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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-129627(P2018-129627A)
(43)【公開日】2018年8月16日
(54)【発明の名称】コンパレータ
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/08 20060101AFI20180720BHJP
【FI】
   H03K5/08 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-20663(P2017-20663)
(22)【出願日】2017年2月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 誠一
(72)【発明者】
【氏名】内田 英明
(72)【発明者】
【氏名】植田 昇広
【テーマコード(参考)】
5J039
【Fターム(参考)】
5J039DA09
5J039DB01
5J039DB02
5J039DB20
5J039DC01
5J039KK00
5J039KK16
5J039KK18
5J039KK28
5J039KK29
5J039KK31
5J039MM16
(57)【要約】
【課題】広い入力電圧レンジの入力信号に対応可能で、NBTI劣化の影響を受けにくく、かつ回路規模を小さくすることができるコンパレータを提供する。
【解決手段】実施形態のコンパレータは、NMOSトランジスタにより構成され、リファレンス信号Vrefと入力信号Vmonとの差に応じた信号を出力するNMOS差動対回路21と、リファレンス信号Vrefの電圧レベルが所定の閾値電圧VTHよりも低いときには、リファレンス信号Vrefの電圧レベルを上げてNMOS差動対回路21へ入力する入力回路13Aとを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NMOSトランジスタにより構成され、第1の入力信号と第2の入力信号との差に応じた信号を出力する差動対回路と、
前記第1の入力信号の電圧レベルが所定の閾値よりも低いときには、前記第1の入力信号の電圧レベルを上げて前記差動対回路へ入力する第1の入力回路と、
を有するコンパレータ。
【請求項2】
前記第1の入力回路は、前記第1の入力信号の電圧レベルを上げるようにシフトアップする第1のレベルシフト回路を有し、前記第1の入力信号の電圧レベルが前記所定の閾値よりも低いときには、前記第1の入力信号の電圧レベルを上げるために前記第1のレベルシフト回路によりシフトアップされた前記第1の入力信号を前記差動対回路へ供給し、前記第1の入力信号の前記電圧レベルが前記所定の閾値よりも低くないときには、前記第1の入力信号をそのまま前記差動対回路へ供給する請求項1に記載のコンパレータ。
【請求項3】
前記第1の入力信号の電圧レベルが前記所定の閾値よりも低いときには、前記第2の入力信号の電圧レベルを上げて前記差動対回路へ入力する第2の入力回路を有する請求項2に記載のコンパレータ。
【請求項4】
前記第2の入力回路は、前記第2の入力信号の電圧レベルを上げるようにシフトアップする第2のレベルシフト回路を有し、前記第1の入力信号の電圧レベルが前記所定の閾値よりも低いときには、前記第2の入力信号の電圧レベルを上げるために前記第2のレベルシフト回路によりシフトアップされた前記第2の入力信号を前記差動対回路へ供給し、前記第1の入力信号の前記電圧レベルが前記所定の閾値よりも低くないときには、前記第2の入力信号をそのまま前記差動対回路へ供給する請求項3に記載のコンパレータ。
【請求項5】
前記第1のレベルシフト回路は、第1のPMOSトランジスタにより構成され、
前記第2のレベルシフト回路は、第2のPMOSトランジスタにより構成され、
前記第1の入力信号は、前記第1のPMOSトランジスタのゲートに供給され、
前記第2の入力信号は、前記第2のPMOSトランジスタのゲートに供給される請求項4に記載のコンパレータ。
【請求項6】
前記第1の入力信号の電圧レベルが前記所定の閾値よりも低いときには、前記レベルシフト回路によりシフトアップされた前記第1の入力信号を選択し、前記第1の入力信号の前記電圧レベルが前記所定の閾値よりも低くないときには、前記第1の入力信号を選択して、前記差動対回路へ供給する選択回路を有する請求項2から5のいずれか1つに記載のコンパレータ。
