前記第1インピーダンス素子は、前記スイッチングトランジスタのオン、オフにかかわらず固定的にオンするようバイアスされた第2トランジスタを含むことを特徴とする請求項2に記載の制御回路。
前記検出トランジスタがオンしたことを条件として、前記スイッチングトランジスタのスイッチングを停止することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
前記過電流検出信号のアサートが、所定サイクル数内に所定の判定回数を超えて発生すると、過電流状態と判定する判定回路をさらに備えることを特徴とする請求項6または7に記載の制御回路。
前記過電流検出信号のアサートが、所定回数、連続して発生すると、過電流状態と判定する判定回路をさらに備えることを特徴とする請求項6または7に記載の制御回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、
図1のDC/DCコンバータ900の過電流保護について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0009】
DC/DCコンバータ900の異常モードのひとつとして、出力端子904が地絡する異常(出力ショートという)が知られている。
図2(a)、(b)は、
図1のDC/DCコンバータの過電流保護を説明する図である。
図2(a)は、出力ショート時の動作を表している。
【0010】
電流センス回路920および過電流検出回路922、パルス変調器910、ドライバ912は、遅延を有する。ドレイン電流I
M1がしきい値I
OCPに達すると、電流センス回路920(主として電圧コンパレータ)および過電流検出回路922の応答遅延τ
1の経過後に過電流検出(OCP)信号S
OCPがアサート(ポジエッジ)される。OCP信号S
OCPのアサートの後、パルス変調器910やドライバ912の応答遅延τ
2の経過後に、スイッチングトランジスタM
1がターンオフする。これらの遅延時間τ
DELAY=τ
1+τ
2の間に、ドレイン電流I
M1はしきい値I
OCPを超えて上昇する。このパルスバイパルスの過電流保護の真のしきい値は、スイッチングトランジスタM
1がターンオフする瞬間のI
OCP’となる。
【0011】
出力ショートでは、スイッチングトランジスタM
1のドレイン電流I
M1は、インダクタL
1を経由して流れる。したがって、ドレイン電流I
M1の増加の傾きはインダクタL
1のインダクタンスの制約を受ける。したがって遅延時間τ
DELAYおよびドレイン電流I
M1の傾きを考慮して、しきい値I
OCPを所望の真のしきい値I
OCP’より低く設定することで、ドレイン電流I
M1を所望のしきい値I
OCP’にクランプすることができる。
【0012】
出力ショートとは別に、DC/DCコンバータ900の動作中に、スイッチングトランジスタM
1と同期整流トランジスタM
2の接続ノード(スイッチング端子SW)が地絡する異常(SW端子ショートという)が発生するおそれがある。
図2(b)は、SW端子ショートにおける動作を表す。SW端子ショートの場合、ドレイン電流I
M1はインダクタL
1を経由せずに流れるため、ドレイン電流I
M1は、急峻な速度で増加する。その結果、同じ遅延時間τ
DELAYの間に、ドレイン電流I
M1は、所望のしきい値I
OCP’を大きく超えてしまう。
【0013】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、過電流状態を高速に検出可能なDC/DCコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある態様は、降圧型のDC/DCコンバータの制御回路に関する。制御回路は、入力電圧V
INを受ける入力ラインと、ソースが入力ラインと接続されるPチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である検出トランジスタと、スイッチングトランジスタの電圧降下をV
DROPとするとき、V
IN−K×V
DROP(0<K<1)である電流センス信号V
CSを検出トランジスタのゲートに印加する電流センス回路と、を備え、検出トランジスタのオン、オフにもとづいて、異常の有無を検出可能に構成される。
【0015】
