【解決手段】自動ワインダ1は、糸巻取ユニット2と、ブロワ61と、シャッタ装置29と、を備えている。ユニット2は、空気を吸引することにより、糸の処理又は清掃を行う複数の吸引機構として上糸吸引捕捉案内機構20及びクリーニングパイプ25を有している。ブロワ61は、負圧を発生する。シャッタ装置29は、複数の吸引機構とブロワ61との間に設けられている。シャッタ装置29は、シャッタ33と、ケーシング30とを有している。シャッタ33は、複数の吸引機構とブロワ61との間の空気の導通を切り替える。ケーシング30は、シャッタ33を内封する。シャッタ装置29は、シャッタ33を動作させることにより、複数の吸引機構の少なくとも一つとブロワ61との間に空気を導通させる負圧位置と、ケーシング30内に滞留した繊維屑を除去する滞留物除去位置と、に切り替え可能である。
前記シャッタ装置は、前記切り替え板を動作させることにより、前記切り替え板を前記負圧発生源からの負圧が前記ケーシング内に作用しない吸引停止位置に移動可能である、請求項1又は2に記載の繊維機械。
前記切り替え板が前記滞留物除去位置にあるときに、前記第1開口と前記第2開口とを導通させるが、前記切り替え板は前記第2開口から前記第1開口に向かって直線状に流れる空気を遮る位置にある、請求項7に記載の繊維機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シャッタ装置は、ケーシングと、ケーシング内に配置されたシャッタとを有している。シャッタが移動することによって、吸引源と導通する吸引機構を切り替える。
本願の発明者は、ケーシング内に繊維屑が滞留してしまい、それよりシャッタがスムーズに移動できくなる問題に着目し、以下の発明を考案した。
本発明の目的は、繊維機械に用いられるシャッタ装置内部の繊維屑の滞留を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係る繊維機械は、ユニットと、負圧発生源と、シャッタ装置と、を備えている。
ユニットは、空気を吸引することにより、糸の処理又は清掃を行う複数の吸引機構を有している。
負圧発生源は、負圧を発生する。
シャッタ装置は、複数の吸引機構と負圧発生源との間に設けられている。シャッタ装置は、切り替え板と、ケーシングとを有している。切り替え板は、複数の吸引機構と負圧発生源との間の空気の導通を切り替える。ケーシングは、切り替え板を内封する。
シャッタ装置は、切り替え板を動作させることにより、
複数の吸引機構の少なくとも一つと負圧発生源との間に空気を導通させる負圧位置と、
ケーシング内に滞留した繊維屑を除去する滞留物除去位置と、に切り替え可能である。
この繊維機械では、切り替え板が負圧位置にあると、複数の吸引機構の少なくとも一つと負圧発生源との間に空気を導通させる。これにより吸引動作が実行される。次に、切り替え板が滞留物除去位置にあると、ケーシング内に滞留した繊維屑が除去される。この結果、繊維機械に用いられるシャッタ装置内部の繊維屑の滞留が解消される。
【0008】
切り替え板とケーシングとの間には、繊維屑が通過できる空間が形成されていてもよい。
この繊維機械では、切り替え板が滞留物除去位置にあってケーシング内に滞留した繊維屑が除去されているときに、繊維屑は切り替え板とケーシングとの間の空間を通って移動する。したがってケーシング内の繊維屑がより確実に除去される。
【0009】
シャッタ装置は、切り替え板を動作させることにより、切り替え板を負圧発生源からの負圧がケーシング内に作用しない吸引停止位置に移動可能であってもよい。
この繊維機械では、切り替え板が吸引停止位置にあると、負圧がケーシング内に作用しない。したがって、全ての吸引機構の動作が停止される。このように全ての吸引機構の動作を停止可能とすることで、省エネを実現できる。
【0010】
シャッタ装置は切り替え板を駆動する駆動源をさらに有しており、
駆動源はステッピングモータであってもよい。
この繊維機械では、ステッピングモータによって切り替え板が駆動される。したがって、駆動源の制御が簡単になる。
【0011】
繊維機械は給糸ボビンから解舒された糸を綾振りさせて巻取チューブにパッケージとして巻き取る自動ワインダであり、
