【解決手段】センサホルダと測定対象物のうち一方を固定し、他方を走査しつつ、センサホルダに取り付けた複数のセンサを用いて、逐次多点法により測定対象物の形状を測定する測定方法は、n個の測定点で、センサの出力を取得するステップと、任意の測定点で、センサホルダと測定対象物のうち他方の傾き角を検出するステップと、第1の測定点の傾き角と、第1の測定点とは異なる第2の測定点の傾き角との差に基づいて零点誤差を求め、更に測定点を変えて零点誤差を求めるステップと、求めた前記零点誤差の平均をとり、その平均値及び前記センサの出力を用いて測定対象物の形状を求めるステップとを有し、平均化するために用いる零点誤差の数は、測定点数nに基づいて決定される。
センサホルダと測定対象物のうち一方を固定し、他方を走査しつつ、前記センサホルダに取り付けた複数のセンサを用いて、逐次多点法により測定対象物の形状を測定する測定方法において、
n個の測定点で、前記センサの出力を取得するステップと、
任意の測定点で、前記センサホルダと前記測定対象物のうち前記他方の傾き角を検出するステップと、
第1の測定点の傾き角と、前記第1の測定点とは異なる第2の測定点の傾き角との差に基づいて零点誤差を求め、更に測定点を変えて前記零点誤差を求めるステップと、
求めた前記零点誤差の平均をとり、その平均値及び前記センサの出力を用いて前記測定対象物の形状を求めるステップとを有し、
平均化するために用いる前記零点誤差の数は、前記測定点数nに基づいて決定されることを特徴とする測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1によれば、基準定規等に頼ることなく精度良く長尺物の形状を測定できる優れた測定方法を実現しているところ、移動開始点と終了点における角度測定ユニットにより検出される角度差を用いて零点誤差を求めることが行われている。しかるに、この手法では,角度測定ユニットの精度,分解能と環境の外乱等により生じる測定誤差の影響を直接受けるという課題がある。又、測定物を固定し,それに対してセンサホルダを走査する場合,センサホルダの傾き角度を検出して零点誤差を求めることが出来ることと同様に、センサホルダを固定し,それに対して測定物を走査して測定物の走査による傾き角度を検出しても、零点誤差を求めることが出来る。但し,後者の場合は,測定物を走査する際に,測定物が剛体であること,すなわち,測定物、及びそれを載置した走査テーブルにおいて自重による変形が生じないことが、零点誤差の計算の前提になっているが、実際は微小な変形が生じることから、計算値と理論値との間に乖離が生じている。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑み、測定誤差の影響を低減することで、より精度良く且つ効率的に被測定物の形状を測定できる測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の測定方法は、センサホルダと測定対象物のうち一方を固定し、他方を走査しつつ、前記センサホルダに取り付けた複数のセンサを用いて、逐次多点法により測定対象物の形状を測定する測定方法において、
N個の測定点で、前記センサの出力を取得するステップと、
任意の測定点で、前記センサホルダと前記測定対象物のうち前記他方の傾き角を検出するステップと、
第1の測定点の傾き角と、前記第1の測定点とは異なる第2の測定点の傾き角との差に基づいて零点誤差を求め、更に測定点を変えて前記零点誤差を求めるステップと、
求めた前記零点誤差の平均をとり、その平均値及び前記センサの出力を用いて前記測定対象物の形状を求めるステップとを有し、
平均化するために用いる前記零点誤差の数は、前記測定点数nに基づいて決定されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、平均化するために用いる前記零点誤差の数は、前記測定点数nに基づいて決定されるので、前記零点誤差の数の最適値を統計的手法で求めることで、前記傾き角の測定を適正な数で行うことが出来、それにより求めた前記零点誤差の平均値及び前記センサの出力を用いて、より精度良く且つ効率的に被測定物の形状を測定することができる。
【0010】
