【解決手段】両端に第一の線路と第二の線路とを有する一次巻線111と、両端に第一の線路と第二の線路とを有する二次巻線112と、を備えた配電用の変圧器11と、一次巻線111の第一の線路と、二次巻線112の第一の線路との間に接続された電力線通信の信号を通過させるための通信用コンデンサ12aとを備えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、電力線通信に適切に対応可能な配電用変圧装置を提供することができない、という課題があった。
【0005】
例えば、従来においては、変圧器の鉄心の渦電流損等の影響により、一次側(高圧側)と二次側(低圧側)との間を高周波の信号を通過させることができなかった。このため、電力線通信(PLC)に用いられる高周波の信号は、変圧器を通過できず、変圧器の一次側と二次側との間で電力線通信を行なうことができなかった。これにより、電力線通信に適切に対応できなかった。
【0006】
また、従来においては、例えば、変圧器の二次巻線の一端に設けられた線路と中性線との間に接続された電力線通信端末と、二次巻線の他端に設けられた線路と中性線との間に接続された電力線通信端末との通信は、変圧器の二次巻線によって信号が大きく減衰してしまう。このため、電力線通信のネットワーク内に変圧器が存在すると、例えば、通信できる範囲が狭くなったり、通信速度が遅くなってしまう場合があった。これにより、電力線通信に適切に対応できなかった。
【0007】
また、従来においては、複数の変圧器の一次側が同じ電線等により接続されていたとしても、異なる変圧器の二次側の線路間で電力線通信を行なおうとした場合、一旦、変圧器を介して電力線通信を行なう必要があるが、上記のように、変圧器をこえて電力線通信の信号を行なうことができないため、複数の変圧器の二次側の線路間で電力線通信を行なうことができなかった。
【0008】
また、上記の従来の技術のように、分割型のコアを高周波信号を通過させたい配電線等に設けて、コア同士を接続することで、高周波信号を通過させることも考えられるが、配電用変圧器の一次側は、通常、例えば6kV程度の高電圧であり、また、二次側の線路を流れる電流が数百Aの大電流であることから、二次側の線路として使用される線路は非常に太いものとなり、このような状況に耐えうるコア(例えば、フェライトコア)は非常に大型で高価なものとなってしまう。このため、変圧器を有する変圧装置のサイズが大型化するとともに、コストが高くなってしまうという問題が生じる。また、通常、数十年使用する変圧器に対して、このようなコアを有する構造を適用した場合に、長期の期間にわたって性能を維持できるか否かについての実績がない。このため、変圧器が有する線路により電力線通信を可能とするために、上記のように分割型コアを有する構成を用いることは、適切であるとは言えなかった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解消するためになされたものであり、電力線通信に適切に対応可能な配電用変圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の配電用変圧装置は、両端に第一の線路と第二の線路とを有する一次巻線と、両端に第一の線路と第二の線路とを有する二次巻線と、を備えた配電用の変圧器と、一次巻線の第一の線路と、二次巻線の第一の線路との間に接続された電力線通信の信号を通過させるための通信用コンデンサとを備えた配電用変圧装置である。
【0011】
かかる構成により、通信用コンデンサにより、一次巻線と二次巻線とに流れる電力を通過させることなく、電力線通信の信号を、一次巻線の第一の線路と、二次巻線の第一の線路との間で通過させることができ、配電用の変圧器の一次巻線側と二次巻線側との間で、電力線通信が可能となり、電力線通信に適切に対応することができる。
【0012】
また、本発明の配電用変圧装置は、前記配電用変圧装置において、一次巻線の第二の線路と、二次巻線の第二の線路との間に接続された通信用コンデンサを更に備えた配電用変圧装置である。
【0013】
かかる構成により、一次巻線の第二の線路と、二次巻線の第二の線路との間で更に電力線通信の信号を通過させることが可能となり、効率的に電力線通信を行なうことが可能となる。
【0014】
また、本発明の配電用変圧装置は、一次巻線と、両端に二つの線路である第一の線路と第二の線路とを有する二次巻線と、を備えた1以上の配電用の変圧器と、変圧器の二次巻線が有する第一の線路と、第二の線路との間に接続された電力線通信の信号を通過させるための通信用コンデンサとを備えた配電用変圧装置である。
【0015】
かかる構成により、二次巻線の線路間で電力線通信を行なうことができ、電力線通信に適切に対応することができる。
【0016】
また、本発明の配電用変圧装置は、一次巻線と、両端に二つの線路である第一の線路と第二の線路とを有する二次巻線と、を備えた複数の配電用の変圧器と、複数の変圧器の二次巻線が有する線路のうちの少なくとも一方の線路を異なる変圧器間で接続する通信用コンデンサを備えた配電用変圧装置である。
【0017】
かかる構成により、複数の配電用の変圧器の二次巻線が有する線路間で電力線通信を行なうことができ、電力線通信に適切に対応することができる。
【0018】
また、本発明の配電用変圧装置は、前記配電用変圧装置において、複数の変圧器の二次巻線が有する第一の線路と第二の線路との間をそれぞれ接続する通信用コンデンサを更に備えた配電用変圧装置である。
かかる構成により、各変圧器の二次巻線の線路間を電力線通信できるようにして、接続を単純化することができる。
【0019】
