(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-131791(P2018-131791A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】貯水施設及び堤防構造体
(51)【国際特許分類】
E03B 11/14 20060101AFI20180727BHJP
【FI】
E03B11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-25474(P2017-25474)
(22)【出願日】2017年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
(57)【要約】
【課題】 敷設が容易で安価で工期短縮可能な貯水施設、及び/又は、凹部内の土砂等の除去が容易な貯水施設を提供する。
【解決手段】 河川地に形成された凹部に長尺の通水体を配置した貯水施設とした。前記通水体が、両端開放の流路を有し、前記流路が川の流れ方向と概略同方向となるように前記通水体を配置するとよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川地に形成された凹部に長尺の通水体を配置した貯水施設。
【請求項2】
前記通水体が、川の流れ方向と概略同方向の流路を有する請求項1の貯水施設。
【請求項3】
前記通水体の上段に他の前記通水体が配置されており、
上下段の前記通水体が異なる方向で配置されている請求項1又は2の貯水施設。
【請求項4】
前記凹部の下流側にピットを有する請求項1〜3のいずれかの貯水施設。
【請求項5】
前記通水体が、円管、方形管又はU字溝部材である請求項1〜4のいずれかの貯水施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川を利用した貯水施設及び堤防構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
農業・工業・家庭用水等のためのダムや貯水施設が全国に建設されたが、天候次第で渇水を生じる状況は未だに解消されていない。よって、ダムや貯水施設の建設需要はなお存在するが、建設コストの問題や貯水・利用に適した建設用地がもはや存在しないことから対策は手詰まりである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3689464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、川底に形成された凹部に空間保持のための骨格構造を配置し、当該骨格構造を被覆材(砂利等)で被覆した貯水施設を開示する。しかし、特許文献1では、ブロック状の骨材(籠状部材)をボルト等で上下左右前後に連結することで骨格構造を形成するため、組み立てに手数が掛かる。また、流水、流石、流木等の作用等で被覆材は流失・破損等し得るし、砂利等の被覆材ではそもそも微細な土砂・ヘドロの侵入を完全には防げない。よって、長期間のうちに凹部に土砂やヘドロが堆積し、貯水容量の減少・取水障害等の問題を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願には、下記発明が開示される。
<構成1>
河川地に形成された凹部に長尺の通水体を配置した貯水施設。
<構成2>
前記通水体が、川の流れ方向と概略同方向の流路を有する構成1の貯水施設。
<構成3>
前記通水体の上段に他の前記通水体が配置されており、
上下段の前記通水体が異なる方向で配置されている構成1又は2の貯水施設。
<構成4>
前記凹部の下流側にピットを有する構成1〜3のいずれかの貯水施設。
<構成5>
前記通水体が、円管、方形管又はU字溝部材である構成1〜4のいずれかの貯水施設。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】本発明の一実施形態の貯水施設10及び堤防構造体を示す。(
図2は、
図3の
図2のA−A断面である。)
【
図7】(a)は、籠状部材32を示し、(b)は、空間保持骨格33を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1のように、河川1は、通常、川床2(低水路)と河川敷3(高水敷)を有する。本願では、川床2と河川敷3を併せて「河川地」という。
図1の河川1は、河川地5の両側に堤防4を有する。
【0008】
図2、
図3に示すように、貯水施設10は、凹部20と通水体集合体30を有する。
【0009】
本例では、凹部20は、河川地5のうちの川床2の部分に形成されている。川の流れ方向をYで示す。凹部20は、パワーショベル等を用いて川床2を掘り下げることで形成できる。凹部20は、自然の窪地でもよい。凹部20は、上下流方向の長さ=数十〜数百メートル、幅=数〜数十メートル、深さ=1〜5m程度とするのがよい。
