特開2018-128047(P2018-128047A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-128047(P2018-128047A)
(43)【公開日】2018年8月16日
(54)【発明の名称】管内ロボット
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20180720BHJP
【FI】
   F16L1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-20178(P2017-20178)
(22)【出願日】2017年2月7日
(71)【出願人】
【識別番号】592057385
【氏名又は名称】株式会社湘南合成樹脂製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100075292
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】神山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】小倉 和明
(57)【要約】
【課題】管内をライニングした後、管ライニング材に溶着されているプラスチックフィルムを効率的に剥ぎ取ることができ、また管ライニング前に必要な作業を行うことができる管内ロボットを提供する。
【解決手段】本管1内を管軸方向に移動する移動体4と、移動体に搭載され管軸を中心に回転する回転部30と、回転部に取り付けられ管軸に直交する方向に延びる回転部材34、35とを備える。回転部材は、その先端が管ライニング後に管ライニング材2に溶着されているプラスチックフィルム2aに摩擦接触し、あるいは管ライニング前に管内壁面に摩擦接触するような径方向長さに設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内に搬送されて管内作業を行う管内ロボットであって、
管内を管軸方向に移動する移動体と、
前記移動体に搭載され管軸を中心に回転する回転部と、
前記回転部に取り付けられ管軸に直交する方向に延びる回転部材と、を備え、
前記回転部材は、その先端が管ライニング後に管ライニング材に溶着されているプラスチックフィルムに摩擦接触し、あるいは管ライニング前に管内壁面に摩擦接触するような径方向長さに設定されることを特徴とする管内ロボット。
【請求項2】
前記回転部材が管周方向に間隔を隔てて複数取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の管内ロボット。
【請求項3】
前記回転部材が管軸方向に間隔を隔てて複数取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の管内ロボット。
【請求項4】
前記回転部材がワイヤーであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管内ロボット。
【請求項5】
前記ワイヤーが多数の金属製の線を撚り合わせてなることを特徴とする請求項4に記載の管内ロボット。
【請求項6】
前記回転部材がチェーンであり、回転部の回転による遠心力によりチェーンが径方向に延びてプラスチックフィルム、あるいは管内壁面に摩擦接触することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管内ロボット。
【請求項7】
前記チェーンが径方向に延びてプラスチックフィルム、あるいは管内壁面に摩擦接触する部分に金具が取り付けられることを特徴とする請求項6に記載の管内ロボット。
【請求項8】
前記移動体が、後方に取り付けられた高圧洗浄ノズルに高圧水を供給することにより前進されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の管内ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道などの本管をライニングした後、あるいは本管をライニング前に本管内に搬入されてライニングの前処理を行う管内ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水道管などの本管が老朽化した場合に、本管を掘り出すことなく更生する工法が知られている。この工法では、熱硬化性樹脂を含浸させた管状の管ライニング材が本管内に反転挿入され、圧縮空気などで膨張されて本管内壁面に押圧される。この状態で、ボイラーで加熱された温水を管ライニング材に噴出して管ライニング材が加熱され、熱硬化性樹脂が硬化して、本管がライニングされる。
【0003】
