【解決手段】この搬送装置100は、円環状の外枠11と内枠12との間に複数設置され、それぞれ搬送物3を保持可能な円筒状の搬送ユニット13を含む複数の回転構造体10と、複数の回転構造体10が設置される発進基地4の躯体壁4aの内面と、回転構造体10との間に複数設置されるとともに、それぞれ複数の支持ローラ21を揺動可能に備える複数の回転支持機構20と、回転構造体10が設置される発進基地4の躯体壁4aの内面に複数設置され、回転構造体10を周方向に回転駆動する油圧シリンダ方式の回転駆動機構30と、を備える。
前記複数の回転支持機構は、前記回転構造体の外周部にそれぞれ設置され、前記地下構造物の前記躯体壁の内面に対して前記複数の支持ローラを揺動させながら、前記回転構造体と一体的に周方向に走行可能に構成されている、請求項1に記載の搬送装置。
前記複数の回転支持機構は、前記地下構造物の前記躯体壁の内面の下部に設置され、前記回転構造体の外周部と当接する前記複数の支持ローラを介して、前記回転構造体を周方向に回転可能に支持している、請求項1に記載の搬送装置。
前記回転駆動機構は、前記躯体壁の内面に周方向に向けて配置された油圧シリンダを含み、前記回転構造体の外周部において周方向の全周にわたって間隔を隔てて配列された複数の当接部に対して前記油圧シリンダにより駆動力を付与することにより、前記回転構造体を前記躯体壁に対して周方向に回転させるように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の搬送装置。
前記回転駆動機構は、それぞれ1つまたは複数の前記油圧シリンダから構成される第1駆動セットおよび第2駆動セットを含み、前記第1駆動セットの前記油圧シリンダによる駆動と前記第2駆動セットの前記油圧シリンダによる駆動とを交互に行うように構成されている、請求項5に記載の搬送装置。
前記回転駆動機構は、駆動時に起立して前記当接部と係合し、非駆動時に倒れて前記当接部との係合を解除する作動部材と、前記作動部材を動作させる切替シリンダとを含み、
前記油圧シリンダは、前記作動部材を起立させた状態で初期位置から伸作動または縮作動の一方を行うことにより前記当接部に駆動力を付与し、前記作動部材を倒した状態で伸作動または縮作動の他方を行うことにより初期位置に戻る、請求項5または6に記載の搬送装置。
前記姿勢調整部は、前記搬送ユニットの内部で前記円弧状架台を前記鉛直軸方向および前記水平軸方向において平行移動させることにより、位置調整可能に構成されている、請求項8に記載の搬送装置。
道路輸送可能な寸法範囲内で前記サブ組立ブロックを分割した構成部材から、前記サブ組立ブロックを前記第1トンネル内で組み立てる工程をさらに備える、請求項10に記載の回転構造体の組立方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
まず、
図1〜
図21を参照して、本実施形態による搬送装置100の構成について説明する。
【0027】
(搬送装置の全体構成)
図1および
図2に示すように、搬送装置100は、第1トンネル1の外周に複数の第2トンネル2を構築するために使用される掘削機(シールド機5)および掘削に必要な資機材6(
図2参照)を搬送物3として、第1トンネル1の周方向(C方向)に搬送する搬送装置である。ここで、第1トンネル1の外周とは、
図1および
図2のようにトンネルの進行方向に垂直な断面(縦断面)における外周を意味し、周方向は縦断面において第1トンネル1の周囲を回る方向である。シールド機5は、特許請求の範囲の「掘削機」の一例である。
【0028】
第1トンネル1は、たとえば、トンネルの分合流部を設置する際に構築される大口径の本線シールドトンネルである。第2トンネル2は、第1トンネル1の周囲に構築され、第1トンネル1に比較して小口径の複数のシールドトンネルである。複数の第2トンネル2からなるトンネル群は、たとえば合流部の下流側から合流部に向けて形成される。この場合、複数の第2トンネル2からなるトンネル群は、合流部で図示しない支線トンネルを第1トンネル1に接続させる分だけ第1トンネル1との間隔を拡げるように、全体としてラッパ状に形成される。各第2トンネル2は、コンクリートなどが充填されることにより、最終的に第1トンネル1および支線トンネルの分合流部付近の外周防護用の構造体として構成される。
【0029】
第1トンネル1の外周には、周囲を取り囲むように環状に形成された発進基地4が設けられている。発進基地4は、第1トンネル1の外周を取り囲む円形状(円環状)の縦断面を有する地下空間である。発進基地4は、特許請求の範囲の「地下構造物」の一例である。
図1および
図2では、第1トンネル1の外面から離間した地盤にコンクリートが打設されるなどにより、搬送装置100を支持する支持構造物としての発進基地4の躯体壁4aが円環状に構築されている。
【0030】
搬送装置100は、躯体壁4a上に構築され、発進基地4内で搬送物3を周方向の所定位置(発進位置)まで搬送する。各第2トンネル2は、発進基地4を利用してそれぞれの発進位置に周方向に搬送されたシールド機5により構築される。シールド機5は、掘削断面(ここでは円形)に応じた形状のシールド部を推進させて地盤を掘進するとともに、セグメントを環状に組み立ててトンネル内壁を構築しながら進行する掘削機である。シールド機5以外の搬送物3として、資機材6は、たとえばセグメントを含み、シールド機5を駆動するための発動機、油圧ユニット、制御ユニットなどの各種機材を含んでもよい。
【0031】
本実施形態では、搬送装置100は、搬送物3を保持する回転構造体10と、回転構造体10を周方向(C方向)に回転可能に支持する回転支持機構20(
図4参照)と、回転構造体10を周方向に回転駆動する回転駆動機構30と、を備える。回転支持機構20により支持された回転構造体10を、回転駆動機構30が周方向に回転駆動することによって、回転構造体10が搬送物3とともに周方向に回転して搬送物3を所定位置に搬送する。
【0032】
本実施形態において、回転構造体10は、複数設けられる。
図3では、複数のシールド機5を搬送するためのシールド機用の回転構造体10と、資機材6を搬送するための資機材用の回転構造体10とが設けられている。
【0033】
複数の回転構造体10は、それぞれ個別の回転支持機構20によって支持され、個別の回転駆動機構30によって駆動されてよい。その場合、搬送装置100は、それぞれが独立に動作する複数の装置として構成することができる。搬送装置100が3つ以上の装置として構成されてもよい。
図3では、搬送装置100が2つの装置から構成される例を示しており、複数のシールド機5を搬送するための回転構造体10を有するシールド機用搬送装置101(