【請求項7】
前記第1の入力信号のデジタル信号に基づいて、選択信号を前記選択回路に出力する選択指示回路を有し、
前記選択回路は、前記選択信号に基づいて、前記第1のレベルシフト回路によりシフトアップされた前記第1の入力信号あるいはそのままの前記第1の入力信号を選択して、前記差動対回路へ供給する請求項6に記載のコンパレータ。
【請求項8】
前記デジタル信号をアナログ信号に変換して前記第1の入力信号を生成するデジタルアナログ変換器を有する請求項7に記載のコンパレータ。
【請求項9】
NMOSトランジスタにより構成され、第1の入力信号と第2の入力信号との差に応じた信号を出力する差動対回路と、
前記第1の入力信号の電圧レベルをシフトアップする第1のレベルシフト回路と、
前記第2の入力信号の電圧レベルをシフトアップする第2のレベルシフト回路と、
前記第1の入力信号の電圧レベルが前記所定の閾値よりも低いときには、前記第1のレベルシフト回路によりシフトアップされた前記第1の入力信号を選択し、前記第1の入力信号の前記電圧レベルが前記所定の閾値よりも低くないときには、前記第1の入力信号を選択して、前記差動対回路へ供給する第1の選択回路と、
前記第1の入力信号の電圧レベルが前記所定の閾値よりも低いときには、前記第2のレベルシフト回路によりシフトアップされた前記第2の入力信号を選択し、前記第1の入力信号の前記電圧レベルが前記所定の閾値よりも低くないときには、前記第2の入力信号を選択して、前記差動対回路へ供給する第2の選択回路と、
を有するコンパレータ。
【請求項10】
前記第1の入力信号のデジタル信号に基づいて、選択信号を前記第1の選択回路及び前記第2の選択回路に出力する選択信号出力回路を有し、
前記第1の選択回路は、前記選択信号に基づいて、前記第1のレベルシフト回路によりシフトアップされた前記第1の入力信号あるいはそのままの前記第1の入力信号を選択して、前記差動対回路へ供給し、
前記第2の選択回路は、前記選択信号に基づいて、前記第2のレベルシフト回路によりシフトアップされた前記第2の入力信号あるいはそのままの前記第2の入力信号を選択して、前記差動対回路へ供給する請求項9に記載のコンパレータ。
【請求項11】
前記デジタル信号をアナログ信号に変換して前記第1の入力信号を生成するデジタルアナログ変換器を有する請求項10に記載のコンパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、コンパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アナログ半導体集積回路の入力回路として、差動対回路の入力電圧レベルを電源電圧からグラウンドレベルまでの広い範囲にするレール・トゥ・レール型の入力回路がある。NMOSトランジスタからなる差動対回路とPMOSトランジスタからなる差動対回路を組み合せ、入力電圧レベルが電源電圧付近のときはNMOS差動対回路の出力を利用し、入力電圧レベルがグラウンド付近のときはPMOS差動対回路の出力を利用するようにして、入力回路の広い入力電圧レンジが確保される。
【0003】
このようなレール・トゥ・レール型の入力回路をコンパレータの入力回路として利用する場合、2つの入力信号の一方が直流バイアス信号のリファレンス信号で、他方が監視対象信号となる場合がある。コンパレータは、監視対象信号がリファレンス信号以上になる、あるいは以下になると、出力信号が反転するように動作する。
【0004】
ところで、低電圧レベルの直流のリファレンス信号を受けるPMOSトランジスタは、負バイアス温度不安定性(NBTI:Negative Bias Temperature Instability。以下、NBTIと略す)劣化の影響を受け易いという問題がある。
コンパレータのPMOS差動対回路のうち、直流のリファレンス信号を受ける側のPMOSトランジスタは、監視対象信号を受ける側のPMOSトランジスタに比べて、NBTI劣化が大きくなる。そのため、PMOS差動対回路の2つの入力におけるNBTI劣化の度合いの差は、差動対のバランスを崩し、コンパレータの検出精度の低下に繋がる。
【0005】
