特開2018-128430(P2018-128430A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-128430液体分析システムおよび液体分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-128430(P2018-128430A)
(43)【公開日】2018年8月16日
(54)【発明の名称】液体分析システムおよび液体分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20180720BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20180720BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20180720BHJP
【FI】
   G01N1/10 H
   G01N35/00 D
   G01N1/00 101G
   G01N1/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-23489(P2017-23489)
(22)【出願日】2017年2月10日
(71)【出願人】
【識別番号】390000011
【氏名又は名称】JFEアドバンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】錦澤 徹
(72)【発明者】
【氏名】小田 将広
(72)【発明者】
【氏名】北田 紀生
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
【Fターム(参考)】
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052CA03
2G052CA04
2G052CA12
2G052EA03
2G052ED17
2G058BA06
2G058BA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】連続的にかつ自動的に液体を分析できる液体分析システムを提供する。
【解決手段】液体分析システム1は、吸引口101が液体中に設置され、液体を汲み上げる採液ポンプ100と、採液ポンプ100と流体的に接続され、採液ポンプ100によって汲み上げられた液体を遠心力によって異物と試料水とに分離する遠心分離器と、遠心分離器と流体的に接続され、遠心分離器から送られた試料水を分析する分析装置本体400とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引口が液体中に設置され、前記液体を汲み上げる採液ポンプと、
前記採液ポンプと流体的に接続され、前記採液ポンプによって汲み上げられた前記液体を遠心力によって異物と試料水とに分離する遠心分離器と、
前記遠心分離器と流体的に接続され、前記遠心分離器から送られた前記試料水を分析する分析装置本体と
を備える液体分析システム。
【請求項2】
前記遠心分離器は、
汲み上げられた前記液体を溜めることができ、中心軸まわりに回転可能である回転容器と、
前記回転容器内で前記中心軸と同心に配置され、前記中心軸について対称な形状を有し、側部には前記分析装置本体に送るための前記試料水を採取する採取口が設けられている構造体と
をさらに備える、請求項1に記載の液体分析システム。
【請求項3】
前記構造体の下端位置は、前記回転容器内において所定量の前記液体で満たされたときの液深の10〜90%である、請求項2に記載の液体分析システム。
【請求項4】
前記構造体の最大径は、前記回転容器の内径の10〜90%である、請求項2または請求項3に記載の液体分析システム。
【請求項5】
前記回転容器の下部には排液口が設けられている、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の液体分析システム。
【請求項6】
前記回転容器の下部には注液口が設けられている、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の液体分析システム。
【請求項7】
前記回転容器の上部中央には洗浄液の注入口が設けられ、
前記構造体の上部は円錐形状を有する、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の液体分析システム。