請求項2に記載の測定方法は、請求項1に記載の発明において、全ての測定点で、前記センサホルダの傾き角を検出することを特徴とするので、測定された前記傾き角から最適なものを選択して差をとることができる。
【0011】
請求項3に記載の測定方法は、請求項1又は2に記載の発明において、前記センサは3つであり、逐次3点法を用いて前記測定対象物の形状を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測定誤差の影響を低減することで、より精度良く且つ効率的に被測定物の形状を測定できる測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態にかかる測定装置を備えた測定系の概略図であり、斜め下方から見た状態を示している。
図1において、不図示の定盤上に下面を接地させた台板BPが設けられている。更に台板BP上に下端を接するようにして、一対の壁WLが設けられている。壁WLの上端には天板CLが接合されている。保持台としての天板CLの下面には、被測定物である光学素子OBJが光学面を下方に向けて取り付けられている。天板CLに対向する台板BP上には、光学素子OBJに対して測定装置MDが移動可能に配置されている。ここで、測定装置MDの移動方向をX方向とし、X方向に直交する重力加速度方向をY方向とし、X方向とY方向とに直交する方向をZ方向とする。
【0015】
図2は、測定装置MDをZ方向に見た図である。台板BP上をX方向に沿って移動可能な走査部SP上に、センサホルダSHが配置されている。センサホルダSHは、変位センサである3本のプローブPB1、PB2、PB3を、X方向に沿って配置している。プローブPB1、PB2、PB3の検出感度軸方向は、Y方向であり、その検出感度軸間隔はdである。3本のプローブPB1、PB2、PB3の出力は、不図示のパソコンなどに入力され,形状を求めるために後述する演算が行われることとなる。
【0016】
更に、センサホルダSHの傾斜角を測定する為の角度測定ユニットAMUが、センサホルダSH上に配置されて一体的に傾くようになっている。
図3は、角度測定ユニットAMUの概略構成を示す図である。センサホルダSH上に、ケースCAを保持した支持部HDが固定されている。
【0017】
ケースCA内には、コリメートな光束DLを出射する光源LDと、ビームスプリッタBSと、光束DLを検出する光検出器PDとが固定されている。又、ケースCAの天井面から垂下させた糸SG(2本あると更に安定しやすい)の下端に基準鏡SRが連結されている。これにより、基準鏡SRの反射面は、重力加速度方向に対して平行となっている。光源LDと、基準鏡SRと、光検出器PDとで投受光系を構成する。
【0018】
角度測定ユニットAMUの校正は、センサホルダSHを水平にして行う。このとき、光源LDから出射された光束DLは、ビームスプリッタBSを通過して、基準鏡SRに入射する。基準鏡SRで反射した光束DLは、ビームスプリッタBSで反射されて、光検出器PDの受光面PDaに入射する。このときの入射位置を原点として、不図示のメモリ等に記憶する。実際にセンサホルダSHの傾斜角を測定するときは、センサホルダSHと共にケースCAも傾くのに対し、基準鏡SRは常に重力加速度方向に延在しているため、基準鏡SRに入射する光束DLの入射角が変わり、その反射した光束DLが光検出器PDの受光面PDaに入射する位置が原点からずれる。このずれ量が、センサホルダSHの傾斜角に相当するので、ずれ量を検出することでセンサホルダSHの傾斜角がわかる。尚、角度測定ユニットAMUは以上の構成に限られない。
【0019】
次に、本実施の形態における測定装置MDを用いた光学素子の光学面の形状測定方法について説明する。
【0020】
ここで、形状測定に用いる逐次3点法について説明する。逐次3点法においては、複数のプローブPB1、PB2、PB3を使用することから、各プローブ間に生じる測定誤差要因として零点誤差がある。例えば、中央のプローブPB2のY方向の位置を基準とした場合、隣接する他のプローブPB1,PB3は、それぞれα
R、α
Fの零点誤差(Y方向のずれ)を持つこととなる。このように、零点誤差とは複数のプローブ間におけるそれぞれのゼロ点のずれのことである。
【0021】
