特開2018-127555(P2018-127555A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-127555紫外線硬化型ポリマー及び紫外線硬化型ホットメルト接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-127555(P2018-127555A)
(43)【公開日】2018年8月16日
(54)【発明の名称】紫外線硬化型ポリマー及び紫外線硬化型ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20180720BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20180720BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180720BHJP
【FI】
   C08F293/00
   C09J5/06
   C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-22385(P2017-22385)
(22)【出願日】2017年2月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】戸田 智基
(72)【発明者】
【氏名】石堂 泰志
(72)【発明者】
【氏名】桑原 章滋
(72)【発明者】
【氏名】川端 和裕
【テーマコード(参考)】
4J026
4J040
【Fターム(参考)】
4J026HA11
4J026HA20
4J026HA28
4J026HA32
4J026HA39
4J026HA49
4J026HB11
4J026HB20
4J026HB28
4J026HB32
4J026HB39
4J026HB47
4J026HC11
4J026HC20
4J026HC28
4J026HC32
4J026HC39
4J026HE04
4J040FA231
4J040GA01
4J040JB01
4J040JB08
4J040LA01
4J040PA30
4J040PA32
(57)【要約】
【課題】 本発明は、優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を有する粘着剤を構成し得る紫外線硬化型ポリマーを提供する。
【解決手段】 本発明の紫外線硬化型ポリマーは、主鎖の一方の末端から100ユニット以下のセグメントAと、主鎖の他方の末端から100ユニット以下のセグメントCと、上記セグメントAと上記セグメントCとの間に位置するセグメントBとを有するブロックポリマーであって、上記セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分と上記セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比が100〜80:0〜20であると共に、上記セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分と上記セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比が100〜80:0〜20であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖の一方の末端から100ユニット以下のセグメントAと、主鎖の他方の末端から100ユニット以下のセグメントCと、上記セグメントAと上記セグメントCとの間に位置するセグメントBとを有するブロックポリマーであって、上記セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分と上記セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)が100〜80:0〜20であると共に、上記セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分と上記セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)が100〜80:0〜20であることを特徴とする紫外線硬化型ポリマー。
【請求項2】
重量平均分子量が10万〜30万であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型ポリマー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の紫外線硬化型ポリマーを含有することを特徴とする紫外線硬化型ホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型ポリマー及び紫外線硬化型ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系粘着剤は、粘着テープ、消費者向け商品ラベルなどに用いられている他、透明性、耐熱性及び耐候性という特徴を活かして、パソコン、スマートフォン、テレビ及びデジタルカメラなどの電子機器の光学ディスプレイなどの用途に用いられている。
【0003】
近年、使用環境の改善の観点から接着剤の無溶剤化が推奨されており、アクリル系粘着剤においてもホットメルト化が進んでいる。ホットメルト粘着剤は、テープ、ラベルへの塗布工程において乾燥工程が必要ないことから、乾燥工程用の設備を必要とせず、省エネルギー化にも大きく寄与する。
【0004】
近年では、紫外線による架橋反応を用いて、従来の熱可塑アクリル系粘着剤では成し得なかった良好な粘着性を発現する紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が開発されている。
【0005】
紫外線硬化型ホットメルト粘着剤としては、特許文献1に、ガラス転移温度が−5℃以下で重量平均分子量が50000〜350000であるビニル系共重合体(A)を含有する紫外線硬化型ホットメルト粘着剤組成物であって、前記ビニル系共重合体(A)が、特定のモノマー成分を構成成分として、重合して得られたものである紫外線硬化型ホットメルト粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−299017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、粘着剤の粘着特性を表す物性として、定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力が挙げられる。粘着剤は、その用途によっては、これらの全ての物性において優れていることが要求される。