図1参照)と、資機材6を搬送するための回転構造体10を有する資機材用搬送装置102(
図2参照)とが設けられている。それぞれの搬送装置において、回転支持機構20および回転駆動機構30の主要構造は共通である。なお、以下では、シールド機用搬送装置101および資機材用搬送装置102の両方に共通する事項については、まとめて搬送装置100という場合がある。
【0034】
上記の通り、搬送装置100は、円環状の発進基地4内に設置されている。以下の説明のため、鉛直上下方向を上下方向(Z方向)とし、第1トンネル1に沿う方向を前後方向または奥行方向(Y方向、
図3参照)とする。奥行方向のうち、シールド機5が掘進する方向が前方、掘進方向とは逆側が後方である。発進基地4の円形断面内における水平方向を左右方向(X方向)とする。
【0035】
シールド機用搬送装置101および資機材用搬送装置102は、奥行方向に並んでいる。シールド機用搬送装置101が掘進方向の前方に配置され、資機材用搬送装置102がシールド機用搬送装置101の後方に隣接して配置されている。シールド機用搬送装置101がシールド機5を所定位置(掘進開始位置)に搬送して掘進を開始すると、資機材用搬送装置102がシールド機用搬送装置101の後方側から資機材6を所定位置(掘進開始位置)に搬送して、掘進中のシールド機5に必要な資機材6を搬送する。
【0036】
〈回転構造体〉
回転構造体10は、第1トンネル1の外面から離間して設けられた円環状の外枠11と、外枠11の内側であって第1トンネル1の外面に近隣して設けられた円環状の内枠12と、外枠11と内枠12との間に複数設置され、それぞれ搬送物3を保持可能な円筒状の搬送ユニット13と、を含む。
【0037】
円環状の外枠11と円環状の内枠12とが同心円状に配置され、複数の搬送ユニット13を介して互いに連結されている。外枠11および内枠12と複数の搬送ユニット13とは、相互に固定され、一体的に回転する。回転構造体10は、複数の搬送ユニット13に加えて、補強構造部15を使用して補強することができる。補強構造部15としては、I形鋼やH形鋼等の棒状のものを採用することができるが、これに限定されるものではなく、鋼板等の板状形状、その他の形状のものを用いることもできる。
図1および
図2では、外枠11および内枠12の間が、複数の円筒状の搬送ユニット13と複数の棒状の補強構造部15とによって連結されることにより、回転構造体10は骨組みのトラス構造を有している。
【0038】
図1に示したシールド機用搬送装置101の構成例では、回転構造体10は、6つの搬送ユニット13を周方向に等間隔で備えている。つまり、シールド機用搬送装置101は、6台のシールド機5を同時に搬送することができる。これにより、搬送した6台のシールド機5をそれぞれの(周方向の6箇所の)発進位置から発進させ、同時に施工を行うことができる。
図1では、各搬送ユニット13は、周方向に略60度間隔で設けられている。したがって、0度、60度、120度、180度、240度、300度の回転位置において、6つの第2トンネル2を構築することができる。また、これらの間の30度、90度、150度、210度、270度、330度の回転位置に各搬送ユニット13を配置することにより、上記の6つの第2トンネル2の間に、さらに6つの第2トンネル2を構築し、計12個の第2トンネル2を構築することができる。
【0039】
図2に示した資機材用搬送装置102の構成例では、搬送ユニット13が12個設けられた例を示している。より多くの搬送ユニット13を備えることによって、より多くの資機材6を搬送位置(施工中の第2トンネル2の掘削位置)へ搬送することができる。この構成例では、資機材用搬送装置102はシールド機用搬送装置101とは独立して資機材6の搬送動作を行うことが可能である。資機材用搬送装置102は、複数のシールド機5により掘削した第2トンネル2内にセグメント等の資機材6を連続的に供給することができるように構成されている。
【0040】
〈回転支持機構〉
図4および
図5は、回転支持機構20の構成例を示す。回転支持機構20は、複数の回転構造体10の各々に対して、複数設けられている。回転支持機構20は、複数の回転構造体10が設置される発進基地4の躯体壁4aの内面と、回転構造体10との間に複数設置されている。回転支持機構20は、それぞれ複数の支持ローラ21を揺動可能に備え、回転構造体10を周方向に回転可能に支持するように構成されている。
【0041】
本実施形態では、各回転支持機構20は、奥行方向の軸回りに揺動可能な一対の支持ローラ21を備えている。具体的には、回転支持機構20は、一対の支持ローラ21と、一対の支持ローラ21を周方向に間隔を隔てて保持するローラ保持部22と、一対の支持ローラ21の間に位置し支持ローラ21の車軸方向と平行な揺動軸回りにローラ保持部22を支持するローラ支持台23とを含む。
【0042】
図6の構成例では、回転支持機構20は、軸受24を有する支持ローラ21を、ローラ保持部22が第1ピン25により回転可能に支持した構造を有する。ローラ保持部22には、一対の支持ローラ21が配置されている。ローラ保持部22は、2式の車輪(支持ローラ21)を収容する車輪箱として構成されている。一対の支持ローラ21は、ローラ保持部22の長手方向両端部に、互いに間隔を隔てて保持されている。一対の支持ローラ21は、直線状に並んで配置されている。
【0043】
ローラ保持部22は、ローラ保持部22の長手方向中間部に配置された奥行方向の第2ピン26を介して、ローラ支持台23に揺動可能に支持されている。第2ピン26は、一対の支持ローラ21の中間位置でローラ保持部22を支持している。これにより、ローラ保持部22は、第2ピン26を回動中心として、ローラ支持台23に対して奥行方向の軸(第2ピン26)回り回動(揺動)することができる。
【0044】
その結果、回転支持機構20が荷重を受けると、ローラ保持部22の一対の支持ローラ21が接触面CFと当接する角度になるまでローラ保持部22が揺動する。各々の支持ローラ21に作用する荷重による第2ピン26回りのモーメントの釣り合いによって、ローラ保持部22の傾斜角度が決まる。そのため、回転支持機構20に作用する荷重は、第2ピン26、ローラ保持部22から一対の支持ローラ21へ均等に分散される。
【0045】
図7の構成例では、複数の回転支持機構20は、回転構造体10の外周部にそれぞれ設置されている。回転支持機構20は、発進基地4の躯体壁4aの内面に対して複数の支持ローラ21を揺動させながら、回転構造体10と一体的に周方向に走行可能に構成されている。
【0046】
