特開2018-131753(P2018-131753A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-131753(P2018-131753A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20180727BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20180727BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20180727BHJP
   F16F 7/08 20060101ALI20180727BHJP
【FI】
   E04H9/02 321B
   F16F15/02 E
   F16F15/023 A
   F16F15/02 A
   F16F7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-24556(P2017-24556)
(22)【出願日】2017年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和彦
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB03
2E139AB04
2E139AC19
2E139BA14
2E139BA15
2E139BA19
2E139BA20
2E139BA36
2E139BD24
2E139BD26
3J048AA06
3J048AB01
3J048AC01
3J048AC04
3J048AC05
3J048AD05
3J048BD08
3J048BE03
3J048BE12
3J048CB21
3J048DA04
3J048EA38
3J066AA26
3J066CA05
3J066CB10
(57)【要約】
【課題】曲げモーメントの発生を抑制しながら、複数の板材を連結する連結部の構成を簡略化し、組み立て性を向上させた制振装置を提供する。
【解決手段】第1の連結部12により並列に連結され、下構造部材3の一方に取り付けられる複数の第1の板材10A〜10Cと、第2の連結部13により並列に連結され、上側構造部材2および下構造部材2の他方に取り付けられ、複数の第1の板材10A〜10Cと交互に並ぶように配置される複数の第2の板材11A、11Bと、互いに隣り合う第1の板材10A〜10Cと第2の板材11A、11Bとの間に位置し、それらの相対的な水平移動により、複数の第1の板材10A〜10Cおよび複数の第2の板材11A、11Bに抵抗力を発生させる抵抗力発生部材14とを備え、第1の連結部12は、複数の第1の板材10A〜10Cの水平方向の両端部17にそれぞれ設けられ、両端部17において複数の第1の板材10A〜10Cを連結する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側構造部材と、前記上側構造部材の下側に位置する下側構造部材との間に設置される制振装置であって、
一の連結部により並列に連結され、前記上側構造部材および前記下側構造部材の一方に取り付けられる複数の一の板材と、
他の連結部により並列に連結され、前記上側構造部材および前記下側構造部材の他方に取り付けられ、前記複数の一の板材と交互に並ぶように配置される複数の他の板材と、
互いに隣り合う一の板材と他の板材との間に位置し、前記複数の一の板材と前記複数の他の板材との相対的な水平移動により、前記複数の一の板材および前記複数の他の板材に抵抗力を発生させる抵抗力発生手段と、を備え、
前記一の連結部は、前記複数の一の板材と他の板材が設置時および稼働時に正面方向から見た時に重ならない前記一の板材の水平方向の両側の領域にそれぞれ設けられ、前記両側の領域において前記複数の一の板材を連結する、制振装置。
【請求項2】
各一の板材にかかる抵抗力の中心と、各一の板材に連結された前記一の連結部の中心とが概ね一致するように構成されている、請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
各一の板材にかかる抵抗力の中心と、前記抵抗力により前記一の連結部に発生する反力の中心とが概ね一致するように構成されている、請求項1に記載の制振装置。
【請求項4】
前記複数の一の板材は、前記下側構造部材に取り付けられ、
