擁壁背面の地表面形状が複雑な形状を呈している場合や擁壁背面の土質に粘着力を考慮する場合において擁壁の安全性を高精度に評価する擁壁の安全性評価方法、擁壁の安全性評価プログラムおよび擁壁の安全性評価システムを提供することを課題とする。
擁壁の安全性を評価する擁壁の安全性評価方法であって、擁壁背面に発生するすべり形態を判定し、判定されたすべり形態に応じて土圧の計算方法を決定し、従来計算法(試行くさび法・改良試行くさび法)と異なるアプローチで、擁壁の背面から受ける土圧を本発明の反復法のアルゴリズムを用いて演算するものであり、その土圧を用いて、擁壁の安全性を評価し、併せて計算範囲全体における土圧の変化状況を図化することを特徴とする。
前記評価ステップでは、擁壁の自重や前記計算ステップで求めた擁壁に作用する外力に対して、擁壁に作用する鉛直荷重と抵抗モーメントおよび水平荷重と転倒モーメントを計算することを特徴とする
請求項1に記載の擁壁の安全性評価方法。
前記計算ステップでは、「1面直線すべり」と「2面直線すべり」のすべりの形態を判定し、そのすべりの形態に応じた土圧またはすべり面の角度を計算することを特徴とする
請求項1〜請求項2に記載の擁壁の安全性評価方法。
前記計算ステップで計算した土圧に対して、最大土圧近傍のみだけでなく、計算範囲全体または擁壁背面の地形全体におけるすべり面の角度に関する値と土圧に関する値をグラフ化して表示する前記表示ステップを含むことを特徴とする
請求項1〜請求項3に記載の擁壁の安全性評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る擁壁の安全性評価方法、擁壁の安全性評価プログラムおよび擁壁の安全性評価システムの実施の形態を説明する。なお、各図および各式において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施の形態では、本発明を、擁壁の安全性評価のアプリケーションプログラムを搭載したパーソナルコンピュータ等に構成される擁壁の安全性評価システム(擁壁の安全性評価装置)に適用する。本実施の形態に係る擁壁の安全性評価システムは、新設する擁壁または既存の擁壁に対して、擁壁の安全性を評価する。
【0017】
図1では、符号GL
1で擁壁背面側の地表面を示しており、符号GL
2で擁壁前面側の地表面を示しており、符号RWで擁壁を示している。
【0018】
図2〜
図3を参照して、本実施の形態に係る擁壁の安全性評価システムについて具体的に説明する。
安全性評価システム(擁壁の安全性評価装置)1は、擁壁背面の地表面の形状や擁壁背面の土質の状態や荷重の作用状況に応じて、迅速、かつ高精度に、擁壁に作用する土圧を計算し、擁壁の安全性を評価する。
安全性評価システム1は、コンピュータに構成され、入力部2、記憶部3、演算部4、評価部5および表示部6を備えている。本実施の形態では、入力部2が特許請求の範囲に記載する取得手段に相当し、演算部4および評価部5が特許請求の範囲に記載する計算手段および評価手段に相当し、表示部6が特許請求の範囲に記載する表示手段に相当する。
【0019】
入力部2は、利用者が擁壁に関する各種データを入力するために、入力手段としてコンピュータのマウスキーボード等の入力装置および入力画面を表示するためのコンピュータのディスプレイによって構成される。
入力されるデータとしては、擁壁の形状情報(例えば、擁壁の高さや幅の寸法情報等)、擁壁の材料情報(例えば、擁壁の単位体積重量γ
C、擁壁背面の壁面摩擦角δ、コンクリート強度、許容断面力、必要鉄筋量等)、擁壁背面の土質情報(例えば、背面土単位体積重量γ
S、内部摩擦角φ、粘着力c等)、支持地盤の情報(例えば、擁壁底面と支持地盤の摩擦係数μ、許容支持力度qa等)、擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報(例えば、地形寸法情報、擁壁背面の地表面または擁壁に作用する水平力および鉛直力)、その他荷重情報(例えば、水平震度k
V、水平震度k
H、擁壁に直接作用する荷重)等である。
入力するデータ(例えば、擁壁背面の土質情報等)は、入力部2からマウスキーボード等の入力装置を使って遂一入力する構成とするが、例えば、粘性土、砂質土、礫質土等の呼称の値としてプルダウンメニューから選択する形式のように、この背面土の土質定数の値に対応させた記憶部3に記憶させた背面度データテーブルが予め記憶された値を抽出(選択)する構成でもよい。
【0020】
記憶部3は、評価に必要な擁壁に関する各種データや入力部2から入力されたデータを記憶するために、コンピュータのメモリの一部の領域に構成される。記憶部3にあらかじめ記憶されるデータとしては、例えば、コンクリートのテーブルデータ(例えば、擁壁の単位体積重量γ
C、擁壁背面の壁面摩擦角δ、コンクリート強度、許容断面力、必要鉄筋量)、背面土に関するテーブルデータ(例えば、背面土の土質(例えば、粘性土、砂質土、礫質土)、背面土単位体積重量γ
S、内部摩擦角φ、粘着力c)、支持地盤のテーブルデータ(例えば、擁壁底面と支持地盤の摩擦係数μ、許容支持力度qa)、地震力のテーブルデータ(例えば、水平震度k
V、水平震度k
H)がある。
【0021】
演算部4は、擁壁の安全性評価のアプリケーションプログラムの指令によりコンピュータのCPUが演算処理を実行することによって構成される。入力部2での入力データに応じて、擁壁が擁壁背面から受ける土圧およびすべり面の角度が演算される。
【0022】
評価部5は、擁壁の安全性評価のアプリケーションプログラムの指令によりコンピュータのCPUが演算処理を実行することによって構成される。評価部5での判定結果に応じて、演算部4での計算結果を用いて、擁壁に生じる荷重とモーメント力を計算する。さらに、評価部5では、擁壁に生じる荷重とモーメント力から、擁壁の安全性を評価する。
【0023】
表示部6は、演算部4の計算結果、評価部5での評価結果を表示するために、コンピュータ等のディスプレイによって構成される。
【0024】
次に、
図3のフローチャートに沿って、擁壁の安全性評価システム1での安全性評価のアプリケーションプログラムによる動作の流れについて説明する。
S1では、評価を行う人は、ディスプレイに表示される入力画面を見ながら(例えば、
図12(a)の入力画面)、マウスキーボード等の入力装置を用いて擁壁の形状情報を入力し、ディスプレイに表示される入力画面を見ながら(例えば、
図13の入力画面)、マウスキーボード等の入力装置を用いて、擁壁の材料情報、擁壁背面の土質情報、支持地盤の情報を入力し、ディスプレイに表示される入力画面を見ながら(例えば、
図15の入力画面)、マウスキーボード等の入力装置を用いて擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報を入力し、ディスプレイに表示される入力画面を見ながら(例えば、
図16の入力画面)、その他荷重情報を入力する。それらの入力されたデータは入力部2で受け付け、擁壁の形状情報、擁壁の材料情報、擁壁背面の土質情報、支持地盤の情報、擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報、その他荷重情報を記憶部3に記憶させる。
S2では、安全性評価システム1の演算部4において、S1での記憶(入力)データに応じて、後記の基本条件が演算される。
S3では、安全性評価システム1の演算部4において、S1での記憶(入力)データとS2での演算結果に基づいて、後記の2面直線すべりモードでの演算が実行される。
S4では、安全性評価システム1の演算部4において、S1での記憶(入力)データとS2およびS3での演算結果に基づいて、すべり形態の判定が実行される。S4では、すべり形態が「2面直線すべり」となる場合には、YESの矢印方向の処理へと進み、すべり形態が「1面直線すべり」となる場合には、NOの矢印方向の処理へと進む。
S5では、安全性評価システム1の演算部4において、S1での記憶(入力)データとS2での演算結果を利用して、後記の1面直線すべりモードでの演算が実行される。
S6では、安全性評価システム1の演算部4において、S3またはS5での演算結果に基づいて、後記のL面に作用する土圧(例えば、L面に作用する主働土圧P
aY)が演算される。
S7では、安全性評価システム1の評価部5において、S1での記憶(入力)データとS6での演算結果に応じて、擁壁に作用する鉛直荷重、水平荷重、抵抗モーメントおよび転倒モーメントを計算する。
S8では、安全性評価システム1の評価部5において、S7で演算された鉛直荷重、水平荷重、抵抗モーメントおよび転倒モーメントを用いて、擁壁の安全性の評価を行う。
S9では、安全性評価システム1の表示部6において、S1の記憶(入力)データ、S2およびS3およびS5およびS6の演算結果、S4の判定結果、S7およびS8での評価結果(例えば、
図21の出力画面)をディスプレイに表示する。また、演算結果に基づいて、土圧に係る値をグラフ化し(例えば、
図22)、ディスプレイに表示する。
【0025】
なお、
図3のフローチャートに図示はしないが、S4でのすべり形態の判定は、後記の擁壁の構造形式による判定と、後記のすべり形態の判定式による判定によるものとするが、入力部2において「1面直線すべり」および「2面直線すべり」のいずれかのすべり形態を選択できる構成とすることもできる。入力部2においてすべり形態を選択できる構成した場合には、入力部2において「1面直線すべり」が選択されると、S2の処理後、S3およびS4の処理を省略してS5の処理に進み、入力部2において「2面直線すべり」が選択されると、S3の処理後、S4およびS5の処理を省略してS6の処理に進む。
【0026】
本実施の形態に係る擁壁の安全性評価システムについて具体的に説明する前に、
使用する専門的な用語について説明しておく。
片持ちばり式擁壁とは、
図1に示すような竪壁RW
aと底版(かかと版)RW
bとからなる鉄筋コンクリート製の擁壁で、竪壁RW
aの位置により逆T型擁壁、L型擁壁、逆L型擁壁と呼ばれる構造物である。
極限平衡時とは、擁壁背面にすべり面を仮定し、そのすべり面によって区切られた土塊のブロックを剛体とみなして、土塊重量および土塊重量に作用する荷重がつり合って、土塊が滑らない限界の状態を示す。
L面とは、