つまり、ローラ支持台23が、回転構造体10の外周部(外枠11)に固定され、一対の支持ローラ21が径方向外側の躯体壁4aに向いている。躯体壁4aには、たとえば支持ローラ21の走行用のレール4b(
図5参照)が設けられる。レール4bは、躯体壁4aの内面に設置されてもよいし、躯体壁4aの内面と同一面内に走行面が配置されるように躯体壁4a内に埋設されてもよい。
図7の構成例では、一対の支持ローラ21の接触面CFは、躯体壁4aの内面またはレール4bである。複数の回転支持機構20は、回転構造体10と一体的に周方向に回転し、躯体壁4aに沿って走行する。走行時、一対の支持ローラ21は、環状の接触面CFの湾曲に合わせて揺動角度を変化させ、接触面CFとの当接状態を維持する。
【0047】
回転支持機構20では、支持ローラ21が一対ずつまとめて配置される。このため、単一の支持ローラを備えた支持機構を所定間隔で設ける場合と比べて単純計算で2倍の荷重を支持できるため、回転支持機構20の配置間隔を約2倍に広げることができる。このため、回転構造体10が十分に高い剛性を有していても、各回転支持機構20の間で若干の撓みを生じさせることができる。発生した撓みによって寸法誤差などが吸収されてそれぞれの回転支持機構20の支持ローラ21と接触面CFとをより確実に当接させて、荷重分散を促進する。その結果、安定した回転支持が実現できる。
【0048】
図8は、回転支持機構20の他の配置例を示している。本実施形態では、回転支持機構20を回転構造体10に設けなくてもよい。
図8の構成例では、複数の回転支持機構20は、発進基地4の躯体壁4aの内面の下部に設置され、回転構造体10の外周部と当接する複数の支持ローラ21を介して、回転構造体10を周方向に回転可能に支持している。
【0049】
つまり、
図8の構成例は、回転支持機構20を回転構造体10に配置せず、回転構造体10を設置する発進基地4の躯体壁4aの下部に、回転支持機構20を配置した形態を示したものである。この構成では、回転支持機構20は躯体壁4aの内面に、周方向には移動しないように固定的に設置される。ローラ支持台23が、躯体壁4aの内面に固定され、支持ローラ21は、半径方向内側の回転構造体10に向けて設けられ、回転構造体10の外周部(外枠11)と当接する。支持ローラ21は、回転構造体10の重量を支持しつつ、回転構造体10の回転に伴って回転する軸受のように機能することになる。
【0050】
図8の構成例では、支持ローラ21の接触面CFは、回転構造体10の外周部(外枠11の外周面)となる。回転構造体10の回転時、一対の支持ローラ21は、環状の接触面CFの湾曲に合わせて揺動角度を変化させ、接触面CFとの当接状態を維持する。
図8の構成例では、回転支持機構20が周方向に移動しないので、回転構造体10の重量支持に寄与する発進基地4の躯体壁4aの下部にのみ、回転支持機構20を配置するだけで済む。すなわち、この構成例では、回転支持機構20の数量を半数程度に軽減することが可能となる。回転ガイドのために、発進基地4の躯体壁4aの上部側にも回転支持機構20を1つまたは複数設けてもよい。
【0051】
なお、いずれの配置例においても、回転支持機構20は、回転構造体10の奥行方向(
図5参照)に、間隔を隔てて複数配置される。
図5では回転構造体10の前側端部、後側端部および中間部に、3つの回転支持機構20が間隔を隔てて配置されている。奥行方向のそれぞれの回転支持機構20が周方向に並んで配列されるため、
図5では、周方向に配列された回転支持機構20の列が、奥行方向に3列設けられている。
【0052】
〈回転駆動機構〉
図9および
図10は、本実施形態の回転駆動機構30の構成例を示したものである。回転駆動機構30は、回転構造体10が設置される発進基地4の躯体壁4aの内面に複数設置されている。各回転駆動機構30は、回転構造体10を周方向に回転駆動する油圧シリンダ方式の駆動機構として構成されている。
【0053】
図9および
図10の構成例では、回転駆動機構30は、躯体壁4aの内面に周方向に向けて配置された駆動用油圧シリンダ31を含む。回転駆動機構30は、回転構造体10の外周部において周方向の全周にわたって間隔を隔てて配列された複数の当接部14に対して駆動用油圧シリンダ31により駆動力を付与することにより、回転構造体10を躯体壁4aに対して周方向に回転させるように構成されている。駆動用油圧シリンダ31は特許請求の範囲の「油圧シリンダ」の一例である。
【0054】
すなわち、固定側である発進基地4の躯体壁4aに設置した回転駆動機構30の駆動用油圧シリンダ31の推力により、駆動側(可動側)である回転構造体10の外枠11に設けた当接部14を押し出し移動させることにより、回転構造体10が回転駆動される。当接部14は、外枠11に設けられた回転用爪(係合突起)である。当接部14は、回転構造体10の外枠11に駆動用油圧シリンダ31のストロークに合わせたピッチで配置されている。
【0055】
図9および
図10の構成例では、回転駆動機構30は、回転構造体10に対して奥行方向の前側および後側にそれぞれ配置(
図10参照)されている。
図9の手前側に4式(30−1、30−3、30−5、30−7)の回転駆動機構30が周方向に配置され、
図9の奥側(
図10の後方側)に4式(30−2、30−4、30−6、30−8)の回転駆動機構30が周方向に配置されている。
図9の構成例では、合計8式の回転駆動機構30のうち、周方向一方側の4式(30−1〜30−4)が時計方向の回転用の回転駆動機構30であり、周方向他方側の4式(30−5〜30−8)が反時計方向の回転用の回転駆動機構30である。当接部14は、回転構造体10の奥行方向前側の外枠11および後側の外枠11にそれぞれ配置されている。
【0056】
図11〜
図13に示す構成例では、回転駆動機構30は、駆動時に起立して当接部14と係合し、非駆動時に倒れて当接部14との係合を解除する作動部材32と、作動部材32を動作させる切替シリンダ33とを含む。駆動用油圧シリンダ31は、作動部材32を起立させた状態で初期位置から伸作動または縮作動の一方を行うことにより当接部14に駆動力を付与し、作動部材32を倒した状態で伸作動または縮作動の他方を行うことにより初期位置に戻る。なお、ここでは、駆動用油圧シリンダ31の伸作動により当接部14を押圧することにより駆動力を付与するが、駆動用油圧シリンダ31の縮作動により当接部14を引っ張ることにより駆動力を付与してもよい。
【0057】
