(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-12763(P2018-12763A)
(43)【公開日】2018年1月25日
(54)【発明の名称】ナノ材料組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 1/02 20060101AFI20171222BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20171222BHJP
C08K 9/00 20060101ALI20171222BHJP
C08B 15/04 20060101ALI20171222BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20171222BHJP
【FI】
C08L1/02
C08K3/04
C08K9/00
C08B15/04
B82Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-142397(P2016-142397)
(22)【出願日】2016年7月20日
(71)【出願人】
【識別番号】594033813
【氏名又は名称】株式会社大成化研
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100127708
【弁理士】
【氏名又は名称】木暮 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】松原 賢政
【テーマコード(参考)】
4C090
4J002
【Fターム(参考)】
4C090AA06
4C090BA34
4C090BB02
4C090BB12
4C090BB36
4C090BB52
4C090BC01
4C090BD19
4C090BD24
4C090DA10
4C090DA31
4J002AB011
4J002DA016
4J002FA041
4J002FB076
4J002FB086
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】成形体としたときの表面硬度を向上させることができるナノ材料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のナノ材料組成物は、分散媒と、前記分散媒に分散されたセルロースナノファイバー及びカーボンナノチューブとを含むことを特徴とする。前記カーボンナノチューブの表面の少なくとも一部が極性基で修飾されているとよい。前記極性基としては、水酸基、カルボニル基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒と、
前記分散媒に分散されたセルロースナノファイバー及びカーボンナノチューブと
を含むことを特徴とするナノ材料組成物。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの表面の少なくとも一部が極性基で修飾されている請求項1に記載のナノ材料組成物。
【請求項3】
前記極性基が、水酸基、カルボニル基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種である請求項2に記載のナノ材料組成物。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの平均直径が0.01nm以上500nm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のナノ材料組成物。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のナノ材料組成物。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブの含有量が0.01質量%以上30質量%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のナノ材料組成物。
【請求項7】
前記セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部がカルボキシ基で修飾されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のナノ材料組成物。
【請求項8】
前記カルボキシ基の対イオンとしてオニウムイオンを更に含む請求項7に記載のナノ材料組成物。
【請求項9】
前記オニウムイオンがアンモニウムイオンである請求項8に記載のナノ材料組成物。
【請求項10】
前記セルロースナノファイバーの平均繊維幅が1nm以上500nm以下である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のナノ材料組成物。
【請求項11】
前記セルロースナノファイバーの含有量が0.01質量%以上30質量%以下である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のナノ材料組成物。
【請求項12】
前記セルロースナノファイバーの前記カーボンナノチューブに対する含有量比が、質量比で1/10以上10/1以下である請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のナノ材料組成物。
【請求項13】
前記分散媒が、水及び有機溶媒の少なくとも一方を含む請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のナノ材料組成物。
【請求項14】
前記分散媒がアルコールである請求項13に記載のナノ材料組成物。
【請求項15】
前記分散媒が、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、スチレン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン及びアセトンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項13に記載のナノ材料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ材料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維は、全ての植物の基本骨格物質であり、地球上に一兆トンを超える蓄積がある。また、セルロース繊維は、鋼鉄の1/5の軽さであるにも関わらず、鋼鉄の5倍以上の強度を有する繊維である。このセルロース繊維が有する機械的強度を更に向上させる目的で、セルロース繊維を解繊して得られるセルロースナノファイバー(以下、「CNF」ともいう)が検討されている(例えば特許文献1等)。CNFは、樹脂等と組み合わせて高強度・低熱膨張を可能とする複合材料として有望視されており、その構造等について種々の検討がなされている。