また、本発明の配電用変圧装置は、前記配電用変圧装置において、複数の変圧器は、n個(nは3以上の整数)の変圧器であり、通信用コンデンサは、通信用コンデンサを介して複数の変圧器の二次巻線が有する線路の全てが電力線通信可能となるよう設けられており、通信用コンデンサにより異なる変圧器間で接続される各線路は、線路を有する変圧器以外の(n−2)個以下の変圧器の二次巻線が有する線路のうちの一方の線路と通信用コンデンサを介して接続される配電用変圧装置である。
【0020】
かかる構成により、複数の変圧器の二次巻線が有する線路の全てが電力線通信可能とする場合において、通信用コンデンサで接続される箇所を減少させることができる。
【0021】
また、本発明の配電用変圧装置は、前記配電用変圧装置において、変圧器は、絶縁油内に設置される油入変圧器であり、通信用コンデンサは、変圧器とともに絶縁油内に設置される配電用変圧装置である。
【0022】
かかる構成により、気中に通信用コンデンサを配置する場合に比べて、通信用コンデンサの絶縁耐力を向上させることができるとともに、装置全体を小型化することができる。
【0023】
また、本発明の配電用変圧装置は、前記配電用変圧装置において、変圧器は、樹脂モールドで固められたモールド型変圧器であり、通信用コンデンサは、変圧器とともに樹脂モールドで固められている配電用変圧装置である。
【0024】
かかる構成により、気中に通信用コンデンサを配置する場合に比べて、通信用コンデンサの絶縁耐力を向上させることができる
【発明の効果】
【0025】
本発明による配電用変圧装置によれば、電力線通信に適切に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、配電用変圧装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における配電用変圧装置1のブロック図である。
配電用変圧装置1は、変圧器11と、第一通信用コンデンサ12aとを備えている。配電用変圧装置1は、配電用の変圧を行なう装置である。
【0029】
変圧器11は、一次巻線111、二次巻線112、鉄心113を備えている。なお、鉄心113は適宜省略しても良い。変圧器11は、配電用の変圧器である。配電用の変圧器とは、例えば、発電設備や変電設備から送電される高圧の電圧を、需要家が利用可能な低電圧に変圧して配電するための変圧器である。配電用の変圧器としては、例えば、変電設備等から送電される6kV程度の高圧の電流を、例えば200Vや100Vの電圧に変圧して一般家庭に配電するための柱上変圧器等がある。本実施の形態においては、変圧器11が、単相三線式の変圧器である場合を例に挙げて説明する。
【0030】
一次巻線111は、両端に第一の線路P1および第二の線路P2を備える。第一の線路P1および第二の線路P2は、例えば、一次巻線111を構成する導線の延長であっても良く、一次巻線111の両端の端子等に接続された線路であっても良い。なお、一次巻線111が有する第一の線路P1および第二の線路P2を、一次巻線111の線路、または一次側の線路と呼ぶ場合がある。一次巻線111は、通常、高圧側の巻線として用いられる。一次巻線111の第一の線路P1および第二の線路P2は、例えば、高圧線(一般的に6kV)に接続される。
【0031】
なお、一次巻線111の両端の線路のうちのいずれの線路を第一の線路P1とし、いずれの線路を第二の線路P2とするかは問わない。例えば、上記で示した第二の線路P2を、第一の線路P1として用いるようにし、上記で示した第一の線路P1を、第二の線路P2として用いるようにしても良い。
【0032】
二次巻線112は、両端に第一の線路L1および第二の線路L2を備える。線路L1およびL2は、二次巻線112を構成する導線の延長であっても良く、二次巻線112の両端の端子等に接続された線路であっても良い。なお、二次巻線112が有する第一の線路L1および第二の線路L2を、二次巻線112の線路、または二次側の線路と呼ぶ場合がある。二次巻線は、通常、低圧側の巻線として用いられる。二次巻線112の第一の線路L1および第二のL2は、例えば、低圧線(一般的に100または200V)に接続される。第一の線路L1および第二の線路L2は電力線と考えてもよい。なお、ここでは図示は省略しているが、変圧器11が単相三線式であるため、二次巻線112の中央には、中性線が接続されている。中性線は、例えば、接地線として用いられる。ここでの第一の線路L1を流れる電流は、第一の線路L1と中性線との間で流れる電流と考えてもよい。また、第二の線路L2を流れる電流は、第二の線路L2と中性線との間で流れる電流と考えてもよい。第一の線路L1と接地された中性線との間の電圧と、第二の線路L2と接地された中性線との間の電圧とは、通常、逆位相の電圧となる。このため、第一の線路L1および第二の線路L2を位相の異なる線路と考えてもよい。第一の線路L1と中性線との間の電圧と、第二の線路L2と中性線との間の電圧とは、通常、等しい電圧である。
【0033】
なお、二次巻線112の両端の線路のうちのいずれの線路を第一の線路L1とし、いずれの線路を第二の線路L2とするかは問わない。例えば、上記で示した第二の線路L2を、第一の線路L1として用いるようにし、上記で示した第一の線路L1を、第二の線路L2として用いるようにしても良い。
変圧器11の詳細な構成については、公知技術であるため、ここでは説明は省略する。
【0034】
なお、一次巻線111が、主となる巻線(図示せず)と、一次巻線111の巻数を調整するための1以上の巻数調整用巻線(図示せず)とを有しており、変圧器11が、この1以上の巻数調整用巻線のそれぞれの端部から取り出したタップ端子(図示せず)を用いて、上記の主となる巻線に直列接続する巻数調整用巻線を切換えるいわゆるタップ切換を行なうタップ切換器(図示せず)を有している場合、一次巻線111の巻数調整用巻線と接続されている側の端部に設けられた線路は、各タップ端子と、巻数調整用巻線の端子との間の各線路(図示せず)と考えても良く、このタップ切換器のコモン端子等の、実質的にタップ切換後の一次巻線111の端部となる部分に設けられた線路と考えてもよい。なお、この場合タップ切換器のコモン端子等の端子も、一次巻線111の端部となる部分に設けられた線路の一部と考えてもよい。