図4で示す2つのすべり面のうち、左側のすべり面であり、極限平衡時に擁壁側に発生するすべり面をいう。
R面とは、
図4で示す2つのすべり面のうち、右側のすべり面であり、極限平衡時に擁壁側とは反対側に発生するすべり面をいう。
仮想背面とは、後記のすべり面基点SPから地表面に向かって鉛直方向に線を引いたときにできる、みかけの面(線)であり、現行のL型擁壁の簡易計算法では、この面に土圧を作用させて擁壁の安全性評価が行われる。
「1面直線すべり」とは、L面が擁壁背面側の土と構造物との境界に沿って発生し、R面が地中内に発生する場合のすべり形態をいう。
「2面直線すべり」とは、L面とR面が地中内に発生する場合のすべり形態をいう。
1面直線すべりモードとは、「1面直線すべり」に関する演算形式であり、数44および数45に示す計算式で演算が実行される。なお、仮想背面を設定しR面のみで最大土圧を算出する片持ちばり式擁壁の従来の簡易計算法は、1面直線すべりモードで演算可能である。
2面直線すべりモードとは、「2面直線すべり」に関する演算形式であり、数3〜数38に示す計算式で演算が実行される。なお、例えば、かかと版RW
bの短い片持ちばり式擁壁では、L面が地表面GL
1と交差せず、竪壁RW
aの背面側に交差する場合があるが、この場合も、擁壁の安全性評価時において、竪壁RW
aからすべり土塊が受ける水平方向力と鉛直方向力を入力データとして安全性評価システムに与えれば、2面直線すべりモードとして演算される。
【0027】
本実施の形態に係る擁壁の安全性評価システムについて具体的に説明する前に、
図4〜
図8を参照して、「2面直線すべり」に関する各計算式の導出方法について説明しておく。
なお、後記の2面直線すべりモードおよび1面直線すべりモードおよびすべり形態の判定式では、すべり土塊に作用する水平方向力Tを考慮しているが、すべり土塊に作用する水平方向力Tを考慮しない場合の計算は、それらの計算式にt
0L=0、t
0R=0およびt
0A=0(T=0)を代入すれば成り立つ。
【0028】
まず、
図4、
図5を参照して、極限平衡時でのすべり土塊重量およびすべり土塊に作用する荷重について説明する。
擁壁の背面の地表面GL
1の形状が
図4のような形状を呈しているとき、「2面直線すべり」が発生する場合でのすべり土塊重量およびすべり土塊に作用する荷重の求め方は、
図5に示すように面積A
L、面積A
M、面積A
Rの部分に分割して求める。
面積A
LはL面の角度であるω
Lと面積A
Lの部分の境界角であるω
0Lに囲まれた三角形の部分の面積を表し、面積A
RはL面の角度をω
Rと面積A
Rの部分の境界角をω
0Rに囲まれた三角形の部分の面積を表し、面積A
MはL残りの部分の面積を表す。
面積A
Lの部分のすべり土塊重量および面積A
Lの部分のすべり土塊に作用する鉛直方向力の合計W
Lは式(1)となる。
ここで、擁壁背面の土の単位体積重量をγ
Sとする。
また、L面の角度であるω
L、面積A
Lの部分の境界角であるω
0L、面積A
Lの部分の地表面の傾斜角をβ
L(右肩上がりの勾配を正とする)、L面における摩擦角(内部摩擦角)をφ
L、L面とR面の交点から面積A
Lの部分の地表面への直交線の長さであるL面側地表面直交高をH
L’、面積A
Lの部分に作用する鉛直方向等分布荷重をq
VLとする。
また、面積A
Lの部分のすべり土塊に作用する水平方向力T
Lは式(2)となる。
ここで、面積A
Lの部分に作用する水平方向等分布荷重をq
HLとする。
【数3】
【0029】
また、面積A
Rの部分のすべり土塊重量および面積A
Rの部分のすべり土塊に作用する鉛直方向力の合計W
Rは式(3)となる。
ここで、R面の角度をω
R、面積A
Rの部分の境界角をω
0R、面積A
Rの部分の地表面の傾斜角をβ
R(右肩上がりの勾配を正とする)、R面における摩擦角(内部摩擦角)をφ
R、L面とR面の交点から面積A
Rの部分の地表面への直交線の長さを示すR面側地表面直交高をH
R’、面積A
Rの部分に作用する鉛直方向等分布荷重をq
VRとする。
また、面積A
Rの部分のすべり土塊に作用する水平方向力T
Rは式(4)となる。
ここで、面積A
Rの部分に作用する水平方向等分布荷重をq
HRとする。
【数4】
【0030】
また、面積A
Mの部分のすべり土塊重量および面積A
Mの部分のすべり土塊に作用する鉛直方向力の合計W
Mは式(5)となる。
ここで、面積A
Mの部分に作用する鉛直方向力の集計値をΣP
Vとする。
また、面積A
Mの部分のすべり土塊に作用する水平方向力T
Mは式(6)となる。
ここで、面積A
Mの部分に作用する水平方向力の集計値をΣP
Hとする。
【数5】
【0031】
よって、極限平衡時でのすべり土塊重量およびすべり土塊に作用する鉛直方向力の合計Wは式(7)となり、すべり土塊に作用する水平方向力Tは式(8)となる。
【数6】
【0032】
次に、
図6より、有効重量W’(後記参照)を求める。
ここで、対象となる擁壁と擁壁の背面の地表面および支持地盤の全体を傾斜させて、重力と地震力の慣性力の合成である合慣性力の方向が鉛直になるように回転させた座標系を回転座標系と称す。また、すべり土塊重量を含む力のつり合いを示した図を連力図と称す。
図6は、回転座標系での極限平衡時における連力図である。
ここで、式(9)および式(10)を利用すれば、
図6より、式(11)〜式(13)が成立する。
ここで、擁壁背面の土の単位面積当たりの粘着力をcとする。
また、R面での粘着力をC
R、L面での粘着力をC
L、L面での垂直応力と摩擦力の合力をR
Lとする。ここで、R
Lのうち、粘着力との力の相殺後に残った有効分の力をR
L’とし、有効反力と称す。また、地震合成角をθ、水平震度をk
H、鉛直震度をk
Vとする。また、W×k
V’÷cosθのうち粘着力との力の相殺後に残った有効分の力をW’とし、有効重量と称す。
【数7】
【数8】
【0033】
ここで、式(1)〜(8)、式(13)〜(30)を利用すれば、式(12)は式(31)となる。
【数9】
【数10】
【0034】
ここで、式(32)および式(33)を利用すれば、式(31)は式(34)となる。
【数11】
【数12】
【0035】
次に、回転座標系での主働土圧の水平方向成分を求める。ここで、回転座標系での主働土圧の水平方向成分をP
aとし、基本主働土圧と称する。基本主働土圧P
aは有効反力R
L’の水平方向成分と等しいため、式(35)が成り立つ。
【数13】
【0036】
ここで、式(11)および式(36)を利用すれば、式(35)は、式(37)または式(38)となる。
【数14】
【数15】
【0037】
「2面直線すべり」において基本主働土圧P
aが極大値を得る条件は、xおよびyが∂P
a÷∂x=0と∂P
a÷∂y=0を同時に満たすとき、または、xが∂P
a÷∂x=0の式のみを満たすとき、または、yが∂P
a÷∂y=0の式のみを満たすときの3つのときである。ただし、基本主働土圧P
aが極大値を得る条件は、基本主働土圧P
aが最大値を得る条件ではない。
∂P
a÷∂x=0と∂P
a÷∂y=0を同時に満たす場合のxを極値点X
Rと称し、∂P
a÷∂x=0と∂P
a÷∂y=0を同時に満たす場合のyを極値点Y
L称し、極値点X
Rまたは極値点Y
Lから得られる基本主働土圧を極値主働土圧P
a0と称し、∂P
a÷∂x=0のみを満たす場合のxをL面固定極値点x
Rと称し、L面固定極値点x
Rから得られる基本主働土圧をL面固定極値主働土圧P
a0Lと称し、∂P
a÷∂y=0のみを満たす場合のyをR面固定極値点y
Lと称し、R面固定極値点y
Lから得られる基本主働土圧をR面固定極値主働土圧P
a0Rと称す。また、極値主働土圧P
a0、L面固定極値主働土圧P
a0L、R面固定極値主働土圧P
a0R、後記の両面固定主働土圧P
a0LRを総称して、各主働土圧と称する。また、極値点X
R、極値点Y
L、L面固定極値点x
R、R面固定極値点y
Lを総称して、各極値点と称する。
なお、基本主働土圧P
aには各主働土圧が含まれる。
【0038】
R面固定極値点y
Lとは、R面の角度ω
Rを境界角ω
0Rに固定して基本主働土圧P
aを求めたときに、基本主働土圧P
aが極大となる点をいい、L面固定極値点x
Rとは、L面の角度ω
Lを境界角ω
0Lに固定して基本主働土圧P
aを求めたときに、基本主働土圧P
aが極大となる点をいう。
【0039】
次に、L面固定極値点x
Rを∂P
a÷∂x=0より求める。
式(38)は、xの関数に変形させるために式(39)を利用すれば、式(40)となる。
【数16】
【0040】
さらに、式(41)〜式(46)を利用すれば、式(40)は式(47)となる。
【数17】
【0041】
L面固定極値点x
Rを求めるには、式(47)に含まれる
(cotφ
θβR−x)×(x+cotξ
R)÷(x+cotμ
R)が極大となるxを求めればよいため、
f(x)=(cotφ
θβR−x)×(x+cotξ
R)÷(x+cotμ
R)とすれば、∂f(x)÷∂xは式(48)となる。
【数18】
【0042】
よって、式(48)を∂f(x)÷∂x=0よりxについて解けば、式(49)の解を得る。
【数19】
【0043】
ここで、式(49)の加減算符号“±”を削除するために式(50)および式(51)を利用し、xをcotω
βRに戻せば、式(49)は式(52)となる。
【数20】
【0044】
次に、R面固定極値点y
Lを∂P
a÷∂y=0より求める。
まず、式(37)は、yの関数に変形させるために式(37)の両辺にTcosθを加算し、変形すれば式(53)となる。
【数21】
【0045】
ここで、式(54)〜式(58)を利用すれば、式(53)は式(59)となる。
【数22】
【0046】
さらに、式(60)を利用すれば、式(59)は式(61)となる。
【数23】
【0047】
R面固定極値点y
Lを求めるには、式(61)のP
aが極大となるyを求めればよい。式(48)の偏微分の解法と同様にP
aをyについて偏微分し、また、式(62)を利用すれば式(63)の解を得る。
【数24】
【0048】
よって、式(64)を利用し、式(63)を∂P
a÷∂y=0よりyについて解けば、式(65)の解を得る。
【数25】
【0049】
ここで、式(65)の加減算符号“±”を削除するために式(66)および式(67)を利用し、yをcotω
βLに戻せば、式(65)は式(68)となる。
【数26】
【0050】
