が、デューティ比50%に対応するパルス幅を含むセンターレンジより上側に設けられる上側レンジおよびセンターレンジより下側に設けられる下側レンジの一方に含まれる状態が所定の判定時間持続すると異常状態と判定する。
前記異常判定回路はさらに、測定された前記パルス幅が、前記センターレンジに対して前記第1レンジと反対側に隣接する第2レンジに含まれる状態が所定の判定時間持続すると異常状態と判定することを特徴とする請求項1に記載のオーディオ回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、
図1のオーディオシステム300について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。すなわち、
図1のオーディオシステム300において、PWM信号発生回路306の内部において不具合が生じた場合、たとえその入力にDC成分が含まれていなかったとしても、負荷312の両端間にDC信号が印加される状況が生じうる。
【0008】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、DC出力を検出可能なオーディオ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様はオーディオ回路に関する。オーディオ回路は、デジタルオーディオ信号をパルス幅変調(PWM)信号に変換するPWM信号生成回路と、PWM信号のパルス幅を測定するパルス幅測定回路と、測定されたパルス幅が、デューティ比50%に対応するパルス幅を含むセンターレンジと隣接する第1レンジに含まれる状態が所定の判定時間持続すると異常状態と判定する異常判定回路と、を備える。
【0010】
この態様によると、DC信号が出力される異常状態を検出できる。
【0011】
前記異常判定回路はさらに、測定された前記パルス幅が、センターレンジに対して第1レンジと反対側に隣接する第2レンジに含まれる状態が所定の判定時間持続すると異常状態と判定してもよい。
【0012】
パルス幅測定回路は、PWM信号の前記パルス幅をクロック信号を利用してカウントするパルス幅カウンタを含んでもよい。異常判定回路は、PWM信号の周期ごとに、測定されたパルス幅が第1レンジを維持したときにカウントを進め、それ以外のときにリセットされる異常検出カウンタを含んでもよい。異常判定回路は、異常検出カウンタのカウント値が所定値に達すると、異常状態と判定してもよい。
【0013】
センターレンジの上限および下限は、外部から設定可能であってもよい。また判定時間は外部から設定可能であってもよい。
【0014】
PWM信号生成回路は、デジタルオーディオ信号をオーバーサンプリングするオーバーサンプリング回路と、オーバーサンプリング回路の出力をΔΣ変調するΔΣ変調器と、ΔΣ変調器の出力をPWM信号に変換するPWM変換回路と、を含んでもよい。
【0015】
オーディオ回路は、PWM信号生成回路の前段に設けられたハイパスフィルタをさらに備えてもよい。これにより、PWM信号生成回路からDC成分を除去できるとともに、ハイパスフィルタに不具合が生じた場合は、異常判定回路によってその異常を検出でき、2重の保護が図られる。
【0016】
オーディオ回路は、異常状態と判定されると、動作を停止してもよい。
オーディオ回路は、異常状態と判定されると、異常状態を示す信号を外部に出力してもよい。これにより外部のプロセッサに異常を通知し、適切な処理を促すことができる。
【0017】
オーディオ回路は、ひとつの基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが基板の外部に設けられていてもよい。
回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0018】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、上述のいずれかのオーディオ回路を備える。
【0019】
本発明の別の態様は車載オーディオシステムに関する。車載オーディオシステムは、上述のいずれかのオーディオ回路を備える。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明のある態様によれば、DC出力を検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