この態様によると、遅延の大きいコンパレータを用いていないため、高速な過電流検出が可能となる。また電流センス信号は、入力電圧との電位差となっているため、接地電圧を基準とした信号に変換する処理が不要であるため、さらに検出遅延を小さくできる。
【0016】
電流センス回路は、スイッチングトランジスタの両端間に直列に設けられたスイッチ素子および第1インピーダンス素子を含んでもよい。スイッチ素子はスイッチングトランジスタと同期してスイッチングするよう構成され、スイッチ素子と第1インピーダンス素子の接続点の電圧が、電流センス信号V
CSであってもよい。
【0017】
第1インピーダンス素子は、スイッチングトランジスタのオン、オフにかかわらず固定的にオンするようバイアスされた第2トランジスタを含んでもよい。
【0018】
制御回路は、入力電圧V
INより低い内部電源電圧V
REGBが発生する内部電源ラインと、検出トランジスタのドレインと内部電源ラインの間に設けられる第2インピーダンス素子と、を備えてもよい。検出トランジスタのドレイン電圧がハイレベルとなると異常と判定されてもよい。
【0019】
制御回路は、検出トランジスタがオンしたことを条件として、スイッチングトランジスタのスイッチングを停止してもよい。
【0020】
制御回路は、電流センス信号V
CSを、入力電圧V
INより所定電圧幅V
TH低いしきい値電圧V
OCPと比較し、電流センス信号V
CSの方が低いときに過電流検出信号をアサートする過電流検出コンパレータをさらに備えてもよい。制御回路は、過電流検出信号に応じて、パルスバイパルスの過電流保護を実行してもよい。
過電流検出コンパレータによる過電流検出と検出トランジスタによる過電流検出を併用することで、信頼性をさらに高めることができる。また過電流検出コンパレータによる過電流検出に関しても、電流センス信号は入力電圧との電位差となっているため、接地電圧を基準とした信号に変換する処理が不要であるため、検出遅延を小さくできる。
【0021】
制御回路は、電流センス信号V
CSを、入力電圧V
INより所定電圧幅V
TH低いしきい値電圧V
OCPと比較し、電流センス信号V
CSの方が低いときに過電流検出信号をアサートする過電流検出コンパレータをさらに備えてもよい。過電流検出信号がアサートされ、かつ検出トランジスタがオンしたことを条件として、スイッチングトランジスタのスイッチングを停止してもよい。
【0022】
制御回路は、過電流検出信号のアサートが、所定サイクル数内に所定の判定回数を超えて発生すると、過電流状態と判定する判定回路をさらに備えてもよい。
【0023】
制御回路は、過電流検出信号のアサートが、所定回数、連続して発生すると、過電流状態と判定する判定回路をさらに備えてもよい。
【0024】
制御回路は、過電流状態において、スイッチングトランジスタのスイッチングを停止してもよい。
【0025】
制御回路は、DC/DCコンバータの出力信号が目標電圧に近づくようにデューティ比が調節されるパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号にもとづいてスイッチングトランジスタを駆動するドライバと、をさらに備えてもよい。
【0026】
制御回路は、入力電圧V
INよりも所定電圧幅低い内部電源電圧V
REGBを生成する内部電源をさらに備えてもよい。パルス変調器の一部およびドライバは、入力ラインと、内部電源電圧V
REGBが発生する内部電源ラインとの間に設けられてもよい。
【0027】
制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0028】
本発明の別の態様はDC/DCコンバータに関する。DC/DCコンバータは上述のいずれかの制御回路を備える。
【0029】
本発明の別の態様は、車載電装機器に関する。車載電装機器は、上述のDC/DCコンバータを備える。
【0030】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0031】
本発明のある態様によれば、過電流状態を高速に検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0034】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0035】