本管ライニングに用いられる管ライニング材は、管状の柔軟な不織布からなる樹脂吸収材に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させたものである。作業者がこの未硬化の樹脂に接触して作業の障害になるのを防止するために、また管ライニング材の型崩れを防止するために、樹脂吸収材の外周面には、気密性の高いポリエチレンなどからなるプラスチックフィルムが溶着される。
【0004】
しかしながら、本管ライニングは、管ライニング材を反転挿入して行われ、その外周面のプラスチックフィルムはライニング後内周面となるので、プラスチックフィルムを剥がさず、そのまま使用し続けると、プラスチックフィルムが剥がれる場合が稀にあり、管路内の下水などの流れを妨げてしまう。そこで、特別にプラスチックフィルムを剥ぎ取る装置が開発されたり、あるいは下記特許文献1に示すように、生分解性のプラスチックフィルムを用いることが行われている。
【0005】
また、本管をライニングする前に、本管内に付着している石灰乳(エフロエッセンス)、モルタルなど、あるいは本管内に堆積した堆積物、あるいは付着物などを除去したり、本管の接合部から侵入した木の根などを除去して、本管をライニングする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−289755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、樹脂吸収材に溶着されたプラスチックフィルムを機械的に引き剥がす場合、硬化した管ライニング材そのものに傷がつかないようにする必要があり、また、本管をライニングする前に本管内の障害物を取り除く作業に特殊なロボットを必要とするという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、管内をライニングした後、管ライニング材に溶着されているプラスチックフィルムを効率的に剥ぎ取ることができ、また管ライニング前に必要な作業を行うことができる管内ロボットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
管内に搬送されて管内作業を行う管内ロボットであって、
管内を管軸方向に移動する移動体と、
前記移動体に搭載され管軸を中心に回転する回転部と、
前記回転部に取り付けられ管軸に直交する方向に延びる回転部材と、を備え、
前記回転部材は、その先端が管ライニング後に管ライニング材に溶着されているプラスチックフィルムに摩擦接触し、あるいは管ライニング前に管内壁面に摩擦接触するような径方向長さに設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転部に取り付けられ管軸に直交する方向に延びる回転部材は、その先端が管ライニング後に管ライニング材に溶着されているプラスチックフィルムに摩擦接触し、あるいは管ライニング前に管内壁面に摩擦接触するような径方向長さに設定されるので、プラスチックフィルムを効率よく剥ぎ取ることができるとともに、管ライニング前に行われる障害物の除去などの作業を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】管内ロボットの一実施例を示す説明図である。
図2図1のA−A’線に沿った断面図である。
図3】管内ロボットの回転部の正面図である。
図4】(a)は管内ロボットの回転部の他の実施例を示す正面図、(b)はその側面図である。
図5】(a)は管内ロボットの回転部の更に他の実施例を示す正面図、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を、添付図面に示す実施例に基づいて説明する。本実施例では、管として下水道などの本管を例にして説明するが、他の管、例えば上水道、農業用水路などの他の管にも適用できるものである。
【実施例】
【0013】
図1には、下水道の本管1が図示されており、本管1には、管状の管ライニング材2が反転挿入される。管ライニング材2は、外表面がプラスチックフィルム2aで被覆され熱硬化性樹脂が含浸された樹脂吸収材からなっており、管ライニング材2が加熱、硬化されて、本管1がライニングされる。管ライニング材2の外表面を覆っていたプラスチックフィルム2aは反転されると、内表面となるので、本管1がライニングされると、管ライニング材2のプラスチックフィルム2aは図示したように内側に位置する。
【0014】
プラスチックフィルム2aを剥がさず、そのまま使用し続けると、プラスチックフィルム2aが剥がれる場合が稀にあり、本管内の下水などの流れを妨げてしまう場合があるため、管内ロボット3を用いて、プラスチックフィルム2aを剥ぎ取る作業が行われる。
【0015】
