触してそれ以上の回動が止められた固定刃の
図4(b)に示される状態位置(以下、「過負荷時停止位置」と称する。)との間で固定刃20が回動可能とされている。こうして、木材Wをチッパナイフ12で切削する際に固定刃20に作用する力の方向、本例では下方に固定刃20の刃先が移動することができるようになっている。
【0024】
<シャーピンの説明>
固定刃ホルダ21における左右の支持部23と固定刃20の前側部とには、固定刃20を
図4(a)に示される通常使用位置で保持するための保持ピンとして機能するシャーピン26が、カラー27にてガイドされた状態で差し込まれている。
シャーピン26の軸方向中央には、全周に亘って切欠き部26aが形成されており、切削時の負荷が許容負荷を超える前の所定負荷のときにシャーピン26に作用する所定の剪断力によって切欠き部26aが剪断破壊してシャーピン26が折損するようになっている。なお、シャーピン26においては、材質や熱処理が規定されており、剪断時の許容破壊強度が分かっており、実際の折損時のデータと比較して、切欠き部26aの形状や径寸法等を適宜に設定することで、所要の強度のシャーピン26を作製することができる。
【0025】
図3に示されるように、固定刃20の前側面には、破損ピン取出し穴30が形成されている。この破損ピン取出し穴30は、シャーピン26をガイドするカラー27を組み込むために固定刃20に形成されたカラー組込み孔31の奥側に位置しており、折損したシャーピン26の半分を収容し、取り出しするのに十分なスペースを有している。
【0026】
固定刃20の右側面には、レバー32が取り付けられている。
図2に示されるように、このレバー32は、固定刃ホルダ21における右側の支持部23に形成されたレバー挿通孔33Aと、ケーシング5の右側壁5aに形成されたレバー挿通孔33Bとを通してケーシング5の右側壁5aから外部へと突出されている。なお、通常使用位置と過負荷時停止位置との間で回動する固定刃20と連動するレバー32の動きを妨げることないように、レバー挿通孔33A,33Bの形状や大きさ等が定められている。
【0027】
固定刃20に取り付けられたレバー32において、ケーシング5の右側壁5aから外部へと突出される側の先端部には、スイッチ操作板34が取り付けられている。このスイッチ操作板34の近傍に位置するようにリミットスイッチ35がケーシング5の右側壁5aに取り付けられ、リミットスイッチ35のスイッチ操作部36とスイッチ操作板34とが係合され、固定刃20が通常使用位置から過負荷時停止位置へと回動すると、リミットスイッチ35のスイッチ操作部36がスイッチ操作板34によって押し下げられて、リミットスイッチ35がOFFになるようにされている(リミットスイッチ35はB接点)。
【0028】
図5には、油圧モータを作動させるための油圧回路の概略図が示されている。
【0029】
図5に示される油圧回路においては、原動機41または電動機(本例ではエンジン)により駆動される油圧ポンプ42−1および42−2から吐出される圧油が、メインバルブ43−1および43−2を介して油圧モータ44−1および44−2に供給されて油圧モータ44−1および44−2が回転作動されるようになっている。ここで、メインバルブ43−1および43−2に対し制御装置45から制御信号が送られると、その制御信号に応じてメインバルブ43−1および43−2の切り換え動作が行われ、油圧モータ44−1および44−2の正回転および逆回転が切り換えられるようになっている。また、制御装置45から制御信号が送られると、その制御信号に応じてメインバルブ43−1および43−2が制御され、油圧モータ44−1および44−2の回転速度が制御されるようになっている。また、切削時に固定刃20に作用する力の方向に固定刃20の刃先が移動したことを検知する検知手段としてのリミットスイッチ35からOFF信号が制御装置45に送られると、メインバルブ43−1および43−2により油圧モータ44−1および44−2の回転動作が停止されるようになっている。
なお、原動機41、油圧ポンプ42−1および42−2、メインバルブ43−1および43−2および油圧モータ44−1および44−2を含む構成が本発明の「駆動装置」に相当する。
【0030】
<木材チップ製造装置の動作説明>
以上に述べたように構成される木材チップ製造装置1Aにおいては、図示されないホッパ内に木材Wが投入されると、
