特開2018-131792(P2018-131792A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-131792(P2018-131792A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】嵩上構造体及び弾性袴部材
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/10 20060101AFI20180727BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20180727BHJP
   E03B 3/03 20060101ALI20180727BHJP
   E03B 3/02 20060101ALI20180727BHJP
   E03B 11/14 20060101ALI20180727BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20180727BHJP
【FI】
   E02B3/10
   E03F1/00 Z
   E03B3/03 B
   E03B3/02 Z
   E03B11/14
   E02D27/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-25476(P2017-25476)
(22)【出願日】2017年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【テーマコード(参考)】
2D046
2D063
2D118
【Fターム(参考)】
2D046DA03
2D063AA01
2D118AA12
2D118BA03
2D118FA01
2D118FB01
(57)【要約】
【課題】 低コストで多量の土砂を使用せずに嵩上ができ、及び/又は、津波に強く、及び/又は、地震に強く、及び/又は、空間の利用性を高めることができる嵩上構造体及び弾性袴部材を提供する。
【解決手段】 本発明は、開口を形成した弾性袴部材と前記開口に挿入した柱を有する嵩上構造体とした。また、本発明は、基部と、前記基部から突起した突起部を有し、前記突起部に柱を挿入可能な開口が形成されている弾性袴部材とした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を形成した弾性袴部材と前記開口に挿入した柱を有する嵩上構造体。
【請求項2】
前記柱の上に嵩上地面層を更に有する嵩上構造体。
【請求項3】
前記弾性袴部材が、
基部と、
前記基部から突起した突起部を有し、
前記突起部に前記開口が形成されている請求項1又は2の嵩上構造体。
【請求項4】
前記突起部が空洞を有する請求項3の嵩上構造体。
【請求項5】
前記弾性袴部材の下部をコンクリートで埋設した請求項1〜4のいずれかの嵩上構造体。
【請求項6】
前記柱の上に第2弾性袴部材を有する請求項1〜5のいずれかの嵩上構造体。
【請求項7】
基部と、
前記基部から突起した突起部を有し、
前記突起部に柱を挿入可能な開口が形成されている弾性袴部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾、沿岸地帯その他の土地・地盤・地面を嵩上するための嵩上構造体及び弾性袴部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、津波・高潮・増水等の対策は堤防が主であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−222886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
東日本大震災では、堤防を越える津波で深刻な被害が発生した。堤防の無い港湾の貨物集積地では大量の自動車が流されて出火するなどの問題も発生した。大規模な堤防を沿岸域すべてに設置するという考えもあるが、コストや景観保護等の観点から現実には難しい。住宅地等では、地盤嵩上げも検討されているが、莫大なコストや嵩上用の土砂確保が問題であり、嵩上地盤が豪雨等の際に崩れる恐れもある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願には、下記発明が開示される。
<構成1>
開口を形成した弾性袴部材と前記開口に挿入した柱を有する嵩上構造体。
<構成2>
前記柱の上に嵩上地面層を更に有する嵩上構造体。
<構成3>
前記弾性袴部材が、
基部と、
前記基部から突起した突起部を有し、
前記突起部に前記開口が形成されている構成1又は2の嵩上構造体。
<構成4>
前記突起部が空洞を有する構成3の嵩上構造体。
<構成5>
前記弾性袴部材の下部をコンクリートで埋設した構成1〜4のいずれかの嵩上構造体。
<構成6>
前記柱の上に第2弾性袴部材を有する構成1〜5のいずれかの嵩上構造体。
<構成7>
基部と、
前記基部から突起した突起部を有し、
前記突起部に柱を挿入可能な開口が形成されている弾性袴部材。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の1実施形態の嵩上構造体10を示す。
図2】嵩上構造体10を拡大して示す。
図3】弾性袴部材20を示す。(a)は上方斜視図、(b)は下方斜視図、(c)は断面図である。
図4】本発明の他の実施形態の嵩上構造体10Aを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1、2のように、本実施形態の嵩上構造体10は、弾性袴部材20と柱30からなる柱体40を有する。
【0008】
弾性袴部材20は、例えば、地面(例えば、嵩上前の地面)1の上に配置できる。地面1が平坦でなければ、整地するとよい。地面1の高低差に合わせて柱30の長さを変えることもできるので、整地は必ずしも必要でない。地面1は、自然の地面でもよく、砕石層や捨てコン等を敷設してもよい。
【0009】
