特開2018-123397(P2018-123397A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-123397(P2018-123397A)
(43)【公開日】2018年8月9日
(54)【発明の名称】ポストアニーラ装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20180713BHJP
   C21D 1/42 20060101ALI20180713BHJP
   C21D 9/50 20060101ALI20180713BHJP
   C21D 9/60 20060101ALI20180713BHJP
   C21D 9/573 20060101ALI20180713BHJP
【FI】
   C21D9/56 101C
   C21D1/42 C
   C21D9/50 102Z
   C21D9/60 101
   C21D9/573 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-18087(P2017-18087)
(22)【出願日】2017年2月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健治
(72)【発明者】
【氏名】松本 信彦
【テーマコード(参考)】
4K042
4K043
【Fターム(参考)】
4K042AA24
4K042BA13
4K042DA03
4K042DB01
4K042DC02
4K042DD05
4K042DE06
4K042DF01
4K042EA01
4K042EA02
4K043AA01
4K043BB04
4K043CA04
4K043CB03
4K043DA05
4K043EA04
4K043FA03
4K043FA12
4K043FA13
(57)【要約】
【課題】既設の連続焼鈍ラインにおいて設置面積が限られていてもメンテナンス等を行うスペースを確保することができ、熱処理加工精度のよい品質の安定したワークを得ることのできるポストアニーラ装置を提供する。
【解決手段】連続焼鈍ライン上を流れるワークWに対し進退可能に設けられた装置本体2を備え、前記装置本体は、前記ワークを加熱処理するコ字状内部の処理空間5dを形成するとともに、前記装置本体の前進により前記処理空間に前記ワークを配置可能とするコ字状の筐体部5と、前記筐体部の処理空間内に設けられ、前記ワークを上下から狭持するクランプ手段6,7と、前記クランプ手段により狭持された前記ワークの溶接部W1に対し該ワークの一面側から加熱する加熱手段9と、前記クランプ手段により狭持された前記ワークの溶接部に対し、前記加熱手段により加熱された一面とは反対側の面から冷却する冷却手段11と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続焼鈍ラインに配置され、板状のワーク同士が溶接されたワーク溶接部を加熱処理するポストアニーラ装置であって、
前記連続焼鈍ライン上を流れるワークに対し進退可能に設けられた装置本体を備え、
前記装置本体は、
前記ワークを加熱処理するコ字状内部の処理空間を形成するとともに、前記装置本体の前進により前記処理空間に前記ワークを配置可能とするコ字状の筐体部と、
前記筐体部の処理空間内に設けられ、前記ワークを上下から狭持するクランプ手段と、
前記クランプ手段により狭持された前記ワークの溶接部に対し該ワークの一面側から加熱する加熱手段と、
前記クランプ手段により狭持された前記ワークの溶接部に対し、前記加熱手段により加熱された一面とは反対側の面から冷却する冷却手段と、
を有することを特徴とするポストアニーラ装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記処理空間に設けられた電磁誘導コイルであることを特徴とする請求項1に記載されたポストアニーラ装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記処理空間において前記ワークのライン状の溶接部に沿って配列され、前記ワークの溶接部に対し冷却エアを噴射する複数のエア冷却ノズルを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたポストアニーラ装置。
【請求項4】
前記加熱手段及び前記冷却手段の動作制御を行う制御手段と、
前記ワークの温度を測定する温度測定手段とを備え、
前記制御手段は、前記温度測定手段の測定する前記ワークの温度値と、目標温度値とを用い、PID制御に基づいて前記加熱手段及び前記冷却手段の動作制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたポストアニーラ装置。
【請求項5】