【0035】
第一通信用コンデンサ12aは、一次巻線111の第一の線路P1と、二次巻線112の第一の線路L1との間、および一次巻線111の第二の線路P2と、二次巻線112の第二の線路L2との間にそれぞれ接続された通信用コンデンサである。通信用コンデンサとは、電力線通信の信号を通過させるためのコンデンサである。第一通信用コンデンサ12aは、例えば、変圧器11を通過させることができない電力線通信の信号を通過させて変圧器11をバイパスさせることで、一次巻線111が有する線路と二次巻線112が有する線路との間で、電力線通信を可能とするとともに、一次巻線111、および二次巻線112を流れる低周波数の電力(例えば、50Hzまたは60Hz等の商用周波数等の電力)を通過させないようにするために設けられたコンデンサである。
【0036】
配電用の変圧器11の一次側には、通常、6kV程度の高電圧の電力が供給されることから、第一通信用コンデンサ12aとしては、高耐圧のコンデンサを用いることが好ましい。また、配電用変圧装置1として、長期的に安定して利用できるようにするためには、第一通信用コンデンサ12aとしては、長寿命のコンデンサを用いることが好ましい。このため、第一通信用コンデンサ12aとしては、セラミックコンデンサおよびフィルムコンデンサ等の、高耐圧かつ高寿命のコンデンサを用いることが好ましい。
【0037】
次に、本実施の形態の配電用変圧装置1の動作の一例について説明する。
例えば、配電用の変圧器11の二次巻線112の第一の線路L1と、接地された中性線(図示せず)とに接続された電力線通信端末(図示せず)が、電力線通信を行なうために、高周波数である電力線通信用の信号を、二次側の線路に送電される低周波数である商用周波数(例えば、50Hzまたは60Hz)の電力に重畳させたとする。電力線通信端末は、例えば、電力線通信モデムや電力線通信モデムを有する機器等である。電力線通信用の信号は、電力線搬送通信信号と考えても良く、電力線通信の通信信号と考えてもよい。
【0038】
ここで、二次巻線112の第一の線路L1と、一次巻線111の第一の線路P1と、の間に設けられた第一通信用コンデンサ12aは、低周波数では高インピーダンス、高周波数では低インピーダンスとなるため、商用周波数の電力は通過させず、電力に重畳されて送信された電力線通信の高周波の信号だけを通過させることができる。このため、第一の線路L1に送信された電力線通信用の信号は、変圧器11をバイパスして、第一の線路L1と、一次巻線111の第一の線路P1との間に設けられた第一通信用コンデンサ12aを通過して、一次巻線111の第一の線路P1に送信される。また、第一通信用コンデンサ12aは、低周波数では高インピーダンスであるため、変圧器11の一次側の商用周波数の高電圧の電力が、この第一通信用コンデンサ12aを通過して、変圧器11の二次側の線路に送電されることもない。
【0039】
また、例えば、他の電力線通信端末により電力に重畳された電力線通信用の信号が、配電用変圧装置1と同様の他の変圧装置をバイパスして、一次巻線111の第一の線路P1を流れる商用周波数の高電圧の電力に重畳されている場合、第一通信用コンデンサ12aは、商用周波数の電力は通過させず、電力に重畳された電力線通信の高周波の信号だけを通過させることができる。このため、一次巻線111の第一の線路P1の電力に重畳された電力線通信用の信号は、変圧器11をバイパスして、一次巻線111の第一の線路P1と、二次巻線112の第一の線路L1と、の間に設けられた第一通信用コンデンサ12aを通過して、二次巻線112の第一の線路L1に送信され、第一の線路L1と中性線とに接続された電力線通信端末(図示せず)は、この第一の線路L1に送信された電力線通信用の信号を受信することができる。
【0040】
なお、ここでは、第一の線路L1と中性線とに電力線通信端末を接続した場合を例に挙げて説明したが、本発明においては、電力線通信端末(図示せず)を第二の線路L2と中性線とに接続するようにしてもよく、このような場合は、電力線通信の信号は、二次巻線112の第二の線路L2と、一次巻線111の第二の線路P2と、の間に設けられた第一通信用コンデンサ12aを通過することとなる。なお、電力線通信端末(図示せず)を第一の線路L1と中性線との間、および第二の線路L2と中性線との間の両方にそれぞれ接続するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0041】
なお、上記実施の形態において、電力線通信の信号が第一通信用コンデンサ12aを通過できるようにするためには、電力線通信としては、第一通信用コンデンサ12aとして用いられるコンデンサを通過可能な周波数帯を利用する電力線通信を用いることが好ましく、例えば、1MHz以上の周波数を利用する電力線通信を用いることが好ましい。このような電力線通信としては、例えば、2MHzから30MHzの帯域を利用するいわゆる高速PLCと呼ばれる電力線通信が利用可能である。
【0042】
以上、本実施の形態においては、変圧器の一次巻線側の線路と、二次巻線側の線路との間に、第一通信用コンデンサを設けたことにより、第一通信用コンデンサにより、変圧器を流れる電力は通過させずに、電力線通信の信号を通過させるようにして、変圧器の一次側の線路と二次側の線路との間で電力線通信を行なうことができ、電力線通信に適切に対応可能な配電用変圧装置を提供することができる。
【0043】
