特開2018-131710(P2018-131710A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-131710カーペットの連続染色機、カーペットの連続染色機用遮蔽板、及びカーペットの連続染色方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-131710(P2018-131710A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】カーペットの連続染色機、カーペットの連続染色機用遮蔽板、及びカーペットの連続染色方法
(51)【国際特許分類】
   D06B 11/00 20060101AFI20180727BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20180727BHJP
【FI】
   D06B11/00 A
   D06P5/00 120B
   D06P5/00 119
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-26127(P2017-26127)
(22)【出願日】2017年2月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 勇紀
(72)【発明者】
【氏名】井上 光晴
【テーマコード(参考)】
3B154
4H057
【Fターム(参考)】
3B154AB24
3B154AB27
3B154AB34
3B154BA09
3B154BB33
3B154BB45
3B154BB76
3B154BC08
3B154BD01
3B154CA50
3B154DA13
4H057AA02
4H057AA03
4H057DA01
4H057DA34
4H057GA04
(57)【要約】
【課題】 自然なぼかし調の色模様に生機を染色できるカーペットの連続染色機を提供する。
【解決手段】 本発明のカーペットの連続染色機Aは、カーペットの生機Bを搬送する搬送装置3と、前記搬送装置3によって搬送される生機Bの幅方向に配置され且つ染色剤を吐出する複数の吐出口N1,…と、前記複数の吐出口N1,…と生機Bの間に配置された遮蔽板4であって、前記複数の吐出口N1,…のうち幾つかの吐出口N1,…から吐出された染色剤を生機Bへと通過させる通過部41と、前記幾つかの吐出口N1,…吐出口N2,N4,N6,N8,N10から吐出された染色剤を生機B外へと導く遮蔽部42と、を有する遮蔽板4と、を有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペットの生機を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される生機の幅方向に配置され且つ染色剤を吐出する複数の吐出口と、
前記複数の吐出口と生機の間に配置された遮蔽板であって、前記複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を生機へと通過させる通過部と、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を生機外へと導く遮蔽部と、を有する遮蔽板と、
を有する、カーペットの連続染色機。
【請求項2】
生機の幅方向に配置された複数の吐出口から染色剤を吐出して前記生機を染色するカーペットの連続染色機の、前記吐出口と生機の間に配置される遮蔽板であって、
複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を生機へと通過させる通過部と、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を生機外へと導く遮蔽部と、を有する、カーペットの連続染色機用遮蔽板。
【請求項3】
カーペットの生機を搬送する搬送工程と、
前記生機の幅方向に配置された複数の吐出口から染色剤を吐出し、その染色剤によって前記生機を染色する染色工程と、を有し、
前記染色工程において、前記複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を生機へと導き、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を生機外へと導く、カーペットの連続染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ぼかし調の色模様を表出できるカーペットの連続染色機などに関する。
【背景技術】
【0002】
カーペットに表出される柄として、ぼかし調の色模様が知られている。
ぼかし調の色模様とは、色彩が連続的に変化するグラデーション領域を有する色模様である。例えば、ぼかし調の単色模様にあっては、その1色が濃く表出されている領域とその1色が薄く表出されている領域とを有し、2つの領域の間に、前記濃い領域から薄い領域に向かうに従い徐々にその色が薄くなるグラデーション領域を有する。また、ぼかし調の2色模様にあっては、第1色が濃く表出されている領域と第2色が濃く表出されている領域とを有し、その2つの領域の間に、前記第1色の領域から第2色の領域に向かうに従い徐々に第1色が薄くっていきながら第2色に変化していくグラデーション領域を有する。
【0003】
このようなぼかし調の色模様は、カーペットの生機のパイル糸を染色する後染めによって行われる。かかる後染めとして、インクジェットプリント機を用いた方法が知られている(特許文献1)。インクジェット機による連続染色方法は、プリンタヘッドから染料を霧状に噴射して生機を染色する方法であり、インクジェット法によれば、多彩な色模様を表出できる。
しかしながら、インクジェットプリント機は、予め決められたパターンに従って染料を噴射するため、予め決まったぼかし調の色模様しか表出できず、染料が滲み出たような自然な感じのぼかし調のカーペットを得ることが困難である。さらに、インクジェットプリント機では、比較的プリント速度が遅く、カーペットの生産性が悪いという問題もある。
【0004】
また、生機を長手方向に搬送している途中で生機を染色する連続染色機を用いた連続染色方法も知られている。連続染色機による連続染色方法は、生機の幅方向に配置された複数のノズルから、搬送される生機の表面に染料を吐出し、生機を染色する方法である。従来の連続染色機は、例えば、単一種類の染料のみ、又は、酸性染料とカチオン染料を併用することによって、大量の生機を染色でき、カーペットの生産性に優れている。
しかしながら、連続染色機は、色模様の表現に限界があり、上記のように酸性染料とカチオン染料を併用したとしても、自然な感じのぼかし調のカーペットを得ることが困難である。
【0005】
また、電磁弁の開閉により染液の放出の実行及び停止を行なうノズルを複数有し、ノズルから放出された染液がプレートを介してタフトカーペット原反上に均一に流れるように供給される連続染色機であって、2つの染液供給経路のノズルを互い違いに幅方向に一直線に並列し、電磁弁の開閉により一方の染液供給経路のノズルと他方の染液供給経路のノズルを開放し、タフトカーペット原反上にこれらの染液を供給して染色する連続染色機が知られている(特許文献2)。
しかしながら、既存の連続染色機を特許文献2のような連続染色機に改変しようとしても、各ノズルに電磁弁やその制御装置を取り付けなければならず、大がかりな設備改造が必要となる。また、設置スペースの関係上、電磁弁などを取り付けできない場合もある。他方、特許文献2のようなノズルに電磁弁などを備える連続染色機、又は、既存のノズルに電磁弁などを取り付けて改造した連続染色機は、電磁弁を有さないノズルに改変すること又はノズルに他の部材を取り付ける改変が困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−25965号公報
【特許文献2】特許第5952952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自然なぼかし調の色模様に生機を染色できるカーペットの連続染色機などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカーペットの連続染色機は、カーペットの生機を搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される生機の幅方向に配置され且つ染色剤を吐出する複数の吐出口と、前記複数の吐出口と生機の間に配置された遮蔽板であって、前記複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を生機へと通過させる通過部と、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を生機外へと導く遮蔽部と、を有する遮蔽板と、を有する。
【0009】
本発明の別の局面によれば、カーペットの連続染色機用遮蔽板を提供する。
本発明の遮蔽板は、生機の幅方向に配置された複数の吐出口から染色剤を吐出して前記生機を染色するカーペットの連続染色機の、前記吐出口と生機の間に配置される遮蔽板であって、複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を生機へと通過させる通過部と、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を生機外へと導く遮蔽部と、を有する。
【0010】
本発明の別の局面によれば、カーペットの連続染色方法を提供する。
本発明の連続染色方法は、カーペットの生機を搬送する搬送工程と、前記生機の幅方向に配置された複数の吐出口から染色剤を吐出し、その染色剤によって前記生機を染色する染色工程と、を有し、前記染色工程において、前記複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を生機へと導き、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を生機外へと導いていく。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連続染色機及び連続染色方法によれば、自然なぼかし調の色模様に生機を染色できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】カーペットの平面図。
