【課題】マットレスや枕などの寝具、あるいはブラジャーのパットなどの衣料のように身体に接して、あるいは身体近くで用いた場合に、身体の熱による熱こもりを防ぎ、蒸れ難くできる軟質ポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【解決手段】ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合されたポリウレタンフォーム組成物から得られた軟質ポリウレタンフォームにおいて、添加剤としてグラフェンを含むものとし、添加したグラフェンによって軟質ポリウレタンフォームの熱伝導性を大にし、寝具や衣料などに使用した場合に熱のこもりを防ぎ、蒸れ難くした。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合された軟質ポリウレタンフォーム組成物から、ポリオールとイソシアネートの反応により得られる。
【0014】
ポリオールとしては、軟質ポリウレタンフォーム用のポリオールを使用することができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの何れでもよく、それらの一種類あるいは複数種類を使用してもよい。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリーエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0017】
ポリオールについては、水酸基価(OHV)が25〜70mgKOH/g、官能基数が2〜4、重量平均分子量が2000〜7000であるポリオールを単独または複数用いることが好ましい。さらに、追加的に水酸基価(OHV)が50〜840mgKOH/g、官能基数が2〜4、重量平均分子量が200〜2000であるポリオールを併用することが好ましい。
【0018】
イソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。
【0019】
イソシアネートインデックス(INDEX)は、70以上が好ましく、より好ましくは70〜120である。イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[イソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0020】
発泡剤としては、水、代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、ポリオールとイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤としての水の量は、ポリオール100重量部に対して1.0〜5.5重量部が好ましい。
【0021】
触媒としては、公知のウレタン化触媒を併用することができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N−エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができ、アミン触媒と金属触媒の何れか一方のみ、あるいは両者の併用でもよい。アミン触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましく、より好適には0.2〜1重量部である。金属触媒の量は、0又は0.01〜1重量部が好ましい。
【0022】
添加剤としては、少なくともグラフェンが使用される。グラフェンは、炭素原子が六角形の網目状に結合したシートで、その厚みが炭素原子1個分の厚みである。本実施例で使用されるグラフェンは、平板状(鱗片状)で、平均平面サイズ(平面上の任意の方向における最大径(最大幅)の平均値)が0.01〜3mm、好適には0.05〜1.5mm程度のものが、ポリオール等に分散しやすく、軟質ポリウレタンフォームの発泡に悪影響を与えず、良好な熱伝導性が得られる。なお、平均平面サイズは、顕微鏡、マイクロスコープ等の拡大鏡で拡大写真を撮り、求めることができる。前記グラフェンの配合量は、ポリオール100重量部に対して5〜60重量部、より好適には9〜42重量部が好ましい。グラフェンの配合量が少なすぎると良好な熱伝導性が得られず、一方、多すぎると軟質ポリウレタンフォームの発泡性と物性に悪影響を与えるようになる。
【0023】
前記添加剤には、グラフェンと共にその他の物質を加えてもよい。例えば、整泡剤、着色剤、難燃剤等を上げることができる。整泡剤としては、ウレタンフォーム用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。着色剤は、軟質ポリウレタンフォームの用途に応じたものが使用され、また、難燃剤は、軟質ポリウレタンフォームの用途が難燃性の求められる場合に使用される。
【0024】
前記軟質ポリウレタンフォーム用組成物のポリオールとイソシアネートを反応させて発泡させることにより軟質ポリウレタンフォームが製造される。