管内ロボット3は、中心に中空の円管(移動体)4を備え、この円管4の前方部には、取付板5a、6a、7a、8aが固定されている(図2を参照)。取付板5a、6a、7a、8aにはそれぞれ先端にスライド脚(そり)5〜8を備えた支持板5b、6b、7b、8bが取り付けられている。円管4の後方部にも、同様な取付板、支持板が固定され、図1には、取付板9a、10aと支持板9b、10bが図示されており、他の取付板、支持板は不可視となっている。
【0016】
管内ロボット3は、その円管4が本管1の管軸1aと同心となっており、またスライド脚5、7が管ライニング材2のプラスチックフィルム2aの上部内周面に近接し、スライド脚6,8がその下部内周面に接触するように、支持板5b、6b、7b、8b、9b、10bの径方向長さが定められる。
【0017】
また管内ロボット3は、取付板6aに結合されたロープ12をウインチなどでマンホール(不図示)から引くことにより前進し、取付板10aに結合されたロープ13を他方のマンホール(不図示)から同様に引くことにより後進し、スライド脚6、8が管ライニング材内面に摺動しながら本管1内を前後動することができる。
【0018】
円管4の前方部内には、エアモータ20が嵌着される。エアモータ20はエアホース21、22を介して圧縮エアを供給することにより切替レバー(不図示)で正転、逆転が可能になっている。
【0019】
エアモータ20の回転軸20aには、回転盤24が取り付けられ、回転盤24にはアタッチメント25を介してディスク30が固定される。ディスク30には、図3に示したように、取付金具31〜33を介して複数、例えば3つのワイヤー34〜36が等間隔に回転方向に取り付けられる。
【0020】
ワイヤー34〜36はいずれも細い金属製の多数の線を撚り合わせて作製される回転部材で、その先端が本管内壁面(本実施例では、管ライニング材でライニングされているので、そのプラスチックフィルム2a面)に摩擦接触するまで管軸1aに直交する方向に延びている。
【0021】
ディスク30に固定されるワイヤーは、図3では、3つが可視できるが、図1に図示したように、その背後にもそれぞれ1つ取り付けられており、ディスク30には合計6本のワイヤーが取り付けられる。図1には、取付金具31に固定されたワイヤー34の他にワイヤー37が、また取付金具35に取り付けられたワイヤー35の他にワイヤー38が図示されている。
【0022】
ワイヤー34〜38を取り付けたディスク30と同様な構成は、本管1の管長方向に複数設けることができ、煩雑になるので符号は付されていないが、図1にディスク30の他に同様な構成が2つ設けられている。ディスク30と同様な構成を何個設けるかは、設計に応じて増減することができ、その数が増加するほどプラスチックフィルム2aの剥ぎ取り面積が大きくなり、剥ぎ取り効率を高めることができる。もちろんディスク30を一つ設けるだけでもよく、また一つのディスクに取り付けるワイヤーの数も、増減することができ、効率は落ちるが1ディスクに1本のワイヤーでもよい。
【0023】
また、円管4の後方部には、高圧洗浄ノズル15が取り付けられており、矢印で示したように、水を後方に噴射して剥ぎ取られたプラスチックフィルムが除去され、本管1が洗浄される。
【0024】
このように構成された管内ロボット3は、マンホールから本管1の内部に搬入され、高圧洗浄ノズル15に高圧洗浄車から高圧水を供給することにより前進させる。後進は高圧洗浄車に搭載された巻き取りリールや人力により引っ張ることにより行われる。なお、本管に大きな段差がある場合にはロープ12、13で前後に引くことにより管内ロボット3を管軸方向に移動させる。基本動作は、上流から管内ロボット3を後進させ、複数回部分的に作業を行う場合には、高圧水で前進させ、巻き取ることにより後進させる。
【0025】
エアモータ20を作動すると、回転盤24、ディスク30、その他のディスクが回転し、各ディスクに取り付けられたワイヤーが周方向に正方向あるいは逆方向に回転する。各ワイヤーは、その先端が管ライニング材2のプラスチックフィルム2aと摩擦接触するので、プラスチックフィルム2aを剥ぎ取ることができる。ワイヤーはいずれも細い金属製の多数の線を撚り合わせて作製されているので、その先端をほぐすことによりブラシ状になるので、剥ぎ取り効果を高めることができる。
【0026】
エアモータ20を正方向と逆方向に複数回回転させるごとに、管内ロボット3を管長方向に移動させることにより、管ライニング材2のプラスチックフィル2aを全面的に剥ぎ取ることができる。剥ぎ取られたプラスチックフィルム2aは高圧洗浄ノズル15により除去され、本管1が洗浄される。
【0027】
図示されていないが、テレビを搭載することにより、剥ぎ取りが不十分であると判断されたときは、管内ロボット3を前後させて、エアモータ20を正方向あるいは逆方向に回転させてその部分を再度剥ぎ取るようにすることもできる。なお、管内ロボット3は、橇状の形状をしているが、スライド脚に代えて4輪で駆動される構成にしてもよい。
【0028】
