(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-131887(P2018-131887A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】薄板折板屋根部材
(51)【国際特許分類】
E04D 3/367 20060101AFI20180727BHJP
【FI】
E04D3/367 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】書面
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-39821(P2017-39821)
(22)【出願日】2017年2月15日
(71)【出願人】
【識別番号】517073878
【氏名又は名称】万道 強
(72)【発明者】
【氏名】万道 強
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AZ01
2E108BB04
2E108BN06
2E108CC01
2E108CC02
2E108CC03
2E108CC05
2E108CV03
2E108CV05
2E108DD07
2E108GG01
2E108GG09
2E108GG15
2E108GG19
(57)【要約】
【課題】山谷フラット部と、重ね合せ、馳係合してなる山谷フラット部との長さを一定にすることができ、美しい屋根ライン、一定山谷の美しい山谷ラインを得ることができる薄板折板屋根部材とその組み立て・施工方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
山フラット部相当の馳せ部位地に、前記山フラット部の断面長さの1/2より少し短い長さのフラット部を配置し、前記フラット部から、垂直方向に曲がる馳せ部を設け、前記垂直方向に曲がる馳せ部の前記断面での長さより水平方向に短くなるように垂直に曲げて略コの字の形状にし、その先端を水返し用に曲げること、加工装置を現場に持ち込んで加工することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根の長手方向垂直断面左右を重ね合せ、馳係合してなる薄板折板屋根部材において、
前記薄板折板屋根部材の同じ断面長さの二つの谷フラット部の中央に、前記谷フラット部と同じ長さの山フラット部を設け、前記薄板折板屋根部材左右に、重ね合せ、馳係合のために谷フラット部が立ち上がった山フラット部相当の位地に、前記山フラット部の断面長さの1/2より少し短い長さのフラット部を配置し、前記1/2より少し短い長さのフラット部から、垂直方向に曲がる馳せ部を設け、前記垂直方向に曲がる馳せ部の前記断面での長さより短く水平方向になるように垂直に曲げて略コの字の形状にし、その先端を水返し用に曲げることを特徴とする薄板折板屋根部材。
【請求項2】
前記1/2より少し短い長さの山フラット部からの垂直方向に曲がる内馳せ部の垂直長さより、外馳せ部の前記山フラット部からの垂直方向に曲がる垂直長さを長くし、前記水平方向に垂直に曲る外馳せ部の水平長さより、前記内馳せ部の垂直に曲る水平長さを短くすること特徴とする請求項1に記載の薄板折板屋根部材。
【請求項3】
前記薄板折板屋根部材の左右いずれかに設けた前記外馳せ部の前記水平部から垂直に下方に曲げ、先端を水返し用に外側に曲げ、前記薄板折板屋根部材の左右他方に設けた前記内馳せ部の先端を水返し用に内側に曲げ、前記外馳せ部の前記水平部から垂直に下方に略コの字の形状になるように曲げた全体内表面長さは、前記コの字の形状にした前記内馳せ部の外表垂直方向長さより、板圧の二倍相当分長くすることを特徴とする請求項2に記載の薄板折板屋根部材。
【請求項4】
鋼板、カラー鋼板、塗装ステンレス鋼板、クラッドメタル材、溶融アルミニウムめっき鋼板、ガルバリウム(Galvalume)鋼板(登録商標)、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、フッ素鋼板、ポリ塩化ビニール樹脂等の樹脂被覆鋼板、前塗装アルミニウム板、塗装アルミニウム板、銅版、亜鉛板、のいずれか1つの材料を前記重合、馳係合してなる薄板屋根部材として配することを特徴とする請求項1〜3に記載の薄板折板屋根部材。
【請求項5】
前記薄板折板屋根部材の屋根側、または、屋根と反対側のいずれか一方に断熱材を積層することを特徴とする請求項1〜4に記載の薄板折板屋根部材。
【請求項6】
前記重合、馳係合してなる薄板屋根部材の馳せ係合部の基部に連なる山部に対して、前記薄板折板屋根部材に積層させる前記断熱材を、前記薄板屋根部材の馳せ係合部の基部の曲げ部をオーバーラップさせ、馳せ係合部の基部に及ぶまで、積層することを特徴とする請求項5に記載の薄板折板屋根部材。
【請求項7】
薄板折板屋根部材の曲げ加工の一部または全部を加工する加工装置を前記薄板屋根施工現場近傍に持ち込んで成形し、組み立てることを特徴とする請求項1〜6に記載の薄板折板屋根部材の組み立て施工方法。
【請求項8】
前記薄板折板屋根部材の屋根側、または、屋根と反対側のいずれか一方に積層する断熱材として、ポリエチレンフォームを採用することを特徴とする請求項5に記載の薄板折板屋根部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根葺施工にかかる金属板を含み山部と谷部を有する薄板製の折板屋根部材、特に折り返す曲げ部分を重ね合せ、馳係合してなる薄板折板屋根部材とその組み立て施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な和瓦葺施工の屋根は、重厚感と高級感を備えた外見を有し、多くの家屋、建て屋に使用されているが、近年国内で発生した大きな地震では、重量の大きな和瓦が耐震構造の充分でない住宅、建て屋を倒壊、半倒壊させて被害を招いている。将来発生が予想される地震でもこのような被害が懸念される。スレート屋根等の有効性も確認されているが、スレート屋根も重量があり、大きな地震での住宅、建て屋に与える負担は大きい。スレート屋根系の耐久性は、金属薄板製の屋根系に比較して、10年前後は耐久性が短くより多くのメンテナンスが必要と屋根施工業界で言われることも多い。ここに、近年、締結用のボルトが外に出ないため美観が良好な金属板を含む薄板製の折板屋根部材が、学校、体育館、工場等の屋根として普及してきた。折り返す曲げ部分を重ね合せ、馳係合させる薄板折板屋根部材は、高い防水性と耐風圧性があるため普及してきた。金属板を含む薄板製の折板屋根部材は、迅速に締結でき、メンテナンスを含むランニングコストも安い。
