前記パルス変調器は、第1の非反転入力に前記出力ソフトスタート電圧を受け、第2の非反転入力に前記第2基準電圧を受け、反転入力に前記DC/DCコンバータの前記出力信号に応じたフィードバック電圧を受ける第2エラーアンプを含むことを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器には、EMC(Electro-Magnetic Compatibility:電磁両立性)、すなわち電磁的に他の機器に悪影響を及ぼさない不干渉性と、他の機器から電磁的に悪影響を受けない耐性とが求められる。前者は、電磁妨害(EMI:Electro Magnetic Interference)として評価され、後者は電磁感受性(EMS:Electro Magnetic Susceptibility)として評価される。EMCに関しては、CISPR(国際無線障害特別委員会)などが、機器がクリアすべき規格を策定している。
【0007】
DC/DCコンバータはノイズ源として知られている。したがってDC/DCコンバータを搭載した機器においては、EMC規格をクリアするために、DC/DCコンバータにおいてEMIを抑制するための対策が求められる。
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ノイズ対策が可能なDC/DCコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、DC/DCコンバータの制御回路に関する。制御回路は、スイッチング周波数を規定するための外部抵抗を接続すべき周波数設定端子と、時間とともに周期的に変動するスペクトラム拡散電圧を生成するスペクトラム拡散回路と、第1基準電圧とスペクトラム拡散電圧のうち低い方に応じた周波数設定電圧を、周波数設定端子に印加する電圧選択回路と、外部抵抗に流れる電流に応じた周波数で発振するオシレータと、オシレータが生成する発振信号に応じた周波数を有し、DC/DCコンバータの出力信号が目標電圧に近づくようにデューティ比が調節されるパルス信号を生成するパルス変調器と、を備える。
【0010】
この態様によると、周波数設定端子の周波数設定電圧を変動させることにより、オシレータの発振周波数を変動させ、これによりスイッチング周波数をスペクトラム拡散することが可能となり、ノイズ規格をクリヤしやすくなる。
【0011】
スペクトラム拡散電圧のピーク電圧は、第1基準電圧より低くてもよい。これにより、スイッチング周波数が第1基準電圧でクリップされるのを防止でき、スペクトルが集中するのを防止できる。
【0012】
制御回路は、DC/DCコンバータの起動時に、時間とともに緩やかに上昇する周波数ソフトスタート電圧を生成するソフトスタート回路をさらに備えてもよい。電圧選択回路は、第1基準電圧およびスペクトラム拡散電圧に加えて、周波数ソフトスタート電圧を受け、それらのうち最も低いひとつに応じた周波数設定電圧を、周波数設定端子に印加してもよい。
ソフトスタート期間において、スイッチング周波数が緩やかに増大し、その逆数であるスイッチング周期は短くなっていく。つまり、起動直後のデューティ比が小さい状態では、スイッチング周期が長くなるため、デューティ比とスイッチング周期の積に応じたパルス幅を最小パルス幅より大きい状態に維持することができる。これによりパルススキップを抑制でき、出力信号のリップルやオーバーシュートを抑制できる。
【0013】
スペクトラム拡散電圧は、周波数ソフトスタート電圧が第1基準電圧に到達した後に有効となってもよい。
【0014】
スペクトラム拡散回路は有効、無効が切りかえ可能であってもよい。スペクトラム拡散を行わなくてもノイズ規格をクリアできる場合には、スペクトラム拡散回路を無効化することで、周波数を安定化できる。
【0015】
電圧選択回路は、一端が周波数設定端子と接続される第1トランジスタと、一端が第1トランジスタの制御端子と接続され、他端が接地され、制御端子に第1基準電圧が印加される第2トランジスタと、一端が第1トランジスタの制御端子と接続され、他端が接地され、制御端子にスペクトラム拡散電圧が印加される第3トランジスタと、を含んでもよい。
この構成によれば、第1基準電圧とスペクトラム拡散電圧のうち、低い方を、周波数設定電圧とすることができる。
【0016】
電圧選択回路は、一端が周波数設定端子と接続される第1トランジスタと、第1の非反転入力にスペクトラム拡散電圧を受け、第2の非反転入力に第1基準電圧を受け、反転入力が周波数設定端子と接続され、出力が第1トランジスタの制御端子と接続される第1エラーアンプと、を含んでもよい。
この構成によれば、第1基準電圧とスペクトラム拡散電圧のうち、低い方を、周波数設定電圧とすることができる。
【0017】
DC/DCコンバータの起動時に、目標電圧は、時間とともに緩やかに上昇する出力ソフトスタート電圧と第2基準電圧のうち低い方に応じていてもよい。周波数ソフトスタート電圧と出力ソフトスタート電圧は比例関係にあってもよい。
パルス信号のデューティ比は、出力ソフトスタート電圧に応じて増大する。一方、パルス信号の周波数は周波数ソフトスタート電圧に比例して増大し、その周期は周波数ソフトスタート電圧に反比例して減少する。したがって周波数ソフトスタート電圧と出力ソフトスタート電圧が実質的に比例関係を有するとき、パルス信号のデューティ比とパルス周期の積、すなわちパルス幅の変動を小さくすることができる。また2つのソフトスタート電圧を生成するハードウェアの一部あるいは全部を共通化できるため、回路面積の増大を抑制できる。