そこで、NBTI劣化を避けるために、PMOS差動対回路をNMOS差動対回路に置き換える回路が考えられる。この場合、PMOS差動対回路をNMOS差動対回路に置き換えただけでは、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタの入力レンジの違いにより、NMOS差動対回路は、グラウンドに近い低電圧帯の信号を受けられない。そのため、2つのNMOSトランジスタの各ゲートに、レベルシフト回路を挿入して、入力信号の電圧レベルをシフトアップして、NMOS差動対回路の入力レンジに合わせる回路構成が取られる。
【0006】
しかし、そのような構成の回路の場合、電源電圧付近の高い入力電圧を受けるための、NMOS差動対回路がさらに必要となり、結果としてコンパレータの回路規模が大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−90136号公報
【特許文献2】特開2008−219655号公報
【特許文献3】特開2012−199664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、実施形態は、広い入力電圧レンジの入力信号に対応可能で、NBTI劣化の影響を受けにくく、かつ回路規模を小さくすることができるコンパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のコンパレータは、NMOSトランジスタにより構成され、第1の入力信号と第2の入力信号との差に応じた信号を出力する差動対回路と、前記第1の入力信号の電圧レベルが所定の閾値よりも低いときには、前記第1の入力信号の電圧レベルを上げて前記差動対回路へ入力する第1の入力回路と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係わる電圧監視装置のブロック図である。
図2】実施形態に係わるDAC部とコンパレータの回路図である。
図3】実施形態に係わる、リファレンス信号Vrefと閾値電圧VTHの関係を示す図である。
図4】実施形態に係わる電圧監視回路の作用を説明するための2つの入力信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(構成)
図1は、本実施形態に係わる電圧監視装置のブロック図である。
【0012】
電圧監視装置1は、デジタルアナログ変換部(以下、DAC部という)2と、コンパレータ3と、制御回路4とを含む。電圧監視装置1には、2つの入力信号が入力される。2つの入力信号の一方は、デジタル信号のリファレンスコード信号RCであり、他方は、監視対象である入力信号Vmonである。リファレンスコード信号RCは、閾値としてのリファレンス信号Vrefの電圧レベルを示すデジタル信号であり、例えばレベル設定コードCODEにより設定される。
【0013】
電圧監視装置1は、コンパレータ3を利用して入力信号Vmonを監視し、例えば、入力信号Vmonがリファレンス信号Vrefの電圧レベル以下になると、所定の検出信号ASを制御回路4へ出力する。例えば、電圧監視装置1は、入力信号Vmonがリファレンス信号Vrefの電圧レベル以下になると、所定の検出信号ASを異常検出信号として制御回路4へ出力する電圧異常検出装置として用いることができる。コンパレータ3は、差動対回路を有するアナログ半導体集積回路である。制御回路4は、検出信号ASに基づいて、図示しない他の装置への制御信号を出力する。
【0014】
図2も加えて、電圧監視装置1の具体的な回路構成につき詳述する。図2は、DAC部2とコンパレータ3の回路図である。
DAC部2は、デコーダ11と、デジタルアナログ変換器(以下、DACと略す)12とを有する。DAC部2には、リファレンスコード信号RCが入力される。
【0015】
デコーダ11は、入力されたリファレンスコード信号RCの値に応じて所定の選択信号SSを生成して、コンパレータ3へ出力する。ここでは、リファレンスコード信号RCの値が、所定の値TH以上であるか否かに応じた選択信号SSが出力される。
【0016】
DAC12は、デジタル信号のリファレンスコード信号RCを入力し、アナログ信号のリファレンス信号Vrefに変換してコンパレータ3へ出力する。
DAC部2は、デジタル信号であるリファレンスコード信号RCを受信して、選択信号SSを生成してコンパレータ3へ出力すると共に、リファレンスコード信号RCに応じたリファレンス信号Vrefを生成してコンパレータ3へ出力する。DAC12は、デジタル信号のリファレンスコード信号RCをアナログ信号に変換してリファレンス信号Vrefを生成する。よって、リファレンス信号Vrefの電圧は、レベル設定コードCODEにより設定変更可能である。