複数の吸引機構は、上糸吸引捕捉案内機構とクリーニングパイプであってもよい。
この繊維機械では、切り替え板の動作によって、自動ワインダの定常運転時には走行する糸に付着している異物をクリーニングパイプによって吸引除去し、糸継の際には上糸吸引捕捉案内機構によって上糸を吸引捕捉して糸継装置に案内する。
【0012】
切り替え板は、ケーシング内を回動可能であってもよい。
切り替え板の滞留物除去位置は、ケーシング内の空間領域の切り替え板回動方向両端部の少なくとも一方に滞留した繊維屑を除去するための位置であってもよい。
この繊維機械では、切り替え板が滞留物除去位置にあると、第1開口と第2開口及び第3開口が互いに導通させられる。その結果、ケーシング内の切り替え板回動方向両端部の少なくとも一方に滞留した繊維屑が、第1開口から吸引される。
複数の吸引機構は、第1吸引機構と第2吸引機構とを有していてもよい。
ケーシングは、負圧発生源の基端が接続された第1開口と、第1吸引機構の基端が接続された第2開口と、第2吸引機構の基端が接続された第3開口とを有していてもよい。
切り替え板の負圧位置は、第1開口と第2開口とを導通させることで第1吸引機構を動作させる第1負圧位置と、第1開口と第3開口とを導通させることで第2吸引機構を動作させる第2負圧位置とを含んでいてもよい。切り替え板が滞留物除去位置にあるときは、第1開口と第2開口及び第3開口を互いに導通させてもよい。
切り替え板が滞留物除去位置にあるときに、切り替え板は、第1開口と前記第2開口とを導通させるが、第2開口から前記第1開口に向かって直線状に流れる空気を遮る位置にあってもよい。この場合、屈曲した流路により空気の流れが乱れ、ケーシング内の第2開口から切り替え板回動方向に離れた両端部の少なくとも一方の清掃効果が高くなる。
【0013】
一見地によれば、切り替え板の滞留物除去位置は、ケーシングの全ての開口を互いに導通させることでケーシング内の繊維屑を吸引する位置である。
一見地によれば、切り替え板は、ケーシングの開口を閉塞し又は開放するように回動する。
一見地によれば、切り替え板は、複数の吸引機構のうちいずれか一つによる吸引は許容し、それ以外の吸引機構による吸引は禁止する複数の位置の間で移動する。
一見地によれば、ケーシングにおける複数の吸引機構用の複数の開口は、切り替え板の回動する方向に並んで配置されている。
一見地によれば、切り替え板は、特定の開口にのみ対応する孔を有している。
一見地によれば、ケーシング内の空間は開口を除いては密封されている。
一見地によれば、ケーシング内の空間は厚みが薄い平板状の空間である。
一見地によれば、ケーシングにおける複数の吸引機構用の複数の開口と、負圧発生源用の開口は互いに対向している。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る繊維機械では、シャッタ装置内部の繊維屑の滞留が解消される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1実施形態
(1)自動ワインダの基本構造
図1を用いて、自動ワインダ1を説明する。
図1は、第1実施形態に係る自動ワインダの糸巻取ユニットを示す模式正面図及びブロック図である。
自動ワインダ1は、糸巻取ユニット2(ユニットの一例)を有している。糸巻取ユニット2は、給糸ボビン3から解舒された糸4を綾振ドラム5で綾振りながら巻取チューブ6に巻き取って糸層を形成し、所定長で所定のコーン形状のパッケージ7を形成する装置である。
図1では糸巻取ユニット2を1台しか図示していないが、このような糸巻取ユニット2が図略の機台上に多数列設されることで、自動ワインダ1が構成されている。
【0017】
糸巻取ユニット2は、巻取チューブ6を着脱可能に支持するクレードル8と、巻取チューブ6の周面に又はパッケージ7の周面に接触しながら所定の回転数で回転する綾振ドラム5と、を有している。
