特開2018-131774(P2018-131774A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライト工業株式会社の特許一覧

特開2018-131774高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及び施工管理システム
<>
  • 特開2018131774-高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及び施工管理システム 図000003
  • 特開2018131774-高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及び施工管理システム 図000004
  • 特開2018131774-高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及び施工管理システム 図000005
  • 特開2018131774-高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及び施工管理システム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-131774(P2018-131774A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及び施工管理システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20180727BHJP
【FI】
   E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-24975(P2017-24975)
(22)【出願日】2017年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永岡 藤彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正直
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB03
2D040BA01
2D040BA02
2D040BB01
2D040CA01
2D040CB03
2D040FA07
2D040FA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】設計通りに改良体を造成するための高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及びシステムを提供する。
【解決手段】本施工管理システム1は、固化液Cの密度計21及び注入管10の回転速度計31を有し、固化液管理機構及び攪拌管理機構が備わる。固化液管理機構は、前記密度が所定の下限値未満の要管理状態になった場合に注入管10の引上げを停止する手段及び高圧流体の噴射を停止する手段、注入管10の深度を所定長だけ戻す深度調整手段、並びに注入管10の引上げを再開する手段及び高圧流体の噴射を再開する手段を有する。攪拌管理機構は、注入管10の回転速度が所定の範囲外になった場合に注入管10の引上げを停止する手段及び高圧流体の噴射を停止する手段、並びに注入管10の回転速度が所定の範囲内に戻ったら注入管10の引上げを再開する手段及び高圧流体の噴射を再開する手段を有する。本施工方法は、以上のシステム1を使用して管理する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に挿入された注入管を軸回りに回転させつつ引き上げる過程で、前記注入管から一種又は二種以上の高圧流体を噴射する工法であって、前記高圧流体のうちの一種が固化液である高圧噴射攪拌工法の施工管理方法であって、
前記注入管を引き上げる過程で、前記固化液の状態計測と、前記注入管の回転速度計測とを継続的に行い、
前記固化液の状態が所定の状態から外れた要管理状態になった場合に前記注入管の引上げ及び前記高圧流体の噴射を停止し、その後に前記注入管の深度を所定長だけ戻し、その後に前記注入管の引上げ及び前記高圧流体の噴射を再開する固化液管理ステップと、
前記注入管の回転速度が所定の範囲外になった場合に前記注入管の引上げ及び前記高圧流体の噴射を停止し、その後に前記注入管の回転速度が所定の範囲内に戻ったら前記注入管の引上げ及び前記高圧流体の噴射を再開する攪拌管理ステップと、
を有することを特徴とする高圧噴射攪拌工法の施工管理方法。
【請求項2】
前記高圧流体が二種以上であり、
