種々の不織布およびポリプロピレン系樹脂フィルムの双方が良好な接着性を示すため汎用的に使用でき、ポリプロピレン樹脂を押出しラミネートにて積層した際にも良好な接着性が得られる積層体を提供する。
不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムが接着層を介して積層された積層体であって、接着層は、不飽和カルボン酸成分とオレフィン成分との共重合体である酸変性ポリオレフィン樹脂を含有し、オレフィン成分は、プロピレン成分が50質量%以上であり、エチレン成分が10質量%以下であることを特徴とする積層体。
不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムが接着層を介して積層された積層体であって、接着層は、不飽和カルボン酸成分とオレフィン成分との共重合体である酸変性ポリオレフィン樹脂を含有し、オレフィン成分は、プロピレン成分が50質量%以上であり、エチレン成分が10質量%以下であることを特徴とする積層体。
不織布上に設けた接着層の上に、溶融したポリプロピレン樹脂を押出しラミネーションにより積層することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の積層体は、不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムが接着層を介して積層されてなるものである。
【0011】
本発明の積層体を構成する接着層について説明する。
【0012】
接着層は、特定組成の酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する。
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸成分とオレフィン成分との共重合体であり、オレフィン成分は、プロピレン成分を50質量%以上含有することが必要であり、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。前記オレフィン成分は、プロピレン成分以外のオレフィン成分を含んでいても良い。
【0013】
プロピレン成分以外のオレフィン成分としては、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ノルボルネン類等のアルケン類やブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられる。中でも、樹脂製造のし易さ、水性化のし易さ、不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性の点から、ブテン成分(1−ブテン、イソブテン等)が好ましい。
【0014】
プロピレン成分以外のオレフィン成分としてエチレン成分を含む場合、エチレン成分は10質量%以下であることが好ましい。エチレン成分を10質量%以下にすることで、ポリプロピレン系樹脂を押出しラミネーションにより積層する際、不織布と良好な接着性が得られる。
【0015】
酸変性ポリオレフィン樹脂において、オレフィン成分の共重合形態は限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等があげられるが、重合の行いやすさの観点から、ランダム共重合が好ましい。また、必要に応じて複数種のポリオレフィン樹脂を混合使用してもよい。
【0016】
オレフィン成分には、必要に応じて上記以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類並びにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。
【0017】
本発明では、オレフィン成分として市販のものを用いてもよい。一例として、三井化学社製のタフマーシリーズ、REXtac社製のAPAOシリーズ(非晶性ポリアルファオレフィン)、クラリアント社製のリコセンPPシリーズ、エボニック・デグサ社製のベストプラスト等が挙げられる。
【0018】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸単位を含有する必要がある。種々の不織布との接着性を向上させる観点並びに後述する水性分散体の分散性を向上させる観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂中に不飽和カルボン酸単位を0.1〜10質量%含むことが好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜7質量%がさらに好ましく、1.5〜5質量%が最も好ましい。不飽和カルボン酸単位が0.1質量%未満の場合は、酸変性ポリオレフィン樹脂を水性化することが困難となり、かつ種々の不織布と十分に接着させることが困難となる。一方、10質量%を超えると、樹脂の水性化は容易になるが、ポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性が低下したり、積層体の耐熱性が低下したりする場合がある。なお、市販のもので酸変性されていないポリオレフィン樹脂を用いる際には、例えば後述する方法で不飽和カルボン酸単位を導入すればよい。
【0019】
不飽和カルボン酸単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等の他、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基又は酸無水物基を有する化合物も用いることができる。中でも未変性ポリオレフィン樹脂への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0020】
不飽和カルボン酸単位は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではない。例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。なお、ポリオレフィン樹脂に導入された酸無水物単位は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中では、その一部又は全部が開環し、カルボン酸又はその塩となる傾向がある。
【0021】