【0017】
図1に示すように、コンパレータ3は、入力回路13A,13Bと、差動増幅器14を含む。DAC12の出力が、リファレンス信号Vrefとして、入力回路13Aを介して差動増幅器14へ入力される。
リファレンス信号Vrefが入力される入力回路13Aは、バッファ回路15Aと、マルチプレクサ16Aを有する。入力信号Vmonが入力される入力回路13Bは、バッファ回路15Bと、マルチプレクサ16Bを有する。選択信号SSは、マルチプレクサ16A及び16Bに入力される。
【0018】
リファレンス信号Vrefは、バッファ回路15Aに入力される。図2に示すように、バッファ回路15Aは、電源電圧(VDD)とグラウンド(GND)の間に設けられた電流源17A及びPMOSトランジスタ18Aを有する。PMOSトランジスタ18Aは、ドレイン接地され、電流源17Aがソースに接続されている。リファレンス信号Vrefは、PMOSトランジスタ18Aのゲートに供給される。電流源17Aは、PMOSトランジスタ18Aを飽和させる定電流を供給する。
【0019】
バッファ回路15Aは、リファレンス信号Vrefの電圧レベルを上げるようにシフトアップするレベルシフト回路を構成する。バッファ回路15Aは、PMOSトランジスタ18Aにより構成される。
【0020】
マルチプレクサ16Aは、2つのスイッチ19A、20Aを有する。2つのスイッチ19A、20Aは、アナログスイッチである。スイッチ19Aの一端は、リファレンス電圧信号(以下、リファレンス信号という)Vrefが供給されるように、PMOSトランジスタ18Aのゲートと接続されている。スイッチ19Aの他端は、スイッチ19Aと20Aの接続点CAに接続されている。
【0021】
スイッチ20Aの一端は、バッファ回路15Aの出力であるPMOSトランジスタ18Aのソースと接続されている。スイッチ20Aの他端は、スイッチ19Aと20Aの接続点CAに接続されている。
【0022】
マルチプレクサ16Aは、選択信号SSに応じて、スイッチ19Aと20Aを切り替えて、バッファ回路15Aの出力あるいはリファレンス信号Vrefのいずれか一方を接続点CAに与えるように動作する。図2に示すように、マルチプレクサ16Aの出力となる接続点CAが、PMOSトランジスタ18Aのゲートと接続されるか、PMOSトランジスタ18Aのソースと接続されるかが、選択信号SSに応じて切り替えられる。
【0023】
具体的には、選択信号SSに応じて、マルチプレクサ16Aは、リファレンス信号Vrefの電圧レベルが所定の閾値である電圧VTHよりも低いときには、バッファ回路15Aによりシフトアップされたリファレンス信号Vrefを選択し、リファレンス信号Vrefの電圧レベルが所定の閾値である電圧VTHよりも低くないときには、リファレンス信号Vrefを選択して、NMOS差動対回路21へ供給する選択回路を構成する。
監視対象である入力信号Vmonの入力経路も、リファレンス信号Vrefの入力経路との対称性を持たせるため、バッファ回路15Bとマルチプレクサ16Bを有している。
【0024】
入力信号Vmonは、バッファ回路15Bに入力される。監視対象である入力信号Vmonが入力されるバッファ回路15Bは、電源電圧(VDD)とグラウンド(GND)の間に設けられた電流源17B及びPMOSトランジスタ18Bを有する。PMOSトランジスタ18Bは、ドレイン接地され、電流源17Bがソースに接続されている。入力信号Vmonは、PMOSトランジスタ18Bのゲートに供給される。
PMOSトランジスタ18Aと18Bは、ペアを成し、トランジスタのサイズ及び閾値電圧Vthなどの物理パラメータが完全に一致している。
電流源17Bは、PMOSトランジスタ18Bを飽和させる定電流を供給する。電流源17Aと17Bの定電流Idの電流値は等しく設定される。
【0025】
バッファ回路15Bは、入力信号Vmonの電圧レベルを上げるようにシフトアップするレベルシフト回路を構成する。バッファ回路15Bは、PMOSトランジスタ18Bにより構成される。
【0026】
マルチプレクサ16Bは、2つのスイッチ19B、20Bを有する。スイッチ19Bの一端は、監視対象である入力信号Vmonが供給されるように、PMOSトランジスタ18Bのゲートと接続されている。スイッチ19Bの他端は、スイッチ19Bと20Bの接続点CBに接続されている。