前記PID制御に基づく前記加熱手段及び前記冷却手段の動作制御にかかる制御パターン情報を蓄積する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された制御パターン情報に基づき、前記加熱手段及び前記冷却手段を動作制御可能であることを特徴とする請求項4に記載されたポストアニーラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストアニーラ装置に関し、特に連続焼鈍ラインにおいて鋼板同士の溶接部を焼鈍するポストアニーラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鋼板の製造工程において、鉄鋼材料が冷間圧延されると、塑性変形により生じる転位が絡み合い硬化する。そのため、冷間圧延の工程後には、硬化した鉄鋼材料を軟化させるために焼鈍処理を行っている。この焼鈍とは、鋼を加熱することにより、加工によって導入された転位などの格子欠陥を鉄原子の拡散によって減少させたり、溶質元素の固溶・析出などを制御するプロセスである。
近年、冷延コイルの焼鈍は、コイルをバッチにまとめ、コイルを繰り出して多数のコイルを次々と溶接しながら加熱炉の中を通過させた後、再び巻き取る連続焼鈍が主流となっている。
【0003】
図5に代表的な連続焼鈍ラインの構成を模式的に示す。
この連続焼鈍ライン50は、大きくは入側部51と、炉体部52と、出側部53とを備える。入側部51は、鋼板コイルの繰り出しを行うペイオフリール54と鋼板端部同士を溶接する溶接装置55と、電解洗浄を行う電解洗浄装置56と、入側ルーパー57とを有する。炉体部52は、図示しない加熱帯、均熱帯及び冷却帯を有し、所定の加熱処理及び冷却処理を行うようになっている。また、出側部53は、調質圧延装置58と、出側ルーパー59と、剪断装置60と、巻取装置61とを有する。
【0004】
このように構成された連続焼鈍ライン50においては、冷間圧延された鉄鋼材料のコイルは、ペイオフリール54において繰り出された後、溶接装置55においてその先端が先行材の鋼板の後端と溶接され連結される。
その後、鋼板Wは、電解洗浄装置56において電解洗浄され、入側ルーパー57を通って炉体部52に搬入される。
【0005】
炉体部52では、鋼板Wは、図示しない加熱帯、均熱帯において焼き鈍し処理された後、冷却帯により冷却処理され、調質圧延装置58に流される。
前記調質圧延装置58においては、剛性や硬さを調整し、同時に表面をダル、または光沢に仕上げる処理がなされる。
調質圧延装置58によって調質された鋼板Wは、出側ルーパー59を介し剪断装置60に送られ、そこで所定の幅に耳切りなどの剪断処理が行われ、巻取装置61において再びコイル状に巻き取られる。
【0006】
ところで、近年にあっては、多種多様の鋼板Wを処理する必要があり、鋼板Wの種類によっては、炉体部52のみでは溶接部に対する焼き鈍し処理が不十分である。
すなわち、溶接装置55において溶接された鋼板Wの溶接部は、加熱と急冷により脆化している。そのため、炉体部52での焼き鈍し処理に先立って前記溶接部に対する加熱処理を行い組織を改善するポストアニーラ装置(例えば特許文献1参照)が、溶接装置55のすぐ後に必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭52−142612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図5に示すような既設の連続焼鈍ラインにおいて、溶接装置55のすぐ後にポストアニーラ装置を追加しようとしても、設置面積が限られるため、メンテナンスや加熱試験を行うスペースを確保できず、設置できないという課題があった。そのため、ポストアニーラ装置を連続焼鈍ラインの中に組み込むには、ライン全体の設置面積を拡大する必要があった。
【0009】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、既設の連続焼鈍ラインにおいて設置面積が限られていてもメンテナンス等を行うスペースを確保することができ、熱処理加工精度のよい品質の安定したワークを得ることのできるポストアニーラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明に係るポストアニーラ装置は、連続焼鈍ラインに配置され、板状のワーク同士が溶接されたワーク溶接部を加熱処理するポストアニーラ装置であって、前記連続焼鈍ライン上を流れるワークに対し進退可能に設けられた装置本体を備え、前記装置本体は、前記ワークを加熱処理するコ字状内部の処理空間を形成するとともに、前記装置本体の前進により前記処理空間に前記ワークを配置可能とするコ字状の筐体部と、前記筐体部の処理空間内に設けられ、前記ワークを上下から狭持するクランプ手段と、前記クランプ手段により狭持された前記ワークの溶接部に対し該ワークの一面側から加熱する加熱手段と、前記クランプ手段により狭持された前記ワークの溶接部に対し、前記加熱手段により加熱された一面とは反対側の面から冷却する冷却手段と、を有することに特徴を有する。
尚、前記加熱手段は、前記処理空間に設けられた電磁誘導コイルであることが望ましい。