クレードル8は、巻取チューブ6の両端を挟持して回転自在に支持する。また、クレードル8は回動軸10を中心に傾動自在に構成されており、巻取チューブ6又はパッケージ7への糸4の巻き取りに伴う巻太り(糸層の径の増大)を、クレードル8が回動することによって吸収できる。綾振ドラム5の周面には、巻取チューブ6又はパッケージ7に対して糸4を綾振るための綾振溝9が刻設されている。巻取チューブ6又はパッケージ7は、綾振ドラム5に転接することで従動回転する。
糸巻取ユニット2の制御を担うユニット制御部50は、糸巻取ユニット2毎に備えられている。
【0018】
次に、糸継装置14及びヤーンクリアラ15、ワキシング装置24、クリーニングパイプ25を説明する。
糸巻取ユニット2は、給糸ボビン3と綾振ドラム5との間の糸走行経路中に、給糸ボビン3側から順に、糸継装置14とヤーンクリアラ15、ワキシング装置24、クリーニングパイプ25を配設した構成となっている。
【0019】
糸継装置14は、ヤーンクリアラ15が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン3からの糸4の糸切れ時に、給糸ボビン3側の糸4としての下糸4Lと、パッケージ7側の糸4としての上糸4Uとを糸継ぎするように構成されている。
ヤーンクリアラ15は、糸4の太さ欠陥を検出するためのものであって、ヤーンクリアラ15の検出部の部分を通過する糸4の太さを適宜のセンサで検出し、このセンサからの信号をアナライザ23で分析することで、スラブ等の糸欠陥を検出する。ヤーンクリアラ15には、糸欠陥を検出したときに直ちに糸4を切断するためのカッター16が付設されている。
【0020】
糸継装置14の下側と上側には、給糸ボビン3側の下糸4Lを吸引捕捉して糸継装置14へ案内する下糸吸引捕捉案内機構17と、パッケージ7側の上糸4Uを吸引捕捉して糸継装置14へ案内する上糸吸引捕捉案内機構20が設けられている。
上糸吸引捕捉案内機構20は、パイプ状に構成されており、先端にサクションマウス22を備える。上糸吸引捕捉案内機構20は、サクションマウス22から延びるパイプ20aとパイプ20aを回動自在に支持する軸21と、パイプ20aとシャッタ装置29(後述)とを連結する連結パイプ20bとから構成されている。すなわち、上糸吸引捕捉案内機構20の基端20cは、シャッタ装置29に接続されている。
【0021】
下糸吸引捕捉案内機構17もパイプ状に構成されており、先端に空気取り入れ口19を備える。下糸吸引捕捉案内機構17は、軸18を中心に上下回動可能に設けられる中継パイプ17aと、この中継パイプ17aとブロワダクト60とを連結する連結パイプ(図示せず)とから構成されている。
ワキシング装置24は、走行する糸4に対して適宜のワックスを塗布する装置である。
【0022】
クリーニングパイプ25は、走行する糸4に付着している異物を吸引して除去する装置である。クリーニングパイプ25の基端25bはシャッタ装置29(後述)に接続され、クリーニングパイプ25の先端には吸引口25aが形成されている。クリーニングパイプ25の吸引口25aは、ワキシング装置24と綾振ドラム5との間で走行する糸4に対して近接される。
【0023】
以上に説明したように本実施形態において、糸巻取ユニット2は、糸4又は異物のうち少なくともいずれか一方を吸引するための吸引機構を複数有している。具体的には、糸巻取ユニット2は、走行する糸4に付着している異物を吸引するヤーントラップとしてのクリーニングパイプ25と、上糸4Uを吸引捕捉して糸継装置14に案内する上糸吸引捕捉案内機構20(つまり、サクションマウス22)と、を吸引機構として備えている。
【0024】
(2)シャッタ装置の構成の概略説明
図1を用いて、シャッタ装置29と他の装置を概略的に説明する。
各糸巻取ユニット2は、シャッタ装置29を有している。シャッタ装置29は、ブロワパイプ70を介してブロワダクト60へ接続されている。ブロワダクト60は、列設される複数の糸巻取ユニット2の列設方向に沿って延びている。ブロワダクト60は、負圧発生源としてのブロワ61に連結されている。ブロワ61は、列設される複数の糸巻取ユニット2にとって共通である。
シャッタ装置29は、クリーニングパイプ25及び上糸吸引捕捉案内機構20と、ブロワ61との間に設けられている。
【0025】
次に、
図2及び
図3を用いて、シャッタ装置29の構造を概略的に説明する。