【0027】
スイッチ20Bの一端は、バッファ回路15Bの出力であるPMOSトランジスタ18Bのソースと接続されている。スイッチ20Bの他端は、スイッチ19Bと20Bの接続点CBに接続されている。
【0028】
マルチプレクサ16Bは、選択信号SSに応じて、スイッチ19Bと20Bを切り替えて、バッファ回路15Bの出力あるいは入力信号Vmonのいずれか一方を接続点CBに与えるように動作する。図2に示すように、マルチプレクサ16Bの出力となる接続点CBが、PMOSトランジスタ18Bのゲートと接続されるか、PMOSトランジスタ18Bのソースと接続されるかが、選択信号SSに応じて切り替えられる。
【0029】
具体的には、マルチプレクサ16Bは、リファレンス信号Vrefの電圧レベルが所定の閾値である電圧VTHよりも低いときには、バッファ回路15Bによりシフトアップされた入力信号Vmonを選択し、リファレンス信号Vrefの電圧レベルが所定の閾値である電圧VTHよりも低くないときには、入力信号Vmonを選択して、NMOS差動対回路21へ供給する第2の選択回路を構成する。
【0030】
このとき、選択回路である各マルチプレクサ16A、16Bは、選択信号SSに基づいて、レベルシフト回路によりシフトアップされた入力信号あるいはそのままの入力信号を選択して、NMOS差動対回路21へ供給する。よって、デコーダ11は、リファレンス信号Vrefのデジタル信号に基づいて、選択信号SSをマルチプレクサ16A、16Bに出力する選択指示回路を構成する。
なお、バッファ回路15A及び15Bは、ソースフォロワであるが、ボルテージフォロワ回路でもよい。
【0031】
図2に示すように、コンパレータ3の差動増幅器14は、NMOSトランジスタ21Aと21BからなるNMOS差動対回路21と、電流源22と、電流電圧変換回路23を含む。
【0032】
NMOSトランジスタ21Aのゲートは、接続点CAと接続されている。NMOSトランジスタ21Bのゲートは、接続点CBと接続されている。
2つのNMOSトランジスタ21A及び21Bのソースは、電流源22に接続されている。2つのNMOSトランジスタ21A及び21Bのドレインは、電流電圧変換回路23に接続されている。
【0033】
差動増幅器14は、NMOSトランジスタにより構成されるNMOS差動対回路21を有し、NMOS差動対回路21は、第1の入力信号であるリファレンス信号Vrefと第2の入力信号である入力信号Vmonが入力され、リファレンス信号Vrefと入力信号Vmonとの差に応じた信号を出力する。
【0034】
電流電圧変換回路23は、アンプなどを含み、2つのNMOSトランジスタ21A及び21Bに流れる電流に基づいて、入力信号Vmonが、リファレンスコード信号RCに対応するリファレンス信号Vref以上になると、あるいはリファレンス信号Vref以下になると、検出信号ASを生成して制御回路4へ出力する。
(作用)
次に、上述した電圧監視装置1の動作について説明する。
【0035】
コンパレータの閾値を示すリファレンスコード信号RCがDAC部2に入力されると、デコーダ11は、リファレンスコード信号RCが所定の値TH以上であるか否かに応じた選択信号SSを出力する。
【0036】
ここでは、所定の値THに対応する閾値電圧VTHが、例えば、電源電圧VDDの半分、すなわちVDD/2に応じた値であるとする。リファレンスコード信号RCが所定の値TH以上であると、デコーダ11は、スイッチ19A及び19Bをオンし、スイッチ20A及び20Bをオフする選択信号SSを、マルチプレクサ16A及び16Bに供給する。リファレンスコード信号RCが所定の値TH未満であると、デコーダ11は、スイッチ19A及び19Bをオフし、スイッチ20A及び20Bをオンする選択信号SSを、マルチプレクサ16A及び16Bに供給する。
【0037】
すなわち、デコーダ11は、リファレンスコード信号RCに応じた選択信号SSを生成してマルチプレクサ16A,16Bに出力し、リファレンス信号Vref及び入力信号VmonをそのままNMOS差動対回路21に供給するか、あるいはリファレンス信号Vref及び入力信号Vmonをそれぞれレベルシフトして供給するかの切り替えが行われる。
【0038】