また、前記冷却手段は、前記処理空間において前記ワークのライン状の溶接部に沿って配列され、前記ワークの溶接部に対し冷却エアを噴射する複数のエア冷却ノズルを有することが望ましい。
【0011】
このような構成によれば、ポストアニーラ装置による加工工程以外は装置本体を退避させ、メンテナンスや加熱試験を行うことができる。したがって、連続焼鈍ラインにおける設置面積が限られていても、ポストアニーラ装置を連続焼鈍ラインの中に組み込むことができる。
また、筐体部がコ字状であるため、溶接部をオペレータ側から容易に視認することができ、例えばレーザマーカを溶接部に合わせる等して精度よい加熱処理が可能となる。
【0012】
また、前記加熱手段及び前記冷却手段の動作制御を行う制御手段と、前記ワークの温度を測定する温度測定手段とを備え、前記制御手段は、前記温度測定手段の測定する前記ワークの温度値と、目標温度値とを用い、PID制御に基づいて前記加熱手段及び前記冷却手段の動作制御を行うことが望ましい。
また、前記PID制御に基づく前記加熱手段及び前記冷却手段の動作制御にかかる制御パターン情報を蓄積する記憶手段を備え、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された制御パターン情報に基づき、前記加熱手段及び前記冷却手段を動作制御可能であることが望ましい。
このように、加熱中においては、温度測定手段を用いてフィードバック制御であるPID制御を行いるため、品質の安定した熱処理加工品を得ることができる。
また、フィードバック制御による加熱処理において、加熱制御に係るパターン情報を記憶手段に保存するため、温度計などの不具合発生時においても装置を停止することなく、過去の制御パターンに基づくパターン制御を行い加熱処理することが可能であり、また、品質の不具合発生時における原因特定も容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、既設の連続焼鈍ラインにおいて設置面積が限られていてもメンテナンス等を行うスペースを確保することができ、熱処理加工精度のよい品質の安定したワークを得ることのできるポストアニーラ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明のポストアニーラ装置の正面図(一部断面)である。
図2図2は、図1のポストアニーラ装置の側面図である。
図3図3は、図1のポストアニーラ装置の動作の流れを示すフロー図である。
図4図4は、図3のフローに続くフロー図である。
図5図5は、従来の連続焼鈍ラインの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るポストアニーラ装置の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。尚、本発明に係るポストアニーラ装置は、図5に示した連続焼鈍ライン50の中の溶接装置55と電解洗浄装置56との間の狭いスペースに配置される。そして、溶接装置55で溶接された、ワークである鋼板の先行材の後端と後行材の先端との溶接部に対し焼鈍処理を行い、組織の改善を行うものである。
【0016】
図1は、本発明のポストアニーラ装置の正面図(一部断面)である。また、図2図1のポストアニーラ装置の側面図である。
図示するポストアニーラ装置1は、装置本体2と、装置本体2を連続焼鈍ライン上に流されるワークW(鋼板)に対して進退可能とするためのレール3とを備える。
前記装置本体2の底部には、前記レール3を走行するための車輪4が前後に設けられている。これにより図2に示すように装置本体2は、ワークWに対し焼鈍処理を行う際には前進した位置(ワークサイドと呼ぶ)に配置され、待機状態では後退した位置(ドライブサイドと呼ぶ)に配置されるようになっている。尚、以下の説明において、図2に示すワークサイド側を前側とし、ドライブサイド側を後側とする。
【0017】
装置本体2は、水平状態に搬入されるワークWに対し加熱加工処理が行われるコ字状の筐体部5を有する。コ字状の筐体部5は、前側開口5a、左右開口5b、5c(図1参照)、及びそれらが連通する前記コ字状内部の処理空間5dを有する。
ワークWの溶接部W1に対する加熱加工処理は、前記処理空間5d内で行われるが、このように筐体部5がコ字状に形成されているため、オペレータは前記前側開口5a、及び左右開口5b、5c側から処理空間5d内の溶接部W1の状態を視認することができる。
【0018】
図1に示すように前記筐体部5の処理空間5dには底部に下側クランプ部材6(クランプ手段)が固定配置され、その上方に前記下側クランプ部材6に対向する上側クランプ部材7(クランプ手段)が昇降移動可能に配置されている。前記上側クランプ部材7の昇降移動は、筐体部5の上部に配置された2基の油圧シリンダ装置8によって行われる。
図示するように、加熱加工処理の際には、前記下側クランプ部材6と上側クランプ部材7とによってワークWが上下から狭持(クランプ)されるようになっている。
【0019】
また、図1に示すように、前記下側クランプ部材6及び上側クランプ部材7は、それぞれ左右に対配置され、加熱加工処理の際にはワークWの溶接部W1がその間(中央部)に配置されるようになっている。