なお、上記においては、一次巻線111の第一の線路P1と、二次巻線112の第一の線路L1との間、および一次巻線111の第二の線路P2と、二次巻線112の第二の線路L2との間にそれぞれ第一通信用コンデンサ12aを設けた場合について説明したが、本発明においては、上記のいずれか一方にだけ第一通信用コンデンサ12aを設けるようにしても良い。このような場合においても、この第一通信用コンデンサ12aを介して、一次巻線111の線路と、二次巻線112の線路との間で電力線通信の信号を通過させて、一次巻線111の線路側と、二次巻線112の線路側とで電力線通信を行なうことが可能となる。
【0044】
また、上述したように、一次巻線111の両端の線路のうちのいずれを第一の線路P1とし、いずれを第二の線路P2として用いても良く、二次巻線112の両端の線路のうちのいずれを第一の線路L1とし、いずれを第二の線路L2として用いても良いことから、本発明においては、二次巻線112が両端に有する線路のうちの一方の線路と一次巻線が両端に有する線路のうちのの一方の線路との間、および二次巻線112が両端に有する線路のうちの他方の線路と一次巻線が両端に有する線路のうちのの他方の線路との間の少なくとも一方(好ましくは両方)に第一通信用コンデンサ12aを接続されるようにすればよい。
【0045】
(実施の形態2)
本実施の形態の配電用変圧装置2は、上記実施の形態1において説明した配電用変圧装置において、変圧器の一次側の線路と二次側の線路との間に第一通信用コンデンサを接続する代わりに、変圧器の二次側の第一の線路と、第二の線路との間に第二通信用コンデンサを接続するようにしたものである。
【0046】
図2は、本実施の形態における配電用変圧装置2のブロック図である。
図2において、
図1と同一符号は同一または相当する部分を示している。
【0047】
配電用変圧装置2は、変圧器11、第二通信用コンデンサ12bを備えている。配電用変圧装置2は、配電用の変圧を行なう装置である。変圧器11については、上記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明は省略する。
【0048】
第二通信用コンデンサ12bは、二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間に接続された通信用コンデンサである。この実施の形態の第二通信用コンデンサ12bは、例えば、変圧器11の二次巻線112を通過させた場合に大きく減衰してしまう二次巻線112が有する第一の線路L1と第二の線路L2との間で通信される電力線通信の信号を、二次巻線112の巻線部分をバイパスして通過させることで、二次巻線112の巻線部分を介さずに二次巻線112が有する線路間で電力線通信を可能とするためのものである。また、第二通信用コンデンサ12bは、二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2とにそれぞれ流れる逆位相の電力は通過させないようにできる。二次巻線112の巻線部分とは、二次巻線112の、両端に設けられた第一の線路L1と第二の線路L2とを除いた部分であり、例えば、二次巻線を構成する導線が、巻かれている部分である。
【0049】
第二通信用コンデンサ12bとしては、例えば、上記実施の形態1において説明した第一通信用コンデンサ12aと同様のものが利用可能である。なお、本実施の形態においては、第一通信用コンデンサ12aは、低電圧の電力を送電する二次巻線112の線路間に接続されるコンデンサであるため、第一通信用コンデンサ12aのような高耐圧なコンデンサでなくてもよい。このため、第二通信用コンデンサ12bとしては上記以外のコンデンサであって、低耐圧であるコンデンサを用いても良い。
【0050】
次に、本実施の形態の配電用変圧装置2の動作の一例について説明する。
例えば、配電用の変圧器11の二次巻線112の第一の線路L1と、接地された中性線(図示せず)とに、電力線通信モデムや電力線通信モデムを有する機器等の電力線通信端末(図示せず)を接続する。同様に、配電用の変圧器11の二次巻線112の第二の線路L2と、接地された中性線(図示せず)とに、電力線通信端末(図示せず)を接続する。第一の線路L1に接続された電力線通信端末が、電力線通信を行なうために、高周波数である電力線通信用の信号を、電力線通信端末と接続された第一の線路L1に送電される低周波数である商用周波数の電力に重畳させたとする。
【0051】
ここで、第二通信用コンデンサ12bは、低周波数では高インピーダンス、高周波数では低インピーダンスとなるため、商用周波数の電力は通過させず、電力に重畳された電力線通信の高周波の信号だけを通過させることができる。このため、二次巻線112の第一の線路L1に送信された電力線通信用の信号は、二次巻線112の第一の線路L1と、第二の線路L2と、の間に設けられた第二通信用コンデンサ12bを通過して、電力線通信用の信号は、二次巻線112の第二の線路L2に送信される。これにより、電力線通信用の信号を、二次巻線112の巻線部分を介さずに、第一の線路L1から第二の線路L2に送信することができる。また、第二通信用コンデンサ12bは、低周波数では項インピーダンスであるため、第二通信用コンデンサ12bを介して第一の線路L1と第二の線路L2との間で逆相の電力が送電されることはない。
【0052】
なお、第二の線路L2に接続された電力線通信端末から情報の送信を行なう場合についても、この情報を、第一の線路L1に接続された電力線通信端末が第二通信用コンデンサ12bを介して電力線通信により受信する点を除けば同様である。
【0053】