この場合、通常、複数のプローブのゼロ点を合わせるためには、何か基準となる直線を有する基準物(すなわち、実体基準)に当ててみて、その読みがゼロになるように調整することは理論的には可能である。しかし、実際にはこの基準物が理想的な直線を有していない場合が多く、形状測定において逐次3点法を使用する場合、3個のプローブのゼロ点を合わせることは極めて困難である。よって、プローブが零点誤差を持つ場合、以下に述べるように形状測定に影響を与えることとなる。
【0022】
図2において、センサホルダSHに保持された3本の変位計(プローブ)PB1〜PB3を、被測定物OBJと走査部SPとの相対移動方向(X方向)に沿って等間隔dで配置し、被測定物の真の表面形状をg、零点誤差が重畳された表面形状をf、走査テーブルの並進運動誤差e
z、走査テーブルの回転運動誤差e
θとしたときに、中央のプローブPB2の出力をS
30、相対移動方向前方のプローブPB1の出力をS
3F、相対移動方向後方のプローブPB3の出力をS
3Rとし、中央のプローブに対する前方及び後方のプローブの零点ずれをα
R、α
Fとして、被測定物OBJと走査部SPとをX方向に沿って相対移動させてn点の測定を行った場合に、下記の式が得られる。
S
30(x
i)=g(x
i)+e
z(x
i) (1)
S
3F(x
i)=g(x
i+1)+e
z(x
i)+de
θ(x
i)+α
F (2)
S
3R(x
i)=g(x
i-1)+e
z(x
i)−de
θ(x
i)+α
R (3)
f(x
i)=g(x
i)+n(n−1)α/2 (4)
但し、α=α
F+α
R
【0023】
[差分0の場合]
図4は、光学素子OBJとプローブPB1〜PB3との関係を模式的に示す図である。零点誤差を求めるために、測定開始点と、測定n点目(例えば測定終了点)での運動誤差によるセンサホルダSHの傾きを利用する。これを差分0の場合という。逐次3点法では運動誤差を演算処理によって分離できるが、各プローブの零点にずれが生じている場合、分離した各運動誤差量にも影響が含まれてしまう。以下に、零点誤差が生じていない場合(α=0)と、生じている場合(α≠0)における、演算処理によって求められる運動誤差の式を示す。
【0024】
(a)零点誤差が生じていない場合の並進運動誤差e
zと回転運動誤差e
θ:
e
z(x
i)=S
30(x
i)−g(x
i)
=S
30(x
i)−f(x
i) (5)
de
θ(x
i)=S
3F(x
i)−S
30(x
i)−g(x
i+1)+g(x
i)
=S
3F(x
i)−S
30(x
i)−f(x
i+1)+f(x
i)
=ΔS
3F(x
i)−Δf(x
i) (6)
【0025】
更に、測定開始点の回転運動誤差e
θ(x
0)と、測定n点目での回転運動誤差e
θ(x
n)との差Δe
θ(x
n)は、以下の式で表せる。
dΔe
θ(x
n)=d{e
θ(x
n)−e
θ(x
0)}
={ΔS
3F(x
n)−Δf(x
n)}−{ΔS
3F(x
0)−Δf(x
0)} (7)
【0026】
(b)零点誤差が生じた場合の並進運動誤差e
z’と回転運動誤差e
θ’:
e
z’(x
i)=S
30(x
i)−g(x
i)
=S
30(x
i)−f(x
i)+n(n−1)α/2 (8)
de
θ’(x
i)=S
3F(x
i)−S
30(x
i)−g(x
i+1)+g(x
i)
=S
3F(x
i)−S
30(x
i)−{f(x
i+1)−(n+1)(n+1−1)α/2}+{f(x
i)−n(n−1)α/2}−α
F
=ΔS
3F(x
i)−Δf(x
i)+nα−α
F (9)
【0027】
ここで、中央のプローブと後方のプローブの零点が同一直線上として考えればα
R=0となるので、α=α
Fとなる。従って、(9)式は以下のように表せる。
de
θ’(x
i)=ΔS
3F(x
i)−Δf(x
i)+nα−α
F
=ΔS
3F(x
i)−Δf(x
i)+(n−1)α (10)
【0028】
更に、測定開始点の回転運動誤差e
θ’(x
0)と、測定n点目での回転運動誤差e
θ’(x
n)との差Δe
θ’(x
n)は、以下の式で表せる。
dΔe
θ’(x
n)=d{e
θ’(x
n)−e
θ’(x
0)}
={ΔS
3F(x
n)−Δf(x
n)}−{ΔS
3F(x
0)−Δf(x
0)}+(n−1)α (11)
【0029】