【請求項8】
前記回転容器と前記分析装置本体との間に配置されたフィルタであって、前記試料水をろ過するためのフィルタをさらに備える、請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の液体分析システム。
【請求項9】
前記回転容器から前記試料水を吸い出し、前記分析装置本体に向けて送るための送液ポンプと、
前記フィルタを通過したろ液を間欠的に逆流させるように前記送液ポンプを制御するフィルタ清掃制御部を有する制御装置と
をさらに備える、請求項8に記載の液体分析システム。
【請求項10】
前記回転容器の回転中に前記送液ポンプを駆動して前記回転容器から前記試料水を吸い出し、前記分析装置本体に向けて送る回転中送液制御部を有する制御装置をさらに備える、請求項9に記載の液体分析システム。
【請求項11】
前記回転容器から前記試料水を吸い出し、前記分析装置本体に向けて送るための送液ポンプと、
前記回転容器の回転中に前記送液ポンプを駆動して前記回転容器から前記試料水を吸い出し、前記分析装置本体に向けて送る回転中送液制御部を有する制御装置と
をさらに備える、請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の液体分析システム。
【請求項12】
液体源から液体を直接汲み上げ、
前記液体を遠心分離器に送り、
前記遠心分離器によって、前記液体を異物と試料水とに分離し、
前記試料水を分析装置本体に送り、
前記分析装置本体によって前記試料水を分析する
ことを自動的にかつ連続的に行う液体分析方法。
【請求項13】
前記遠心分離器において、前記液体を前記異物と前記試料水とに分離するとき、前記試料水として、前記遠心分離器の内壁近傍の領域と前記遠心分離器の回転中心近傍の領域とを除く領域内の前記液体を前記試料水として前記遠心分離器の回転中に採取することをさらに含む、請求項12に記載の液体分析方法。
【請求項14】
前記遠心分離器において、下部から前記液体を注入および排出し、上部から洗浄液を注入することをさらに含む、請求項12または請求項13に記載の液体分析方法。
【請求項15】
前記遠心分離器と前記分析装置本体の間に配置されたフィルタをさらに準備し、
前記遠心分離器と前記分析装置本体との間に介在された前記試料水を前記フィルタによってろ過することをさらに含む、請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の液体分析方法。
【請求項16】
前記ろ過された前記試料水を間欠的に逆流させて前記フィルタを洗浄することをさらに含む、請求項15に記載の液体分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体分析システムおよび液体分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川水、湖沼水、海水、または工場排水などの水質分析が様々な方法で行われている。特に、水中に溶存している物質を分析するためには、懸濁あるいは浮遊している異物を分析前に除去することが必要となる。例えば、特許文献1には、懸濁あるいは浮遊している異物をフィルタによって除去した後に試料液を分析する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/66003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような液体分析では、海や湖などから試料となる液体を採取し、採取した液体を分析装置に投入する必要がある。従って、自動的に液体を分析することができない。また、特許文献1に開示されているような液体分析では、非常に目の細かいフィルタを使用することがある。しかし、分析する液体中には、固形物(砂粒子等)、枯葉、または海藻などの様々な大きさの異物が混入しているため、そのような目の細かいフィルタを使用すると、フィルタが目詰まりを起こす。従って、分析ごとにフィルタを交換する必要があり、連続的に液体を分析できない。
【0005】
本発明は、自動的にかつ連続的に液体を分析できる液体分析システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体分析システムは、液体中に設置され、前記液体を汲み上げる採液ポンプと、前記採液ポンプと流体的に接続され、前記採液ポンプによって汲み上げられた前記液体を遠心力によって異物と試料液とに分離する遠心分離器と、前記遠心分離器と流体的に接続され、前記遠心分離器から送られた前記試料水を分析する分析装置本体とを備える。
