【解決手段】第1フレームおよび第2フレームと、第1フレームおよび第2フレームを開閉可能に連結するヒンジ部と、を備え、ヒンジ部は、第1フレームに設けられた凸部である軸部と、第2フレームに設けられ、軸部を回動可能に支持する凹部または貫通孔である軸保持部と、軸保持部から該軸保持部の径方向外側に延び、第2フレーム外に貫通した溝部または切り欠き部である通路部と、を有し、軸部は、該軸部の周方向の一部に、該軸部の軸幅が小さく形成された部位である小幅部を有しており、通路部の通路幅は、小幅部の軸幅と略同一であることを特徴とするカードリーダにより解決する。
前記第1フレームおよび前記第2フレームには、前記ヒンジ部が所定の角度である全開角度となったときに互いに当接し、該ヒンジ部が該全開角度を超えて開くことを制限するストッパ部が設けられており、
前記軸部は、前記ヒンジ部が前記全開角度となったときに、前記通路部に対して前記小幅部の軸幅で臨む向きに配置され、
前記ストッパ部の当接後、前記ヒンジ部をさらに開く方向に加えられる外力を過剰外力としたときに、該過剰外力により前記軸部に生じる力の少なくとも一部は、該軸部を前記通路部に誘導する方向へ作用することを特徴とする請求項1に記載のカードリーダ。
前記通路部を前記軸部の軸線方向から見たときに、該通路部は、前記ストッパ部の当接位置を曲率中心とし、該当接位置から前記軸部中心までの距離を曲率半径とする円弧軌道とは異なる方向に延びていることを特徴とする請求項2に記載のカードリーダ。
前記軸保持部の内面のうち、前記過剰外力により前記軸部が押しつけられる部位を該軸保持部の被押圧部としたときに、前記通路部は該被押圧部から段差なく連続しており、
前記軸部は、前記被押圧部および該被押圧部から連続する前記通路部の面に、該軸部の曲面で接することを特徴とする請求項3に記載のカードリーダ。
前記軸部は、その外周面の周方向における一部が平面状に切り欠かれたDカット形状であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカードリーダ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カードリーダには、内部機構のメンテナンスやスタックしたカードの除去を可能とするため、筐体に開閉構造が設けられることがある。開閉構造を備えるカードリーダには、その構造上、筐体を開く限界角度が定められているものがある。このような筐体を取り扱う際に、作業者がその限界角度を把握していなかったり、手指や工具が不意にぶつかったりすることで、筐体がその限界角度を超えて開かれた場合、開閉部が破損するおそれがある。
【0005】
また、カードリーダの修理や部品交換、オーバーホールなど、比較的慎重さが求められる作業を行う際には、作業性を高めるため筐体が分解可能であることが望ましい。例えば上記特許文献1のカードリーダでは、ケースカバー7を取り外すときには、軸部17を長孔18aから抜き取る必要がある。しかし、これら長孔18aおよび軸部17は、外部からは視認不能であり、また、長孔18aの中程に設けられた軸部17の抜き取り位置に軸部17の位置を合わせる目安となるゲージやガイドも設けられていない。そのため、作業者は予め筐体の内部構造を把握しておき、触感的に軸体17の抜き取り位置を探す必要がある。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、筐体を容易に分解することができ、また、筐体を開く方向へ過剰な外力が加えられた場合でも筐体の破損を防止することができるカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のカードリーダは、一対のフレーム半体である第1フレームおよび第2フレームと、前記第1フレームおよび前記第2フレームを開閉可能に連結するヒンジ部と、を備え、前記ヒンジ部は、前記第1フレームに設けられた凸部である軸部と、前記第2フレームに設けられ、前記軸部を回動可能に支持する凹部または貫通孔である軸保持部と、前記軸保持部から該軸保持部の径方向外側に延び、前記第2フレーム外に貫通した溝部または切り欠き部である通路部と、を有し、前記軸部は、該軸部の周方向の一部に、該軸部の差し渡し外径である軸幅が小さく形成された小幅部を有しており、前記通路部の通路幅は、前記小幅部の軸幅と略同一であることを特徴とする。