不飽和カルボン酸単位を未変性ポリオレフィン樹脂へ導入する方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤存在下、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸とを未変性ポリオレフィン樹脂の融点以上に加熱溶融し反応させる方法や、未変性ポリオレフィン樹脂を有機溶剤に溶解した後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌し反応させる方法等により、未変性ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸単位をグラフト共重合することができる。特に操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
【0022】
本発明では、酸変性ポリオレフィン樹脂として、具体的にはプロピレン/無水マレイン酸二元共重合体、プロピレン/ブテン/無水マレイン酸三元共重合体やプロピレン/エチレン/無水マレイン酸三元共重合体、プロピレン/ブテン/エチレン/無水マレイン酸四元共重合体などが例示できるが、中でも、種々の不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性の観点からプロピレン/ブテン/無水マレイン酸三元共重合体が好ましい。
【0023】
本発明で用いる酸変性ポリオレフィン樹脂は、塩素化されていてもよく、塩素化の割合については限定されない。
【0024】
本発明における酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、15000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、30000以上であることが特に好ましい。重量平均分子量が15000未満になると、種々の不織布やポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性が低下するだけでなく、積層体の耐熱性も悪くなる場合がある。一方、重量平均分子量が200000を超えると、後述する樹脂の水性化が困難となるため、重量平均分子量は200000以下が好ましい。なお、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン樹脂を標準として求めることができる。
【0025】
本発明の積層体を構成する接着層は、前述した酸変性ポリオレフィン樹脂に加え、さらにポリウレタン樹脂及び/又は架橋剤を含有してもよい。
【0026】
前記ポリウレタン樹脂としては、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子が使用でき、例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応で得られる高分子が使用できる。
【0027】
本発明において、ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の低分子量グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール類、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類等の高分子量ジオール類、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類、ダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が挙げられる。
【0028】
ポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族又は脂環族に属する公知のジイソシアネート類の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例としては、トリレンジジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、及びこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。また、ジイソシアネート類には、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類を用いてもよい。
【0029】
本発明において、市販の水系のポリウレタン樹脂としては、三井化学社製のタケラックシリーズ(品番:W−615、W−6010、W−511等)、アデカ社製のアデカボンタイターシリーズ(品番:HUX−232、HUX−320、HUX−380、HUX−401等)、第一工業製薬社製のスーパーフレックスシリーズ(品番:500、550、610、650等)、大日本インキ化学工業社製のハイドランシリーズ(品番:HW−311、HW−350、HW−150等)が挙げられる。
【0030】
本発明で用いる架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、不飽和カルボン酸成分と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等を用いることができる。
具体的には、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。中でも、取り扱い易さ及び接着性の観点から、オキサゾリン基含有化合物及び/又はカルボジイミド基含有化合物を添加することが好ましい。
【0031】
オキサゾリン基含有化合物としては、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものが好ましく使用できる。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
【0032】
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、公知の重合方法を採用することができる。オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズ等が挙げられる。具体的な商品名としては、例えば、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」等が挙げられる。
【0033】
カルボジイミド基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)等のカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱い易さから、ポリカルボジイミドが好ましい。