【0007】
この構成によれば、河川水、湖沼水、海水、または工場排水などの液源から分析装置本体まで、各構成要素が流体的に接続されており、即ちインラインで構成されている。そのため、液源から液体を採取し、液体から異物を除去し、異物が除去された液体を分析するという一連の流れを自動化でき、即ち自動的に液体を分析できる。また、異物の除去のためにフィルタを使用せずに遠心分離器を使用しているため、フィルタの交換を要することなく連続的に液体を分析できる。
【0008】
前記遠心分離器は、汲み上げられた前記液体を溜めることができ、中心軸まわりに回転可能である回転容器と、前記回転容器内で前記中心軸と同心に配置され、前記中心軸について対称な形状を有し、側部には前記分析装置本体に送るための前記試料水を採取する採取口が設けられている構造体とをさらに備えてもよい。
【0009】
この構成によれば、回転容器内で中心軸と同心に構造体を設けることで、回転容器内において中心軸付近に通常できるはずの気泡を含む渦の発生を防止できる。中心軸付近に気泡を含む渦が発生すると、採水の際に気泡を巻き込むことによって分析に支障が出るおそれがある。従って、これを防止できることは有効である。また、異物を遠心力によって分離する際、異物の比重によって異物の集まる位置が異なる。具体的には、回転容器の内壁近傍領域には比重の相対的に大きな異物が集まり、回転容器の中央の構造体の下方領域には比重の相対的に小さな異物が集まる。そのため、構造体の側部に採取口を設けていることで、回転容器の内壁近傍領域と、回転容器の中央の構造体の下方領域とを避け、即ち異物が集まっていない部分の液体を試料水として採取できる。
【0010】
前記構造体の下端位置は、前記回転容器内において所定量の前記液体で満たされたときの液深の10〜90%であってもよい。また、前記構造体の最大径は、前記回転容器の内径の10〜90%であってもよい。
【0011】
この構成によれば、中心軸の軸方向においては、回転容器内の液面に浮いている異物と回転容器内中央の下方領域に集められている比重の相対的に小さい異物とを避ける位置に採取口を設けているため、異物が除去された試料水を得ることができる。また、中心軸の径方向においては、回転容器の内壁近傍領域に集められた比重の相対的に大きな異物と、回転容器の中央の構造体の下方領域に集められた比重の相対的に小さな異物とを避ける位置に採取口を設けているため、異物が除去された試料水を得ることができる。
【0012】
前記回転容器の下部には排液口が設けられていてもよい。前記回転容器の下部には注液口が設けられていてもよい。
【0013】
これらの構成によれば、回転容器の下部に注液口が設けられているため、回転容器に液体を注入する際、液体が勢いよく流れ落ちず、回転容器内の液体が撹拌されることを防止できる。従って、試料水と異物とが混合されることを防止できる。また、回転容器の下部に排液口が設けられているため、回転容器から液体を排出する際、回転容器の内面を洗浄でき、さらに異物が回転容器内に残存することを防止できる。
【0014】
前記回転容器の上部中央には洗浄液の注入口が設けられ、前記構造体の上部は円錐形状を有してもよい。
【0015】
この構成によれば、回転容器の上部中央に洗浄液の注入口が設けられているため、洗浄液を上部から注入できる。さらに、構造体の上部は円錐形状を有するため、注入口から注入された洗浄液は構造体の上部の円錐形状に当たり、回転容器の内壁に向かって飛散する。従って、回転容器の内壁を飛散する洗浄液によって洗浄できる。
【0016】
前記液体分析システムは、前記回転容器と前記分析装置本体との間に介在された前記試料水をろ過するためのフィルタをさらに備えてもよい。
【0017】
この構成によれば、遠心分離器で分離しきれなかった異物をフィルタによって除去できる。また、フィルタを遠心分離器の下流に設けており、フィルタの目詰まりの原因となる異物を予め除去しているため、フィルタの目詰まりを抑制できる。即ち、フィルタのみを設置した場合と比べてフィルタを交換するまでの期間を長くでき、連続的な運転時間を延長できる。
【0018】
前記液体分析システムは、前記回転容器から前記試料水を吸い出し、前記分析装置本体に向けて送るための送液ポンプと、前記フィルタを通過したろ液を間欠的に逆流させるように前記送液ポンプを制御するフィルタ清掃制御部を有する制御装置とをさらに備えてもよい。