また、図1において左右に対配置された上側クランプ部材7の間には、ワークWの上方からワークWの溶接部W1に対して加熱するための電磁誘導コイル9(加熱手段)が設けられている。この電磁誘導コイル9は、図2に示すようにワークWの幅方向において、少なくとも該ワークWの幅以上の長さに形成されている。
【0020】
また、図1に示すように左右に対配置された下側クランプ部材6の左右外側には、ワークWを支持するための一対の受けローラ10が設けられている。
また、前記左右に対配置された下側クランプ部材6の間には、図1図2に示すようにワークWの幅方向に直線状に配置された複数のエア冷却ノズル11(冷却手段)が設けられ、加熱後のワークWの溶接部W1に対し下方から冷却エアを噴射してワーク溶接部W1を冷却するようになっている。
【0021】
また、エア冷却ノズル11と同様に、図1において左右に対配置された下側クランプ部材6の間には、図2に示すようにワークWの所定部位の温度を検出する温度測定手段として、第1温度計12と、第2温度計13と、第3温度計14とがそれぞれ設けられている。このうち、第1温度計12は、ワークWの幅方向中央の温度を測定するように設けられている。第2温度計13は、加熱終了後に冷却されるワークWの温度を測定するための低温用温度計であって、第1温度計12から所定距離(例えば200mm)離れた位置に設けられている。また、第3温度計14は、ワークWの幅方向の中央から離れたワーク端部位置の温度を測定するためのものであり、例えば第1温度計12から600mm離れた位置に設けられている。
【0022】
また、図2に示すように筐体部5の前側開口5aの前方には、オペレータがモニタを通じて溶接部W1の状態を視認できるようにCCDカメラ15が設けられている。これにより、ポストアニーラ装置1から離れた場所からも図示しない操作盤を用意することによって遠隔操作することが可能となる。
また、CCDカメラ15の隣には、レーザマーカ装置16が配置され、ワークWの上面にライン状のレーザマークを照射するようになっている。即ち、ライン状のレーザマークとライン状の溶接部W1との位置を合わせることにより、溶接部W1に対して電磁誘導コイル9を平行に配置し、溶接部W1に対し精度よく加熱ができる。
【0023】
また、ポストアニーラ装置1は、ポストアニーラ装置1の動作制御を行う制御手段として、プログラマブルロジックコントローラ(PA−PLCと呼ぶ)20を備えている。このPA−PLC20は、ネットワーク接続された上位プロセスコンピュータ30からワークWの先行材、後行材にかかる情報、及び加熱温度、加熱時間などの加工条件を受信するようになっている。
また、前記上位プロセスコンピュータ30には記憶手段としてのサーバ40が接続され、前記サーバ40には、過去に加熱加工処理した際の制御パターンデータ、及び前記加工条件等が記憶されている。尚、前記上位プロセスコンピュータ30及び前記サーバ40は、装置本体2とは離れた場所に設けられ、前記PA−PLC20とネットワーク接続されるが、ポストアニーラ装置1の一部として機能するようになっている。
【0024】
続いて、このように構成されたポストアニーラ装置1の一連の動作について図3のフローに沿って説明する。
先ず、ポストアニーラ装置1のプログラマブルロジックコントローラ、即ちPA−PLC20では、加工条件の入力設定作業を行う。具体的には、本体装置2が退避位置であるドライブサイドに配置された状態で、自動運転モードの場合には(図3のステップS1)、PA−PLC20は、加工条件(ワークWの先行材、後行材にかかる情報、加熱温度、加熱時間など)を上位プロセスコントローラ30から受信し設定する(図3のステップS2)。
或いは自動運転モードでない場合には(図3のステップS1)、筐体5に設けられた操作用タッチパネル(図示せず)によりオペレータが加工条件をPA−PLC20に入力設定する(図3のステップS18)。
【0025】
次いで、PA−PLC20は、本体装置2をレール3に沿ってワークサイド側に移動させる(図3のステップS3)。そして、ワークWを筐体部5の左開口5d側から受けローラ10で支持しながら搬入し、図1に示すようにその溶接部W1が電磁誘導コイル9の直下の位置に配置する(図3のステップS4)。
そして、PA−PLC20は油圧シリンダ装置8を駆動し、上側クランプ部材7(及び電磁誘導コイル9)を下降させて、上側クランプ部材7と下側クランプ部材6とによりワークWを上下側から狭持(クランプ)する(図3のステップS5)。
【0026】
次いで、PA−PLC20は、設定された加工条件に基づき、電磁誘導コイル9に電力供給し、その誘導加熱によってワークWの溶接部W1に対し上側から加熱開始する(図3のステップS6)。