【0008】
上記紫外線硬化型ホットメルト粘着剤組成物の定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を改善する方法として、原料となるモノマーの種類の変更、共重合性ベンゾフェノン類の使用量の変更、又は、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤に含まれているポリマーの分子量分布を小さくする方法などが挙げられる。
【0009】
しかしながら、上記方法では、上記紫外線硬化型ホットメルト粘着剤組成物の定荷重保持力を向上させようとすると、せん断保持力が低下する一方、上記紫外線硬化型ホットメルト粘着剤組成物のせん断保持力を向上させようとすると、剥離強度及び定荷重保持力が低下してしまい、剥離強度及び定荷重保持力と、せん断保持力とはトレード・オフの関係にあり、定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力において満足のいくホットメルト粘着剤組成物を得ることができなかった。
【0010】
本発明は、優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を有する粘着剤を構成し得る紫外線硬化型ポリマー及びこれを含む紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の紫外線硬化型ポリマーは、主鎖の一方の末端から100ユニット以下のセグメントAと、主鎖の他方の末端から100ユニット以下のセグメントCと、上記セグメントAと上記セグメントCとの間に位置するセグメントBとを有するブロックポリマーであって、上記セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分と上記セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)が100〜80:0〜20であると共に、上記セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分と上記セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)が100〜80:0〜20であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の紫外線硬化型ポリマーは、上述の如き構成を有していることから、硬化後において定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力に優れた粘着物性を発現する。
【0013】
本発明の紫外線硬化型ポリマーは、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を構成することができる。紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、これを紫外線硬化させることによって、優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を発現する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の紫外線硬化型ポリマーは、主鎖の一方の末端から100ユニット以下のセグメントAと、主鎖の他方の末端から100ユニット以下のセグメントCと、上記セグメントAと上記セグメントCとの間に位置するセグメントBとを有するブロックポリマーであって、上記セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分と上記セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)が100〜80:0〜20であると共に、上記セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分と上記セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)が100〜80:0〜20である。
【0015】
紫外線硬化型ポリマーは、直鎖状の主鎖に側鎖(ペンダント基)として紫外線反応性基が結合している。紫外線硬化型ポリマーに紫外線を照射すると、紫外線反応性基においてラジカルが発生し、紫外線硬化型ポリマー分子間で架橋反応が生じ、紫外線硬化型ポリマーに網目構造が形成されることによって所望の粘着性能が発現する。
【0016】
発明者らは、鋭意検討した結果、紫外線硬化型ポリマーに紫外線を照射することによって発現する粘着特性を表す物性である定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力の全てを優れたものとするために、主鎖の末端部を構成しているセグメントA及びCのユニット数を制御すると共に、セグメントA及びCに含まれている紫外線反応性基を有するモノマー成分と、セグメントBに含まれている紫外線反応性基を有するモノマー成分とのモル比を所定比率とすればよいことを見出した。
【0017】
紫外線硬化型ポリマーは、セグメントA、セグメントB及びセグメントCを有しており、セグメントA及びCが主鎖の末端部を構成し、セグメントBがセグメントAとセグメントCの間に位置し主鎖の中央部を構成している。
【0018】
セグメントAは、主鎖の一方の末端から100ユニット以下の鎖から構成されている。即ち、セグメントAは、主鎖の一方の末端を構成しているモノマーに別のモノマーが重合し、このモノマーに更に別のモノマーが重合することを繰り返して鎖状に形成されており、全体として100個以下のモノマー成分によって構成されている。換言すれば、セグメントAは、主鎖の一方の末端を構成しているモノマー成分からこのモノマー成分を含めて100個以下のモノマー成分が鎖状に重合して形成されている。
【0019】