また、「信号A(電圧、電流)が信号B(電圧、電流)に応じている」とは、信号Aが信号Bと相関を有することを意味し、具体的には、(i)信号Aが信号Bである場合、(ii)信号Aが信号Bに比例する場合、(iii)信号Aが信号Bをレベルシフトして得られる場合、(iv)信号Aが信号Bを増幅して得られる場合、(v)信号Aが信号Bを反転して得られる場合、(vi)あるいはそれらの任意の組み合わせ、等を意味する。「応じて」の範囲は、信号A、Bの種類、用途に応じて定まることが当業者には理解される。
【0036】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0037】
図3は、実施の形態に係るDC/DCコンバータ100の回路図である。DC/DCコンバータ100は同期整流型の降圧(Buck)コンバータであり、入力端子102に直流入力電圧V
INを受け、出力端子104に降圧された出力電圧V
OUTを発生する。DC/DCコンバータ100は、出力回路110および制御回路200を備える。本実施の形態では、一例として定電圧出力のDC/DCコンバータを説明する。
【0038】
出力回路110は、スイッチングトランジスタM
1、同期整流トランジスタM
2、インダクタL
1、出力キャパシタC
1、抵抗R
11,R
12を含む。本実施の形態においてスイッチングトランジスタM
1はPチャンネルMOSFETであり、同期整流トランジスタM
2はNチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、それらは制御回路200に内蔵されている。
【0039】
スイッチングトランジスタM
1と同期整流トランジスタM
2の接続点をスイッチング(SW)端子と称する。端子は、ピンと読み替えてもよい。インダクタL
1は、SW端子と出力端子104の間に設けられる。フィードバック(FB)端子には、制御対象である出力電圧V
OUTが入力されており、抵抗R
11、R
12は、出力電圧V
OUTを分圧して検出電圧(フィードバック信号)V
FBを生成する。抵抗R
11,R
12は
図1に示すように制御回路200に外付けされてもよい。
【0040】
制御回路200は、スイッチングトランジスタM
1、同期整流トランジスタM
2に加えて、パルス変調器210、ハイサイドドライバ232、ローサイドドライバ234および過電流保護回路240を備える。制御回路200は好ましくはひとつの半導体基板に一体集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。スイッチングトランジスタM
1のソースはVIN端子と、そのドレインはSW端子と接続される。また同期整流トランジスタM
2のドレインはSW端子と接続され、そのソースはGND端子と接続される。
【0041】
パルス変調器210は、DC/DCコンバータ100の状態もしくは出力端子104に接続される負荷(不図示)の状態が目標値に近づくように、スイッチングトランジスタM
1のオンオフを指示するパルス信号S
PWM(ハイサイドパルスS
Hともいう)および同期整流トランジスタM
2のオンオフを指示するローサイドパルスS
Lを生成する。
【0042】
上述のようにDC/DCコンバータ100は定電圧出力であり、パルス変調器210は、DC/DCコンバータ100の出力電圧V
OUTを制御対象とする。具体的にはパルス変調器210は、フィードバック電圧V
FBがその目標値V
REFに近づくように、パルス信号S
PWMを生成する。
【0043】
パルス変調器210は公知技術を用いればよく、その制御方式や構成は特に限定されない。制御方式に関しては、電圧モード、ピーク電流モード、平均電流モード、ヒステリシス制御(Bang-Bang制御)、ボトム検出オン時間固定(COT:Constant On Time)方式などを採用しうる。またパルス信号S
PWMの変調方式としては、その限りではないが、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)が採用しうる。パルス変調器210の構成に関しては、エラーアンプやコンパレータを用いたアナログ回路で構成してもよいし、デジタル演算処理を行うプロセッサで構成してもよいし、アナログ回路とデジタル回路の組み合わせで構成してもよい。またパルス変調器210は、負荷の状態に応じて制御方式を切りかえてもよい。
【0044】