【0019】
この構成によれば、フィルタを通過したろ液によって、フィルタを洗浄できるため、フィルタの目詰まりを抑制できる。従って、何もしない場合と比べてフィルタを交換するまでの期間を長くでき、連続的な運転時間を延長できる。
【0020】
前記液体分析システムは前記回転容器の回転中に前記送液ポンプを駆動して前記回転容器から前記試料水を吸い出し、前記分析装置本体に向けて送る回転中送液制御部を有する制御装置をさらに備える。
【0021】
遠心分離により懸濁物等を分離しても、回転容器の回転を止めてしまうと分離した異物が再び拡散されてしまうが、この構成によれば、回転容器の回転中に送液できるため、異物を分離した試料水のみを分析装置本体に送ることができる。
【0022】
本発明の液体分析方法は、液体源から液体を直接汲み上げ、前記液体を遠心分離器に送り、前記遠心分離器によって、前記液体を異物と試料水とに分離し、前記試料水を分析装置本体に送り、前記分析装置本体によって前記試料水を分析することを自動的にかつ連続的に行う。
【0023】
前記液体分析方法は、前記遠心分離器において、前記液体を前記異物と前記試料水とに分離するとき、前記試料水として、前記遠心分離器の内壁近傍の領域と前記遠心分離器の回転中心近傍の領域とを除く領域内の前記液体を前記試料水として採取することをさらに含んでもよい。
【0024】
前記液体分析方法は、前記遠心分離器において、下部から前記液体を注入および排出し、上部から洗浄液を注入することをさらに含んでもよい。
【0025】
前記液体分析方法は、前記遠心分離器と前記分析装置本体の間に配置されたフィルタをさらに準備し、前記遠心分離器と前記分析装置本体との間に介在された前記試料水を前記フィルタによってろ過することをさらに含んでもよい。
【0026】
前記液体分析方法は、前記ろ過された前記試料水を間欠的に逆流させて前記フィルタを洗浄することをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、液体分析システムにおいて、各構成要素がインラインで構成されているため、自動的にかつ連続的に液体を分析できる液体分析システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る液体分析システムのシステム図。
図2】一次フィルタ部の詳細を示す部分断面図。
図3】二次フィルタの詳細を示す正面図。
図4】液体分析システムの制御ブロック図。
図5】一次フィルタ部と二次フィルタ部による異物の除去が分析に及ぼす影響を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の液体分析システム1は、採液ポンプ100と、一次フィルタ部200と、二次フィルタ部300と、分析装置本体400と、制御装置500とを備える。採液ポンプ100、一次フィルタ部200、二次フィルタ部300、および分析装置本体400は流体的に接続されており、即ちこれらはインラインで構成されている。また、一次フィルタ部200には洗浄液タンク210が流体的に接続されている。液体分析システム1は、採液ポンプ100によって汲み上げられた液体を一次フィルタ部200および二次フィルタ部300によって異物と試料水とに分離し、分析装置本体400によって試料水を分析するものである。分析対象の液体は、河川水、湖沼水、海水、または工場排水などである。本実施形態では、海水中に溶存する硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、およびアンモニア態窒素などの栄養塩の濃度を分析する。
【0031】
本実施形態の採液ポンプ100は、浮体式であり、海水面上に浮かされて使用される。採液ポンプ100は、吸引口101から分析対象である海水を汲み上げ、一次フィルタ部200に送る。但し、採液ポンプ100の態様は、浮体式以外であってもよく、例えば水中に沈む沈体式であってもよい。また、吸引口101が海水中に設置されていれば、採液ポンプ100自体は設置場所を問わず、任意の場所に設置され得る。
【0032】
図2に示すように、一次フィルタ部200には、遠心分離器220が設けられている。遠心分離器220は、汲み上げられた海水を溜めることが可能であり、中心軸Lまわりに回転可能である回転容器221を備える。また遠心分離器220は、回転容器221内で中心軸Lと同心に配置され、中心軸Lについて対称な形状を有し、側部には分析装置本体400に送るための試料水を採取する採取口222cが設けられている構造体222を備える。