同様に、セグメントCは、主鎖の他方の末端から100ユニット以下の鎖から構成されている。即ち、セグメントCは、主鎖の一方の末端を構成しているモノマーに別のモノマーが重合し、このモノマーに更に別のモノマーが重合することを繰り返して鎖状に形成されており、全体として100個以下のモノマー成分によって構成されている。換言すれば、セグメントCは、主鎖の他方の末端を構成しているモノマー成分からこのモノマー成分を含めて100個以下のモノマー成分が鎖状に重合して形成されている。
【0020】
また、セグメントAとセグメントCとの間にはセグメントBが位置している。このセグメントBは、モノマーが重合することによって鎖状に形成されている。セグメントAにおける主鎖の末端とは反対側のモノマー成分と、セグメントBの鎖の一方の末端のモノマー成分とが重合によって結合されていると共に、セグメントCにおける主鎖の末端とは反対側のモノマー成分と、セグメントBの鎖の他方の末端のモノマー成分とが重合によって結合されていることが好ましい。即ち、紫外線硬化型ポリマーは、セグメントA−セグメントB−セグメントCのブロック構造を有していることが好ましい。
【0021】
そして、セグメントA及びセグメントCは、紫外線反応性基を有するモノマー成分を含有している。一方、セグメントBは、紫外線反応性基を有するモノマー成分を含有していても含有していなくてもよいが、後述するように、セグメントBに、紫外線反応性基を有するモノマー成分が含有されている場合、セグメントBに含まれている、紫外線反応性基を有するモノマー成分量は、セグメントA及びセグメントCに含まれている、紫外線反応性基を有するモノマー成分量よりも非常に少ない量に制限されている。
【0022】
即ち、紫外線硬化型ポリマーにおいて、セグメントA及びセグメントCのユニット数を100以下とすることによって、紫外線硬化型ポリマーの主鎖のできるだけ両末端部にセグメントA及びセグメントCをそれぞれ位置させると共に、紫外線硬化型ポリマーの両末端部を構成しているセグメントA及びセグメントC中に、紫外線反応性基を有するモノマー成分をできるだけ存在させることによって、紫外線硬化型ポリマーにおいて、紫外線反応性基を有するモノマーを主鎖の末端部に局在化させて、紫外線照射による架橋時の1分子中の架橋点間距離を長くしている。このように、架橋点間距離を長くすることによって、架橋後の紫外線硬化型ポリマーに適度な柔軟性を付与し、その結果、紫外線硬化型ポリマーは、紫外線照射による硬化後において、優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を有している。
【0023】
セグメントAのユニット数、即ち、セグメントAを構成しているモノマー成分の数は、紫外線反応性基を有しているモノマー成分をできるだけ紫外線硬化型ポリマーの主鎖の末端部に局在化させるために100ユニット以下とされ、90ユニット以下が好ましく、50ユニット以下がより好ましく、35ユニット以下が更に好ましく、10ユニット以下が特に好ましい。
【0024】
セグメントAのユニット数は、紫外線硬化後の紫外線硬化型ポリマーに優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を付与するために、1ユニット以上であればよい。
【0025】
セグメントCのユニット数、即ち、セグメントCを構成しているモノマー成分の数は、紫外線反応性基を有しているモノマー成分をできるだけ紫外線硬化型ポリマーの主鎖の末端部に局在化させるために100ユニット以下とされ、90ユニット以下が好ましく、50ユニット以下がより好ましく、35ユニット以下が更に好ましく、10ユニット以下が特に好ましい。
【0026】
セグメントCのユニット数は、紫外線硬化後の紫外線硬化型ポリマーに優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を付与するために、1ユニット以上であればよい。
【0027】
セグメントBのユニット数、即ち、セグメントBを構成しているモノマー成分の数は、紫外線反応性基を有しているモノマー成分をできるだけ紫外線硬化型ポリマーの主鎖の末端部に局在化させるために800ユニット以上が好ましく、900ユニット以上がより好ましく、1100ユニット以上が特に好ましい。
【0028】
セグメントBのユニット数は、紫外線硬化後の紫外線硬化型ポリマーに優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を付与するために、1600ユニット以下が好ましく、1400ユニット以下がより好ましく、1200ユニット以下が特に好ましい。
【0029】
紫外線硬化型ポリマーにおいて主鎖を構成しているモノマー成分、即ち、セグメントA〜Cを構成しているモノマー成分としては、特に限定されないが、アクリル系モノマーが好ましい。アクリル系モノマーは、紫外線(UV)領域の光線を吸収する芳香族環などの共役系の分子構造を有していないことが好ましい。アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)メタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートは、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートが好ましい。アクリル系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0030】
セグメントA及びセグメントCは、紫外線反応性基を有するモノマー成分を含有している。セグメントBは、必要に応じて、紫外線反応性基を有するモノマー成分を含有している。紫外線反応性基とは、紫外線の照射によって励起されてラジカルを発生させ、ラジカルが水素引抜反応を生じることによって、紫外線硬化型ポリマー分子間に架橋構造を形成させる官能基をいう。
【0031】
紫外線反応性基としては、紫外線の照射によって励起されてラジカルを発生すれば、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン基、ベンゾイン基、マレイミド基及びこれらの誘導体などが挙げられ、ベンゾフェノン基及びこの誘導体が好ましい。紫外線反応性基は、紫外線硬化型ポリマー分子に単独で含まれていても二種以上が含まれていてもよい。
【0032】