【0008】
ヒンジ部を構成する軸部に小幅部が設けられ、通路部の通路幅がその小幅部の軸幅でのみ通過可能な幅に形成されていることにより、軸部がその小幅部で通路部に侵入する角度に第1フレームの開閉角度を合わせることで、第1フレームを容易に第2フレームから引き抜くことができる。ヒンジ部の構造が外部から視認可能なときは目視でその角度位置に調節すればよく、視認不能な場合でも、第2フレーム外に貫通した通路部の開口側に軸部を引きながら第1フレームを開いていくことで、容易にその角度位置を特定することができる。
【0009】
また、前記第1フレームおよび前記第2フレームには、前記ヒンジ部が所定の角度である全開角度となったときに互いに当接し、該ヒンジ部が該全開角度を超えて開くことを制限するストッパ部が設けられており、前記軸部は、前記ヒンジ部が前記全開角度となったときに、前記通路部に対して前記小幅部の軸幅で臨む向きに配置され、前記ストッパ部の当接後、前記ヒンジ部をさらに開く方向に加えられる外力を過剰外力としたときに、該過剰外力により前記軸部に生じる力の少なくとも一部は、該軸部を前記通路部に誘導する方向へ作用することが好ましい。
【0010】
ヒンジ部が全開角度を超えて展開されることを制限するストッパ部が設けられ、そして、ヒンジ部が全開角度になったときには軸部が通路部内に侵入可能な向きに配置され、さらに、ヒンジ部に加えられた過剰外力が軸部を通路部に誘導する方向に作用することにより、不意に過剰外力が加えられた場合でも、軸部が通路部を通り抜けることで第1フレームが第2フレームから外れ、ヒンジ部の破損が回避される。
【0011】
また、前記通路部を前記軸部の軸線方向から見たときに、該通路部は、前記ストッパ部の当接位置を曲率中心とし、該当接位置から前記軸部中心までの距離を曲率半径とする円弧軌道とは異なる方向に延びていることが好ましい。
【0012】
ヒンジ部に過剰外力が加えられたときの軸部の円弧軌道とは異なる方向に通路部が延びていることにより、所定の大きさの過剰外力が加えられるまでは、軸部を軸保持部内に留めておくことが可能となる。これにより、例えば、第2フレームの上に第1フレームが配置されている構成で、第1フレームが開かれたときに、第1フレームの自重だけで軸部が抜けてしまうような問題が回避される。
【0013】
また、前記軸保持部の内面のうち、前記過剰外力により前記軸部が押しつけられる部位を該軸保持部の被押圧部としたときに、前記通路部は該被押圧部から段差なく連続しており、前記軸部は、前記被押圧部および該被押圧部から連続する前記通路部の面に、該軸部の曲面で接することが好ましい。
【0014】
被押圧部と通路部との間に段差が設けられておらず、また、軸部がその曲面でこれら被押圧部および通路部と接することにより、過剰外力が加わったときにこれら被押圧部や通路部と軸部とが形状的に係合することを防ぐことができる。これにより、所定の過剰外力が加わったときには軸体が速やかに通路部を滑動することができ、ヒンジ部の破損が回避される。
【0015】
また、前記軸部は、その外周面の周方向における一部が平面状に切り欠かれたDカット形状であることが好ましい。
【0016】
軸部がDカット形状であることにより、軸保持部内に軸部を正確に位置決めするための軸保持部の内面との接触面積の確保と、Dカット面による小幅部の確保との両立を図ることができる。
【0017】
また、前記第2フレームにおける前記通路部の縁部は樹脂製であることが好ましい。
【0018】
第2フレーム全体または少なくとも通路部の縁部を樹脂製とすることにより、ヒンジ部に加えられた過剰外力で通路部が内側から軸部に押圧されたときに、通路部が弾性変形してその通路幅が拡げられることとなる。この弾性変形を利用することにより、通路部の通路幅を比較的狭く設計することが可能となる。これにより、ヒンジ部の破損防止効果を維持しつつ、通常開閉時に軸部が不意に通路部に侵入してしまうことを防ぐことができる。
【0019】