図2は、シャッタ装置の斜視図である。
図3は、シャッタ装置の平面図である。ただし、
図3では後述するシャッタ33は省略されている。
シャッタ装置29は、シャッタ33(切り替え板の一例)と、ケーシング30(ケーシングの一例)とを有している。シャッタ33は、クリーニングパイプ25及び上糸吸引捕捉案内機構20とブロワ61との間の空気の導通を切り替える。シャッタ装置29は、シャッタ33を動作させることにより、クリーニングパイプ25及び上糸吸引捕捉案内機構20の少なくとも一つとブロワ61との間に空気を導通させる負圧位置と、ケーシング30内に滞留した繊維屑を除去する滞留物除去位置と、に切り替え可能である。
【0026】
シャッタ33が負圧位置にあると、クリーニングパイプ25及び上糸吸引捕捉案内機構20の少なくとも一つとブロワ61との間に空気を導通させる。これにより吸引動作が実行される。具体的には、自動ワインダ1の定常運転時には走行する糸に付着している異物をクリーニングパイプ25によって吸引除去し、糸継の際には上糸吸引捕捉案内機構20によって上糸を吸引捕捉して糸継装置14に案内する。
次に、シャッタ33が滞留物除去位置にあると、ケーシング30内に滞留した繊維屑が除去される。この結果、自動ワインダ1に用いられるシャッタ装置29内部の繊維屑の滞留が解消される。
【0027】
シャッタ装置29は、シャッタ33を動作させることにより、シャッタ33をブロワ61からの負圧がケーシング30内に作用しない吸引停止位置に移動可能である。自動ワインダ1では、シャッタ33が吸引停止位置にあると、負圧がケーシング30内に作用しない。したがって、クリーニングパイプ25及び上糸吸引捕捉案内機構20の動作が停止される。
【0028】
(3)シャッタ装置の構成の詳細説明
次に、
図4〜8を用いて、シャッタ装置29の構成を詳細に説明する。
図4は、シャッタ装置のケースの平面図である。
図5は、シャッタ装置のシャッタの平面図である。
図6は、シャッタ装置のベース部材の平面図である。
図7は、
図3のVII−VII断面図である。
図8は、
図3のVIII−VIII断面図である。
ケーシング30は、糸巻取ユニット2の図示しないフレームに対して固定されるベース部材31と、これに対して装着されるケース部材32とを有している。
【0029】
シャッタ装置29は、ベース部材31とケース部材32との間に介挿されるシャッタ33を有している。ケーシング30は、シャッタ33を内封する。
シャッタ装置29は、シャッタ33を回動させる駆動源としてのシャッタ駆動機構34を有している。
【0030】
ベース部材31には、
図6に示すように、ブロワ61の基端が接続されるブロワ孔31aが形成されている。
ケース部材32には、
図4に示すように、上糸吸引捕捉案内機構20の基端20cが接続されるサクション孔32bと、クリーニングパイプ25の基端25bが接続されるクリーニング孔32aが形成されている。
クリーニング孔32a、サクション孔32b、ブロワ孔31aは、ベース部材31とケース部材32の間に形成されシャッタ33が回動する内部空間Gを介して相互に連通されている。
【0031】
シャッタ33は、
図5に示すように、略扇状に形成され、ベース部材31とケース部材32との間において、各クリーニング孔32a、サクション孔32bを閉塞し又は開放するように回動軸33aを中心に回動可能となっている。
シャッタ33の外周側の円弧方向片側には、孔33bが形成されている。
【0032】
シャッタ駆動機構34は、
図1及び
図2に示すように、ベース部材31に設けられるステッピングモータ35と、図示しない駆動伝達機構(例えば、シャッタ33の回動軸に固定されるプーリと、ステッピングモータ35の出力軸とプーリに巻き掛けられる平ベルト)と、から構成される。ステッピングモータ35の出力は、タイミングベルトとプーリを介してシャッタ33に伝動される。ステッピングモータ35によって、シャッタ33が駆動されるので、駆動源の制御が簡単になる。
【0033】
次に、クリーニング孔32a、サクション孔32bの配設態様と、シャッタ33の形状と、を詳細に説明する。