【0003】
特許文献1に示すように、ソーラーパネルや、緑化屋根及び軽微な設備装置や屋根上のメンテナンス通路となる構成部材を馳締タイプの折板屋根に適宜取付けることができ、汎用性を有し、簡易且つ強固に取付けることができ、安価に提供できる折板屋根用力骨体及びその取付構造として、折板屋根の折板屋根板の幅に略相当する長さで細長い平坦状主板と,平坦状主板の幅方向の両側に形成された主側部とからなる力骨本体部と、該力骨本体部の両主側部間に収められると共に前記折板屋根の馳締連結部Jを収納する凹状の窪みとした馳抱持部と、馳抱持部の下方に位置する馳挟持面とを有する第1挟持部材と、第1挟持部材と同様に凹状の窪みとした馳抱持部と馳挟持面とを有する第2挟持部材と、第1挟持部と第2挟持部材とを近接及び離間させる締付具とからなり、第1挟持部が力骨本体部に固着される構成が折板屋根とともに開示されている。
【0004】
また、特許文献2に示すように、強度上の点を確保するとともに、金属折板屋根を施工すると同時に、天井部をも同時に施工することができ、施工性が優れるのみならず、母屋をも不要にして、安価な施工費にて構築でき、かつ、優美なる天井構造を実現するために、建造物上部に、隣接して適宜の間隔を有して平行状に設置された横梁と、水平状部と空隙を有する立骨状部とが交互に連続して形成される金属板製の天井折板体と、山部と谷部とが連続して金属板製の折板屋根体とからなり、前記立骨状部長手方向が前記横梁の長手方向と交叉しつつ、前記天井折板体が前記横梁上に載置固定され、前記天井折板体上に前記折板屋根体が載置固定される構成が、折板屋根とともに開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3では、複数の折板屋根材山部半体同士が馳連結部により連結されることによって、山部と谷部とが交互に連なった折板屋根が形成され、前記馳連結部を被覆するカバー材が山部に取り付けられるカバー材の取付構造に関し、前記馳連結部に係止具が全長にわたって取り付けられると共に前記カバー材には被係止部が形成され、前記係止具に被係止部係止されることによって、前記カバー材が前記係止具に固着されることにより、カバー材が係止具により強固に山部に取り付けられ、強風による巻き上げ等によってもカバー材が脱落しにくくなり、折板屋根の防水性や外観を長期間にわたって維持しやすい折板屋根へのカバー材の取付構造が開示されている。
【0006】
特許文献4には、折板屋根の馳部に対して該馳部を締め付けるようにして取り付けるベく、左右一対の挟持部と、これら挟持部の上端部を一体に連結する頂面部と、挟持部を互いに近接する方向に締め付けるボルトナットとを有した屋根上取り付け金具で、上記の挟持部と頂面部との間に、締め付け時の変形を行いやすくするための折り返し部が、上にむけて突出する断面逆U字状に設けられた屋根上取り付け金具についての発明で、折板屋根の馳部に取り付けて屋根上構造物の固定などに使用する屋根上取り付け金具において、折板屋根に対する取り付け作業が簡易迅速に行えるようにするとともに、低コスト、高機能化を図ることができるようにする構成で、折板屋根の山部の水平部について、詳細説明中に、一部記載されている。
【0007】
特許文献5には、既存の重ね式小型折板屋根用の成形加工機械により加工される屋根材を用いて、専用の成形加工機械によって、一端が前記屋根材の一端側の上底部分を平坦部と連なる下馳部に、他端が前記屋根材の他端側の上底部分を上馳部に、中間が前記屋根材の中間の上底部分を前記他端側の上馳部と同様な馳部に成形した折板屋根板により構成する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−285799号公報
【特許文献2】特開2013−181355号公報
【特許文献3】特開2012−162934号公報
【特許文献4】特開2009−84982号公報
【特許文献5】特開2001−98710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5を含むすべての従来技術においては、折板屋根の長手方向垂直断面左右を重ね合せ、馳係合してなる薄板折板屋根部材において、前記薄板折板屋根部材の同じ断面長さの二つの谷フラット部の中央に、前記谷フラット部と同じ長さの山フラット部を設け、前記薄板折板屋根部材左右に、重ね合せ、馳係合のために谷フラット部が立ち上がった山フラット部相当の位地に、前記山フラット部の断面長さの1/2の長さのフラット部を設け、左右を立ちあがらせて、内馳せ部と外馳せ部を重ね合せ、馳係合させる構成であった。このため、左右を立ちあがらせて、内馳せ部と外馳せ部を重ね合せる際、馳せ部の首元は、内馳せ部の山フラット部の断面長さの1/2のフラット部長さと、内馳せ部の板厚、外馳せ部の山フラット部の断面長さの1/2のフラット部長さと、外馳せ部の板厚の合計長さで、重ね合せ、馳係合組み立て体としての、山フラット部を形成することになる。すなわち、山フラット部で馳せ係合させた場合は、山フラット部の水平長さが、板厚の略二倍分長くなってしまう課題があった。谷フラット部で馳せ係合させた場合は、谷フラット部の水平長さが、少なくとも板厚の略二倍分長くなってしまう課題があった。組み立て誤差、加工誤差を考慮すると板厚の略二倍分より少し長くなってしまう場合もある課題があった。原因は板厚や組み立て誤差、加工誤差を考慮してより精密に山谷フラット部スパンを一定にして美観を良くする技術思想がなかったことによる。山谷フラット部の1/2のフラット部長さという技術思想がなく、特に馳せ部がある山谷フラット部と馳せ部がない山谷フラット部の馳せ作業実務、馳せ部加工実務を考慮した1/2のフラット部長さという技術思想が存在しなかったことが原因である。金属定尺材料のロット差等のばらつきに起因して、個々の薄板折板屋根部材の加工誤差、組み立て誤差に作用し、板厚因子と重なって、馳せ部がある山谷フラット部のスパンが少し長くなってしまう現象に着目しなかったことに原因と課題があった。