【0034】
ポリカルボジイミドの製法は、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も限定されるものではなく、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであっても構わない。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオール等が共重合されていてもよい。ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。具体的な商品としては、例えば、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」;エマルションタイプの「E−01」、「E−02」;有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」;無溶剤タイプの「V−05」等が挙げられる。
【0035】
イソシアネート基含有化合物としては、分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4´-又は4,4´-ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトブタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-又は1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3、3、5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン、4,4´-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、ヘキサヒドロトルエン2,4-又は2,6-ジイソシアネート、ぺルヒドロ-2,4´-又は4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物、あるいはそれらの改変生成物が挙げられる。ここで、改変生成物とは、多官能イソシアネート化合物のうちのジイソシアネートを公知の方法で変性することによって得られるものであり、例えば、アロファネート基、ビューレット基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基等を有する多官能イソシアネート化合物、さらにはトリメチロールプロパン等の多官能アルコールで変性したアダクト型の多官能イソシアネート化合物を挙げることができる。なお、上記イソシアネート基含有化合物には、20質量%以内の範囲でモノイソシアネートが含有されていてもよい。
【0036】
イソシアネート基含有化合物は、通常、多官能イソシアネート化合物と一価又は多価のノニオン性ポリアルキレンエーテルアルコールと反応させて得ることができる。そのような水性の多官能イソシアネート化合物の市販品としては、住友バイエルウレタン株式会社製のバイヒジュール(Bayhydur)3100、バイヒジュールVPLS2150/1、SBUイソシアネートL801、デスモジュール(Desmodur)N3400、デスモジュールVPLS2102、デスモジュールVPLS2025/1、SBUイソシアネート0772、デスモジュールDN、武田薬品工業株式会社製のタケネートWD720、タケネートWD725、タケネートWD730、旭化成工業株式会社製のデュラネートWB40-100、デュラネートWB40-80D、デュラネートWX-1741、BASF社製のバソナート(Basonat)HW−100、バソナートLR−9056等がある。
【0037】
接着層において、架橋剤を用いずにポリウレタン樹脂を用いる場合、その含有量は、種々の不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性や積層体の耐熱性の観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して300質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1〜150質量部、更に好ましくは2〜130質量部、特に好ましくは3〜100質量部である。ポリウレタン樹脂の含有量が300質量部を超えると、不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性が不十分となり、積層体の耐熱性が得難くなる場合がある。
【0038】
接着層において、ポリウレタン樹脂を用いずに架橋剤を用いる場合、その含有量は、種々の不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性や積層体の耐熱性の観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量部、さらに好ましくは1〜30質量部である。架橋剤の含有量が50質量部を超えると、不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性が不十分となり、積層体の耐熱性が得難くなる場合がある。
【0039】
接着層にポリウレタン樹脂及び架橋剤の両方を含む場合は、種々の不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性と積層体の耐熱性の観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、架橋剤50質量部以下及びポリウレタン樹脂300質量部以下の範囲とし、いずれか一方の成分を1質量部以上含有していることが好ましい。いずれか一方の成分が300質量部を超えると、不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性が不十分となり、積層体の耐熱性が得難くなる場合がある。
【0040】
また、本発明における接着層には、種々の不織布やポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性を向上させるなどの観点から、上記以外の他の重合体が少量含有されていてもよい。
【0041】