また、前記第1フレームおよび前記第2フレームは、挿入されたカードの搬送路を境に該カードの厚さ方向に分割されており、前記ヒンジ部は、前記第1フレームおよび前記第2フレームの外面のうち、前記カードの進退方向における一方の端面の近傍部に配置されており、前記通路部は前記軸保持部から前記第2フレームの前記一方の端面側に貫通した切り欠き部であり、前記ストッパ部は、前記第1フレームおよび前記第2フレームの前記一方の端面同士の接触部であることが好ましい。
【0020】
第1フレームと第2フレームがカードの搬送路を境にカードの厚さ方向に分割されていることにより、カードリーダの内部機構のメンテナンスやスタックしたカードの取り出しが容易となる。また、ヒンジ部が上記一方の端面の近傍部に設けられ、その一方の端面がストッパ部を兼ねていることにより、既存のカードリーダの基本構成やサイズを維持したまま本発明のヒンジ部を備えることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明のカードリーダによれば、筐体を容易に分解することができ、また、筐体を開く方向へ過剰な外力が加えられた場合でも筐体の破損を防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[構成概要]
以下、本発明のカードリーダの実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態のカードリーダは、カードに記録されたデータの読み取りやカードへのデータの記録を行う装置であり、例えばATM(Automatic Teller Machine)やキャッシュディスペンサ、キオスク端末、流通POS(Point of sale system)端末、入退出管理端末、各種IDカード端末など、カードの記録情報を処理する上位の装置に組み込まれて使用される。
【0024】
図1は、本実施形態にかかるカードリーダ100の外観を示す側面図である。カードリーダ100の筐体は、開閉可能な一対のフレーム半体である第1フレーム110および第2フレーム120により構成されている(以下、これら第1フレーム110および第2フレーム120を総称して「フレーム110,120」ともいう。)。
図1(a)は、カードリーダ100のフレーム110,120が閉じられた状態を示す模式図であり、
図1(b)はフレーム110,120が展開された状態を示す模式図である。なお、以下の説明において「上」および「下」とは、
図1に描かれた座標軸表示のZ軸における上下方向を意味している。カードリーダ100やフレーム110,120について「前」とは、
図1(a)の座標軸表示のX
1側、「後ろ」とはX
2側をそれぞれ意味している。また、カードリーダ100やフレーム110,120について、「幅」とは、
図1の座標軸表示のY軸方向におけるこれらカードリーダ100やフレーム110,120の外寸を意味している。
【0025】
本実施形態の第1フレーム110および第2フレーム120は上下に組み合わされており、第1フレーム110は上側、第2フレーム120は下側に配置されている。第1フレーム110および第2フレーム120はいずれも樹脂製の部材である。第1フレーム110および第2フレーム120には、これらを回動可能に連結するヒンジ部200が設けられている。ヒンジ部200は、フレーム110,120の後端面である背面113,123近傍に設けられている。なお、本実施形態におけるフレーム110,120の開閉操作は、第2フレーム120の位置を固定したまま、第1フレーム110を回動させることで行うこととする。
【0026】
[内部機構]
図2は、カードリーダ100の内部機構の概要を示す側面視断面図である。
図2に示されるように、本実施形態の第1フレーム110および第2フレーム120は、カード190の搬送路140を境に、カード190の厚さ方向(上下方向)に分割されている。これによりカードリーダ100は、内部機構のメンテナンスや、搬送路140内でスタックしたカード190の取り出しを容易に行うことが可能とされている。
【0027】
搬送路140はカードリーダ100の前後方向に延びており、カード190は搬送路140に沿ってカードリーダ100の前後方向に進退する。