図2は、実施の形態に係るオーディオ回路100を備えるオーディオシステム200のブロック図である。オーディオシステム200は、BTL形式(差動形式)の出力段を有し、具体的にはオーディオ回路100、D級アンプ202P,202N、フィルタ204P,204N、電気音響変換素子206を備える。
【0026】
電気音響変換素子206は、スピーカやヘッドホンなどであり、アナログオーディオ信号を音響信号に変換する。
【0027】
オーディオ回路100は、デジタルオーディオ信号S
INを受け、パルス幅変調(PWM)信号S
PWMに変換する。D級アンプ202PおよびD級アンプ202Nには、相補的なデューティ比(パルス幅T
PW)を有するPWM信号S
PWMおよび#S
PWMが供給される。D級アンプ202P,202Nはそれぞれ、PWM信号S
PWMおよび#S
PWMに応じたパルス信号を発生する。フィルタ204P,204Nは、対応するD級アンプ202P,202Nの出力を平滑化する。電気音響変換素子206の両端には、差動のアナログ駆動信号V
DRVP,V
DRVNが印加される。
【0028】
オーディオ回路100は、PWM信号生成回路110、パルス幅測定回路120および異常判定回路130を備える。PWM信号生成回路110は、デジタルオーディオ信号S
INを受け、PWM信号S
PWMに変換する。パルス幅測定回路120は、PWM信号S
PWMの周期毎のパルス幅T
PWを測定し、測定したパルス幅T
PWを示すパルス幅データD
PWを出力する。
【0029】
パルス幅測定回路120は、D級アンプ202Pに供給されるPWM信号S
PWM(もしくは202Nに供給される#S
PWM)のパルス幅T
PWを測定してもよいし、PWM信号S
PWM(#S
PWM)のパルス幅T
PWに応じたパルス幅(T
PW’とする)を有するPWM信号生成回路110の内部信号のパルス幅T
PW’を測定してもよい。また、測定するパルス幅T
PW(もしくはT
PW’)は、ハイレベル区間の長さであってもよいし、ローレベル区間の長さであってもよい。
【0030】
異常判定回路130は、測定されたパルス幅T
PW’が、
図3に示すデューティ比50%に対応するパルス幅T
50%を含むセンターレンジRNG
CENTERと隣接する第1レンジに含まれる状態が所定の判定時間τ
DET1持続すると異常状態と判定する。
【0031】
また異常判定回路130は、測定されたパルス幅T
PWが、センターレンジRNG
CENTERに対して第1レンジと反対側に隣接する第2レンジに含まれる状態が所定の判定時間τ
DET2持続すると異常状態と判定する。
【0032】
以下、第1レンジ、第2レンジのうち、センターレンジRNG
CENTERの上側の一方を上側レンジRNG
UPPER、下側の一方を下側レンジRNG
LOWERと称する。また本実施の形態では、2つの判定時間τ
DET1,τ
DET2は等しいものとする。
【0033】
異常判定回路130は、DC出力の異常状態を検出すると、異常検出信号DCOUT_ERRをアサートする。オーディオシステム200は、異常検出信号DCOUT_ERRのアサートに応答して、動作停止する。たとえば異常検出信号DCOUT_ERRのアサートに応じて、PWM信号生成回路110およびD級アンプ202の動作を完全に停止させてもよい。またオーディオ回路100は、異常状態を検出すると、フラグ信号FLGをアサートし、外部のプロセッサ等に通知する。これによりシステム全体として保護処理を実行することができる。
【0034】
以上がオーディオシステム200の構成である。続いてその動作を説明する。
図3は、
図2のオーディオ回路100の動作を示す波形図である。S
AUDIOは、デジタルオーディオ信号S
INに応じたアナログオーディオ波形を表す。パルス幅T
PWは、デューティ比に換算した値で表される。
【0035】
時刻t
0より前において回路は正常に動作しており、PWM信号生成回路110が生成するPWM信号S
PWM,#S
PWMは、S
AUDIOの波形に応じたパルス幅(デューティ比)T
