【実施例】
【0013】
図1には、下水道の本管1が図示されており、本管1には、管状の管ライニング材2が反転挿入される。管ライニング材2は、外表面がプラスチックフィルム2aで被覆され熱硬化性樹脂が含浸された樹脂吸収材からなっており、管ライニング材2が加熱、硬化されて、本管1がライニングされる。管ライニング材2の外表面を覆っていたプラスチックフィルム2aは反転されると、内表面となるので、本管1がライニングされると、管ライニング材2のプラスチックフィルム2aは図示したように内側に位置する。
【0014】
プラスチックフィルム2aを剥がさず、そのまま使用し続けると、プラスチックフィルム2aが剥がれる場合が稀にあり、本管内の下水などの流れを妨げてしまう場合があるため、管内ロボット3を用いて、プラスチックフィルム2aを剥ぎ取る作業が行われる。
【0015】
管内ロボット3は、中心に中空の円管(移動体)4を備え、この円管4の前方部には、取付板5a、6a、7a、8aが固定されている(
図2を参照)。取付板5a、6a、7a、8aにはそれぞれ先端にスライド脚(そり)5〜8を備えた支持板5b、6b、7b、8bが取り付けられている。円管4の後方部にも、同様な取付板、支持板が固定され、
図1には、取付板9a、10aと支持板9b、10bが図示されており、他の取付板、支持板は不可視となっている。
【0016】
管内ロボット3は、その円管4が本管1の管軸1aと同心となっており、またスライド脚5、7が管ライニング材2のプラスチックフィルム2aの上部内周面に近接し、スライド脚6,8がその下部内周面に接触するように、支持板5b、6b、7b、8b、9b、10bの径方向長さが定められる。
【0017】
また管内ロボット3は、取付板6aに結合されたロープ12をウインチなどでマンホール(不図示)から引くことにより前進し、取付板10aに結合されたロープ13を他方のマンホール(不図示)から同様に引くことにより後進し、スライド脚6、8が管ライニング材内面に摺動しながら本管1内を前後動することができる。
【0018】
円管4の前方部内には、エアモータ20が嵌着される。エアモータ20はエアホース21、22を介して圧縮エアを供給することにより切替レバー(不図示)で正転、逆転が可能になっている。
【0019】
エアモータ20の回転軸20aには、回転盤24が取り付けられ、回転盤24にはアタッチメント25を介してディスク30が固定される。ディスク30には、
図3に示したように、取付金具31〜33を介して複数、例えば3つのワイヤー34〜36が等間隔に回転方向に取り付けられる。
【0020】
ワイヤー34〜36はいずれも細い金属製の多数の線を撚り合わせて作製される回転部材で、その先端が本管内壁面(本実施例では、管ライニング材でライニングされているので、そのプラスチックフィルム2a面)に摩擦接触するまで管軸1aに直交する方向に延びている。
【0021】
ディスク30に固定されるワイヤーは、
図3では、3つが可視できるが、
図1に図示したように、その背後にもそれぞれ1つ取り付けられており、ディスク30には合計6本のワイヤーが取り付けられる。
図1には、取付金具31に固定されたワイヤー34の他にワイヤー37が、また取付金具35に取り付けられたワイヤー35の他にワイヤー38が図示されている。
【0022】
ワイヤー34〜38を取り付けたディスク30と同様な構成は、本管1の管長方向に複数設けることができ、煩雑になるので符号は付されていないが、
図1にディスク30の他に同様な構成が2つ設けられている。ディスク30と同様な構成を何個設けるかは、設計に応じて増減することができ、その数が増加するほどプラスチックフィルム2aの剥ぎ取り面積が大きくなり、剥ぎ取り効率を高めることができる。もちろんディスク30を一つ設けるだけでもよく、また一つのディスクに取り付けるワイヤーの数も、増減することができ、効率は落ちるが1ディスクに1本のワイヤーでもよい。
【0023】
また、円管4の後方部には、高圧洗浄ノズル15が取り付けられており、矢印で示したように、水を後方に噴射して剥ぎ取られたプラスチックフィルムが除去され、本管1が洗浄される。
【0024】
このように構成された管内ロボット3は、マンホールから本管1の内部に搬入され、高圧洗浄ノズル15に高圧洗浄車から高圧水を供給することにより前進させる。後進は高圧洗浄車に搭載された巻き取りリールや人力により引っ張ることにより行われる。なお、本管に大きな段差がある場合にはロープ12、13で前後に引くことにより管内ロボット3を管軸方向に移動させる。基本動作は、上流から管内ロボット3を後進させ、複数回部分的に作業を行う場合には、高圧水で前進させ、巻き取ることにより後進させる。
【0025】
エアモータ20を作動すると、回転盤24、ディスク30、その他のディスクが回転し、各ディスクに取り付けられたワイヤーが周方向に正方向あるいは逆方向に回転する。各ワイヤーは、その先端が管ライニング材2のプラスチックフィルム2aと摩擦接触するので、プラスチックフィルム2aを剥ぎ取ることができる。ワイヤーはいずれも細い金属製の多数の線を撚り合わせて作製されているので、その先端をほぐすことによりブラシ状になるので、剥ぎ取り効果を高めることができる。