【0003】
CNFと樹脂とを組み合わせて複合材料を製造する際は、例えばCNFが分散媒に分散された組成物(ナノ材料組成物)を樹脂と混合させて樹脂組成物を得た後、この樹脂組成物を用いて所望の形状に成形することによりCNFと樹脂とを含む複合材料(成形体)が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−213754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の方法でCNFを含む成形体を成形しても、成形体の表面硬度を向上させることは困難であった。
【0006】
そこで、本発明においては、成形体としたときの表面硬度を向上させることができるナノ材料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明のナノ材料組成物は、分散媒と、前記分散媒に分散されたセルロースナノファイバー(CNF)及びカーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう)とを含むことを特徴とする。
【0008】
前記(1)のナノ材料組成物によれば、成形体としたときにCNF間にCNTが介在することによってCNFを補強することができるため、成形体の表面硬度を向上させることができる。
【0009】
(2) 前記(1)のナノ材料組成物において、前記CNTの表面の少なくとも一部が極性基で修飾されていることが好ましい。この構成の場合、CNTの分散媒への分散性を向上させることができるため、成形体とした際、CNF間にCNTを均一に介在させることができる。これにより、成形体の表面硬度を均一に向上させることができる。
【0010】
(3) 前記(2)のナノ材料組成物において、前記極性基が、水酸基、カルボニル基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。この構成の場合、CNTの分散媒への分散性をより向上させることができるため、成形体の表面硬度をより均一に向上させることができる。なお、カルボニル基で修飾される場合としては、CNT表面にカルボニル基が付加される場合だけでなく、CNT表面の活性点(欠陥)への酸素原子の付加によりカルボニル基が形成される場合も含む。また、カルボキシ基で修飾される場合としては、CNT表面にカルボキシ基が付加される場合だけでなく、CNT表面の活性点(欠陥)への酸素原子の付加によりカルボニル基が形成された後、このカルボニル基への水酸基の付加によりカルボキシ基が形成される場合も含む。後述するCNFの表面の少なくとも一部がカルボキシ基で修飾される場合も同様である。
【0011】
(4) 前記(1)から(3)のナノ材料組成物において、前記CNTの平均直径が0.01nm以上500nm以下であることが好ましい。CNTの平均直径を0.01nm以上とすることにより、補強効果を高めることができる。また、CNTの平均直径を500nm以下とすることにより、分散媒への分散性をより向上させることができるため、成形体の表面硬度をより均一に向上させることができる。なお、前記「平均直径」は、電子顕微鏡で観察されるCNTの単体の直径の平均値であり、例えば電子顕微鏡で任意に10個のCNTの単体を選択し、これらのCNTの直径を平均した値である。
【0012】
(5) 前記(1)から(4)のナノ材料組成物において、前記CNTが多層CNTであることが好ましい。この構成によれば、CNTによる補強効果を高めることができるため、成形体の表面硬度をより向上させることができる。なお、前記「多層CNT」とは、グラファイト層を2層以上重ねて筒状に巻いた構造を有するCNTを指す。
【0013】
(6) 前記(1)から(5)のナノ材料組成物において、前記CNTの含有量が0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましい。CNTの含有量を0.01質量%以上とすることにより、補強効果を高めることができる。また、CNTの含有量を30質量%以下とすることにより、分散媒中におけるCNTの沈殿を抑制できるため、成形体の表面硬度を均一に向上させることができる。
【0014】
(7) 前記(1)から(6)のナノ材料組成物において、前記CNFの表面の少なくとも一部がカルボキシ基で修飾されていることが好ましい。この構成の場合、CNFの分散媒への分散性を向上させることができるため、構造材であるCNFが均一に分散された成形体とすることができる。これにより、成形体の表面硬度を均一に向上させることができる。
【0015】
(8) 前記(7)のナノ材料組成物において、前記カルボキシ基の対イオンとしてオニウムイオンを更に含むことが好ましい。この構成の場合、CNFの分散媒への分散性をより向上させることができるため、構造材であるCNFがより均一に分散された成形体とすることができる。これにより、成形体の表面硬度をより均一に向上させることができる。
【0016】
(9) 前記(8)のナノ材料組成物において、前記オニウムイオンがアンモニウムイオンであることが好ましい。この構成の場合、CNFの分散媒への分散性を更に向上させることができるため、構造材であるCNFが更に均一に分散された成形体とすることができる。これにより、成形体の表面硬度を更に均一に向上させることができる。
【0017】
(10) 前記(1)から(9)のナノ材料組成物において、前記CNFの平均繊維幅が1nm以上500nm以下であることが好ましい。CNFの平均繊維幅を1nm以上とすることにより、成形体の表面硬度をより向上させることができる。また、CNFの平均繊維幅を500nm以下とすることにより、分散媒中におけるCNFの沈殿を抑制できるため、成形体の表面硬度を均一に向上させることができる。なお、前記「平均繊維幅」は、電子顕微鏡で観察されるCNFの単体の繊維幅の平均値であり、例えば電子顕微鏡で任意に10個のCNFの単体を選択し、これらのCNFの繊維幅を平均した値である。
【0018】
(11) 前記(1)から(10)のナノ材料組成物において、前記CNFの含有量が0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましい。CNFの含有量を0.01質量%以上とすることにより、成形体の表面硬度をより向上させることができる。また、CNFの含有量を30質量%以下とすることにより、分散媒中におけるCNFの沈殿を抑制できるため、成形体の表面硬度を均一に向上させることができる。
【0019】
(12) 前記(1)から(11)のナノ材料組成物において、前記CNFの前記CNTに対する含有量比が、質量比で1/10以上10/1以下であることが好ましい。この構成によれば、成形体の表面硬度をより向上させることができる。
【0020】
(13) 前記(1)から(12)のナノ材料組成物において、前記分散媒が、水及び有機溶媒の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0021】