例えば、変圧器の二次側の第一の線路と中性線との組、および同じ変圧器の二次側の第二の線路と中性線線路との組の間でそれぞれ供給される電力が、同じ建物内に供給されることがある。このような場合、例えば、二次側の第一の線路に接続された電力線通信端末等を用いて同じ建物内の電力線通信端末に対して電力線通信を行なおうとしても、通信先の電力線通信端末が同じ変圧器の二次側の第一の線路とは異なる二次側の第二の線路に接続されており、この二次側の線路間に従来のような変圧器が存在すると、一方の二次側の線路から送信される電力線通信の信号が変圧器の二次巻線内を通過することによって大きく減衰し、他方の線路に正常に通信ができず、同じ建物内であっても、正常に電力線通信が行えないことが考えられる。
【0054】
これに対し、本発明においては、第二通信用コンデンサ12bにより、変圧器11の二次巻線112を介さずに、二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間で電力線通信の信号を通過させることができ、第一の線路L1と第二の線路L2との間で正常な通信を行なうことができる。
【0055】
以上、本実施の形態においては、変圧器の二次巻線側の両端の線路の間に、電力線通信の信号だけを通過させるための第二通信用コンデンサを設けたことにより、第二通信用コンデンサにより、変圧器を流れる電力は通過させずに、電力線通信の信号を通過させるようにして、変圧器の二次側の線路間で、二次巻線の巻線部分を介さずに電力線通信を行なうことができ、信号の減衰を防いで、通信範囲の縮小や通信速度の低下を防止することができ、電力線通信に適切に対応可能な配電用変圧装置を提供することができる。
【0056】
なお、本実施の形態においても、電力線通信の信号が第二通信用コンデンサ12bを通過できるようにするためには、電力線通信としては、上記実施の形態1と同様の周波数帯の電力線通信を用いることが好ましい。
【0057】
(実施の形態3)
本実施の形態の配電用変圧装置は、変圧器を複数備えるようにするとともに、複数の変圧器の二次巻線が有する線路の間を、複数の通信用コンデンサで接続して、複数の変圧器の二次巻線が有する線路間において電力線通信が可能となるようにしたものである。
【0058】
図3は、本実施の形態における配電用変圧装置3のブロック図である。
図3において、
図1と同一符号は同一または相当する部分を示している。
【0059】
配電用変圧装置3は、3つの変圧器11と、各変圧器11が有する二次巻線112が有する第一の線路L1および第二の線路L2の少なくとも一方を、異なる変圧器11間で接続する第二通信用コンデンサ12bを備えている。ここでは説明のため、三つの変圧器11を変圧器11a〜11cと呼ぶ。また、ここでは説明のため、異なる変圧器11間を接続する第二通信用コンデンサ12bを、第二通信用コンデンサ12b
1〜12b
3と呼ぶ。ここでの異なる変圧器11とは、上記の3つの変圧器11a〜11cのうちの異なる変圧器である。更に、配電用変圧装置3は、3つの変圧器11のそれぞれの、二次巻線112が有する第一の線路L1と第二の線路L2との間に接続された第二通信用コンデンサ12bとを備えている。各第二通信用コンデンサ12bは、通常、二次巻線112が有する二つの線路を一対一で接続するよう設けられる。なお、ここでは、各変圧器11a〜11cの二次巻線112の第一の線路L1から送電される電力の位相が、いずれも同位相である場合を例に挙げて説明する。ただし、これらは同位相でなくても良い。
【0060】
第二通信用コンデンサ12b
1は、変圧器11aの二次巻線112の第一の線路L1と、変圧器11aの二次巻線112の第一の線路L1との間に接続されている。また、第二通信用コンデンサ12b
2は、変圧器11aの二次巻線112の第二の線路L2と、変圧器11bの二次巻線112の第二の線路L2との間に接続されている。また、第二通信用コンデンサ12b
3は、変圧器11bの二次巻線112の第二の線路L2と、変圧器11cの二次巻線112の第一の線路L1との間に接続されている。
【0061】
本実施の形態においては、上述したように、変圧器11aおよび11bの二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間は、それぞれ第二通信用コンデンサ12bで接続されているため、変圧器11aおよび11bのそれぞれの二次巻線112が有する第一の線路L1と第二の線路L2との間においては、二次巻線112の巻線部分を介さずに、第二通信用コンデンサ12bを介して電力線通信が可能となっている。また、変圧器11aの二次巻線112の第一の線路L1と、変圧器11bの二次巻線112の第一の線路L1との間は、第二通信用コンデンサ12b
1が接続されていることにより電力線通信可能となっており、変圧器11aの二次巻線112の第二の線路L2と、変圧器11bの二次巻線112の第二の線路L2との間は、第二通信用コンデンサ12b
2が接続されていることにより電力線通信が可能となっている。これにより、変圧器11aの二次巻線112の第一の線路L1および第二の線路L2と、変圧器11bの二次巻線112の第一の線路L1および第二の線路L2とが、電力線通信可能となるように接続されることとなる。
【0062】
また、変圧器11bの二次巻線112の第二の線路L2と、変圧器11cの二次巻線112の第一の線路L1との間は、第二通信用コンデンサ12b
3が接続されていることにより電力線通信可能となっており、上述したように、変圧器11cの二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間は、それぞれ第二通信用コンデンサ12bで接続されており、二次巻線112の巻線部分を介さずに、第二通信用コンデンサ12bを介して電力線通信が可能となっている。これにより、変圧器11bの二次巻線112の第一の線路L1および第二の線路L2と、変圧器11cの二次巻線112の第一の線路L1および第二の線路L2とが、電力線通信可能となるように接続されることとなり、変圧器11a〜11cの二次巻線112が有する第一の線路L1および第二の線路L2、即ち二次巻線112の全ての線路が、第二通信用コンデンサ12bおよび第二通信用コンデンサ12b
