(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-128439(P2018-128439A)
(43)【公開日】2018年8月16日
(54)【発明の名称】エッチング液を使用せずに製造されたバイオセンサー試験紙及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/327 20060101AFI20180720BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20180720BHJP
【FI】
G01N27/327 353Z
H01L21/306 F
H01L21/306 N
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-78649(P2017-78649)
(22)【出願日】2017年4月12日
(31)【優先権主張番号】106104391
(32)【優先日】2017年2月10日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】515217317
【氏名又は名称】▲き▼芯科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】許 國誠
(72)【発明者】
【氏名】蘇 建豪
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA37
5F043BB27
5F043DD18
5F043GG02
(57)【要約】
【課題】エッチング液を使用せずに製造されたバイオセンサー試験紙及びその製造方法の提供。
【解決手段】本発明のエッチング液を使用せずに製造されたバイオセンサー試験紙及びその製造方法は、まず基板上にパターン化被剥離層を形成し、前記パターン化被剥離層がマスク区域と、配線パターンを備えた中空区域を含み、続いて前記パターン化被剥離層の前記マスク区域及び前記基板上に金属薄膜をスパッタリングし、さらに非エッチング液で前記パターン化被剥離層を洗浄し、前記マスク区域上の前記金属薄膜を除去して、前記金属薄膜で前記配線パターンに対応する検出配線を形成し、その後前記検出配線及び前記基板上にパッド層と反応酵素を形成する工程を含み、前記非エッチング液を利用して洗浄を行い、前記検出配線を形成することで、エッチングにより引き起こされる汚染を回避し、製造効率を高め、洗浄で除去された前記金属薄膜を再利用することもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法であって、
基板上にパターン化被剥離層を形成し、前記パターン化被剥離層がマスク区域と、前記マスク区域に相隣し、かつ前記基板が露出された中空区域を含み、前記中空区域が配線パターンを備えている工程S1と、
前記パターン化被剥離層の前記マスク区域および前記中空区域の下に位置する前記基板上に金属薄膜をスパッタリングする工程S2と、
前記パターン化被剥離層と混ざり合う非エッチング液を利用して、前記パターン化被剥離層を洗浄し、前記マスク区域上に位置する前記金属薄膜を除去し、かつ前記基板上に残る前記金属薄膜で前記中空区域の前記配線パターンに対応する検出配線を形成し、前記検出配線が作用端と、前記作用端から離れた測定端を備えている工程S3と、
前記検出配線及び前記基板上にパッド層を形成し、前記パッド層が前記作用端を露出する開口を含む工程S4と、
前記開口に反応酵素を形成する工程S5と、
を含むことを特徴とする、エッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法。
【請求項2】
前記工程S1において、前記基板の材質が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ガラスエポキシ材、ポリカーボネート、トリアセテート及びその組み合わせで構成される群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のエッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法。
【請求項3】
前記工程S1において、前記パターン化被剥離層の材質が、ポリ塩化ビニル系、ビニル樹脂(vinyl resin)、塩化ビニル(vinyl chloride)及びその組み合わせで構成される群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のエッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法。
【請求項4】
前記工程S3において、前記非エッチング液が水、アルカリ水及びその組み合わせで構成される群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のエッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法。
【請求項5】
前記工程S1において、さらに、
スクリーン上にストリッパブル塗料を塗布し、前記スクリーンを通過させて前記ストリッパブル塗料を前記基板10上に配置する工程S1Aと、
前記ストリッパブル塗料を硬化して前記基板上に前記パターン化被剥離層を形成し、前記パターン化被剥離層が、前記スクリーンに対応する前記マスク区域と、前記マスク区域に相隣し、かつ前記基板が露出された前記中空区域を含み、前記中空区域が前記配線パターンを備えている工程S1Bと、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のエッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法。
【請求項6】
前記工程S1Bにおいて、前記ストリッパブル塗料を硬化する方法が、赤外線硬化及び紫外線硬化で構成される群より選択されることを特徴とする、請求項5記載のエッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法。
【請求項7】