この二種以上の高圧流体が、前記固化液及び高圧水、前記固化液及び高圧空気、又は前記固化液、高圧水及び高圧空気である、
請求項1に記載の高圧噴射攪拌工法の施工管理方法。
【請求項3】
前記固化液の状態計測は、前記固化液の密度、前記固化液の噴射量、及び前記固化液の噴射圧の少なくともいずれか1つ以上について行う、
請求項1又は請求項2に記載の高圧噴射攪拌工法の施工管理方法。
【請求項4】
前記固化液の状態計測は、少なくとも前記固化液の密度について行い、
前記固化液の密度が所定の下限値を下回った時間が6〜60秒である場合を1回とカウントし、このカウントが複数回となった場合を前記要管理状態とし、
他方、前記固化液の密度が所定の下限値を下回った時間が60秒を超える場合を直ちに前記要管理状態とする、
請求項1又は請求項2に記載の高圧噴射攪拌工法の施工管理方法。
【請求項5】
地盤に挿入された注入管を軸回りに回転させつつ引き上げる過程で、前記注入管から一種又は二種以上の高圧流体を噴射する工法であって、前記高圧流体のうちの一種が固化液である高圧噴射攪拌工法の施工管理システムであって、
前記注入管を引き上げる過程で継続的に前記固化液の状態を計測する状態計測手段及び前記注入管の回転速度を計測する回転速度計測手段を有し、
前記固化液の状態が所定の状態から外れた要管理状態になった場合に前記注入管の引上げを停止する引上げ停止手段及び前記高圧流体の噴射を停止する噴射停止手段、その後に前記注入管の深度を所定長だけ戻す深度調整手段、並びにその後に前記注入管の引上げを再開する引上げ再開手段及び前記高圧流体の噴射を再開する噴射再開手段が備わる固化液管理機構と、
前記注入管の回転速度が所定の範囲外になった場合に前記注入管の引上げを停止する引上げ停止手段及び前記高圧流体の噴射を停止する噴射停止手段、並びにその後に前記注入管の回転速度が所定の範囲内に戻ったら前記注入管の引上げを再開する引上げ再開手段及び前記高圧流体の噴射を再開する噴射再開手段が備わる攪拌管理機構と、
を有することを特徴とする高圧噴射攪拌工法の施工管理システム。
【請求項6】
前記固化液の状態について、前記所定の状態を設定する状態設定手段と、
前記注入管の回転速度について、前記所定の範囲を設定する回転速度設定手段と、
を有する請求項5に記載の高圧噴射攪拌工法の施工管理システム。
【請求項7】
前記高圧流体の状態を表示する状態表示手段と、
前記注入管の回転速度を表示する回転速度表示手段と、
前記注入管の深度を表示する深度表示手段と、
を有する請求項5又は請求項6に記載の高圧噴射攪拌工法の施工管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良工法である高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及び施工管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤を改良する地盤改良工法は、薬液注入工法と攪拌混合工法とに大別することができる。また、攪拌混合工法は、機械攪拌工法と、高圧噴射攪拌工法と、機械及び高圧噴射を併用する複合攪拌工法とに区分することができる。これらの地盤改良工法のうち高圧噴射攪拌工法は、地盤に挿入された注入管を軸回りに回転させつつ引き上げる過程で、注入管から固化液等の高圧流体を噴射する工法である(例えば、特許文献1等参照。)。高圧流体の噴射によって周囲の地盤が切削され、切削された地盤(土砂)が固化液と混合され、地盤中に改良体が造成される。高圧噴射攪拌工法は、薬液注入工法が得意としない軟弱粘性土地盤やシルト地盤等をも強固に固化することができる。高圧噴射攪拌工法としては、固化液と共に噴射する高圧流体の種類や噴射位置を工夫した様々な形態が既に開発されている。例えば、CCP工法、JSG工法(登録商標)、CJG工法等である。
【0003】
高圧噴射攪拌工法は、様々な利点を有しており、既に実用化されているが、次の点で改善が期待されている。すなわち、高圧噴射攪拌工法においては、例えば、注入管から噴射する固化液の密度、噴射量、噴射圧等の状態が変化してしまうことがある。固化液の状態が変化してしまうと造成される改良体の品質が不均一になるおそれがある。また、地盤の硬さ等によっては、注入管の回転速度が変化してしまうことがある。注入管の回転速度が変化してしまうと、造成される改良体の径が変化してしまうおそれがある。
【0004】