1〜12b
3の少なくともいずれか一つを介して、電力線通信可能となるよう接続されることとなる。これにより、例えば、一の変圧器11(例えば、変圧器11a〜11cのいずれか一つ)の二次巻線112の一方の線路(例えば、第一の線路L1)に接続された電力線通信用端末(図示せず)と、この一の変圧器11のこの線路以外の二次巻線112の線路(例えば、変圧器11aの二次巻線の第二の線路L2)、または他の変圧器11の二次巻線112の線路(例えば、変圧器11b〜11cの二次巻線112の第一の線路L1または第二の線路L2)に接続された電力線通信用端末(図示せず)との間で、電力線通信用の信号を変圧器11の二次巻線112の巻線部分を通過させることなく、電力線通信を行なうことが可能となる。また、二次巻線112の線路間は、第二通信用コンデンサ12bを介して接続されるため、変圧器11から送電される商用周波数等の周波数を有する電力は、第二通信用コンデンサ12bを通過することはなく、変圧器11からの送電に与える影響をなくすことができる。
【0063】
以上、本実施の形態においては、3つの変圧器の二次巻線が有する線路の間に、3つの変圧器の二次巻線が有する全ての線路間において電力線通信が可能となるように、第二通信用コンデンサをそれぞれ接続したことにより、3つの変圧器の二次巻線が有する複数の線路間で、二次巻線の巻線部分、および変圧器の一次巻線と二次巻線との間を通過させることなく、電力線通信を行なうことが可能となり、電力線通信に適切に対応することが可能な配電用変圧装置を提供することが可能となる。
【0064】
なお、本実施の形態においては、配電用変圧装置3が、3つの変圧器11を備えている場合を例に挙げて説明したが、本発明は、配電用変圧装置の数が複数であれば適用可能なものである。つまり、本発明の配電用変圧装置は、複数の変圧器と、この複数の変圧器の二次巻線が有する線路のうちの少なくとも一方の線路を、異なる変圧器間で接続する通信用コンデンサを備えた配電用変圧装置であると考えてもよい。また、本発明の配電用変圧装置は、複数の変圧器の二次巻線が有する第一の線路と第二の線路との間をそれぞれ接続する通信用コンデンサを更に備えた配電用変圧装置と考えてもよい。このように、複数の変圧器を備えた場合においても、上記実施の形態3と同様の効果を奏する。なお、この場合の、複数の変圧器は、例えば、配電用変圧装置が有する変圧器の全てであっても良く、一部であっても良い。
【0065】
また、この実施の形態においては、複数の変圧器11である3つの変圧器11a〜11bの二次側の線路の間に、3つの変圧器11a〜11bの二次巻線112が有する全ての線路間において第二通信用コンデンサ12bを介して電力線通信が可能となるよう、複数の第二通信用コンデンサ12bを接続した場合について説明したが、本発明においては、複数の変圧器がそれぞれ有する二次巻線の一部の線路間だけで第二通信用コンデンサを介して電力線通信が行えるようにしても良い。
【0066】
なお、本発明においては、複数の変圧器の二次巻線が有する線路のうちの少なくとも一方の線路を、異なる変圧器間で接続する第二通信用コンデンサと、複数の変圧器のうちの1以上の変圧器の二次巻線が有する第一の線路と第二の線路との間をそれぞれ接続する第二通信用コンデンサとを、この第二通信用コンデンサを介して、複数の変圧器の二次巻線が有する全ての線路間において電力線通信が可能となるよう設けることが好ましい。第二通信用コンデンサを設けるということは、例えば、複数の変圧器の二次巻線が有する線路間に第二通信用コンデンサを接続することと考えてもよい。これにより、複数の変圧器の二次側のいずれの線路間においても相互に通信することが可能となる。なお、この場合の複数の変圧器の二次巻線が有する全ての線路は、例えば、電力線通信の対象となる線路の全てと考えてもよく、配電用変圧装置が有する全ての変圧器の二次巻線が有する線路の全てと考えてもよい。
【0067】
なお、上記実施の形態3において説明した3つの変圧器11a〜11cの二次巻線112が有する線路(例えば、3つの第一の線路L1および3つの第二の線路L2)間の、複数の第二通信用コンデンサ12b(第二通信用コンデンサ12b
1〜12b
3も含む)による接続の仕方は、配電用変圧装置が有する複数の変圧器11の接続の一例であり、本発明においては、複数の変圧器の二次巻線が有する線路が第二通信用コンデンサを介して電力線通信可能となるよう接続されれば、これらの線路間が第二通信用コンデンサを介してどのように接続されるかは問わない。
【0068】
例えば、本発明においては、複数の変圧器(例えば、
図3に示した3つの変圧器11a〜11c)が有する二次側の線路のうちの電力線通信が必要となる線路の全てが、同じ変圧器の二次側の線路であるか否かに関係なく、第二通信用コンデンサを介して直接接続されるように、複数の第二通信用コンデンサを設けても良い。このような構成とすることで、複数の変圧器の二次巻線が有する一の線路と他の線路との間の電力線通信が、一の第二通信用コンデンサを介して行なわれることとなり、通信の損失を抑えて、高品質な電力線通信が可能となる。
【0069】
ただし、このような構成は、接続に必要な第二通信用コンデンサの数が増加し、接続も複雑となり、装置の小型化には適さない場合がある。このため、
