【解決手段】本発明にかかるバレルめっき装置100の代表的な構成は、被めっき材を内包して回転するバレル102を備えたバレルめっき装置であって、バレルの外から中にめっき液を強制的に送る送液部126を備えることを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
めっき処理では、被めっき材にめっき被膜が形成されるにつれて、めっき液の金属イオン濃度が低下する。しかしながらメッシュにおいてめっき液の通りが悪いため、バレル内外のめっき液の循環が悪く、めっき速度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、めっき速度の低下を防止して、めっき処理に要する時間を短縮できるバレルめっき装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるバレルめっき装置の代表的な構成は、被めっき材を内包して回転するバレルを備えたバレルめっき装置であって、バレルの外から中にめっき液を強制的に送る送液部を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、送液部によってバレル内に新たなめっき液をバレルの外から強制的に供給できる。古くなっためっき液はバレルの壁面のメッシュから強制的に排出される。したがってめっき液の金属イオン濃度の低下を防止し、すなわちめっき速度の低下を防止して、めっき処理に要する時間を短縮できる。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるバレルめっき装置の他の代表的な構成は、被めっき材を内包して回転するバレルを備えたバレルめっき装置であって、バレルの中から外にめっき液および気体を強制的に送る送液部を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、送液部がバレル内のめっき液をバレル外に排出するため、バレル外のめっき液がバレル壁面のメッシュから強制的に供給される。したがってめっき液の金属イオン濃度の低下を防止し、すなわちめっき速度の低下を防止して、めっき処理に要する時間を短縮できる。
【0011】
まためっき処理が進行すると、バレル内のめっき液の金属イオン濃度が低下するだけでなく、バレル内に気体(水素)が発生してガス溜まりができ、バレル内のめっき液の量が減ってしまう場合がある。そこで送液部の端部をバレル上部に開口させて、バレル内に発生した水素などのガスを外部に強制的に排出できる。これらのことから、新たなめっき液をバレル内に十分に供給可能となるため、被めっき材のめっき処理に要する時間を短縮できる。
【0012】
上記の送液部は、バレルの内外にめっき液を流通させる流路と、流路の途中に配置され、めっき液を送るポンプとを有し、ポンプは、チューブポンプまたはダイヤフラムポンプであるとよい。このようにポンプがチューブポンプまたはダイヤフラムポンプであるため、流路内に空気が混入していてもよく、いわゆる呼び水も不要となり利便性が向上する。
【0013】
上記の送液部は、ポンプを逆転駆動させることにより、バレルの外から中に、またはバレルの中から外にめっき液を送るとよい。このように送液部は、ポンプを逆転駆動させるだけで、めっき液の供給と排出の両方の機能を実現することができる。一例として、めっき処理を開始した後のしばらくはめっき液をバレル内に強制的に送り込み、めっき処理が進行してガス溜まりができてくるとポンプを逆転駆動させて、発生した気体を外部に強制的に排出する。このように、構造を簡素化しつつ、被めっき材のめっき処理に要する時間を短縮できる。
【0014】
上記のバレルめっき装置は、バレルの回転中心付近に配置されたボスを備えていて、ボスは、電極が挿入される電極用挿入口と、流路に連続する流入口とを有するとよい。ここで流路としては、チューブまたはパイプが想定される。バレルは回転する装置であるが、ボスは回転しない部品である。そしてボスに電極用挿入口とめっき液の流入口の2つの穴が形成されていて、流入口に流路を接続する。これにより、流路がねじれることなくめっき液を流通(供給または排出)させることができる。
【0015】
上記のバレルめっき装置は、外部からバレル内に導入されるルーメンチューブをさらに備え、ルーメンチューブは、電極の導線が挿入される第1孔と、流路を形成する第2孔とを有するとよい。このように、2つの孔を有するルーメンチューブを用いて、電極の導線を挿通しさらに流路を形成したので取り回しがよく、電極およびめっき液をバレルの所定の位置(例えばバレルの回転中心付近)からバレル内に導入できる。この場合、ボスの穴は1つでよいため、電極用挿入口のみが設けられた従来のボスの部品をそのまま使用することができる。また既存のバレルめっき装置に送液部を取り付けることも可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、めっき速度の低下を防止して、めっき処理に要する時間を短縮できるバレルめっき装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態におけるバレルめっき装置100の構成を示す図である。バレルめっき装置100は、被めっき材(不図示)にめっき処理を行う装置であって、回転するバレル102を備える。バレル102は、
図1(a)に示すように、多角形柱(ここでは六角形)の形状をしていて、めっき液が流通するようにメッシュで構成された壁面104と、被めっき材を投入する開口106とを有する。なお開口106は、被めっき材を投入後、不図示の蓋によって覆われる。