弾性袴部材20は、弾性を有する部材である。特に、水平面内方向(図1,2の左右及び紙面の手前/奧方向)の弾性を有するとよい。弾性袴部材20は、弾性材料(例えば、PP等の硬質プラスチック)で形成するとよい。ガラスファイバー等で強化した複合プラスチック材料でもよい。腐食等への対処ができるのなら、木材や金属でも構わない。弾性袴部材20は、開口21を有する。開口21は、柱30を挿入する(立てる)ためのものであり、上下方向に延びることが好ましい。開口21の形状は、円柱、円錐、四角柱、四角錐等とするとよい。開口21の形状は、柱30の形状(円柱、四角柱等)に合わせるとよい。
【0010】
図3は、弾性袴部材20の好ましい例を示す。図2の弾性袴部材20は、基部22と、基部22から上方に延びる突起部23を有し、突起部23に開口21が形成されている。開口21は、突起部23の中央に形成するのがよい。
【0011】
弾性袴部材20は、射出成型で形成すると、低コスト化できる。図のように、突起部23を上細りの円錐型とし、開口21を下細りの円錐型とするのが、射出成型に便宜である。突起部23は、空洞24を有するのが好ましい。空洞24は、開口21の全周を取り巻く形態が好ましい。弾性袴部材20の周囲に縁25やリブ26等を設けることで弾性袴部材20の強度を高めることができ、開口27を形成することで、軽量化を図ることができる。図の28は、突起部23の頂部を示し、29は、開口21の底部を示す。弾性袴部材20としては、特開平11−222886のユニット部材1を使用するのが好ましい。
【0012】
弾性袴部材20は、弾性袴部材20の下部(好ましくは、基部22)をコンクリート50で埋めて固定するのがよい。基部22の2倍程度の高さまでコンクリート50で埋めるとより好ましい。弾性袴部材20はアンカーボルト等の他の固定手段で地面1に固定してもよい。
【0013】
柱30は、例えば、コンクリートや鉄筋コンクリート、鋼鉄製等とできる。柱30は、弾性袴部材20の開口21に挿入されて支持される。柱30と開口21の間にコンクリートやモルタル31を入れて固めてもよい。
【0014】
柱30の上に嵩上地面層60を設けると、その上の空間80の利用性が高くなる。嵩上地面層60は、例えば、コンクリート等で形成できる。
【0015】
柱体40は、弾性袴部材(第2弾性袴部材)70を更に有するとよい。弾性袴部材70は、弾性を有し、かつ、柱30を挿入できる開口71を有する。弾性袴部材70を柱30と嵩上地面層60の間に配置すると、嵩上地面層60の敷設が容易になる。弾性袴部材70を弾性袴部材20と同一の部材にすると資材管理が容易になる。
【0016】
柱30又は弾性袴部材70と嵩上地面層60は、例えば、ボルト等を用いて固定することが好ましい。
【0017】
図1のように、複数の柱体40を配列(例えば、縦横又はマトリクス状に配列)するのがよい。隣接する弾性袴部材70の間の距離を小さくすると、嵩上地面層60を敷設し易くなる。隣接する弾性袴部材70の間の距離が大きい場合には、弾性袴部材70の上(嵩上地面層60の下)に板材(鉄板等)を敷くと、嵩上地面層60を敷設し易くなる。
【0018】
典型的なサイズを挙げると、弾性袴部材20,70の縦×横×高さは、50〜100cm×50〜100cm×30〜70cm、柱30は、直径30〜100cmφ×高さ3〜10m、柱30の間隔は、50〜150cm程度である。これは単なる例であり、他のサイズも可能である。
【0019】
嵩上構造体10では、低コストで、また、多量の土砂を使用せずに、嵩上をすることができる。よって、広大な土地でも嵩上が可能である。嵩上構造体10の上の空間80は、駐車場、資材置場、公園、道路、住宅地、工場その他に使用することができる。
【0020】
嵩上構造体10では、嵩上地面層60の重みで柱体40が固定され、しかも、柱体40の間を水が通るので、津波等に強い(嵩上構造体10又は柱体40が流され難い)。弾性袴部材20の下部をコンクリート50で埋めると、一層流され難くなる。それと同時に、弾性袴部材20の弾性により地震動を吸収できるので、柱30にひび割れ・亀裂・破壊等が生じ難い。開口21を突起部23に設け、及び/又は、突起部23に空洞24を設け、及び/又は、開口21の周囲に空洞24を設けることで、地震動の吸収性を顕著に高くできる。
【0021】
嵩上構造体10では、地面1と嵩上地面層60の間に空間90が形成されるので、空間90を貯水槽として利用することもできる。ただし、その場合は、嵩上構造体10の周囲を壁で囲うことが必要である。柱30の間隔を広くすれば、資材置場や養殖場、飼育場等として利用することも可能である。工場、オフィス、住居等として利用してもよい。
【0022】
図4は、他の実施形態の嵩上構造体10Aを示す。嵩上構造体10Aでは、2つの柱体40(第1の柱体40Aと第2の柱体40B)が積層されている。3つ以上の柱体40を積層してもよい。柱体40Aは、それぞれ、弾性袴部材20A、柱30A及び弾性袴部材70Aを有し、柱体40Bは、それぞれ、弾性袴部材20B、柱30B及び弾性袴部材70Bを有する。柱体40を単に長くすると構造の頑丈さが損なわれるが、嵩上構造体10Aでは、頑丈さ損なうことなく嵩上幅を大きくできる。上下の柱体40の間にコンクリート等で形成した中間層60Aを設けると、構造がより一層頑丈になる。弾性袴部材70Aと弾性袴部材20Bの間、又は、弾性袴部材70A/中間層60A/弾性袴部材20Bの相互間をボルトやコンクリート等で固定するとよい。
【0023】
上記実施形態に記載した嵩上構造体及び弾性袴部材の構成要素やそれらの寸法、形状、配置、個数、材料等は、例示であり、他の態様も可能である。嵩上構造体は、海や川などの沿岸地域に設けてもよく、それ以外の土地に設けてもよい。嵩上構造体は、津波等の対策だけでなく、例えば、窪地の平坦化や高架橋の敷設(嵩上地面層の上を高架道路として使用する)等にも使用し得る。本願における「A、B、C及びD」等の表現は、「A及びB及びC及びD」等の省略形である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・地面
10,10A・・・嵩上構造体
20,20A,20B・・・弾性袴部材
21・・・開口
22・・・基部
23・・・突起部
24・・・空洞
25・・・縁
26・・・リブ
30,30A,30B・・・柱
31・・・モルタル
40,40A,40B・・・柱体
50・・・コンクリート
60・・・嵩上地面層
60A・・・中間層
70,70A,70B・・・弾性袴部材
80,90・・・空間
図1
図2
図3
図4