他の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂や塩素化ポリプロピレン樹脂等の塩素化ポリオレフィン樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分があげられる。これらの他の重合体は、ポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性を損ねない範囲で使用されることが好ましく、その含有量としては、接着層全体の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
接着層の量は、0.001〜10g/m
2の範囲とすることが好ましく、0.01〜5g/m
2であることがより好ましく、0.02〜3g/m
2であることがさらに好ましく、0.03〜1g/m
2であることが特に好ましく、0.05〜1g/m
2であることが最も好ましい。0.001g/m
2未満では、十分な接着性が得られない傾向にあり、一方、10g/m
2を超える場合には、経済的に不利となる傾向にある。
【0043】
本発明の積層体を構成する不織布について説明する。
【0044】
不織布としては、公知なものを使用することができる。例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、アラミド、レーヨン、セルロース、ゴムなどの樹脂もしくはガラスを材料とした不織布を用いることができる。中でも、本発明の積層体における接着性および汎用性の観点から、ポリオレフィン不織布およびポリエステル不織布を用いることが好ましい。
【0045】
ポリオレフィン不織布は、ポリオレフィン樹脂からなる繊維を不織布とすることにより得られる。ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の単体、または、ポリプロピレンと低密度ポリエチレンとの混合物や、ポリプロピレンと高密度ポリエチレンとの混合物からなる樹脂を用いることができる。中でも、本発明の積層体における接着性の観点から、ポリオレフィン不織布のポリオレフィン樹脂としてポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0046】
上記した樹脂からなる繊維を不織布とするには、通常用いられているローラーカード、フラットカード等のカード機を用いて、定法によりウェッブを作製する。ウェッブからの不織布の製造は、目的とする不織布の用途等に応じて熱融着法、スパンボンド法、メルトブロー法、溶剤系によるフラッシュ紡糸法などの従来公知の方法を適宜選択して行えばよい。また、交絡させた繊維どうしを熱融着させて不織布としてもよい。ポリオレフィン不織布として、市販のものを使用してもよく、例えば、エルタスシリーズ(旭化成せんい株式会社製)やエルベス(ユニチカ株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0047】
ポリエステル不織布は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の樹脂からなる繊維を不織布とすることにより得られる。これらのなかでも、汎用性樹脂であるポリエチレンテレフタレートを好適に使用することができる。
【0048】
上記した樹脂からなる繊維を不織布とするには、上記したポリエステル樹脂からなる短繊維または長繊維を、上記したような定法にしたがって不織布とすることができる。ポリエステル不織布として、市販のものを使用してもよく、例えば、エルタスシリーズ(旭化成せんい株式会社製)やマリックスシリーズ(ユニチカ株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0049】
また、本発明における不織布としては、芯と鞘の二層構造になった芯鞘構造を有する複合繊維からなる不織布であってもよく、例えば、芯部がポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂等からなり、鞘部はポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂等からなる複合繊維なども好適に使用することができる。
【0050】
本発明における不織布には、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤等、公知の各種添加剤を適宜添加することができる。光安定剤、紫外線吸収剤としては、公知のものを使用でき、例えば、フェノール系、リン系、ヒンダードアミン系の光吸収剤や、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系の紫外線吸収剤が使用できる。
【0051】
本発明の積層体を構成するポリプロピレン系樹脂フィルムについて説明する。
【0052】
本発明の積層体におけるポリプロピレン系樹脂フィルムは、プロピレン成分を主成分とするポリオレフィン樹脂(以下、プロピレン系樹脂と称する場合がある)のフィルムである。プロピレン系樹脂の組成としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられ、上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。プロピレン系樹脂としては、加工性、汎用性、積層体の耐熱性の観点から、ホモポリプロピレンやプロピレン-エチレン共重合体であることが好ましい。
【0053】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂フィルムは、多層構造であってもよく、接着層と接する層以外の構成についてはプロピレン系樹脂以外の材料を用いてもよい。
【0054】
本発明の積層体におけるポリプロピレン系樹脂フィルムには、本発明から得られる効果を損なわない範囲内で、必要に応じて帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、可塑剤、難燃剤、無機充填剤、顔料(着色剤)、滑剤、シランカップリング剤、発泡材等が任意の配合量で含有されていてもよい。
【0055】
本発明の積層体を製造する好ましい方法について説明するが、これに限定されるものではない。