より具体的には、回転駆動機構30は、駆動用油圧シリンダ31を内部に収容するハウジング34を備えている。駆動用油圧シリンダ31のロッド先端には、当接部14に駆動力を付与するための押圧ユニット35が設けられている。切替シリンダ33および作動部材32は、押圧ユニット35に設けられている。切替シリンダ33は、駆動用油圧シリンダ31と同じく油圧式シリンダによって構成される。回転駆動機構30は、作動部材32によって回転構造体10の外枠11に設けた当接部14を押しつけて、駆動用油圧シリンダ31の駆動力を作用させる。
【0058】
図11〜
図13の構成例では、作動部材32は、柱状部材からなり、下端部が押圧ユニット35に回動可能に取り付けられている。切替シリンダ33は、作動部材32の中間部に連結されたロッドを伸縮させることにより、作動部材32が直立した係合位置P1(
図12(A)参照)と、作動部材32が周方向に沿った解除位置P2(
図12(B)参照)との間で作動部材32の姿勢を切り替える。切替シリンダ33は、作動部材32を起こして(回動させて)係合位置P1に切り替え、作動部材32を寝かせて(回動させて)解除位置P2に切り替える。係合位置P1(
図13)は、作動部材32が回転構造体10の当接部14と接触する姿勢(位置)であり、解除位置P2は、作動部材32が回転構造体10の当接部14とは接触しない姿勢(位置)である。
【0059】
図12に示すように、回転駆動機構30は、切替シリンダ33により作動部材32を係合位置P1に切り替えて、駆動用油圧シリンダ31を初期位置(縮限位置)から伸作動させることにより、作動部材32を押圧ユニット35ごと周方向に移動させる。その結果、当接部14と当接した作動部材32を介して、駆動用油圧シリンダ31の1ストローク分だけ当接部14を周方向に押し出して回転構造体10を回転させる。駆動用油圧シリンダ31のロッド(押圧ユニット35)が伸限位置に到達した後、回転駆動機構30は、切替シリンダ33により作動部材32を解除位置P2に切り替えて、駆動用油圧シリンダ31を初期位置(縮限位置)へ向けて縮作動させる。この際、作動部材32は当接部14と当接せずに通り過ぎて、初期位置(縮限位置)まで戻される。これにより、個々の回転駆動機構30による回転構造体10の回転駆動が実現される。
【0060】
図14の構成例では、回転駆動機構30は、それぞれ1つまたは複数の駆動用油圧シリンダ31から構成される第1駆動セットDAおよび第2駆動セットDBを含む。各々の回転駆動機構30は、第1駆動セットDAの駆動用油圧シリンダ31による駆動と第2駆動セットDBの駆動用油圧シリンダ31による駆動とを交互に行うように構成されている。
【0061】
たとえば、時計方向の回転用の4式の回転駆動機構(30−1〜30−4)のうち、回転駆動機構30−1および30−2が第1駆動セットDAを構成し、回転駆動機構30−3および30−4が第2駆動セットDBを構成する。反時計方向の回転用の4式の回転駆動機構(30−5〜30−8)のうち、回転駆動機構30−5および30−6が第1駆動セットDAを構成し、回転駆動機構30−7および30−8が第2駆動セットDBを構成する。
【0062】
一例として、
図15を参照して、時計方向に回転駆動する際の第1駆動セットDAおよび第2駆動セットDBの動作を説明する。各駆動セットに含まれる回転駆動機構30は同一の動作をする。そのため、第1駆動セットDAを代表して回転駆動機構30−1の動作について説明し、第2駆動セットDBを代表して回転駆動機構30−3の動作について説明する。
【0063】
たとえば、
図15(A)に示すように第1駆動セットDAから回転駆動を開始する。
図15(B)に示すように、第1駆動セットDAが伸限に達するまでの間に、第2駆動セットDBの回転駆動機構30−3は縮作動を開始する。
【0064】
図15(C)に示すように、第1駆動セットDAの回転駆動機構30−1が当接部14を押して伸長限に達すると、第2駆動セットDBの回転駆動機構30−3に切り替わり当接部14を押して移動させ、回転構造体10を連続して回転させる。
【0065】
図15(D)に示すように、伸限に達した回転駆動機構30−1の駆動用油圧シリンダ31は、第2駆動セットDBの伸作動と同時に縮作動を開始する。つまり、回転駆動機構30−1は、切替シリンダ33を縮めて作動部材32を倒して当接部14との干渉を防止しながら次の作動のために縮限へ作動する。
【0066】
その後、第1駆動セットDAの駆動用油圧シリンダ31が縮限に達すると、切替シリンダ33を伸長し作動部材32を起こして当接部14を係合位置P1にする。そして、伸長限に達した第2駆動セットDBの回転駆動機構30−3に切り替わり、第1駆動セットDAの回転駆動機構30−1が当接部14を押して移動させ回転構造体10を連続して回転させる。この動作を繰り返すことにより、連続的に回転させることができる。ここでは時計方向に回転駆動する場合について説明したが、反時計方向に回転駆動する場合も同様であり、説明を省略する。
【0067】
〈水平維持機構〉
水平維持機構40の構成例を
図16に示す。
図1および
図2において、回転構造体10が1回転する間に、搬送ユニット13は回転角度に応じて360度分向きが変化することになる。搬送ユニット13内の搬送物3の回転を防止するため、回転構造体10は、水平維持機構40を備えている。水平維持機構40は、周方向移動に伴う搬送ユニット13の回転に対して搬送物3の上下を維持する。水平維持機構40は、円筒状の搬送ユニット13の水平方向(Y方向)の中心軸回りのロール方向Qrに相対回転可能に配置された円弧状架台41を含んでいる。
【0068】
図16および
図17に示すように、水平維持機構40は、各搬送ユニット13の内部に設けられている。水平維持機構40は、全ての搬送ユニット13に設置されており、それぞれの搬送ユニット13がどこの位置(周方向の回転角度)にあっても常に水平を保つ機能を有する。
【0069】
図18に示すように、円弧状架台41は、回転構造体10の搬送ユニット13を構成している円環状フレームの内周部に、複数個のローラ42を介して配置されている。円弧状架台41は、搬送ユニット13の内周面に沿う形状を有する。円弧状架台41は、ローラ42により、搬送ユニット13の内部で中心軸回りのロール方向Qrに相対回転可能に配置されている。中心軸は、奥行方向に延びる円筒形状の搬送ユニット13の中心軸である。なお、ローラ42には、スラスト方向(ローラ軸方向、Y方向)への移動を抑制するためサイドローラ(図示せず)が複数個設置されている。
【0070】
また、水平維持機構40は、円弧状架台41をロール方向Qrに駆動させるための駆動用ローラ43aと、駆動用ローラ43aを駆動する駆動装置43bとを備える。駆動装置43bは、駆動用ローラ43aを回転駆動して、円弧状架台41を搬送ユニット13の内周面に沿ってロール方向Qrに移動させることができる。