ケーシング30が構成する内部空間Gを説明する。内部空間Gは、
図2及び
図3に示すように、ベース部材31とケース部材32の間に形成されている。内部空間Gは、2枚の平板の間に形成された所定の厚みを有する平板状の空間である。内部空間Gは,平面視では、扇状又は半月状なっている。つまり、内部空間Gは、平面視で、円弧の一部を有する形状を有している。
ブロワ孔31aは、内部空間Gにおいて、外周側部分の円弧方向中間に形成されている。
【0034】
サクション孔32bは、比較的大径の孔であり、内部空間Gの外周側部分に設けられている。サクション孔32bは、平面視でブロワ孔31aに対応しており、ブロワ孔31aの円弧方向の反時計回り側(後述する第1回動方向R1側)領域に位置している。クリーニング孔32aは、比較的小径の孔であり、内部空間Gの外周側部分に設けられている。クリーニング孔32aは、サクション孔32bに近接して設けられており、図における円弧方向の時計回り側(後述する第2回動方向R2)に配置されている。クリーニング孔32aは、平面視でブロワ孔31aに対応しており、ブロワ孔31aの円弧方向の時計回り側(後述する第2回動方向R2)領域に位置している。なお、各孔のシャッタ回動方向の位置関係は、モータの回転方向が異なる場合は前記実施形態の場合の逆になる。
以上に述べたように、クリーニング孔32a、サクション孔32bは、シャッタ33の回動方向へずれて配設されている。こうして、シャッタ装置29は、クリーニングパイプ25及び上糸吸引捕捉案内機構20による吸引を選択的に制御可能に構成されている。
【0035】
シャッタ33は、後述する
図11に示すように、内部空間G内では、ベース部材31の内側面に近接又は当接する位置に配置されている。したがって、シャッタ33はケース部材32から離れており、つまり間に内部空間Gを確保している。ただし、クリーニング孔32aの周囲にはベース部材31側に延びる筒状部36が形成されており、筒状部36の先端はシャッタ33に当接又は近接する位置まで延びている。
【0036】
シャッタ33は、
図2及び
図10に示すように、回動軸33aを中心に回動可能となっている。具体的には、シャッタ33は、平面視では、回動軸33aが内部空間Gの円弧側と反対側に設けられており、したがって、シャッタ33は、円弧縁が内部空間Gの円弧縁に近接した状態で沿って第1回動方向R1と第2回動方向R2に回動するようになっている。
シャッタ33の孔33bは、シャッタ33の外周側部分の第2回動方向R2側部分に形成されている。孔33bは、クリーニング孔32aと半径方向位置が同じであり径が大きく形成されている。
以上の構成により、シャッタ33が第1回動方向R1又は第2回動方向R2に回動することによって、クリーニング孔32aのみが開放されたり、サクション孔32bのみが開放されたりする。
【0037】
図10〜
図17を用いて、シャッタ33が取り得る位置を説明する。
図10、
図12、
図14及び
図16は、シャッタ装置の動作の一状態を示す平面図である。
図11、
図13、
図15及び
図17は、シャッタ装置の動作の一状態を示す模式的断面図である。
図10及び
図11に示すように、シャッタ33が全閉位置にあるとき、シャッタ33は、ブロワ孔31aを閉塞する。
シャッタ33の具体的な位置を説明すれば、
図10に示すように、シャッタ33の全閉位置は回動方向中間の位置であり、そこではシャッタ33がブロワ孔31aを閉塞している。
【0038】
図12及び
図13に示すように、シャッタ33が第1負圧位置にあるとき、ブロワ孔31aとクリーニング孔32aとを導通させることでクリーニングパイプ25を動作させる。
シャッタ33の具体的な位置を説明すれば、
図12に示すように、シャッタ33の第1負圧位置はシャッタ33が全閉位置よりも第1回動方向R1にさらに回動した状態であり、シャッタ33がブロワ孔31aの大部分を閉塞しているが、シャッタ33の孔33bがクリーニング孔32aに重なっている。したがって、クリーニング孔32aのみが開放される。
【0039】
図14及び
図15に示すように、シャッタ33が第2負圧位置にあるとき、シャッタ33はクリーニング孔32aを閉塞すると共に、ブロワ孔31aとサクション孔32bとを導通させることで上糸吸引捕捉案内機構20を動作させる。