(14) 前記(13)のナノ材料組成物において、前記分散媒がアルコールであってもよい。
【0022】
(15) 前記(13)のナノ材料組成物において、前記分散媒が、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、スチレン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン及びアセトンからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のナノ材料組成物によれば、成形体としたときの表面硬度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0025】
<ナノ材料組成物>
本発明の一実施形態に係るナノ材料組成物は、分散媒と、この分散媒に分散されたCNF及びCNTとを含むことを特徴とする。本実施形態に係るナノ材料組成物によれば、成形体としたときにCNF間にCNTが介在することによってCNFを補強することができるため、成形体の表面硬度を向上させることができる。以下、本実施形態に係るナノ材料組成物の構成成分について説明する。
【0026】
(CNF)
CNFは、本実施形態に係るナノ材料組成物を用いて得られる成形体の構造材となる成分である。このCNFの原料であるセルロース繊維としては、例えば機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプ、具体的にはクラフト木材パルプ、加水分解済みクラフト木材パルプ、亜硫酸木材パルプ等をはじめ、古紙、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、綿セルロース、麻セルロース、これらの混合物などを用いることができる。
【0027】
CNFの製造方法としては、後述する分散媒に分散可能なCNFが得られる方法であれば特に限定されず、例えば上記例示した原料(セルロース繊維)を物理的、化学的に処理する方法が挙げられる。物理的処理方法としては、例えばセルロース繊維を機械的に解繊する方法が挙げられ、具体的にはセルロース繊維を含む水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸又は多軸混練機、ビーズミル等によって摩砕ないし叩解することにより解繊する方法が例示できる。
【0028】
また、セルロース繊維の化学的処理によってCNFを得る方法としては、例えば2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)をはじめとするN−オキシル化合物を触媒とした酸化反応を用いてセルロース繊維を処理する方法が挙げられる。この方法で得られた酸化セルロースは、液中での軽度な分散処理により均質なCNFの分散体となる。
【0029】
本実施形態で用いられるCNFの表面の少なくとも一部は、カルボキシ基で修飾されていることが好ましい。この場合、CNFの分散媒への分散性を向上させることができるため、構造材であるCNFが均一に分散された成形体とすることができる。これにより、成形体の表面硬度を均一に向上させることができる。
【0030】
CNFの表面をカルボキシ基で修飾する方法としては、例えば上述した酸化反応を用いてセルロース繊維を処理する方法が挙げられ、具体的には特開2015−101694号公報に記載のTEMPO酸化法が例示できる。
【0031】
表面の少なくとも一部がカルボキシ基で修飾されているCNFを用いる場合、本実施形態のナノ材料組成物は、上記カルボキシ基の対イオンとしてオニウムイオンを更に含むことが好ましい。この場合、CNFの分散媒への分散性をより向上させることができるため、構造材であるCNFがより均一に分散された成形体とすることができる。これにより、成形体の表面硬度をより均一に向上させることができる。
【0032】
上記オニウムイオンとしては、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、フルオロニウムイオン、クロロニウムイオン等が挙げられる。なかでもアンモニウムイオンを用いると、CNFの分散媒への分散性を更に向上させることができるため、構造材であるCNFが更に均一に分散された成形体とすることができる。これにより、成形体の表面硬度を更に均一に向上させることができる。なお、オニウムイオンの導入方法としては、公知の方法が使用でき、例えば特開2015−101694号公報に記載の方法が使用できる。
【0033】
CNFの平均繊維幅としては、成形体の表面硬度をより向上させる観点から1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましい。また、分散媒中におけるCNFの沈殿を抑制し、成形体の表面硬度を均一に向上させる観点から、CNFの平均繊維幅としては、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
【0034】
ナノ材料組成物中のCNFの含有量としては、成形体の表面硬度をより向上させる観点から0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、分散媒中におけるCNFの沈殿を抑制し、成形体の表面硬度を均一に向上させる観点から、ナノ材料組成物中のCNFの含有量としては、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0035】
(CNT)
CNTは、成形体としたときにCNF間に介在し、CNFを補強する成分である。このCNTは、後述する分散媒に分散可能である限り、その製法等について特に限定されないが、表面の少なくとも一部が極性基で修飾されているCNTが好ましい。表面の少なくとも一部が極性基で修飾されているCNTによれば、分散媒への分散性を向上させることができる。これにより、成形体とした際、CNF間にCNTを均一に介在させることができるため、成形体の表面硬度を均一に向上させることができる。
【0036】
上記極性基としては、水酸基、カルボニル基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。この場合、CNTの分散媒への分散性をより向上させることができるため、成形体の表面硬度をより均一に向上させることができる。
【0037】