そこで、高圧噴射攪拌工法には、その施工を管理する施工管理システム、あるいは施工管理方法が必要になり、本出願人も施工管理システムを提案している(特許文献2参照)。同提案は、「圧縮空気の供給風量を常時監視し、その供給風量の異常を確認」するとするものである。しかしながら、同提案は、「周囲地盤の隆起や硬化材の噴発を防止する」ことを目的とする提案である。この提案は、極めて有用であるが、造成される改良体の品質や径の均一化等を直接の目的とするものではない。つまり、設計通りに改良体を造成するための提案ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−285717号公報
【特許文献2】特開2015−206214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする主たる課題は、設計通りに改良体を造成するための高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及び施工管理システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、
地盤に挿入された注入管を軸回りに回転させつつ引き上げる過程で、前記注入管から一種又は二種以上の高圧流体を噴射する工法であって、前記高圧流体のうちの一種が固化液である高圧噴射攪拌工法の施工管理方法であって、
前記注入管を引き上げる過程で、前記固化液の状態計測と、前記注入管の回転速度計測とを継続的に行い、
前記固化液の状態が所定の状態から外れた要管理状態になった場合に前記注入管の引上げ及び前記高圧流体の噴射を停止し、その後に前記注入管の深度を所定長だけ戻し、その後に前記注入管の引上げ及び前記高圧流体の噴射を再開する固化液管理ステップと、
前記注入管の回転速度が所定の範囲外になった場合に前記注入管の引上げ及び前記高圧流体の噴射を停止し、その後に前記注入管の回転速度が所定の範囲内に戻ったら前記注入管の引上げ及び前記高圧流体の噴射を再開する攪拌管理ステップと、
を有することを特徴とする高圧噴射攪拌工法の施工管理方法である。
【0008】
また、地盤に挿入された注入管を軸回りに回転させつつ引き上げる過程で、前記注入管から一種又は二種以上の高圧流体を噴射する工法であって、前記高圧流体のうちの一種が固化液である高圧噴射攪拌工法の施工管理システムであって、
前記注入管を引き上げる過程で継続的に前記固化液の状態を計測する状態計測手段及び前記注入管の回転速度を計測する回転速度計測手段を有し、
前記固化液の状態が所定の状態から外れた要管理状態になった場合に前記注入管の引上げを停止する引上げ停止手段及び前記高圧流体の噴射を停止する噴射停止手段、その後に前記注入管の深度を所定長だけ戻す深度調整手段、並びにその後に前記注入管の引上げを再開する引上げ再開手段及び前記高圧流体の噴射を再開する噴射再開手段が備わる固化液管理機構と、
前記注入管の回転速度が所定の範囲外になった場合に前記注入管の引上げを停止する引上げ停止手段及び前記高圧流体の噴射を停止する噴射停止手段、並びにその後に前記注入管の回転速度が所定の範囲内に戻ったら前記注入管の引上げを再開する引上げ再開手段及び前記高圧流体の噴射を再開する噴射再開手段が備わる攪拌管理機構と、
を有することを特徴とする高圧噴射攪拌工法の施工管理システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、設計通りに改良体を造成するための高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及び施工管理システムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本形態の施工管理システムの概要図である。
図2】固化液管理機構及び攪拌管理機構の概念図である。
図3】情報設定手段の形態例である。
図4】状況表示手段の形態例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。
【0012】
(適用可能な地盤改良工法)
地盤改良工法の技術分野において、高圧噴射攪拌工法とは、高圧噴射攪拌のみを行い、機械攪拌を行わない工法を意味することがある。しかるに、本発明は、高圧噴射攪拌のみを行う工法にはもちろん、高圧噴射攪拌及び機械攪拌を併用する工法、つまり前述した複合攪拌工法にも適用可能である。本明細書においては、高圧噴射攪拌のみを行う工法を狭義の高圧噴射攪拌工法といい、この狭義の高圧噴射攪拌工法及び(狭義の)高圧噴射攪拌及び機械攪拌を併用する工法を含めて単に高圧噴射攪拌工法又は広義の高圧噴射攪拌工法という。したがって、本発明は、広義の高圧噴射攪拌工法に適用可能ということになる。
【0013】
狭義の高圧噴射攪拌工法は、地盤に挿入された注入管を軸回りに回転させつつ引き上げる過程で、注入管から一種又は二種以上の高圧流体を噴射する工法である。高圧流体のうちの一種は、固化液である。固化液は、例えば、セメントミルク、硬化材などと言われることもある。高圧流体の形態例としては、例えば、固化液のみ、固化液及び高圧水(圧縮水)、固化液及び高圧空気(圧縮空気)、固化液、高圧水及び高圧空気等のバリエーションが存在する。