パルス変調器210の動作モードは、負荷の状態に応じて可変であってもよい。たとえば重負荷状態ではパルス変調器210はPWMモードで動作し、軽負荷状態では、PFM(Pulse Frequency Modulation)モードで動作してもよい。PWMモード(特に電流連続モード)において、ハイサイドパルスS
HとローサイドパルスS
Lは相補的な信号となる。
【0045】
ハイサイドドライバ232はハイサイドパルスS
HにもとづきスイッチングトランジスタM
1を駆動し、ローサイドドライバ234はローサイドパルスS
Lにもとづき同期整流トランジスタM
2を駆動する。
【0046】
続いて過電流保護回路240について説明する。過電流保護回路240は、第1過電流検出回路242を備える。
【0047】
入力ライン202はVIN端子と接続され、入力電圧V
INが供給される。第1過電流検出回路242は、検出トランジスタM
21および電流センス回路244を含む。検出トランジスタM
21はPチャンネルMOSFETであり、そのソースが入力ライン202と接続される。電流センス回路244は、スイッチングトランジスタM
1の電圧降下をV
DROPとするとき、V
IN−K×V
DROP(0<K<1)である電流センス信号V
CSを生成し、検出トランジスタM
21のゲートに印加する。
V
CS=V
IN−K×V
DROP (0<K<1)
【0048】
スイッチングトランジスタM
1のオン抵抗をR
ONとするとき、その両端間には、ドレイン電流I
M1に比例した電圧降下V
DROP=R
ON×I
M1が発生する。したがって電流センス信号V
CSは、ドレイン電流I
M1と負の相関を有しており、ドレイン電流I
M1が増加するほど、電流センス信号V
CSは低下する。
V
CS=V
IN−K×R
ON×I
M1
【0049】
検出トランジスタM
21のゲートソース間には、V
IN−V
CS=K×R
ON×I
M1が印加される。検出トランジスタM
21は、ゲートソース間電圧V
GSが、ゲートソース間しきい値電圧V
GS(th)を超えるとターンオンする。つまり、
K×R
ON×I
M1>V
GS(th)
のとき、スイッチングトランジスタM
1はターンオンする。
【0050】
第1過電流検出回路242によれば、検出トランジスタM
21のオン、オフにもとづいて、異常の有無を検出でき、その過電流のしきい値I
OCP1は、
I
OCP1=V
GS(th)/(K×R
ON)
で与えられる。
【0051】
より詳しくは、電流センス回路244は、スイッチングトランジスタM
1の両端間に直列に設けられたスイッチ素子245および第1インピーダンス素子246を含む。スイッチ素子245としては後述のようにMOSトランジスタ(M
31)を用いることができ、スイッチ素子245はスイッチングトランジスタM
1と同期して、つまりハイサイドパルスS
Hに応じてスイッチングするよう構成される。第1インピーダンス素子246とスイッチ素子245は入れ替えてもよく、スイッチ素子245をハイサイドに設けてもよい。
【0052】
スイッチ素子245と第1インピーダンス素子246の接続点の電圧が、電流センス信号V
CSである。スイッチ素子245の抵抗値(オン抵抗)をZ
1、第1インピーダンス素子246の抵抗値をZ
2とするとき、K=Z
2/(Z
1+Z
2)となる。
【0053】
内部電源ライン204には、入力電圧V
INより低い内部電源電圧V
REGBが発生する。内部電源電圧V
REGBは、接地電圧(0V)であってもよいし、後述するように内部レギュレータにより生成した電圧であってもよい。
【0054】
第2インピーダンス素子248は、検出トランジスタM
21のドレインと内部電源ライン204の間に設けられる。第2インピーダンス素子248はたとえば抵抗である。
【0055】
検出トランジスタM
21がオフのとき、そのドレイン電圧は、第2インピーダンス素子248によって、内部電源電圧V
REGBにプルダウンされており、したがってローレベルとなる。検出トランジスタM
21がオンすると、そのドレイン電圧は入力電圧V
INとなり、したがってハイレベルとなる。検出トランジスタM
21のドレイン電圧を第1過電流検出(OCP)信号S
OCP1と称する。
【0056】
パルス変調器210は、第1OCP信号S
OCP1がハイレベルとなったこと、すなわち検出トランジスタM
21がオンしたことを条件として、スイッチングトランジスタM
1および同期整流トランジスタM
2のスイッチングを停止してもよい(ラッチ停止)。
【0057】