紫外線反応性基を有するモノマーとしては、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン基又はその誘導体を有するアクリル系モノマーが好ましく挙げられる。なお、紫外線反応性基を有するモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0033】
ベンゾフェノン基又はその誘導体を有するアクリル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシ−4’−ブロモベンゾフェノンなどが挙げられ、4−アクリロイルオキシベンゾフェノンが好ましい。なお、ベンゾフェノン基又はその誘導体を有するアクリル系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0034】
紫外線硬化型ポリマー全体に対する、セグメントA中に含有されている紫外線反応性基を有するモノマー成分の含有量は、0.1〜0.3質量%が好ましい。紫外線反応性基を有するモノマー成分の含有量が上記範囲内であると、硬化後の紫外線硬化型ポリマーは、優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を有する。
【0035】
紫外線硬化型ポリマー全体に対する、セグメントC中に含有されている紫外線反応性基を有するモノマー成分の含有量は、0.1〜0.3質量%が好ましい。紫外線反応性基を有するモノマー成分の含有量が上記範囲内であると、硬化後の紫外線硬化型ポリマーは、優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を有する。
【0036】
セグメントBは、硬化後の紫外線硬化型ポリマーが、優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を有するので、紫外線反応性基を有するモノマー成分を含有していないことが好ましいが、セグメントBは、紫外線反応性基を有するモノマー成分を含有していてもよい。セグメントBが紫外線反応性基を有するモノマー成分を含有している場合、紫外線硬化型ポリマー全体において、セグメントB中に含有されている紫外線反応性基を有するモノマー成分の含有量は、0.06質量%以下が好ましく、0.04質量%以下がより好ましく、0.02質量%以下が特に好ましい。紫外線反応性基を有するモノマー成分の含有量が0.06質量%以下であると、硬化後の紫外線硬化型ポリマーは、優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を有する。
【0037】
セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分とセグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)は、100〜80:0〜20であり、100〜90:0〜10が好ましい。上記モル比が上記範囲内であると、硬化後の紫外線硬化型ポリマーは、優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を有する。
【0038】
セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分とセグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)は、100〜80:0〜20であり、100〜90:0〜10が好ましい。上記モル比が上記範囲内であると、硬化後の紫外線硬化型ポリマーは、優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を有する。
【0039】
セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分とセグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)は、30〜70:70〜30が好ましく、40〜60:60〜40がより好ましい。上記モル比が上記範囲内であると、硬化後の紫外線硬化型ポリマーは、均一な架橋構造を有し、更に優れた定荷重保持力、剥離強度及びせん断保持力を有する。
【0040】
紫外線硬化型ポリマー全体における紫外線反応性基を有するモノマーの含有量は、0.1〜1質量%が好ましく、0.2〜0.5質量%がより好ましく、0.3〜0.45質量%が特に好ましい。
【0041】
紫外線硬化型ポリマーの重量平均分子量は、10万〜30万が好ましく、13万〜25万がより好ましく、15万〜20万が特に好ましい。紫外線硬化型ポリマーの重量平均分子量が10万以上であると、硬化後の紫外線硬化型ポリマーは、優れた定荷重保持力及び剥離強度を有する。紫外線硬化型ポリマーの重量平均分子量が30万以下であると、硬化後の紫外線硬化型ポリマーは、優れたせん断保持力を有する。
【0042】
紫外線硬化型ポリマーの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.05〜2.5が好ましく、1.1〜2.0がより好ましく、1.15〜1.8が特に好ましい。紫外線硬化型ポリマーの分子量分布が1.05以上であると、剥離強度及びタックが向上し好ましい。紫外線硬化型ポリマーの分子量分布が2.5以下であると、定荷重保持力及びせん断保持力が向上し好ましい。
【0043】
なお、紫外線硬化型ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、下記の要領で測定された値をいう。
【0044】
紫外線硬化型ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、紫外線硬化型ポリマー6〜7mgを採取し、採取した紫外線硬化型ポリマーを試験管に供給した上で、試験管にTHF(テトラヒドロフラン)を加えて紫外線硬化型ポリマーを100倍に希釈し、フィルタリングを行って、測定試料を作製する。
【0045】
この測定試料を用いてGPC法によって紫外線硬化型ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量を測定することができる。
【0046】
紫外線硬化型ポリマーの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、例えば、下記測定装置及び測定条件にてRI検出器にて測定することができる。