【0018】
パルス変調器は、第1の非反転入力に出力ソフトスタート電圧を受け、第2の非反転入力に第2基準電圧を受け、反転入力にDC/DCコンバータの出力信号に応じたフィードバック電圧を受ける第2エラーアンプを含んでもよい。
【0019】
電圧選択回路は、一端が周波数設定端子と接続される第1トランジスタと、一端が第1トランジスタの制御端子と接続され、他端が接地され、制御端子に第1基準電圧が印加される第2トランジスタと、一端が第1トランジスタの制御端子と接続され、他端が接地され、制御端子にスペクトラム拡散電圧が印加される第3トランジスタと、一端が第1トランジスタの制御端子と接続され、他端が接地され、制御端子に周波数ソフトスタート電圧が印加される第4トランジスタと、を含んでもよい。
この構成によれば、第1基準電圧、周波数ソフトスタート電圧およびスペクトラム拡散電圧のうち最も低いひとつを周波数設定電圧とすることができる。
【0020】
本発明の別の態様もまた、DC/DCコンバータの制御回路に関する。制御回路は、スイッチング周波数を規定する外部抵抗を接続すべき周波数設定端子と、DC/DCコンバータの起動時に、時間とともに緩やかに上昇し、その後、時間とともに周期的に変動する周波数設定電圧を周波数設定端子に印加する周波数設定回路と、外部抵抗に流れる電流に応じた周波数で発振するオシレータと、オシレータが生成する発振信号に応じた周波数を有し、DC/DCコンバータの出力信号が目標電圧に近づくようにデューティ比が調節されるパルス信号を生成するパルス変調器と、を備える。
【0021】
ある態様において制御回路はひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0022】
本発明の別の態様はDC/DCコンバータに関する。DC/DCコンバータは上述のいずれかの制御回路を備える。
【0023】
本発明の別の態様は、車載電装機器に関する。車載電装機器電源は、上述のDC/DCコンバータを備える。
【0024】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0025】
さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明のある態様によれば、DC/DCコンバータによるノイズ対策が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0029】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさず、あるいは機能を阻害しない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0030】
また、「信号A(電圧、電流)が信号B(電圧、電流)に応じている」とは、信号Aが信号Bと相関を有することを意味し、具体的には、(i)信号Aが信号Bである場合、(ii)信号Aが信号Bに比例する場合、(iii)信号Aが信号Bをレベルシフトして得られる場合、(iv)信号Aが信号Bを増幅して得られる場合、(v)信号Aが信号Bを反転して得られる場合、(vi)あるいはそれらの任意の組み合わせ、等を意味する。「応じて」の範囲は、信号A、Bの種類、用途に応じて定まることが当業者には理解される。
【0031】
本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0032】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に関連する課題を説明する。DC/DCコンバータ900ではその起動直後に、出力キャパシタC
1への突入電流を防止するため、出力電圧V
OUTを緩やかに上昇させるソフトスタート制御が行われる。
図2(a)は、ソフトスタート制御を説明する図である。
【0033】
ソフトスタート回路914は、時間とともに緩やかに変化するソフトスタート電圧V
SSを生成する。パルス変調器910には、出力電圧V
OUTを抵抗R
11,R
12によって分圧して得られるフィードバック信号V
FBが入力される。パルス変調器910は、起動直後のソフトスタート期間において、フィードバック信号V
FBがソフトスタート電圧V
SSに追従するようにパルス信号S
PWMを生成し、ソフトスタートの完了後に、フィードバック信号V
FBが基準電圧V
REFと一致するようにパルス信号S
PWMを生成する。
【0034】
本発明者は、スイッチング周波数が高いDC/DCコンバータについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0035】
図2(b)は、スイッチング周波数の高いDC/DCコンバータで生ずる問題を説明する図である。パルス信号S
PWMのデューティ比は、入力電圧V
INと出力電圧V
OUTの比に応じて定まる。起動直後において入力電圧V
INと出力電圧V
OUTの比が大きいため、パルス信号S
PWMのデューティ比は非常に小さくなる。パルス信号S
PWMのパルス幅は、デューティ比とスイッチング周期(PWM周期)の積であるところ、スイッチング周波数の高いDC/DCコンバータでは、パルス信号S
PWMのパルス幅が非常に短くなる。
【0036】
パルス発生器910やドライバ912は、応答遅延を有する。スイッチングトランジスタM