【0010】
特許文献1や、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5を含む従来技術においては、折板屋根の長手方向垂直断面左右を重ね合せ、馳係合してなる薄板折板屋根部材において、同じ断面長さの二つの谷フラット部の中央に、前記谷フラット部と同じ長さの山フラット部を設け、前記左右の谷フラット部が立ち上がった山フラット部相当の位地に、前記山フラット部の断面長さの1/2より少し短いフラット部を配置した際に、前記馳せ部近傍の山フラット部水平長さを1/2より少し短いフラット部にする構成がないため、薄板折板屋根部材として、より正確に部品としてフラット部のセンター振り分け1/2とするため、馳せ系合させた時、内馳部と外馳部の板厚分、つまり、板厚の二倍分と馳せ組み立て誤差余裕分の合計値寸法分山フラット部の長さが長くなってしまう課題があった。
【0011】
特許文献1や、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5を含むすべての従来技術においては、前記山フラット部の断面長さの1/2より少し短いフラット部を配置していないことにより、材料の定尺寸法は決まっていることから、山谷の深さを標準的寸法にそろえた場合、先端の水返し部分の曲げをなくすか、先端の水返し部分の曲げを小さくするか、馳せ部全体を少し小さくするか、をせねばならなくなり、いずれにしても、水返し、防水効果が低減する課題があった。また、薄板に金属を採用すると、その比熱のから、断熱材を積層させる時、断熱材が安定的に、耐久性良好に積層されにくい課題があった。
【0012】
さらに、特許文献1では、明細書の
図1(A)、
図1(B)の主板61の底部長さに対して、明細書の
図3(D)、
図4(C)、
図4(D)や段落0028に示す上片部63の重ね合せの馳係合後の断面水平長さが著しく短いことにより、山谷フラット部との長さが一定になる美観が得られない課題があった。
【0013】
特許文献2でも、
図5(A)の部材91のように、主板の底部長さに対して、上片部の重ね合せ、馳係合後の断面水平長さが著しく短いことにより、山谷フラット部との長さが一定になる美観が得られない課題があった。
【0014】
特許文献3でも、
図3の谷部5に対して、
図2の部材42等山部の重ね合せ、馳係合後の断面水平長さが著しく短いことにより、山谷フラット部との断面水平長さが一定になる美観が得られない課題があった。
【0015】
そこで、本発明は、折板屋根の長手方向垂直断面左右を重ね合せ、馳係合してなる薄板折板屋根部材において、施工性が良好で、施工作業しやすく、仕上がり美観の良好な薄板折板屋根部材とその製造・組み立て方法・施工方法を提供することを課題とする。また、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、重力によって撓むことにより、力が印加した状態で、接触擦り合うことによって、薄板屋根部材の表面塗装、クラッド材料等が部分的に剥がれて腐食の要因になるのを回避することを課題とする。また、重力によって撓むことにより、力が印加した状態で、接触し擦り合うことが原因となっての腐食開始を抑制することをも課題とする。
【0016】
また、同時に、本発明は、水がたまりにくく、屋根の機能として重要な水がえし防水効果の高い薄板折板屋根部材を提供することを課題とする。さらに、加工時の加工性、量産性が良く、品質ばらつきと、施工ばらつきが低減する薄板折板屋根部材を提供することを課題とする。特許文献3などでは、カバー材7によって、防水機能を高めているが、こういったカバー材を増やして部品点数を増やすことにより、生産コストを上げることなく、防水効果を維持する薄板折板屋根部材とその製造・組み立て方法・施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明は、折板屋根の長手方向垂直断面左右を重ね合せ、馳係合してなる薄板折板屋根部材において、前記薄板折板屋根部材の同じ断面長さの二つの谷フラット部の中央に、前記谷フラット部と同じ長さの山フラット部を設け、前記薄板折板屋根部材左右に、重ね合せ、馳係合のために谷フラット部が立ち上がった山フラット部相当の位地に、前記山フラット部の断面長さの1/2より少し短い長さのフラット部を配置し、前記1/2より少し短い長さのフラット部から、垂直方向に曲がる馳せ部を設け、前記垂直方向に曲がる馳せ部の前記断面での長さより短く水平方向になるように垂直に曲げて略コの字の形状にし、その先端を水返し用に曲げることによって成る。
【0018】
したがって、本発明によると、折板屋根の長手方向垂直断面左右を重ね合せ、馳係合してなる薄板折板屋根部材において、美しい屋根ライン、一定の美しい山谷ラインを得るために、薄板折板屋根部材の長手方向垂直断面で、重ね合せ、馳係合部がない山谷フラット部と、近傍に重ね合せ、馳係合部がある山谷フラット部と長手方向に対する断面における長さを一定にすることができる作用効果がある。