測定装置 Water社製 商品名「e2695」
測定条件 カラム:shodex社製 GPC KF−806Lを2本直列に接続
移動相:テトラヒドロフラン使用 1.0mL/分
検出器:RI検出器(e2414)
UV検出器(e2998)
標準物質:ポリスチレン
SEC温度:40℃
【0047】
次に、紫外線硬化型ポリマーの製造方法について説明する。紫外線硬化型ポリマーの製造方法は、特に限定されないが、リビングラジカル重合によって製造されることが好ましい。
【0048】
リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応などの副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合である。リビングラジカル重合によれば、例えばフリーラジカル重合などと比較してより均一な分子量及び組成を有するポリマーが得られ、低分子量成分などの生成を抑えることができる。また、ポリマー鎖の端部のごく狭い領域にモノマー組成に偏りを持たせる(ブロック化)させることができ、ブロック化させることでポリマー鎖中の架橋点間距離を拡げることが可能となる。
【0049】
リビングラジカル重合方法としては、特に限定されず、高分子論文集64巻6号第329〜342頁に記載の各種方法が挙げられるが、ニトロキシドを介するリビングラジカル重合(NMP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆付加・脱離連鎖移動重合反応(RAFT)、有機テルル化合物を用いるリビングラジカル重合が重合の制御が行いやすい点から好ましい。
【0050】
リビングラジカル重合において、分散安定剤を用いてもよい。分散安定剤として、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0051】
リビングラジカル重合の方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などが挙げられる。リビングラジカル重合において重合溶媒を用いる場合、重合溶媒は、特に限定されず、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレンなどの非極性溶媒や、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの高極性溶媒を用いることができる。重合溶媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、重合温度は、重合速度の観点から0〜110℃が好ましい。
【0052】
リビングラジカル重合によって紫外線硬化型ポリマーを製造する具体的な方法としては、例えば、反応容器内にセグメントAを構成するためのモノマーを加えて重合反応を行い、セグメントAを構成するためのモノマーの重合転化率が90%を超えた後、セグメントBを構成するためのモノマーを投入して重合反応を行い、セグメントBを構成するためのモノマーの重合転化率が90%を超えた後、上記セグメントCを構成するためのモノマーを投入して重合反応を行い、セグメントCを構成するためのモノマーの重合転化率が90%を超えた後、反応を停止する方法が挙げられる。
【0053】
なお、セグメントを構成するためのモノマーの重合転化率とは、任意のセグメントを構成するためのモノマーの全質量に対する、重合によって消費されたモノマー質量の百分率をいう。
【0054】
上述の紫外線硬化型ポリマーに、その物性を損なわない範囲内において、粘着付与剤、紫外線重合開始剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、及び帯電防止剤などの他の添加剤が添加されることによって、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が構成される。紫外線硬化型ポリマーに添加剤を含有させることによって、粘着特性の向上及び他特性の付与を期待することができる。
【0055】
紫外線硬化型ポリマーは紫外線硬化型ホットメルト粘着剤として用いることができる。紫外線硬化型ポリマーは、粘着シート(ラベル、粘着テープなど)の用途に好適に用いることができる。
【0056】
紫外線硬化型ポリマーを用いて粘着シートを製造する要領を説明する。先ず、合成樹脂シート(ポリエチレンテレフタレートシートなど)などの支持体上に紫外線硬化型ポリマーを汎用の方法を用いて塗工する。次に、紫外線硬化型ポリマーに紫外線を照射することによって紫外線硬化型ポリマーを架橋させることによって硬化させて粘着層を形成する。粘着シートは、支持体と、この支持体上に積層一体化され且つ紫外線硬化型ポリマーの硬化物を含む粘着層とを含んでいる。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0058】
(実施例1〜9、比較例1〜3)
窒素置換した1L反応容器に、表1のセグメントA第1段の欄に示した所定量の4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、臭化第1銅及びアセトニトリルを供給して70℃に昇温した後に30分間攪拌した。
【0059】
次に、上記反応容器に、表1のセグメントA第2段の欄に示した所定量の4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、酢酸ブチル、2−ブロモ酪酸エチル及びペンタメチルジエチレントリアミンを供給して75℃に昇温してセグメントAを構成するモノマーの重合を開始した。
【0060】
反応容器内に供給したセグメントAの原料モノマーの重合転化率が95%となった時点で、上記反応容器内に、表1のセグメントBの欄に示した所定量の4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、トルエン、臭化第1銅及びペンタメチルジエチレントリアミンを供給して75℃にてセグメントBを構成するモノマーの重合を行った。
【0061】