【0028】
第1フレーム110の前面112にはカード190の挿入口130が設けられており、挿入口130はカード190の搬送路140に連通されている。搬送路140にはカード190の搬送機構である搬送ローラ151およびパッドローラ152が上下に対向配置されている。搬送ローラ151およびパッドローラ152は、挿入口130に差し込まれたカード190を搬送路140内に引き込み、また、処理後のカード190を搬送路140から排出する。
【0029】
搬送ローラ151はゴムローラであり、その外周面を構成するゴム輪と、ゴム輪が装着された芯部とにより構成されている。搬送ローラ151は第1フレーム110側に配置されており、その回転中心の位置は固定されている。パッドローラ152はポリアセタールやクロロプレンゴムなどの樹脂からなる回転体である。パッドローラ152は第2フレーム120側に配置されており、搬送ローラ151側(上方)に付勢されている。また、カードリーダ100は図示しないモータおよび減速歯車列を有しており、モータの駆動力は減速歯車列を介して搬送ローラ151に伝達される。すなわち、搬送ローラ151はモータの駆動力で回転する駆動ローラであり、パッドローラ152は搬送ローラ151の回転やカード190の移動に追従して回転する従動ローラである。
【0030】
本実施形態のカード190は塩化ビニール製であり、0.68〜0.84mm厚の長方形のカードである。カード190にはICチップが内蔵されており、カード190の上面にはICチップの端子191が露出している。また、カード190の下面には磁気データが記録される磁気ストライプ192が貼着されている。
【0031】
カードリーダ100の搬送路140には、カード190に記録されたデータの読み取りやカード190へのデータの記録を行う磁気ヘッド160およびIC接点ブロック170が設けられている。磁気ヘッド160は第2フレーム120側に配置されており、カード190の磁気ストライプ192に対して下方から接触する。IC接点ブロック170は第1フレーム110側に配置されており、カード190のICチップ端子191に対してIC接点ブロック170の接点バネ171が上方から接触する。
【0032】
搬送ローラ151およびパッドローラ152は、搬送路140における挿入口130の付近と搬送路140の後端付近に二組配置されている。搬送ローラ151およびパッドローラ152の各組の距離は、カード190の進退方向の寸法よりも短く、かつ、カード190の磁気ストライプ192の読み取り保証範囲よりも長い。なお、本実施形態のカードリーダ100は、カード190をフレーム110,120の後方へも排出することができる。搬送路140の後端付近に配置された搬送ローラ151およびパッドローラ152は、主にカード190をフレーム110,120の後方へ排出するときに使用される。
【0033】
以上、カードリーダ100の内部機構について説明したが、これらの機構は後述するヒンジ部200の機能を阻害しない限りにおいて、他の公知の機構や構造に適宜置き換えて使用することができる。例えば、IC接点ブロック170または磁気ヘッド160のいずれか一方を省略したり、搬送路140にカード190の現在位置を検出するためのフォトセンサを設けたり、搬送ローラ151およびパッドローラ152を省略、またはその位置や数を変更したりすることが考えられる。
【0034】
[ヒンジ機構]
(ヒンジ部の構成)
以下に、カードリーダ100のヒンジ部200の構成について説明する。
図3は、ヒンジ部200の部分拡大図である。
図3(a)は
図1(a)のヒンジ部200の拡大図であり、
図3(b)は
図1(b)のヒンジ部200の拡大図である。
【0035】
ヒンジ部200は、上でも述べたように、フレーム110,120の外面のうち、カード190の進退方向(カードリーダ100の前後方向)における一方の端面である背面113,123の近傍部に配置されている。
【0036】