ここでフィードバック制御による加熱処理を行う場合(図3のステップS7)、PA−PLC20は、第1温度計12により測定された温度値と目標値とを用い、PID制御に基づき加熱温度の制御を行う(図3のステップS8)。フィードバック制御により加熱制御された実績情報(加熱制御パターン)は、上位プロセスコントローラ30に定期的に(例えば1秒毎に)送信され(図3のステップS20)、サーバ40に蓄積される(図3のステップS21)。尚、このフィードバック制御による加熱処理の間、第3温度計14により測定されるワーク端部の温度データもPA−PLC20に送られ、仕様温度内にあるかが監視される。
【0027】
或いは、パターン制御により加熱処理を行う場合(図3のステップS19)、PA−PLC20は、以前の加熱処理でサーバ40に蓄積されたフィードバック制御による加熱パターンの情報を参照し、加熱制御を行う。このパターン制御モードは、第1温度計12等の故障時であっても加熱処理を実施できるように設けられている。
【0028】
加熱処理によりワークWの温度が昇温し(図3のステップS9)、所定の温度(例えば700℃)になると、PA−PLC20は、その温度が保持されるように加熱制御し(図3のステップS10)、所定時間の経過後(例えば30sec経過後)に、電磁誘導コイル9による誘導加熱処理を停止する(図3のステップS11)。
【0029】
加熱処理の終了後、PA−PLC20は、複数のエア冷却ノズル11から冷却エアを上方のワークWに対し噴射させ、加熱後のワークWの溶接部を冷却開始する(図4のステップS12)。このようにワーク溶接部W1を上下側からクランプした状態で加熱と冷却とを行うので加工中の歪みを抑制することができる。
冷却処理の際、PA−PLC20は第2温度計13により測定された温度を見て、所定温度(例えば受けローラ10の耐熱温度150℃)以下になると(図4のステップS13)、エア冷却ノズル11からの噴射を停止し、冷却処理を終了する(図4のステップS14)。尚、この冷却処理の間、第3温度計14により測定されるワーク端部の温度データもPA−PLC20に送られ、仕様温度内にあるかが監視される。
【0030】
冷却処理が終了すると、PA−PLC20は油圧シリンダ装置8を駆動し、上側クランプ部材7(及び電磁誘導コイル9)を上昇させて、上側クランプ部材7と下側クランプ部材6とによるワークWのクランプを解除する(図4のステップS15)。
そして、受けローラ10を回転駆動し、溶接部W1の焼鈍処理の終了したワークWを右開口5c側から搬出する(図4のステップS16)。
また、装置本体2は、レール3に沿って後退され、待機位置であるドライブサイドに移動され(図4のステップS17)、一溶接部W1に対する加熱加工処理(焼鈍処理)が完了となる。
【0031】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、ポストアニーラ装置1の装置本体をワークWに対して進退可能に配置するとともに装置本体の筐体部5をコ字状とし、コ字状内部の処理空間5dにおいてワーク溶接部W1に対し加熱処理を行うものとした。
これにより、ポストアニーラ装置1による加工工程以外はドライブサイドに退避して、ドライブサイドでメンテナンスや加熱試験を行うことができる。したがって、連続焼鈍ラインにおける設置面積が限られていても、ポストアニーラ装置を連続焼鈍ラインの中に組み込むことができる。
また、筐体部5がコ字状であるため、溶接部W1をオペレータ側から容易に視認することができ、レーザマーカを溶接部W1に合わせて精度よい加熱処理が可能となる。
また、加熱加工中においては、複数の温度計を用いてフィードバック制御(PID温度制御)を行い、冷却温度やワークW中央以外の温度を監視するため品質の安定した加工品を得ることができる。
また、フィードバック制御による加熱処理において、加熱制御に係るデータをサーバ40に保存するため、温度計などの不具合発生時においても装置を停止することなく、過去の制御パターンに基づくパターン制御を行い加熱処理することが可能であり、また、品質の不具合発生時における原因特定も容易となる。
【0032】
尚、前記実施の形態においては、ワークWの上側から溶接部W1に対し加熱し、ワークWの下側から溶接部W1に対し冷却する構成を示したが、本発明にあっては、その構成に限定されるものではなく、ワークWの下側から加熱し、ワークWの上側から冷却する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ポストアニーラ装置
2 装置本体
3 レール
4 車輪
5 筐体
5a 前側開口
5b 左開口
5c 右開口
5d 処理空間
6 下側クランプ部材(クランプ手段)
7 上側クランプ部材(クランプ手段)
8 油圧シリンダ装置
9 電磁誘導コイル(加熱手段)
10 受けローラ
11 エア冷却ノズル(冷却手段)
12 第1温度計(温度測定手段)
13 第2温度計(温度測定手段)
14 第3温度計(温度測定手段)
15 CCDカメラ
16 レーザマーカ装置
20 プログラマブルロジックコントローラ(PA−PLC、制御手段)
30 上位プロセスコントローラ
40 サーバ(記憶手段)
W ワーク
W1 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5