次に、反応容器内に供給したセグメントBの原料モノマーの重合転化率が95%となった時点で、上記反応容器内に、表1のセグメントCの欄に示した所定量の4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、トルエン、臭化第1銅及びペンタメチルジエチレントリアミンを供給して75℃にてセグメントCを構成するモノマーの重合を行い、反応容器内に供給したセグメントCの原料モノマーの重合転化率が95%となった時点で、反応容器内に反応希釈溶剤としてトルエン50質量部を供給して反応容器内の反応溶液を希釈すると共に反応溶液を冷却して重合を停止させて紫外線硬化型ポリマーを得た。
【0062】
得られた紫外線硬化型ポリマーについて、定荷重剥離力、粘着力及びせん断保持力を下記の要領で測定し、その結果を表2に示した。
【0063】
得られた紫外線硬化型ポリマーについて、紫外線反応性基を有するモノマーの含有量、紫外線硬化型ポリマー全体に対する、セグメントA〜Cのそれぞれに含有されている紫外線反応性基を有するモノマー成分の含有量、セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分とセグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)、セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分とセグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)、セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分とセグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)、セグメントA〜Cのユニット数、重量平均分子量、数平均分子量、分散度を測定し、その結果を表2に示した。
【0064】
なお、表2において、「セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分とセグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)」は「セグメントA及びBの紫外線反応性基を有するモノマー比率(A:B)」と表記した。「セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分とセグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントB中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)」は「セグメントC及びBの紫外線反応性を有するモノマー比率(C:B)」と表記した。「セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分とセグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル比(セグメントA中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数:セグメントC中の紫外線反応性基を有するモノマー成分のモル数)」は「セグメントA及びCの紫外線反応性基を有するモノマー比率(A:C)」と表記した。
【0065】
(定荷重保持力)
得られた紫外線硬化型ポリマーをポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚みが20μmとなるように塗工した。ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工した紫外線硬化型ポリマーに、紫外線照射装置(ヘレウス(旧フュージョンUVシステムズ)製 商品名「Ligth Hammer6(Hバルブ使用)」)を用いて、紫外線(UV−C)を照射強度48mW/cm2、積算光量60mJ/cm2にて照射して、紫外線硬化型ポリマーを硬化させて粘着層とし、粘着シートを製造した。得られた粘着シートを幅15mm、長さ80mmの平面長方形状に切断して測定試料を作製した。
【0066】
又、表面が#240の耐水やすりで研磨され且つヘキサン及びアセトンの混合溶剤で払拭、脱脂されたSUS板を用意し、このSUS板上に測定試料をその粘着層がSUS板側となるように重ね合わせた後、測定試料上に2kgのハンドローラーを2往復させることによって、測定試料をSUS板上に貼付させた。
【0067】
次に、測定試料をSUS板上に貼付させた直後(養生なし)に、測定試料の長さ方向の端部に50gの分銅を取り付け、SUS板を水平となるように維持した。この時、SUS板上に貼付した測定試料が下側となるようにし、分銅が空中に浮いた状態とした。なお、雰囲気温度を23℃に維持した。
【0068】
SUS板に貼付した測定試料が1時間当たりに剥離する長さを測定した。なお、測定試料が、1時間経過する前に長さ方向の全長に亘って剥離した場合には、測定試料が長さ方向の全長に亘って剥離するのに要した時間を測定し、この時間に基づいて1時間当たりに剥離する長さを比例換算して求めた。
【0069】
(剥離強度)
定荷重保持力の測定時と同様の要領で、測定試料をSUS板上に貼付させた。測定試料をSUS板上に貼付させてから20分間に亘って養生した後、卓上形精密万能試験機(島津製作所製 商品名「オートグラフAGS−100NX」)を用いて180°の角度で300mm/分の速度で測定試料をSUS板上から剥離し、そのときの剥離強度(N/15mm)を測定した。
【0070】
SUS板の代わりにポリカーボネート板又はアクリル板を用いたこと以外はSUS板の場合と同様の要領で剥離強度(N/15mm)を測定した。
【0071】
(せん断保持力)
定荷重保持力の測定時と同様の要領で測定試料を作製した。測定試料をその一端から長さ方向に25mmの部分のみをSUS板上に貼付したこと以外は、定荷重保持力の測定時と同様の要領でSUS板上に測定試料を貼付した。
【0072】
SUS板上に測定試料を貼付してから30分間に亘って養生した後、測定試料の他端部に1kgの分銅を取り付けた。表面に測定試料が貼付されたSUS板を80℃に維持されたオーブン内に供給し、測定試料の長さ方向が垂直方向となり且つ分銅が測定試料の下側に位置した状態となるようにSUS板を1時間に亘って保持した。測定試料とSUS板との貼着部分において、測定前後の測定試料の変位量(mm)を測定した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】