つまり、(7)式と(11)式とを比較すると、その差は(n−1)αであり、測定点数nは既知であるから、零点誤差αが求まれば、零点誤差を排除した被測定物の形状を求めることができるといえる。但し、dΔe
θ’(x
n)はプローブの実測値から演算処理すれば求まるが、零点誤差を含まないdΔe
θ(x
n)は未知数である。本実施の形態では、角度測定ユニットAMUを用いて測定開始点でセンサホルダSHの傾斜角θ
0と,測定n点目でのセンサホルダSHの傾斜角θ
nを直接測定して差をとれば、(11)式中の{e
θ’(x
n)−e
θ’(x
0)}に相当するので、更にプローブ間隔dを掛けることで、(11)式の左辺が求まり、これと(7)式とから零点誤差を含まないdΔe
θ(x
n)を求めることができるのである。より具体的には、以下の式から零点誤差が求まる。
α=d{Δe
θ’(x
n)−Δe
θ(x
n)}/(n−1) (12)
【0030】
求めた零点誤差αを利用し、(4)式より、逐次3点法の演算処理結果f(x
i)からn(n−1)α/2を減ずるように補正を行えば、真の形状g(x
i)を求めることができる。
【0031】
[差分1の場合]
図5は、光学素子OBJとプローブPB1〜PB3との関係を模式的に示す図であるが、理解しやすいように光学素子OBJを2つに分けて示している。本例では、実際の測定長はLであるが、実際の測定長を(L−d)とみなして零点誤差を求める。また零点誤差を求めるために、測定開始点、測定第2点目、測定(n−1)点目、測定n点目でセンサホルダSHの傾きを測定する。これを差分1の場合という。
【0032】
具体的には、
図5(a)に示すように、測定開始点での傾斜角θ
0と,測定(n−1)点目での傾斜角θ
n-1との傾きの差を取り、
図5(b)に示すように、測定第2点目での傾斜角θ
1と,測定n点目での傾斜角θ
nとの傾きの差をとることで、式(12)に示すようにして2個の零点誤差を算出できることとなる。
【0033】
[差分2の場合]
図6は、光学素子OBJとプローブPB1〜PB3との関係を模式的に示す図であるが、理解しやすいように光学素子OBJを3つに分けて示している。本例では、実際の測定長はLであるが、実際の測定長を(L−2d)とみなして零点誤差を求める。また零点誤差を求めるために、測定開始点、測定第2点目、測定第3点目、測定(n−2)点目、測定(n−1)点目、測定n点目でセンサホルダSHの傾きを測定する。これを差分2の場合という。
【0034】
具体的には、
図6に示すように、測定開始点での傾斜角θ
0と,測定(n−2)点目での傾斜角θ
n-2との傾きの差を取り、測定第2点目での傾斜角θ
1と,測定(n−1)点目での傾斜角θ
n-1との傾きの差を取り、測定第3点目での傾斜角θ
2と,測定n点目での傾斜角θ
nとの傾きの差を取とることで、式(12)に示すようにして3個の零点誤差を算出できることとなる。
【0035】
[差分mの場合]
以上より明らかであるが、実際の測定長を(L−md)とみなして零点誤差を求めた場合、m+1(但しm<n)個の零点誤差を求めることができる。よって、差分数としてのmは、「求めることが可能な零点誤差の数−1」と定義できる。
【0036】
ところで、以上の測定における零点誤差は同じものとみなせるため,この零点誤差の平均値を用いれば、平均化効果で,角度測定ユニットAMUの精度,分解能と環境の外乱とにより生じる測定誤差の影響を低減でき、より高精度に真の形状g(x
i)を求めることができるともいえる。一方で、式(12)に示したように,誤差は分子に含まれており,分母の(n−1)の影響で,零点誤差を算出するステップ数が小さくなるにつれ,誤差が大きくなる傾向がある。よって、差分数としてのmを増大させれば、それに応じて誤差を低減できる可能性があるが、例え無制限にmを増大させても誤差のばらつきから、低減効果に限界があることが分かってきた。本実施の形態で用いている逐次三点法では,演算処理するためプローブからの出力をディジタル化している。そのため,最小桁の±1で誤差が生じるものとして,以下,誤差のばらつきについて検討する。
【0037】
このディジタル化に固有の誤差はランダムに発生するから,「−1」,「0」,「1」が同じ確率で発生するものといえる。例えば差分0の場合、その差動出力の組み合わせは3×3=9通りあり、その結果は「−2」,「−1」,「0」,「1」,「2」の5つに分類される。一方、発生する頻度(比率)は,上記分類順に、1:2:3:2:1となる。このばらつきの標準偏差σは1.504となる。以下、差分の種類に応じて、発生比率と標準偏差とを示す。