前記複数の一の板材のうち、それらが並ぶ方向において両端に位置する一の板材は、上部に開口を有し作動流体が収容される収容空間を形成する容器の一部を構成し、
前記抵抗力発生手段は、前記作動流体である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制振装置。
【請求項5】
前記抵抗力発生手段は、摩擦部材であり、隣り合う前記一の板材と前記他の板材との間に挟まれるように設けられている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制振装置。
【請求項6】
前記他の連結部は、前記複数の他の板材の水平方向の両端部にそれぞれ設けられ、前記両端部において前記複数の他の板材を連結する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の制振装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物等に加わる地震等の振動を抑制する制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上梁(上側構造物)と下梁(下側構造物)との間に配置され、下梁に取り付けられた複数の第1の板材と、上梁に取り付けられた複数の第2の板材と、隣り合う第1の板材と第2の板材との間に設けられた摩擦部材とを備えた制振装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、当該制振装置では、地震等の振動に際して、下梁と上梁とが水平方向に相対的に移動し、複数の第1の板材と複数の第2の板材とが水平方向に移動することによって、摩擦部材による摩擦力が複数の第1の板材と複数の第2の板材に加わり、当該摩擦力により地震等の振動を減衰させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5406042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の制振装置では、複数の第1の板材は、それらの下端部において水平方向に沿って連結部により互いに連結され、複数の第2の板材は、それらの上端部において水平方向に沿って連結部により互いに連結されている。当該構成により、複数の第1の板材または複数の第2の板材のすべてに加わる摩擦部材の摩擦力による曲げモーメントが連結部に生じるため、連結部による連結個所を多くし、板材の板厚を大きくする必要があり、制振装置の組み立て性がよくなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、曲げモーメントの発生を抑制しながら、複数の板材を連結する連結部の構成を簡略化し、組み立て性を向上させた制振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による制振装置は、上側構造部材と、前記上側構造部材の下側に位置する下側構造部材との間に設置される制振装置であって、一の連結部により並列に連結され、前記上側構造部材(2)および前記下側構造部材の一方に取り付けられる複数の一の板材と、他の連結部により並列に連結され、前記上側構造部材および前記下側構造部材の他方に取り付けられ、前記複数の一の板材と交互に並ぶように配置される複数の他の板材と、互いに隣り合う一の板材と他の板材との間に位置し、前記複数の一の板材と前記複数の他の板材との相対的な水平移動により、前記複数の一の板材および前記複数の他の板材に抵抗力を発生させる抵抗力発生手段と、を備え、前記一の連結部は、前記複数の一の板材と他の板材が設置時および稼働時に正面方向から見た時に重ならない前記一の板材の水平方向の両側の領域にそれぞれ設けられ、前記両側の領域において前記複数の一の板材を連結する。
【0008】
各一の板材にかかる抵抗力の中心と、各一の板材に連結された前記一の連結部の中心とが概ね一致するように構成されてもよい。
【0009】
前記複数の一の板材は、前記下側構造部材に取り付けられ、前記複数の一の板材のうち、それらが並ぶ方向において両端に位置する一の板材は、上部に開口を有し作動流体が収容される収容空間を形成する容器の一部を構成し、前記抵抗力発生手段は、前記作動流体であってもよい。
【0010】
各一の板材(10A〜10E)にかかる抵抗力の中心と、前記抵抗力により前記一の連結部(12)に発生する反力の中心とが概ね一致するように構成されてもよい。