過電流保護回路240は、第1過電流検出回路242に加えて、第2過電流検出回路250および判定回路252をさらに備える。第2過電流検出回路250は、電流センス信号V
CSを入力電圧V
INより所定電圧幅V
TH低いしきい値電圧V
OCPと比較し、電流センス信号V
CSの方が低いときに第2過電流検出信号(第2OCP信号)S
OCP2をアサート(たとえばハイレベル)する。
V
OCP=V
IN−V
TH
V
CS=V
IN−K×R
ON×I
M1
【0058】
第2過電流検出回路250による過電流しきい値I
OCP2は、
I
OCP2=V
TH/(K×R
ON)
となる。
【0059】
パルス変調器210は、第2OCP信号S
OCP2のアサートに応答してパルスバイパルスの過電流保護を行う。第1OCP信号S
OCP1にもとづくラッチ停止保護が、第2OCP信号S
OCP2にもとづくパルスバイパルスの保護をさまたげないように、
I
OCP1>I
OCP2
を満たすように、言い換えればV
GS(th)>V
THとなるように回路パラメータが選択される。パルスバイパルスの過電流保護では高精度な電圧比較が要求されるため、第2過電流検出回路250は、電圧コンパレータを用いて構成される。
【0060】
判定回路252は、第2OCP信号S
OCP2にもとづいて定常的な過電流状態か否かを判定し、定常的な過電流状態と判定すると、過電流判定信号(OCP_DET信号)をアサート(たとえばハイレベル)する。パルス変調器210は、OCP_DET信号のアサートに応答して、スイッチングトランジスタM
1および同期整流トランジスタM
2のスイッチングを停止する(ラッチ停止保護)。
【0061】
たとえば判定回路252は、第2OCP信号S
OCP2のアサートが、所定サイクル数内に所定の判定回数を超えて発生すると、過電流状態と判定してOCP_DET信号をアサートする。これにより、第2OCP信号S
OCP2が間欠的にアサートされる持続的な過電流状態を確実に検出し、適切な保護を図ることができる。
【0062】
別の実施例において判定回路252は、第2OCP信号S
OCP2のアサートが、所定回数、連続して発生すると、過電流状態と判定してOCP_DET信号をアサートしてもよい。
【0063】
制御回路200は、第1OCP信号S
OCP1のアサート、あるいは過電流判定信号OCP_DET信号のアサートを、フラグピン(不図示)を介して、外部のコントローラに通知してもよい。
【0064】
以上がDC/DCコンバータ100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0065】
図4は、
図3のDC/DCコンバータ100の動作波形図である。
図4は、SW端子ショートが発生したときの動作を表す。SW端子ショートが発生すると、ドレイン電流I
M1は急速に増大していく。第1過電流検出回路242の応答遅延をτ
DELAY1、第2過電流検出回路250の応答遅延をτ
DELAY2とする。詳しくは後述するように、τ
DELAY1<τ
DELAY2が成り立っており、第1過電流検出回路242の方が第2過電流検出回路250よりも高速である。
【0066】
比較のために、第2過電流検出回路250のみを用いた場合のパルスバイパルスの過電流保護を一点鎖線で示す。一点鎖線で示すドレイン電流I
M1は、非常に大きな電流レベルI
PEAK2まで跳ね上がる。
【0067】
実線は、第1過電流検出回路242による過電流保護を表す。第1過電流検出回路242は、I
OCP1<I
M1となってから遅延時間τ
DELAY1の経過後に、スイッチングトランジスタM
1をターンオフすることができる。
【0068】
以上がDC/DCコンバータ100の動作である。
DC/DCコンバータ100によれば、ドレイン電流I
M1のピーク値I
PEAK1を、パルスバイパルスの過電流保護のピーク値I
PEAK2よりも低くすることができる。
【0069】
第1過電流検出回路242が高速である理由を説明する。第1の理由は、大きな遅延要素である電圧コンパレータを用いず、MOSFET(M
21)を電圧比較の手段として利用しているからである。
【0070】
第2の理由は、電流センス信号V
CSとして、入力電圧V
INを基準としてドレイン電流I
M1と負相関を有する信号を利用しているからである。従来の制御回路では、電流センス回路は、入力電圧V
INを基準としてドレイン電流I