【0033】
回転容器221は、概ね下に凸の円錐状の容器からなり、中心軸Lについて対称な形状を有している。回転容器221の上部中央には洗浄液の注入口221aが設けられており、注入口221aは洗浄液タンク210(図1参照)と接続されている。また、この注入口221aは回転容器221内において延びる洗浄液管221bと接続されており、洗浄液タンク210から送られた洗浄液は洗浄液管221bを通って回転容器221内に注入される。また、回転容器221の下部には海水が注水および排水される注液口(排液口)221cが設けられている。本実施形態では、注液口221cと排液口221cは共通である。注液口(排液口)221cからは下方に向かって支持管221dが延びている。支持管221dは回転容器221と一体に設けられている。支持管221dのまわりには、モータ230に連結された駆動機構231が配置されており、駆動機構231は回転容器221とねじ止めによって締結されている。また、支持管221dのまわりおよび洗浄液管221bのまわりには、軸受機構232が配置されている。そのため、回転容器221は軸受機構232によって支持管221dと洗浄液管221bとが支持された状態で、モータ230からの駆動力を受けた駆動機構231によって回転される。また、支持管221dは、下端でT字型継手240に接続されている。T字型継手240から側方に延びる配管241は採液ポンプ100に接続され、T字型継手240から下方に延びる配管242は電磁弁243を介して海水に向かって開放されている。即ち、T字型継手240において、海水は、矢印Aの向きに回転容器221に向かって採液ポンプ100によって汲み上げられ、矢印Bの向きに回転容器221から自重によって排水される。また、電磁弁243は、後述するように制御装置500によって開閉制御されている。
【0034】
構造体222は、中心軸Lに沿った方向に延びた概ね円柱状である。構造体222の上部には円錐部222aが設けられており、円錐部222aは中心軸Lから径方向外側へ円形状に広がり、かつ下方へ向かって傾斜した円錐形状を有している。構造体222の下部には球面部222bが設けられており、球面部222bは半球形状を有している。球面部222bが半球状であることで、回転容器221が回転しているときの液体の流れを阻害しない。この観点で言えば、構造体222の下部の形状は、半球形状に限定されず、液体の流れを阻害しないような平坦形状または円錐形状などの形状でもあり得る。構造体222の下方側部には、回転容器内の海水を分析装置本体400に送るために試料水として採取する採取口222cが設けられている。本実施形態では、採取口222cは、中心軸Lまわりに構造体222の周上に等間隔に4個設けられている。採取口222cは構造体222内を中心軸Lに沿って上方に延びる採取管222dを通じて二次フィルタ部300に接続されている。採取管222dと洗浄液管221bは部分的に二重管構造を形成しており、回転容器221の上方では、内側に採取管222dが配置され、外側に洗浄液管221bが配置されている。
【0035】
構造体222の外形を詳細に説明すると、構造体222の上端は回転容器221の上端近傍に位置し、下端は所定量の海水で回転容器221が満たされたとき(破線参照)の液深の70%程度に位置している。ここで、所定量の液体とは、海水を遠心分離器220によって異物と試料水に分離するに適した量の液体であり、本実施形態では、通常、回転容器221が満水状態で運転される。特に、構造体222の下端は、この所定量の液体で回転容器221が満たされたときの液深の10〜90%に位置していることが好ましい。即ち、構造体222の下端は、回転容器221の上限および下限付近には位置しないことが好ましい。また、中心軸L方向から見て、構造体222の最大径は、25%程度である。ここで、構造体222の最大径は、回転容器221の内径の10〜90%であることが好ましい。即ち、構造体222の外表面は、回転容器221の内壁付近および中心軸L付近には位置しないことが好ましい。このようにすることで、中心軸Lの径方向においては、回転容器221の内壁近傍領域に集められた比重の相対的に大きな異物と、回転容器221の中央の構造体222の下方領域に集められた比重の相対的に小さな異物とを避ける位置に採取口222cを設けることができ、異物が除去された試料水を得ることができる。また、中心軸Lの軸方向においては、回転容器221内の液面に浮いている異物と回転容器221内の底面に沈んでいる異物とを避ける位置に採取口222cを設けることができ、異物が除去された試料水を得ることができる。また、一次フィルタ部200では、上記の回転容器221がケーシング250に収容され、複数か所でケーシング250に対してねじ止めによって固定されている。