軟質ポリウレタンフォームの製造方法における発泡は、スラブ発泡が好ましい。スラブ発泡は、混合した軟質ポリウレタンフォーム用組成物(ポリウレタンフォーム原料)を混合させてベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。
【0025】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、グラフェンが軟質ポリウレタンフォーム用組成物に配合されているため、発泡時に軟質ポリウレタンフォームの樹脂骨格に少なくとも一部が埋設され、あるいは骨格や気泡の膜の表面に接着した状態となる。そのため、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、使用によって繰り返し圧縮されても、グラフェンが軟質ポリウレタンフォームから脱落してグラフェンの配合量(含有量)が減少することがなく、良好な熱伝導性を維持することができ、蒸れ防止効果を持続することができる。
【0026】
なお、本発明とは異なり、グラフェンを含まない軟質ポリウレタンフォームに、含浸などによる後工程でグラフェンを軟質ポリウレタンフォームの表面あるいは内部に導入した場合、グラフェンは、軟質ポリウレタンフォームの樹脂骨格や気泡の膜表面に付着しているだけであるため、軟質ポリウレタンフォームの使用中にグラフェンが軟質ポリウレタンフォームから徐々に脱落して、グラフェンの量が減少してしまう。
【0027】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの用途は限定されず、身に着ける物、あるいは傍に置く物などに特に好適である。例えば、寝具(枕、マットレス)、座布団、座椅子用パッド、衣料用パット(例えばブラジャー用パット)、車両用座席のパット(クッション)等を挙げることができる。特に寝具又は衣料用が好適である。
【0028】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、蒸れ防止効果を得るため、熱伝導率(JISA1412−2)が0.0380W/mK以上であること好ましく、さらにより良好な蒸れ防止効果を得るためには、0.0400W/mK以上であることが好ましい。
【0029】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、用途がマットレスや枕などの寝具、座布団などにあっては、使用時の体重で3〜80%程度圧縮されることになる。また、ブラパットなどの衣料用においては、軟質ポリウレタンフォームが熱プレス(熱圧縮)により3〜90%程度圧縮されて賦形されたものが使用される。そのため、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、圧縮時の熱伝導率が大であるのが好ましく、具体的には50%圧縮時の熱伝導率が非圧縮時の熱伝導率よりも大であるのが好ましく、50%圧縮時の熱伝導率が非圧縮時の熱伝導率よりも0.0006W/mK以上大きいのが効果的でより好ましい。なお、軟質ポリウレタンフォームの熱プレスによる賦形は、所定厚みの軟質ポリウレタンフォームを、150〜250℃程度に加熱した熱板や型によって所定形状に圧縮して賦形し、その後冷却することにより行うことができる。熱プレスにより賦形された軟質ポリウレタンフォームは、織布などの表面材で覆われて使用される。
【0030】
また、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、衣料用又は寝具用の場合、25%硬さ(JISK6400−2)が15〜260N、より好適には15〜100N、反発弾性(JISK6400−3)が2〜40%、通気性(JISK6400−7)が40〜250L/min、密度が18〜70kg/m
3であるのが好ましい。25%硬さが上記範囲内であれば、軟質ポリウレタンフォームが3〜80%程度圧縮され、圧縮時の熱伝導率を向上させることができる。
【0031】
軟質ポリウレタンフォームの25%硬さ及び反発弾性の調節はポリオールの種類及び添加量、INDEX調整により、また通気性の調節はポリオール及びイソシアネートの種類及び添加量、INDEX調整により、密度は水の添加量、発泡剤量によって調節することができる。特に蒸れ防止効果を高めるには、通気性が50L/min以上が好ましく、より好ましくは100L/min以上である。
【0032】
なお、総合的に蒸れ防止効果を得るためには、少なくとも通気量が50L/min以上であり、かつ非圧縮時の熱伝導率が0.0380W/mK以上であることが好ましいが、より好適には、通気量が100L/min以上であり、かつ非圧縮時の熱伝導率が0.0400W/mK以上、特に0.0420W/mK以上であることが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下の原料を
図1に示す配合で混合し、反応・発泡させて各実施例及び各比較例の軟質ポリウレタンフォームを作製した。
・ポリオールA:ポリエーテルポリオール、Mw1000、官能基数3、水酸基価160mgKOH/g、開始剤をグリセリンとして、プロピレンオキサイドを付加重合して得られたポリエーテルポリオール。