【0019】
つまり、本発明によると、山フラット部で重ね合せ馳係合してなる薄板屋根部材の時は、重ね合せ馳係合した山フラット部で断面フラット長さが長くなってしまうことがなくなる作用効果がある。そして、本発明によると、谷フラット部で重ね合せ馳係合してなる薄板屋根部材の時は、重ね合せ馳係合した谷フラット部で前記断面フラット長さが長くなってしまうことがなくなる作用効果がある。
【0020】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記1/2より少し短い長さの山フラット部からの垂直方向に曲がる内馳せ部の垂直長さより、外馳せ部の前記山フラット部からの垂直方向に曲がる垂直長さを長くし、前記水平方向に垂直に曲る外馳せ部の水平長さより、前記内馳せ部の垂直に曲る水平長さを短くすることによって成る。
【0021】
このため、先端の曲げ返し部分が、前記屋根外側に折り返してなる曲げ返し部分の近傍に、万一雨水が入りこんでしまった場合の雨がえし作用を有する。同時に、前記屋根外側に折り返してなる前記先端曲げ返し部分は、開放状態ながらも、長手方向に半柱状効果をなし、その他の曲げ部分との相乗作用で、薄板折板屋根部材の前記重ね合せ、馳係合の強度向上作用を有する。つまり、より少ない前記薄板折板屋根部材で、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだり、撓んだ履歴が残ることによる防水機能の低下を防止できる。ここに、前記先端曲げ返し部分は、曲げ加工によって加工硬化を受けるので、前記撓み、撓んだ履歴や防水機能の低下作用効果をより薄く、軽く、少ない材料使用にて効果的に実現できる。
【0022】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記薄板折板屋根部材の左右いずれかに設けた前記外馳せ部の前記水平部から垂直に下方に曲げ、先端を水返し用に外側に曲げ、前記薄板折板屋根部材の左右他方に設けた前記内馳せ部の先端を水返し用に内側に曲げ、前記外馳せ部の前記水平部から垂直に下方に断面が略コの字の形状になるように曲げた全体内表面長さは、前記コの字の形状にした前記内馳せ部の外表垂直方向長さより、板厚の二倍相当分長くすることによって成る。
【0023】
これにより、馳せ部が有る無しの如何にかかわらず、山谷間のスパンをより正確に一定ならしめることができる。防水機能を同時に発揮できる。また、薄板折板屋根部材の前記重ね合せ、馳係合の強度向上作用を有する。つまり、より少ない前記薄板折板屋根部材で、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだり、撓んだ履歴が残ることによる防水機能の低下を防止できる。ここに、前記先端曲げ返し部分や馳せ部の曲げ部分は、曲げ加工によって加工硬化を受けるので、前記撓み、撓んだ履歴や防水機能の低下作用効果をより薄く、軽く、少ない材料使用にて効果的に実現できる。
【0024】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、鋼板、カラー鋼板、塗装ステンレス鋼板、クラッドメタル材、溶融アルミニウムめっき鋼板、ガルバリウム(Galvalume)鋼板(登録商標)、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、フッ素鋼板、ポリ塩化ビニール樹脂等の樹脂被覆鋼板、前塗装アルミニウム板、塗装アルミニウム板、銅版、亜鉛板、のいずれか1つの材料を前記重合、馳係合してなる薄板折板屋根部材として配することによって成る。
【0025】
これによって、本発明は、耐食性・耐久性が良好で、カラフルな美観で、量産性が良い薄板折板屋根部材を水切り防水性良好に、そして、前記施工性を良好に得ることができる。また、メンテナンスの期間スパンも長くなる効果を奏する。
【0026】
そして、前記課題を解決するため、本発明は、前記薄板折板屋根部材の屋根側、または、屋根と反対側のいずれか一方に断熱材を積層することによって成る。また、前記薄板折板屋根部材の屋根側、または、屋根と反対側のいずれか一方に積層する断熱材として、ポリエチレンフォームを採用することによって成る。
【0027】
これによって、本発明は、薄板折板屋根部材として、金属薄板を採用した時、金属の比熱の低さ、伝熱性に起因して、外気温の上下変動に、前記薄板折板屋根部材の内側の温度が、追随しやすい現象を抑制できる。結果、結露の発生を低減させることができる。
【0028】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、前記重合、馳係合してなる薄板屋根部材の馳せ係合部の基部に連なる山部に対して、前記薄板折板屋根部材に積層させる前記断熱材を、前記薄板屋根部材の馳せ係合部の基部の曲げ部をオーバーラップさせ、馳せ係合部の基部に及ぶまで、積層することによって成る。
【0029】
これによって、本発明は、前記断熱材を積層させた薄板折板屋根部材に、有効幅内での断熱材の積層がない部分を最小にすることができる。施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだり、撓んだ履歴が残ることによる断熱材の積層がない部分を最小にすることができる。施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだりした時に、基部の曲げ部をオーバーラップして、断熱材を積層していることにより、オーバーラップして、断熱材を積層しないことにより、積層した断熱材の端部から、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだりすることに起因しての、積層断熱材の積層端部からの剥がれ開始を防止することができる。そして、薄板折板屋根部材の断熱効果を経時的に、耐久的により完全に維持できる。薄板折板屋根部材の曲げ部を積層断熱材でオーバーラップすることにより、前記薄板折板屋根部材の曲げ部の曲げ加工後、ストレスのかかった表層に発生しやすい表面欠陥とその拡大を外的環境から保護する作用、効果がある。