【0011】
前記抵抗力発生手段は、摩擦部材であり、隣り合う前記一の板材と前記他の板材との間に挟まれるように設けられてもよい。
【0012】
前記他の連結部は、前記複数の他の板材の水平方向の両端部にそれぞれ設けられ、前記両端部において前記複数の他の板材を連結してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、曲げモーメントの発生を抑制しながら、複数の板材を連結する連結部の構成を簡略化し、組み立て性を向上させた制振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、本実施形態に係る制振装置の概略正面図を示し、(b)は、本実施形態に係る制振装置の概略側面図を示す。
図2】(a)は、従来の制振装置の概略正面図を示し、(b)は、従来の制振装置の概略側面図を示す。
図3】(a)は、本実施形態に係る制振装置の概略正面図を示し、(b)は、本実施形態に係る制振装置の概略縦断面図を示す。
図4】(a)は、本実施形態に係る制振装置の概略正面図を示し、(b)は、本実施形態に係る制振装置の縦断面図を示し、(c)は、摩擦部材の説明図を示す。
図5】本実施形態に係る制振装置の概略分解斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る制振装置1について図面を参照しながら説明する。
【0016】
はじめに、本実施形態に係る制振装置1の概略の構成について図1を参照して説明する。 図1(a)は、本実施形態に係る制振装置1の概略正面図を示し、図1(b)は、本実施形態に係る制振装置1の概略側面図を示している
【0017】
本実施形態に係る制振装置1は、上梁等の図示せぬ上側構造部材2および下梁等の図示せぬ下側構造部材3の間に設置される制振装置1である。
【0018】
図1に示すように、制振装置1は、複数(3枚)の第1の板材10A〜10Cと、複数(2枚)の第2の板材11A、11Bと、第1の連結部12と、第2の連結部13と、抵抗力発生部材14とを備える。
【0019】
各第1の板材10A〜10Cは、鋼材等により構成され、矩形平板状をなし、第1の連結部12により、並列に連結されている。複数の第1の板材10A〜10Cのうち中央に位置する第1の板材10Bが、下取り付け部15を介して、下側構造部材3に固定されることにより、複数の第1の板材10A〜10Cは、下側構造部材3に取り付けられている。
【0020】
各第2の板材11A、11Bは、鋼材等により構成され、矩形平板状をなし、第2の連結部13により上取り付け部16に対し、互いに並列に連結されている。上取り付け部16が上側構造部材2に固定されることにより、複数の第2の板材11A、11Bは、上側構造部材2に取り付けられている。第2の板材11Aは、第1の板材10A、10Bの間に配置され、第2の板材11Bは、第1の板材10B、10Cの間に配置されている。このように、第1の板材10A〜10Cおよび第2の板材11A、11Bは、交互に並ぶように配置されている。
【0021】
第1の連結部12は、例えばボルトとナットにより構成され、複数の第1の板材10A〜10Cの水平方向における両端部(両側の領域)17に、鉛直方向に沿って片側3か所に設けられ、複数の第1の板材10A〜10Cを互いに連結している。第1の連結部12により、複数の第1の板材10A〜10Cが並ぶ方向において、外側に位置する第1の板材10A、10Cは、中央に位置する第1の板材10Bに連結されている。両端部17は、複数の第1の板材10A〜10Cと、複数の第2の板材11A、11Bとが、設置時および稼働時に制振装置1を正面から見た時に重ならない位置に相当する。
【0022】
第2の連結部13は、例えばボルトとナットにより構成され、複数の第2の板材11A、11Bの上端部18に、水平方向に沿って複数設けられ、複数の第2の板材11A、11Bを上取り付け部16に対し固定している。
【0023】
抵抗力発生手段に相当する抵抗力発生部材14は、互いに隣り合う第1の板材10A〜10Cと第2の板材11A、11Bとの間に位置している。抵抗力発生部材14は、例えば、後述のように、摩擦部材により、または、粘性体または粘弾性対等の作動流体により構成されている。当該抵抗力発生部材14が、互いに隣り合う第1の板材10A〜10Cと第2の板材11A、11Bとの間に介在することにより、複数の第1の板材10A〜10Cと複数の第2の板材11A、11Bとの相対的な水平移動時に、複数の第1の板材10A〜10Cおよび複数の第2の板材11A、11Bに抵抗力が発生するように構成されている。