【0014】
(施工管理システム・方法)
図1に示すように、本形態の施工管理システム1には、制御プラント2及び管理プラント3が備わる。制御プラント2には、地盤改良機や、密度計測手段21、回転速度計測手段31等が備わる。地盤改良機は、例えば、注入管10を回転し、推進(挿入)及び後退(引上げ)する機械である。密度計測手段21は、地盤Gに挿入されている注入管10を引き上げる過程で固化液Cの密度を計測する手段である。密度計測手段21は、例えば、制御プラント2に備わるアジテーター等の中に存在する固化液Cの密度を計測する。
【0015】
固化液Cの密度の計測は、連続的に又は断続的に(所定時間毎に繰り返し)行う。つまり、固化液Cの密度の計測は、継続的に行う。密度計測手段21としては、例えば、ソイルアンドロックエンジニアリング株式会社製の配管用密度計PIRICA等を使用することができる。回転速度計測手段31は、注入管10の回転速度を計測する手段である。注入管10の回転速度を計測も、継続的に行う。注入管10の回転速度の計測は、連続的に行っても、断続的に行ってもよいが、通常は、連続的に行う。
【0016】
本形態の施工管理システム1は、図2に示すように、固化液管理機構20及び攪拌管理機構30を有する。固化液管理機構20は、注入管10から噴射される固化液Cの密度等の状態を管理することを主な役割とする。固化液管理機構20は、当該役割を果たすために、前述した密度計測手段21のほか、引上げ停止手段22、噴射停止手段23、深度調整手段24、引上げ再開手段25、及び噴射再開手段26を主に有する。一方、攪拌管理機構30は、地盤Gの切削状態や、切削された地盤G(土砂)と注入管10から噴射された固化液Cとの混合状態を管理することを主な役割とする。攪拌管理機構30は、当該役割を果たすために、前述した回転速度計測手段31のほか、引上げ停止手段32、噴射停止手段33、引上げ再開手段34、及び噴射再開手段35を主に有する。
【0017】
固化液管理機構20を構成する引上げ停止手段22は、固化液Cの密度が所定の下限値を下回る要管理状態になった場合に、注入管10の引上げを停止する手段である。本形態の施工管理システム1においては、固化液Cの密度が所定の下限値を下回ったら直ちに要管理状態であるとして注入管10の引き上げが停止されるようにすることもできる。ただし、次の管理方法を推奨する。
【0018】
すなわち、まず、固化液Cの密度が所定の下限値を下回った時間が6〜60秒である場合を1回とカウントする。そして、このカウントが複数回(例えば、2回、3回、又はそれ以上の複数回。)となった場合を要管理状態とする。一方、固化液Cの密度が所定の下限値を下回った時間が60秒を超えた場合は、直ちに要管理状態とする。固化液Cは、空気の入り込み等によって瞬間的に密度が低下することがある。したがって、固化液Cの密度が所定の下限値を下回った回数をカウントし、この回数が複数回となって初めて要管理状態であるとするのが合理的である。また、注入管10の引上げ速度は、例えば、1〜10cm/分である。また、注入管10の回転速度は、例えば、2〜30rpmである。これらの速度との関係からすると、固化液Cの密度が所定の下限値を下回った時間が60秒以下であれば、直ちに要管理状態としなくても、造成される改良体Dの品質に問題が生じることはない。なお、固化液Cの密度の計測を断続的に行う場合は、次の計測まで同じ密度であったと仮定する等すればよい。
【0019】
本形態においては、要管理状態であるか否かを判定するに当たり、固化液Cの密度が所定の下限値を下回ったか否かのみを基準としている。しかしながら、これに加えて、固化液Cの密度が所定の上限値を上回ったか否かをも基準としてもよい。つまり、固化液Cの密度が所定の下限値から所定の上限値の範囲内である場合を所定の状態とし、この所定の状態から外れたか否かを基準としてもよい。なお、所定の下限値は、例えば1〜2g/cm3、好ましくは1.2〜1.6g/cm3とすることができる。また、所定の上限値は、例えば1〜2g/cm3、好ましくは1.4〜1.8g/cm3とすることができる。
【0020】
固化液管理機構20を構成する噴射停止手段23は、固化液Cの密度が所定の下限値を下回る要管理状態になった場合に、高圧流体の噴射を停止する手段である。高圧流体には、少なくとも固化液Cを含み、適宜、高圧水W、高圧空気A等の他の高圧流体も含む。つまり、少なくとも固化液Cの噴射を停止する必要があるが、場合によっては、高圧水Wや高圧空気A等の他の高圧流体の噴射を継続することができる。もちろん、好ましくは、全ての高圧流体の噴射を停止する。なお、どのような状態を要管理状態とするかという点や、上限値をも基準とすることができるという点、下限値及び上限値の値などは、前述したとおりである。