1を有効にターンオンすることができるパルス幅には、応答遅延に起因する下限が存在する。またパルス発生器910自体が発生できるパルス幅にも、応答遅延に起因する下限が存在する。ソフトスタート期間において、パルス信号S
PWMのパルス幅が、これらの下限(最小パルス幅T
MINとする)より短くなると、サイクルバイサイクルでスイッチングトランジスタM
1をスイッチングさせることができず、パルスの歯抜け(パルススキップという)が発生する。スイッチングトランジスタM
1がターンオンしないサイクルでは、出力電圧V
OUTが上昇せず、したがってフィードバック信号V
FBとソフトスタート電圧V
SSの誤差が大きくなる。そうすると、次のサイクルではパルス信号S
PWMのデューティ比が大きくなり、1サイクルでの出力電圧V
OUTの変動幅が大きくなる。
【0037】
このような動作によって、スイッチング周波数が高いDC/DCコンバータでは、ソフトスタート期間中の出力電圧V
OUTのリップル幅が大きくなり、あるいはオーバーシュートが発生し、起動が不安定になるという問題が生ずる。この問題は特に、ソフトスタート時間が長いアプリケーションにおいて顕著となる。
【0038】
以上が、第1の実施の形態に関連する課題である。
【0039】
図3は、第1の実施の形態に係るDC/DCコンバータ100Aの回路図である。DC/DCコンバータ100Aは同期整流型の降圧(Buck)コンバータであり、入力端子102に直流入力電圧V
INを受け、出力端子104に降圧された出力電圧V
OUTを発生する。DC/DCコンバータ100Aは、出力回路110および制御回路200Aを備える。本実施の形態では、一例として定電圧出力のDC/DCコンバータを説明する。
【0040】
出力回路110は、スイッチングトランジスタM
1、同期整流トランジスタM
2、インダクタL
1、出力キャパシタC
1、抵抗R
11,R
12を含む。本実施の形態においてスイッチングトランジスタM
1はPチャンネルMOSFETであり、同期整流トランジスタM
2はNチャンネルMOSFETであり、それらは制御回路200Aに内蔵されている。
【0041】
スイッチングトランジスタM
1と同期整流トランジスタM
2の接続点をスイッチング(SW)端子と称する。端子は、ピンと読み替えてもよい。インダクタL
1は、SW端子と出力端子104の間に設けられる。出力キャパシタC
1は、出力端子104に接続される。抵抗R
11,R
12は、制御対象である出力電圧V
OUTを分圧して得られる検出電圧(フィードバック信号)V
FBを制御回路200Aのフィードバック(FB)端子に供給する。抵抗R
11,R
12は制御回路200Aに内蔵されてもよい。
【0042】
制御回路200Aは、スイッチングトランジスタM
1、同期整流トランジスタM
2に加えて、パルス変調器210、ドライバ230、周波数設定回路220A、オシレータ260を備える。制御回路200Aは好ましくはひとつの半導体基板に一体集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。スイッチングトランジスタM
1のソースはVIN端子と、そのドレインはSW端子と接続される。また同期整流トランジスタM
2のドレインはSW端子と接続され、そのソースはGND端子と接続される。イネーブル(EN)端子には、外部から制御回路200A(DC/DCコンバータ100A)の動作、停止を指示するイネーブル信号ENが入力される。
【0043】
パルス変調器210はメインロジック218を含む。イネーブル信号ENがアサート(たとえばハイ)されると、図示しない内部の基準電圧源や基準電流源をアクティブとして、その他の回路ブロックを動作可能な状態とし、ソフトスタート回路240にソフトスタート電圧V
SS1,V
SS2の生成開始を指示する。ソフトスタート回路240は、動作開始の指示を受けると、時間的に緩やかに増大するソフトスタート電圧V
SS1,V
SS2生成する。ソフトスタート電圧V
SS2(V
SS1)が増大する期間(その前後を含んでもよい)をソフトスタート期間T
SSと称する。
【0044】
パルス変調器210は、DC/DCコンバータ100Aもしくは出力端子104に接続される負荷(不図示)の状態が目標値に近づくように、スイッチングトランジスタM
1のオンオフを指示するパルス信号S
PWM(ハイサイドパルスS
H)および同期整流トランジスタM
2のオンオフを指示するローサイドパルスS
Lを生成する。
【0045】
上述のようにDC/DCコンバータ100Aは定電圧出力であり、パルス変調器210は、DC/DCコンバータ100Aの出力電圧V
OUTを制御対象とする。具体的にはパルス変調器210は、FB端子にフィードバックされたフィードバック電圧V
FBが、その目標値V
REFに近づくように、パルス信号S
PWM(S
HおよびS
L)生成する。
【0046】
パルス変調器210は、公知技術を用いればよく、その制御方式、構成は特に限定されない。制御方式に関しては、電圧モード、ピーク電流モード、平均電流モード、ヒステリシス制御(Bang-Bang制御)、ボトム検出オン時間固定(COT:Constant On Time)方式などを採用しうる。またパルス信号S