また、ここで、式(69)と式(55)および式(70)を利用し、kについて整理すると式(64)は式(71)となる。
【数27】
【0051】
極値主働土圧P
a0を求めるためには、式(52)と式(68)を同時に満たすx、yを見つければ良い。そのため、このx、yは後記の本発明の反復法のアルゴリズムを用いて真の解に収束させ算出させる。
【0052】
次に、R面固定極値主働土圧P
a0Rの計算式を導出する。
まず、式(61)に含まれる
(cotφ
θβL+cotμ
L)×(y+cotξ
L)÷(y+cotμ
L)を式(64)および式(65)を利用して式(72)に変形させる。
【数28】
【0053】
ここで、式(60)は式(73)となるため、式(28)および式(55)および式(73)を利用すれば、式(72)は式(74)となる。
【数29】
【0054】
よって、y=cotω
βL=y
Lとし、式(61)に式(74)を代入すれば、R面固定極値主働土圧P
a0Rの計算式が式(75)に導出できる。
【数30】
【0055】
次に、L面固定極値主働土圧P
a0Lの計算式を導出する。
まず、式(47)に含まれる
(cotφ
θβR+cotμ
R)×(x+cotξ
R)÷(x+cotμ
R)は、式(72)と同様に変形すれば、、式(76)となる。
【数31】
【0056】
よって、x=cotω
βR=x
Rとし、式(47)に式(76)を代入すれば、L面固定極値主働土圧P
a0Lの計算式が式(77)に導出できる。
【数32】
【0057】
次に、極値主働土圧P
a0について説明する。
本発明のアルゴリズムにより得られたxを極値点X
Rとし、本発明のアルゴリズムにより得られたyを極値点Y
Lとする。ここで、x=cotω
βR=x
R=X
R、y=cotω
βL=y
L=Y
Lであるため、極値主働土圧P
a0の計算式は、式(75)および式(77)より式(78)および式(79)となる。
【数33】
【0058】
次に、両面固定主働土圧P
a0LRについて説明する。
両面固定主働土圧P
a0LRは、擁壁背面の地形の変化点や擁壁背面の地表面に載荷する荷重の変化点における境界角(ω
0Lまたはω
0R)や任意の角度(ω
Lまたはω
R)を式(40)または式(59)のω
Lまたはω
Rに代入して得られる基本主働土圧である。
よって、両面固定主働土圧P
a0LRの計算式は、式(80)または式(81)となる。
【数34】
【0059】
次に、基本主働土圧の最大値P
aMAXについて説明する。
基本主働土圧の最大値P
aMAXは式(82)で表される。
【数35】
【0060】
次に、L面に作用する主働土圧P
aYについて説明する。
図7に示すようにL面粘着力による傾角Δ
Lを用いれば、式(83)が成り立つ。
【数36】
【0061】
L面に作用する主働土圧P
aYの回転座標系での作用方向は、
図7に示すように回転座標系の鉛直方向に対してΔ
PaYだけ時計回りに傾斜して作用する。Δ
PaYをP
aY回転座標系方向角と称する。
また、L面粘着力による傾角Δ
Lは式(84)となる。また、式(84)を利用し、式(83)を変形すれば、式(85)となる。従って、L面に作用する主働土圧P
aYは、式(86)となる。
【数37】
【0062】
また、
図8を参考に回転座標系から実際の座標系に戻せば、L面に作用する主働土圧の実際の座標系での水平方向成分P
aYH(L面に作用する主働土圧の水平方向成分P
aYHと称する。)およびL面に作用する主働土圧の実際の座標系での鉛直方向成分P
aYV(L面に作用する主働土圧の鉛直方向成分P
aYVと称する。)は、
図8より式(87)および式(88)となる。
【数38】
【0063】
次に、実施の形態に係る擁壁の安全性評価システムについて具体的に説明する前に、
本発明の反復法のアルゴリズムについて説明しておく。
本発明の反復法のアルゴリズムによって、基本主働土圧P
aが極大値となるω
βL(ω
βL=arccot(Y
L))およびω
βR(ω
βR=arccot(X
R))が求められる。
本発明の反復法のアルゴリズムは、段階1から段階4で構成される。
段階1では、反復法の初期値としてω
βLもしくはω
βRに任意の数値を定める。
段階2では、反復法の初期値のω
βLまたは、段階3より得られるω
βLから式(41)、式(28)、式(29)、式(30)、式(162)が演算され、得られたμ
R、t
1L、t
1R、t
1Aおよびξ
Rを用いて式(52)および式(164)に代入し、ω
βRを取得する。
段階3では、反復法の初期値のω
βRまたは、段階2より得られるω
βRから式(42)、式(55)、式(56)、式(57)、式(71)、式(161)が演算され、得られたμ
L、t
2L、t
2R、t
2A、kおよびξ
Lを用いて式(68)および式(163)に代入し、ω
βLを取得する。
段階4では、μ
L、μ
R、t
1L、t
1R、t
1A、t
2L、t
2R、t
2A、k、ξ
L、ξ
R、y
L、x
R、ω
βLおよびω
βRのいずれかの値が所定の精度となるまで段階2および段階3を交互に繰り返し計算させる。
【0064】
次に、実施の形態に係る擁壁の安全性評価システムについて具体的に説明する前に、
図9〜
図11を参照して、すべり形態の判定方法およびその判定式の導出方法について説明しておく。
まず、すべり形態の判定方法の流れについて、
図9のフローチャートに沿って説明する。
F1では、擁壁の構造形式によって、すべり形態が判定される。例えば、重力式擁壁のような擁壁背面が一定勾配で傾斜している擁壁の場合には、「1面直線すべり」が発生するが、後記のある特定の条件において「2面直線すべり」が発生する場合がある。また、L型擁壁や逆T型擁壁のようにかかと版を有する片持ちばり式擁壁の場合、「2面直線すべり」が発生する。よって、擁壁の構造形式が片持ちばり式擁壁と判定された場合には、すべり形態は「2面直線すべり」と判定され、YESの矢印方向の処理へと進み、擁壁の構造形式が片持ちばり式擁壁と判定されない場合には、NOの矢印方向の処理へと進む。
F1では、擁壁の構造形式に応じたすべり形態のデータテーブルが予め設定されており、入力された擁壁の形状情報から擁壁の構造形式が判定され、擁壁の構造形式に応じたすべり形態がデータテーブルから抽出される構成とするが、任意のすべり形態(「1面直線すべり」「2面直線すべり」)を選択できる構成としてもよい。
F2では、後記のすべり形態の判定式で判定される。F2では、後記のすべり形態の判定式で判定される構成とするが、任意のすべり形態(「1面直線すべり」「2面直線すべり」)を選択できる構成としてもよい。F2では、後記のすべり形態の判定式を満たす場合または「2面直線すべり」のすべり形態が選択された場合には、YESの矢印方向の処理へと進み、後記のすべり形態の判定式を満たさない場合または「1面直線すべり」のすべり形態が選択された場合には、NOの矢印方向の処理へと進む。
【0065】
次に、すべり形態の判定式の導出方法を説明する。
図10(a)のような擁壁の背面に傾斜勾配αを有している台形形状の構造物の背面においても、L面が擁壁背面に沿って発生せず、地中内に発生する場合がある。
L面はすべりの抵抗力が小さい面で発生するため、地中内のすべり抵抗力f
Sが擁壁背面でのすべり抵抗力f
C以下となるとき、L面は地中内に発生する。よって、すべり形態が「2面直線すべり」となるためには式(89)を満たす必要がある。
また、擁壁背面でのすべり抵抗力fcおよび地中内のすべり抵抗力fsは、式(90)および式(91)が成り立つ。ここで、Rcは擁壁面からの反力、R
LはL面での垂直応力と摩擦力の合力、C
LはL面での粘着力、δは擁壁背面の壁面摩擦角、φは背面土の内部摩擦角とする。
【数39】
【0066】
また、
図10(b)は、「1面直線すべり」と「2面直線すべり」が同時に発生する限界状態における
図10(a)に示すAの部分に関する連力図である。
図10(b)より式(92)が成立する。
ここで、ω
LはL面の角度、αは擁壁の背面側の傾斜角、β
LはL面側の地表面の傾斜角、θは式(9)の地震合成角、ω
βLはω
L+β
Lの演算値を表す。
また、式(92)を整理すれば、式(93)となる。
【数40】
【0067】
また、
図11より式(94)および式(95)が成り立つ。
ここで、Δ
Lは式(84)の粘着力による傾角を表す。
【数41】
【0068】
ゆえに、式(90)は式(93)および式(94)より式(96)となり、式(91)は式(95)より式(97)となる。
【数42】
【0069】
従って、式(89)は式(96)および式(97)より、式(98)または式(99)となる。このとき、必要条件として式(100)を満たす必要がある。
【数43】
【0070】
すなわち、すべり形態の判定は、式(89)または数43で実行される。式(89)と数43をすべり形態の判定式と称する。つまり、すべり形態の判定式を満足しない場合には「1面直線すべり」と判定され、すべり形態の判定式を満足する場合には「2面直線すべり」と判定される。
【0071】
次に、実施の形態に係る擁壁の安全性評価システムについて具体的に説明する前に、
「1面直線すべり」に関する各計算式の導出方法について説明しておく。
「1面直線すべり」はL面が擁壁背面に沿った面に固定されたすべり形態であるため、極大となる1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧P
aYを求めるためには、1面直線すべりモードでのL面固定極値主働土圧P
a0Lとそのときの1面直線すべりモードでのL面固定極値点x
Rを求めればよい。
また、「1面直線すべり」に関する各計算式の導出方法は、「2面直線すべり」に関する各計算式から、ω
Lをπ/2−αに変換し、ω
0Lをπ/2−αに変換し、φ
Lをδに変換すればよい。なお、「1面直線すべり」のすべり形態ではL面の角度ω
L=L面の境界角ω
0Lであるため、式(1)のW
Lの解が0となることからわかるように、
図5のA
Lの部分が存在しなくなり、これに合わせてβ
Lも存在しなくなる。よって、「1面直線すべり」に関する各計算式は、β
Lと無関係な計算式となることから、β
Lを任意の値に変換させても問題が生じない(β
Lに任意の値を与えて変換しても同じ計算式に変換させる)ため、β
Lをαに変換させ「1面直線すべり」に関する各計算式への変換を簡略化させる。