【0030】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記課題を解決するため、本発明は、薄板折板屋根部材の曲げ加工の一部または全部を加工する加工装置を前記薄板折板屋根施工現場近傍に持ち込んで成形し、組み立てることによって成る。
【0031】
さらに、工場での前記薄板折板屋根部材の成形等の加工を多くすると、前記薄板折板屋根部材の製品、半製品に曲げ加工等が施される程度に応じて、前記薄板折板屋根部材の製品、半製品そのものが、立体的になる。結果、全体に体積ボリウムが増す。そして、曲げ加工済み部分に、材料の重ね合わせ重量や輸送中の振動等によって変形してしまわないように、輸送専用のマテリアルハンドリング容器・治具の製作が必要になり、輸送コスト、ト―タルコストが上がる。本発明では、これらのコストを低減でき、輸送中の前記薄板折板屋根部材の製品、半製品の品質劣化が回避できる。前記薄板折板屋根部材の施工現場近傍で、多く、前記薄板折板屋根部材の加工をすれば、前記薄板折板屋根部材の製品、半製品の輸送コストと輸送専用のマテリアルハンドリング容器・治具の製作費用が大幅に低減できる。遠隔地でも、ト―タルコストを抑えた組み立て、施工が出来る。
【0032】
前記課題を解決するため、本発明は、前記1/2より少し短い長さの山フラット部からの垂直方向に曲がる内馳せ部の垂直長さより、外馳せ部の前記山フラット部からの垂直方向に曲がる垂直長さを長くし、前記水平方向に垂直に曲る外馳せ部の水平長さより、前記内馳せ部の垂直に曲る水平長さを短くすることによって、また、前記薄板折板屋根部材の左右いずれかに設けた前記外馳せ部の前記水平部から垂直に下方に曲げ、先端を水返し用に外側に曲げ、前記薄板折板屋根部材の左右他方に設けた前記内馳せ部の先端を水返し用に内側に曲げ、前記外馳せ部の前記水平部から垂直に下方に略コの字の形状になるように曲げた全体内表面長さは、前記コの字の形状にした前記内馳せ部の外表垂直方向長さより、板圧の二倍相当分長くすることを特徴とすることによって次の作用効果を奏する。
【0033】
すなわち、本発明の薄板折板屋根部材は、隣り合う薄板折板屋根部材を内馳せ部と外馳せ部で、通常時の多重の雨返し防水機能と施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだり、撓んだ履歴が残留した時の多重の雨返し防水機能を発揮する。そして、重ね合せ、馳係合部の断面に外接または距離をおいて外側になるように、外接または、空間距離を置いて外接する構成、作用により、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際の強度を維持する作用効果がある。
【0034】
そして、その他の補強材なしで、追加部品なしで、より少ない材料で、これらの機能を果たすことは、材料そのものの製造環境負荷の低減、加工装置の入力電力の低減等をふくむ加工時の環境負荷の低減、リサイクル時の環境負荷の低減等大きなライフサイクル総合環境負荷の低減作用を成す。
【0035】
また、本発明では、屋根系全体の軽量化により、大きな地震発生時、重量のある屋根によって加勢される建て屋の振動による建て屋そのものの振動、共振、振幅を低減できる作用がある。これにより、地震発生時の建て屋の倒壊、半倒壊による被害を減じる作用があるとともに、小さな地震で有っても、共振等による、建て屋の経時劣化を抑制できる。また、板材料の色バラエティにより、建物にふさわしい、施工主体の希望する美観、外観を創出できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によると、折板屋根の長手方向垂直断面左右を重ね合せ、馳係合してなる薄板折板屋根部材において、薄板折板屋根部材の長手方向垂直断面で、山谷フラット部と、重ね合せ、馳係合してなる山谷フラット部との長さを一定にすることができ、美しい屋根ライン、一定山谷の美しい山谷ラインを得ることができる効果がある。
【0037】
本発明は、折板屋根の長手方向垂直断面左右を重ね合せ、馳係合してなる薄板折板屋根部材において、定尺幅という限られた幅の市販の鋼板であっても、水切り、防水機能を多重に果たしつつ、例えば、重ね合せ、馳係合部がある山谷部分の断面横水平長さを重ねる板厚分長くしてしまったりすることなく、すべての山谷部分の断面横水平長さを一定にすることができ、全体美観を維持できる効果を奏する。つまり、定尺幅という限られた幅の市販の鋼板の条件下で、水返し曲げ部分の他、内外馳係合部分でも、水切り、防水機能を多重に果たせる。
【0038】
また、本発明は、馳部の強度が上がって変形しにくくなる。結果、防水効果が経時的に安定的に向上する。さらに、台風や強風による負圧にも正圧にも耐久性が向上する。また、負圧にも正圧にも強度が向上し、負圧と正圧の繰り返し印加時経時耐久性も向上する効果がある。
【0039】
さらに、本発明は、馳部の強度が上がって変形しにくくなることによって、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、重力によって撓むことにより、力が印加した状態で、接触擦り合うことによって、薄板屋根部材の表面塗装、クラッド材料等が部分的に剥がれて腐食の要因になるのに対して、また、重力によって撓むことにより、力が印加した状態で、接触擦り合うことが原因となっての腐食開始を抑制できる作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の薄板折板屋根部材の特徴を示す薄板折板屋根部材長さ方向に対する垂直断面模式図である。
【