M1と負の相関を有する信号を、接地電圧を基準としてドレイン電流I
M1と正の相関を有する信号に変換した後に、しきい値電圧V
OCPと比較していた。この基準/極性変換処理には、エラーアンプ(演算増幅器)が用いられるため、従来では電流センス回路における遅延が大きかった。本実施の形態では、この基準/極性変換処理が不要であるため、電流センス回路244における遅延を小さくできる。
【0071】
これらの2つの理由により、第1過電流検出回路242の高速応答性が実現されている。
【0072】
なお、本実施の形態では、第2過電流検出回路250の応答速度も、従来より高速化されている。なぜなら第2過電流検出回路250は、電流センス回路244が生成する電流センス信号V
CSを参照しており、したがって基準/極性変換処理が不要だからである。
【0073】
本発明は、
図3のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や変形例を説明する。
【0074】
図5は、第1過電流検出回路242の構成例を示す回路図である。スイッチ素子245は、第1トランジスタM
31およびインバータ247を含む。第1トランジスタM
31はNチャンネルMOSFETである。インバータ247はハイサイドパルスS
Hを反転し、第1トランジスタM
31のゲートに供給する。
【0075】
第1インピーダンス素子246としては抵抗を用いてもよいが、第1トランジスタM
31と同様に、MOSFETであることが好ましい。
図5では、第1インピーダンス素子246は第2トランジスタM
32を含む。第2トランジスタM
32はPチャンネルMOSFETであり、そのゲートは第2トランジスタM
32がスイッチングトランジスタM
1のオン、オフにかかわらず固定的にオンするようバイアスされている。たとえばバイアス電圧V
BIASはスイッチングトランジスタM
1のゲート電圧のローレベルと等しくてもよい。
【0076】
図5のように、第1インピーダンス素子246とスイッチ素子245を両方、MOSFETで構成することにより、プロセスばらつきや温度変動に対して、定数Kのばらつき、変動を小さくできる。
【0077】
過電流保護の変形例を説明する。
図4の保護動作では、第1OCP信号S
OCP1が1回アサートされると、直ちにスイッチングが停止する。したがって制御回路200のアプリケーション(たとえば劣悪なノイズ環境)によっては、SW端子ショートが生じていないにもかかわらず、ノイズの影響で検出トランジスタM
21がターンオンし、過電流状態を誤検出するおそれがある。
【0078】
図6は、変形例に係る過電流保護回路240Aの回路図である。過電流保護回路240Aは、第1OCP信号S
OCP1がアサートされ(検出トランジスタM
21がオンし)、かつ第2OCP信号S
OCP2がアサートされたときに、スイッチングトランジスタM
1のスイッチングを停止する(ラッチ停止)。たとえば過電流保護回路240Aは、
図3の過電流保護回路240に加えて論理ゲート254を含む。論理ゲート254は、S
OCP1とS
OCP2の論理積S
OCPを生成し、それらが両方アサートされたときに、ラッチ停止のトリガを発生する。
【0079】
図7(a)、(b)は、
図6の過電流保護回路240Aの動作波形図である。
図7(a)は、ノイズが発生する環境の動作を示す。
図7(a)は、I
M1<I
OCP2が成り立つ非過電流状態である。時刻t
0にノイズが検出トランジスタM
21のゲートに入力され、検出トランジスタM
21がターンオンすると、I
M1<I
OCP1であるにもかかわらず、第1OCP信号S
OCP1がアサートされる。一方、第2OCP信号S
OCP2はローレベルを維持しているため、論理積の信号S
OCPはローレベルを維持する。したがって時刻t
0のノイズの影響により、スイッチングは停止しない。
【0080】
図7(b)は、SW端子ショートが生じた状態を示す。時刻t
0に、ドレイン電流I
M1がしきい値I
OCP2を超え、時刻t
1にドレイン電流I
M1がしきい値I
OCP1を超える。第1OCP信号S
OCP1は時刻t
1から短い遅延(図ではゼロとしている)でアサートされる。一方、第2OCP信号S
OCP2は時刻t
0から大きい遅延τ
2の経過後にアサートされる。2つのOCP信号の論理積S
OCPは時刻t
1にアサートされ、論理積S
OCPのアサートをトリガとしてスイッチングが停止する。