これらの変換により、ω
βLはπ/2−α+α=π/2となり、yはcot(π/2)=0となり、φ
θβLはδ+θ+αとなり、μ
Rはπ/2−φ
θβL−φ
θβRとなる。
【0072】
よって、前記の変換方法により「2面直線すべり」に関する計算式を変換すれば、1面直線すべりモードでの定数鉛直荷重W
Aは式(24)から式(101)に変換され、1面直線すべりモードでの定数水平荷重t
0Aは、式(27)から式(102)に変換され、1面直線すべりモードでのTcosθは、式(62)から式(103)に変換され、1面直線すべりモードでの定数水平荷重t
1Rは、式(29)から式(104)に変換され、1面直線すべりモードでの定数水平荷重t
1Aは、式(30)から式(105)に変換され、1面直線すべりモードでのcotξ
Rは、式(39)から式(106)に変換され、1面直線すべりモードでのL面固定極値点x
Rは、式(52)から式(107)に変換され、1面直線すべりモードでのL面固定極値主働土圧P
a0Lは、式(77)と同じ式の式(108)となり、1面直線すべりモードでの両面固定主働土圧P
a0LRは、式(80)から式(109)に変換され、1面直線すべりモードでの基本主働土圧の最大値P
aMAXは、式(82)から式(110)に変換され、1面直線すべりモードでのP
aY回転座標系方向角Δ
PaYは、π/2−φ
θβL−Δ
Lとなることから、式(85)は式(111)に変換され、1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧P
aYは、式(86)から式(112)に変換され、1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧の水平方向成分P
aYHは、式(87)から式(113)に変換され、1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧の鉛直方向成分P
aYVは、式(88)から式(114)に変換される。
【数44】
【数45】
【0073】
次に、本実施の形態に係る擁壁の安全性評価システムについて具体的に説明する前に、
擁壁の安全性の評価方法について説明しておく。
擁壁の安全性の評価方法は、諸指針(土工指針や宅地造成等規制法等)による擁壁の安全性評価方法に従い判定する。この評価方法は、従来の擁壁の安全性評価方法と変わらない。これは周知の演算により確かめることができる。
【実施例1】
【0074】
図12〜
図22を参照して、実施例1について説明する。
実施例1では、擁壁の形状が
図12(b)のような片持ちばり式の構造物の場合での計算例を説明する。
なお、実施例での各計算は、ある有効桁数で丸めず実数計算を行っている。また、実施例での説明では、区間番号iでの演算値を示す表現として、記号の末尾にiを付けて説明する。例えば、区間番号iでのΔXについてはΔX
iと表現し、区間番号i=1の場合のΔXにはΔX
1として表現して説明する。
【0075】
※※(取得手段)※※
実施例1での入力画面について説明する。
まず、擁壁の形状情報の入力画面において、擁壁の形状情報がマウスキーボード等の入力装置を使ってコンピュータに入力される。擁壁の形状は任意の形状とし、擁壁の各変化点が座標値として入力される。または、
図12(a)に示すように、擁壁の断面寸法の入力画面において、水平方向の各寸法(H1、H2、H3、H4、H5)と鉛直方向の各寸法(B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7)を入力してもよい。
実施例1では、
図12(a)に示す擁壁の形状情報が入力される。したがって、実施例1の擁壁の形状は、
図12(b)で示すような片持ちばり式のL型形状となる。擁壁高Hについては、H1+H2+H3の計算結果としてH=4.00(m)がディスプレイの画面に表示される。また、底面幅Bについては、B1+B2+B3+B4+B5の計算結果としてB=2.00(m)がディスプレイの画面に表示される。また、すべり面基点のX座標X
SPについては、X
SP=B1+B3+B5=2.00(m)がディスプレイの画面に表示され、すべり面基点SPのY座標Y
SPについては、Y
SP=0.00(m)がディスプレイの画面に表示される。
すべり面基点のX座標X
SPおよびすべり面基点SPのY座標Y
SPは、
図12(b)に示す基点Pからの相対座標値を表す。
【0076】
次に、擁壁の材料情報および擁壁背面の土質情報および支持地盤の情報の入力画面において、擁壁の材料情報(例えば、擁壁の単位体積重量γ
C、擁壁背面の壁面摩擦角δ)および擁壁背面の土質情報(例えば、背面土単位体積重量γ
S、内部摩擦角φ、粘着力c)および支持地盤の情報(例えば、擁壁底面と支持地盤の摩擦係数μ、許容支持力度q
a)がマウスキーボード等の入力装置を使って入力される。
実施例1では、
図13に示す擁壁の材料情報および擁壁背面の土質情報および支持地盤の情報が入力される。
【0077】
なお、入力するデータ(例えば、擁壁の単位体積重量γ
C、擁壁背面の壁面摩擦角δ、背面土単位体積重量γ
S、内部摩擦角φ、粘着力c、水平震度k
V、水平震度k
H、擁壁底面と支持地盤の摩擦係数μ、許容支持力度q
a)は、デフォルト値が予め設定されており、プルダウンメニューの候補の中から選択でき、コンピュータがデータテーブルを参照して、入力することも可能である。
【0078】
次に、擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報およびその他荷重情報の入力画面において、擁壁背面の地形形状情報には、擁壁背面の地形形状の変化点毎、また、擁壁背面の地形に作用する荷重情報の変化点毎に、区間番号i=1から順に、擁壁天端から擁壁背面の地形情報の変化点毎に、水平距離ΔX
iおよび鉛直距離ΔY
iの前点からの追加距離の値がマウスキーボード等の入力装置を使って入力され、入力された地形情報毎に擁壁背面の地形に作用する荷重情報(例えば、鉛直方向の等分布荷重q
Vi、水平方向の等分布荷重q
Hi、鉛直方向の集中荷重P
Vi、および水平方向の集中荷重P
Hiの値)がマウスキーボード等の入力装置を使って入力される。
擁壁背面の地形形状情報は、相対座標値X
iおよび相対座標値Y
iが入力できる構成としてもよい。
【0079】
なお、集中荷重が入力された区間番号iでの水平距離ΔX
iおよび鉛直距離ΔY
iには、擁壁の安全性評価のアプリケーションプログラムの指令によりコンピュータのCPUが演算処理を実行することによって、0の値が入力される。
また、
図14に示すように計算によって得られるすべり面の角度が、ある検討区間(ω
0i−1からω
0iの間)内に収まるとき、検討区間内に基本主働土圧P
aが極大となるすべり面が存在することとなるが、
図14に記載の丸印Aが示すすべり面のように、すべり面が検討区間内に収まっていてもすべり面の一部が、地表面GL
1から外に出るすべり面は物理的に起こりえない。よって、
図14のような地表面GL
1の形状を呈している場合には、擁壁の安全性評価のアプリケーションプログラムの指令によりコンピュータのCPUが演算処理を実行することによって、予め、丸印Bの示すすべり面(すべり面が全て地中内を通るための限界のすべり面)と地表面GL
1の交点に変化点が設定され、すべり面が地中内を通らない区間での各計算は省略される。この処理はR面側およびL面側の両面において実行される。
【0080】
実施例1では、
図15に示す擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報が入力される。また、擁壁と地表面の接点のX座標X
GPについては、
図15に示すように
図12(a)のB1、B2、B4の値を利用して、X
GP=B1+B2+B4=0.40(m)がディスプレイの画面に表示され、擁壁と地表面の接点のY座標Y
GPについては、
図12(a)のHの値を利用して、Y
GP=4.00(m)がディスプレイの画面に表示される。
擁壁と地表面の接点のX座標X
GPおよび擁壁と地表面の接点のY座標Y
GPは、
図12(b)に示す基点Pからの相対座標値を表す。
擁壁と地表面の接点のX座標X
GPおよび擁壁と地表面の接点のY座標Y
GPは、擁壁に接する任意の点の座標値を入力できる構成としてもよい。
【0081】
次に、その他荷重情報の入力画面において、その他荷重情報(例えば、水平震度k
V、水平震度k
H、擁壁に直接作用する荷重)がマウスキーボード等の入力装置を使って入力される。
実施例1では、
図16に示すその他荷重情報が入力される。また、鉛直荷重低減係数k
V’については、1−k
Vの計算結果としてk
V’=1がディスプレイの画面に表示される。また、地震力合成角θについては、arctan(k
H÷k
V’)の計算結果としてθ=0.04996(rad)がディスプレイの画面に表示される。
【0082】
※※(計算手段−基本条件の演算)※※
続いて、擁壁に作用する背面土からの土圧を計算するために、入力されたデータに基づいて、基本条件が周知の演算方法で演算される。
ここで、基本条件とは、相対座標値X
i、相対座標値Y
i、斜面勾配β
i、境界角ω
0i、地表面直交高H
i’、定数φ
θβLi、定数φ
θβRi、基準鉛直荷重p
0i、L面側の基準粘着力c
0Li、R面側の基準粘着力c
0Ri、基準水平荷重t
0i、W
AMi’、W
AEi、ΣP
Vi’、定数鉛直荷重W
Ai’、t
AMi’、t
AEi、ΣP
Hi’、定数水平荷重t
0Ai’をいう。
なお、定数鉛直荷重W
Ai’および定数水平荷重t
0Ai’は定数鉛直荷重W
Aおよび定数水平荷重t
0Aを算出するために予め計算されるものである。定数鉛直荷重W
Ai’および定数水平荷重t
0Ai’の演算を行わず、直接、定数鉛直荷重W
Aおよび定数水平荷重t
0Aを周知の演算方法により直接、演算させる構成としてもよい。
実施例1の演算結果は
図17に示す結果となる。
【0083】
相対座標値X
iおよび相対座標値Y
iは、
図12(b)に示す基点Pからの相対座標値を表す。
数46より相対座標値X
iおよび相対座標値Y
iが演算される。
【数46】
【0084】
数47に、i=3での相対座標値X
3および相対座標値Y
3の計算例を示す。
【数47】
【0085】