ヒンジ部200は、軸部210、軸保持部220、および通路部230により構成されている。軸部210は、第1フレーム110の幅方向における両側面111に設けられており、これら側面111の後端かつ下端の隅の近傍部から、第1フレーム110の幅方向外側に突出した凸部である。軸保持部220は軸部210を回動可能に支持する貫通孔である。軸保持部220は、第2フレーム120の幅方向における両側面121に設けられ、これら側面121の後端付近の、他の部位よりも上方に延出した部分に配置されている。通路部230は、軸保持部220から軸保持部220の径方向外側に延び、第2フレーム120の背面123側に貫通した切り欠き部である。本実施形態の通路部230は、軸保持部220から第2フレーム120の背面123に向かって水平に延びている。
【0037】
軸部210は、その外周面の周方向における一部が平面状に切り欠かれたDカット面211を有している。軸部210の外周面のうちDカット面211が設けられた角度範囲は、軸部210の差し渡し寸法である軸幅が他の角度範囲の軸幅d
1よりも小さい。以下、本実施形態では、Dカット面211の角度範囲のうち、軸部210の軸幅が最も小さくなる角度位置を軸部210の小幅部212といい、小径部212の軸幅を軸幅d
2という。
【0038】
軸保持部220は真円の貫通孔であり、クリアランスを無視するとその直径は軸部210の軸幅d
1と同一である。通路部230は軸保持部220から連続して形成されており、クリアランスを無視した場合、通路部230の通路幅は軸部210の軸幅d
2と同一である。
【0039】
(着脱構造)
このように本実施形態のカードリーダ100は、ヒンジ部200を構成する軸部210に小幅部212が設けられ、通路部230の通路幅がその小幅部212の軸幅d
2でのみ通過可能な幅に形成されている。そのため、軸部210がその小幅部212で通路部230に臨む角度に第1フレーム110の開閉角度を調節することで、第1フレーム110を第2フレーム120から引き抜くことができる。
【0040】
また、フレーム110,120には、ヒンジ部200が所定の角度である全開角度θとなったときに互いに当接し、ヒンジ部200が全開角度θを超えて展開されることを制限するストッパ部100sが設けられている(
図3(b)参照)。本実施形態のストッパ部100sは、ヒンジ部200が全開角度θとなったときの、フレーム110,120の背面113,123の接触点である。なお、本実施形態における全開角度θは120°に設定されている。
【0041】
そして、
図3(b)に示されるように、軸部210は、ヒンジ部200が全開角度θとなったときに、通路部230に対して小幅部212の軸幅d
2で臨む向きに配置される。すなわち、本実施形態のカードリーダ100では、ストッパ部100sの当接位置まで第1フレーム110を展開し、そのまま第1フレーム110を後方へ引き抜くことにより、容易にフレーム110,120を分解することが可能とされている。
【0042】
そして、カードリーダ100のように、僅かな位置のズレが処理機能に致命的な影響を及ぼすおそれのある製品では、一般に、その内部機構を構成する部品同士や、これら各部品とカードなどの処理対象との位置精度に高い要求が課される。本実施形態のカードリーダ100では、フレーム110,120を閉じたときには、軸部210がその全周における広範な角度範囲で軸保持部220の内面に接している(
図3(a)参照)。そのため、軸部210は、軸保持部220内において上下方向および前後方向への移動が阻止されており、軸保持部220内における軸部210の位置が固定される。これにより、第1フレーム110および第2フレーム120の高い位置精度が確保されている。
【0043】
図4は、フレーム110,120の分解時におけるヒンジ部200の動作を説明する模式図である。
図4(a)は、フレーム110,120の閉時における軸部210の配置角度を示す図である。
図4(b)は、第1フレーム110が120°展開され、ヒンジ部200が全開角度θになった状態を示す図である。
【0044】
本実施形態のカードリーダ100にはストッパ部100sが設けられている。そして、ストッパ部100sが当接する位置まで第1フレーム110を展開することで、軸部210は結果的に
図4(b)の配置角度となる。なお、例えばカードリーダ100にストッパ部100sが設けられていない場合でも、本実施形態の軸部210や通路部230は外部から視認可能であるため、目視で