図3に示した例のように、本発明においては、配電用変圧装置が有する複数の変圧器が、n個(nは3以上の整数)の変圧器である場合において、上記のように、複数の変圧器の二次巻線が有する線路のうちの少なくとも一方の線路を異なる変圧器間で接続する通信用コンデンサと、複数の変圧器の二次巻線が有する第一の線路と第二の線路との間をそれぞれ接続する通信用コンデンサとを、この通信用コンデンサを介して複数の変圧器の二次巻線が有する線路の全てが電力線通信を可能となるように設けるとともに、これらの通信用コンデンサにより異なる変圧器間で接続される各線路が、この線路を有する変圧器以外の(n−2)個以下の他の変圧器の二次巻線が有する線路のうちの一方の線路とこれらの通信用コンデンサを介して接続されるようにすることが好ましい。このようにすることで、通信用コンデンサ(具体的には、異なる変圧器間で線路を接続する通信用コンデンサおよび二次巻線が有する第一の線路と第二の線路とを接続する通信用コンデンサ)を介して複数の変圧器の二次巻線が有する線路の全てが電力線通信を可能となるよう接続できるとともに、第二通信用コンデンサの数を削減することができる。なお、この場合の線路の全ては、上記と同様に、例えば、電力線通信の対象となる線路の全てと考えてもよく、配電用変圧装置が有する全ての変圧器の二次巻線が有する線路の全てと考えてもよい。
【0070】
図4は、上記実施の形態3において説明した配電用変圧装置3の第一の変形例を示すブロック図である。この第一の変形例の配電用変圧装置3は、
図3に示した配電用変圧装置3において、第二通信用コンデンサ12b
2を省略し、第二通信用コンデンサ12b
1を、変圧器11aの二次巻線112の第二の線路L2と、変圧器11bの二次巻線112の第一の線路L1との間に接続するようにしたものである。図において、
図3と同一符号は同一または相当する部分を示している。
【0071】
また、
図5は、上記実施の形態3において説明した配電用変圧装置3の第二の変形例を示すブロック図である。この第一の変形例の配電用変圧装置3は、
図3に示した配電用変圧装置3において、第二通信用コンデンサ12b
2を省略し、第二通信用コンデンサ12b
3を、変圧器11bの二次巻線112の第一の線路L1と、変圧器11cの二次巻線112の第一の線路L1との間に接続するようにしたものである。図において、
図3と同一符号は同一または相当する部分を示している。
【0072】
この第一の変形例および第二の変形例は、複数の変圧器11(例えば、3つの変圧器11a〜11c)の二次巻線112が有する線路の全てが電力線通信可能となるよう接続するとともに、二次巻線112の線路を、第二通信用コンデンサ12bにより、環状に接続される部分がないよう接続するようにしたものである。
【0073】
図4および
図5に示したような変形例においても、上記実施の形態と同様に、3つの変圧器の二次巻線が有する複数の線路間で、二次巻線112の巻線部分を通過させることなく、電力線通信を行なうことが可能となり、電力線通信に適切に対応することが可能な配電用変圧装置を提供することが可能となる。
【0074】
更に、
図3に示したように、上記実施の形態3の例においては、変圧器11aおよび11bのそれぞれの二次側の線路間に設けられた二つの第二通信用コンデンサ12bと、第二通信用コンデンサ12b
1および12b
2とが環状に接続されることとなるため、4つの第二通信用コンデンサ12bが変圧器11aおよび11bの二次巻線112の第一の線路L1および第二の線路L2の接続に4つの第二通信用コンデンサ12bが用いられることとなるが、上記の第一および第二の変形例においては、第二通信用コンデンサ12bが環状に接続されないようにすることで、変圧器11aおよび11bの二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間を二次巻線112の巻線部分を通過させずに電力線通信可能となるように接続するために必要となる第二通信用コンデンサ12bの数を最低限に必要な数である3つに減らすことができる。
【0075】
このように、第一の変形例および第二の変形例においては、複数の変圧器11(例えば3つの変圧器11)の二次巻線112の線路を、第二通信用コンデンサ12bにより、環状に接続される部分がないよう接続することにより、第二通信用コンデンサ12bの数を最低限に必要な数に減らすことができる。なお、この変形例が、複数の変圧器11の数が3以外の場合に適用可能であることはいうまでもない。
【0076】
なお、本発明においては、
図4に示した変形例のように、複数の変圧器11のそれぞれの二次巻線112が有する第一の線路L1と第二の線路L2とを第二通信用コンデンサ12bで接続するとともに、異なる変圧器11間においては、二次巻線112が有する線路の一方同士だけを、第二通信用コンデンサ12bで接続するようにすることが好ましい。このような構成とすることで、複数の変圧器11の二次巻線112が有する線路を、直列状に接続することができる。これにより、例えば、複数の変圧器11の配列順にそって、隣り合う変圧器11の二次巻線112の線路間を接続することが可能となり、変圧器11の線路同士の接続が複雑化しないようにでき、配電用変圧装置の構成を単純な構成とすることができ、配電用変圧装置を小型化すること等が可能となる。
【0077】
図6は上記実施の形態3において説明した配電用変圧装置3の第三の変形例を示すブロック図である。この第三の変形例の配電用変圧装置3は、
図3に示した配電用変圧装置3において、変圧器11aの二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間に接続された第二通信用コンデンサ12bを省略したものである。図において、
図3と同一符号は同一または相当する部分を示している。
【0078】
この第三の変形例においても、変圧器11aの二次巻線112の第一の線路L1は、第二通信用コンデンサ12b
1、変圧器11bの二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間に接続された第二通信用コンデンサ12b、および第二通信用コンデンサ12b