【0024】
そして、各第1の板材10A〜10Cにかかる抵抗力Bの中心Hと各第1の板材10A〜10Cに連結された6か所の第1の連結部12の中心Fが概ね一致するように構成されている。中心Hは、抵抗力Bの作用位置、すなわち抵抗力発生部材14が摩擦部材である場合、制振装置1を正面方向から見た時の、摩擦部材と、摩擦部材に接触摺動している部材(第1の板材)との接触面Z(図1(a)の斜線部)の図心位置である。中心Fは、、各第1の板材10A〜10Cに連結された6か所の第1の連結部12が鉛直方向に沿って片側3か所ずつ、均等配置で設けられた場合の真ん中の位置である。すなわち、第1の板材10A〜10Cに係る抵抗力Bの中心Hと、第1の板材10A〜10Cにかかる抵抗力Bにより、6か所の第1の連結部12に発生する反力Dの中心Fとが概ね一致するように構成されている。
【0025】
次に、制振装置1による振動の減衰動作について、図1を参照して説明する。
【0026】
例えば、地震が発生すると、上側構造部材2と下側構造部材3とが水平方向に相対的に移動することによって、複数の第1の板材10A〜10Cと複数の第2の板材11A、11Bとが相対的に水平移動し、抵抗力発生部材14により、複数の第1の板材10A〜10Cおよび複数の第2の板材11A、11Bに抵抗力Bが発生する。当該抵抗力Bにより、複数の第1の板材10A〜10Cと複数の第2の板材11A、11Bの変位が抑制され、振動が減衰される。
【0027】
すなわち、下側構造部材3が、上側構造部材2に対し水平方向に矢印Aで示すように相対的に変位する。これに伴い、下側構造部材3に取り付けられた複数の第1の板材10A〜10Cも矢印Aの方向に変位する。
【0028】
複数の第1の板材10A〜10Cが変位することにより、抵抗力発生部材14により抵抗力Bが、複数の第1の板材10A〜10Cに加わり、これにより変位が抑制され振動が減衰される。
【0029】
また、複数の第1の板材10A〜10Cに抵抗力Bが加わることにより、複数の第1の板材10A〜10Cの下側構造部材3への取り付け部分には曲げモーメントCが発生する。そして、本実施形態では、外側に位置する第1の板材10A、10Cは、その水平方向の両端部17において、第1の連結部12により連結されているため、抵抗力Bによる曲げモーメントCを小さくすることができる。また、本実施形態では、第1の連結部12により中央に位置する第1の板材10Bに連結され、各第1の板材10A〜10Cにかかる抵抗力Bの中心と、各第1の板材10A〜10Cに連結された6か所の第1の連結部12の中心とが一致するように構成されているため、第1の板材10A、10Cにかかる抵抗力Bによる曲げモーメントの発生を防止することができる。
【0030】
このため、外側に位置する第1の板材10A、10Cには、抵抗力Bのみが加わることとなる。これにより、複数の第1の板材10A〜10Cを互いに連結する第1の連結部12による連結個所を少なく(簡略化)することができ、かつ外側に位置する第1の板材10A、10Cの板厚を薄くすることができる。したがって、制振装置1の組み立て性を向上させることができる。
【0031】
一方、図2に示すように、従来の制振装置101では、複数の第1の板材10A、10Cが並ぶ方向において、外側に位置する第1の板材10A、10Cが、その下端部25において、中央に位置する第1の板材10Bに対し、水平方向に沿って複数の第1の連結部12により連結されている。このため、複数の第1の板材10の全てに加わる抵抗力Bによる大きな曲げモーメントが第1の連結部12にかかることとなり、当該曲げモーメントに耐えるために、第1の連結部12による連結個所を多くすることや外側に位置する第1の板材10A、10Cの板厚を大きくする必要があり、制振装置101の組み立て性が悪くなる。
【0032】
次に、抵抗力発生部材が作動流体である実施形態の制振装置31について、図3を参照して説明する。なお、上記の実施形態と同一の構成については同一の参照番号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明を行う。
【0033】
図3(a)は、本実施形態に係る制振装置31の概略正面図を示し、図3(b)は、本実施形態に係る制振装置31の概略縦断面図を示している。なお、図3においては、上側構造部材2および下側構造部材3の図示を省略している。