図2】本発明の薄板折板屋根部材に断熱材を積層した実施形態の薄板折板屋根部材長さ方向に対する垂直断面模式図である。
【
図3】本発明の薄板折板屋根部材実施形態の馳せ系合する状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の薄板折板屋根部材の実施形態を示す薄板折板屋根部材長さ方向に対する垂直断面模式図である。
図1において、1は、薄板折板屋根部材の山フラット部を示し、d3は山フラット部1薄板折板屋根部材垂直断面での長さを示す。山フラット部1の両サイドには、谷フラット部2と谷フラット部3が配置され、山フラット部1と谷フラット部2の間、山フラット部1と谷フラット部3の間には、立ち上がり部が連続している。山フラット部1と谷フラット部2、谷フラット部3は略平行に配置される。
【0042】
谷フラット部2の薄板折板屋根部材長さ方向に対する垂直断面のフラット部長さをd1、同様に、谷フラット部3の薄板折板屋根部材長さ方向に対する垂直断面のフラット部長さをd2とする。ここに、d1、d2、d3に示す各フラット部長さを略等しくする。これにより、均等で美しい外観が得られる。本実施形態では、一例として、定尺材料を端部切り落とすことなく、前幅有効に使うために、d1、d2、d3の長さを等しく54mmに設定した。谷フラット部2のセンターと谷フラット部3のセンターの間の長さ
W5は、定尺材料を端部切り落とすことなく、前幅有効に使うために、236mmに設定した。
【0043】
図1において、向かって右側に、立ち上がり部6の先に内馳せ部を形成し、向かって左側に、立ち上がり部5の先に外馳せ部を形成する。向かって右側に、立ち上がり部6の先に外馳せ部を形成し、向かって左側に、立ち上がり部5の先に馳せ部を形成してもよい。
【0044】
図1において、Uは、
図1向かって右側に形成した内馳せ部、Sは、
図1向かって左側に形成した外馳せ部である。谷フラット部3から、立ち上がり部6を介して、内馳せ部Uの首下の1/2より少し短い長さのフラット部l1部を形成する。フラット部l1と山フラット部1は、面位置、すなわち同じ高さに設定し、立ち上がり部6が、立ち上がり部5と対称的になるようにした。d1、d2、d3の長さを等しく54mmにして、その1/2は、27mmであるが、l1の長さを本発明の実施形態では、短く、26.5mmに設定した。l1の長さは、内馳せ部Uをフラット部l1から直角に曲げて、コの字状を形成する直角立ち上がり部8の外表すなわち直角立ち上がり部角10から、フラット部l1と立ち上がり部6との間の曲げ部の曲げトップセンター振り分け位置までの水平長さである。
【0045】
内馳せ部Uのコの字状の曲げ部分において、フラット部l1と谷フラット部3との高さ距離l2は、本発明の実施形態では、88mmに設定した。内馳せ部Uのコの字状の曲げ部分において、直角立ち上がり部8の長さl4を22mmに設定した。ここに、谷フラット部3とフラット部l1の高さ、谷フラット部3と山フラット部1の台形高さが、ともに、88mmであるのに対して、谷フラット部3からの内馳せ部Uのコの字状の曲げ部分を含んだ全体高さl3の長さは、本発明の実施形態では、110mmに設定した。
【0046】
図1と段落0041〜段落0045にて説明したように、内馳せ部Uのコの字状形状、谷フラット部3と山フラット部1をつなぐ立ち上がり部4、6の形状からして、中央工場で集中加工して施工現場に搬送して、組み立て施工する工法も、中央工場と施工現場が比較的近い場合は有効だが、施工現場が中央工場から遠隔していて、さらに、屋根そのものが大面積に及ぶケースでは、全体屋根を形成する要素部品である薄板折板屋根部材の製品、半製品そのものが、立体的になる。全体に体積ボリウムが増す。結果、輸送のためのコストが増大する。
【0047】
そして、曲げ加工済み部分に、材料の重ね合わせ重量や輸送中の振動等によって変形してしまわないように、輸送専用のマテリアルハンドリング容器・治具の製作が必要になり、輸送コスト、ト―タルコストが上がる。請求項7にかかる本発明では、これらのコストを低減でき、輸送中の前記薄板折板屋根部材の製品、半製品の品質劣化が回避できる。前記薄板折板屋根部材の施工現場近傍で、多く、前記薄板折板屋根部材の加工をすれば、前記薄板折板屋根部材の製品、半製品の輸送コストとコの字形状その他の曲げ部の変形防止のための例えば緩衝用治具、輸送専用のマテリアルハンドリング容器・治具の製作費用が大幅に低減できる。つまり、遠隔地でも、サプライチェーンを考慮して、輸送のためのコストを含むト―タルコストを抑えた組み立て、施工が出来る。
【0048】
本発明の実施形態では、内馳せ部Uのコの字状の曲げ部分において、直角立ち上がり部8から曲げ角11から、直角に曲げて、フラット部l5を形成する。フラット部l5の長さは、フラット部l1の長さより、かなり短く本発明の実施形態では、16mmに設定した。内馳せ部Uのコの字状の曲げ部分の先端曲げ部分12は、水がえし防水機能と強度強化の機能がある。内馳せ部Uのコの字状そのものや、直角立ち上がり部8等が、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだり、撓んだ履歴が残ることを強度的に防止し、撓んだり、撓んだ履歴が残ることによる防水機能の低下を防止できる。
図1において、本発明の実施形態では、山フラット部1のセンターと内馳せ部Uのコの字状の直角立ち上がり部8との距離長さ
W4を236mmに設定した。また、谷フラット部3のセンターと内馳せ部Uのコの字状の直角立ち上がり部8との距離長さ
W7を118mmに設定した。これによって、山フラット部1のセンターと谷フラット部3のセンター間スパンと谷フラット部3のセンターと内馳せ部Uのコの字状の直角立ち上がり部8との距離長さ
W7を、立ち上がり部4と立ち上がり部6を同じ加工機の設定にしておきながら、正確に一致させることができる。生産性と精密性を同時達成し、設計仕様に対して組み立て性、施工性ともに極めて良好に、美観良好に仕上げられる。