・ポリオールB:ポリエーテルポリオール、Mw3000、官能基数3、水酸基価56mgKOH/g、品番;GP3050NS、三洋化成工業株式会社製
・ポリオールC:ポリマーポリオール(グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合したポリエーテルポリオール60質量%にスチレン:アクリロニトリルの質量比が8:2の混合物40質量%をグラフト重合したもの)、Mw5000、固形分40質量%、水酸基価33(mgKOH/g)、水酸基についての官能基数3
・アミン触媒A:品番;NE300、エアプロダクツ株式会社製
・アミン触媒B:品番;33LV、エアプロダクツ株式会社製
・整泡剤:品番;NIAX siliconeL595、モメンティブ製
・グラフェン:品番;HC−95、Paterson社製
・膨張黒鉛:三洋貿易社製、商品名「SYZR 502FP」
・金属触媒:オクチル酸第一錫、品番;MRH110、城北化学工業株式会社製
・MDI:クルードMDI、品番;ルプラネートM5S、BASF社製
・TDI:2,4−TDI80%と2,6−TDI20%の混合物、品番;T−80、日本ポリウレタン社製
【0034】
実施例1〜実施例7及び比較例1〜3は、イソシアネートとしてMDIを用いた例であり、かつ比較例1はグラフェンも膨張黒鉛も含まない例、比較例2はグラフェンを含まず、膨張黒鉛を含む例、比較例3は比較例1よりもイソシアネートインデックスを高くした例である。また、実施例8及び比較例4はイソシアネートとしてTDIを用いた例であり、かつ比較例4はグラフェンと膨張黒鉛の何れも含まない例である。
【0035】
得られた実施例1〜8及び比較例1〜4に対して、密度(JISK7222)、ILD25%硬さ(JISK6400−2)、反発弾性(JISK6400−3)、通気性(JISK6400−7 A法)を測定した。熱伝導率(JIS A1412−2)は、非圧縮状態と50%圧縮状態で測定した。測定結果は
図1に示す。
図1における最下段の[差]は、(50%圧縮状態の熱伝導率)―(非圧縮状態の熱伝導率)の差である。
【0036】
イソシアネートがMDIである比較例1及び実施例1〜6の場合、非圧縮状態の熱伝導率は、グラフェンの配合量が0重量部の比較例1では0.0393W/mKであるのに対し、グラフェンの配合量が5重量部の実施例1では0.0402W/mK、グラフェンの配合量が10重量部の実施例2では0.0424W/mK、グラフェンの配合量が15重量部の実施例3では0.0446W/mK、グラフェンの配合量が20重量部の実施例4では0.0457W/mK、グラフェンの配合量が40重量部の実施例5では0.0538W/mK、グラフェンの配合量が60重量部の実施例6では0.0568W/mKであり、グラフェンの配合量増大によって熱伝導率を大にすることができる。
【0037】
また、グラフェンに代えて膨張黒鉛を使用した比較例2は、配合量が15重量部で0.0414W/mKとなり、膨張黒鉛を添加すれば熱伝導性も上がる。しかし、添加量に対する効率である熱伝導性の向上効果は、グラフェンよりも劣り、同添加量の実施例3や10重量部添加した実施例2よりも低く劣る。
【0038】
イソシアネートインデックスが比較例1よりも高い比較例3は、熱伝導率が下がり、0.0348W/mK である。一方、そのイソシアネートインデックスと同じでかつ、グラフェンを15重量部配合した実施例7は、熱伝導率が0.0383W/mKであり、グラフェンを含まない比較例3よりも熱伝導率を大(熱伝導性を良好)にできる。
【0039】
図2は、比較例1及び実施例1〜6における熱伝導率(非圧縮状態)の値とグラフェンの配合量との関係を示すグラフである。なお、グラフェン及び膨張黒鉛の配合量を大にし過ぎると、軟質ポリウレタンフォームの発泡を良好に行えなくなる。
【0040】
また、50%圧縮状態の熱伝導率の測定結果は、
図1に示すようにグラフェンの配合量が0重量部の比較例1では、非圧縮状態の熱伝導率より小になったが、グラフェンの配合量が5重量部以上の実施例1〜実施例6では、非圧縮状態の熱伝導率よりも大になり、圧縮によって熱伝導率を大(熱伝導性をより良好)にできる。また、膨張黒鉛を用いた比較例2では、非圧縮状態の0.0414W/mKから圧縮状態で0.0417W/mKと、非圧縮状態の熱伝導率よりも大になるものの、わずかであった。
【0041】
一方、イソシアネートがTDIである比較例4及び実施例8の場合、非圧縮状態の熱伝導率は、
図1に示すようにグラフェンの配合量が0重量部の比較例4では0.0372W/mKであったのに対し、グラフェンの配合量が15重量部の実施例8では0.0403W/mKであり、グラフェンの配合によって熱伝導率を大(熱伝導性を良好)にできる。
【0042】
このように、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、良好な熱伝導性を有するものであり、マットレスや枕などの寝具、ブラジャーのパットなどの衣料に使用された場合、身体からの熱が軟質ポリウレタンフォームの良好な熱電伝導性によって、軟質ポリウレタンフォーム内にこもるのを防ぎ、外部に放出して蒸れ難くできる。