シャッタ33の具体的な位置を説明すれば、
図14に示すように、シャッタ33の第2負圧位置はシャッタ33が最も第2回動方向R2に回動した状態であり、シャッタ33の第1回動方向R1側端部がクリーニング孔32aを閉塞しているが、ブロワ孔31aを閉塞していない。さらに具体的には、シャッタ33の突出部33cがクリーニング孔32aを閉塞しており、シャッタ33は平面視でサクション孔32bに重なっていない。したがって、サクション孔32bのみが開放される。
この動作時に、内部空間Gにおいて平面視ではサクション孔32b及びその周辺(つまり、内部空間G内の第1回動方向R1側の半分)の流速が他の部分の流速より高くなっており、そのため繊維屑が効果的に除去される。
また、筒状部36の先端がシャッタ33に当接又は近接しているので、クリーニング孔32aからエア漏れが減少している。
【0040】
図16及び
図17に示すように、シャッタ33が滞留物除去位置にあるとき、ブロワ孔31aとサクション孔32b及びクリーニング孔32aを互いに導通させることで、ケーシング30の内部空間Gにある繊維屑が除去される。具体的には、
図16の第1領域Aと第2領域Bに滞留した繊維屑が効果的に除去される。第1領域Aは、ケーシング30内の内部空間Gの一部であってサクション孔32bから第2回動方向R2に離れた端部である。第2領域Bは、ケーシング30内の内部空間Gの一部であってサクション孔32bから第1回動方向R1に離れた端部である。第2領域Bは、サクション孔32bに回動方向に近いので、
図14の状態(第2負圧位置)でもある程度は清掃される。一方、第1領域Aは、サクション孔32bから回動方向に遠いので、
図14の状態(第2負圧位置)では十分に清掃されない。
【0041】
以下、シャッタ33が滞留物除去位置にあるときに
図16の第1領域Aと第2領域Bに滞留した繊維屑が効果的に除去される理由を説明する。
図16に示すように、シャッタ33の滞留物除去位置はシャッタ33が最も第1回動方向R1側に回動した状態であり、ブロワ孔31aのクリーニング孔32a周辺部分が開口している。そして、ブロワ孔31aとサクション孔32bとは互いに導通するが直線状には導通していないので、
図17に示すように、空気は屈曲した流路を形成し、ケーシング30内で空気の流れが乱れる。
この結果、内部空間Gにおいて平面視ではサクション孔32bからさらにクリーニング孔32aまでの領域及びその内周側の領域(つまり、内部空間G内の回動方向中間部分)の流速が他の部分の流速より高くなっており、そのため繊維屑の除去効果が得られ、第1領域A及び第2領域Bの清掃効果が高くなる。さらに具体的には、上記の流速の高い領域がブロワ孔31aよりさらに第2回動方向R2側の部分まで広がっているので、第1領域Aの清掃効果が高くなる。
【0042】
図17に示すように、シャッタ33とケーシング30との間には、内部空間Gとして繊維屑が通過できる空間が形成されている。そのため、シャッタ33が滞留物除去位置にあってケーシング30内に滞留した繊維屑が除去されているときに、繊維屑はシャッタ33とケーシング30との間の空間を通って移動する。したがってケーシング30内の繊維屑がより確実に除去される。
【0043】
(4)制御構成
図1において、自動ワインダ1は、ユニット制御部50を有している。ユニット制御部50は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。ユニット制御部50は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
ユニット制御部50は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
【0044】
ユニット制御部50の各要素の機能は、一部又は全てが、ユニット制御部50を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。具体的には、ユニット制御部50の有するROMには、CPUなどにシャッタ制御手段51としての機能を発揮させるための制御ソフトウェアが記憶されている。その他、制御部の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