PWMの変調方式としては、その限りではないが、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)が採用しうる。パルス変調器210の構成に関しては、エラーアンプやコンパレータを用いたアナログ回路で構成してもよいし、デジタル演算処理を行うプロセッサで構成してもよいし、アナログ回路とデジタル回路の組み合わせで構成してもよい。またパルス変調器210は、負荷の状態に応じて制御方式を切りかえてもよい。
【0047】
パルス変調器210の動作モードは、負荷の状態に応じて可変であってもよい。たとえば重負荷状態ではパルス変調器210はPWMモードで動作し、軽負荷状態では、PFM(Pulse Frequency Modulation)モードで動作してもよい。PWMモード(特に電流連続モード)において、ハイサイドパルスS
HとローサイドパルスS
Lは相補的な信号となる。
【0048】
ドライバ230は、パルス信号S
PWM(ハイサイドパルスS
H)にもとづきスイッチングトランジスタM
1を駆動し、ローサイドパルスS
Lにもとづき同期整流トランジスタM
2を駆動する。
【0049】
周波数設定端子(RT端子)には、スイッチング周波数f
SWを規定するための外部抵抗R
Tが接続される。周波数設定回路220Aは、DC/DCコンバータ100Aの起動時に、時間とともに緩やかに上昇し、その後、一定値を維持する周波数設定電圧V
RTをRT端子に印加する。
周波数設定回路220Aは、ソフトスタート回路240と電圧選択回路250を含む。ソフトスタート回路240は、DC/DCコンバータ100Aの起動時に、時間とともに緩やかに上昇する周波数ソフトスタート電圧V
SS1および出力ソフトスタート電圧V
SS2を生成する。周波数ソフトスタート電圧V
SS1と出力ソフトスタート電圧V
SS2は、比例関係を有することが好ましく、一方(たとえばV
SS1)は、他方(たとえばV
SS2)を分圧して生成してもよい。
【0050】
電圧選択回路250は、第1基準電圧V
REF1と周波数ソフトスタート電圧V
SS1のうち低い方に応じた電圧(周波数設定電圧)V
RTを、RT端子に印加する。その結果、外部抵抗R
TにはRT端子を介して電流I
OSCが流れる。
I
OSC=V
RT/R
T
【0051】
オシレータ260は、外部抵抗R
Tに流れる電流I
OSCに応じた周波数で発振する。オシレータ260の構成は特に限定されない。たとえばオシレータ260は、キャパシタと、電流I
OSCに比例した電流でキャパシタを充電する充電回路と、キャパシタの電圧をしきい値と比較するコンパレータと、コンパレータの出力に応じてキャパシタの電圧がしきい値に達するとキャパシタの電荷を放電する放電回路と、を含んでもよい。
【0052】
パルス変調器210は、オシレータ260が生成する発振信号S
OSCと同期して動作し、したがってパルス信号S
PWMは発振信号S
OSCに応じた周波数を有する。
【0053】
パルス変調器210は、DC/DCコンバータの起動時に、フィードバック信号V
FBが、出力ソフトスタート電圧V
SS2と第2基準電圧V
REF2のうち低い方に応じた目標電圧に近づくように、パルス信号S
PWMのデューティ比を調節する。
【0054】
周波数ソフトスタート電圧V
SS1が第1基準電圧V
REF1に到達するまでの時間と、出力ソフトスタート電圧V
SS2が第2基準電圧V
REF2に到達するまでの時間は、実質的に等しいことが望ましい。
【0055】
以上が制御回路200AおよびDC/DCコンバータ100Aの構成である。続いてその動作を説明する。
【0056】
図4は、
図3のDC/DCコンバータ100Aの動作波形図である。時刻t
0にイネーブル信号ENがアサートされると、周波数ソフトスタート電圧V
SS1および出力ソフトスタート電圧V
SS2が上昇し始める。出力ソフトスタート電圧V
SS2の上昇に追従して、出力電圧V
OUTは緩やかに上昇していく。時刻t
1に出力ソフトスタート電圧V
SS2が第2基準電圧V
REF2に達すると、それ以降、出力電圧V
OUTは目標電圧V
OUT(REF)に安定化される。
【0057】
起動開始直後において、周波数ソフトスタート電圧V
SS1は低いため、オシレータ260の発振周波数すなわちDC/DCコンバータ100Aのスイッチング周波数f
SWは低く、PWM周期T
SWは長くなっている。周波数ソフトスタート電圧V
SS1の上昇にともないスイッチング周波数f
SWは上昇し、PWM周期T
SWは短くなっていく。
【0058】
時刻t
1とほぼ時を同じくして、出力ソフトスタート電圧V
SS2が第2基準電圧V
REF2に到達する。時刻t
1以降、スイッチング周波数f
SWは、第1基準電圧V
REF1に応じた値に安定化される。
【0059】
以上がDC/DCコンバータ100Aの動作である。
ソフトスタート期間T
SSにおいて、スイッチング周波数f
SWが緩やかに増大し、その逆数であるスイッチング周期T
SWは短くなっていく。つまり、起動直後において、入出力電圧の比が大きくパルス信号S
PWMのデューティ比が小さい状態では、スイッチング周期T
SWが長くなる。これによりデューティ比とスイッチング周期T
Pの積に応じたパルス幅(スイッチングトランジスタM
1のオン時間)T
ONを、最小パルス幅T
MINより大きい状態に維持することができる。これによりパルススキップを抑制でき、出力電圧V
OUTのリップルやオーバーシュートを抑制できる。
【0060】
また、スイッチング周波数f
SWを規定する周波数ソフトスタート電圧V
SS1は、出力電圧V
OUTを規定する出力ソフトスタート電圧V
SS2が第2基準電圧V