【0020】
バレル102の両側端には、円板状の側板108、110が設けられている。またバレル102は、枠体112、114に対して回転自在に支持されていて、不図示のモータの駆動力が、
図1(b)に示す各ギヤ116、118、120を介して、外周にギヤが形成された側板110に伝達されることで回転する。
【0021】
バレル102内には、
図1(b)に点線で示す2つの電極122、124が回転しないように支持されている。めっき処理を行う際には、バレル102内に被めっき材を収容し、バレル102ごとめっき槽のめっき液に浸漬した状態で、被めっき材に電極122、124を接触させ通電しながらバレル102を回転させる。
【0022】
このようなめっき処理により、被めっき材にはめっき被膜が形成される。ところが、めっき処理では、被めっき材にめっき被膜が形成されるにつれて、めっき液の金属イオン濃度が低下する。さらに被めっき材が例えば0.4mm×0.2mm、0.6mm×0.3mmなどの極めて小さな電子部品などである場合、バレル102の壁面104のメッシュも目が細かくなり、めっき液の通りが悪くなる。その結果、バレル102内外のめっき液の循環が悪く、めっき速度が低下してしまう。そこでバレルめっき装置100では、めっき液を強制的に送る機構(送液部126)を採用した。
【0023】
図2は、
図1のバレルめっき装置100の側面図である。送液部126は、
図2(a)に示すように、バレル102の内外にめっき液を流通させる流路としてのチューブ128、130と、ポンプ132とを有する。ポンプ132は、チューブ128、130の一端128a、130aがそれぞれ接続されていて、流路の途中に配置されている。チューブ128の他端128bは、バレル102の外に開放されている。
【0024】
枠体112には、ボス134が取り付けられている。ボス134は、回転しない部品であり、バレル102の回転中心付近に配置されている。ボス134には、電極用挿入口136と流入口138の2つの穴が形成されている。流入口138は、
図2(a)に示すように、チューブ130の他端130bが接続され流路に連続している。一方、
図2(b)に示す枠体114に取り付けられたボス140には、電極用挿入口142となる1つの穴のみ形成されている。
【0025】
さらに枠体112、114には、長尺状の金属部材144、146がそれぞれ取り付けられている。金属部材144、146には、電極122、124の導線148、150がそれぞれ電気的に接続されている。めっき処理を行う際、金属部材144、146に不図示の電源が接続されることにより、電極122、124に電気めっき用の電力が供給される。
【0026】
図3は、
図2(a)のバレルめっき装置100のボス134の構成を示す図である。
図3(a)は、ボス134の正面図である。
図3(b)は、
図3(a)のA−A断面図である。ボス134は、
図3(a)に示すように、円筒部152と円形状の縁部154とを有する。縁部154は、
図3(b)に示すように、円筒部152の端に形成され縁部154よりも径が大きい。また縁部154は、枠体112に当接して不図示のネジなどにより固定される。
【0027】
ボス134の円筒部152は、枠体112(
図1(b)参照)の不図示の穴に通され、さらにバレル102の側板108に接している。このような状態でボス134は、枠体112に取り付けられている。さらにボス134には、
図3(b)に示すように、円筒部152および縁部154を貫通する上記の電極用挿入口136と流入口138とが形成されている。
【0028】
電極122は、ボス134に形成された電極用挿入口136に挿入され、側板108(
図1(b)参照)を通ってバレル102内の被めっき材に接触して通電する。一方、電極124は、ボス140に形成された電極用挿入口142に挿入され、側板110を通ってバレル102内に導入される。
【0029】
図4は、
図2のバレルめっき装置100のポンプ132の構成を示す図である。ポンプ132は、いわゆるチューブポンプであり、流路を形成する弾性のポンプチューブ156と、外周に複数(ここでは3つ)のローラ158が取り付けられた回転体160と、回転体160を回転させるベース部162とを備えている。ベース部162は、回転体160を取り付けて、図中矢印Bに示すように時計回り、反時計回りのいずれにも回転体160を回転可能である。
【0030】
ポンプチューブ156は、ベース部162の内壁と回転体160のローラ158とで挟まれるようにして取り付けられ、図示のように円弧状に規制されている。ポンプチューブ156は、その一端156aがチューブ128の一端128a(
図2(a)参照)に接続され、他端156bがチューブ130の一端130aに接続されている。
【0031】
ポンプ132では、ベース部162が回転体160を回転させて、複数のローラ158が円弧状のポンプチューブ156を繰り返し押し付けることで送液動作を行う。なおローラ158は、送液動作の際、回転体160の回転中心160aに対して公転しつつ自転する。このようなポンプ132によれば、仮に流路内に空気が混入していたとしても、送液動作が可能であり、いわゆる呼び水が不要であるため、利便性が高い。
【0032】