また、数48より斜面勾配β
iが演算される。
【数48】
【0086】
数49に、i=3での斜面勾配β
3の計算例を示す。
【数49】
【0087】
また、数50より境界角ω
0iが演算される。
【数50】
【0088】
数51に、i=3での境界角ω
03の計算例を示す。
【数51】
【0089】
また、数52より地表面直交高H
i’が演算される。
【数52】
【0090】
数53に、i=3での斜面勾配H
3’の計算例を示す。
【数53】
【0091】
また、数54より定数φ
θβLi、定数φ
θβRiが演算される。
【数54】
【0092】
数55に、i=3での定数φ
θβL3、定数φ
θβR3の計算例を示す。
【数55】
【0093】
また、数56より基準鉛直荷重p
0i、L面側の基準粘着力c
0Li、R面側の基準粘着力c
0Ri、基準水平荷重t
0iが演算される。
【数56】
【0094】
数57に、i=3での基準鉛直荷重p
03、L面側の基準粘着力c
0L3、R面側の基準粘着力c
0R3、基準水平荷重t
03の計算例を示す。
【数57】
【0095】
また、定数鉛直荷重W
Ai’が演算されるために、数58よりW
AMi’が演算される。
W
AMi’とは
図18に示すA
M’の部分の土塊重量およびA
M’に作用する鉛直方向等分布荷重による鉛直荷重の合計値とその合計値に対する地震慣性力との合力を表す。つまり、W
AMi’は回転座標系での鉛直方向力を表す。
【数58】
【0096】
数59に、i=3でのW
AM3’の計算例を示す。
【数59】
【0097】
また、定数鉛直荷重W
Ai’が演算されるために、数60よりW
AEiが演算される。
W
AEiとは
図18に示すA
Eの部分の土塊重量およびA
Eに作用する鉛直方向力の合計値とその合計値に対する地震慣性力との合力を表す。つまり、W
AEiは回転座標系での鉛直方向力を表す。なお、
図18に示すΔX
Eiは地表面直交点X座標X
Ciから相対座標値X
i−1までの水平方向の追加距離であり、X
CiーX
i−1の演算値である。
【数60】
【0098】
数61に、i=3でのW
AE3の計算例を示す。
【数61】
【0099】
また、定数鉛直荷重W
Ai’が演算されるために、数61よりΣP
Vi’が演算される。
ΣP
Vi’とは
図18に示すA
M’の部分に作用する鉛直方向力の集計値とその集計値に対する地震慣性力との合力を表す。つまり、ΣP
Viは回転座標系での鉛直方向力を表す。
【数62】
【0100】
数63に、i=3での付加控除荷重ΣP
V3の計算例をに示す。
【数63】
【0101】
また、数64より定数鉛直荷重W
Ai’が演算される。
【数64】
【0102】
数65に、i=3での定数鉛直荷重W
A3’の計算例を示す。
【数65】
【0103】
また、定数水平荷重t
0Ai’が演算されるために、数66よりt
AMi’が演算される。
t
AMi’とは
図18に示すA
M’の部分に作用する水平方向等分布荷重による水平荷重を回転座標系での水平方向成分に変換したものを表す。
【数66】
【0104】
数67に、i=5でのt
AM5’の計算例を示す。
【数67】
【0105】
また、定数水平荷重t
0Ai’が演算されるために、数68よりt
AEiが演算される。
t
AEiとは
図18に示すA
Eの部分に作用する水平方向等分布荷重による水平荷重を回転座標系での水平方向成分に変換したものを表す。
【数68】
【0106】
数69に、i=5での定数水平荷重t
AE5の計算例を示す。
【数69】
【0107】
また、定数水平荷重t
0Ai’が演算されるために、数70よりΣP
Hi’が演算される。
ΣP
Hi’とは
図18に示すA
M’の部分に作用する水平方向力の集計値を回転座標系での水平方向成分に変換したものを表す。
【数70】
【0108】
数71に、i=5での付加控除荷重ΣP
H5の計算例を示す。
【数71】
【0109】
また、数72より定数水平荷重t
0Ai’が演算される。
【数72】
【0110】
数73に、i=5での定数水平荷重t
0A5’の計算例を示す。
【数73】
【0111】
※※(計算手段−各区間との組み合わせによる各主働土圧と各極値点の演算)※※
続いて、入力されたデータおよび基本条件の演算結果に基づいて、各区間との組み合わせによる各主働土圧と各極値点の演算が実行される。
演算は、L面側の区間番号iを区間番号Li(Li=1、2、3・・・・n)とし、R面側の区間番号iを区間番号Ri(Ri=1、2、3・・・・n)としたとき、区間番号Liでの前記の基本条件と区間番号Riでの前記の基本条件とをそれぞれ組み合わせて、定数鉛直荷重W
A、定数水平荷重t
0A、極値点X
R、極値点Y
L、極値主働土圧P
a0、R面固定極値点y
L、R面固定極値主働土圧P
a0R、L面固定極値点x
R、L面固定極値主働土圧P
a0L、両面固定主働土圧P
a0LRが演算される。ただし、その組み合わせは重複の計算を省略するためにLi≦Riの範囲で演算される。実施例では、L面側の区間番号LiとR面側の区間番号Riの組合せの表現として、記号の末尾に(Li、Ri)を付けて説明する。例えば、W
AについてはW
A(Li、Ri)と表現し、L面側の区間番号Li=1、R面側の区間番号Ri=3の場合のW
Aには、W
A(1、3)と表現して説明する。
実施例1のLi=1での演算結果は
図19に示す結果となる。
【0112】
※※(計算手段−定数鉛直荷重W
Aおよび定数水平荷重t
0Aの演算)※※
数74より定数鉛直荷重W
Aおよび定数水平荷重t
0Aが演算される。
定数鉛直荷重W
Aは式(24)から得られる解を表し、定数水平荷重t
0Aは式(27)から得られる解を表す。
【数74】
【0113】
数75に、Li=1、Ri=3での定数鉛直荷重W
A(1、3)および定数水平荷重t
0A(1、3)の計算例を示す。
【数75】
【0114】
※※(計算手段−極値点X
Rおよび極値点Y
Lの演算)※※
次に、前記の本発明の反復法のアルゴリズムを用いて、数1および数2よりω
βL(ω
βL=arccot(Y
L))およびω
βR(ω
βR=arccot(X
R))が演算される。
なお、実施例では計算過程を説明するため、数76を用いて説明する。
【数76】
【0115】
実施例では数1にω
βR=ω
0βRi=ω
0R−β
Riの初期値を与える。
数77に、Li=1、Ri=3でのω
βL(1、3)およびω
βR(1、3)の計算例を示す。
【数77】
【0116】
実施例1では、前記の反復計算で得られる小数点下5桁まで表示させたω
βLまたは前記計算で得られる小数点下5桁まで表示させたω
βRの解について、反復計算時にそれぞれ2回同じ数値が得られた場合に反復計算が止まる。
よって、反復計算の結果、ω
βL(1,3)に1.40206(rad)、ω
βR(1,3)に0.81811(rad)を得る。
【0117】
また、L面の角度ω
LおよびR面の角度ω
Rが検討区間内に存在するためのの条件式は数78で表せる。数78を同時に満たさない場合には、検討区間以外の組み合わせで極大値が現れるため、その組み合わせでは、「解なし」と判定され、後記の極値主働土圧P
a0は計算されない。
【数78】
【0118】
数79に、Li=1、Ri=3での判定式の計算例を示す。
【数79】
【0119】
※※(計算手段−極値主働土圧P
a0の演算)※※
次に、式(79)より極値主働土圧P
a0が演算される。なお、t
1Rは式(29)より演算される。また、X
R=cot(ω
βR)である。
数80に、Li=1、Ri=3での極値主働土圧P
a0の計算例を示す。
【数80】
【0120】
※※(計算手段−R面固定極値主働土圧P
a0Rの演算)※※
次に、R面固定極値主働土圧P
a0Rを演算するために、数1よりR面固定極値点y
Lが演算される。数1に与えるω
βRは、ω
βR=ω
0βRi=ω
0Ri−β
Riとする。
また、演算されたω
βL=arccot(y
L)を用いて、L面の角度ω
L=ω
βL−β
Liが式(187)の範囲内にあるか判定される。式(187)を満たさない場合、「解なし」と判定され、その組み合わせでの後記のR面固定極値主働土圧P
a0Rは計算されない。
数81に、Li=1、Ri=3での判定例を示す。
実施例では極値点X
Rおよび極値点Y
Lの解析に際して初期値をω
βR=ω
0βRi=ω
0Ri−β
Riとしていることから、R面固定極値点y
Lおよびω
βL=arccot(y
L)は1サイクル 1/2回目に式(173)および式(174)で既に演算済みであるため、式(174)の値を用いて式(187)での判定が実行される。
【数81】
【0121】
次に、式(75)よりR面固定極値主働土圧P
a0Rが演算される。なお、t
1Lが式(28)より演算される。また、Tcosθが式(62)より演算される。また、x=cot(ω
βR)であり、y
L=y=cot(ω
βL)である。
数82に、Li=1、Ri=3でのR面固定極値主働土圧P
a0Rの計算例を示す。
【数82】
【0122】
※※(計算手段−L面固定極値主働土圧P
a0Lの演算)※※
次に、L面固定極値主働土圧P
a0Lを演算するために、数2よりL面固定極値点x
Rが演算される。数2に与えるω
βLは、ω
βL=π−ω
0βLi−1=π−ω
0Li−1+β
Liとする。
数83に、Li=1、Ri=3でのω
βR=arccot(x
R)の計算例を示す。
【数83】
【0123】
また、演算されたω
βRを用いて、R面の角度ω
R=ω
βR+β
Riが式(188)の適用範囲にあるか判定される。式(188)を満たさない場合、「解なし」と判定され、その組み合わせでの後記のL面固定極値主働土圧P
a0Lは計算されない。
数84に、Li=1、Ri=3での判定例を示す。
【数84】
【0124】
次に、式(77)よりL面固定極値主働土圧P
a0Lが演算される。なお、x
R=x=cot(ω
βR)である。
【0125】
数85に、Li=1、Ri=3でのL面固定極値主働土圧P
a0Lの計算例を示す。
【数85】
【0126】
※※(計算手段−両面固定主働土圧P
a0LRの演算)※※
次に、式(80)より、両面固定主働土圧P
a0LRが演算される。
数86に、Li=1、Ri=3での両面固定主働土圧P
a0LRの計算例を示す。なお、t
1Rおよびcotξ
Rは、L面固定極値点x