REF2に到達するのと実質的に同時に、第1基準電圧V
REF1に到達する。出力電圧V
OUTが目標電圧V
OUT(REF)に安定化されると、負荷が動作し始めるところ、第1の実施の形態によれば、出力電圧V
OUTの安定化後は、スイッチング周波数f
SWを安定化できる。
【0061】
なお、周波数ソフトスタート電圧V
SS1が第1基準電圧V
REF1に到達する時刻は、出力ソフトスタート電圧V
SS2が第2基準電圧V
REF2に到達する時刻より前であってもよい。
【0062】
さらに、2つのソフトスタート電圧V
SS1,V
SS2を比例関係を有するように生成することにより、以下の利点を享受できる。パルス信号S
PWMのデューティ比は、出力ソフトスタート電圧V
SS2に応じて増大し、パルス信号S
PWMの周波数f
SWは周波数ソフトスタート電圧V
SS1に比例して増大し、その周期T
SWは周波数ソフトスタート電圧V
SS1に反比例して減少する。したがってパルス信号S
PWMのデューティ比とパルス周期T
SWの積、すなわちパルス幅T
ONの変動を小さくすることができる。
【0063】
図5は、周波数ソフトスタート電圧V
SS1の別の波形図である。起動開始に際し、周波数ソフトスタート電圧V
SSを0V(ゼロボルト)スタートとすると、起動直後のスイッチング周波数が低く、PWM周期T
SWが長くなりすぎる場合がある。そこで、
図5に示すように、ソフトスタートの開始から所定時間T
FIXの間、周波数ソフトスタート電圧V
SS1をある下限電圧V
MINに固定してもよい。この場合、下限電圧V
MINに応じて、起動時のスイッチング周波数の下限、言い換えればPWM周期T
SWの上限を規定することができる。この場合においても所定時間T
FIXの終了後、周波数ソフトスタート電圧V
SS1と出力ソフトスタート電圧V
SS2の比例関係は保たれている。
【0064】
本発明は、
図3のブロック図や断面図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0065】
図6(a)、(b)は、電圧選択回路250の構成例を示す回路図である。
図6(a)の電圧選択回路250は、第1トランジスタQ
21〜第3トランジスタQ
23を含む。第1トランジスタQ
21はNPNバイポーラトランジスタであり、その一端(エミッタ)はRT端子と接続される。第2トランジスタQ
22および第3トランジスタQ
23は、PNPバイポーラトランジスタであり、それらの一端(エミッタ)は接地され、それらの他端(コレクタ)は第1トランジスタQ
21の制御端子(ベース)と接続される。第2トランジスタQ
22の制御端子(ベース)には第1基準電圧V
REF1が印加され、第3トランジスタQ
23の制御端子には周波数ソフトスタート電圧V
SS1が印加される。第1トランジスタQ
21のベースは、抵抗R
21(あるいは電流源)によってバイアスされる。
【0066】
第1トランジスタQ
21のベースには、V
SS1+V
BEと、V
REF1+V
BEのうち、低い一方が現れる。第1トランジスタQ
21はエミッタフォロアとして動作し、RT端子には、第1トランジスタQ
21のベース電位よりV
BE低い電圧、すなわち、V
SS1とV
REF1のうち低い一方min(V
SS1,V
REF1)が印加される。これによりオシレータには、I
OSC=min(V
SS1,V
REF1)/R
Tが供給される。
【0067】
図6(b)の電圧選択回路250は、3入力のエラーアンプ(オペアンプ)EA1と、トランジスタQ
31を含む。トランジスタQ
31の一端(エミッタ)はRT端子と接続される。エラーアンプEA1は、2つの非反転入力端子(+)と、ひとつの反転入力端子(−)を有し、2つの非反転入力端子(+)の電圧のうち低い一方と、反転入力端子(−)の電圧の誤差を増幅する。電圧選択回路250と抵抗R
Tは定電流源を形成しており、RT端子には、V
SS1とV
REF1の低い電圧が現れ、オシレータには、I
OSC=min(V
SS1,V
REF1)/R
Tが供給される。
【0068】
図6(a)、(b)において、バイポーラトランジスタをFETに置換してもよく、この場合、ベース、エミッタ、コレクタを、ゲート、ソース、ドレインと読み替えればよい。
【0069】
図7は、ソフトスタート回路240の構成例を示す回路図である。ソフトスタート回路240は、スロープ電圧生成回路242、分圧回路244およびスイッチ246を含む。スロープ電圧生成回路242は、時間とともに増大するスロープ電圧V
C41を発生する。たとえばスロープ電圧生成回路242は、キャパシタC
41および電流源CS
41を含む。キャパシタC
41の一端は接地される。電流源CS
41は、ソフトスタート開始信号SS_STARTのアサートに応答してアクティブとなり、キャパシタC
41を定電流で充電する。キャパシタC
41に生ずるスロープ電圧V
C41は、時間経過とともに一定の傾きで増大する。
【0070】
抵抗R
41,R
42を含む分圧回路244は、スロープ電圧V
C41を分圧し、周波数ソフトスタート電圧V
SS1を生成する。スイッチ246は分圧回路244と直列に設けられている。ソフトスタート期間中、スイッチ246はオンである。スイッチ246は、V
SS1>V
REF1となった後にオフとなる。たとえばスイッチ246は、ソフトスタート期間T
SSの完了を通知するソフトスタート完了信号SS_ENDに応じて制御することができる。これにより、ソフトスタート完了後にスイッチング周波数が安定化した後、抵抗R