本発明の積層体の製造方法では、不織布および/またはポリプロピレン系樹脂フィルム上に、接着層を設ける。接着層を設ける方法としては、特に限定されないが、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む液状物を作製し、この液状物を基材層の表面に塗布または、基材に浸み込ませ、液状物の媒体たる液状媒体を乾燥させる方法が好ましい。液状物の形態としては溶液、または分散体が好ましく、液状媒体も水性媒体、有機溶剤のいずれでもよいが、本発明では、酸変性ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に分散された水性分散体を利用することが好ましい。ただし、本発明では、液状物に加工しないで、ホットメルト等の手段により樹脂その他の固形分から直接的に接着層を形成してもよく、これを排除するものではないが、液状物を利用することで、接着層の量の調整が容易となる他、接着層の厚みを薄く制御することができ、安価に大量生産が可能という点で好ましい。そして、液状物の中でも水性分散体を使用することは、環境面や性能面からも好ましい。
【0056】
酸変性ポリオレフィン樹脂を含む液状物の調製方法としては、特に限定されず、例えば酸変性ポリオレフィン樹脂の分散体や溶液として調製することができる。本発明では、特に、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を調製することが好ましい。
【0057】
また、上記液状物には、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、帯電防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を添加してもよい。さらに、液状物の安定性を損なわない範囲で上記以外の有機もしくは無機の化合物を液状物に添加することもできる。
【0058】
接着層の形成に液状物を用いる場合、その固形分の含有率は、特に限定されず、積層条件、目的とする接着層の厚みや性能等に応じて適宜選択することができる。液状物の粘度を適度に保ち、かつ良好な接着層を形成するという観点から、前記固形分含有率は1〜60質量%であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましく、2〜45質量%であることがさらに好ましく、3〜40質量%が特に好ましく、5〜30質量%であることが最も好ましい。
【0059】
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を得るための方法としては、特に限定されないが、酸変性ポリオレフィン樹脂、水性媒体、必要に応じて有機溶剤、塩基性化合物等を、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法が採用でき、この方法が最も好ましい。
【0060】
容器としては、公知の固/液撹拌装置や乳化機を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。高速撹拌(例えば1000rpm以上)は必須ではなく、簡便な装置でも水性分散体の調製が可能である。
【0061】
上記の装置に酸変性ポリオレフィン樹脂、水性媒体等の原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を70〜240℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは100〜200℃、特に好ましくは110〜190℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子がなくなるまで(例えば、5〜300分間)攪拌を続ける。ここで、槽内の温度が70℃未満になると、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性化が進行し難くなる。一方、槽内の温度が240℃を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂の分子量が低下する恐れがある。
【0062】
当該方法では、塩基性化合物、有機溶剤及び水を適宜追加配合してよく、そのときの割合としては、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。塩基性化合物、有機溶剤又は水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げた後、開封して配合する方法等がある。追加配合する塩基性化合物、有機溶剤又は水の総量によって、配合した後の固形分濃度を調整することができる。酸変性ポリオレフィン樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくする観点から、水性化の際に有機溶剤を配合することが好ましい。
【0063】
塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。塩基性化合物の配合量としては、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量がより好ましく、0.9〜3.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、10倍当量を超えると、接着層形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散液の安定性が低下したりする場合がある。
【0064】
有機溶剤としては、分散安定性良好な水性分散体を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上がより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。
また、製膜の過程で効率よく接着層から除去させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。沸点が150℃を超える有機溶剤は、乾燥により接着層から飛散させることが困難となる傾向にあり、特に接着層の接着性が悪化する場合がある。
好ましい有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。本発明の製造方法では、これらの有機溶剤を複数混合して使用してもよい。
【0065】
上記の有機溶剤の中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルが樹脂の水性化促進により効果的であり、好ましい。
【0066】
有機溶剤の含有量としては、水性媒体全体に対し50質量%以下が好ましく、1〜45質量%であることがより好ましく、2〜40質量%がさらに好ましく、3〜35質量%が特に好ましい。有機溶剤の含有量が50質量%を超える場合には、使用する有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下してしまう場合がある。