【0071】
水平維持機構40の自重と偏芯により、また搭載された搬送物3の自重と偏芯によって常に水平維持機構40は概ね水平を保つことが可能であるが、駆動用ローラ43aおよび駆動装置43bにより、正確な水平位置を調整するための姿勢制御が可能となっている。
【0072】
シールド機用の搬送ユニット13の円弧状架台41には、シールド機用架台44が設置されている。シールド機用架台44(
図17参照)は、円筒状のシールド機5の外周面を支持可能に構成されている。
【0073】
ここで、本実施形態では、水平維持機構40は、搬送ユニット13の軸方向と直交する鉛直軸回りのヨー方向Qy(
図20参照)、中心軸および鉛直軸と直交する水平軸回りのピッチ方向Qp(
図17参照)の少なくとも一方における搬送物3の姿勢を調整可能な姿勢調整部45を有する。すなわち、水平維持機構40は、水平の維持に加えて、搬送ユニット13内で搬送物3の位置や姿勢を姿勢調整部45により微調整する機能を有している。なお、搬送ユニット13の軸方向はY方向に一致し、搬送ユニット13の鉛直軸はZ方向に一致する。中心軸および鉛直軸と直交する水平軸は、X方向に一致する。ここでは、ヨー方向Qyおよびピッチ方向Qpの両方の姿勢調整が可能な姿勢調整部45の構成例を示す。
【0074】
図19および
図20に示すように、姿勢調整部45は、複数の昇降油圧シリンダ45aおよび複数の水平油圧シリンダ45bを含む。シールド機用架台44は、昇降油圧シリンダ45aおよび水平油圧シリンダ45bを介して円弧状架台41上に設置されている。
【0075】
昇降油圧シリンダ45aは、平面視(
図20参照)において、シールド機用架台44の左右両側に対称に配置され、かつ、前後両側にそれぞれ配置されている。つまり、昇降油圧シリンダ45aは、シールド機用架台44の四隅にそれぞれ配置されている。昇降油圧シリンダ45aは、それぞれ鉛直軸方向(Z方向)に伸縮するように設けられている。
【0076】
水平油圧シリンダ45bは、平面視において、左右方向の中心から両外側に向けて2本ずつ配置された4本のセットが、シールド機用架台44の前後両側に対称に配置されており、合計8本設けられている。水平油圧シリンダ45bは、それぞれ水平軸方向(X方向)に伸縮するように設けられている。
【0077】
昇降油圧シリンダ45aおよび水平油圧シリンダ45bは、それぞれ複数本の油圧シリンダにより構成されているため、それぞれのシリンダのストロークを同一量制御することにより平行に位置調整することができ、それぞれのシリンダのストロークを異なって制御することにより姿勢(角度)調整をすることができる。
【0078】
たとえば昇降油圧シリンダ45aのストロークを奥行方向(Y方向)の前後で異ならせれば、ピッチ方向Qpの姿勢(傾斜角度)が調整でき、水平油圧シリンダ45bを前後で異ならせれば、ヨー方向Qyの姿勢(傾斜角度)が調整できる。
【0079】
また、本実施形態では、姿勢調整部45は、搬送ユニット13の内部で円弧状架台41を鉛直軸方向(Z方向)および水平軸方向(X方向)において平行移動させることにより、位置調整可能に構成されている。すなわち、昇降油圧シリンダ45aのストロークを一致させることで平行移動により上下方向(Z方向)の位置が調整でき、水平油圧シリンダ45bのストロークを一致させることで平行移動により左右方向(X方向)の位置が調整できる。
【0080】
このように、本実施形態では、水平維持機構40は、ロール方向Qr、ヨー方向Qyおよびピッチ方向Qpの各回転方向(直交3軸回り)における搬送物3(シールド機用架台44)の回転姿勢を調整することができ、かつ、上下方向(鉛直方向、Z方向)および水平方向(左右方向、X方向)における搬送物3(シールド機用架台44)の位置を調整することができる。
【0081】
なお、説明は省略するが、資機材用の搬送ユニット13に設けられた水平維持機構40も、同様の構成を有し、同じ機能を備えている。
図21に示す資機材用搬送装置102では、シールド機用架台44に代わり、資機材6を搬送できるよう平坦な資機材搬送架台46が設けられている。その他の点は、シールド機用搬送装置101と同様である。
【0082】
以上説明した通り、
図1に示したシールド機用搬送装置101は、回転支持機構20と回転駆動機構30とを使用して回転構造体10を周方向に回転させ、所定の発進位置へシールド機5を搬送する。回転構造体10を60度毎に回転させ、6台のシールド機5を順次搬入した後、同時に発進させ、同時に施工を行うことが可能である。
【0083】
図2に示した資機材用搬送装置102は、回転支持機構20と回転駆動機構30とを使用して回転構造体10を周方向に回転させ、各第2トンネル2の掘進位置へ資機材6を搬送する。回転構造体10を30度毎に回転させ、12箇所の搬送ユニット13に搬送物3を順次搬入しつつ、資機材6を積載した搬送ユニット13が搬送先となる掘進位置まで到達すると、資機材6がシールド機用搬送装置101を通過して掘進位置まで輸送される。
【0084】
(本実施形態の搬送装置の効果)
本実施形態の搬送装置100では、以下のような効果を得ることができる。
【0085】
本実施形態では、上記のように、複数の回転構造体10が設置される発進基地4の躯体壁4aの内面と、回転構造体10との間に複数設置されるとともに、それぞれ複数の支持ローラ21を揺動可能に備え、回転構造体10を周方向に回転可能に支持する回転支持機構20を設ける。これにより、回転支持機構20の複数の支持ローラ21は、躯体壁4aの内面と回転構造体10とのいずれか一方の接触面CF(
図7、
図8参照)と当接して支持する際に、接触面CFに沿うように揺動して、接触面CFから離間することなく適正な接触状態を維持する。その結果、剛性が高い回転構造体10を支持する場合でも、複数の支持ローラ21の各々に回転構造体10の荷重を分散させることができる。また、回転支持機構20が複数の支持ローラ21を有するので、単一のローラを用いる場合と比べて、回転支持機構20の許容荷重が向上する。その結果、複数の回転支持機構20の間の距離を大きくとることができるので、その分、剛性が高い回転構造体10であっても構造に多少の撓みが生じ、個々の回転支持機構20(支持ローラ21)と回転構造体10とを十分に接触させることができる。これによっても、回転構造体10の荷重を効果的に分散させることができる。
【0086】
さらに、本実施形態(