Rの計算時に演算されたt
1Rおよびcotξ
Rを利用する。また、ω
βR=ω
0βRi=ω
0Ri−β
Riとする。
【数86】
【0127】
※※(計算手段−基本主働土圧の最大値P
aMAXの算出)※※
次に、各区間との組み合わせによる各主働土圧の演算結果に基づいて、基本主働土圧の最大値P
aMAXが演算され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
基本主働土圧の最大値P
aMAXは、各組合せによって演算される極値主働土圧P
a0の最大値と、各組合せによって演算されるL面固定極値主働土圧P
aLの最大値と、各組合せによって演算されるR面固定極値主働土圧P
aRの最大値の、それら3つの値の最大値として演算される。すなわち、基本主働土圧の最大値P
aMAXは、数87より演算される。
また、各主働土圧を演算するために用いたパラメータ(例えば、ω
βL、ω
βR、Tcosθ、L面側の基準粘着力c
0L、定数φ
θβLi、L面側の基準水平荷重t
0L、R面側の基準水平荷重t
0R、定数水平荷重t
0A、)が抽出され、その結果がディスプレイの画面に表示される。なお、各主働土圧の演算時にTcosθが演算されていない場合には、Tcosθは式(62)より演算される。
【数87】
【0128】
実施例1の演算結果は
図20に示す結果がディスプレイの画面に表示される。
数88に、基本主働土圧の最大値P
aMAXの計算例を示す。
【数88】
【0129】
※(計算手段−P
aY回転座標系方向角Δ
PaYおよびL面粘着力による傾角Δ
Lの算出)※
また、式(85)よりP
aY回転座標系方向角Δ
PaYが演算され、式(84)よりL面粘着力による傾角Δ
Lが演算され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
P
aY回転座標系方向角Δ
PaYおよびL面粘着力による傾角Δ
Lおよび後記のL面に作用する主働土圧P
aYの演算には、基本主働土圧の最大値P
aMAXおよび基本主働土圧の最大値P
aMAXを演算するために用いたパラメータ(ω
βL、ω
βR、Tcosθ、L面側の基準粘着力c
0Li、定数φ
θβLi)を用いて演算される。
実施例1では、P
aY回転座標系方向角Δ
PaYおよびL面粘着力による傾角Δ
Lは、
図21(a)に示す結果がディスプレイの画面に表示される。
数89に、P
aY回転座標系方向角Δ
PaYの計算例およびL面粘着力による傾角Δ
Lの計算例を示す。
【数89】
【0130】
※※(すべり形態の判定)※※
次に、すべり形態が
図9のフローに従い判定され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
実施例1では擁壁の構造形式が片持ちばり式擁壁であるため、
図21(a)に示すすべり形態の結果がディスプレイの画面に表示される。
【0131】
※※(計算手段−L面に作用する主働土圧P
aYの算出)※※
次に、式(86)よりL面に作用する主働土圧P
aYが演算され、式(87)よりL面に作用する主働土圧の水平方向成分P
aYHが演算され、式(88)よりL面に作用する主働土圧の鉛直方向成分P
aYVが演算され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
実施例1では、
図21(a)に示す結果がディスプレイの画面に表示される。
数90に、L面に作用する主働土圧P
aYおよびL面に作用する主働土圧の水平方向成分P
aYHおよびL面に作用する主働土圧の鉛直方向成分P
aYVの計算例を示す。
【数90】
【0132】
※※(評価手段)※※
次に、以上の結果に基づいて、擁壁の安全性について判定される。この演算方法は、従来の安定計算の演算方法と変わらない。これは周知の演算により確かめることができる。
また、判定の結果、基準を満たす場合には「OK」がディスプレイの画面に表示され、基準を満たさない場合には「NG」がディスプレイの画面に表示される。
【0133】
実施例1では、
図21(b)に示す結果となる。実施例1では「転倒」「滑動」「地盤支持」について照査している。即ち、「転倒」に対する検討は、偏心距離eが許容値(実施例1では、B/6)の範囲に納まっているか否かにより判定され、基準を満たすため「OK」がディスプレイの画面に表示される。「滑動」に対する検討は、値F
Sが許容値(実施例1では、1.5)以上であるか否かにより判定され、基準を満たすため「OK」がディスプレイの画面に表示される。「地盤支持」に対する検討は、値q
1及びq
2が許容支持力(実施例1では、200kN/m2)以下であるか否かにより判定され、基準を満たすため「OK」がディスプレイの画面に表示される。この結果から、「転倒」「滑動」「地盤支持」の全てにおいて基準を満たしているため、実施例1の擁壁は安全性を確保できると判定され、総合評価の欄に「OK」がディスプレイの画面に表示される。
【0134】
また、計算結果としてディスプレイの画面には、基本主働土圧P
aとすべり面の角度の関係を示したグラフが表示される。グラフは、L面に作用する基本主働土圧P
aとすべり面の角度の関係を示したグラフとしてもよい。すべり面と地表面が交差する点とその点でのすべり面の角度から算出される土圧との関係を表したグラフとしてもよい。擁壁形状、地表面形状、荷重状況およびすべり面を示した斜面断面図と前記のグラフを重ねて表示する構成としてもよい。
【0135】
実施例1では、
図21(c)に示すグラフがディスプレイの画面に表示される。
図21(c)のグラフは、R面と地表面が交差する点とその点でのすべり面の角度から算出される基本主働土圧P
aとの関係を表したグラフに、現況の地表面形状(地盤線)と基本主働土圧P
aが最大となるときのすべり面を重ねて表示したものである。
グラフは斜面の変化点をより細かくすれば、土圧とすべり角の関係を示した曲線が滑らかな曲線で表現でき、例えば、実施例1と全く同じ入力条件で斜面の地形寸法を0.5m間隔に細分すれば
図21(c)に示すグラフは
図22に示すグラフのように滑らかな曲線で表現できるため、擁壁の安全性評価のアプリケーションプログラムの指令によりコンピュータのCPUが演算処理を実行することによって、入力された擁壁背面の地形寸法を細分化して土圧を演算し、グラフに滑らかな曲線を描かせる構成としてもよい。
【実施例2】
【0136】
図23〜
図30を参照して、実施例2について説明する。
実施例2では、擁壁の形状が擁壁の形状が
図14のような重力式の構造物の場合での計算例を説明する。
【0137】
※※(取得手段)※※
実施例2での入力画面について説明する。
まず、擁壁の形状情報の入力画面において、擁壁の形状情報が実施例1と同様にしてマウスキーボード等の入力装置を使ってコンピュータに入力される。
実施例2では、
図23(a)に示す擁壁の形状情報が入力される。したがって、実施例2の擁壁の形状は、
図23(b)で示すような台形形状となる。擁壁高Hについては、H1+H2+H3の計算結果としてH=4.00(m)がディスプレイの画面に表示される。また、底面幅Bについては、B1+B2+B3+B4+B5の計算結果としてB=2.40(m)がディスプレイの画面に表示される。また、すべり面基点SPのX座標X
SPについては、X
SP=B1+B3+B5=2.40(m)がディスプレイの画面に表示され、すべり面基点SPのY座標Y
SPについては、Y
SP=0.00(m)がディスプレイの画面に表示される。また、擁壁の背面側の傾斜角αについては、arctan(B3÷H)の計算結果として、α=0.46365(rad)がディスプレイの画面に表示される。
【0138】
次に、擁壁の材料情報および擁壁背面の土質情報および支持地盤の情報の入力画面において、擁壁の材料情報および擁壁背面の土質情報および支持地盤の情報が実施例1と同様にしてマウスキーボード等の入力装置を使って入力される。
実施例2では、
図24に示す擁壁の材料情報および擁壁背面の土質情報および支持地盤の情報が入力される。
【0139】
次に、擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報の入力画面において、擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報が実施例1と同様にしてマウスキーボード等の入力装置を使って入力される。
実施例2では、
図25に示す擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報が入力される。また、擁壁と地表面の接点のX座標X
GPについては、
図23(a)のB1、B2、B4の値を利用して、X
GP=B1+B2+B4=0.40(m)がディスプレイの画面に表示され、擁壁と地表面の接点のY座標Y
GPについては、
図16(a)のHの値を利用して、Y
GP=4.00(m)がディスプレイの画面に表示される。
【0140】
次に、その他荷重情報の入力画面において、その他荷重情報が実施例1と同様にしてマウスキーボード等の入力装置を使って入力される。
実施例2では、
図26に示すその他荷重情報が入力される。
また、鉛直荷重低減係数k
V’については、1−k
Vの計算結果としてk
V’=1がディスプレイの画面に表示される。また、地震力合成角θについては、arctan(k
H÷k
V’)の計算結果としてθ=0.22607(rad)がディスプレイの画面に表示される。
【0141】
※※(計算手段−各区間での基本条件整理)※※
続いて、擁壁に作用する背面土からの土圧を計算するために、入力されたデータに基づいて、基本条件の演算が実施例1と同様にして実行される。
実施例2の演算結果は
図27に示す結果となる。
数91に、i=5での相対座標値X
5、相対座標値Y
5、斜面勾配β
5、境界角ω
05、斜面勾配H
5’、定数φ
θβL5、定数φ
θβR5、基準鉛直荷重p
05、L面側の基準粘着力c
0L5、R面側の基準粘着力c
0R5、基準水平荷重t
05、W
AM5’、W
AE5、ΣP
V5’、定数鉛直荷重W
A5’、t
AM5’、t
AE5、ΣP
H5’、定数水平荷重t
0A5’の計算例を示す。
【数91】
【0142】
※※(計算手段−各区間との組み合わせによる各主働土圧と各極値点の演算)※※