図2図1のII−II線で切断した断面図。
図3】第1実施形態に係るカーペットの連続染色機の斜視図。
図4】同連続染色機の染色部の側面図。ただし、生機の両側及びタンクを省略している。
図5】同連続染色機の染色部を上側から見た平面図。ただし、生機の両側及びタンクを省略している。以下、全ての平面図において、生機の両側及びタンクを省略している。
図6図5のVI−VI線で切断した断面図。
図7】カーペットの連続染色方法の染色工程において吐出口から染色剤の吐出した状態を示す平面図。
図8図7のVIII−VIII線で切断した断面図。
図9】同側面図。
図10】同連続染色機の遮蔽板を幅方向に移動させた状態を示す平面図。
図11】遮蔽板を移動させた後に吐出口から染色剤の吐出した状態を示す平面図。
図12】第2実施形態に係るカーペットの連続染色機の斜視図。
図13】同連続染色機の染色部を上側から見た平面図。
図14図13のXIV−XIV線で切断した断面図。
図15】同連続染色機の遮蔽板を幅方向に移動させた状態を示す平面図。
図16】遮蔽板を移動させた後に吐出口から染色剤の吐出した状態での、図15のXIV−XIV線で切断した断面図。
図17】第3実施形態に係るカーペットの連続染色機の斜視図。
図18】同連続染色機の染色部を上側から見た平面図。
図19】同連続染色機の吐出口から染色剤の吐出した状態での、図18のXIX−XIX線で切断した断面図。
図20】第4実施形態に係るカーペットの連続染色機の染色部を上側から見た平面図。
図21】同連続染色機の染色部の側面図。ただし、生機の両側及びタンクを省略している。
図22】同連続染色機の吐出口から染色剤の吐出した状態を示す平面図。
図23】第5実施形態に係るカーペットの連続染色機の染色部を上側から見た平面図。
図24】同連続染色機の遮蔽板を長手方向に移動させた状態を示す平面図。
図25】同連続染色機の遮蔽板を幅方向に移動させた状態を示す平面図。
図26】第6実施形態に係るカーペットの連続染色機の斜視図。
図27】同連続染色機の染色部を上側から見た平面図。
図28図27のXXVIII−XXVIII線で切断した断面図。
図29図27のXXIX−XXIX線で切断した断面図。
図30】(a)は、当初ポジションに位置する第6実施形態の遮蔽板を上側から見た平面図、(b)は、当初ポジションから幅方向に相対移動させた後の遮蔽板の平面図、(c)は、長手方向に相対移動させた後の遮蔽板の平面図。
図31】第6実施形態の変形例に係るカーペットの連続染色機の斜視図。
図32】連続染色方法の具体例1の参考図。
図33】連続染色方法の具体例2の参考図。
図34】連続染色方法の具体例2の参考図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「〜」で表される数値範囲は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「〜」で結んだ範囲とすることができるものとする。
【0014】
[カーペットの概要]
図1は、本発明の1つの実施形態に係るカーペットの平面図であり、図2は、同カーペットの断面図である。
図1に示すように、カーペット1は、例えば、平面視略正方形状などの枚葉状に形成される。もっとも、枚葉状のカーペット1の平面視形状は、略正方形状に限定されず、例えば、略長方形状、略円形状、略楕円形状、略三角形状や略六角形状などの略多角形状などに形成されていてもよい。本明細書において、「略」は、本発明の属する技術分野において許容される形状を意味する。略正方形状、略長方形状、略三角形状などの略多角形状の「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。また、略円形状及び略楕円形状の「略」は、例えば、周の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、周の一部が若干直線又は斜線とされた形状などが含まれる。
平面視略正方形状のカーペット1の寸法は、特に限定されないが、例えば、500mm×500mmなどが挙げられる。
なお、カーペット1は、長尺帯状であってもよい。ここで、本明細書において、長尺帯状は、長手方向の長さが幅方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。長尺帯状としては、例えば、幅方向の長さが1000mm〜4000mmで、長手方向の長さが5m以上であり、好ましくは、長手方向の長さが10m以上である。なお、幅方向は、長手方向と直交する方向である。
【0015】
カーペット1は、図2に示すように、染色済みの生機11と、前記生機11の裏面側に積層された裏面層12と、を有する。
染色済みの生機11は、基布111と、基布111に植設されたパイル糸112と、を有し、パイル糸112は、後述する連続染色機にて所望の色模様に染色されている。
図示例では、裏面層12は、表面側から順に、接着層121と、補強材122と、バッキング層123と、から構成されている。裏面層12は、生機11と補強材122を接合するために設けられている。補強材122は、カーペット1の寸法安定性などのために設けられ、例えば、不織布や織布などが用いられる。バッキング層123は、カーペット1の重量を成し、施工面に接地される層である。バッキング層123としては、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂、ゴムなどから形成される。
本発明において、パイル糸112及び基布111を有する生機11、並びに、裏面層12の層構成は、図示例に限られず、従来公知なものを適宜採用できる。
【0016】
[第1実施形態に係るカーペットの連続染色機]
本発明のカーペットの連続染色機Aは、図3乃至図6に示すように、カーペットの生機Bを搬送する搬送装置3と、染色剤を生機Bに塗布する染色部2と、を有する。
染色部2は、前記搬送装置3によって搬送される生機Bの幅方向に配置され且つ染色剤を吐出する複数の吐出口N1,N2,N3,N4,N5,N6,N7,N8,N9,N10と、前記生機Bと複数の吐出口N1,N2,N3,N4,N5,N6,N7,N8,N9,N10の間に配置された遮蔽板4と、を有する。以下、吐出口N1,N2,N3,N4,N5,N6,N7,N8,N9,N10を「吐出口N1,…」と記す。
前記遮蔽板4は、複数の吐出口N1,…のうち幾つかの吐出口N1,…から吐出された染色剤を生機Bへと通過させる通過部41と、前記幾つかの吐出口N1,…以外の吐出口N2,…から吐出された染色剤を生機B外へと導く遮蔽部42と、を有する。
必要に応じて、前記遮蔽板4と生機Bの間に、遮蔽板4の通過部41を通過した染色剤を受ける誘導板5が配置されていてもよい。
【0017】
<搬送装置>
搬送装置3は、長尺帯状の生機Bを長手方向に搬送する。各図の白抜き矢印は、生機Bの搬送方向を示す。搬送装置3は、従来公知のローラーと駆動装置(図示せず)とを有する。搬送装置3によって搬送される生機Bは、未染色の生機である。未染色の生機Bは、長尺帯状の基布と、基布にタフトされた未染色のパイル糸と、を有する。
なお、未染色の生機Bとは、カーペットの最終的なデザインを得るために染色剤を用いてパイル糸を染色する前の生機をいう。従って、後述するように、未染色の生機Bは、パイル糸が全く染色されていない場合のほか、パイル糸が何らかの色彩で染色されているものを含む。
なお、本明細書において、生機Bなどが送られる側を「下流側」といい、その反対側を「上流側」という。
【0018】
<染色部>
図3乃至図5において、搬送装置3で搬送される生機Bの途中に、染色部2が設けられている。
染色部2は、未染色の生機Bの表面に染色剤を塗布する装置である。
染色部2は、複数の吐出口N1,…と、遮蔽板4と、誘導板5と、を有する。
【0019】
(吐出口)
搬送装置3で搬送される未染色の生機Bの上側には、複数の吐出口N1,…が配置されている。複数の吐出口N1,…は、それぞれ独立して染色剤を吐出する。各吐出口N1,…は、後述するタンクから供給された染色剤の出口であり、各吐出口N1,…は、生機B側(下方)に染色剤を吐出する。このような吐出口N1,…は、一般に、ノズルとも呼ばれており、吐出口N1,…としては、従来公知なものを用いることができる。
吐出口N1,…の材質は、特に限定されず、金属、合成樹脂などが挙げられる。中でも、耐腐食性に優れ、染色剤が付着し難いことから、吐出口N1,…はステンレスで形成されていることが好ましい。吐出口N1,…の内径は、特に限定されず、例えば、直径3mm〜40mm程度であり、好ましくは、直径3mm〜20mmである。なお、吐出口N1,…が略円形でない場合の前記吐出口N1,…の内径は、円相当径とする。
【0020】
複数の吐出口N1,…は、搬送装置3に搬送される未染色の生機Bの幅方向に並んで配置されている。各吐出口N1,…は、生機Bの幅方向に直線上に並んで配置されている。なお、図示例では、各吐出口N1,…は生機Bの幅方向に1列に並んで配置されているが、吐出口N1,…が幅方向において千鳥状に並んで配置されていてもよく(図示せず)、或いは、生機Bの幅方向に並んで配置された複数の吐出口N1,…を1列とし且つその列が生機Bの長手方向に2列以上に配置されていてもよい(図示せず)。
図6において、隣接する吐出口N1,…の間隔W1は、特に限定されず、例えば、5mm〜100mmであり、好ましくは、10mm〜60mmである。前記間隔W1が大きすぎると、細かな表現が困難になり、小さすぎると、装置が複雑化する上、染色剤の吐出が困難となるおそれがある。吐出口N1,…の数は、特に限定されず、生機Bの幅方向の長さと前記吐出口N1,…の間隔に応じて適宜設定できる。例えば、幅方向における吐出口N1,…の数は、生機Bの幅方向長さ1m当たり、10個〜100個であり、好ましくは、20個〜60個である。
なお、図示例では、吐出口N1,…は10個であるが、この数は、模式的に示したものであることに留意されたい。
【0021】
各吐出口N1,…は、生機Bの長手方向において、後述する遮蔽板4の第1側端4aから第2側端4bの間に対応して配置される。なお、遮蔽板4の第1側端4aと第2側端4bは、生機Bの搬送方向(生機Bの長手方向)において向かい合う遮蔽板4の2つの端を指し、第1側端4aは生機Bの搬送方向下流側の端を指し、第2側端4bは生機Bの搬送方向上流側の端を指す。誘導板5の第1側端5aと第2側端5bについても同様である。
【0022】