ユニット制御部50には、図示しないが、対象物の大きさ、形状及び位置検出するセンサ、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0045】
(5)制御動作
以下、ユニット制御部50とシャッタ制御手段51による制御を、
図9にしたがって説明する。
図9は、シャッタ装置の基本制御動作を示すフローチャートである。
なお、以下に説明する制御フローチャートは例示であって、各ステップは必要に応じて省略及び入れ替え可能である。また、複数のステップが同時に実行されたり、一部又は全てが重なって実行されたりしてもよい。
さらに、制御フローチャートの各ブロックは、単一の制御動作とは限らず、複数のブロックで表現される複数の制御動作に置き換えることができる。
【0046】
最初に、自動ワインダ1の電源を投入する。電源投入直後には、シャッタ33は全閉位置(
図10及び
図11)にある。
ステップS1では、シャッタ33が第1負圧位置(
図12及び
図13)に移動させられ、ヤーントラップ動作が行われる。具体的には、シャッタ制御手段51が、シャッタ33を第1位置に回動させるようにステッピングモータ35に制御信号を送信する。
そして、図略の自動玉揚装置は、給糸ボビン3の糸4を巻取チューブ6に巻き掛け、これにより、糸巻取ユニット2による糸4の巻き取りが開始される。この巻き取り中は、クリーニングパイプ25の基端25bがシャッタ33によって閉塞されていないので、走行する糸4に付着している異物(例えば糸4に付着しているワックス粉や糸屑など)は吸引口25aの近傍を通り過ぎる際にブロワダクト60によって吸引除去される。
【0047】
ステップS2では、ユニット制御部50は糸継要求があるか判定する。
糸継要求がない場合(S2でNo)は、処理をステップS5へ進める。一方、糸継要求がある場合(S2でYes)は、処理をステップS3へ進める。
ステップS3では、シャッタ33が第2負圧位置(
図14及び
図15)に移動させられ、サクション動作が行われる。具体的には、シャッタ制御手段51は、シャッタ33を第2負圧位置に移動するようにステッピングモータ35に制御信号を送信する。これにより上糸吸引捕捉案内機構20のサクションマウス22は吸引状態となり、ユニット制御部50が上糸吸引捕捉案内機構20を回動させると、パッケージ7の外周から糸端が吸引捕捉される。
ステップS4では、ユニット制御部50は糸継装置14から糸継完了に係る信号を受信するまで待機する。ユニット制御部50が上記の信号を受信したら、シャッタ制御手段51は、ステッピングモータ35へ適宜の制御信号を送信し、ユニット制御部50は処理をS5へと進める。
【0048】
ステップS5では、ユニット制御部50は、所定ノット数に達したか否かを判断する。所定ノット数に達していない場合(S5でNo)は、処理はS1へと戻る。一方、この経過時間が所定時間に達している場合(S5でYes)は、プロセスはステップS6に移行する。なお、所定ノット数は特に限定されないし、一定時間毎であっても適宜変更されてもよい
ステップS6では、シャッタ33は滞留物除去位置(
図16及び
図17)に移動させられ、シャッタ装置29のクリーニング動作が実行される。具体的には、シャッタ制御手段51は、シャッタ33を滞留物除去位置に移動させるようにステッピングモータ35に制御信号を送信する。これにより、シャッタ装置29内に滞留した繊維屑がブロワダクト60に吸引回収される。
【0049】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施例及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(1)シャッタ装置が適用される繊維機械の種類は自動ワインダに限定されない。
(2)吸引機構の種類、数は前記実施形態に限定されない。
(3)シャッタ装置に形成された孔の数、位置、互いの関係は前記実施形態に限定されない。