【0049】
すなわち、馳せ部が有る無しの如何にかかわらず、山谷間のスパンをより正確に一定ならしめることができる。防水機能を同時に発揮できる。また、薄板折板屋根部材の前記重ね合せ、馳係合の強度向上作用を有する。つまり、より少ない前記薄板折板屋根部材で、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだり、撓んだ履歴が残ることによる防水機能の低下を防止できる。ここに、前記先端曲げ返し部分や馳せ部の曲げ部分は、曲げ加工によって加工硬化を受けるので、前記撓み、撓んだ履歴や防水機能の低下作用効果をより薄く軽く少ない材料使用にて効果的に実現できる。
【0050】
次に、本発明の実施形態の外馳せ部Sとその周辺について
図1を参照して説明する。谷フラット部2から、立ち上がり部5を経て、立ち上がり曲げ部14にて、外馳せ部Sの直角立ち上がり部15を形成する。直角立ち上がり部15は、内馳せ部Uのコの字状の曲げ部分においての直角立ち上がり部8とともに、水がえし防水機能と強度強化の機能がある。施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだり、撓んだ履歴が残ることを強度的に防止し、撓んだり、撓んだ履歴が残ることによる防水機能の低下を防止できる。
m4は、直角立ち上がり部8の長さl4より少し長く設定する。本発明の実施形態では、23mmに設定した。
【0051】
図1において、外馳せ部Sのコの字状の直角立ち上がり部15に対して、角部19にて、直角に折り曲げ、水平部
m3を形成する。
m5の長さは、内馳せ部Uのコの字状のl5より少し長く設定する。本発明の実施形態では、21mmに設定した。外馳せ部Sのコの字状部分は、直角立ち上がり部15から直角に折り曲げた水平部
m3を角部17にて、直角に折り曲げ、水平部16を形成するとともに立ち下がり部19を形成する。立ち下がり部19の先端は、曲げ部18として、水切りと補強機能を持たせる。
m6の長さは、直角立ち上がり部8の長さl4より少し短く設定する。本発明の実施形態では、21mmに設定した。ここに、内馳せ部Uのコの字状のフラット部l1と同じく、外馳せ部Sのコの字状のフラット部13の長さm1は、谷フラット部2の長さd1の1/2より少し短い長さのフラット部となるように設定した。本発明の実施形態では、m1を、l1の長さと同様に、短く、26.5mmに設定した。
【0052】
また、谷フラット部2のセンターと外馳せ部Uのコの字状の直角立ち上がり部15との距離長さ
W6を118mmに設定した。これによって、山フラット部1のセンターと谷フラット部2のセンター間スパンと谷フラット部2のセンターと外馳せ部Sのコの字状の直角立ち上がり部15との距離長さ
W6を、立ち上がり部4と立ち上がり部5を同じ加工機の設定にしておきながら、正確に一致させることができる。これによって、山フラット部1のセンターと外馳せ部Uのコの字状の直角立ち上がり部15との距離、つまり、
W3と、内馳せ部Uのコの字状の方向の距離長さ
W4とを正確に一致させることができ、外観が美しくなる。本発明の実施形態では、
W3をを236mmに設定した。wの長さを定尺材料幅、谷フラット部2の長さd1、谷フラット部3の長さd2、フラット部l1の長さ、フラット部13の長さm1、立ち上がり部4、5、6の水平成分等から成ることを勘案してwの長さを472mmに設定した。この時、屋根としての働き幅w1は、475mmに機能する。つまり、屋根設計としては、働き幅を475mmとして、屋根を設計していけばよい。これによって、生産性と精密性、施工性を同時に良好に達成し、設計仕様に対して組み立て性、施工性ともに極めて良好に、美観良好に仕上げられる。そして、
図1にかかる本発明実施形態の薄板折板屋根部材では、重ね合せ、馳係合してなる薄板折板屋根部材の外馳せ部Sの先端折り曲げ部18と内馳せ部Uの先端折り曲げ部12によって、多重の防水機能を果たす作用効果がある。
【0053】
図2は、本発明の薄板折板屋根部材に断熱材を積層した実施形態の薄板折板屋根部材長さ方向に対する垂直断面模式図である。
図2において、使用した同一符号は、
図1と同じである。本発明の実施形態の薄板折板屋根部材には、断熱材Tを積層させた。
図2は、薄板折板屋根部材の重力下側に、断熱材Tを積層させた例で説明したが、断熱材Tは、断熱材Tは、
図2に示す断熱材T1部が薄板折板屋根部材の反対側にフラット部7にかかって積層され、立ち上がり角10部をオーバーラップして、立ち上がり部8まで一部到達していれば、本発明の薄板折板屋根部材実施形態の作用効果を奏する。
【0054】
本発明の薄板折板屋根部材に断熱材を積層した実施形態では、断熱材Tとして厚さ4mmのポリエチレンフォームを積層した。ポリエチレンフォームは、ポリエチレン樹脂(LDPE、EVA)を基材として、発砲架橋させた市販のフォームが、屋根の断熱材として積層するに好適である。元来、ブロック状で生産されるが、スライス・裁断・粘着・融着・打抜き・接着・熱圧成形等の加工を経て、金属薄板屋根のヒートサイクル下でも、結露を誘発しにくく、屋根として複合積層し、防水性良好な薄板折板屋根複合積層部材として機能する。
【0055】
断熱材Tに積層させるポリエチレンフォームには、水・空気を通さない独立気泡タイプと、水・空気を通す連続気泡タイプの2種類があるが、防水の観点では、水・空気を通さない独立気泡タイプが好適である。独立気泡ポリエチレンフォームを金属材料の薄板折板屋根部材に積層させるともともと気泡はきめ細かく、柔軟性、復元性、優れた緩衝性、断熱性、浮揚性、耐候性、耐薬品性があるので、断熱効果が高い他、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、重力その他によって 薄板折板屋根部材が、上下・左右の応力を受けた時、弾性的に抗する作用がある。結果、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだり、撓んだ履歴が残ることが低減される。また、撓んだり、撓んだ履歴が残ることによる防水効果の低下が抑止される効果を奏する。酸性雨が馳せ部等から万一回り込んだとしても、耐久性ある、ライフの長い薄板折板屋根複合積層部材として機能する。難燃性能を有した独立気泡ポリエチレンフォームを採用すると、万一の火災発生の時、有利である。