以下、ポンプ132を含む送液部126の送液動作について説明する。送液部126の回転体160を反時計回りに回転させると、めっき槽のめっき液は、流路としてのチューブ128を通ってポンプチューブ156の一端156aからポンプ132内に送られ(矢印C参照)、ポンプチューブ156の他端156bからチューブ130に送られる(矢印D参照)。そしてめっき液は、チューブ130の他端130bに接続され流路に連続するボス134の流入口138を通って、バレル102内に強制的に送り込まれる。
【0033】
このように送液部126では、バレル102内に新たなめっき液をバレル102の外から強制的に供給できる。古くなっためっき液はバレル102の壁面104のメッシュから強制的に排出される。したがってバレルめっき装置100によれば、めっき液の金属イオン濃度の低下を防止し、すなわちめっき速度の低下を防止して、めっき処理に要する時間を短縮できる。
【0034】
また、バレル102内に強制的にめっき液を供給する代わりに、バレル102内のめっき液をバレル102外に排出してもよい。この場合、バレル102内の圧力が低下し、バレル102外のめっき液がバレル102の壁面104のメッシュから強制的に供給される。すなわち、強制的な供給か、強制的な排出のいずれかを実行すれば、バレル102内のめっき液の金属イオン濃度の低下を防止することができる。
【0035】
送液部126では、ポンプ132の回転体160を時計回りに回転させると、バレル102内のめっき液および発生した気体は、ボス134の流入口138からチューブ130を通ってポンプチューブ156の他端156bからポンプ132内に送られ(矢印E参照)、ポンプチューブ156の一端156aからチューブ128に送られる(矢印F参照)。そしてめっき液は、チューブ128の他端128bからバレル102の外に強制的に排出される。
【0036】
また、めっき処理が進行すると、バレル102内のめっき液の金属イオン濃度が低下するだけでなく、バレル102内に気体(水素)が発生してガス溜まりができ、バレル102内のめっき液の量が減ってしまう場合がある。そこでまず送液部126でめっき液を強制的に供給し、しばらくしてガス溜まりが発生した頃に送液部126を逆転駆動させてもよい。
【0037】
なお、バレル102内部の気体を排出させようとするとき、送液部126のチューブ130端部(他端130b)をバレル102内部まで延長し、バレル102の上部に開口させることが好ましい。これによりガス溜まりを早期に解消可能である。また、ガス溜まりが解消されたあとはめっき液が排出されることになるが、それは上記のようにめっき液の循環を促すことになるので、引き続き運転して差し支えない。
【0038】
特に本実施形態にかかる送液部126は、ポンプ132の回転体160を反時計回りあるいは時計回りに回転させるだけで、バレル102の外から中に、またはバレル102の中から外にめっき液または気体を送ることができ、めっき液の供給と排出の両方の機能を実現できる。したがって、バレルめっき装置100によれば、構造を簡素化しつつ、めっき処理に要する時間を短縮できる。
【0039】
さらにバレルめっき装置100によれば、回転しない部品であるボス134に電極用挿入口136に加え、流路に連続する流入口138が形成されているため、流路がねじれることなくめっき液を流通(供給または排出)させることができる。
【0040】
図5は、本発明の他の実施形態におけるバレルめっき装置100Aの構成を示す図である。なお図中では、バレルめっき装置100Aを
図2(a)に示すバレルめっき装置100に対応させて示している。
【0041】
バレルめっき装置100Aでは、上記のチューブ130に代えて、ルーメンチューブ164(
図6参照)を適用した送液部126Aを備えている点で、バレルめっき装置100と異なる。
【0042】
図6は、
図5のバレルめっき装置100Aに適用されるルーメンチューブ164の構成を示す図である。ルーメンチューブ164は、一般的には医療用に開発されたチューブであり、ここでは第1孔166と、第1孔166より径が小さい第2孔168とを有する。
【0043】
第1孔166は、電極122の
図5に示す導線148がアダプタ170を介して挿入される。第2孔168は、アダプタ170を介してポンプ132に接続され、流路を形成する。アダプタ170は、ルーメンチューブ164の一端164aに取り付けられている。またルーメンチューブ164の他端164bは、ボス134Aの中央に設けられた1つの穴すなわち電極用挿入口136Aに挿入され、さらにバレル102内まで延びている。
【0044】
このように2つの孔を有するルーメンチューブ164を用いて、電極122の導線148を挿通しさらに流路を形成したので取り回しがよい。このため、バレルめっき装置100Aでは、電極122およびめっき液をバレル102の所定の位置(例えばバレル102の回転中心付近)からバレル102内に導入できる。
【0045】
またバレルめっき装置100Aでは、ボス134Aに1つの穴を形成すればよいため、電極用挿入口のみが設けられた従来のボスの部品をそのまま使用できる。そのため、既存のバレルめっき装置に送液部126Aを取り付けることも可能となる。
【0046】
なお上記各実施形態においては、ポンプ132としてチューブポンプを例に挙げて説明したが、これに限定されず、ダイヤフラムポンプを用いてもよい。ダイヤフラムポンプを適用した場合であっても、チューブポンプと同様に流路内に空気が混入しても、めっき液を送ることが可能であるため、呼び水が不要となり利便性を向上できる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。