図9参照)では、上記のように、回転構造体10が設置される発進基地4の躯体壁4aの内面に複数設置され、回転構造体10を周方向に回転駆動する駆動用油圧シリンダ31方式の回転駆動機構30を設ける。これにより、回転構造体10は、駆動用油圧シリンダ31方式の回転駆動機構30の伸縮動作を利用して、回転駆動される。その結果、モータを用いたギア駆動方式のように十分な噛み合い精度を確保したり、高減速比の減速機を設けたりする必要がない。また、発進基地4の躯体壁4aの内面に設置された回転駆動機構30により、回転構造体10の外周側を駆動して大きな回転モーメントを作用させることができるので、たとえば第1トンネル1の壁面側から回転構造体10の内周側を駆動する場合と比較して、より小さな駆動力で回転構造体10を回転駆動することができる。以上の結果、本実施形態の搬送装置100によれば、回転構造体10の荷重をより分散し、かつ、回転構造体10の回転駆動を容易化することができる。
【0087】
また、本実施形態の
図7の構成例では、上記のように、複数の回転支持機構20を、回転構造体10の外周部にそれぞれ設置し、発進基地4の躯体壁4aの内面に対して複数の支持ローラ21を揺動させながら、回転構造体10と一体的に周方向に走行可能に構成する。これにより、回転構造体10自体が発進基地4内で回転可能となるので、回転構造体10を安定して回転駆動することができる。
【0088】
また、本実施形態の
図8の構成例では、上記のように、複数の回転支持機構20を、発進基地4の躯体壁4aの内面の下部に設置し、回転構造体10の外周部と当接する複数の支持ローラ21を介して、回転構造体10を周方向に回転可能に支持させる。これにより、複数の回転支持機構20を躯体壁4aに固定設置して、回転構造体10を下側から回転支持することができる。そのため、回転構造体10の外周部に全周にわたって回転支持機構20を設ける場合と異なり、荷重が作用する発進基地4の下部(回転構造体10の下側)のみに回転支持機構20を設けるだけでよく、回転支持機構20の数量を低減することができる。
【0089】
また、本実施形態(
図6参照)では、上記のように、回転支持機構20を、一対の支持ローラ21と、一対の支持ローラ21を周方向に間隔を隔てて保持するローラ保持部22と、一対の支持ローラ21の間に位置し支持ローラ21の車軸方向と平行な揺動軸回りにローラ保持部22を支持するローラ支持台23とを含む構成とする。これにより、ローラ保持部22を介して一対の支持ローラ21をローラ支持台23に揺動可能に設けた、いわゆるボギー車輪式の揺動機構が得られる。その結果、一対の支持ローラ21を接触面CFの傾斜に合わせて揺動させて、確実に両方の支持ローラ21で接触面CFを支持することができる。
【0090】
また、本実施形態(
図9参照)では、上記のように、回転駆動機構30を、回転構造体10の外周部において周方向の全周にわたって間隔を隔てて配列された複数の当接部14に対して駆動用油圧シリンダ31により駆動力を付与することにより、回転構造体10を躯体壁4aに対して周方向に回転させるように構成する。これにより、周方向に向けた駆動用油圧シリンダ31を回転構造体10の接線方向に伸長、収縮させて、回転構造体10の外周部(当接部14)に周方向の駆動力を付与することができる。その結果、駆動用油圧シリンダ31の直線運動を効率的に周方向の駆動力に変換して回転構造体10を容易に回転駆動することができる。
【0091】
また、本実施形態(
図14、
図15参照)では、上記のように、回転駆動機構30は、それぞれ1つまたは複数の油圧シリンダから構成される第1駆動セットDAおよび第2駆動セットDBを含み、第1駆動セットDAの駆動用油圧シリンダ31による駆動と第2駆動セットDBの駆動用油圧シリンダ31による駆動とを交互に行うように構成されている。このように構成すれば、第1駆動セットDAおよび第2駆動セットDBの一方が回転構造体10を駆動している間に、第1駆動セットDAおよび第2駆動セットDBの他方が初期位置(伸限位置または縮限位置)に戻ることができる。そのため、伸縮動作をする油圧シリンダを用いる場合でも、回転構造体10を円滑にかつ連続的に回転駆動することができる。
【0092】
また、本実施形態(
図12参照)では、上記のように、回転駆動機構30に作動部材32と切替シリンダ33とを設け、駆動用油圧シリンダ31が、作動部材32を起立させた状態で初期位置から伸作動または縮作動の一方を行うことにより当接部14に駆動力を付与し、作動部材32を倒した状態で伸作動または縮作動の他方を行うことにより初期位置に戻るように回転駆動機構30を構成する。切替シリンダ33によって、初期位置に戻る際に駆動用油圧シリンダ31の押圧部分(作動部材32)が回転構造体10の当接部14と干渉することを容易に回避することができる。また、たとえば電磁ブレーキなどにより係合状態と係合解除状態とを切り替える構成と異なり、切替シリンダ33を駆動用油圧シリンダ31と同様の油圧機構によって構成することができるので、装置構成を簡素化することができる。
【0093】
また、本実施形態(
図16、
図20参照)では、上記のように、回転構造体10に、ロール方向Qrに相対回転可能に配置された円弧状架台41を含む水平維持機構40を設け、水平維持機構40に、ヨー方向Qy(
図20参照)およびピッチ方向Qp(
図17参照)の少なくとも一方における搬送物3の姿勢を調整可能な姿勢調整部45を設ける。これにより、円弧状架台41によってロール方向Qrの水平度を確保することができるので、円弧状架台41上に設置される搬送物3を安定して搬送することができる。また、姿勢調整部45によって、たとえば掘削機の発進方向(ヨー方向Qyおよびピッチ方向Qp)の微調整を行うことができる。その結果、第2トンネル2の形状の自由度が向上する。
【0094】
また、本実施形態(
図20参照)では、上記のように、姿勢調整部45を、搬送ユニット13の内部で、円弧状架台41を鉛直軸方向(Z方向)および水平軸方向(X方向)において平行移動させることにより位置調整可能に構成する。これにより、搬送ユニット13内における搬送物3の上下方向(Z方向)位置および左右方向(X方向)位置を微調整することができる。この結果、たとえば第2トンネル2の掘進中に資機材6を第2トンネル2の内部に搬入出する際などに、資機材搬送用のレールなどに資機材6の搬送台車の位置を合わせてスムーズに搬入出することができるようになる。
【0095】
〈回転構造体の組立方法〉
次に、
図22〜
図31を参照して、本実施形態の搬送装置100における回転構造体10の組立方法について説明する。
【0096】
図22に示すように、本実施形態では、回転構造体10は、回転構造体10が分割されたサブ組立ブロック50(破線部参照)の組み合わせによって構築される。回転構造体10は、たとえば標準鋼材による骨組み構造体である。