【0081】
このように、
図6の過電流保護回路240Aによればノイズの影響を抑制できる。
なお
図7(b)に示すように、この変形例では一見、応答速度が第2過電流検出回路250によって制約されており、第1過電流検出回路242の利点が損なわれているように見えるが、必ずしもそうではない。
第1過電流検出回路242を設けない場合、第2過電流検出回路250がOCP_DET信号をアサートするまでの複数サイクルにわたり、ドレイン電流I
M1がピーク電流I
PEAK2に達する状態が繰り返される。これに対して
図7(b)では、ドレイン電流I
M1が1回だけピーク電流I
PEAK2に達した後に、スイッチングを停止でき、第1過電流検出回路242による高速応答性の利点を享受できている。
【0082】
図8は、制御回路の構成例(200A)を示す回路図である。制御回路200Aは上側の電源プレーンと、下側の電源プレーンに分割されている。
【0083】
内部電源220は、入力電圧V
INよりも所定電圧幅ΔV低い内部電源電圧V
REGBを生成する。上側電源プレーンは、入力ライン202および内部電源ライン204に挟まれており、入力電圧V
INを上側電源電圧、内部電源電圧V
REGBを下側電源電圧とする。過電流保護回路240およびハイサイドドライバ232は、上側電源プレーンに設けられる。
【0084】
また内部電源220は、接地電圧V
GND(0V)よりΔV高い内部電源電圧V
REGAを生成する。パルス変調器210A、オシレータ260、ローサイドドライバ234は、下側電源プレーンに設けられる。下側電源プレーンは、内部電源ライン206と接地ライン208に挟まれており、内部電源電圧V
REGAを上側電源電圧、接地ライン208の接地電圧V
GNDを下側電源電圧とする。たとえばV
IN=12V、V
REGB=7V、V
REGA=5V、V
GND=0Vであってもよい。
【0085】
パルス変調器210Aは、ピーク電流モードのパルス幅変調器である。パルス変調器210Aは、エラーアンプ212、PWMコンパレータ214、スロープ補償器216、メインロジック218を備える。エラーアンプ212は、基準電圧V
REFとフィードバック電圧V
FBとの誤差を増幅し、誤差信号V
ERRを生成する。
【0086】
過電流保護回路240の内部の電流センス回路244が生成した電流センス信号V
CSは、レベルシフタ211によって、接地電圧基準でかつドレイン電流と正の相関を有する電流センス信号V
CS’に変換(レベルシフト)される。
【0087】
スロープ補償器216は、レベルシフタ221を経由した電流センス信号V
CS’にスロープ信号V
SLOPEを重畳する。
【0088】
PWMコンパレータ214は、誤差信号V
ERRと、スロープ補償後の電流センス信号V
CS"を比較し、電流センス信号V
CS"が誤差信号V
ERRとクロスすると、リセット信号S
RESETをアサート(たとえばハイレベル)する。メインロジック218は、リセット信号S
RESETのアサートに応答して、パルス信号S
PWM(ハイサイドパルスS
H)を、スイッチングトランジスタM
1のオフに対応するレベル(オフレベル、たとえばロー)に遷移させる。
【0089】
オシレータ260は、所定の周波数のセット信号S
SETを生成する。メインロジック218はセット信号S
SETのエッジに応答して、パルス信号S
PWMを、スイッチングトランジスタM
1のオンに対応するレベル(オンレベル、たとえばハイ)に遷移させる。またメインロジック218は、ローサイドパルスS
Lを生成する。ハイサイドパルスS
Hは、レベルシフタ222を経由して、ハイサイドドライバ232に供給される。
【0090】
過電流保護回路240が生成したOCP信号S
OCP1,S
OCP2,OCP_DET信号は、レベルシフタ223を経由してメインロジック218に入力される。
【0091】
以上が制御回路200Aの構成である。この制御回路200Aによれば、過電流保護回路240は上側電源プレーンに配置されており、下側電源プレーンとのレベルシフトや極性変換が不要であるため、高速に、OCP信号S
OCP1,S
OCP2,OCP_DET信号を生成できる。
【0092】
図9は、制御回路の別の構成例(200B)を示す回路図である。この構成例200Bでは、パルス変調器210Bの一部、ハイサイドドライバ232およびオシレータ260が上側電源プレーンに配置される。パルス変調器210Bの残りの一部とローサイドドライバ234は、下側電源プレーンに配置される。