各吐出口N1,…は、遮蔽板4の表面から離された状態で、装置のフレームなどの躯体側(図示せず)に固定されている。
各吐出口N1,…と遮蔽板4の表面との間の直線長さは、特に限定されないが、余りに小さいと、両者が接触し、余りに大きいと、装置の大型化を招く上、吐出口N1,…から吐出される染色剤が遮蔽板4の遮蔽部42の表面で跳ね返るおそれがある。かかる観点から、各吐出口N1,…と遮蔽板4の表面との間の直線長さ(吐出口N1,…から遮蔽板4の表面に対して鉛直方向に引いた直線長さ)が0を超え60mm以下となるように各吐出口N1,…が配置されていることが好ましく、10mm〜40mmとなるように各吐出口N1,…が配置されていることがより好ましい。
なお、各吐出口N1,…を遮蔽板4の表面に近づく又は遠ざけることができるように、各吐出口N1,…を上下に移動させる移動装置(図示せず)が設けられていてもよい。
【0023】
各吐出口N1,…には、それぞれ流量計61が設けられている。流量計61は、各吐出口N1,…から吐出される染色剤の量を計測するものである。流量計61によって吐出口N1,…からの染色剤の流量を監視することにより、詰まりなどの吐出口N1,…の不具合を発見できる。
前記流量計61は、必要に応じて設けられ、メンテナンス容易なことから、各吐出口N1,…に流量計が設けられていなくてもよく、或いは、幾つかの吐出口にのみ流量計が設けられ且つ残余の吐出口に流量計が設けられていなくてもよい。
各吐出口N1,…は、供給チューブ621を介してタンク631に繋がっている。なお、図3では、供給チューブ621は、それぞれ異なる長さで表されているが、全て同じの長さであることが好ましい。同じ長さの供給チューブ621を用いることにより、各供給チューブ621内の圧力が略均一となり、染色剤を均一速度で吐出口N1,…に供給することができ、染色剤の流量を精度良く制御することができる。
タンク631は、1つでもよいが、2種以上の染色剤を独立した吐出口N1,…から吐出させるために、タンク631は複数設けられている。図示例では、便宜上、2つのタンク631,632を例示している。つまり、図示例では、1つのタンク631及びこれに繋がる部材からなる染色剤供給部を、2組設定した場合である。以下、これらの染色剤供給部に含まれるタンク631や吐出口N1,…などを区別する場合に、それぞれ用語の頭に「第1」、「第2」を付す場合がある。
なお、本発明では、タンク631、供給チューブ621及び吐出口N1,…を少なくとも含む染色剤供給部が、1組以上設けられていればよく、これを3組、4組設けてもよい。染色剤供給部の組数に対応して染色剤の種類を増やすことができるので、生機Bに表出される色模様の色数を増すことができるが、反面、染色機がより複雑で大型になっていく。これらを比較考慮して、前記染色剤供給部の組数が設定される。
【0024】
第1タンク631には、第1ポンプ641が具備されている。また、第1タンク631の下流側には、第1供給管651を通じて第1マニホールド661が設けられている。第1マニホールド661には、複数の第1供給チューブ621,…が繋がれており、各第1供給チューブ621,…には、複数の吐出口N1,…のうち第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9がそれぞれ接続されている。
第1マニホールド661は、第1タンク631から供給された染色剤を各第1供給チューブ621,…に分岐させるものである。第1ポンプ641を通じて、第1タンク631から第1マニホールド661に染色剤が送られ、前記染色剤は、第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9からそれぞれ吐出される。
第2タンク632には、第2ポンプ642が具備されている。また、第2タンク632の下流側には、第2供給管652を通じて第2マニホールド662が設けられている。第2マニホールド662には、複数の第2供給チューブ622,…が繋がれており、各第2供給チューブ622,…には、複数の吐出口N1,…のうち第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10がそれぞれ接続されている。
第2マニホールド662は、第2タンク632から供給された染色剤を各第2供給チューブ622,…に分岐させるものである。第2ポンプ642を通じて、第2タンク632から第2マニホールド662に染色剤が送られ、前記染色剤は第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10からそれぞれ吐出される。
【0025】
第1タンク631に接続された第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9及び第2タンク632に接続された第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10は、幅方向に並んだ各吐出口N1,…の中から適宜選択できる。第1タンク631及び第2タンク632に異なる染色剤を入れた場合に、例えば縞模様のぼかし調のデザインを容易に染色できることから、例えば、第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9と第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10は幅方向において1つずつ交互に配置される。
なお、このような配置に限られず、特に図示しないが、例えば、第1吐出口と第2吐出口が、幅方向においてそれぞれ2つ〜5つずつ交互に配置されていてもよい。また、交互配置は、同数に限られず、例えば、第1吐出口を1つ、第2吐出口を2つとして交互に配置するなどのように、吐出口の本数を異ならせて配置してもよい。
また、タンク631が3つ以上の場合、それぞれのタンク631に幾つかの吐出口N1,…がつながれるが、各染色剤に起因する縞模様のぼかし調を形成するために、各タンク631にそれぞれ繋がれた幾つかの吐出口N1,…の配置も、交互であることが好ましい。例えば、タンクが3つ設けられる場合、特に図示しないが、第1タンクに繋がる幾つかの第1吐出口と、第2タンクに繋がる幾つかの第2吐出口と、第3タンクに繋がる幾つかの第3吐出口とが、幅方向において1つずつ交互に配置される、或いは、幅方向においてそれぞれ2つ〜5つずつ交互に配置される、或いは、同数でなく交互に配置されるなどの様々なパターンに配置できる。
【0026】
なお、マニホールド661,662は、適宜省略してもよい。
さらに、各タンク631,632には主としてマニホールドに染色剤を送るためにポンプ641,642が具備されているが、必ずしも染色剤を各吐出口N1,…から圧力をかけて吐出する場合に限られないので、ポンプを省略してもよい。ポンプを省略する場合、例えば、各タンク631,632を各吐出口N1,…よりも高い位置に設置することにより、位置エネルギーにて各タンク631,632から吐出口N1,…へと染色剤を供給することもできる。また、各タンク631,632を加圧することによって、染色剤を供給してもよい。
【0027】
(遮蔽板)
遮蔽板4は、吐出口N1,…の下方に配置されている。
遮蔽板4は、1つの板体から構成されていてもよく、或いは、2つ以上の板体から構成されていてもよい。図5に示すように、遮蔽板4が1つの板体から構成されている場合、移動制御容易となり、また、遮蔽板4の取り外し及び取り付けをワンステップで行なうことが可能となる。特に図示しないが、遮蔽板4が2つ以上の板体から構成されている場合、2つの板体を個別に制御して複雑な柄を表現することができ、また、各板体について比較的小さいものを用いることもでき、遮蔽板4の取り外し及び取り付けの作業が比較的小さな力で可能となる。
遮蔽板4は、複数の吐出口N1,…の全てを含むような幅方向の長さに形成されている。好ましくは、遮蔽板4は、図5に示すように、幅方向両側に位置する吐出口N1,N10よりも外側に突出する程度の幅方向の長さに形成され、より好ましくは、搬送装置3によって搬送される生機Bの幅よりも大きく、遮蔽板4の幅方向両端部が生機Bの幅方向両端よりも外側に突出する程度の幅方向長さに形成されている。
また、遮蔽板4の長さ(生機Bの長手方向に対応する遮蔽板4の長さ)は、特に限定されないが、大きくすると遮蔽部42の表面に落ちた染色剤が不用意に遮蔽板4の第1側端4aから生機Bへと流れることを防ぎやすくなるが、装置の大型化を招かないサイズとすることが好ましい。かかる観点から、遮蔽板4の長さは、50mm〜500mmが好ましく、さらに、100mm〜300mmがより好ましい。
遮蔽板4は、吐出口N1,…から離れて設けられている。また、遮蔽板4を吐出口N1,…に近づける又は遠ざけることができるように、遮蔽板4を上下に移動させる上下移動装置(図示せず)が設けられていてもよい。
【0028】
遮蔽板4は、図4に示すように、側面視で、その第1側端4aを第2側端4bよりも高くして、傾斜状態とされている。遮蔽板4を傾斜させることにより、遮蔽部42に邪魔されて生機Bへ導かれない染色剤が、その傾斜に従い集合部材59に集まり回収できるようになる。遮蔽板4の傾斜角度α4は、特に限定されないが、余りに小さいと、前記染色剤を確実に回収できないおそれや染色剤が跳ね返るおそれがあり、余りに大きいと、本来、通過部41を通じて生機Bへ導かれるべき染色剤が通過部41を確実に通過できないおそれがある上、装置が大型化する。かかる観点から、前記遮蔽板4の傾斜角度α4は、5度〜60度が好ましく、10度〜45度がより好ましい。
前記遮蔽板4の傾斜角度α4は、遮蔽板4の表面と水平面との内角をいう。
また、前記角度α4を変更できるように、遮蔽板4に角度調整装置(図示せず)が設けられていてもよい。
遮蔽部42の表面に落ちた染色剤が不用意に遮蔽板4の第1側端4aから生機Bへと流れるおそれを防止するために、吐出口N1,…から下方に延長した線が遮蔽部42に交わる箇所と遮蔽板4の第1側端4aとの距離が、20mm以上、好ましくは30mm以上となるように、遮蔽板4が配置されていることが好ましい。
【0029】
前記遮蔽板4は、複数の通過部41が所定間隔をあけて面内に形成された板状体からなる。この複数の通過部41は、複数の吐出口N1,…のうち幾つかの吐出口N1,…に対応して開口されている。