図23に示すように、回転構造体10は、サブ組立ブロック50に分割され、地下空間である発進基地4内で組み立てられる。個々のサブ組立ブロック50は、最小組立単位としての構成部材51から組み立てられる。
【0097】
構成部材51は、回転構造体10の外枠11、内枠12、搬送ユニット13などの各部を構成する。構成部材51は、たとえば、特別の許可申請なく道路輸送可能な寸法範囲内で、溶接一体構造で製作される。構成部材51の製作後、構成部材51が施行場所まで輸送され、施工場所での組立場にて構成部材51をボルト・ナット締結などにより接合して、サブ組立ブロック50として組み立てられる。
【0098】
図23の例では、1つの搬送ユニット13が正面視で左右2分割にしたサブ組立ブロック50により構成されている。シールド機用の回転構造体10では、正面視で示されている半円形状のユニット部分を含む構成部材51が奥行き方向に3列配置(
図3参照)され、それぞれが複数の奥行き方向の連結部材52(
図3参照)により接合された立体骨組み構造のサブ組立ブロック50により、搬送ユニット13が構成されている。
【0099】
回転構造体10の面方向(奥行方向と直交する縦断面方向)に延びる3つの構成部材51により、奥行方向に3つ(3列)の構造面(
図3参照)が形成される。したがって、輸送時には、3列分の構成部材51を含むサブ組立ブロック50の奥行き方向の連結部材52を取り外し、一面毎の構成部材51にまで分解できる。
【0100】
図24は搬送ユニット13の構成部材51aを示し、
図25は搬送ユニット間の補強構造部15(トラス構造の骨組み部、
図1参照)の構成部材51bを示したものである。道路輸送制限寸法の範囲内であれば、構成部材51には、回転支持機構20等の付属装置ができる限り予め設置される。このため、構成部材51単位で輸送車両に積載し、特別な輸送許可を必要とせずに組立現場まで輸送できる。
【0101】
次に、回転構造体10の組立手順について説明する。
図26〜
図31は、施工現場での組立要領を示している。
【0102】
図26の例では、中央の既設の第1トンネル1の下部に、発進基地4とつながる連絡開口61と組立場62とを設置している。連絡開口61は、第1トンネル1の側部など、下部以外に設けてもよい。連絡開口61は、第1トンネル1の左右両側部など複数でもよい。組立場62は、特許請求の範囲の「投入位置」の一例である。
【0103】
〈ステップS1:サブ組立ブロックを第1トンネル内で組み立てる工程〉
本実施形態では、道路輸送可能な寸法範囲内でサブ組立ブロック50を分割した構成部材51から、サブ組立ブロック50(破線部参照)を第1トンネル1内で組み立てる工程が実施される。
【0104】
第1トンネル1の連絡開口61の形成箇所には、門型クレーン63などの組立装置が設置されている。地上から第1トンネル1内を輸送されてきた回転構造体10等の構成部材51は、門型クレーン63により第1トンネル1内でサブ組立ブロック50に組み立てられる。つまり、
図23の例であれば3列の構成部材51を連結部材52により連結して立体骨組み構造のサブ組立ブロック50が構成される。
図22の例では、回転構造体10が合計24ブロックのサブ組立ブロック50により構成される。回転構造体10を何個のブロックに分割するかは、組立場62での作業性や、連絡開口61の大きさ等を考慮して適宜決定される。
【0105】
すなわち、サブ組立ブロック50は、第1トンネル1内で門型クレーン63により組立可能で、かつ、連絡開口61を通って組立場62に輸送可能な大きさおよび質量の範囲内であれば、より多くの構成部材51を用いて大型にしてよい。たとえば左右2分割にしたサブ組立ブロック50を組み合わせて1つの搬送ユニット13の大きさのサブ組立ブロックとしてもよい。
【0106】
〈ステップS2:構造体部分を組み立てる工程〉
次に、回転構造体10が分割されたサブ組立ブロック50を、回転構造体10が設置される発進基地4の内部の組立場62に第1トンネル1から搬入して構造体部分53を組み立てる工程が実施される。構造体部分53は、複数のサブ組立ブロック50から構成された回転構造体10の一部分である。
【0107】
図26の例では、搬送ユニット13を左右2分割にした大きさまで第1トンネル1内でサブ組立てされたサブ組立ブロック50が、発進基地4の下部の組立場62へ投入される。
【0108】
発進基地4の下部に設けた組立場62では、仮設の組立架台(図示せず)および回転駆動機構30が既に設置してある。組立場62に投入されたサブ組立ブロック50は、組立場62で周方向(C方向)に移動させ、次のサブ組立ブロック50を組立場62に投入するためのスペースを確保することができる。
【0109】
図27に示すように、次のサブ組立ブロック50が組立場62に投入されると、既に投入されていたサブ組立ブロック50とのサブ組立ブロック50同士のブロック組立が行われる。それぞれの次のサブ組立ブロック50は、位置合わせのうえ接合部がボルト・ナットにより結合されることにより、構造体部分53が組み立てられる。
図27では、搬送ユニット13を含む構造体部分53が組み立てられている例を示している。構造体部分53が組み立てられる際、各種の付属装置が構造体部分53に設置される。たとえば、内部に設置される水平維持機構40等の附属装置が搬送ユニット13に組み付けられる。
【0110】
構造体部分53は、一旦、所定の大きさまで組み立てられる。
図27の例では、5ブロック分のサブ組立ブロック50からなる構造体部分53が組み立てられる。構造体部分53の大きさは、5ブロック分に限られず、作業性や発進基地4の大きさなどを考慮して適宜設定される。
【0111】
〈ステップS3:構造体部分を周方向に移動させる工程〉
構造体部分53が所定の大きさまで組み立てられると、発進基地4の躯体壁4aの内面に予め設置した回転駆動機構30により、組み立てられた構造体部分53を組立場62から周方向(C方向)に移動させる工程が実施される。
【0112】
図28に示すように、組み立てられた構造体部分53は、回転駆動機構30により周方向移動され、一方側(図中左側)に仮置きされる。構造体部分53は、組立場62における組立作業を妨げない位置まで周方向に移動される。たとえば、構造体部分53は、組立場62から周方向に離間した位置に仮置きされ、仮固定されて位置が保持される。
【0113】
〈ステップS4:構造体部分を周方向に接合する工程〉
次に、発進基地4内で、周方向に移動させた構造体部分53と、組立場62の構造体部分53とを周方向に接合する工程が実施される。
【0114】
まず、
図28に示すように、ステップS1〜S3と同じ作業によって、組立場62で所定の大きさ(たとえば5ブロック分)の構造体部分53が組み立てられ、回転駆動機構30の周方向移動によって他方側(図中右側、二点鎖線参照)に仮置きされる。