PWを有する。
【0036】
時刻t
0にPWM信号生成回路110において異常が発生し、PWM信号S
PWMのデューティ比がオーディオ波形S
AUDIOと無関係の一定値となる。この例では、パルス幅T
PWは、デューティ比30%に対応する値T
P×0.3となっている。T
PはPWM周期である。
【0037】
時刻t
0以降、パルス幅測定回路120が測定するパルス幅T
PWは、センターレンジRNG
CENTERを横切ることなく下側レンジRNG
LOWERに含まれる状態を維持する。この状態が判定時間τ
DET持続すると、時刻t
1にDC出力の異常検出信号DCOUT_ERRがアサートされる。
【0038】
以上がオーディオ回路100の動作波形図である。このオーディオ回路100によれば、オーディオ再生中に、PWM信号生成回路110の異常に起因するDC出力異常を検出できる。
【0039】
また、パルス幅T
PWが上側レンジRNG
UPPERにとどまり続けた場合にもDC出力の異常状態と判定できる。
【0040】
図4は、
図2のオーディオ回路100の動作を示す別の波形図である。
図4は、無音状態の動作であり、時刻t
0より前は正常状態を、時刻t
0より後ろは異常状態を示す。無音状態では、デジタルオーディオ信号S
INに応じたアナログオーディオ波形は、一定値を維持している。このとき、正常なPWM信号生成回路110が生成するPWM信号S
PWMのデューティ比は50%となる。このときパルス幅T
PWMはセンターレンジRNG
CENTERに含まれる。
【0041】
時刻t
0において、PWM信号生成回路110に異常が発生すると、PWM信号SPWMのパルス幅T
PWが、デューティ比50%の相当値T
P×0.5からオフセットする。この例では、T
PW=T
P×0.6にオフセットしている。時刻t
0以降、パルス幅T
PWは、上側レンジRNG
UPPERに含まれる状態を維持する。この状態が判定時間τ
DET持続すると、時刻t
1にDC出力の異常検出信号DCOUT_ERRがアサートされる。
【0042】
このオーディオ回路100によれば、無音状態において、PWM信号生成回路110の異常に起因するDC出力異常を検出できる。
【0043】
図5は、
図2のオーディオ回路100の動作を示すさらに別の波形図である。
図5は無音状態を表しており、時刻t
0より前は正常状態を、時刻t
0より後ろは異常状態を示す。
【0044】
時刻t
0より前に、PWM信号生成回路110の前段の回路は正常であり、オーディオ信号S
INが表すオーディオ波形は、センターレベル(DC値)を維持している。
【0045】
時刻t
0に、PWM信号生成回路110の前段の回路に異常が発生すると、オーディオ信号S
INが表すオーディオ波形は、センターレベル(DC値)から逸脱し、別の値に固定される。このとき、PWM信号S
PWMのパルス幅T
PWが、デューティ比50%の相当値T
P×0.5からオフセットする。この例では、T
PW=T
P×0.6にオフセットしている。時刻t
0以降、パルス幅T
PWは、上側レンジRNG
UPPERに含まれる状態を維持する。この状態が判定時間τ
DET持続すると、時刻t
1にDC出力の異常検出信号DCOUT_ERRがアサートされる。
【0046】
このオーディオ回路100によれば、無音状態において、PWM信号生成回路110の前段の回路で生ずるDCオフセットに起因するDC出力異常を検出できる。
【0047】
図6は、
図2のオーディオ回路100のさらに別の波形図である。時刻t
0以降、オーディオ波形には、本来、含まれるべきでない、可聴周波数帯域より低い超低周波数成分(<20Hz)が含まれている。超低周波成分の周波数をfとするとき、パルス幅T
PWは1/(2f)ごとに、センターレンジRNG
CENTERを横切ることなる。オーディオ回路100は、τ
DET<1/(2f)である場合に、異常状態と判定する。言い換えれば、オーディオ回路100は、f<1/2τ
DETの周波数成分が発生したときに、DC出力異常状態と判定することができる。たとえば10Hz以下の周波数成分を異常とする場合、τ
DET=50msとすればよく、20Hz以下の周波数成分を異常とする場合、τ
DET=25msとすればよい。
【0048】
本発明は、