【0021】
深度調整手段24は、以上の処理(注入管10の引上げの停止、及び高圧流体の噴射停止)の後、注入管10の深度を所定長だけ戻す(深くする)手段である。次いで説明する注入管10の引上げの再開、及び高圧流体の噴射の再開に先立って、注入管10の深度を戻しておくことで、改良体Dについて品質が不十分となる部分が存在しなくなる。
【0022】
注入管10の深度をどれだけ戻すか(所定長)は、予め設定しておくことができる。例えば、所定長を2〜10cmとすることができる。ただし、固化液Cの密度が所定の下限値を下回った時間に基づいて所定長を算出するのが好ましい。
【0023】
固化液管理機構20を構成する引上げ再開手段25は、その後に(いったん注入管10の深度を戻した後に)、注入管10の引上げを再開する手段である。また、固化液管理機構20を構成する噴射再開手段26は、その後に(いったん注入管10の深度を戻した後に)、高圧流体の噴射を再開する手段である。なお、噴射を停止しなかった高圧流体については、当然、噴射の再開が必要とならない。
【0024】
攪拌管理機構30を構成する引上げ停止手段32は、注入管10の回転速度が所定の範囲から外れた場合に、注入管10の引上げを停止する手段である。なお、注入管10の引上げを停止するか否かの基準となる当該所定の範囲とは、注入管10の回転速度が所定の下限値から所定の上限値の範囲内であることを意味する。所定の下限値は、例えば0.5〜5rpm、好ましくは1〜4rpmとすることができる。また、所定の上限値は、例えば8〜15rpm、好ましくは10〜12rpmとすることができる。
【0025】
攪拌管理機構30を構成する引上げ停止手段32は、前述した固化液管理機構20を構成する引上げ停止手段22と、実行を開始する条件が異なる。しかるに、注入管10の動き自体は、両者とも同じである。したがって、注入管10を駆動する(引き上げる)駆動部分は両者で同一のものを使用し、当該駆動部分に与える指令(信号)のみを異なるものとするとよい。
【0026】
注入管10の回転速度が所定の範囲から外れた場合には、更に攪拌管理機構30を構成する噴射停止手段33を使用して高圧流体の噴射も停止する。攪拌管理機構を構成する噴射停止手段33は、前述した固化液管理機構20を構成する噴射停止手段23と、実行を開始する条件が異なる。しかるに、高圧流体の噴射を停止するという動き自体は、両者とも同じである。したがって、高圧流体の噴射を停止するという制御部分は両者で同一のものを使用し、当該制御部分に与える指令(信号)のみを異なるものとするとよい。なお、高圧流体が何を意味するか等は、固化液管理機構20を構成する噴射停止手段23の場合と同じである。
【0027】
注入管10の引上げ停止及び高圧流体の噴射停止後に、注入管10の回転速度が所定の範囲内に戻ったら、攪拌管理機構30を構成する引上げ再開手段34を使用して注入管10の引上げを再開する。加えて、攪拌管理機構30を構成する噴射再開手段35を使用して高圧流体の噴射を再開する。この点、本管理工程においては、固化液Cの状態に異常が存在したわけではないので、注入管10の深度を戻しておく必要はない。
【0028】
本形態の施工管理システム1において、管理プラント3には、情報(状態)設定手段41及び状況表示手段42が備わる。情報設定手段41は、固化液Cの密度について、前述した所定の下限値や所定の上限値を設定する密度設定手段としての機能を有する。また、情報設定手段41は、注入管10の回転速度について、前述した所定の範囲を設定する回転速度設定手段としての機能も有する。この情報設定手段41は、例えば、所定の下限値や所定の上限値、所定の範囲等を入力するための入力手段、例えば、キーボード、マウス等を有し、また、入力値を表示するための表示手段、例えば、モニター等を有する。
【0029】
ところで、上記所定の下限値とは、正常な(改良体Dを造成するうえで問題のない)固化液Cの密度の下限値を意味する。また、上記所定の上限値とは、正常な固化液Cの密度の上限値を意味する。したがって、情報設定手段41においては、密度の下限値や上限値として、密度(g/m3)そのものを入力することができるようにしても、密度の基準値(例えば、1.51g/m3。)に対する差異の割合、例えば、±5(%)と入力することができるようにしてもよい。また、回転速度の範囲についても、所定の範囲の下限値や上限値(rpm)そのものを入力することができるようにしても、回転速度の基準値(例えば、7rpm。)に対する差異の割合、例えば、±5(%)と入力することができるようにしてもよい。