具体的には、遮蔽板4は、例えば、平坦状、波板状、凹凸状などの任意の表面形状を有する板体を用いて形成できる。図5に示すように、遮蔽板4は、通過部41を除いて、表面が平坦な平板からなり、平面視略長方形状とされている。遮蔽板4の裏面は、図示のように平坦でもよく、或いは、特に図示しないが、波板状、凹凸状などの任意の裏面形状に形成されていてもよい。
遮蔽板4には、複数の吐出口N1,…のうち幾つかの吐出口N1,N3,N5,N7,N9の下方に対応して通過部41がそれぞれ形成され、各通過部41は、遮蔽板4の厚み方向に貫通された1つの孔部、すなわち、遮蔽板4の表裏面に貫通された1つの孔部からなる。なお、各通過部41は、それぞれ1つの孔部からなる場合に限られず、密集した複数の孔部からなるものでもよい。遮蔽板4のうち前記通過部41以外の部分は、厚み方向に貫通部分を有さない遮蔽部42とされている。従って、前記複数の吐出口N1,…のうち幾つかの吐出口以外の吐出口N2,N4,N6,N8,N10の下方には、遮蔽板4の遮蔽部42が位置している。
換言すると、複数の吐出口N1,…のうち幾つかの吐出口N1,N3,N5,N7,N9の下方には、遮蔽板4の通過部41が配置されており、前記幾つかの吐出口以外の吐出口N2,N4,N6,N8,N10の下方には、通過部を有さず、遮蔽板4の表面である遮蔽部42が配置されている。以下、通過部41に対応する幾つかの吐出口を、「通過部対応吐出口」といい、幾つかの吐出口以外の吐出口を「非対応吐出口」という場合がある。
【0030】
なお、図示例では、通過部41は、吐出口N1,…の真下に形成されているが、真下に形成されていなくてもよく、例えば、生機Bの幅方向や長手方向に少しずれていてもよい。本明細書において「真下」とは、吐出口N1,…から生機Bに対して鉛直な下方向をいう。
また、図示例では、通過部41として、遮蔽板4に形成された孔部を例示しているが、通過部41は、孔部に限られず、例えば、遮蔽板4に形成された切り欠き部などでもよい。切り欠き部は、特に図示しないが、例えば、遮蔽板4の第1側端41aから遮蔽板4の一部分を切り欠くことによって形成できる。
【0031】
通過部対応吐出口N1,N3,N5,N7,N9から出た染色剤は、その自重により真下などの下方に落下し、遮蔽板4に干渉されることなく、通過部41である孔部を通過して生機B側へと移行する。非対応吐出口N2,N4,N6,N8,N10から出た染色剤は、その自重により下方に落下し、遮蔽板4の表面である遮蔽部42に遮られ、生機Bに移行しない。非対応吐出口N2,N4,N6,N8,N10から出た染色剤は、遮蔽部42に当たり、遮蔽板4の傾斜に従い、遮蔽板4の第2側端4b側へと流れていき、集合部材59を通じて回収タンクに回収される。
吐出口に対応する通過部41の数は、特に限定されず、例えば、吐出口の数×1/4〜吐出口の数×3/4などが挙げられる。制御が容易で多種多様な色模様に染色できることから、吐出口に対応する通過部41の数は、吐出口の数×1/2が好ましい。
【0032】
孔部からなる通過部41の平面視形状は、特に限定されず、図5に示すような平面視略円形状のほか、特に図示しないが、平面視略楕円形状、略三角形状や略四角形状などの略多角形状、その他の異形状などが挙げられる。汚れが付き難く、掃除が簡単なことから、孔部は、平面視略円形状、平面視略楕円形状、又は、角が丸まった多角形状であることが好ましく、平面視略円形状であることがより好ましい。
前記孔部(通過部41)の大きさは、特に限定されないが、平面視略円形状を基準にして、それぞれ独立して、吐出口の内径×1.1〜吐出口の内径×2であることが好ましい。具体的数値では、前記孔部の大きさは、平面視略円形状を基準にして、それぞれ独立して、直径3.3mm〜80mmが好ましく、直径5mm〜30mmがより好ましい。なお、平面視略円形状でない場合の孔部の大きさは、前記平面視略円形状の円相当径とする。各孔部(各通過部41)の大きさは、同一でもよく、或いは、異なっていてもよい。
【0033】
複数の通過部41の配置は、適宜設定できる。換言すると、通過部対応吐出口N1,N3,N5,N7,N9は、複数の吐出口N1,…から適宜選択できる。
図示例では、例えば、第1タンク631に繋がった第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9の直下に対応する位置に、それぞれ通過部41が形成されており、従って、この第1吐出口が通過部対応吐出口とされている。他方、第2タンク632に繋がった第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10が、非対応吐出口とされている。よって、通過部41と遮蔽部42が幅方向に1つずつ交互に配置されたパターンで、遮蔽板4に通過部41が設けられている。
第1吐出口に対応する位置に形成された複数の通過部41は、前記パターンで遮蔽板4の幅方向に所定間隔を開けて1列に並んでいる。前記複数の通過部41の間隔は、例えば、吐出口の間隔W1の約2倍である。
ただし、幅方向に交互に配置される通過部41と遮蔽部42のパターンは、前記のように1つずつ交互に配置される場合に限定されず、適宜変更可能であり、また、遮蔽板4に、通過部41と遮蔽部42の配置パターンが異なる列が、2列以上形成されていてもよい。
【0034】
また、連続染色機Aには、遮蔽板4を複数の吐出口N1,…が並んだ方向に相対的に移動させるスライド装置が設けられている(スライド装置は、不図示)。
1つの実施形態では、前記スライド装置は、遮蔽板4及び複数の吐出口N1,…の少なくとも一方を生機Bの幅方向第1側及び第2側に平行移動させる。前記幅方向第2側は、幅方向において第1側とは反対側である。
例えば、スライド装置は、遮蔽板4を生機Bの幅方向第1側及び第2側に平行移動させるものである。また、スライド装置は、遮蔽板4を移動させず、複数の吐出口N1,…の間隔を保持したまま、全ての吐出口N1,…を生機Bの幅方向第1側及び第2側に平行移動させるものでもよく、或いは、遮蔽板4及び全ての吐出口N1,…をそれぞれ生機Bの幅方向第1側及び第2側に平行移動させるものでもよい。
【0035】
また、もう1つの実施形態では、前記スライド装置は、遮蔽板4及び複数の吐出口N1,…の少なくとも一方を生機Bの搬送方向下流側及び上流側に平行移動させる。
例えば、スライド装置は、遮蔽板4を生機Bの搬送方向下流側及び上流側に平行移動させるものである。また、スライド装置は、遮蔽板4を移動させず、複数の吐出口N1,…の間隔を保持したまま、全ての吐出口N1,…を生機Bの搬送方向下流側及び上流側に平行移動させるものでもよく、或いは、遮蔽板4及び全ての吐出口N1,…をそれぞれ生機Bの搬送方向下流側及び上流側に平行移動させるものでもよい。
【0036】
さらに、もう1つの実施形態では、前記スライド装置は、遮蔽板4及び複数の吐出口N1,…の少なくとも一方を生機Bの幅方向及び搬送方向に対して傾斜した方向に平行移動させる。
例えば、スライド装置は、遮蔽板4を生機Bの幅方向及び搬送方向に対して傾斜した方向に平行移動させるものでもよい。また、スライド装置は、遮蔽板4を移動させず、複数の吐出口N1,…の間隔を保持したまま、全ての吐出口N1,…を生機Bの幅方向及び搬送方向に対して傾斜した方向に平行移動させるものでもよく、或いは、遮蔽板4及び全ての吐出口N1,…をそれぞれ生機Bの幅方向及び搬送方向に対して傾斜した方向に平行移動させるものでもよい。
図示例のように、複数の通過部41が幅方向に並設された列を少なくとも1列有する遮蔽板4を用いる場合には、前記スライド装置は、遮蔽板4及び複数の吐出口N1,…の少なくとも一方を生機Bの幅方向第1側及び第2側に平行移動させるものであることが好ましく、簡易な機構でスライドさせることができることから、遮蔽板4を生機Bの幅方向第1側及び第2側に平行移動させるものであることがより好ましい。
【0037】
遮蔽板4の材質は、特に限定されず、金属、合成樹脂、ガラス、陶器、これらの組み合わせなどが挙げられる。中でも、耐腐食性に優れ、染色剤が付着し難いことから、誘導板5はステンレスで形成されていることが好ましい。
【0038】
(誘導板)
誘導板5は、必要に応じて遮蔽板4の下方に設けられ、遮蔽板4の通過部41と生機Bの間に介在されている。誘導板5は、例えば、例えば、平坦状、波板状、凹凸状などの任意の表面形状を有する板体を用いて形成できる。図示例では、誘導板5は、表面が平坦な平板からなり、平面視略長方形状とされている。誘導板5の裏面は、図示のように平坦でもよく、或いは、特に図示しないが、波板状、凹凸状などの任意の裏面形状に形成されていてもよい。また、誘導板5は、平板に限られず、屈曲部を有する板状体や曲面部を有する板状体を用いてよい。
誘導板5の第1側端5aは、図4に示すように、側面視で尖っていることが好ましい。誘導板5の第1側端5aが側面視で尖っていることにより、染色剤の切れが良くなり、誘導板5の表面上を流れてきた染色剤が誘導板5の裏面側に回り込み難くなる。
誘導板5の材質は、特に限定されず、金属、合成樹脂、ガラス、陶器、これらの組み合わせなどが挙げられる。中でも、耐腐食性に優れ、染色剤が付着し難いことから、誘導板5はステンレスで形成されていることが好ましい。
【0039】
誘導板5は、搬送装置3によって搬送される生機Bの表面の上側に配置されている。誘導板5は生機Bの幅方向に延在するように、誘導板5の第1側端5aを生機Bの幅方向に略平行にして配置されている。
誘導板5は、図4に示すように、その第1側端5aを生機Bの表面から離れた状態で、装置のフレームなどの躯体側(図示せず)に固定されている。また、誘導板5の第1側端5aを生機Bの表面に近づける又は遠ざけることができるように、誘導板5を上下に移動させる移動装置(図示せず)が設けられていてもよい。
図示例の誘導板5の第1側端5aは、図5に示すように、平面視で直線状である。もっとも、誘導板5の第1側端5aが、平面視で、波線状、ジグザグ状、幅方向中央部が内側に凹んだ弧状又は屈曲状、幅方向中央部が外側に突出した弧状又は屈曲状などであってもよい。
【0040】
誘導板5の第2側端5bには、染色剤を集める集合部材59が設けられている。集合部材59は、例えば、図3及び図4に示すように、誘導板5の第2側端5bに沿って延びる長状の溝部材から構成されている。この集合部材59の幅方向一方側の端部59aは、染色剤を回収する回収タンク(図示せず)に繋がっている。
なお、集合部材は、遮蔽板4の第2側端4bに設けられていてもよい。
【0041】