【0067】
水性分散体の調製時に上記の有機溶剤を用いた場合には、上記したように樹脂の水性化の後に、その一部を、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶剤処理によって系外へ留去させ、有機溶剤の含有量を低減させてもよい。ストリッピングにより、水性分散体中の有機溶剤含有量は、10質量%以下とすることができ、5質量%以下とすれば、環境上好ましい。ストリッピングの工程では、水性化に使用した有機溶剤を実質的に全て留去することもできるが、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くしたりする必要があるため、こうした生産性を考慮した場合、有機溶剤含有量の下限は0.01質量%程度が好ましい。しかし、0.01質量%未満であっても、特に性能面での影響はなく、使用には何ら問題ない。
【0068】
ストリッピングの方法としては、常圧又は減圧下で当該水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるため、例えば、粘度が上昇し作業性が悪くなるような場合には、予め水性分散体に水を添加しておいてもよい。
【0069】
ストリッピング中に発泡がある場合には、消泡剤を添加することで発泡を抑制することができる。消泡剤の添加量としては、水性分散体の不揮発成分に対して1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。
【0070】
上記の調製方法を採用することで、酸変性ポリオレフィン樹脂が水性媒体中に効率よく分散又は溶解され、均一な液状に調製することが可能となる。ここで、均一な液状であるとは、外観上、水性分散体中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない状態にあることをいう。
【0071】
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体は、不揮発性の水性化助剤を用いなくても製造することができる。不揮発性水性化助剤の使用を排除するものではないが、水性化助剤を用いずとも、ポリオレフィン樹脂を水性媒体中に安定的に分散することができる。
【0072】
ここで、「水性化助剤」とは、水性分散液の調製において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
【0073】
不揮発性の水性化助剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂成分に対して0.5質量%未満とすることが好ましく、含有していないことが特に好ましい。本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子等が挙げられる。
【0074】
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるものの他、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられる。両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0075】
そして、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックス等の数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類及びその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマー及びその塩、ポリイタコン酸及びその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
【0076】
以上のようにして、得られた液状物は、接着層を形成するために、不織布および/またはポリプロピレン系樹脂フィルムの表面に塗布する。このときの塗布方法としては、従来公知の方法が採用できる。例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、キスロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、含浸コーティング、はけ塗り法等が挙げられる。なかでも、不織布に塗布する場合は、含浸コーティングもしくはキスロールにてエマルジョンを不織布に転写するキスロールコーティングが好ましい。
【0077】
不織布および/またはポリプロピレン系樹脂フィルムに塗布する面は、表面活性化処理されていることが好ましく、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などが挙げられる。
【0078】
前記方法により、液状物を均一に塗布することができる。そして、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な接着層を不織布および/またはポリプロピレン系樹脂フィルム上に形成することができる。
加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被塗布物たる不織布もしくはポリプロピレン系樹脂フィルムの特性や液状物に任意に配合しうる前述の各種有機溶剤や添加剤の添加具合等を考慮して、適宜決定すればよい。
加熱温度は、塗膜性能向上の観点から、30〜250℃が好ましく、60〜180℃がより好ましく、80〜150℃が特に好ましい。一方、加熱時間は、1秒〜20分が好ましく、5秒〜60秒がより好ましく、5秒〜30秒が特に好ましい。
【0079】
本発明では、不織布上に接着層を積層し、その上にポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する方法として、生産性や樹脂選択性の観点からプロピレン系樹脂を押出しラミネートにより基材上に積層する押出ラミネート法が好ましいが、接着性よくポリプロピレン系樹脂フィルムを積層できるのであれば、押出ラミネート法以外の別の方法を採用してもよい。押出ラミネート法以外の方法としては、例えば、接着層と、ポリプロピレン系樹脂フィルムとを熱によってラミネートする熱ラミネート法などが挙げられる。
【0080】