41,R
42により無駄な電力が消費されるのを防止できる。
【0071】
スロープ電圧V
C41を、出力ソフトスタート電圧V
SS2として利用してもよい。あるいはスロープ電圧V
C41を、別の抵抗分圧回路によって分圧し、出力ソフトスタート電圧V
SS2を生成してもよい。2つのソフトスタート電圧V
SS1,V
SS2の生成に関して、キャパシタC
41、電流源CS
41を共通化できるため、回路面積を小さくできる。
【0072】
図8は、制御回路200Aの具体的な構成例を示す回路図である。電流検出回路270は、スイッチングトランジスタM
1のオン時間中に、インダクタL
1に流れるコイル電流I
L(言い換えればスイッチングトランジスタM
1のドレイン電流I
M1)を検出し、ドレイン電流I
M1を示す電流検出信号V
CSを生成する。電流検出回路270の構成は特に限定されず、たとえばスイッチングトランジスタM
1のオン抵抗を利用してドレイン電流I
M1を検出してもよいし、ドレイン電流I
M1(あるいはコイル電流I
L)の経路上にセンス抵抗を挿入し、センス抵抗の電圧降下を検出してもよい。電流検出回路270は、インダクタL
1の両端間の電圧にもとづいてコイル電流I
Lを検出してもよい。
【0073】
パルス変調器210は、ピーク電流モードのパルス幅変調器である。パルス変調器210は、エラーアンプ212、PWMコンパレータ214、スロープ補償器216、メインロジック218を備える。エラーアンプ212は、出力ソフトスタート電圧V
SS2と第2基準電圧V
REF2の低い一方と、フィードバック電圧V
FBとの誤差を増幅し、誤差信号V
ERRを生成する。エラーアンプ212は3入力のオペアンプで構成してもよい。スロープ補償器216は、電流検出回路270からの電流検出信号V
CSに、スロープ信号V
SLOPEを重畳する。
【0074】
PWMコンパレータ214は、誤差信号V
ERRと、スロープ補償後の電流検出信号V
CS’を比較し、電流検出信号V
CS’が誤差信号V
ERRに達すると、リセット信号S
RESETをアサート(たとえばハイ)する。メインロジック218は、リセット信号S
RESETのアサートに応答して、パルス信号S
PWMを、スイッチングトランジスタM
1のオフに対応するレベル(オフレベル、たとえばロー)に遷移させる。
【0075】
オシレータ260は、電流I
OSCに応じた周波数を有するセット信号S
SETを生成する。メインロジック218はセット信号S
SETのエッジに応答して、パルス信号S
PWMを、スイッチングトランジスタM
1のオンに対応するレベル(オンレベル、たとえばハイ)に遷移させる。ソフトスタート期間において、オシレータ260が生成するセット信号S
SETの周波数は低く、その後、時間経過とともに上昇していく。
【0076】
続いて、第1の実施の形態に関連する変形例を説明する。
周波数ソフトスタート電圧V
SS1を生成するソフトスタート回路240と、出力ソフトスタート電圧V
SS2を生成するソフトスタート回路240は、独立した別個の回路であってもよい。
【0077】
また、ソフトスタート電圧(スロープ電圧)の生成方法は、キャパシタを充電する方式には限定されない。たとえばソフトスタート回路は、デジタル回路で構成してもよく、一例として、時間とともにカウント値が増加するデジタルカウンタと、カウント値をソフトスタート電圧に変換するD/Aコンバータと、を含んでもよい。
【0078】
(第2の実施の形態)
図9は、第2の実施の形態に係るDC/DCコンバータ100Bの回路図である。この実施の形態において周波数設定回路220Bは、時間とともに周期的に変動する周波数設定電圧V
RTをRT端子に印加する。
【0079】
周波数設定回路220Bは、スペクトラム拡散回路280および電圧選択回路250を含む。スペクトラム拡散回路280は、時間とともに周期的に変動するスペクトラム拡散電圧V
SPSを生成する。スペクトラム拡散回路280は、起動直後のソフトスタート期間中においては非アクティブであり、その出力電圧V
SPSは、第1基準電圧V
REF1より高い電圧レベルに保持されている。周波数設定回路220Bは、第1基準電圧V
REF1とスペクトラム拡散電圧V
SPSのうち低い方に応じた周波数設定電圧V
RTを、RT端子に印加する。たとえばスペクトラム拡散回路280には、ソフトスタート期間T
SSの終了タイミングの近傍でアサートされるSPSON信号が入力されており、スペクトラム拡散回路280はSPSON信号のアサートに応答して、アクティブとなる。
【0080】
スペクトラム拡散電圧V
SPSのピーク電圧V
PEAKは、第1基準電圧V
REF1より低いことが好ましい。より好ましくはスペクトラム拡散電圧V
SPSは、第1基準電圧V
REF1よりわずかに低い電圧レンジで変動することが好ましい。
【0081】
スペクトラム拡散電圧V
SPSは、三角波であってもよいし、ランプ波であってもよいし、サイン波であってもよいし、その他の周期波形であってもよい。スペクトラム拡散回路280の構成は特に限定されず、所望の波形を生成可能な公知の回路を用いることができる。
【0082】
スペクトラム拡散回路280は、イネーブル信号SPS_ENに応じて有効、無効が切りかえ可能である。無効の場合、スペクトラム拡散回路280の出力電圧V
SPSは、SS_END信号がアサートされた後も第1基準電圧V