誘導板5の第1側端5aが生機Bから離れている場合、誘導板5の第1側端5aと生機Bの表面との間の直線長さは特に限定されないが、余りに小さいと、両者が接触し、余りに大きいと、装置の大型化を招く上、誘導板5の第1側端5aから流れ落ちる染色剤が生機Bの表面で跳ね返るおそれがある。かかる観点から、誘導板5の第1側端5aと生機Bの表面との間の直線長さが5mm〜100mmとなるように誘導板5が配置されていることが好ましく、10mm〜50mmとなるように誘導板5が配置されていることがより好ましい。
なお、上述の誘導板5を上下に移動させる移動装置を設けた場合、製造条件や環境などに応じて前記直線長さを適切な距離に微調整することが可能となる。
誘導板5の幅方向の長さは、図5に示すように、搬送装置3によって搬送される生機Bの幅よりも大きく、従って、誘導板5の幅方向両端部は、生機Bの幅方向両端よりも外側に突出されている。
また、誘導板5の長さ(生機Bの長手方向に対応する誘導板5の長さ)は、特に限定されないが、余りに小さいと、染色剤を伝わせる面積が小さくなり過ぎるおそれがある。かかる観点から、誘導板5の長さは、100mm以上が好ましく、さらに、200mm以上がより好ましい。また、誘導板5の長さが余りに大きいと、装置の大型化を招くことから、誘導板5の長さ1500mm以下が好ましい。
【0042】
図4に示すように、誘導板5は、側面視で誘導板5の第1側端5aを第2側端5bよりも低くして、その表面が生機Bの表面に対して非平行となるように配置されている。好ましくは、誘導板5の表面と生機Bの表面の成す内角α5が、0度を越え90度以下となるように、誘導板5は配置され、より好ましくは、前記内角α5が、10度〜80度となるように誘導板5は配置され、さらに好ましくは、前記内角α5が、30度〜70度となるように誘導板5は配置されている。このように誘導板5が生機Bに対して鋭角に傾斜して配置されていることにより、誘導板5の表面から生機Bの表面に良好に染色剤が流れていくようになる。
ただし、誘導板5が屈曲部を有する形状や曲面部を有する形状である場合の、前記誘導板5の表面と生機Bの表面の成す内角α5は、平均角度とする。
また、前記内角α5を変更できるように、誘導板5に角度調整装置(図示せず)が設けられていてもよい。前記内角α5を小さくすれば、より染色剤が拡がりやすくなり、内角を大きくすれば、早期に染色剤を生機Bに導くことができる。
【0043】
また、誘導板5を振動させる振動装置(図示せず)が設けられていてもよい。振動装置は、誘導板5を生機Bの幅方向に平行に振動させる動作、誘導板5を生機Bの長手方向に平行に振動させる動作、及び、誘導板5を生機Bに対して近づけたり又は遠ざけたりする上下方向に振動させる動作から選ばれる少なくとも1つの動作を有する。誘導板5が振動することにより、誘導板5上での染色剤の混じり方に変化を与えることができる。振動装置による誘導板5の振動幅は、余りに小さいと、実質的に振動の効果がなく、余りに大きいと、染色剤が誘導板5から大きく漏れ落ちるおそれがある。かかる観点から、誘導板5の振動幅は、0.3mm〜10mm程度が好ましい。
【0044】
[カーペットの連続染色方法]
次に、本発明のカーペットの連続染色方法を説明する。
本発明のカーペットの連続染色方法は、カーペットの製造に組み込まれた1つの工程として行うことができる。
例えば、カーペットの製造方法は、未染色の生機の準備工程、生機の搬送工程、生機の染色工程、裏面層の形成工程を有し、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
これら各工程を1つの製造ラインで一連に行ってもよいし、或いは、前記各工程から選ばれる1つ又は2つ以上の工程を、1つのラインで行い、且つ残る工程を他の1つ又は2つ以上のラインで行ってもよい。また、前記各工程の全てを一の実施者が行ってもよいし、或いは、前記各工程から選ばれる1つ又は2つ以上の工程を一の実施者が行い、且つ残る工程を他の実施者が行ってもよい。
また、本発明の連続染色方法は、上記連続染色機Aを用いて好適に実施できる。以下、本発明の連続染色方法として、上記連続染色機Aを用いた場合を例に採って説明するが、本発明の連続染色方法は、上記連続染色機Aを用いて実施する場合に限定されるわけではない。
【0045】
<生機の準備>
長尺帯状の未染色の生機Bを作製する。前記未染色の生機Bは、長尺帯状の基布にパイル糸をタフトすることによって得られる。
パイル糸は、後述する染色工程での染色剤で染色可能なものであれば特に限定されず、未着色のパイル糸そのものでもよく、所望の色彩に着色されているパイル糸でもよい。
パイル糸は、従来公知なものを用いることができ、例えば、熱可塑性樹脂などからなる合成繊維、綿、羊毛などの天然繊維、合成繊維と天然繊維の混繊などが挙げられる。前記合成繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリアミド、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、セルロース、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。様々な色彩に良好に染色できることから、ポリアミド系樹脂繊維を含むパイル糸又はポリアミド系樹脂繊維のみからなるパイル糸を用いることが好ましい。
基布にタフトされたパイル糸は、カットパイルでもよいし、或いは、ループパイルでもよい。また、パイル高も特に限定されず、例えば、1mm〜20mmであり、好ましくは2mm〜10mmである。さらに、パイル高は、一定でもよく、或いは、異なっていてもよい。パイル高を異ならせてパイル糸をタフトすることにより、パイル高に起因する凹凸模様を生機Bの表面に形成できる。
なお、基布にパイル糸をタフトして生機Bを形成した後、必要に応じて、パイル糸の解れを防止するために、基布の裏面に、接着剤などからなる目止め層を形成してもよい。
【0046】
<搬送工程>
搬送工程は、前記未染色の生機Bを搬送する工程である。
連続染色機Aの搬送装置3を用いて、未染色の生機Bをその長手方向に搬送する。その生機Bの搬送途中で後述する染色工程にて生機Bが染色される。なお、染色工程の前に、生機Bのパイル糸に、水や薬品などを接触させるなどの前処理を行ってもよい。
生機Bの搬送速度は、特に限定されず、従来公知の速度でよく、例えば、1m/分〜 25m/分である。
【0047】
<染色工程>
染色工程は、生機Bの幅方向に配置された複数の吐出口N1,…から染色剤を吐出し、その染色剤によって前記生機Bを染色する工程である。特に、本発明の連続染色方法は、染色工程において、複数の吐出口N1,…のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を生機Bへと導き、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を生機B外へと導くことを特徴する。
具体的には、連続染色機Aの搬送装置3において、図7乃至図9に示すように、搬送途中に配置された全ての吐出口N1,…から染色剤が搬送中の生機Bに吐出される。
上記のように、複数のタンク631,632が設けられた連続染色機Aにあっては、通常、それぞれのタンク631,632に異なる染色剤が入れられる。もっとも、複数のタンク631,632が設けられている場合でも、それぞれのタンク631,632に同じ染色剤を入れて連続染色を行ってもよい。
前記異なる染色剤は、(a)パイル糸を染色する色彩が異なる染色剤、(b)色彩は同系統であるが色の濃さが異なる染色剤、(c)色彩は同じであるが染色剤自体の濃度が異なる、(d)後述するように種類が異なる染色剤(例えば、酸性染料とカチオン染料は、種類が異なる染色剤である)、(e)前記(a)乃至(d)から選ばれる少なくとも2つの組み合わせ、などが挙げられる。
【0048】
例えば、第1タンク631に、所望の色彩(例えば、青色など)にパイル糸を染色できる染色剤が入れられ、第2タンク632に、これと異なる色彩(例えば、白色など)にパイル糸を染色できる染色剤が入れられる。また、例えば、第1タンク631に、所望の色彩の酸性染料が入れられ、第2タンク632に所望の色彩のカチオン染料が入れられる。以下、これらの異なる染色剤を、第1染色剤、第2染色剤という場合がある。
なお、上記では、タンク、供給チューブ及び吐出口を含む染色剤供給部が2組である染色機Aを図示しているが、染色剤供給部が3組以上設けられている場合には、それぞれの供給部からそれぞれ互いに異なる染色剤が吐出されることが好ましい。
また、各タンク631,632に入れられる染色剤は、種々の染料を組み合わせてもよく、たとえば酸性染料とカチオン染料とを混合した混合染料、複数の酸性染料を混合して所望の色に調整した染料などでもよい。
【0049】
染色剤の種類は、パイル糸に応じて適宜設定でき、例えば、染料、顔料が挙げられ、好ましくは、染料が用いられる。前記染料の種類としては、例えば、酸性染料、カチオン染料、含金属性染料、分散染料、直接染料、反応染料、蛍光染料、硫化染料、これらの組み合わせなどが挙げられる。
染色剤は、流動性を有する液状のものが使用される。
染色剤の粘度は、特に限定されないが、余りに粘度が大きいと染色剤が誘導板5の表面上で良好に流れず、余りに粘度が小さいと染色剤が誘導板5の表面を伝って早期に流れてしまうおそれがある。かかる観点から、染色剤の粘度は、0.6mPa・s〜100mPa・sが好ましく、0.6mPa・s〜10mPa・sがより好ましい。
ただし、前記粘度は、23℃で、E型粘度計(株式会社東京計器製の型式「VISCONIC E」、回転数25〜100RPM)を用いて測定される。
【0050】
各吐出口N1,…からの染色剤の吐出速度は、特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、0.2〜10L(リットル)/minであり、好ましくは、0.5〜5L(リットル)/minである。吐出速度を前記範囲にすることによって、遮蔽板4の遮蔽部42上及び誘導板5上で染色剤が跳ね返ることを効果的に防止できる。
【0051】
各吐出口N1,…から吐出された染色剤は、遮蔽板4によって選択的に誘導板5に導かれる。
図5及び図7に示すように、遮蔽板4と吐出口N1,…との関係について、第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9の直下に各通過部41が対応するように、遮蔽板4が当初位置している場合(当初ポジションという)、通過部対応吐出口N1,N3,N5,N7,N9からの染色剤は、通過部41を通過して、誘導板5の表面に落ちる。非対応吐出口N2,N4,N6,N8,N10からの染色剤は、遮蔽板4の遮蔽部42に遮られ、遮蔽板4の表面を伝って集合部材59へと流れていき、回収される。