図2の回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を容易、明確化するために、より具体的な構成例を説明する。
【0049】
図7は、オーディオ回路100の一実施例を示す回路図である。パルス幅測定回路120は、パルス幅カウンタ122を含む。パルス幅カウンタ122は、PWM信号S
PWMのパルス幅T
PWをクロック信号CLKを利用してカウントする。このクロック信号CLKは、PWM信号生成回路110と共用され、PWM信号生成回路110は、クロック信号CLKの周期を単位として、PWM信号S
PWMのパルス幅を制御する。
【0050】
一例としてデジタルオーディオ信号S
INは、48kHz、16ビットである。PWM信号生成回路110は、このオーディオ信号S
INを、384kHz、8ビットのPWM信号S
PWMに変換する。つまりPWM信号S
PWMの周期T
Pは、1/384kHzであり、PWM信号S
PWMのパルス幅T
PWの1階調(1LSB)は、T
P/2
8=T
P/256となる。クロック信号CLKの周期は、PWM信号S
PWMのパルス幅T
PWの1階調と等しい。
【0051】
パルス幅測定回路120の出力D
PWは、PWM信号S
PWMのパルス幅T
PWを、8ビット256階調で表したカウント値(0〜255)となる。
【0052】
異常判定回路130は、カウンタコントローラ132、異常検出カウンタ134、レジスタ136を含む。異常検出カウンタ134は、たとえばアップカウンタであり、カウンタコントローラ132からのアップ信号に応じてカウントアップし、カウンタコントローラ132からのリセット信号に応じてリセットされる。
【0053】
カウンタコントローラ132は、PWM信号の周期ごとに、測定されたパルス幅T
PW(D
PW)が上側レンジRNG
UPPERを維持したとき、または下側レンジRNG
LOWERを維持したときに、アップ信号UPを出力して異常検出カウンタ134のカウントを進め、それ以外のときにリセット信号RESETを出力して異常検出カウンタ134をリセットする。
【0054】
センターレンジRNG
CENTERの上限値および下限値は、外部から設定可能であり、レジスタ136は、上限値および下限値の設定値UPPER_LIMおよびLOWER_LIMを保持する。たとえばレジスタ136には、I
2C(Inter IC)バスを介して外部のマイコンから、設定値が書き込み可能となっている。
【0055】
カウンタコントローラ132は、パルス幅データD
PWがセンターレンジ、上側レンジ、下側レンジのいずれに含まれるかを判定する。そして、(i)センターレンジに含まれるとき、(ii)上側レンジから別のレンジへの遷移を検出したとき、(iii)下側レンジから別のレンジへの遷移を検出したときに、リセット信号RESETを出力する。
【0056】
カウンタコントローラ132はそれ以外の場合、つまり、直前のパルス幅データD
PWと現在のパルス幅データD
PWが両方、上側レンジに含まれるとき、または、直前のパルス幅データD
PWと現在のパルス幅データD
PWが両方、下側レンジに含まれるとき、アップ信号UPを出力する。
【0057】
たとえば、カウンタコントローラ132は、パルス幅データD
PWがいずれのレンジに含まれるかを示す判定値D
1を、次のサイクルまで保持するメモリを含む。このデータD
1は、パルス幅データD
PWがセンターレンジに含まれるとき値aを、上側レンジに含まれるときbを、下側レンジに含まれるときcをとる。そして、カウンタコントローラ132は、(i)メモリに格納される直前のサイクルの判定値D
1’がbであり、現在のサイクルの判定値D
1がbであるとき、または(ii)直前のサイクルの判定値D
1’がcであり、現在のサイクルの判定値D
1がcであるときに、アップ信号UPを出力する。
【0058】
異常判定回路130は、異常検出カウンタ134のカウント値が、判定時間τ
DETに応じた所定値TDETに達すると、異常状態と判定する。判定時間τ
DETは外部から設定可能であり、レジスタ136は、判定時間τ
DETの設定値TDETを保持する。たとえばレジスタ136には、I
2C(Inter IC)バスを介して外部のマイコンから、設定値TDETが書き込み可能となっている。