前記工程S3の後、さらに、エアーナイフを利用して前記基板と前記検出配線上に残留する前記非エッチング液を除去する工程S3Aを含むことを特徴とする、請求項1に記載のエッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法。
【請求項8】
前記工程S5の後、さらに、前記パッド層上に上カバーを形成し、かつ前記上カバーが前記開口に連通された空気孔を備えている工程S6を含むことを特徴とする、請求項1に記載のエッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法。
【請求項9】
前記工程S1において、前記パターン化被剥離層を形成する方法が、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷及び構造式インプリント法(structural imprinting)で構成される群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のエッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載のいずれかの方法で製造されたことを特徴とする、バイオセンサー試験紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオセンサー試験紙に関し、特に、エッチング液を使用せずに製造されたバイオセンサー試験紙及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の進歩に伴い、慢性疾病が徐々に伝染疾病に取って代わり、人類の死亡の主要な原因の1つとなっている。このため、自己健康管理の観念が日増しに普及しているが、病院に行って関連の検査を行うには相当の時間と労力を要するため、各家庭に血糖、コレステロール、尿酸等の生理的数値を測定するための測定装置が配備されることが多くなっており、これらの装置はセンサー試験紙に読取装置を組み合わせることで迅速かつ簡易な測定ができ、人々の健康管理をサポートしている。
【0003】
センサー試験紙上の最も重要な部材は測定を行うために用いる電極であり、電極の製造方法には、例えば特許文献1の「電気化学試験紙及びバイオセンサー、その製造方法及び測定装置」があるが、これはフォトリソグラフィ方式を利用して作用電極や基準電極等を製作している。エッチング法を利用する利点としては、効率が高く、エッチングされる金属を回収して再利用できる等があるが、同時にコストが高く、化学汚染とエッチング液残留等の問題もある。また別の製造方法としては、特許文献2の「パターニングされた積層体および電極のためのレーザで形成された特徴部分(Laser defined features for patterned laminates and electrodes)」があるが、これはレーザーアブレーション(laser ablation)方式を利用して金属薄膜上に電極を正確に形成するものであり、この方法はエッチング液の残留を回避できるものの、効率が低く、かつレーザーアブレーションを経た後の金属を回収して再利用することができない。
【0004】
このため、センサー試験紙の電極を製造するときに、どのように化学汚染とエッチング液残留の問題を回避し、同時に製造効率と金属の利用率を向上するかは、関連業者が解決を必要としている課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中華民国特許公告第I244550号明細書
【特許文献2】米国特許第US6662439号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、センサー試験紙の製造時に引き起こされる化学汚染、エッチング液残留の問題、および製造効率と金属再利用率が低い問題を解決する、エッチング液を使用せずに製造されたバイオセンサー試験紙及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達するため、本発明のエッチング液を使用しないバイオセンサー試験紙の製造方法は、
基板上にパターン化被剥離層を形成し、前記パターン化被剥離層がマスク区域と、前記マスク区域に相隣し、かつ前記基板が露出された中空区域を含み、前記中空区域が配線パターンを備えている工程S1と、
前記パターン化被剥離層の前記マスク区域および前記中空区域の下に位置する前記基板上に金属薄膜をスパッタリングする工程S2と、
前記パターン化被剥離層と混ざり合う非エッチング液を利用して、前記パターン化被剥離層を洗浄し、前記マスク区域上に位置する前記金属薄膜を除去し、かつ前記基板上に残る前記金属薄膜で前記中空区域の前記配線パターンに対応する検出配線を形成し、前記検出配線が作用端と、前記作用端から離れた測定端を備えている工程S3と、
前記検出配線及び前記基板上にパッド層を形成し、前記パッド層が前記作用端を露出する開口を含む工程S4と、
前記開口に反応酵素を形成する工程S5と、
を含む。
【0008】
上述の目的を達するため、本発明はさらに前述の方法を利用して製造したバイオセンサー試験紙を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上述をまとめると、本発明は前記非エッチング液で前記パターン化被剥離層を洗浄することで、エッチング液が引き起こす化学汚染とセンサー試験紙への残留の問題を回避でき、また液体洗浄の方式を利用することで製造効率が向上され、除去後の前記金属薄膜は前記非エッチング液中で回収して再利用できるため、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の好ましい実施例のフローチャートである。
【
図2】本発明の好ましい実施例の立体分解図である。
【
図3】本発明の好ましい実施例の立体斜視図である。
【
図4A】本発明の好ましい実施例の製造プロセスを示す断面図である。
【
図4B】本発明の好ましい実施例の製造プロセスを示す断面図である。
【
図4C】本発明の好ましい実施例の製造プロセスを示す断面図である。
【
図5】本発明の別の好ましい実施例の断面図である。
【
図6】本発明の好ましい実施例の検出配線の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の詳細説明と技術内容について、図面を組み合わせ、以下で説明する。
【0012】
図1から