具体的には、ポリプロピレン系樹脂フィルム形成にあたりTダイからプロピレン系樹脂を溶融押出する際、Tダイから押出された直後の樹脂温度を、好ましくは230〜300℃となるように設定する。特にプロピレン系樹脂の熱分解を抑える観点から、樹脂温度は低温であることが望ましく、具体的には230〜270℃であることが好ましい。さらに、接着性を向上させ熱分解を抑えるという観点から、240〜260℃であることがより好ましい。
【0081】
本発明の積層体のポリプロピレン系樹脂フィルムの外側にはさらに別の層を積層してもよい。別の層をさらに積層する方法は一般に公知な方法を用いることができる。中でも、接着層を積層した不織布に溶融したポリプロピレン系樹脂を介して別の層を積層するサンドラミネート法にて好適に積層することができる。
【0082】
ポリプロピレン系樹脂フィルムの外側に積層する別の層としては、例えば、樹脂フィルム、金属箔、紙、布など種々の材料を用いることができる。中でも、サンドラミネートを行う際の接着性の観点から、(未)延伸ポリプロピレンフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、紙、布などが好適に使用できる。
【0083】
ポリプロピレン系樹脂フィルムを接着層上に積層して得られた積層体は、接着性の向上等を目的として、エージング処理してもよい。エージング処理は、常温〜100℃程度の温度で行うことが好ましく、積層体への熱によるダメージや経済性の観点から30〜60℃で行うことがより好ましく、40〜50℃で行うことがさらに好ましい。
【0084】
接着強度としては、引張り試験機を用いて、25℃の恒温下、引張り速度20mm/分の条件でT型剥離試験を行うことで、評価することができる。このとき、接着強度が1.0N/10mm以上であれば、積層体としての使用に問題ないレベルであり、好ましくは2.0N/10mm以上である。なお、測定時に不織布やポリプロピレン系樹脂フィルムに伸びや切れが発生し、剥離が不可能となるため、正確なラミネート強度を測定することができないことがある。このような現象は、接着状態として最も好ましい状態といえ、優れた接着性の裏づけとなる。
【0085】
本願の積層体は不織布とプロピレン系樹脂フィルムが接着層を介して十分に接着している積層体であり、包装材料、農業資材、建材、粘着シート、化粧品、紙おむつ、防護服、自動車部材など様々な分野で用いることができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各種の特性は以下の方法により測定又は評価した。
【0087】
1.ポリオレフィン樹脂
(1)不飽和カルボン酸単位の含有量
赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer System−2000 フーリエ変換赤外分光光度計、分解能4cm
-1)により求めた。
(2)不飽和カルボン酸単位以外の樹脂の構成
オルトジクロロベンゼン(d
4)中、120℃にて
1H−NMR、
13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)により求めた。
13C−NMR分析では、定量性を考慮したゲート付きデカップリング法に基づき測定した。
(3)樹脂の重量平均分子量
重量平均分子量は、GPC装置(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF−805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1ml/min、40℃の条件で測定した。約10mgの樹脂をテトラヒドロフラン5.5mlに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作製した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合はオルトジクロロベンゼンで溶解した。
【0088】
2.積層体
(1)不織布
下記の不織布を使用した。
ポリプロピレン不織布:ELTAS P03040(旭化成せんい株式会社製、目付40g/m
2)
ポリエステル不織布:MARIX 70400WSO(ユニチカ株式会社製、目付40g/m
2)
(2)接着強度
得られた積層体から幅10mmの試験片を採取し、引張り試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機2020型)を用い、25℃の恒温室で、T型剥離により、試験片の端部から不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムとの界面を剥離して接着強度を測定した。剥離速度は20mm/分とした。
また、接着強度を下記指標にて評価した。
◎:2N/10mm以上
○:1N/10mm以上、2N/10mm未満
×:1N/10mm未満
【0089】
(製造例1:酸変性ポリオレフィン樹脂P−1の製造)
プロピレン/ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂を減圧乾燥機中で減圧乾燥して酸変性ポリオレフィン樹脂P−1を得た。
【0090】
(製造例2、5:酸変性ポリオレフィン樹脂P−2、P−5の製造)
プロピレン/1−ブテンの質量比をP−2はプロピレン/1−ブテン=65/35、P−5はプロピレン/1−ブテン=40/60にそれぞれ変更した以外は、製造例1と同様の方法で酸変性ポリオレフィン樹脂P−2、P−5をそれぞれ得た。
【0091】
(製造例3:酸変性ポリオレフィン樹脂P−3の製造)
プロピレン/1−ブテン共重合体に代えて、プロピレン/エチレン共重合体(質量比:プロピレン/エチレン=92/8)を用いた以外は、製造例1と同様の方法で酸変性ポリオレフィン樹脂P−3を得た。
【0092】
(製造例4:酸変性ポリオレフィン樹脂P−4の製造)
プロピレン/1−ブテン共重合体に代えて、ホモプロピレン樹脂を用いた以外は製造例1と同様の方法で酸変性ポリオレフィン樹脂P−4を得た。
【0093】
(製造例6:酸変性ポリオレフィン樹脂P−6の製造)
プロピレン/エチレンの質量比をプロピレン/エチレン=88/12に変更した以外は、製造例3と同様の方法で酸変性ポリオレフィン樹脂P−6を得た。
【0094】
(酸変性ポリオレフィン樹脂P−7)
アルケマ社製、ボンダインHX−8290(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸=80/18/2(質量%))をP−7とした。
【0095】