【0034】
本実施形態の制振装置31は、複数(5枚)の第1の板材10A〜10E、複数(4枚)の第2の板材11A〜11Dを備えている。複数の第1の板材10A〜10Eは、その水平方向の両端部17において、第1の連結部12により並列に連結されている。また、一対の側板10Fおよび一対の底板10Gが、第1の板材10A〜10Cにより形成される隙間を塞ぐように設けられている。これにより、開口10hを有し、作動流体14を収容する容器が構成される。
【0035】
複数の第2の板材11A〜11Dは、その上端部18において、第2の連結部13により、互いに並列に連結されている。第2の板材11A〜11Dは、作動流体14に浸かるように、開口10hを介して、容器内に挿入されている。各第2の板材11A〜11Dは、第1の板材10A〜10Eとの間に隙間を有して配置されている。
【0036】
作動流体14は、高粘度の高分子材料で構成され、その粘性抵抗力は速度依存性および温度依存性を有する。
【0037】
本実施形態の制振装置31の構成において、複数の第1の板材10A〜10Eが矢印Aの方向に変位することにより、作動流体14によりせん断力Bが、複数の第1の板材10A〜10Eに加わり、これにより変位が抑制され振動が減衰される。
【0038】
そして、本実施形態の制振装置31でも、中央に位置する第1の板材10B以外の第1の板材10A、10C〜10Eは、その水平方向の両端部17において、第1の連結部12により連結され、各第1の板材10A〜10Eにかかるせん断力Bの中心(作用位置、すなわち第1の板材10A〜10Eの、当該板材が並ぶ方向において第2の板材11A〜11Dに対し重なる部分であって作動流体が接触する面の図心位置)と、各第1の板材10A〜10Eに連結された第1の連結部12の中心とが一致するように構成されているため、第1の板材10A、10Cにかかるせん断力Bによる曲げモーメントの発生を防止することができる。
【0039】
よって、中央に位置する第1の板材10B以外の第1の板材10A、10C〜10Eには、せん断力Bのみが加わることとなる。これにより、複数の第1の板材10A〜10Eを互いに連結する第1の連結部12による連結個所を少なくすることができ、かつ中央に位置する第1の板材10B以外の第1の板材10A、10C〜10Eの板厚を薄くすることができる。したがって、制振装置31の組み立て性を向上させることができる。
【0040】
次に、抵抗力発生部材が摩擦部材である実施形態の制振装置41について、図4、5を参照して説明する。なお、上記の実施形態と同一の構成については同一の参照番号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明を行う。
【0041】
図4(a)は、本実施形態に係る制振装置41の概略正面図を示し、図4(b)は、本実施形態に係る制振装置41の縦断面図を示し、図4(c)は、制振装置41の摩擦部材14の説明図を示している。図5は、本実施形態に係る制振装置41の概略分解斜視図を示している。なお、図4では、上側構造部材2および下側構造部材3の図示を省略し、図5では、上側構造部材2、下側構造部材3、摩擦部材14の図示を省略している。
【0042】
本実施形態では、各第1の板材10A〜10Cに対し、図示せぬ丸孔が形成されている。また、各第2の板材11A、11Bに対し、図示せぬ丸穴に対応するように水平方向に延びる複数の長孔10iが形成されている。
【0043】
摩擦部材14は、互いに隣り合う第1の板材10A〜10Cと第2の板材11A、11Bとの間に位置している。摩擦部材14は、図4(c)に示すように、アルミニウム板14Aと、滑り板14Bと、相手材14Cとにより構成されている。アルミニウム板14Aは、第1の板材10A〜10Cに固着され、相手材14Cは、第2の板材11A、11Bに固着されている。滑り板14Bは、アルミニウム板14Aに固着されている。
【0044】
アルミニウム板14Aは、その柔軟性により、滑り板14Bの第1の板材10A〜10Cからの位置ずれを防止する。
【0045】
滑り板14Bは、エキスパンドメタルまたは金網からなる網状体の基材と、この網状体の網目を充填するとともに当該基材の一方の面に形成された合成樹脂製の滑り層とを備える。この滑り層は、四フッ化エチレン樹脂を含み、相手材14Cとの接触面となる。
【0046】
相手材14Cは、ステンレス鋼材からなり、滑り板14Bとの水平方向の相対変位によって生じる摩擦力により、振動を減衰する。