図1に示されるように、投入された木材Wが、搬入コンベヤ2のコンベアチェーン6に取り付けられた鉄履帯プレートによって下側から支えられながら切削ロータ4に向けて連続的に搬送される。搬入コンベヤ2によって送りローラ7の位置に木材Wが搬送されてくると、
図1中記号R
A矢印方向に回転される送りローラ7が木材Wに乗り上げながら上向きに揺動する。そして、送りローラ装置3は自重による押付力(送りローラ3や揺動アーム9等の質量に応じて重力作用により生じる力)を付与しながら木材Wを切削ロータ4へと強制的に送り出す。こうして、搬入コンベヤ2と送りローラ装置3とによって挟持された状態で切削ロータ4へと送り込まれて切削ロータ4に押し付けられた木材Wは、ロータ11の
図1中記号R
B矢印方向の回転運動によりチッパナイフ12で上側から下側へと下方向切削されて砕片化される。この切削動作では、木材Wはその木繊維方向と交差する方向で切断されて切削チップとなる。なお、切削チップは、図示省略されるスクリーンを通って図示されない排出コンベヤを介して製造チップ置場へと搬出される。
【0031】
<過負荷防止装置の動作説明>
図4(a)に示されるように、切削ロータ4へと送り込まれる木材Wとは別に、
図4(b)に示されるように、例えば金属等の異物Xが混入した場合には、チッパナイフ12と固定刃20との間に異常な負荷が瞬時にかかり、切削負荷が許容負荷を超えようとするが、許容負荷を超える前の所定負荷のときにシャーピン26に作用する所定の剪断力によってシャーピン26が折損する。シャーピン26が折損すると、固定刃20が枢支軸25を支点として
図4(a)に示される通常使用位置から
図4(b)に示される過負荷時停止位置へと回動し、固定刃20の刃先が下方へと移動する。これによって、非常なる過負荷になる前に固定刃20に作用する力が抜けることになる。固定刃20が通常使用位置から過負荷時停止位置へと移動すると、これに連動して、固定刃20に取り付けられた
図2に示されるレバー32が下方へ移動し、レバー32に取り付けられたスイッチ操作板34によってリミットスイッチ35のスイッチ操作部36が押し下げられて、リミットスイッチ35がOFFになる。リミットスイッチ35がOFFになると、
図5に示される制御装置45からメインバルブ43−1および43−2に対し制御信号が送られて油圧モータ44−1および44−2の回転動作が停止する。
【0032】
なお、シャーピン26が折損した後の処理は、以下の通りである。
まず、木材チップ製造装置1Aから固定刃ホルダ21を取り外す。次いで、折損したシャーピン26は、固定刃側分割シャーピンと固定刃ホルダ側分割シャーピンとに2分割されるが、これらのうち、固定刃ホルダ側分割シャーピンを先に取り出し、その後、固定刃側分割シャーピンを破損ピン取出し穴31に向けて固定刃20の奥へと押し込めば、破損ピン取出し穴31から固定刃側分割シャーピンを取り出すことができる。
【0033】
<作用効果の説明>
第1の実施形態の過負荷防止装置によれば、金属等の異物Xの混入に起因して、切削時の負荷が許容負荷を超えようとしたとしても、非常なる過負荷になる前に固定刃20に作用する力がその固定刃20の刃先の移動によって抜けて、切削時の負荷が非常なる過負荷となるのを確実に防ぐことができる。また、当該過負荷防止装置を備える木材チップ製造装置1Aによれば、切削時の負荷が非常なる過負荷となる前に油圧モータ44−1および44−2が停止されるので、油圧モータ44−1および44−2やその関連油圧機器、ここではメインバルブ43−1および43−2や油圧ポンプ42−1および42−2等が損傷するのを確実に防ぐことができる。
【0034】
〔第2の実施形態〕
図6には、本発明の第2の実施形態に係る木材チップ製造装置の要部の内部構造を示す側面図が示されている。なお、本実施形態において、先に述べた第1の実施形態と同一または同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては第2の実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0035】
<木材チップ製造装置の概略説明>
図6に示される木材チップ製造装置1Bにおいては、第1の実施形態係る木材チップ製造装置1Aにおける切削ロータ4に代えて破砕ロータ50が用いられ、この破砕ロータ50で木材Wを打撃し砕いてピンチップを製造するように構成されている。