各吐出口N1,…からの染色剤の吐出性状は、特に限定されないが、通過部対応吐出口N1,N3,N5,N7,N9からの染色剤が遮蔽板4の通過部41を確実に通過するようにするため、吐出口N1,…から染色剤を下方に略直線状に吐出することが好ましい。
図示例では、各吐出口N1,…から出た染色剤は、自重により、そのまま下方に垂下する。
【0052】
通過部対応吐出口である第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9から第1染色剤を吐出し、非対応吐出口である第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10から第2染色剤を吐出すると、第1染色剤は、通過部41を通過して誘導板5上に流れ、誘導板5の表面を伝って第1側端5a側へと流れていき、第2染色剤は、遮蔽板4の表面を伝って第2側端4bから集合部材59へと流れていく。
そして、誘導板5上に流れた第1染色剤は、誘導板5の第1側端5a側に向かうに従い幅方向に拡がっていきながら、その第1側端5aから生機Bの表面へと移行する。
なお、図7乃至図9において、判り易く示すため、便宜上、第1染色剤に無数のドットを付し、第2染色剤に網掛けを付している。以下、第1染色剤及び第2染色剤が表される他の図においても、第1染色剤に無数のドットを付し、第2染色剤に網掛けを付している。
各通過部対応吐出口N1,N3,N5,N7,N9からの第1染色剤は、生機Bの長手方向に帯状に塗布されていき、その帯状の染色部分は、それぞれ幅方向の中央部が最も濃く染まり、幅方向両側に向かうに従って薄くなり、隣接する帯状の染色部分の間は、非常に薄く染まるようになる。
このように生機Bの幅方向において、濃く染まった部分の間に徐々に薄くなる部分が生じ、濃く染まった部分の間に連続的に色変化したグラデーションが生機Bの表面に形成される。このグラデーション領域が自然な風合いのぼかしとなり、第1染色剤にて手作り感のある色模様に生機Bを染色できる。
【0053】
また、図10に示すように、遮蔽板4をスライド装置(不図示)によって当初ポジションから幅方向に相対移動させることにより、通過部対応吐出口を変更することができる。
例えば、吐出口の間隔W1だけ遮蔽板4を当初ポジションから幅方向に移動させると、第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10の下方に通過部41が位置するようになる。つまり、遮蔽板4の移動前には図5に示すように第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9の下方に通過部41が配置されていたが、遮蔽板4を吐出口の間隔W1に相当する分だけ遮蔽板4を幅方向に相対移動させることにより、図10に示すように、第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10の下方に通過部41が配置される。従って、遮蔽板4を相対移動させた後の通過部対応吐出口は、第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10となる。
事後、同様に各吐出口N1,…から染色剤を吐出することにより、第2染色剤は、通過部41を通過して誘導板5上に流れ、誘導板5の表面を伝って第1側端側へと流れていき、第1染色剤は、遮蔽板4の表面を伝って集合部材59へと流れていく。誘導板5上に流れた第2染色剤は、図11に示すように、誘導板5の第1側端5a側に向かうに従い幅方向に拡がっていきながら、その第1側端から生機Bの表面へと移行し、上述と同様に、第2染色剤にて手作り感のある色模様に生機Bを染色できる。
【0054】
[第2実施形態に係るカーペットの連続染色機]
上記第1実施形態で説明したように、凹凸状の表面形状を有する連続染色機用遮蔽板4を用いて連続染色機Aを構成してもよく、第2実施形態は、その凹凸状の表面形状を有する連続染色機用遮蔽板4の具体例に関する。
以下、本発明の第2実施形態を説明するが、その説明に於いては、主として上記実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、用語又は符号をそのまま援用し、その構成の説明を省略する場合がある(第3実施形態以降も同様である)。
【0055】
図12及び図13に示すように、第2実施形態の連続染色機Aは、表面が凹凸状に形成された遮蔽板4を有する。
例えば、遮蔽板4の表面には、下方に凹んだ凹部7が複数形成されており、その複数の凹部7が所定間隔を開けて幅方向に配置されている。隣接する2つの凹部7の間には、凸部が形成されている。なお、凹凸は、凹と凸の相対的な関係で決定されるものであり、前記凹部7は、凸部の表面を基準として下方に突出した部分である。凹部7には、通過部41が形成されている。
凸部の表面は、遮蔽板4の平坦な表面の一部に含まれており、凸部の表面が遮蔽部42とされている。従って、遮蔽板4には、幅方向において、通過部41を有する凹部7と、遮蔽部42を構成する凸部とが、幅方向に交互に並んで配置されている。
【0056】
凹部7は、最も下方に凹んだ部分である底面部71と、前記底面部71の第2側端と凸部との間に形成された背面壁部72と、前記底面部71の両側端と凸部との間に形成された両側面壁部73,73と、を有する。これらの壁部72,73によって囲われた部分が凹部7とされている。
凹部7の底面部71には、通過部41として孔部が穿設されている。後述するように、凹部7に入った染色剤が良好に通過部41から流れ落ちるようになることから、前記通過部41は、図示のように、背面壁部72の近傍に形成され、或いは、背面壁部72の一部を含んで形成されていることが好ましい。
前記背面壁部72は、凹部7に入った染色剤が良好に通過部41から流れ落ちるようになることから、図示例のように、凸部の表面に対して直交して形成されていることが好ましい。もっとも、背面壁部72は、凸部の表面に対して傾斜して形成されていてもよい。
前記両側面壁部73,73は、凹部7に入った染色剤を良好に通過部41に導くことができることから、図示例のように、凸部の表面に対して傾斜した傾斜面であって、通過部41側へと下向き傾斜した傾斜面とされていることが好ましい。前記傾斜面は、平面的でもよく、図示例のように湾曲面(特に下向きに膨らんだ湾曲面)でもよい。
なお、図示例では、遮蔽板4の第2側端に染色剤を回収する集合部材49が設けられているが、第1実施形態のように、集合部材が誘導板に設けられていてもよい。
【0057】
凹部7の幅W2は、特に限定されず、適宜設定できる。例えば、凹部7の幅W2は、隣接する2つの吐出口の間隔W1以上で且つ連続する3つの吐出口の両端の間隔未満である。なお、連続する3つの吐出口の両端の間隔は、隣接する2つの吐出口の間隔W1の2倍である。図示例では、凹部7の幅W2は、隣接する2つの吐出口の間隔W1よりも僅かに大きい。
凸部の幅W3は、特に限定されず、適宜設定できる。例えば、凸部の幅W3は、1つの吐出口の直径よりも大きく且つ隣接する2つの吐出口の間隔W1未満である。図示例では、凸部の幅W3は、隣接する2つの吐出口の間隔W1よりも僅かに小さい。
また、図示例では、当初ポジションとして、第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9の下方に遮蔽部42(凸部の表面)が位置し、且つ、第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10の下方に通過部41(凹部7)が位置するように、遮蔽板4が配置されている。
【0058】
次に、第2実施形態の連続染色機の使用及び連続染色方法を説明する。
第1実施形態と同様にして、未染色の生機を搬送し、複数の吐出口N1,…から染色剤を吐出し、その染色剤によって前記生機を染色する。
図14に示すように、非対応吐出口である第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9から第1染色剤を吐出し、通過部対応吐出口である第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10から第2染色剤を吐出すると、第1染色剤は、遮蔽部42から遮蔽板4の表面を伝って集合部材49へと流れ、第2染色剤は、凹部7に入り通過部41を通過して誘導板5上に流れていく。第2染色剤が誘導板5上から生機Bに流れることにより、第1実施形態と同様に、第2染色剤にて手作り感のある色模様に生機Bを染色できる。
【0059】
また、図13に示すように、遮蔽板4をスライド装置(不図示)によって当初ポジションから幅方向に相対移動させることにより、通過部対応吐出口を変更することができる。
例えば、吐出口の間隔W1の半分だけ遮蔽板4を当初ポジションから幅方向に相対移動させると、図15に示すように、隣接する2つの吐出口の下方に凹部7が位置するようになる。図示例では、第1吐出口N1と第2吐出口N2の下方に1つの凹部7が位置し、同様に、第1吐出口N3と第2吐出口N4、第1吐出口N5と第2吐出口N6、第1吐出口N7と第2吐出口N8、及び第1吐出口N9と第2吐出口N10の下方にそれぞれ凹部7が位置する。このため、図16に示すように、第1染色剤と第2染色剤が凹部7に入り込み、それらが無秩序に混ざりつつ通過部41を通過して誘導板5を通じて生機Bへと移行される。このため、生機Bを第1染色剤と第2染色剤が無秩序に混じった色彩に染色でき、例えば、第1染色剤と第2染色剤が色彩の異なる染色剤である場合には、ぼかし調のマーブル柄のカーペットを得ることもできる。
【0060】
さらに、スライド装置(不図示)により、遮蔽板4をさらに吐出口の間隔W1の半分だけ幅方向の同じ側に相対移動させると、第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9の下方に通過部41(凹部7)が位置し、且つ、第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10の下方に遮蔽部42(凸部の表面)が位置するようになり、第1実施形態と同様に、第1染色剤にて手作り感のある色模様に生機Bを染色できる。なお、この場合は、遮蔽板4を当初ポジションから吐出口の間隔W1に相当する分だけ幅方向に相対移動させることを意味する。