【0036】
図3に示すように、二次フィルタ部300には、メンブレンフィルタ(フィルタ)310が設けられている。本実施形態のメンブレンフィルタ310は、例えば孔径0.45μm,1.2μm,8.0μmの三つの孔径のフィルタを組み合わせたフィルタである。メンブレンフィルタ310の下方には送液ポンプ320が設けられており、送液ポンプ320は配管321を通じて一次フィルタ部200の採取管222dと、メンブレンフィルタ310の下面に接続されている。送液ポンプ320は、順回転および逆回転可能であり、後述するように制御装置500によって駆動制御されている。ここで送液ポンプ320を順回転駆動すると、下から上へ向かってメンブレンフィルタ310を通過するように矢印Cの向きに液体を送ることになり、送液ポンプ320を逆回転駆動すると、上から下へ向かってメンブレンフィルタ310を通過するように矢印Dの向きに液体を送ることになる。遠心分離器220で液体から異物を除去された配管321内の試料水は送液ポンプ320によって動力を得て、メンブレンフィルタ310を下から上へ通過する。このとき、メンブレンフィルタ310によって、試料水がさらにろ過される。メンブレンフィルタ310の上方にはろ液タンク330が設けられており、メンブレンフィルタ310によってろ過されたろ液をろ液タンク330に溜めることができる。ろ液タンク330の上部の中央には配管322が接続されており、配管322は分析装置本体400に延びている。
【0037】
図4に示すように、制御装置500は、電磁弁制御部510とフィルタ清掃制御部520と回転中送液制御部530とを備える。電磁弁制御部510は、回転容器221の排液口221cを開閉する電磁弁243を制御する。また、フィルタ清掃制御部520は、通常順回転駆動する送液ポンプ320を制御し、間欠的に逆回転駆動させ、メンブレンフィルタ310を通過したろ液を逆流させる。送液ポンプ320を逆回転駆動すると、ろ液タンク330内のろ液が逆流し、即ちメンブレンフィルタ310を上から下に通過する(図3の矢印D参照)。これにより、所定時間ごとにメンブレンフィルタ310を清掃できる。ここで、所定時間はメンブレンフィルタ310の性質等によって異なり、メンブレンフィルタ310の清掃に適した時間を設定し得る。また、回転中送液制御部530は、送液ポンプ320を制御し、回転容器221の回転中に送液ポンプ320を駆動して回転容器221から試料水を吸い出し、二次フィルタ部300および分析装置本体400に向けて送る。仮に、遠心分離により懸濁物等を分離しても、回転容器221の回転を止めてしまうと分離した異物が再び拡散されてしまうが、この制御により、回転容器221の回転中に送液できるため、異物を分離した試料水のみを分析装置本体に送ることができる。なお、この回転容器221の回転中の送液は、例えば、回転容器221の回転を検出するセンサ(図示せず)からの信号に基づいて実行されてもよいし、特にそのような信号を検出せず、回転容器221に対する回転開始命令後に実行されてもよい。
【0038】
分析装置本体400(図1参照)は、一次フィルタ部200および二次フィルタ部300にて、懸濁または浮遊している異物が除去された試料水を分析する。分析原理としては、流れ分析法を使用し得る。さらに言えば、流れ分析法の中でもフローインジェクション(FIA)分析法を使用し得る。具体的には、JIS K0170:2011の流れ分析法による水質試験方法を採用する。栄養塩を含む海水に規定の反応液を混ぜると、対象とする栄養塩の種類と濃度に応じて発色するため、特定波長の吸光度を測定することで栄養塩濃度を得ることができる。例えば、亜硝酸態窒素には塩酸酸性ナフチルエチレンジアミン発色FIA法、硝酸態窒素にはカドミウム還元・塩酸酸性ナフチルエチレンジアミン発色FIA法、およびアンモニア態窒素にはフェノールによるインドフェノール青発色FIA法を使用し、吸光度を測定し、栄養塩濃度を分析できる。
【0039】