REF1より高いレベルに固定される。これによりRT端子には常時、第1基準電圧V
REF1が印加されることとなり、スペクトラム拡散の機能が無効化される。
【0083】
以上がDC/DCコンバータ100Bの構成である。続いてその動作を説明する。
図10は、
図9のDC/DCコンバータ100Bの動作波形図である。時刻t
0にイネーブル信号ENがアサートされると、出力ソフトスタート電圧V
SS2が上昇し始める。出力ソフトスタート電圧V
SS2の上昇に追従して、出力電圧V
OUTは緩やかに上昇していく。時刻t
1に出力ソフトスタート電圧V
SS2が第2基準電圧V
REF2に達すると、それ以降、出力電圧V
OUTは目標電圧V
OUT(REF)に安定化される。
【0084】
時刻t
1より前において、スペクトラム拡散回路280は非アクティブであり、スペクトラム拡散回路280の出力電圧V
SPSは、第1基準電圧V
REF1より高いレベルに固定されており、RT端子には、第1基準電圧V
REF1が印加されている。DC/DCコンバータ100Bのスイッチング周波数f
SWは、第1基準電圧V
REF1に応じて固定されている。
【0085】
時刻t
1にDC/DCコンバータ100Bの起動が完了し、ソフトスタート完了信号SS_ENDがアサートされると、スペクトラム拡散回路280がアクティブとなり、RT端子には、スペクトラム拡散回路280が生成するスペクトラム拡散電圧V
SPSが印加される。これにより、DC/DCコンバータ100Bのスイッチング周波数f
SWは、スペクトラム拡散電圧V
SPSに応じて周期的に変動する。
図11は、制御回路200BにおけるRT端子の電圧V
RTと、オシレータ280の発生する発振信号S
OSC(クロック信号)を示す図である。
【0086】
以上が制御回路200Bの動作である。
図12は、
図9の制御回路200Bにおけるノイズのスペクトラムを示す図である。(i)は、
図9の制御回路200Bにおいてスペクトラム拡散回路280を有効化したときのスペクトラムを、(ii)は、スペクトラム拡散回路280を無効化したときのスペクトラムを示す。
【0087】
図12から分かるように、スペクトラム拡散回路280を有効化することにより、スイッチングノイズのスペクトルを拡散することができ、ピーク強度を抑制できる。
【0088】
図13は、スペクトラム拡散回路280の構成例を示す回路図である。このスペクトラム拡散回路280は、三角波発生回路である。
【0089】
電圧源282は、スペクトラム拡散電圧V
SPSのピークを規定する上側しきい値V
PEAK、ボトムを規定する下側しきい値V
BOTTOMを生成する。充放電回路284は、キャパシタC
51の充電、放電を繰り返す。コンパレータ286は、キャパシタC
51の電圧V
SPSを、しきい値電圧V
PEAK,V
BOTTOMと比較する。充放電回路284は、コンパレータ286の出力がハイのとき放電状態、ローのとき充電状態となる。電圧源282は、コンパレータ286の出力がハイのとき、下側しきい値V
BOTTOMを出力し、コンパレータ286の出力がローのとき、上側しきい値V
PEAKを出力する。
【0090】
電圧源282は、抵抗R
51〜R
54からなる抵抗分圧回路を備える。基準電圧V
REFを分圧することにより、第1基準電圧V
REF1および2つのしきい値V
PEAK,V
BOTTOMが生成される。これにより、V
PEAK<V
REF1の関係が保証される。スイッチSW
H、スイッチSW
Lは、コンパレータ286の出力に応じて相補的にオン、オフする。スイッチSW
HがオンのときV
PEAKが出力され、スイッチSW
LがオンのときV
BOTTOMが出力される。
【0091】
充放電回路284は、カレントミラー回路CM
51,CM
52および定電流源CS
51を備える。定電流源CS
51は、SPS_ON信号がアサートされるとオン状態となり、基準電流I
REFを生成する。カレントミラー回路CM
51は、定電流源CS
51が生成する基準電流I
REFをコピーし、充電電流I
CHGを生成する。カレントミラー回路CM
52は、定電流源CS
51が生成する基準電流I
REFをコピーし、放電電流I
DISを生成する。カレントミラー回路CM
52は、コンパレータ286の出力がハイのとき動作し、ローのとき停止する。I
DIS>I
CHGが成り立っており、コンパレータ286の出力がハイのとき、キャパシタC
51はI
DIS−I
CHGで放電され、コンパレータ286の出力がローのとき、キャパシタC
51はI
CHGで充電される。
【0092】
この構成によれば、
図11に示すようなスペクトラム拡散電圧V
SPSを生成できる。
【0093】
図14(a)、(b)は、
図9の電圧選択回路250の構成例を示す回路図である。
図14(a)、(b)の電圧選択回路250は、
図6(a)、(b)の電圧選択回路250と同様に構成することができる。
【0094】
(第3の実施の形態)
図15は、第3の実施の形態に係るDC/DCコンバータ100Cの回路図である。DC/DCコンバータ100Cは、第1の実施の形態と第2の実施の形態の組み合わせと把握できる。
【0095】
周波数設定回路220Cは、DC/DCコンバータ100Cの起動時に、時間とともに緩やかに上昇し、その後、時間とともに周期的に変動する周波数設定電圧V
RTをRT端子に印加する。
【0096】
周波数設定回路220Cは、ソフトスタート回路240、スペクトラム拡散回路280、電圧選択回路250Cを含む。