図4(b)の配置角度に合わせることができる。また、これらが視認不能な場合でも、少なくとも第2フレーム120の背面123に形成された通路部230の開口は視認可能なはずであるから、軸部210をその開口側に引きながら第1フレーム110を展開していくことで、
図4(b)の配置角度を容易に特定することができる。
【0045】
軸部210が
図4(b)の配置角度となったときには、軸部210は、通路部230に対して小幅部212の軸幅d
2で臨む向きに配置される。そのため、作業者は、軸部120をそのままカードリーダ100の後方へ引き抜くことで、第1フレーム110を第2フレーム120から取り外すことができる(
図4(c)参照)。
【0046】
(破損防止構造)
図5は、ヒンジ部200の破損防止構造を説明する図である。以下の説明では、ストッパ部100sが当接した後、つまりヒンジ部200が全開角度θとなった後に、ヒンジ部200をさらに展開する方向に加えられる外力のことを過剰外力XFという。
図5(a)は
図1(b)のヒンジ部200の部分拡大図である。
図5(b)は、過剰外力XFにより軸部210に生じる力を示す模式図である。
【0047】
図5(a)に示されるように、過剰外力XFは、ストッパ部100aの当接位置を曲率中心cとし、その曲率中心cから軸部210中心までの距離を曲率半径rとする円弧軌道αβに沿って、軸部210を同円弧軌道αβのβ側に導くように作用する。
【0048】
より具体的には、
図5(b)に示されるように、過剰外力XFにより軸部210に生じる力Fは、円弧軌道αβ上において軸部210中心を接点pとする接線方向に作用する。力Fは、上方へ向かう成分である力f
1のほか、軸部210を通路部230側に誘導する方向へ作用する成分である力f
2を含んでいる。そして、ストッパ部100sが当接したときには、軸部210は、その小幅部212で通路部230に臨む向き、つまり通路部230内に侵入可能な向きに配置される。そのため、第1フレーム110に所定の大きさの過剰外力XFが加えられたときには、軸部210が通路部230を通り抜け、第1フレーム110が第2フレーム120から外れる。これにより、過剰外力XFが加えられた場合でも、ヒンジ部200の破損が回避される。
【0049】
また、本実施形態の通路部230は、円弧軌道αβとは異なる方向に延びている。より具体的には、
図5(a)に示されるように、通路部230は、円弧軌道αβに沿って延びる仮想の通路部である通路部230vとはその形成位置が異なっている。詳しくは後述するが、これにより本実施形態の軸部210は、第1フレーム110の自重程度の過剰外力XFでは通路部230内に侵入することがなく、例えば作業者がヒンジ部200の全開角度θを把握していなかったり、手指や工具が不意にぶつかったりすることで、第1フレーム110により大きな過剰外力XFが加えられるまで、軸部210は軸保持部220内に留められることとなる。すなわち、軸部210が意図せず抜け落ちてしまうことが防止されている。
【0050】
例えば、通路部230が円弧軌道αβと重なる方向に延びていた場合、つまり通路部230vであった場合、通路部230vには力Fに抵抗する要素がないため、軸部210は僅かな過剰外力XFでも抜け落ちてしまう。一方、本実施形態の通路部230は、軸保持部220から第2フレーム120の背面123に向かって水平に延びており、通路部230vよりも低い位置にある。そのため、軸部210は力f
1により通路部230の上面231に押しつけられ、通路部230の上面231と軸部210との間には、軸部210の移動を阻害する摩擦抵抗が生じる。
【0051】
図6は、ヒンジ部200の破損防止動作を説明する模式図である。
図6(a)は、フレーム110,120の閉時における軸部210の配置角度を示す図である。
図6(b)は、第1フレーム110が120°展開され、ストッパ部100sが当接した状態を示す図である。
図6(c)は第1フレーム110に過剰外力XFが加えられたときの様子を示す図である。
【0052】
上でも述べたように、第1フレーム110に過剰外力XFが加えられたときには、力f