よって、リファレンス信号Vrefの電圧レベルが所定の閾値である電圧VTHよりも低いときには、入力回路13Aは、リファレンス信号Vrefの電圧レベルを上げてNMOS差動対回路21へ入力し、入力回路13Bは、入力信号Vmonの電圧レベルを上げてNMOS差動対回路21へ入力する。
【0039】
具体的には、入力回路13Aは、リファレンス信号Vrefの電圧レベルが所定の閾値である電圧VTHよりも低いときには、リファレンス信号Vrefの電圧レベルを上げるためにバッファ回路15Aによりシフトアップされたリファレンス信号VrefをNMOS差動対回路21へ供給し、リファレンス信号Vrefの電圧レベルが所定の閾値である電圧VTHよりも低くないときには、リファレンス信号VrefをそのままNMOS差動対回路21へ供給する。
【0040】
入力回路13Bは、リファレンス信号Vrefの電圧レベルが所定の閾値である電圧VTHよりも低いときには、入力信号Vmonの電圧レベルを上げるためにバッファ回路15Bによりシフトアップされた入力信号VmonをNMOS差動対回路21へ供給し、リファレンス信号Vrefの電圧レベルが所定の閾値である電圧VTHよりも低くないときには、入力信号VmonをそのままNMOS差動対回路21へ供給する。
【0041】
図3は、リファレンス信号Vrefと閾値電圧VTHの関係を示す図である。図3において、リファレンス信号Vrefは、電源電圧(VDD)とグラウンド(GND)の間の所定の範囲Rv内の任意の電圧レベルを取り得る。上述したように、閾値電圧VTHは、リファレンスコード信号RCの所定の値THに対応する電圧レベルである。
【0042】
リファレンス信号Vrefが閾値電圧VTH以上であると、デコーダ11は、スイッチ19A及び19Bをオンしてスイッチ20A及び20Bをオフする選択信号SSを、マルチプレクサ16A及び16Bに供給する。その結果、NMOSトランジスタ21Aのゲートには、リファレンス信号Vrefがそのまま与えられ、NMOSトランジスタ21Bのゲートには、入力信号Vmonがそのまま与えられる。
【0043】
図3に示すように、リファレンス信号VrefがVDD/2から電源電圧VDDまでの範囲Rnにあるときは、リファレンス信号Vref及び入力信号VmonがそのままNMOS差動対回路21へ入力され、入力信号Vmonがリファレンス信号Vrefの電圧レベルと交差すると検出信号ASを出力する。
【0044】
リファレンス信号Vrefが閾値電圧VTH未満であると、デコーダ11は、スイッチ19A及び19Bをオフしてスイッチ20A及び20Bをオンする選択信号SSを、マルチプレクサ16A及び16Bに供給する。その結果、NMOSトランジスタ21Aのゲートには、バッファ回路15Aの出力が与えられ、NMOSトランジスタ21Bのゲートには、バッファ回路15Bの出力が与えられる。
【0045】
よって、リファレンス信号Vref及び入力信号Vmonの各電圧レベルが、VDD/2からグラウンド(GND)までの範囲Rpにあるときは、各々がレベルシフトされた入力信号Vmon及びリファレンス信号VrefがNMOS差動対回路21へ入力され、入力信号Vmonがリファレンス信号Vrefの電圧レベルと交差すると検出信号ASを出力する。
【0046】
ここで、リファレンス信号Vrefが与えられるPMOSトランジスタ18Aに着目すると、PMOSトランジスタ18Aに流れる電流Idは、次の式(1)で表される。
ここで、βは、次の式(2)で表される。
Vgsは、PMOSトランジスタ18Aのゲート・ソース間電圧であり、Vthは、PMOSトランジスタ18Aのスレッショルド電圧であり、μは、正孔の移動度であり、Coxは、酸化膜の静電容量であり、Wは、ゲート幅であり、Lは、ゲート長である。
【0047】
また、PMOSトランジスタのゲート・ソース間電圧Vgsは、次の式(3)で表される。
Vinは、PMOSトランジスタ18Aのゲートに与えられる電圧であり、Voutは、PMOSトランジスタ18Aの出力電圧すなわちソース電圧である。
【0048】
式(1)と式(3)から、PMOSトランジスタ18Aのソース電圧は、次の式(4)で表される電圧となる。
すなわち、PMOSトランジスタ18Aのソース電圧は、ゲート電圧であるリファレンス信号Vrefを、PMOSトランジスタ18Aのゲート・ソース間電圧Vgs分だけレベルシフトして電圧レベルを上げる。よって、NMOS差動対回路21の入力レンジは、PMOSソースフォロワによるゲート・ソース間電圧Vgs分のレベルシフトより、グラウンド(GND)側に低下し、結果として、PMOS差動対回路と同等の入力レンジを有する。