【0115】
次いで、
図29に示すように、仮置きしていた左右両側の各構造体部分53が下部(組立場62)に移動され、それぞれの構造体部分53の接合部がボルト・ナットで接合される。これにより、10ブロック分の構造体部分53が組み上がる。
【0116】
本実施形態では、上記のステップS1〜S4を繰り返すことにより、回転構造体10が組み立てられる。
【0117】
たとえば、
図30に示すように、10ブロック分の構造体部分53が一方側(図中左側)に仮置きされた後、ステップS1〜S3により6ブロック分の構造体部分53が組み立てられ、他方側(図中右側)のスペースに仮置きされる。ステップS4において、各構造体部分53が接合され、合計16ブロック分の構造体部分53となる。このように、本実施形態では、ステップS1〜S4を繰り返すことにより、構造体部分53を周方向に連結して周方向に組み立てて行く。
【0118】
図31に示すように、上記ステップS1〜S4の繰り返しにより、たとえば、全24ブロックの内、22ブロックまでの構造体部分53が組み立てられる。たとえば、構造体部分53は、未だサブ組立ブロック50が組み立てられていない空間部分のスペースが、サブ組立ブロック50の組立場62への搬入に要するスペースよりも小さくなるまで、組み立てられる。その後、最終組立が実施される。
【0119】
最終の2ブロック分を組み立てるため。第1トンネル1内の組み立て部を発進基地4の下部の組立場62に移動し、最終のサブ組立ブロック50が構造体部分53に組み付けられる。この最終組立では、たとえば、個々の構成部材51の単位で発進基地4に組み付けてもよい。以上により、回転構造体10の組み立ては完成となる。
【0120】
(本実施形態の組立方法の効果)
本実施形態の組立方法では、以下のような効果を得ることができる。
【0121】
本実施形態(
図26〜
図31参照)では、上記のように、搬送装置100の回転構造体10の組み立てに際して、回転構造体10が分割されたサブ組立ブロック50を、回転構造体10が設置される発進基地4の内部の組立場62に第1トンネル1から搬入して構造体部分53を組み立てる工程(ステップS2)と、発進基地4の躯体壁4aの内面に予め設置した回転駆動機構30により、組み立てられた構造体部分53を組立場62から周方向(C方向)に移動させる工程(ステップS3)と、発進基地4内で、周方向に移動させた構造体部分53と、組立場62の構造体部分53とを周方向に接合する工程(ステップS4)と、を繰り返す。これにより、回転構造体10の一部を構成する構造体部分53が発進基地4の内部の組立場62で組み上げられると、構造体部分53が周方向に移動されて、次に組み上げられた別の構造体部分53と周方向に接合される。つまり、構造体部分53を周方向に沿って延ばしていく方式で回転構造体10が組み立てられる。この結果、回転構造体10を下部から上部に向けて順に組み上げていく一般的な建造手法と異なり、構造体部分53の組立作業位置を発進基地4の内部の組立場62に固定することができるので、作業空間が限定された発進基地4内での回転構造体10の組み立てを効率的に行うことができる。
【0122】
また、本実施形態(
図23および
図26参照)では、上記のように、道路輸送可能な寸法範囲内でサブ組立ブロック50を分割した構成部材51から、サブ組立ブロック50を第1トンネル1内で組み立てる工程(ステップS1)をさらに設ける。これにより、特別の許可なく構成部材51を道路輸送できるので、回転構造体10のような巨大構造物を構築する場合でも資材輸送等の準備工程を容易化することができる。また、サブ組立ブロック50を分割した構成部材51単位で輸送する場合でも、第1トンネル1内でサブ組立ブロック50を組み立てることにより、発進基地4の内部の組立場62でサブ組立ブロック50を組み立てる必要がなく、発進基地4内での回転構造体10の組み立てを円滑に行うことができる。
【0123】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0124】
たとえば、上記実施形態では、第1トンネル1が1つの例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1トンネルは複数本のトンネルであってもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、第1トンネル1内で構成部材51からサブ組立ブロック50を組み立てる工程(ステップS1)を実施する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、構成部材51を組立場62に投入して、発進基地4の内部の組立場62でサブ組立ブロック50を組み立ててもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、水平維持機構40に、姿勢調整部45を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、姿勢調整部を設けなくてもよい。また、姿勢調整部を設ける場合、ヨー方向Qy(
図20参照)およびピッチ方向Qp(
図17参照)のいずれかのみを調製可能としてもよいし、平行移動による位置調整が可能でなくてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、回転駆動機構30に作動部材32と切替シリンダ33とを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回転駆動機構30が回転構造体10と係合する状態と係合しない状態とを切り替え可能であれば、作動部材32および切替シリンダ33以外の構成を採用してもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、第1駆動セットDAの駆動用油圧シリンダ31による駆動と第2駆動セットDBの駆動用油圧シリンダ31による駆動とを交互に行い、回転構造体10を連続的に移動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、単一の駆動セットによって、回転構造体10を間欠的に駆動してもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、掘削機の一例としてシールド機5を用いる構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、どのような掘削機を搬送してもよい。