【0059】
図8は、
図7のオーディオ回路100における異常検出のフローチャートである。サイクルごとにパルス信号S
PWMのパルス幅T
PWが測定され(S100)、いずれのレンジに含まれるか判定される(S102)。そしてセンターレンジに含まれる場合(S104のY)、異常検出カウンタ134がリセットされ(S106)、S100に戻る。
【0060】
センターレンジに含まれない場合(S104のN)、上側レンジに含まれるか否かが判定される(S108)。そして現在のサイクルにおいて上側レンジに含まれ(S108のY)、かつ直前のサイクルも上側レンジに含まれる場合(S110のY)、異常検出カウンタ134のカウント値がインクリメント(カウントアップ)される(S112)。
【0061】
現在のサイクルにおいて上側レンジに含まれる場合であって(S108のY)、直前のサイクルは上側レンジに含まれない場合(S110のN)、異常検出カウンタ134のカウント値がリセットされる(S106)。
【0062】
現在のサイクルにおいて上側レンジに含まれない場合(S108のN)は、下側レンジに含まれるものとされる。この場合、直前のサイクルが下側レンジに含まれる場合(S114のY)、異常検出カウンタ134のカウント値がインクリメント(カウントアップ)される(S112)。直前のサイクルが下側レンジに含まれない場合(S114のN)、異常検出カウンタ134のカウント値がリセットされる(S106)。
【0063】
異常検出カウンタ134のインクリメント(S112)の結果、異常検出カウンタ134のカウント値が設定値TDETに達すると(S116のY)、異常判定S118がなされる。カウント値が設定値TDETに達していないとき(S116のN)、ステップS100に戻る。
【0064】
図9は、オーディオ回路100の一実施例を示すブロック図である。オーディオ回路100は、オーディオIC(Integrated Circuit)150に集積化されている。オーディオIC150は、オーディオ回路100に加えて、オーディオインタフェース回路152、DSP(Digital Signal ProcessorあるいはDigital Sound Processor)154、ハイパスフィルタ156を備える。オーディオインタフェース回路152は、外部の音源210から、デジタルオーディオ信号を受信する。DSP154は、オーディオインタフェース回路152が受信したデジタルオーディオ信号に、さまざまなデジタル信号処理を施す。たとえばデジタル信号処理は、デジタルボリューム制御、マルチバンドイコライジング処理、マルチバンドトーンコントロール処理、ラウドネス処理、バスブースト処理などが例示されるがその限りではない。ハイパスフィルタ156は、DSP154の出力信号から、直流成分を除去する。なお
図9には、1チャンネル分の構成が示されるが、実際には、チャンネル数分、同様の構成が設けられる。
【0065】
プロセッサ212は、オーディオシステム200を統括的に制御するコントローラである。プロセッサ212は、I
2Cバスなどのシリアルバスを介して、オーディオIC150のインタフェース回路158と接続されている。プロセッサ212は、DSP154の処理を指定する制御データ(再生、停止、早送りなどのコマンド、イコライザの周波数特性の設定値、ボリュームの設定値)などをオーディオIC150のレジスタ160に書き込む。また異常判定回路130における各種設定値も、プロセッサ212によってレジスタ160に書き込まれる。レジスタ160の一部は、
図7のレジスタ136に対応する。
【0066】
PWM信号生成回路110は、オーバーサンプリング回路112、ΔΣ変調器114、PWM変換回路116を含む。オーバーサンプリング回路112は、デジタルオーディオ信号S
INをオーバーサンプリングする。ΔΣ変調器114は、オーバーサンプリング回路112の出力をΔΣ変調する。PWM変換回路116は、ΔΣ変調器114の出力をPWM信号S
PWMに変換する。
【0067】