図5に示すように、懸濁または浮遊している異物が除去されていない海水と、一次フィルタ部200のみ通過した試料水(一次フィルタのみ)と、一次フィルタ部200および二次フィルタ部300を通過した試料水(一次フィルタ+二次フィルタ)とを、吸光度の観点から比較している。海水の吸光度が0.12程度であるのに対し、一次フィルタ部200の通過後の吸光度は大きく減少して0.04程度となっている。さらに、二次フィルタ部300を追加することで0.0004程度まで吸光度を低下させている。従って、懸濁物による光の散乱という外乱の無い状態で高精度に分析できる。
【0040】
本実施形態によれば、海水などの液源から分析装置本体400まで、各構成要素が流体的に接続されており、即ちインラインで構成されている。そのため、海中から海水を採取し、海水から異物を除去し、異物が除去された試料水を分析するという一連の流れを自動化でき、即ち自動的かつ連続的に海水を分析できる。
【0041】
また、回転容器221内で中心軸Lと同心に構造体222を設けることで、回転容器221内において中心軸L付近に通常できるはずの気泡を含む渦の発生を防止できる。中心軸L付近に気泡を含む渦が発生すると異物を遠心力によって分離する際の障害となり得るのでこれを防止できることは有効である。また、異物を遠心力によって分離する際、異物の比重によって異物の集まる位置が異なる。具体的には、回転容器221の内壁近傍領域には比重の相対的に大きな異物が集まり、回転容器221の中央の構造体222の下方領域には比重の相対的に小さな異物が集まる。そのため、構造体222の側部に採取口222cを設けていることで、回転容器221の内壁近傍領域と、回転容器221の中央の構造体222の下方領域とを避け、即ち異物が集まっていない部分の液体を試料水として採取できる。
【0042】
また、回転容器221の下部に注液口(排液口)221cが設けられているため、回転容器221に海水を注入する際、海水が落下等せず、回転容器221内の海水が撹拌されることを防止できる。従って、試料水と異物とが混合されることを防止できる。
【0043】
また、回転容器221の上部中央に洗浄液の注入口221aが設けられているため、洗浄液を上部から注入できる。さらに、構造体222の上部は円錐部222aを有するため、注入口から注入された洗浄液は構造体222の上部の円錐部222aに当たり、回転容器221の内壁に向かって飛散する。従って、回転容器221の内壁を飛散する洗浄液によって洗浄できる。
【0044】
また、遠心分離器220で分離しきれなかった異物をメンブレンフィルタ310によって除去できる。また、メンブレンフィルタ310を遠心分離器220の下流に設けており、メンブレンフィルタ310の目詰まりの原因となる異物を予め除去しているため、メンブレンフィルタ310の目詰まりを抑制できる。即ち、メンブレンフィルタ310のみを設置した場合と比べてメンブレンフィルタ310を交換するまでの期間を長くでき、連続的な運転時間を延長できる。
【0045】
また、フィルタ清掃制御部520による制御のため、メンブレンフィルタ310を通過したろ液によって、間欠的にメンブレンフィルタ310を洗浄でき、メンブレンフィルタ310の目詰まりを抑制できる。従って、何もしない場合と比べてメンブレンフィルタ310を交換するまでの期間を長くでき、連続的な運転時間を延長できる。
【0046】
また、回転容器221の下部に注液口(排液口)221cが設けられているため、回転容器221の下部から排水できる。排水によって、回転容器221の内壁を洗浄するとともに、残存ずる異物等を排除できる。
【符号の説明】
【0047】
1 液体分析システム
100 採液ポンプ
101 吸引口
200 一次フィルタ部
210 洗浄液タンク
220 遠心分離器
221 回転容器
221a 注入口
221b 洗浄液管
221c 注液口(排液口)
221d 支持管
222 構造体
222a 円錐部
222b 球面部
222c 採取口
222d 採取管
230 モータ
231 駆動機構
232 軸受機構
240 T字型継手
241,242 配管
243 電磁弁
250 ケーシング
300 二次フィルタ部
310 メンブレンフィルタ(フィルタ)
320 送液ポンプ
321,322 配管
330 ろ液タンク
400 分析装置本体
500 制御装置
510 電磁弁制御部
520 フィルタ清掃制御部
530 回転中送液制御部
図1
図2
図3
図4
図5