【0026】
エアモータ20を正方向と逆方向に複数回回転させるごとに、管内ロボット3を管長方向に移動させることにより、管ライニング材2のプラスチックフィル2aを全面的に剥ぎ取ることができる。剥ぎ取られたプラスチックフィルム2aは高圧洗浄ノズル15により除去され、本管1が洗浄される。
【0027】
図示されていないが、テレビを搭載することにより、剥ぎ取りが不十分であると判断されたときは、管内ロボット3を前後させて、エアモータ20を正方向あるいは逆方向に回転させてその部分を再度剥ぎ取るようにすることもできる。なお、管内ロボット3は、橇状の形状をしているが、スライド脚に代えて4輪で駆動される構成にしてもよい。
【0028】
また、ワイヤー34〜38を回転させることで、本管ライニング後の管ライニング材2を被覆するプラスチックフィルム2aだけでなく、本管ライニング前に、本管内に付着している石灰乳(エフロエッセンス)、モルタルなど、あるいは本管内に堆積した堆積物、本管内に侵入した木の根、あるいは付着物などを除去することもできる。この場合には、ワイヤー34〜38の径方向長さを、本管内壁面に摩擦接触するような長さに設定しておく。
【0029】
上述した実施例では、回転部材はワイヤーとして構成されたが、
図4、
図5に示すように、チェーンを用いることができ、
図4には、車などの動力伝達に使用されるチェーンが、
図5には、小型のリングを繋ぎ合わせたチェーンが図示されている。
【0030】
図4には、アタッチメント25を介して回転盤24に取り付けられるディスク40、47が図示されている。ディスク40、47には、チェーン41、42、43の一端が周方向に等間隔に固定され、チェーン41、42、43の他端(先端)には、
図4(b)に図示されているように、台形状の金具44、45、46が取り付けられる。
【0031】
各チェーン41、42、43は、
図4(a)でチェーン43が縮小した状態で図示されているように、伸縮自在であるが、ディスク40、47が回転すると遠心力で先端の金具44、45、46がプラスチックフィルム2aに摩擦接触するような長さに設定される。
【0032】
このような構成で、エアモータ20を正方向あるいは逆方向に回転させると、ディスク40、47の回転によりチェーン41、42、43が遠心力により径方向に広がり、その先端に取り付けられた金具44、45、46の上部がプラスチックフィルム2aに摩擦接触する。金具44、45、46は台形状になっており、その上部は直線状で管軸1aに平行になっていて、この部分がプラスチックフィルム2aと摩擦接触するので、その周方向の回転によりプラスチックフィルム2aを周方向に剥ぎ取ることができる。
【0033】
回転部材がワイヤーの実施例と同様に、エアモータ20を正方向と逆方向に複数回回転させるごとに、管内ロボット3を管長方向に移動させることにより、管ライニング材2のプラスチックフィルム2aを全面的に剥ぎ取ることができる。この実施例では、金具44、45、46が金属製の大型部材なので、プラスチックフィルムの剥ぎ取りの他に、本管内に付着している石灰乳(エフロエッセンス)、モルタルなど、あるいは本管内に堆積した堆積物、あるいは付着物などを除去したり、本管の接合部から侵入した木の根などを除去することが可能になる。この場合には、チェーン41、42、43の径方向長さを、金具44、45、46の上部の直線部分が本管1の内壁面に摩擦接触するような長さに設定する。
【0034】
図5は、回転部材として、金属製のリングを繋ぎ合わせたチェーン51、52、53を、周方向に等間隔にアタッチメント25を介して回転盤24に取り付けられるディスク50、54に張り渡した実施例を示している。チェーン51、52、53の一端はそれぞれディスク50に取り付けられ、他端はディスク54に取り付けられる。
【0035】
各チェーン51、52、53は、伸縮自在であるが、ディスク50、54が回転すると遠心力で径方向に延び、その一つのリング51a、52a、53aがプラスチックフィルム2aに摩擦接触するような長さに設定される。
【0036】
このような構成で、エアモータ20を正方向あるいは逆方向に回転させると、ディスク50、54の回転によりチェーン51、52、53が遠心力により径方向に広がり、その一つのリング51a、52a、53aがプラスチックフィルム2aに摩擦接触し、その周方向の回転によりプラスチックフィルム2aを剥ぎ取ることができる。
【0037】
回転部材がワイヤーの実施例と同様に、エアモータ20を正方向と逆方向に複数回回転させるごとに、管内ロボット3を管長方向に移動させることにより、管ライニング材2のプラスチックフィルム2aを全面的に剥ぎ取ることができる。この実施例でも、チェーン51、52、53によりプラスチックフィルムの剥ぎ取りの他に、本管内に付着している石灰乳(エフロエッセンス)、モルタルなど、あるいは本管内に堆積した堆積物、あるいは付着物などを除去したり、本管の接合部から侵入した木の根などを除去することが可能になる。この場合には、チェーン51、52、53の径方向長さを、その一つのリングが本管1の内壁面に摩擦接触するような長さに設定する。