【0056】
ポリエチレン樹脂に、カーボンを練り込んだ導電性・帯電防止機能のあるポリエチレンフォームを積層させると作業環境の美化保持にも役立ち、運搬時の帯電防止の他、屋根としての組み立て性、施工性も良好になる。ポリエチレンフォームの生産・加工工程で発生する端材を再利用してフォームとして薄板折板屋根複合積層部材として機能させると、環境負荷が低減し、環境に好影響の薄板折板屋根になる。
【0057】
図3は本発明の薄板折板屋根部材実施形態の馳せ系合する状況を示す斜視図である。
図3において、本発明実施例にかかる薄板折板屋根部材YN1の外馳せ部Sと本発明実施例にかかる薄板折板屋根部材YN3の内馳せ部Uが重ね合わせ馳せ系合し、馳せ系合部H1を形成する。同様に、本発明実施例にかかる薄板折板屋根部材YN1の内馳せ部Uと本発明実施例にかかる薄板折板屋根部材YN2の外馳せ部Sが重ね合わせ馳せ系合し、馳せ系合部H2を形成する。
【0058】
本発明の実施形態では、段落0045〜段落0052に説明したように、内馳せ部Uの外接部分に対して、外馳せ部Sの内接部分が、内外接するか、少しの距離を置いて内外接するように設定してあるので、多重防水効果を維持しつつ、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際の補強効果が得られる。また、施工時作業員が上に乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際、撓んだり、撓んだ履歴が残ることを強度的に防止し、撓んだり、撓んだ履歴が残ることによる防水機能の低下を防止できる。
【0059】
このように、本発明の実施形態では、地震発生時や施工時に作業員が乗ったり、施工装置や、材料・工具等を仮置きした際に弾性的に作用し、接触や擦れ等により、薄板折板屋根部材の塗装が破壊開始したり、薄板折板屋根部材やそのクラッド材が破壊開始するのを抑止する。馳せ系合部やその近傍がが、重力によって、上下・左右の応力を受けた時に、重ね合せ馳係合してなる薄板屋根部材3に派生する歪、内部応力状態が安定する作用効果がある。
【0060】
また、本発明の実施形態では、馳系合部外馳せ部Sの断面を少し大きくしたら内馳せ部Uの断面を大きくし、外馳せ部Sの断面を少し小さくしたら内馳せ部Uの断面を少し小さく設計すればよい。
【0061】
また、本発明の実施形態では、薄板折板屋根部材の材料として、塗装ステンレス鋼板、クラッドメタル材、溶融アルミニウムめっき鋼板、ガルバリウム(Galvalume)鋼板(登録商標)、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、フッ素鋼板、ポリ塩化ビニール樹脂等の樹脂被覆鋼板、前塗装アルミニウム板、塗装アルミニウム板を関東地方で、対候試験をしたところ、8年経過サンプル、12年経過サンプル、24年経過サンプルのいずれも、雨水漏れ現象が発生しない状態を更新中である。
【0062】
そして、本発明の実施形態では、薄板折板屋根部材の材料として、熱延薄鋼板類、冷延薄鋼板類、表面処理薄鋼板[亜鉛をめっきした亜鉛めっき鋼板、スズをめっきした錫めっき鋼板(ブリキ)、クロム酸処理を施したティンフリースチール、塗装を施したカラー鋼板(塗装鋼板・プレコート鋼板)、銅版、亜鉛板]を関東地方で、対候試験をしたところ、比較例のスレート系屋根が、20年以下でクラック、ひび割れ等による雨水漏れ現象が複数検出されたのに対して、前記すべての薄鋼板類に関して、妥当性試験装置で30年経過した時点で、雨水漏れ現象は検出されていない。
【0063】
さらに、本発明の実施形態では、薄板折板屋根部材を相互に重ね合せ、馳係合させる組み立ての際、作業ばらつきによって内馳部と外馳部のいずれか部分が接触し、薄板折板屋根部材の内馳部と外馳部やその他の特定の部分に接触し、塗装膜やクラッド材、表面処理膜、あるいは、薄板折板屋根部材の本体材料表面に一部傷、擦り跡をつけてしまい、一部の傷、擦り跡がトリガーとなって、腐食や応力腐食が進展してしまうのを最小限に抑えられる作用効果を奏する。
【0064】
ここに、
図1、
図2における左右の内馳せ部Uと外馳せ部Sを上下方向、左右方向にトンボ(逆転)させても、本発明構成要件を満たす限り、前記作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
近年国内で発生した大きな地震では、重量の大きな和瓦が耐震構造の充分でない住宅、建て屋を倒壊、半倒壊させて被害を招いている。将来発生が予想される地震でもこのような被害が懸念される。スレート屋根等重量がある屋根は、大きな地震での住宅、建て屋に与える負担が大きい。ここに、これらを回避し、耐久性が高く、メンテナンススパンも長い、例えば金属薄板から成るとともに、軽量で強度があり、防水性の高い薄板折板屋根部材とその組み立て施工方法を提供するので、産業上の利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0066】
1 薄板折板屋根部材の山フラット部
2 薄板折板屋根部材の谷フラット部
3 薄板折板屋根部材の谷フラット部
8 直角立ち上がり部
10 立ち上がり角
12 先端曲げ部分
14 立ち上がり曲げ部
15 直角立ち上がり部
18 曲げ部
U 内馳せ部
S 外馳せ部
T 断熱材
H1 馳せ系合部
H2 馳せ系合部