【0038】
[差分0の場合(零点誤差は1つ)]
誤差=「−1」,「0」,「1」
差動出力分類=「−2」,「−1」,「0」,「1」,「2」
発生比率=1:2:3:2:1
標準偏差σ
0=1.054
【0039】
[差分1の場合(2つの零点誤差の平均値を用いる)]
誤差=「−4」,「−3」,「−2」,「−1」,「0」,「1」,「2」,「3」,「4」
差動出力分類=「−2」,「−1.5」,「−1」,「−0.5」,「0」,「0.5」,「1」,「1.5」,「2」
発生比率=1:4:10:16:19:16:10:4:1
標準偏差σ
1=0.816
【0040】
[差分2の場合(3つの零点誤差の平均値を用いる)]
誤差=「−6」,「−5」,「−4」,「−3」,「−2」,「−1」,「0」,「1」,「2」,「3」,「4」,「5」,「6」
差動出力分類=「−2」,「−5/3」,「−4/3」,「−1」,「−2/3」,「−1/3」,「0」,「1/3」,「2/3」,「1」,「4/3」,「5/3」,「2」
発生比率=1:6:21:50:90:126:141:126:90:50:21:1
標準偏差σ
2=0.667
【0041】
差分0から差分19の場合における標準偏差σ
mを、まとめて表1に示す。
【0043】
差分0の場合の標準偏差σ
0と、差分mの場合の標準偏差σ
mとは、式(12)の分母が異なるため、分母を考慮して評価値mを求める。測定点数n=35の場合における評価値mを表2に示す。
【0045】
図7は、評価値mを縦軸とし、差分mを横軸として、測定点数n=35の場合における値をプロットしたグラフである。上述したように,零点誤差を求める式(12)で,誤差は分子に含まれており,分母の(n−1)の影響で,零点誤差を算出するステップ数が小さくなるにつれ,
図7に示すように誤差が大きくなる。しかしながら、評価値mに対して差分の最適値(すなわち平均化するために用いる零点誤差の数)が存在する。具体的には、
図7の例で評価値mが最も小さくなるのは、差分11の場合である。従って差分数を限定することで、長時間をかけることなく高精度な形状測定を行えることとなる。
【0046】
図8は、評価値mを縦軸とし、差分mを横軸として、測定点数n=20,25,30,35、40の場合における値をプロットしたグラフである。いずれの場合にも、評価値mに対して差分の最適値が存在することがわかる。また、差分の最適値は測定点数nに応じて変化する。
【0047】
以下、本発明者らは、
図1,2の測定装置において、測定対象物としてガラス板を用いて、プローブ間隔を30mmにセットし、測定点数n=35として同じ条件で繰り返し4回の形状測定を行った。プローブは電気マイクロメータであり,また水準器(0.01mm/m)で傾き角を測定した。4回の測定で求められる零点誤差のばらつきに基づいて、評価値mを縦軸とし、差分mを横軸として実測値をプロットしたグラフを
図9に示す。
【0048】
図9のグラフを
図7のグラフと比較すると、最適値となる差分数は異なるが、両者のグラフの傾向は一致することがわかった。
【0049】
本発明は、明細書に記載の実施例に限定されるものではなく、他の実施例・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施例や思想から本分野の当業者にとって明らかである。明細書の記載及び実施例は、あくまでも例証を目的としており、本発明の範囲は後述するクレームによって示されている。例えば、上述した実施の形態では、走査部SPを移動させているが、センサホルダSH側を固定する代わりに、天板CL側を走査ステージとして移動させてもよい。その場合、移動する天板(又は測定物)側の測定点での傾き角の検出が必要になる。傾き角を検出するセンサとしては、
図3に示す角度測定ユニットAMUなどを用いることができ、上述と同様にして零点誤差を求めることが出来る。又、全ての形状測定点毎に、プローブの出力と共にセンサホルダの傾き角を検出しても良いし、間引かれた形状測定点でセンサホルダの傾き角を検出しても良い。逐次多点法には、逐次3点法以外の場合も含む。