【0097】
ソフトスタート回路240は、第1の実施の形態で説明したのと同様に、周波数ソフトスタート電圧V
SS1と、出力ソフトスタート電圧V
SS2を生成する。電圧選択回路250Cは、第1基準電圧V
REF1、スペクトラム拡散電圧V
SPS、周波数ソフトスタート電圧V
SS1を受け、それらのうち最も低いひとつに応じた周波数設定電圧V
RTを、RT設定端子に印加する。
【0098】
以上が制御回路200Cの構成である。続いてその動作を説明する。
図16は、
図15のDC/DCコンバータ100Cの動作波形図である。
【0099】
時刻t
0にイネーブル信号ENがアサートされると、周波数ソフトスタート電圧V
SS1および出力ソフトスタート電圧V
SS2が上昇し始める。出力ソフトスタート電圧V
SS2の上昇に追従して、出力電圧V
OUTは緩やかに上昇していく。
【0100】
また周波数ソフトスタート電圧V
SS1の上昇に追従して、スイッチング周波数f
SWが上昇していく。言い換えれば動作開始直後のスイッチング周波数f
SWが低くなるため、パルス信号S
PWMのパルス幅が狭くなりすぎてパルススキップが発生するのを抑制できる。
【0101】
時刻t
1に出力ソフトスタート電圧V
SS2が第2基準電圧V
REF2に達すると、それ以降、出力電圧V
OUTは目標電圧V
OUT(REF)に安定化される。そしてソフトスタート期間の終了を示すSS_END信号がアサートされる。その結果、RT端子にはスペクトラム拡散電圧V
SPSが印加され、周期的に変動する。スイッチング周波数f
SWは周波数設定電圧V
RTに追従して変動する。
【0102】
以上が制御回路200Cの動作である。これによれば、第1の実施の形態と第2の実施の形態の利点の両方を享受できる。また、ハードウェアとして電圧選択回路250を共通化できるため、回路面積の増大も抑えることができる。
【0103】
図17は、電圧選択回路250の構成例を示す回路図である。電圧選択回路250Cは、第1トランジスタQ
41〜第4トランジスタQ
44を含む。第1トランジスタQ
41のエミッタはRT端子と接続される。第2トランジスタQ
42〜第4トランジスタQ
44のエミッタは、第1トランジスタQ
41のベースと共通に接続され、それらのソースは接地される。第2トランジスタQ
42のベースには第1基準電圧V
REF1が印加され、第3トランジスタQ
43のベースにはスペクトラム拡散電圧V
SPSが印加され、第4トランジスタQ
44のベースには周波数ソフトスタート電圧V
SS1が印加される。
【0104】
この構成によれば、3つの電圧V
SS1,V
SPS,V
REF1のうち最も低い電圧をRT端子に印加することができる。
【0105】
(用途)
図18は、DC/DCコンバータ100を備える車載電装機器300のブロック図である。車載電装機器300は、DC/DCコンバータ100に加えて、バッテリ302、マイコン304、負荷306を備える。バッテリ302は、たとえば12V(あるいは24V)のバッテリ電圧V
BATを生成する。DC/DCコンバータ100はバッテリ電圧V
BATを入力電圧V
INとして受け、負荷306に最適な電圧レベルを有する出力電圧V
OUTを生成する。負荷306は特に限定されず、各種ECU(Electronic Control Unit)、オーディオ回路、カーナビゲーションシステムなどが例示される。マイコン304は、車載電装機器300を統合的に制御するホストプロセッサであり、制御回路200に対してEN信号を出力する。また制御回路200のFLG端子を監視し、制御回路200において発生する異常を検知すると、適切な保護処理を実行する。
【0106】
自動車などの車両には、多くの電子部品が搭載されるため、車載電装機器300には、厳しいEMCが要求される。実施の形態に係るDC/DCコンバータ100によれば、車載電装機器300に要求される規格をクリアすることが可能となる。
【0107】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0108】
出力回路110の構成、トポロジーにはさまざまな変形が存在する。DC/DCコンバータのハイサイドのスイッチングトランジスタはNチャンネルMOSFETであってもよい。またスイッチングトランジスタM
1および同期整流トランジスタM
2は、制御回路200に外付けされてもよい。また同期整流トランジスタM
2に代えて整流ダイオード(ショットキーダイオード)を備えるダイオード整流型のDC/DCにも本発明は適用可能である。
【0109】
DC/DCコンバータは、降圧型に限定されず、昇圧型や昇降圧型にも本発明は適用可能である。また、フライバックコンバータなどのようにトランスを用いたコンバータにも本発明は適用しうる。
【0110】
実施の形態ではスイッチングトランジスタM
1や同期整流トランジスタM
2がMOSFETである場合を説明したが、本発明はそれには限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0111】
抵抗R
11,R
12は、制御回路200に外付けされてもよい。
【0112】
DC/DCコンバータ100の用途は車載電装機器に限定されず、小型電子機器やコンピュータなどにも利用可能である。
【0113】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。