また、ワイヤー34〜38を回転させることで、本管ライニング後の管ライニング材2を被覆するプラスチックフィルム2aだけでなく、本管ライニング前に、本管内に付着している石灰乳(エフロエッセンス)、モルタルなど、あるいは本管内に堆積した堆積物、本管内に侵入した木の根、あるいは付着物などを除去することもできる。この場合には、ワイヤー34〜38の径方向長さを、本管内壁面に摩擦接触するような長さに設定しておく。
【0029】
上述した実施例では、回転部材はワイヤーとして構成されたが、図4図5に示すように、チェーンを用いることができ、図4には、車などの動力伝達に使用されるチェーンが、図5には、小型のリングを繋ぎ合わせたチェーンが図示されている。
【0030】
図4には、アタッチメント25を介して回転盤24に取り付けられるディスク40、47が図示されている。ディスク40、47には、チェーン41、42、43の一端が周方向に等間隔に固定され、チェーン41、42、43の他端(先端)には、図4(b)に図示されているように、台形状の金具44、45、46が取り付けられる。
【0031】
各チェーン41、42、43は、図4(a)でチェーン43が縮小した状態で図示されているように、伸縮自在であるが、ディスク40、47が回転すると遠心力で先端の金具44、45、46がプラスチックフィルム2aに摩擦接触するような長さに設定される。
【0032】
このような構成で、エアモータ20を正方向あるいは逆方向に回転させると、ディスク40、47の回転によりチェーン41、42、43が遠心力により径方向に広がり、その先端に取り付けられた金具44、45、46の上部がプラスチックフィルム2aに摩擦接触する。金具44、45、46は台形状になっており、その上部は直線状で管軸1aに平行になっていて、この部分がプラスチックフィルム2aと摩擦接触するので、その周方向の回転によりプラスチックフィルム2aを周方向に剥ぎ取ることができる。
【0033】
回転部材がワイヤーの実施例と同様に、エアモータ20を正方向と逆方向に複数回回転させるごとに、管内ロボット3を管長方向に移動させることにより、管ライニング材2のプラスチックフィルム2aを全面的に剥ぎ取ることができる。この実施例では、金具44、45、46が金属製の大型部材なので、プラスチックフィルムの剥ぎ取りの他に、本管内に付着している石灰乳(エフロエッセンス)、モルタルなど、あるいは本管内に堆積した堆積物、あるいは付着物などを除去したり、本管の接合部から侵入した木の根などを除去することが可能になる。この場合には、チェーン41、42、43の径方向長さを、金具44、45、46の上部の直線部分が本管1の内壁面に摩擦接触するような長さに設定する。
【0034】
図5は、回転部材として、金属製のリングを繋ぎ合わせたチェーン51、52、53を、周方向に等間隔にアタッチメント25を介して回転盤24に取り付けられるディスク50、54に張り渡した実施例を示している。チェーン51、52、53の一端はそれぞれディスク50に取り付けられ、他端はディスク54に取り付けられる。
【0035】
各チェーン51、52、53は、伸縮自在であるが、ディスク50、54が回転すると遠心力で径方向に延び、その一つのリング51a、52a、53aがプラスチックフィルム2aに摩擦接触するような長さに設定される。
【0036】
このような構成で、エアモータ20を正方向あるいは逆方向に回転させると、ディスク50、54の回転によりチェーン51、52、53が遠心力により径方向に広がり、その一つのリング51a、52a、53aがプラスチックフィルム2aに摩擦接触し、その周方向の回転によりプラスチックフィルム2aを剥ぎ取ることができる。
【0037】
回転部材がワイヤーの実施例と同様に、エアモータ20を正方向と逆方向に複数回回転させるごとに、管内ロボット3を管長方向に移動させることにより、管ライニング材2のプラスチックフィルム2aを全面的に剥ぎ取ることができる。この実施例でも、チェーン51、52、53によりプラスチックフィルムの剥ぎ取りの他に、本管内に付着している石灰乳(エフロエッセンス)、モルタルなど、あるいは本管内に堆積した堆積物、あるいは付着物などを除去したり、本管の接合部から侵入した木の根などを除去することが可能になる。この場合には、チェーン51、52、53の径方向長さを、その一つのリングが本管1の内壁面に摩擦接触するような長さに設定する。
【符号の説明】
【0038】
1 本管
2 管ライニング材
2a プラスチックフィルム
3 管内ロボット
4 円管
5、6、7、8 スライド脚
12、13 ロープ
15 高圧洗浄ノズル
20 エアモータ
21、22 エアホース
24 回転盤
25 アタッチメント
30 ディスク
31〜33 取付金具
34〜38 ワイヤー
40、47 ディスク
41、42、43 チェーン
44、45、46 金具
50、54 ディスク
51、52、53 チェーン
図1
図2
図3
図4
図5