1により通路部230と軸部210との間に摩擦抵抗が生じる。
図6(b)および
図6(c)に示されるように、軸部210が通路部230に侵入するときには、軸部210はそのDカット面211を下に向けて配置されている。ここで、過剰外力XFにより軸部210が通路部230を通過するときには、ヒンジ部200はさらに展開されることになるため、軸部210は、
図6(c)視時計回りに多少回転しながら通路部230を移動することとなる。そのため、軸部210のDカット面211の角部eが通路部230の下面232を押圧し、軸部210の上端部tをさらに通路部230の上面231に押しつける。これにより上記摩擦抵抗が増大する。
【0053】
一方、通路部230内への侵入時における軸部210は、そのDカット面211を下に向けているため、通路部230の上面231には曲面である軸部210の上端部tで接触している。さらに、通路部230は、軸保持部220の内面のうち、力f
1により軸部210が押しつけられる被押圧部である軸保持部220の上端u(
図5(b)参照)から段差なく連続して水平に延びている。つまり、軸保持部220の上端uおよび通路部230の上面231と、軸部210の上端部tとの間には、形状的に係合する要素がない。そのため、過剰外力XFによる力f
2(
図5(b)参照)が上記摩擦抵抗を超えたときには、軸部210の上端部tは通路部230の上面231を滑動し、軸部210は速やかに通路部230から引き抜かれる。これにより、軸部210の意図しない脱落の防止と過剰外力XFによるヒンジ部200の破損防止との両立が図られている。
【0054】
図7は過剰外力XFにより軸部210が通路部230を通過する様子を示す模式図である。本実施形態の第2フレーム120は樹脂製の部材であり、当然、通路部230の縁部も樹脂材料により形成されている。そのため、
図6(c)の状態からさらに過剰外力XFが加えられると、
図7に示すように通路部230の上面231が上方に僅かに弾性変形し、通路部230の通路幅が拡げられる。通路部230の通路幅が拡げられることにより軸部210は通路部230をよりスムーズに通り抜けることができる。
【0055】
このように、本実施形態では、通路部230の縁部を含む第2フレーム120全体が樹脂材料からなることにより、ヒンジ部200に加えられた過剰外力XFで通路部230が弾性変形し、その通路幅が拡げられることとなる。この弾性変形を利用することで、通常時における通路部230の通路幅を比較的狭く設計することが可能とされている。このことによっても、軸部210が意図せず脱落することが抑制されている。特に本実施形態の通路部230は、貫通孔である軸保持部220から連続して形成されてた切り欠き部であるため、容易に弾性変形させることができるという特徴がある。ただし、通路部230の弾性変形はあくまで付加的な機能であり、通路部230が変形不能な材料からなる場合や剛性の高い形状からなる場合でも、より大きな過剰外力XFが加えられることで軸部210は通路部230を通過する。
【0056】
また、その他の構成についても、軸保持部220および通路部230の態様は本実施形態のものには限られず、例えば軸保持部220を第2フレーム120の内面に設けられた凹部とし、通路部230をその凹部から連続した溝部とすることもできる。このとき、軸部210を軸保持部220内に保持可能とする過剰外力XFの程度や、第1フレーム110を第2フレーム120から外す過剰外力XFの閾値については、通路部230の形成方向やクリアランス量、軸部210とストッパ部100sとの相対位置、ヒンジ部200の各構成に用いる材料などを変更することにより調節することができる。
【0057】
[ヒンジ機構の変形例]
以下、ヒンジ部200の変形例について説明する。
図8および
図9は、ヒンジ部200の変形例であるヒンジ部200bおよびヒンジ部200cの構成および動作を示す模式図である。これら変形例にかかるヒンジ部200b,200cを含むカードリーダ100の基本的な構成は先の実施形態と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0058】