【0061】
なお、本実施形態において、凹部7の幅W2は、適宜変更できる。例えば、凹部7の幅W2を、連続する3つの吐出口の両端の間隔以上且つ連続する4つの吐出口の間隔未満とし、連続する3つの吐出口からの染色剤として互いに異なる染色剤を用いることにより、ぼかし調の2種以上のマーブル柄のカーペットを得ることもできる。
【0062】
[第3実施形態に係るカーペットの連続染色機]
第3実施形態は、遮蔽板の表面に区画壁部を突出させている点で上記第2実施形態と異なっている。
図17及び図18に示すように、第3実施形態の連続染色機Aは、表面が凹凸状に形成された遮蔽板4を有する。
例えば、遮蔽板4の表面には、上方に突出した区画壁部8が複数形成されている。
区画壁部8は、遮蔽板4の第2側端側において幅方向に延びる背面区画壁81と、背面区画壁81の幅方向両側に連結された両側面区画壁82,82と、を有する。
この区画壁部8によって囲われた部分は、それ以外の部分と遮蔽板4の表面上において分離されている。区画壁部8によって囲われた部分には、通過部41として複数の孔部が穿設されている。複数の孔部は、例えば、背面区画壁81の近傍に密集して形成されているが、区画壁部8によって囲われた部分の全体に分散するように形成されていてもよい。
【0063】
図示例では、第1吐出口N1と第2吐出口N2の下方に区画壁部8によって囲われた部分が位置し、同様に、第1吐出口N3と第2吐出口N4、第1吐出口N5と第2吐出口N6、第1吐出口N7と第2吐出口N8、及び第1吐出口N9と第2吐出口N10の下方にそれぞれ区画壁部8によって囲われた部分が位置するように、遮蔽板4が配置されている。
【0064】
第3実施形態の連続染色機Aも、第1実施形態と同様にして、未染色の生機Bを搬送し、複数の吐出口N1,…から染色剤を吐出し、その染色剤によって前記生機Bを染色する。
当初ポジションとして図18のように遮蔽板4が配置されている場合には、全ての吐出口N1,…が通過部対応吐出口となるので、図19に示すように、第1吐出口N1からの第1染色剤と第2吐出口N2からの第2染色剤が1つの区画壁部8内に入り込み、無秩序に混ざりつつ通過部41を通過して誘導板5を通じて生機Bへと移行される。第1吐出口N3及び第2吐出口N4などから吐出される第1染色剤及び第2染色剤も同様に区画壁部8内で混ざりつつ通過部41を通過して生機Bへと移行される。このため、生機Bを第1染色剤と第2染色剤が無秩序に混じった色彩に染色でき、例えば、第1染色剤と第2染色剤が色彩の異なる染色剤である場合には、ぼかし調のマーブル柄のカーペットを得ることもできる。
また、スライド装置(不図示)により、遮蔽板4を当初ポジションから吐出口の間隔W1に相当する分だけ幅方向に相対移動させると、第2吐出口N2と第1吐出口N3の下方に区画壁部8によって囲われた部分が位置し、同様に、第2吐出口N4と第1吐出口N5、第2吐出口N6と第1吐出口N7、及び第2吐出口N8と第1吐出口N9の下方にそれぞれ区画壁部8によって囲われた部分が位置するようになる(図示せず)。このため、例えば、吐出口N1,N4,N7からの染色剤、吐出口N2,N5,N8からの染色剤及び吐出口N3,N6,N9からの染色剤として、それぞれ互いに色彩の異なる染色剤を用いることにより、異なるマーブル柄のカーペットを得ることができる。
【0065】
[第4実施形態に係るカーペットの連続染色機]
第4実施形態は、遮蔽板の表面に補助突起部を突出させている点で上記第1実施形態と異なっている。
図20及び図21に示すように、第4実施形態の連続染色機Aは、上記第1実施形態と同様な遮蔽板4が用いられているが、各通過部41の第2側端側に補助突起部85が形成されている。補助突起部85は、遮蔽部42上を流れる染色剤のうち少しの量を通過部41へと導くために設けられている。
この補助突起部85は、例えば、上記第3実施形態の背面区画壁81と同様に、幅方向に延びる壁状の突起であり、各通過部41に対応してそれぞれ突設されている。
各補助突起部85は、図示のように、平面視で弧状又はくの字状などに形成されているが、幅方向に直線状に形成されていてもよい。
各補助突起部85は、それぞれ独立しており、隣接する補助突起部85の間には、染色剤が遮蔽板4の第2側端4bへと流れるように隙間が空けられている。
【0066】
第4実施形態の連続染色機Aも、第1実施形態と同様にして、未染色の生機Bを搬送し、複数の吐出口N1,…から染色剤を吐出し、その染色剤によって前記生機Bを染色する。
図22のように、通過部対応吐出口である第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9から第1染色剤は、通過部41を通過して生機Bに移行し、非対応吐出口である第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10から第2染色剤は、遮蔽部42から遮蔽板4の表面を伝って集合部材59へと流れていく。この際、一部の第2染色剤が補助突起部85に当たり、補助突起部85によって通過部41へと導かれ、第1染色剤と混じりつつ生機Bへと移行する。
第4実施形態の連続染色機Aによれば、第2及び第3実施形態よりも、第1染色剤に対する第2染色剤の混じり量が少なくなった、ぼかし調のカーペットを得ることができる。
【0067】
[第5実施形態に係るカーペットの連続染色機]
第5実施形態は、上記各実施形態から選ばれる2つ以上の機能を併用した遮蔽板が設けられている。
図23に示すように、第5実施形態の連続染色機Aは、上記第1実施形態で示したような通過部41を有する遮蔽板4が用いられているが、その遮蔽板4の第2側端側に、第3実施形態で示したような区画壁部8が設けられている。この区画壁部8で囲われた部分には、第3実施形態と同様に、通過部41が設けられている。
つまり、第5実施形態の遮蔽板4は、その第1側端側(生機Bの搬送方向下流側)において第1実施形態と同様であり、その第2側端側(生機Bの搬送方向上流側)において第3実施形態と同様である。
第5実施形態の連続染色機Aは、図23に示す当初ポジションから、遮蔽板4を幅方向に相対移動させることにより、第1実施形態と同様に、通過部対応吐出口を変更できる。
また、図23に示す当初ポジションから、遮蔽板4を生機Bの長手方向に相対移動させることにより、図24に示すように、第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9の下方に区画壁部8によって囲われた部分である通過部41が位置し、第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10の下方に遮蔽部42が位置する。さらに、遮蔽板4を幅方向に相対移動させることにより、図25に示すように、第1吐出口N1と第2吐出口N2の下方に区画壁部8によって囲われた部分が位置し、同様に、第1吐出口N3と第2吐出口N4、第1吐出口N5と第2吐出口N6、第1吐出口N7と第2吐出口N8、及び第1吐出口N9と第2吐出口N10の下方にそれぞれ区画壁部8によって囲われた部分が位置するようになる。
このように、各実施形態で示した各遮蔽板の機能を適宜選択して、1つの遮蔽板に組み込んでもよい。
【0068】
[第6実施形態に係るカーペットの連続染色機]
上記第1実施形態で説明したように、通過部41と遮蔽部42の配置パターンが異なる列が2列以上形成された遮蔽板4を用いてもよく、第6実施形態は、複数列の配置パターンを有する連続染色機用遮蔽板4の具体例に関する。
【0069】
図26乃至図29に示すように、第6実施形態の連続染色機Aは、複数の通過部41と遮蔽部42が幅方向に第1パターンで配置された第1列と、複数の通過部41と遮蔽部42が前記第1列とは異なる第2パターンで配置された第2列と、を有する。第1列及び第2列の意味を判り易くするため、便宜上、図27に第1列及び第2列を破線で囲っている。なお、図示例では、通過部41の配置パターンが異なる2列を有する遮蔽板4を例示しているが、配置パターンの異なる3列以上を有する遮蔽板4を用いてもよい(図示せず)。
前記第1列及び第2列は、いずれも、複数の通過部41と複数の遮蔽部42が所望の組み合せで幅方向に交互に配置された1つの列であるが、第1列及び第2列は、互いの配置パターンが異なっている。幅方向に延びる第1列と第2列は、生機Bの長手方向に並設されている。
【0070】
第1列は、例えば、上記第1実施形態と同様に、1つの通過部41と1つの遮蔽部42が幅方向に交互に配置されたパターンからなる。図27を当初ポジションとした場合、第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9の直下に対応する位置に各通過部41が配置され、且つ、第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10の直下に対応する位置に各遮蔽部42が配置されることにより、第1列が構成されている。
第2列は、例えば、複数の通過部41と1つ又は複数の遮蔽部42が幅方向に交互に配置されたパターン、或いは、1つの通過部41と複数の遮蔽部42が幅方向に交互に配置されたパターンからなる。図27を当初ポジションとした場合、第1吐出口N1,N5,N7及び第2吐出口N2,N4,N8,N10の直下に対応する位置の延長線上に各通過部41が配置され、且つ、第1吐出口N3,N9及び第2吐出口N6の直下に対応する位置の延長線上に各遮蔽部42が配置されることにより、第2列が構成されている。
【0071】
なお、必要に応じて、遮蔽板4の表面には、混入防止用の壁部89が突設されていてもよい。前記混入防止用の壁部89は、遮蔽部42上を流れる染色剤が通過部41に流れ込むことを防止するために設けられる。
壁部89は、例えば、通過部41に通じる貫通穴を有する筒壁を遮蔽板4の表面に固着することによって形成されている。前記壁部89を構成する筒壁の貫通穴の大きさは、通過部41の大きさよりも小さくてもよいが、通過部41の大きさと同等又はそれよりも大きいことが好ましい。
【0072】
図27を当初ポジションとして、通過部対応吐出口である第1吐出口N1,N3,N5,N7,N9から第1染色剤は、上記第1実施形態と同様に生機Bに導かれ、非対応吐出口である第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10から第2染色剤は、遮蔽板4の表面を伝って第2側端4bから集合部材49へと流れて回収される。上記壁部89が設けられている場合には、遮蔽板4の表面を伝って流れる第2染色剤は、第2列に含まれる通過部41に流れ込むことがない。