【0047】
制振装置41は、各長孔10iに対応して、一対の応力分散金具19と、PC鋼棒20と、一対の締め付けナット21とを有する。
【0048】
応力分散金具19は、鋼材により構成され、円環状をなし、PC鋼棒20および一対の締め付けナット21締め付け力を第1の板材10A、10Cに分散させるために設けられている。
【0049】
PC鋼棒20および一対の締め付けナット21は、応力分散金具19を介して第1の板材10A、10Cを、図4(b)において、左右両側から締め付け、滑り板14Bと相手材14Cとの間に摩擦力が働くようにする。
【0050】
図5に示すように、制振装置41は、互いに隣り合う第1の板材10A〜10Cと第2の板材11A、11Bの隙間を確保するためのスペーサ24を備える。
【0051】
本実施形態の制振装置41の構成において、複数の第1の板材10A〜10Cが矢印Aの方向に変位することにより、摩擦部材14により摩擦力Bが、複数の第1の板材10A〜10Cに加わり、これにより変位が抑制され振動が減衰される。
【0052】
そして、本実施形態の制振装置41でも、複数の第1の板材10A〜10Cが並ぶ方向において、外側に位置する第1の板材10A、10Cは、その水平方向の両端部17において、第1の連結部12により連結され、各第1の板材10A〜10Cにかかるせん断力Bの中心(作用位置、すなわち制振装置1を正面方向から見た時の、摩擦部材14と、摩擦部材14に接触摺動している部材(第1の板材)との接触面の図心位置)と、各第1の板材10A〜10Cに連結された第1の連結部12の中心(鉛直方向に沿って片側4か所、均等配置で設けられた場合の真ん中)とが概ね一致するように構成されているため、第1の板材10A、10Cにかかる摩擦力Bによる曲げモーメントの発生を防止することができる。
【0053】
このため、外側に位置する第1の板材10A、10Cには、摩擦力Bのみが加わることとなる。これにより、複数の第1の板材10A〜10Cを互いに連結する第1の連結部12による連結個所を少なくすることができ、かつ外側に位置する第1の板材10A、10Cのの板厚を薄くすることができる。よって、制振装置41の組み立て性を向上させることができる。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0055】
例えば、上記の実施形態では、複数の第2の板材11A〜11Dを、それらの上端部18において第2の連結部13により連結し、上取り付け部材6に取り付けるようにしたが、第2の板材11C、11Dのみを上取り付け部材6に取り付け、複数の第2の板材11A〜11Dを、第2の連結部13により、水平方向における両端部で連結するようにしてもよい。当該構成において、各第2の板材11A〜11Dにかかる摩擦力の中心と、各第2の板材11A〜11Dに連結された複数の第2の連結部13の中心とが一致するように構成されてもよい。
【0056】
かかる構成により、第2の板材11A、11Bにかかる摩擦力による曲げモーメントの発生を抑制することができる。よって、複数の第2の板材11A〜11Dを互いに連結する第2の連結部13による連結個所を少なくすることができ、かつ外側に位置する第2の板材11A、11Bの板厚を薄くすることができる。したがって、制振装置41の組み立て性をさらに向上させることができる。
【0057】
また、上記の実施形態では、複数の第1の板材10A〜10Eを、水平方向におけるそれらの両端部17において、第1の連結部12により連結したが、複数の第1の板材10A〜10Eを、それらの下端部において、第1の連結部12により連結し、複数の第2の板材11A〜11Dを第2の連結部13により水平方向におけるそれらの両端部で連結するようにしてもよい。
【0058】
また、抵抗力発生部材14は、粘弾性材料により構成された粘弾性部材であってもよい。また、第1の板材10A〜10C(または10A〜10D)および第2の板材11A、11B(または11A〜11D)の枚数は、これらに限らず、必要に応じて変更してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、31、41、101:制振装置、2:上側構造部材 3:下側構造部材、10A〜10E:第1の板材、10h:開口、11A〜11D:第2の板材、14:作動流体、摩擦部材、12:第1の連結部、13:第2の連結部、17:両端部

図1
図2
図3
図4
図5