【0030】
図3には、固化液Cの密度や注入管10の回転速度について、基準値に対する差異の割合(%)を入力する形態例の情報設定手段41を示している。この情報設定手段41は、固化液Cの密度や注入管10の回転速度に関する情報のほか、固化液Cの噴射量や噴射圧、高圧水(図中では「水」。)Wの噴射量や噴射圧、高圧空気(図中では「空気」。)Aの噴射量や噴射圧等に関する情報も設定することができるようになっている。また、同図の情報設定手段41においては、「警報」という情報も設定することができるようになっている。固化液Cの密度等が、この警報の欄に入力された値に達すると、警報が鳴る。つまり、警報値は、設定値(下限値や上限値)に近づいていることを意味する。
【0031】
状況表示手段42は、高圧流体の状態を表示する状態表示手段、注入管10の回転速度を表示する回転速度表示手段、及び注入管10の深度を表示する深度表示手段として機能する。高圧流体の状態とは、例えば、固化液Cの密度や噴射量、噴射圧、高圧水Wや高圧空気Aの噴射量や噴射圧等である。状況表示手段42においては、密度計測手段21や回転速度計測手段31等から送られてくる密度等の状態、回転速度、深度等の信号を、モニター等に表示する。この表示は、例えば、帳票形式でもよいが、状況把握の容易性等の観点からは、図4に示すように、グラフ形式とする方が好ましい。同図中の上段には、注入管10の回転速度や深度、固化液Cの吐出量を、同図中の下段には、固化液C密度を示している。
【0032】
(その他)
本形態の施工管理システム1は、固化液Cの密度を計測することで、固化液Cの状態を管理し、もって高圧噴射攪拌工法の施工を管理するものである。ただし、固化液Cの密度以外の状態、例えば、噴射量や噴射圧等を管理し、もって高圧噴射攪拌工法の施工を管理することもできる。なお、固化液Cとしては、例えば、水/セメント比100〜200のセメントミルクや、このセメントミルクに増粘剤を添加したもの等が存在する。また、増粘剤としては、例えば、セルロース系、アクリル系、天然高分子系、繊維状鉱物系のもの等が存在する。
【0033】
本形態の施工管理システム・方法を適用可能な高圧噴射攪拌工法としては、例えば、高圧流体として固化液Cのみを注入管10の噴射口から高圧噴射する工法、例えば、CCP−P(Chemical Churning Pile−Pattern)工法、CCP−L(Chemical Churning Pile−Large)工法、CCP−S(Chemical Churning Pile−Super)工法等のCCP工法が存在する。また、固化液Cを高圧空気Aで包囲して注入管10の噴射口から高圧噴射する工法、例えば、JSG(Jumbo Jet Special Grout)工法(登録商標)も存在する。さらに、固化液Cの下段噴射口及び高圧水Wの上段噴射口が先端側からこの順に備わる注入管10を使用して地盤改良する工法も存在する。この場合、上段噴射口から高圧噴射する高圧水Wは、高圧空気Aで包囲して噴射することもできる。もちろん、高圧水Wは、高圧空気Aで包囲することなく上段噴射口から高圧噴射することもできる。同様に、下段噴射口から高圧噴射する固化液Cも、高圧空気Aで包囲して噴射することができる。さらに、下段噴射口を上下方向に適宜の間隔をあけて2つ設け、各下段噴射口から固化液Cを高圧空気Aで包囲して噴射することもできる。
【0034】
特に図示はしないが、固化液Cと共に高圧水Wや高圧空気Aを噴射する工法においては、固化液管理機構20を備えて固化液Cの状態を管理するほか、高圧水管理機構や高圧空気管理機構を備えて高圧水Wや高圧空気Aの状態を管理するのが好ましい。また、以上の各工法における噴射圧は、様々であるが、一例を挙げれば、例えば2〜50Mpa、あるいは20〜40MPaの高圧噴射圧である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、地盤改良工法である高圧噴射攪拌工法の施工管理方法及び施工管理システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 施工管理システム
2 制御プラント
3 管理プラント
10 注入管
20 固化液管理機構
21 密度計測手段
22 引上げ停止手段
23 噴射停止手段
24 深度調整手段
25 引上げ再開手段
26 噴射再開手段
30 攪拌管理機構
31 回転速度計測手段
32 引上げ停止手段
33 噴射停止手段
34 引上げ再開手段
35 噴射再開手段
41 情報設定手段
42 状況表示手段
C 固化液
D 改良体
G 地盤
図1
図2
図3
図4