図8のヒンジ部200bは、軸部210b、軸保持部220b、および通路部230bにより構成されている。軸部210bは、第1フレーム110の幅方向外側に突出した凸部である。軸保持部220bは軸部210bを回動可能に支持する貫通孔である。通路部230bは、軸保持部220bから軸保持部220bの径方向外側に延び、第2フレーム120の背面123側に貫通した切り欠き部である。
【0059】
図8(a)は、フレーム110,120の閉時における軸部210bの配置角度を示す図である。
図8(b)は、ヒンジ部200bが全開角度θとなり、ストッパ部100sが当接したときの軸部210bの配置角度を示す図である。
図8(c)は、ヒンジ部200bが全開角度θになったときに、作業者により意図的に、または過剰外力XFが加えられたことで軸部210bが引き抜かれる様子を示す図である。
【0060】
本変形例にかかるヒンジ部200bとヒンジ部200との主な違いは、軸部210bのDカット面が軸部210bの周方向における対称位置に2つ形成されている点(Dカット面211a,211b)、および、通路部230bが軸保持部220bの上端から連続しておらず、軸保持部220bの上下方向における中心位置から水平に延出している点である。軸部210bのDカット面211a,211bは、ストッパ部100sの当接時において、Dカット面211aが真下、Dカット面211bが真上を向くように配置されている。
【0061】
ヒンジ部200bの構成においても、フレーム110,120を閉じたときには、軸部210bは、軸保持部220b内において上下方向および前後方向への移動が阻止され、軸保持部220b内における位置が固定される。また、ヒンジ部200の構成と比べて、作業者が意図的に軸部210bを引き抜くときに支障となる要素も特にない。過剰外力XFにより軸部210bが引き抜かれるときには、通路部230bの入口側における上面231bの角部hにDカット面211bが係合し、より大きな過剰外力XFが必要となることが想定され、また、角部hが折損する懸念もあるが、全体としてはヒンジ部200と同様のメンテナンス性向上効果、破損防止効果を得ることが可能である。
【0062】
図9のヒンジ部200cは、軸部210c、軸保持部220c、および通路部230cにより構成されている。軸部210cは、第1フレーム110の幅方向外側に突出した凸部である。軸保持部220cは軸部210cを回動可能に支持する貫通孔である。通路部230cは、軸保持部220cから軸保持部220cの径方向外側に延び、第2フレーム120の背面123側に貫通した切り欠き部である。
【0063】
図9(a)は、フレーム110,120の閉時における軸部210cの配置角度を示す図である。
図9(b)は、ヒンジ部200cが全開角度θとなり、ストッパ部100sが当接したときの軸部210cの配置角度を示す図である。
図9(c)は、ヒンジ部200cが全開角度θになったときに、作業者により意図的に、または過剰外力XFが加えられたことで軸部210cが引き抜かれる様子を示す模式図である。
【0064】
本変形例のヒンジ部200cとヒンジ部200との主な違いは、通路部230cが軸保持部220cの上端から連続しておらず、軸保持部220cの下端から水平に延出している点である。軸部210cは、ストッパ部100sの当接時において、Dカット面211cが真上を向くように配置されている。
【0065】
ヒンジ部200cの構成においても、フレーム110,120を閉じたときには、軸部210cは、軸保持部220c内において上下方向および前後方向への移動が阻止され、軸保持部220c内における位置が固定される。また、ヒンジ部200の構成と比べて、作業者が意図的に軸部210cを引き抜くときに支障となる要素も特にない。過剰外力XFにより軸部210cが引き抜かれるときには、通路部230cの入口側における上面231cの角部hにDカット面211cが係合し、より大きな過剰外力XFが必要となることが想定され、また、角部hが折損する懸念もあるが、全体としてはヒンジ部200と同様のメンテナンス性向上効果、破損防止効果を得ることが可能である。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。