2を介して電力線通信可能となるように接続されるため、上記実施の形態3と同様の効果を奏する。また、変圧器11aの二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間に接続された第二通信用コンデンサ12bを省略することができ、第二通信用コンデンサ12bを削減することができる。
【0079】
ただし、線路間の通信においては、通過する第二通信用コンデンサ12bの数が増えると、第二通信用コンデンサ12bによる信号の減衰が大きいため、この第三の変形例のような場合、変圧器11aの二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間での通信用の信号の減衰が大きくなってしまい、電力線通信が安定せず、通信速度が低下してしまう等の問題が生じる可能性がある。このことから、本発明においては、
図3に示した配電用変圧装置3のように、変圧器11aの二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間を、第二通信用コンデンサ12bで接続することが好ましい。
【0080】
一の変圧器の二次巻線の第一の線路と第二の線路とは、通常は、同じ建物内等の近い複数の空間に対する送電等に用いられることから、異なる変圧器間の電力線通信の安定化の前に、一の変圧器の二次巻線の第一の線路と第二の線路との間における電力線通信の安定化が望まれる。このことから、本発明においては、
図3に示した配電用変圧装置3のように、各変圧器の二次巻線の第一の線路と第二の線路との間を、第二通信用コンデンサで接続することが好ましい。また、通常、一の変圧器の二次巻線の第一の線路と第二の線路とは、近接した位置から取り出すことが容易であるため、装置の小型化を図るためにも、各変圧器の二次巻線の第一の線路と第二の線路との間を、第二通信用コンデンサで接続することが好ましい。このため、本発明においては、配電用変圧装置は、全ての変圧器の二次巻線が有する第一の線路と第二の線路との間をそれぞれ接続する通信用コンデンサを有していることが好ましい
【0081】
ただし、
図6に示した第三の変形例と同様に、適宜、複数の変圧器のうちの少なくとも一部の変圧器の二次巻線の第一の線路と第二の線路との間に、第二通信用コンデンサを設けないようにしても良い。これにより、複数の変圧器のうちの1以上がそれぞれ有する二次巻線112の第一の線路と第二の線路との間で電力線通信が行なわれないようにしても良い。
【0082】
なお、本発明においては、上記実施の形態1において説明した変圧器11の一次側の線路と、二次側の線路との間を第一通信用コンデンサ12aで接続する構成と、上記実施の形態2および3において説明した1以上の変圧器11の二次側の線路の間を第二通信用コンデンサ12bで接続する構成を適宜組み合わせるようにしても良く、このような構成により、上記実施の形態1および2と同様の効果、あるいは、上記実施の形態1および3と同様の効果を奏する。
【0083】
図7は、上記実施の形態1において説明した配電用変圧器の変形例を示すブロック図である。この変形例の配電用変圧器は、
図1に示した上記実施の形態にかかる配電用変圧装置1において、変圧器11の二次巻線112の第一の線路L1と第二の線路L2との間を接続する第二通信用コンデンサ12bを設けたものである。図において、
図1および
図2と同一符号は同一または相当する部分を示している。
【0084】
この変形例においては、変圧器の一次側の線路と二次側の線路との間で電力線通信を行なうことができるとともに、変圧器の二次巻線の線路間で、二次巻線の巻線部分を介さずに電力線通信を行なうことができ、電力線通信に適切に対応可能な配電用変圧装置を提供することができる。
【0085】
なお、上記実施の形態1において用いられる二つの第一通信用コンデンサ12aの容量は通常は同じものが用いられるが、異なるものであっても良い。かかることは、上記実施の形態3のおいて用いられる複数の第二通信用コンデンサ12bについても同様である。
【0086】
なお、上記各実施の形態において説明した配電用変圧装置において、変圧器11を、絶縁油内に設置した油入変圧器とするとともに、上述した1以上の通信用コンデンサ(例えば、実施の形態1の第一通信用コンデンサ12aおよび実施の形態2,3の第二通信用コンデンサ12b)を、変圧器11とともに絶縁油中に設置してもよい。かかる構成により大気等の気中に通信用コンデンサを配置する場合に比べて、通信用コンデンサの絶縁耐力を向上させることができるとともに、装置全体を小型化することが可能となる。
【0087】
また、上記各実施の形態において説明した配電用変圧装置において、変圧器11を樹脂モールドで固めたモールド型変圧器とするとともに、上述した1以上の通信用コンデンサを、変圧器11とともに樹脂モールドで固めるようにしてもよい。かかる構成により、大気等の気中に通信用コンデンサを配置する場合に比べて、通信用コンデンサの絶縁耐力を向上させることができる。
【0088】
なお、上記各実施の形態において説明した配電用変圧装置1において、上述した1以上の通信用コンデンサを絶縁油で満たされたケース(図示せず)で保護するようにしてもよい。例えば、絶縁油で満たされたケースで周囲を覆うようにしてもよい。かかる構成により、大気等の気中に通信用コンデンサを配置する場合に比べて、通信用コンデンサの絶縁耐力を向上させることができる。
【0089】
また、上記各実施の形態においては、配電用変圧装置1が有する変圧器が、単相三線式の変圧器である場合について説明したが、本発明においては、変圧器として、単相三線式以外の配電用に利用可能な変圧器を用いるようにしても良い。
【0090】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。