【0093】
誤差信号V
ERRは、レベルシフタ224によってV
REGB基準にレベルシフトされ、PWMコンパレータ214に供給される。PWMコンパレータ214は、レベルシフト後の誤差信号V
ERRと、スロープ補償後の電流センス信号V
CS’を比較し、電流センス信号V
CS’が誤差信号V
ERRとクロスすると、リセット信号S
RESETをアサート(たとえばハイレベル)する。メインロジック218は、リセット信号S
RESETのアサートに応答して、パルス信号S
PWM(ハイサイドパルスS
H)を、スイッチングトランジスタM
1のオフに対応するレベル(オフレベル、たとえばロー)に遷移させる
【0094】
メインロジック218が生成したローサイドパルスS
Lは、レベルシフタ225によって、接地電圧V
GNDを基準とする電圧にレベルシフトされ、ローサイドドライバ234に入力される。
【0095】
以上が制御回路200Bの構成である。この制御回路200Bでは、過電流保護回路240が生成した信号S
OCP1,S
OCP2,OCP_DET信号が、レベルシフタを経ずに、メインロジック218に入力され、スイッチングトランジスタM
1がターンオフされる。したがって、レベルシフタに起因する遅延が発生しないため、さらに高速な過電流保護が可能となる。
【0096】
また制御回路200Bは、ピーク電流モードのフィードバックループも高速である。なぜなら、ピーク電流モードの制御で使用される電流センス信号V
CSが、下側電源プレーンに送られず、上側電源プレーンでハイサイドパルスS
Hが生成されるからである。
【0097】
(用途)
図10は、DC/DCコンバータ100を備える車載電装機器300のブロック図である。車載電装機器300は、DC/DCコンバータ100に加えて、バッテリ302、マイコン304、負荷306を備える。バッテリ302は、たとえば12V(あるいは24V)のバッテリ電圧V
BATを生成する。DC/DCコンバータ100はバッテリ電圧V
BATを入力電圧V
INとして受け、負荷306に最適な電圧レベルを有する出力電圧V
OUTを生成する。負荷306は特に限定されず、各種ECU(Electronic Control Unit)、オーディオ回路、カーナビゲーションシステムなどが例示される。マイコン304は、車載電装機器300を統合的に制御するホストプロセッサであり、制御回路200に対してEN信号を出力する。また、制御回路200のFLG端子を監視し、OCP_DET信号のアサートを検出すると、適切な保護処理を実行する。
【0098】
車載電装機器300には、電子機器よりもさらに高い信頼性が要求される。実施の形態に係るDC/DCコンバータ100は、車載電装機器300など高い信頼性が要求される用途に好適である。
【0099】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0100】
(第1変形例)
実施の形態ではスイッチングトランジスタM
1や同期整流トランジスタM
2がMOSFETである場合を説明したが、本発明はそれには限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0101】
(第2変形例)
第1過電流検出回路242は、MOSFETのゲートソース間しきい値電圧V
GS(th)を利用するため、電圧コンパレータに比べて検出精度が劣るが、しきい値V
GS(th)やスイッチングトランジスタM
1のオン抵抗R
ONを注意深く設計すれば、高精度な電圧比較も可能である。
【0102】
実施の形態では、検出トランジスタM
21がひとつであったが、複数のトランジスタをカスコード接続(縦積み)して構成してもよい。これにより、段数に応じてしきい値を最適化できる。
【0103】
(第3変形例)
実施の形態では、第1過電流検出回路242によるSW端子ショートの保護を説明したが、第1過電流検出回路242の保護対象はそれに限定されず、当然に出力ショートの保護などにも有効である。
【0104】
(第4変形例)
パルス変調器210の制御方式は、ピーク電流モードには限定されず、過電流保護回路240はその他の制御方式との組み合わせにおいても有用である。
【0105】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。