CNTの表面に極性基を導入する方法は、特に限定されず、例えば特開2014−15387号公報等に記載の公知の方法を採用できる。より具体的には、まず、CNT粉末と硫酸とを少量ずつ所定の割合で混合撹拌し、混合液を生成する(工程1)。続いて、この混合液に所定の割合で硝酸を混合し撹拌する(工程2)。その後、十分に煮沸するまで該混合液を加熱した(工程3)後、加熱を止め、冷却する(工程4)。続いて、該混合液をpH12〜13のアルカリ水溶液で希釈してpH値を調整した(工程5)後、更に大気中において冷却する(工程6)。冷却後、該混合液をろ過して、ろ過水を取り出す(工程7)。そして、取り出したろ過水(混合液)を水で希釈する(工程8)。ここで、工程7及び工程8については、更に1回以上繰り返してもよい。続いて、希釈した混合液を遠心分離機により遠心分離させた(工程9)後、上澄み液に対して超音波洗浄機により超音波照射しながらろ過する(工程10)。ここで、工程9及び工程10については、それぞれ更に1回以上繰り返してもよく、工程9及び工程10のいずれか一方のみを更に1回以上繰り返してもよい。続いて、得られたろ過水を水で希釈して所定の濃度に調整することで、表面に極性基が導入されたCNTの分散液を得ることができる。
【0038】
CNTの平均直径としては、補強効果を高める観点から、0.01nm以上が好ましく、0.1nm以上がより好ましく、1nm以上が更に好ましい。また、分散媒への分散性をより向上させる観点から、CNTの平均直径としては、500nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。
【0039】
本実施形態で用いられるCNTとしては、多層CNTが好ましい。多層CNTを用いると、補強効果を高めることができるため、成形体の表面硬度をより向上させることができる。
【0040】
ナノ材料組成物中のCNTの含有量としては、補強効果を高める観点から0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、分散媒中におけるCNTの沈殿を抑制し、成形体の表面硬度を均一に向上させる観点から、ナノ材料組成物中のCNTの含有量としては、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0041】
(分散媒)
本実施形態で用いられる分散媒としては、CNF及びCNTと反応しないものが使用でき、具体的には、水、有機溶媒、これらの混合溶媒等が挙げられる。
【0042】
上記有機溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブテルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(スルホラン等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、その他、トルエン、キシレン、スチレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、尿素、アセトニトリルなどを使用することができる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(他の成分)
本実施形態のナノ材料組成物には、必要に応じて分散剤等の他の成分を添加してもよい。分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸アルカリ金属塩等の水溶性樹脂が好ましい。これらの分散剤は、1種単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
また、本実施形態のナノ材料組成物には、その他の分散剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤を添加してもよい。
【0045】
上記アニオン性界面活性剤としては、芳香族スルホン酸系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩など)、モノソープ系アニオン性界面活性剤、エーテルサルフェート系界面活性剤、フォスフェート系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤などが挙げられる。
【0046】
上記カチオン性界面活性剤としては、第4級アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルアミン塩、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0047】
上記ノニオン性界面活性剤としては、エーテル系ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等)、エステル系ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンジステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート等)、ソルビトールやグリセリン等の多価アルコール脂肪酸のアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸のアルキルエステル、アミノアルコール脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0048】
上記両性界面活性剤としては、アルキルベタイン系界面活性剤(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、プロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)、スルホベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤などが挙げられる。
【0049】
本実施形態のナノ材料組成物には、上述の成分以外にも、各種の水溶性樹脂や水分散性樹脂、タンパク質等の生体内の高分子、pH調整剤など、ナノ材料組成物の用途に応じて必要な成分を配合することが可能である。
【0050】
本実施形態のナノ材料組成物において、CNFのCNTに対する含有量比(CNF/CNT)としては、成形体の表面硬度をより向上させる観点から、質量比で1/10以上10/1以下が好ましく、1/5以上5/1以下がより好ましい。
【0051】
本実施形態のナノ材料組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば粉末状のCNF及びCNTを分散媒に分散させる方法、CNFの分散液に粉末状のCNTを加える方法、CNTの分散液に粉末状のCNFを加える方法、CNFの分散液とCNTの分散液とを混合する方法等、いずれの方法であってもよい。
【0052】
本実施形態のナノ材料組成物を用いて成形体を成形する方法についても特に限定されず、目的に応じて種々の成形方法を採用できる。例えばナノ材料組成物と樹脂とを混合して樹脂組成物を得た後、この樹脂組成物を用いて所望の形状に成形する方法や、ナノ材料組成物を基材等へ塗工することによりCNF及びCNTを含む塗膜を形成する方法等が挙げられる。なお、後者の場合、塗膜が成形体に相当する。また、ナノ材料組成物を用いて公知の製紙方法により成形体としての紙を成形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のナノ材料組成物は、成形体としたときの表面硬度を向上させることができるナノ材料組成物として好適である。