続いて、入力されたデータおよび基本条件の演算結果に基づいて、実施例1と同様にして各区間との組み合わせによる各主働土圧と各極値点の演算が実行される。
実施例2の、Li=2での演算結果は
図28に示す結果となる。
【0143】
※※(計算手段−定数鉛直荷重W
Aおよび定数水平荷重t
0Aの演算)※※
定数鉛直荷重W
Aおよび定数水平荷重t
0Aが実施例1と同様にして演算される。
数92に、Li=2、Ri=5での定数鉛直荷重W
A(2、5)および定数水平荷重t
0A(2、5)の計算例を示す。
【数92】
【0144】
※※(計算手段−極値点X
Rおよび極値点Y
Lの演算)※※
次に、前記の本発明の反復法のアルゴリズムを用いて、数1および数2よりω
βL(ω
βL=arccot(Y
L))およびω
βR(ω
βR=arccot(X
R))が実施例1と同様にして演算される。
実施例では数1にω
βR=ω
0βRi=ω
0R−β
Riの初期値を与える。
数93および数94に、Li=2、Ri=5でのω
βL(2、5)およびω
βR(2、5)の計算例を示す。
【数93】
【数94】
【0145】
実施例2では、前記の反復計算で得られる小数点下5桁まで表示させたω
βLまたは前記計算で得られる小数点下5桁まで表示させたω
βRの解について、反復計算時にそれぞれ2回同じ数値が得られた場合に反復計算が止まる。
よって、ω
βL(2,5)に2.22138(rad)、ω
βR(2,5)に0.52267(rad)を得る。
【0146】
また、L面の角度ω
LおよびR面の角度ω
Rが検討区間内に存在するか実施例1と同様にして判定される。
数95に、Li=2、Ri=5での判定式の計算例を示す。
【数95】
【0147】
※※(計算手段−極値主働土圧P
a0の演算)※※
次に、極値主働土圧P
a0が実施例1と同様にして演算される。
数96に、Li=2、Ri=5での極値主働土圧P
a0の計算例を示す。
【数96】
【0148】
※※(計算手段−R面固定極値主働土圧P
a0Rの演算)※※
次に、R面固定極値主働土圧P
a0Rを演算するために、R面固定極値点y
Lが実施例1と同様にして演算される。
また、演算されたω
βL=arccot(y
L)を用いて、L面の角度ω
L=ω
βL−β
Liが所定の範囲内にあるか実施例1と同様にして判定される。
実施例2では実施例1と同様に、極値点X
Rおよび極値点Y
Lの解析に際して初期値をω
βR=ω
0βRi=ω
0Ri−β
Riとしていることから、R面固定極値点y
Lおよびω
βL=arccot(y
L)は1サイクル 1/2回目に式(251)および式(252)で既に演算済みであるため、式(252)の値を用いて式(187)での判定が実行される。
数97に、Li=2、Ri=5での判定例を示す。
【数97】
【0149】
次に、R面固定極値主働土圧P
a0Rが実施例1と同様にして演算される。
数98に、Li=2、Ri=5でのR面固定極値主働土圧P
a0Rの計算例を示す。
【数98】
【0150】
※※(計算手段−L面固定極値主働土圧P
a0Lの演算)※※
次に、L面固定極値主働土圧P
a0Lを演算するために、数2よりL面固定極値点x
Rが実施例1と同様にして演算される。
数99に、Li=2、Ri=5でのω
βR=arccot(x
R)の計算例を示す。
【数99】
【0151】
また、演算されたω
βRを用いて、R面の角度ω
R=ω
βR+β
Riが所定の範囲内にあるか実施例1と同様にして判定される。
数100に、Li=2、R
i=5での判定例を示す。
【数100】
【0152】
次に、L面固定極値主働土圧P
a0Lが実施例1と同様にして演算される。
数101に、Li=2、Ri=5でのL面固定極値主働土圧P
a0Lの計算例を示す。
【数101】
【0153】
※※(計算手段−両面固定主働土圧P
a0LRの演算)※※
次に、両面固定主働土圧P
a0LRが実施例1と同様にして演算される。
数102に、Li=2、Ri=5での両面固定主働土圧P
a0LRの計算例を示す。なお、t
1Rおよびcotξ
Rは、L面固定極値点x
Rの計算時に演算されたt
1Rおよびcotξ
Rを利用する。また、ω
βR=ω
0βRi=ω
0Ri−β
Riとする。
【数102】
【0154】
※※(計算手段−基本主働土圧の最大値P
aMAXの算出)※※
次に、各区間との組み合わせによる各主働土圧の演算結果に基づいて、基本主働土圧の最大値P
aMAXが実施例1と同様にして演算され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
また、各主働土圧を演算するために用いたパラメータが実施例1と同様にしてディスプレイの画面に表示される。
実施例2の演算結果は
図29に示す結果がディスプレイの画面に表示される。
数103に、基本主働土圧の最大値P
aMAXの計算例を示す。
【数103】
【0155】
※※(計算手段−P
aY回転座標系方向角Δ
PaYおよびL面粘着力による傾角の算出)※※
また、P
aY回転座標系方向角Δ
PaYおよびL面粘着力による傾角Δ
Lが実施例1と同様にして演算され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
実施例2では、P
aY回転座標系方向角Δ
PaYおよびL面粘着力による傾角Δ
Lは、
図30(a)に示す結果がディスプレイの画面に表示される。
数104に、P
aY回転座標系方向角Δ
PaYの計算例およびL面粘着力による傾角Δ
Lの計算例を示す。
【数104】
【0156】
※※(すべり形態の判定)※※
次に、すべり形態が実施例1と同様にして判定され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
実施例2では擁壁の構造形式が重力式擁壁であるため、
図9のフローに従い、数43に示す式で判定され、
図30(a)に示すすべり形態の結果がディスプレイの画面に表示される。
数105に、実施例2での計算例を示す。
【数105】
【0157】
※※(計算手段−L面に作用する主働土圧P
aYの算出)※※
次に、L面に作用する主働土圧P
aYおよびL面に作用する主働土圧の水平方向成分P
aYHおよびL面に作用する主働土圧の鉛直方向成分P
aYVが実施例1と同様にして演算され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
実施例2では、
図30(a)に示す結果がディスプレイの画面に表示される。
数106に、L面に作用する主働土圧P
aYおよびL面に作用する主働土圧の水平方向成分P
aYHおよびL面に作用する主働土圧の鉛直方向成分P
aYVの計算例を示す。
【数106】
【0158】
※※(評価手段)※※
次に、以上の結果に基づいて、擁壁の安全性について判定される。この演算方法は、従来の安定計算の演算方法と変わらない。これは周知の演算により確かめることができる。
また、判定の結果、基準を満たす場合には「OK」がディスプレイの画面に表示され、基準を満たさない場合には「NG」がディスプレイの画面に表示される。
実施例2では、
図30(b)に示す結果となる。実施例2では「転倒」「滑動」「地盤支持」について照査している。即ち、「転倒」に対する検討は、偏心距離eが許容値(実施例2では、B/3)の範囲に納まっているか否かにより判定され、基準を満たすため「OK」がディスプレイの画面に表示される。「滑動」に対する検討は、値F
Sが許容値(実施例2では、1.2)以上であるか否かにより判定され、基準を満たさないため「NG」がディスプレイの画面に表示される。「地盤支持」に対する検討は、値q
1及びq
2が許容支持力(実施例2では、450kN/m2)以下であるか否かにより判定され、基準を満たすため「OK」がディスプレイの画面に表示される。この結果から、「転倒」「滑動」「地盤支持」のいずれかが基準を満たさないため、実施例2の擁壁は安全性を確保できないと判定され、総合評価の欄に「NG」がディスプレイの画面に表示される。よって、擁壁をより安全側に変更(例えば、擁壁の天端厚を厚く変更して配置、有効重量W’を減らすため擁壁背面の地表面を掘削して配置)して再度評価を行う必要がある。
【0159】
また、計算結果としてディスプレイの画面には、基本主働土圧P
aとすべり面の角度の関係を示したグラフが実施例1と同様にして表示される。
実施例2では、
図30(c)に示すグラフがディスプレイの画面に表示される。
【実施例3】
【0160】
図23、
図25〜
図29および
図31〜
図34を参照して、実施例3について説明する。
実施例3では、実施例2と同じ入力条件(擁壁背面の壁面摩擦角δを除く)で、擁壁背面に「1面直線すべり」が発生する場合での計算例を説明する。
【0161】
※※(取得手段)※※
実施例3での入力画面について説明する。
まず、擁壁の形状情報の入力画面において、擁壁の形状情報が実施例2と同様にしてマウスキーボード等の入力装置を使ってコンピュータに入力される。
実施例3では、
図23(a)に示す実施例2と同じ擁壁の形状情報が入力される。
次に、擁壁の材料情報および擁壁背面の土質情報および支持地盤の情報の入力画面において、擁壁の材料情報および擁壁背面の土質情報および支持地盤の情報が実施例2と同様にしてマウスキーボード等の入力装置を使って入力される。
実施例3では、
図31に示す擁壁の材料情報および擁壁背面の土質情報および支持地盤の情報が入力される。なお、
図31の入力された情報は、実施例2での
図24に示す入力された情報に比べ、擁壁背面の壁面摩擦角δ以外は同じ値である。
次に、擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報の入力画面において、擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報が実施例2と同様にしてマウスキーボード等の入力装置を使って入力される。
実施例3では、
図25に示す実施例2と同じ擁壁背面の地形情報および擁壁背面の地形に作用する荷重情報が入力される。
次に、その他荷重情報の入力画面において、その他荷重情報が実施例2と同様にしてマウスキーボード等の入力装置を使って入力される。
実施例3では、
図26に示す実施例2と同じその他荷重情報が入力される。
【0162】
※※(計算手段−各区間での基本条件整理)※※