得られた酸変性ポリオレフィン樹脂P−1〜P−7の特性を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
(調製例1:水性分散体E−1)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂(P−1)、45.0gのエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬社製)、8.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン及び137.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、開封して、45.0gのテトラヒドロフラン(和光純薬社製)、5.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン及び30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−1を得た。このとき、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
【0098】
(調製例2〜6:水性分散体E−2〜E−6)
酸変性ポリオレフィン樹脂としてP−2〜P−6を用いた以外は、調製例1と同様の方法で水性分散体E−2〜E−6を得た。
【0099】
(調整例7:水性分散体E−7)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂P−7、60.0gのイソプロパノール、4.5g(樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.8倍当量)のトリエチルアミンおよび175.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な水性分散体E−7を得た。
【0100】
ポリウレタン樹脂は以下の水性分散体を用いた。
・ポリウレタン樹脂水性分散体:三井化学社製タケラックW−6010、固形分濃度30質量%)
【0101】
架橋剤は以下の水溶液を用いた。
・オキサゾリン基含有化合物:日本触媒社製エポクロスWS−700、固形分濃度39質量%)
・カルボジイミド基含有化合物:日清紡社製カルボジライトV−02−L2、固形分濃度40質量%)
・イソシアネート基含有化合物:BASF社製バソナートHW−100、固形分濃度100質量%)の10質量%水溶液
【0102】
(実施例1)
ポリプロピレン不織布に、水性分散体E−1を乾燥後の塗布量が0.5g/m
2になるように塗布し、100℃で60秒乾燥させて接着層を設けた。その不織布の接着層上にポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製ノバテックPP FL03H)を用い、Tダイ法により厚み30μmとなるように押出しラミネートにて積層し、積層体を得た。このとき、Tダイから押出されたポリプロピレン樹脂の温度は240℃であった。
【0103】
(実施例2〜4、比較例1、2、5)
実施例1において、水性分散体E−1に代えて、水性分散体E−2(実施例2)、E−3(実施例3)、E−4(実施例4)、E−5(比較例1)、E−6(比較例2)、E−7(比較例5)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0104】
(実施例5、6)
ポリウレタン樹脂、オキサゾリン基含有化合物の固形分(有効成分)含有量が、表2に示すものとなるように、それぞれ混合して水性コート剤を調製した。
得られた水性コート剤を使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0105】
(実施例7)
不織布としてポリエステル不織布を用いた以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0106】
(実施例8〜17、比較例3、4、6)
酸変性ポリオレフィン樹脂の種類、ポリウレタン樹脂、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物の固形分(有効成分)含有量が、表2に示すものとなるように、それぞれ混合して水性コート剤を調製した。
得られた水性コート剤を使用した以外は、実施例7と同様の方法で積層体を得た。
【0107】
(実施例18)
実施例5において、ポリプロピレン系樹脂フィルムを未延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学社製CP GHC、厚み50μm、コロナ処理済)を用い、130℃、面圧2.0kgf/cm
2、圧着時間2秒の条件で熱ラミネートして積層体を得た。
【0108】
(実施例19)
実施例8において、ポリプロピレン系樹脂フィルムの積層方法を熱ラミネートに変更した以外は、実施例8と同様の方法で積層体を得た。
【0109】
(実施例20)
実施例11において、ポリプロピレン系樹脂フィルムの積層方法をサンドラミネートに変更し、最外層として延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製;OP U−1、コロナ処理済み)を用いた以外は、実施例11と同様の方法で積層体を得た。
【0110】
実施例1〜20および比較例1〜6で得られた積層体の特性を表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
実施例1〜20の積層体は、本発明で規定する酸変性ポリオレフィン樹脂を含む接着層を介して不織布とプロピレン系樹脂フィルムが積層されており、積層体は良好な接着強度を示した。また、ポリウレタンおよび/または架橋剤を含むことにより、接着強度の向上が見られ(実施例5、6、8〜17、19、20)、特に、ポリエステル不織布においてその効果が顕著であった(実施例8〜17、19、20)。
また、積層方法に問わず、良好な積層体を得ることができた。
【0113】
一方、比較例1および3では、接着層に含まれる不飽和カルボン酸樹脂のオレフィン成分としてプロピレン成分が主成分となっておらず、不織布とポリプロピレン系樹脂フィルムとの接着性に劣っていた。
比較例2および4では、接着層に含まれる不飽和カルボン酸樹脂のオレフィン成分としてエチレン成分が10%を超えて含まれており、同様に接着性に劣っていた。
比較例5、6では、本発明で限定した樹脂層ではなかったため、接着性に劣っていた。