オーディオIC150にはフラグ出力端子(ピン)FLGが設けられており、異常が検出されると、フラグ出力端子FLGの電気的状態(オープン/プルダウン)を変化させる。フラグ出力端子FLGには、外部のプロセッサ212が接続される。フラグ出力端子FLGが異常を示す状態となると、オーディオシステム200の動作を停止させる。またオーディオIC150自身は、異常判定回路130が異常を検出すると、その動作を停止する。
【0068】
(用途)
オーディオ回路100の用途を説明する。
図10は、実施の形態に係るオーディオ回路を利用した車載オーディオシステムのブロック図である。
【0069】
車載オーディオシステム500Aは、4個のスピーカ240
FL,240
FR,240
RL,240
RRを備える。スピーカ240は、上述の電気音響変換素子206に相当する。
【0070】
音源502は、左右(LR)2チャンネルあるいはマルチチャンネルのデジタルオーディオ信号を出力する。オーディオ信号処理回路504は、
図9のオーディオIC150に相当し、音源502からデジタルオーディオ信号を受信し、PWM信号(S
PWM/#S
PWM)を出力する。各パワー出力段230は、D級アンプ202P,202Nおよびフィルタ204P,204Nを含み、PWM信号に応じて、対応するスピーカ240を駆動する。
【0071】
車載機器には、特に厳しい安全性、信頼性が要求されるところ、実施の形態に係るオーディオ回路100によるDC出力異常の検出機能によって、車載オーディオシステムのさらなる安全性、信頼性の向上が図られる。
【0072】
図11(a)〜(c)は、実施の形態に係るオーディオ回路100を利用した電子機器を示す図である。
図11(a)の電子機器はディスプレイ装置600である。ディスプレイ装置600は、ディスプレイパネル602に加えて、オーディオ信号処理回路604、パワー出力段230L,230R、スピーカ240L,240Rを備える。オーディオ信号処理回路604は、
図9のオーディオIC150に対応する。
【0073】
図11(b)の電子機器は、持ち運び可能な小型端末700であり、スマートホン、タブレットPC(Personal Computer)、ラップトップコンピュータ、オーディオプレイヤなどである。小型端末700は、ディスプレイ702、オーディオ信号処理回路704、ヘッドホン端子706、パワー出力段230L,230R、231L,231R、スピーカ240L,240Rを備える。パワーアンプ231L,232Rの出力はヘッドホン端子706を介して、ヘッドホン710と接続される。オーディオ信号処理回路704は、
図9のオーディオIC150に対応する。
【0074】
図11(c)の電子機器は、オーディオコンポーネント装置800である。オーディオコンポーネント装置800は、オーディオ信号処理回路804、パワー出力段230L,230Rを備える。パワー出力段230L,230Rは、スピーカケーブルを介して接続されるスピーカ240L,240Rを駆動する。
【0075】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0076】
(変形例1)
パルス幅測定回路120は、D級アンプ202Pの出力S
OUTP(もしくは202Nの出力S
OUTN)のパルス幅を測定してもよい。この場合、D級アンプ202P,202Nに起因するDC出力異常を検出できる。
【0077】
(変形例2)
図9において、オーディオIC150は、D級アンプ202Pおよび202Nと一体に集積化されてもよい。またオーディオIC150は、ハイパスフィルタ156より後段の回路を含み、DSP154は別のICであってもよい。
【0078】
(変形例3)
図9のオーディオIC150において、オーディオ回路100がDC出力異常を検出できるため、ハイパスフィルタ156は省略してもよい。この場合、回路面積を小さくできる。
【0079】
(変形例4)
実施の形態では、測定したパルス幅が上側レンジを持続した場合、下側レンジを持続した場合の両方を、DC出力異常と判定したがその限りではない。より処理を簡素化して、パルス幅が上側レンジを持続した場合のみをDC出力異常としてもよいし、下側レンジを持続した場合のみをDC出力異常としてもよい。
【0080】
(変形例5)
実施の形態では、オーディオIC150はDC異常検出時に自己停止したがその限りではなく、異常検出時の保護処理を、外部のコントローラ(プロセッサ)に委ねてもよい。