図3のように、上下流方向に間隔を空けて複数の凹部20,20を設けると、漏水等による保水不全に対する安全度が増す。凹部20,20を分離するために分断部21を設けるとよい。
【0010】
凹部20の下流側(例えば、下流側端又はその付近)にピット22を形成するとよい。ピット22は、土砂等捕集用の溝であり得る。ピット22は、他の部分よりも水深を深いのがよい。凹部20の周囲(例えば、凹部20の底面、側面、ピット22の底面、側面)に遮水材(例えば、ゴムや塩ビ等の遮水板や遮水シート)23を設けると、貯留水の地下への流失を防止できる。
【0011】
集合体30は、複数の長尺の通水体31を有する。集合体30は、凹部20の空間を保持する骨格として機能し得る。
図4に通水体31の例示的な形状を示す。(a)は円筒管であり、(b)は方形管であり、(c)は、溝部材である。通水体31は、両端の開口31aとその間を通る流路Xを有するのがよい。例えば、汎用の(若しくは市販の)ヒューム管、ボックスカルバート、U字溝等を使用すると、コスト節減や工期短縮となる。通水体31は、コンクリート・鉄骨・鉄筋・鋼鉄等で形成できる。
【0012】
通水体31は、凹部20の幅に応じて多列に配置できる。
図2では下段から3列/2列/3列である。通水体31は、通水体31の長手方向(流れ方向Y又は川幅方向)に1本だけ配置してもよく、
図6のように短い通水体31を複数並べてもよい。通水体31は、凹部20の深さに応じて1段又は多段で配置できる(
図5,6は、2段と3段の例を示す)。
【0013】
図5は、通水体31の形状/配置の例を示す。(a)では、円筒状の通水体31が積層され、(b)では、四角柱筒状の通水体31が積層され、(c)では、円筒状の通水体31が下段に配置され、3つの方形流路を有するブロック形状の通水体31が上段に配置されている。
図6は、最下段と上段が異なる方向で配置された例である。
図6の最下段/2段目のように通水体31を井桁状に組むと安定性が高くなる。図のように概略90度で組むのが良いが、他の角度も可能である。
【0014】
集合体30のうち、少なくとも最下段の通水体31は、流路Xが流れ方向Yと概略同方向となるように配置するのがよい。このようにすると、通水体31と通水体31の間の空間もY方向を向いた流路となる。
図3のように通水体31と凹部20の上流端及び/又は下流端の間に隙間24を形成すると流路の流れが良くなる。
【0015】
なお、2段目よりも上は、通水体31に代えて、
図7(a)のような籠状部材32を
図7(b)のように上下前後左右にボルト等を用いて連結した空間保持骨格33を配置しても構わない(特許文献1参照)。
【0016】
通水体31と通水体31の間の空間に砕石24を充填するとよい。砕石24は、通水体31の固定に寄与し得る。
【0017】
凹部20の上部は被覆体40で覆うとよい。被覆体40は、水を通過させる一方で土砂やごみなどの通過を抑制するもので、砕石やコンクリート片等で形成できる。ピット22の上部は被覆体40を設けない開口部41とすると、取水や土砂除去に便利である。取水や土砂除去時以外は、土砂侵入阻止のため、開口部41を金属やコンクリート等の蓋42で閉じておくとよい。
【0018】
貯水施設10では、長尺の通水体31を配置するだけなので、敷設が容易、安価、及び/又は、工期短縮可能である。汎用の通水体31を使用すると更に低廉化及び/又は工期短縮可能である。最下段の通水体31により流れ方向Yと概略同方向の流路が形成されるので、凹部20に侵入した土砂やごみを川下端に集まり易く、土砂等の除去が容易になる。ピット22を有する場合は土砂等の除去が更に容易になる。取水や土砂除去は、ホースを用いた吸引等で行うことができる。土砂等の除去は、取水前に行ってもよく、定期的に行ってもよい。流路は、凹部20内のよどみを防ぐことで水の清浄化・腐敗防止等にも寄与し得る。上下段の通水体31を異なる方向にすると、安定性が高まる。
【0019】
上記実施形態に記載した貯水施設の構成要素やその寸法、形状、配置、個数、材料、製造方法等は、例示であり、他の態様も可能である。貯水装置は、河川ではなく、湖や沼に設置してもよい。本願における「A、B、C及びD」等は、「A及びB及びC及びD」等の省略形である。「A及び/又はB」は、「A、又は、B、又は、A及びB」の省略形である。
【符号の説明】
【0020】
1・・・河川
2・・・川床
3・・・河川敷
4・・・堤防
10・・・貯水施設
20・・・凹部
21・・・分断部
22・・・ピット
23・・・遮水材
24・・・隙間
25・・・砕石
30・・・集合体
31・・・通水体
32・・・籠状部材
33・・・空間保持骨格
40・・・被覆体
41・・・開口部
42・・・蓋