【0073】
次に、図30(a)に示すように、遮蔽板4をスライド装置(不図示)によって当初ポジションから幅方向に相対移動させると、通過部対応吐出口が第2吐出口N2,N4,N6,N8,N10となり、それらの第2吐出口からの第2染色剤が生機Bへと導かれ、第1吐出口からの第1染色剤は、遮蔽板4の表面を伝って回収される。
【0074】
また、図30(b)に示すように、遮蔽板4をスライド装置(不図示)によって当初ポジションから生機Bの長手方向に相対移動させると、吐出口N1,…の下方に第2列が位置し、通過部対応吐出口が第1吐出口N1,N5,N7及び第2吐出口N2,N4,N8,N10となり、且つ、非対応吐出口が第1吐出口N3,N9及び第2吐出口N6となる。このため、第1吐出口N1からの第1染色剤と第2吐出口N2からの第2染色剤、第2吐出口N4からの第2染色剤と第1吐出口N5からの第1染色剤、及び、第1吐出口N7からの第1染色剤と第2吐出口N8からの第2染色剤がそれぞれ部分的に混じりつつ生機Bへと流れていくようになる。
【0075】
さらに、図30(c)に示すように、遮蔽板4を同図(b)のポジションから生機Bの幅方向に相対移動させると、通過部対応吐出口が第1吐出口N1,N3,N7,N9及び第2吐出口N4,N6,N10となり、且つ、非対応吐出口が第1吐出口N5及び第2吐出口N2,N8となる。このため、第1吐出口N3からの第1染色剤と第2吐出口N4からの第2染色剤、第2吐出口N6からの第2染色剤と第1吐出口N7からの第1染色剤、及び、第1吐出口N9からの第1染色剤と第2吐出口N10からの第2染色剤がそれぞれ部分的に混じりつつ生機Bへと流れていくようになる。
このように通過部41と遮蔽部42の配置パターンが異なる2列以上を有する遮蔽板4を用いることにより、生機Bを複雑な柄に染色できる。
【0076】
なお、本実施形態において、例えば、図31に示すように、側面視山型状の遮蔽板4を用いてもよい。かかる遮蔽板4は、第2側端4bが頂端4cよりも低くなるように傾斜させた第1面部451と、第1側端4aが頂端4cよりも低くなるように傾斜させた第2面部452と、を有し、第1面部451と第2面部452は、前記頂端4cにて一体化されている。この第1面部451に、複数の通過部41と遮蔽部42が幅方向に所望のパターンで配置された第1列が少なくとも形成され、第2面部452に前記とは異なる配置パターンの第2列が少なくとも形成されている。
また、その他図示しないが、2つ以上の独立した遮蔽板を併用してもよく、例えば、第1列が形成された第1の遮蔽板と、第2列が形成された遮蔽板であって前記第1の遮蔽板とは独立した第2の遮蔽板と、を有する連続染色機を用いてもよい。
【0077】
[その他の実施形態]
上記様々な実施形態から選ばれる2以上の実施形態を適宜組み合わせてもよく、或いは、上記様々な実施形態から選ばれる1つ又は2つ以上の構成を、それ以外の実施形態に置換・付加してもよい。例えば、第6実施形態で示したように、遮蔽板4に配置パターンが異なる2列以上を形成することを、第2実施形態に組み合わせたり、或いは、第6実施形態で示した構成の一部である混入防止用の壁部89を、第1実施形態に付加するなどしてもよい。
その他、本発明は、上記具体的な実施形態のみに限られず、本発明の意図する範囲で様々な構成に変更・置換・付加などすることができる。
【0078】
[具体例1]
上記第1実施形態のような、通過部41と遮蔽部42が幅方向に交互に1列に並んだ遮蔽板4を有する連続染色機を用いて、生機Bを染色した場合の具体的な設定例を説明する。
図32の番号1乃至34は、吐出口を表し、○は、遮蔽板の通過部を表し、×は、遮蔽板の遮蔽部を表す。図32は、34個の独立した吐出口が、遮蔽板の上方に離れて幅方向に1列に並んで配置されていることを表している。
図32の(A1)では、当初ポジションにある遮蔽板を表し、この当初ポジションにおいては、番号1,2,4,5,…で表された吐出口の直下に通過部が位置し、番号3,6,…で表された吐出口の直下に遮蔽部が位置している。
【0079】
この設定において、奇数番号の吐出口から第1染色剤を吐出し、偶数番号の吐出口から第1染色剤とは異なる色彩の第2染色剤を吐出すると、図32の(A1)の生機の染色状態に示すように染色される。つまり、番号3,9,15,21,27,31の吐出口からの第1染色剤は生機に流れず、それらの両側にある偶数番号2,4などの吐出口からの第2染色剤が生機に流れ込んでいくので、前記番号3,9,…の吐出口に対応する生機の表面は、第2染色剤によって薄く染色される。同様に、番号6,12,18,24,30の吐出口からの第2染色剤は生機に流れず、それらの両側にある奇数番号5,7などの吐出口からの第1染色剤が生機に流れ込んでいくので、前記番号6,12,…の吐出口に対応する生機の表面は、第1染色剤によって薄く染色される。
【0080】
次に、遮蔽板を当初ポジションから吐出口の間隔の1つ分だけ紙面右側に動かすと、同図(A2)に示すように、番号2,3,5,6,…で表された吐出口の直下に通過部が位置するようになり、生機の表面の染色柄が図示のように変化する。
さらに、遮蔽板を(A2)の位置から吐出口の間隔の1つ分だけ紙面右側に動かすと、同図(A3)に示すように、番号1,3,4,6,7,…で表された吐出口の直下に通過部が位置するようになり、生機の表面の染色柄が図示のように変化する。
次に、遮蔽板を(A3)の位置から吐出口の間隔の1つ分だけ紙面左側に動かすと、同図(A4)に示すように、番号2,3,5,6,…で表された吐出口の直下に通過部が位置するようになり、生機の表面の染色柄が図示のように変化する。
さらに、遮蔽板を(A4)の位置から吐出口の間隔の1つ分だけ紙面左側に動かすと、同図(A5)に示すように、番号1,3,4,6,7,…で表された吐出口の直下に通過部が位置するようになり、生機の表面の染色柄が図示のように変化する。
前記(A1)から(A5)を繰り返すと、同図(A6)に示すような、連続染色された生機が得られる。
【0081】
[具体例2]
上記第6実施形態のような、通過部41と遮蔽部42の配置パターンが異なる列が2列以上形成された遮蔽板4を有する連続染色機を用いて、生機Bを染色した場合の具体的な設定例を説明する。
図33の番号1乃至34、○及び×は、図32と同様のものを表す。
図33の(B1)に示すように、遮蔽板には、○で表された通過部と×で表された遮蔽部が幅方向に交互に配置された第1列と、前記第1列とは異なる配置パターンの第2列と、が形成されている。幅方向に列を成している第1列と第2列は、遮蔽板の幅方向と直交する方向において前後に並んでいる。
図33の(B2)では、当初ポジションにある遮蔽板を表し、この当初ポジションにおいては、吐出口の直下に第1列が位置し、そのうち、奇数番号で表された吐出口の直下に第1列の通過部が位置し、偶数番号で表された吐出口の直下に第1列の遮蔽部が位置している。当初ポジションにおいては、第2列は染色剤の生機への流れに寄与していない。以下、同図(B2)乃至(B7)において、生機への流れに寄与しない列に、斜め線を付している。
【0082】
当初ポジションにおいて、奇数番号の吐出口から第1染色剤を吐出し、偶数番号の吐出口から第1染色剤とは異なる色彩の第2染色剤を吐出すると、図33の(B1)の生機の染色状態に示すように染色される。つまり、偶数番号の吐出口からの第2染色剤は生機に流れず、奇数番号の吐出口からの第1染色剤が生機に流れ込むので、奇数番号の吐出口に対応する生機の表面は、第1染色剤によって濃く染色される。また、奇数番号の吐出口からの第1染色剤が偶数番号の吐出口に対応する生機の表面に流れ込んでいくので、偶数番号の吐出口に対応する生機の表面は、第1染色剤によって薄く染色される。
【0083】
次に、遮蔽板を当初ポジションから第1列と第2列の間隔の1つ分だけ紙面下側に動かすと、同図(B3)に示すように、吐出口の直下に第2列が位置し、第1列が染色剤の生機への流れに寄与しなくなる。そして、番号2,3,5,6,…で表された吐出口の直下に第2列の通過部が位置するようになり、生機の表面の染色柄が図示のように変化する。
さらに、遮蔽板を(B3)の位置から吐出口の間隔の1つ分だけ紙面右側に動かすと、同図(B4)に示すように、番号1,3,4,6,7,…で表された吐出口の直下に第2列の通過部が位置するようになり、生機の表面の染色柄が図示のように変化する。
【0084】
次に、遮蔽板を(B4)の位置から第1列と第2列の間隔の1つ分だけ紙面下側に動かすと、同図(B5)に示すように、偶数番号で表された吐出口の直下に第1列の通過部が位置するようになり、生機の表面の染色柄が図示のように変化する。
さらに、遮蔽板を(B5)の位置から第1列と第2列の間隔の1つ分だけ紙面下側に動かすと、同図(B6)に示すように、番号1,3,4,6,7,…で表された吐出口の直下に第2列の通過部が位置するようになり、生機の表面の染色柄が図示のように変化する。
さらに、遮蔽板を(B6)の位置から吐出口の間隔の1つ分だけ紙面左側に動かすと、同図(B7)に示すように、番号2,3,5,6,…で表された吐出口の直下に第2列の通過部が位置するようになり、生機の表面の染色柄が図示のように変化する。
前記(B2)から(B7)を繰り返すと、図34に示すような、連続染色された生機が得られる。
【0085】
なお、具体例1及び2において、吐出口の個数及び配置、各吐出口から吐出する染色剤の種類、遮蔽板の通過部の配置パターン及び列数、遮蔽板の移動方向、並びに、繰り返し回数パターンなどは任意に選択でき、上記設定に限定されるわけではない。
また、図32乃至図34において、「第1染色剤によって薄く染まった部分」と「第2染色剤によって薄く染まった部分」とがあるが、各吐出口からの染色剤の流量を大きくすることによって、濃く染めることもできる。これによって、第1染色剤及び第2染色剤による濃淡のない2色の柄を表現することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
A 連続染色機
B 未染色の生機
2 染色部
3 搬送装置
4 遮蔽板
41 遮蔽板の通過部
42 遮蔽板の遮蔽部
N1,N2,N3,N4,N5,N6,N7,N8,N9,N10 吐出口
図1
図2
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