続いて、擁壁に作用する背面土からの土圧を計算するために、入力されたデータに基づいて、基本条件の演算が実施例2と同様にして実行される。
実施例3の演算結果は
図27に示す実施例2と同じ結果となる。
※※(計算手段−各区間との組み合わせによる各主働土圧と各極値点の演算)※※
続いて、入力されたデータおよび基本条件の演算結果に基づいて、実施例2と同様にして各区間との組み合わせによる各主働土圧と各極値点の演算が実行される。
実施例3の、Li=2での演算結果は
図28に示す実施例2と同じ結果となる。
※※(計算手段−基本主働土圧の最大値P
aMAXの算出)※※
次に、各区間との組み合わせによる各主働土圧の演算結果に基づいて、基本主働土圧の最大値P
aMAXが実施例2と同様にして演算される。
実施例3の演算結果は
図29に示す実施例2と同じ結果となる。
※※(計算手段−P
aY回転座標系方向角Δ
PaYおよびL面粘着力による傾角の算出)※※
また、P
aY回転座標系方向角Δ
PaYおよびL面粘着力による傾角Δ
Lが実施例2と同様にして演算される。
実施例3では、P
aY回転座標系方向角Δ
PaY、L面粘着力による傾角Δ
Lは、
図30(a)に示す実施例2と同じ結果となる。
【0163】
※※(すべり形態の判定)※※
次に、すべり形態が実施例2と同様にして判定され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
実施例3では擁壁の構造形式が重力式擁壁であるため、
図9のフローに従い、数43に示す式で判定され、
図34(a)に示すすべり形態の結果がディスプレイの画面に表示される。
数107に、実施例3での計算例を示す。
【数107】
【0164】
※※(計算手段−各主働土圧と各極値点の演算)※※
判定結果に従い、1面直線すべりモードでの演算が実行される。
まず、入力されたデータおよび基本条件の演算結果に基づいて、1面直線すべりモードでの定数鉛直荷重W
A、1面直線すべりモードでの定数水平荷重t
0A、1面直線すべりモードでのL面固定極値点x
R、1面直線すべりモードでのL面固定極値主働土圧P
a0L、1面直線すべりモードでの両面固定主働土圧P
a0LRが演算される。ここで、1面直線すべりモードでのL面固定極値主働土圧P
a0L、1面直線すべりモードでの両面固定主働土圧P
a0LRを1面直線すべりモードでの各主働土圧と称する。
なお、「1面直線すべり」ではL面が固定されているため、極値点X
R、極値点Y
L、極値主働土圧P
a0、R面固定極値点y
L、R面固定極値主働土圧P
a0Rは、計算が不要である。
実施例3での演算結果は、
図32に示す結果となる。
なお、実施例3では、1面直線すべりモードでの定数鉛直荷重W
Aは基本条件の演算時に定数鉛直荷重W
A’として既に算出されており、また、1面直線すべりモードでの定数水平荷重t
0Aは基本条件の演算時に定数鉛直荷重t
0A’として既に算出されているため、それらの計算が省略できる。
【0165】
※※(計算手段−1面直線すべりモードでのL面固定極値主働土圧P
a0Lの演算)※※
まず、1面直線すべりモードでのL面固定極値主働土圧P
a0Lが演算されるために、数108より1面直線すべりモードでのL面固定極値点x
Rが演算される。
【数108】
【0166】
数109に、i=5でのω
βR=arccot(x
R)の計算例を示す。
【数109】
【0167】
また、演算されたω
βRを用いて、R面の角度ω
R=ω
βR+β
iが式(309)の適用範囲にあるか判定される。式(309)を満たさない場合、「解なし」と判定され、後記の1面直線すべりモードでのL面固定極値主働土圧P
a0L’は計算されない。
【数110】
【0168】
数111に、i=5での判定例を示す。
【数111】
【0169】
次に、式(311)より1面直線すべりモードでのL面固定極値主働土圧P
a0Lが演算される。
【数112】
【0170】
式(312)に、i=5での1面直線すべりモードでのL面固定極値主働土圧P
a0Lの計算例を示す。
【数113】
【0171】
※※(計算手段−両面固定主働土圧P
a0LRの演算)※※
次に、式(313)より1面直線すべりモードでの両面固定主働土圧P
a0LRが演算される。
【数114】
【0172】
式(314)に、i=5での1面直線すべりモードでの両面固定主働土圧P
a0LRの計算例を示す。なお、t
1Riおよびcotξ
Riは、1面直線すべりモードでのL面固定極値点x
Rの計算時に演算されたt
1Riおよびcotξ
Riを利用する。また、ω
βR=ω
0βRi=ω
0i−β
iとする。
【数115】
【0173】
※※(計算手段−基本主働土圧の最大値P
aMAXの算出)※※
次に、1面直線すべりモードでの各主働土圧の演算結果に基づいて、1面直線すべりモードでの基本主働土圧の最大値P
aMAXが演算され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
「1面直線すべり」基本主働土圧の最大値P
aMAXは、各区間番号での1面直線すべりモードでのL面固定極値主働土圧P
a0Lの最大値と各区間番号での1面直線すべりモードでの両面固定主働土圧P
a0LRの最大値の、それら2つの値の最大値として演算される。すなわち、「1面直線すべり」基本主働土圧の最大値P
aMAXは、数116より演算される。
また、1面直線すべりモードでの各主働土圧を演算するために用いたパラメータ(例えば、ω
βR、Tcosθ、L面側の基準粘着力c
0Li、定数φ
θβLi、基準水平荷重t
0i、定数水平荷重t
0Ai’、)が抽出され、その結果がディスプレイの画面に表示される。なお、各主働土圧の演算時にTcosθが演算されていない場合には、Tcosθは式(62)より演算される。
【数116】
【0174】
実施例3の演算結果は
図33に示す結果がディスプレイの画面に表示される。
数117に、1面直線すべりモードでの基本主働土圧の最大値P
aMAXの計算例を示す。
【数117】
【0175】
※(計算手段−P
aY回転座標系方向角(φ
θβL’+Δ
L)およびL面粘着力による傾角Δ
Lの算出)※
また、式(111)より1面直線すべりモードでのP
aY回転座標系方向角(φ
θβL’+Δ
L)が演算され、1面直線すべりモードでのL面粘着力による傾角Δ
Lが(φ
θβL’+Δ
L)−φ
θβL’で演算され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
1面直線すべりモードでのP
aY回転座標系方向角(φ
θβL’+Δ
L)および後記の1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧P
aYの演算には、1面直線すべりモードでの基本主働土圧の最大値P
aMAXとその値を演算するために用いたパラメータ(ω
βR、Tcosθ、L面側の基準粘着力c
0Li、定数φ
θβLi)を用いて演算される。
実施例3では、1面直線すべりモードでのP
aY回転座標系方向角(φ
θβL’+Δ
L)および1面直線すべりモードでのL面粘着力による傾角Δ
Lは、
図34(a)に示す結果がディスプレイの画面に表示される。
数118に、1面直線すべりモードでのP
aY回転座標系方向角(φ
θβL’+Δ
L)の計算例および1面直線すべりモードでのL面粘着力による傾角Δ
Lの計算例を示す。
【数118】
【0176】
※※(計算手段−L面に作用する主働土圧P
aYの算出)※※
次に、式(112)より1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧P
aYが演算され、式(113)より1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧の水平方向成分P
aYHが演算され、式(114)より1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧の鉛直方向成分P
aYVが演算され、その結果がディスプレイの画面に表示される。
実施例3では、
図34(a)に示す結果がディスプレイの画面に表示される。
数119に、1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧P
aYおよび1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧の水平方向成分P
aYHおよび1面直線すべりモードでのL面に作用する主働土圧の鉛直方向成分P
aYVの計算例を示す。
【数119】
【0177】
※※(評価手段)※※
次に、以上の結果に基づいて、擁壁の安全性について判定される。この演算方法は、従来の安定計算の演算方法と変わらない。これは周知の演算により確かめることができる。
また、判定の結果、基準を満たす場合には「OK」がディスプレイの画面に表示され、基準を満たさない場合には「NG」がディスプレイの画面に表示される。
実施例3では、
図34(b)に示す結果となる。実施例3では「転倒」「滑動」「地盤支持」について照査している。即ち、「転倒」に対する検討は、偏心距離eが許容値(実施例3では、B/3)の範囲に納まっているか否かにより判定され、基準を満たさないため「NG」がディスプレイの画面に表示される。「滑動」に対する検討は、値F
Sが許容値(実施例3では、1.2)以上であるか否かにより判定され、基準を満たさないため「NG」がディスプレイの画面に表示される。「地盤支持」に対する検討は、値q
1及びq
2が許容支持力(実施例3では、450kN/m2)以下であるか否かにより判定され、基準を満たさないため「NG」がディスプレイの画面に表示される。この結果から、「転倒」「滑動」「地盤支持」のいずれかが基準を満たさないため、実施例3の擁壁は安全性を確保できないと判定され、総合評価の欄に「NG」がディスプレイの画面に表示される。よって、擁壁をより安全側に変更(例えば、擁壁と建物(上載荷重)との位置(離れ具合)を調整して配置、擁壁の底面長さを長く変更して配置)して再度評価を行う必要がある。
【0178】
また、計算結果としてディスプレイの画面には、基本主働土圧P
aとすべり面の角度の関係を示したグラフが実施例2と同様にして表示される。
実施例2では、
図34(c)に示すグラフがディスプレイの画面に表示される。