【0036】
<破砕ロータの説明>
破砕ロータ50は、ロータ11に所要(本例では6つ)の破砕ビット51が装着されて構成されている。
ロータ11において、油圧モータ44からの回転動力がロータ軸13に伝達されると、チッパドラム14が
図6中記号R
B矢印方向(
図6において反時計回りの方向)に回転され、破砕ビット51のビット先端が、チッパドラム14の直径よりも僅かに大きい直径の
図6において一点鎖線で示される円形の軌跡Lを描いて移動するようになっている。
チッパドラム14は、所定角度(例えば60°)間隔で外周寄りの部位が切り欠かれた複数(本例では6つ)の切欠き部を有し、各切欠き部には、チッパドラム14の回転方向にビット正面を向けた状態で破砕ビット51が配され、図示されない固定手段によって破砕ビット51がチッパドラム14に固定されている。
なお、破砕ビット51、固定刃20および固定刃ホルダ21を含む構成が本発明の「破砕機構」に相当する。
【0037】
<木材チップ製造装置の動作説明>
以上に述べたように構成される木材チップ製造装置1Bにおいては、図示されないホッパ内に木材Wが投入されると、
図6に示されるように、投入された木材Wが、搬入コンベヤ2のコンベアチェーン6に取り付けられた鉄履帯プレートによって下側から支えられながら破砕ロータ50に向けて連続的に搬送される。搬入コンベヤ2によって送りローラ7の位置に木材Wが搬送されてくると、
図6中記号R
A矢印方向に回転される送りローラ7が木材Wに乗り上げながら上向きに揺動する。そして、送りローラ装置3は自重による押付力(送りローラ3や揺動アーム9等の質量に応じて重力作用により生じる力)を付与しながら木材Wを破砕ロータ50へと強制的に送り出す。こうして、搬入コンベヤ2と送りローラ装置3とによって挟持された状態で破砕ロータ50へと送り込まれた木材Wは、ロータ11の
図1中記号R
B矢印方向の回転運動により破砕ビット51で上側から下側へと下方向破砕されて砕片化される。この破砕動作によって木材Wはピンチップとなる。なお、ピンチップは、図示省略されるスクリーンを通って図示されない排出コンベヤを介して製造チップ置場へと搬出される。
【0038】
<過負荷防止装置の動作説明>
図7(a)に示されるように、破砕ロータ50へと送り込まれる木材Wとは別に、
図7(b)に示されるように、例えば金属等の異物Xが混入した場合には、破砕ビット51と固定刃20との間に異常な負荷が瞬時にかかり、切削負荷が許容負荷を超えようとするが、許容負荷を超える前の所定負荷のときにシャーピン26に作用する所定の剪断力によってシャーピン26が折損する。シャーピン26が折損すると、固定刃20が枢支軸25を支点として
図7(a)に示される通常使用位置から
図7(b)に示される過負荷時停止位置へと回動し、固定刃20の刃先が下方へと移動する。これによって、非常なる過負荷になる前に固定刃20に作用する力が抜けることになる。固定刃20が通常使用位置から過負荷時停止位置へと移動すると、これに連動して、固定刃20に取り付けられた
図2に示されるレバー32が下方へ移動し、レバー32に取り付けられたスイッチ操作板34によってリミットスイッチ35のスイッチ操作部36が押し下げられて、リミットスイッチ35がOFFになる。リミットスイッチ35がOFFになると、
図5に示される制御装置45からメインバルブ43−1および43−2に対し制御信号が送られて油圧モータ44−1および44−2の回転動作が停止する。
【0039】
<作用効果の説明>
第2の実施形態の木材チップ製造装置1Bによれば、金属等の異物Xの混入に起因して、破砕時の負荷が許容負荷を超えようとしたとしても、非常なる過負荷になる前に固定刃20に作用する力がその固定刃20の刃先の移動によって抜けて、破砕時の負荷が非常なる過負荷となるのを確実に防ぐことができる。また、破砕時の負荷が非常なる過負荷となる前に油圧モータ44−1および44−2が停止されるので、油圧モータ44−1および44−2やその関連油圧機器、ここではメインバルブ43−1および43−2や油圧ポンプ42−1および42−2等が損傷するのを確実に防ぐことができる。
【0040】
以上、本発明の過負荷防止装置およびそれを備える木材チップ製造装置について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。