図4Cに示すように、本発明はエッチング液を使用せずに製造されたバイオセンサー試験紙及びその製造方法を提供するものであり、
図4Aから
図4Cは
図3のA-A線での断面図である。本発明のバイオセンサー試験紙の製造方法は以下の工程を含む。
【0013】
工程S1:
図4Aに示すように、基板10上にパターン化被剥離層20を形成し、かつ前記パターン化被剥離層20はマスク区域21と、前記マスク区域21に相隣し、前記基板10を露出させた中空区域22を含み、前記中空区域22は配線パターンを備え、そのうち、前記基板10の材質は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、略称PET)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate、略称PEN)、ガラスエポキシ材(略称FR4)、ポリカーボネート(Polycarbonate、略称PC)、トリアセテート(TAC)及びその組み合わせ等とすることができ、前記パターン化被剥離層20の材質は、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchlorid,PVC)系、ビニル樹脂(vinyl resin)、塩化ビニル(vinyl chloride)及びその組み合わせ等とすることができ、前記パターン化被剥離層20を形成する方法は、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷及び構造式インプリント法等とすることができるが、これらに限らず、かつ前述の方法はロールツーロール(Roll to Roll)またはシート毎(Sheet by Sheet)のプロセスを利用して達成することができる。例えば、工程S1において、以下の工程を含むことができる。
【0014】
工程S1A:まずスクリーン(図示しない)上にストリッパブル塗料を塗布する。前記ストリッパブル塗料は前記スクリーンを通過して前記基板10上に配置される。
【0015】
工程S1B:前記ストリッパブル塗料を硬化して、前記基板10上に前記パターン化被剥離層20を形成する。この実施例において、前記パターン化被剥離層20の厚さは1マイクロメートル(μm)〜100マイクロメートル(μm)の間であり、かつ前記パターン化被剥離層20は前記スクリーンに対応する前記マスク区域21、及び前記マスク区域21に相隣し、前記基板10を露出させた前記中空区域22を含み、前記中空区域22は前記配線パターンを備えている。前記ストリッパブル塗料を硬化する方法は、赤外線硬化または紫外線硬化等の方法とすることができるが、これらに限らない。
【0016】
工程S2:
図4Bに示すように、前記パターン化被剥離層20の前記マスク区域21及び前記中空区域22に金属薄膜30をスパッタリングする。前記中空区域22では前記基板10が露出されているため、前記基板10上に直接スパッタリングされる。前記金属薄膜30の厚さは5ナノメートル(nm)〜900ナノメートル(nm)の間であり、そのうち、前記金属薄膜30の材質は、金、白金、パラジウム、イリジウム、チタン、銀、ニッケル、銅、クロム等とすることができる。また特に説明が必要なのは、
図4Bに示すように前記マスク区域21及び前記中空区域22の表面に金属薄膜30を形成するほか、本発明においては、
図5に示すように、スパッタリングで前記マスク区域21と前記中空区域22、及び連接する側面位置に前記金属薄膜30を形成し、層状構造としてもよい。
【0017】
工程S3:
図4Cに示すように、非エッチング液で前記パターン化被剥離層20を洗浄し、前記マスク区域21上に位置する前記金属薄膜30を併せて除去し、かつ前記基板10上に残る前記金属薄膜30で前記中空区域22の前記配線パターンに対応する検出配線31を形成し、前記検出配線31が作用端32と、前記作用端32から離れた測定端33を備えている。本実施例において、前記非エッチング液は水、アルカリ水またはその組み合わせ等とすることができるが、これらに限らない。これにより、エッチング液を使用することで引き起こされる化学汚染とセンサー試験紙への残留の問題を回避でき、また液体洗浄の方式を利用することで製造効率が向上され、除去後の前記金属薄膜30は前記非エッチング液中で回収して再利用できるため、コストを抑えることができる。
【0018】
工程S3A:エアーナイフを利用して、前記基板10と前記検出配線31上に残留する前記非エッチング液を除去し、後続のプロセスに有利なように、前記基板10と前記検出配線31を乾燥した状態に保つ。
【0019】
工程S4:
図2に示すように、前記検出配線31及び前記基板10上にパッド層40を形成し、前記パッド層40が前記作用端32を露出する開口41を含む。
【0020】
工程S5:前記開口41に反応酵素50を形成し、前記作用端32上に配置する。
【0021】
工程S6:前記パッド層40上に上カバー60を形成し、かつ前記上カバー60は前記開口41に連通された空気孔61を備え、前記空気孔61は被測定物の進入に有利なように、前記開口41の気体を排出するために用いられる。この工程でバイオセンサー試験紙を形成することができる。
【0022】
続いて
図6に示すように、製作時は、前記基板10上に複数の検出配線31をアレイ状に形成し、かつその上に前記パッド層40、前記反応酵素50及び前記上カバー60を形成して、最後に切断することにより、個別の独立したバイオセンサー試験紙を形成することができる。
【0023】
上述をまとめると、本発明には以下の利点がある。
一、非エッチング液で洗浄して前記パターン化被剥離層を除去することで、エッチング液が引き起こす化学汚染とセンサー試験紙への残留の問題を回避でき、また液体洗浄の方式を利用することで製造効率が向上され、除去後の前記金属薄膜は前記非エッチング液中で回収して再利用できるため、コストを抑えることができる。
二、前記空気孔の設置により、前記開口に位置する気体を排出し、被測定物の進入に有利にすることができる。
【符号の説明】
【0024】
10 基板
20 パターン化被剥離層
21 マスク区域
22 中空区域
30 金属薄膜
31 検出配線
32 作用端
33 測定端
40 パッド層
41 開口
50 反応酵素
60 上カバー
61 空気孔
S1〜S6、S1A、S1B、S3A 工程