式(4)から次のことが分かる。電流Idは、電流源17A(17B)により、定量として与えられる。Vth及びβは、PMOSトランジスタ18A(18B)の物理パラメータにより決まる定数であるため、式(4)の右辺の第2及び第3項は、定数となる。これは、VoutとVinとの差が常に一定値となることを意味する。
電流源17Aと18A並びにPMOSトランジスタ18Aと18Bは、それぞれ合同となるように設計されるため、双方の式(4)の定数値は一致する。PMOSトランジスタ18A及び18Bのゲート入力の直・交流性や電圧絶対値の違いは、Vgsでは、打ち消される。PMOSトランジスタ18A及び18Bでは、NBTI劣化が生じるが、Vgsが同一値ならばNBTI劣化の差は付きづらい。同等に劣化することにより、コンパレータの精度が大きく損なわれることはない。
【0049】
すなわち、リファレンス信号Vrefは、その信号レベルに応じて、NMOS差動対回路の一方のNMOSトランジスタのゲートに供給するときに、そのまま供給されるか、あるいはレベルシフトして供給される。特に、リファレンス信号Vrefが低い値であるとき、ドレイン接地されたPMOSトランジスタによりリファレンス信号Vrefをレベルシフトして、リファレンス信号VrefをNMOSトランジスタのゲートに供給する。
【0050】
図4は、電圧監視装置1の作用を説明するための2つの入力信号の波形図である。
低電圧レベルの直流のリファレンス信号Vrefに対して、入力信号Vmonの電圧レベルが高く、入力信号Vmonが一定周期で所定の変化をするときに、入力信号Vmonがリファレンス信号Vrefを超えるかが監視される。入力信号Vmonは、例えば、モータに設けられたセンサの正弦波の出力信号である。
【0051】
すなわち、電圧監視装置1は、異常電圧検出のために利用されるときに、時間tの経過と共に、周期的に変化する入力信号Vmonに対して、リファレンス信号Vrefは、一定電圧である。
【0052】
入力信号Vmonの電圧値が、リファレンス信号Vrefと一致したときに、異常発生として、異常検出信号としての検出信号ASが制御回路4へ出力される。図4では、点APにおいて異常検出信号が出力されて、電圧異常が検出される。
【0053】
以上のように、上述した実施形態によれば、広い入力電圧レンジの入力信号に対応可能で、NBTI劣化の影響を受けにくく、かつ回路規模を小さくすることができるコンパレータを実現することができる。
【0054】
特に、NMOS差動対回路を使用していながら従来のレール・トゥ・レール並みの入力電圧レンジを実現可能であり、結果として回路規模も大きくならない。
そして、リファレンス信号Vrefは、デジタル信号のリファレンスコード信号RCによって設定され、そのリファレンス信号Vrefの設定と、各マルチプレクサ16A,16Bにおける入力の切り替えとが連動して、リファレンス信号Vrefの電圧レベルに応じた入力回路の経路が選択される。
【0055】
なお、上述した実施形態では、選択信号SSは、DAC部2のデコーダ11の出力信号から生成しているが、選択信号SSは、電圧監視装置1の外部から得るようにしてもよい。
【0056】
さらになお、上述した実施形態では、2つの入力回路13A,13Bが設けられているが、入力回路13Bはなくてもよい。例えば、監視対象である入力信号Vmonの電圧が、電源電圧に近い、中電圧帯から高電圧帯に限定できる場合などは、あえて入力信号Vmonをシフトアップする必要はなく、そのような場合は、入力回路13Bは省略してもよい。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として例示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 電圧監視装置、2 デジタルアナログ変換部、3 コンパレータ、4 制御回路、11 デコーダ、12 デジタルアナログ変換器、13A,13B 入力回路、14 差動増幅器、15A、15B バッファ回路、16A,16B マルチプレクサ、17A、17B 電流源、18A、18B トランジスタ、19A、19B、20A、20B スイッチ、21 差動対回路、21A、21B トランジスタ、22 電流源、23 電流電圧変換回路。
図1
図2
図3
図4