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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-132013(P2018-132013A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】燃料遮断弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20180727BHJP
   B60K 15/03 20060101ALI20180727BHJP
【FI】
   F02M37/00 311A
   F02M37/00 301G
   F02M37/00 311K
   B60K15/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-27213(P2017-27213)
(22)【出願日】2017年2月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000161840
【氏名又は名称】京三電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲也
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA01
3D038CA23
3D038CB01
3D038CC04
3D038CC05
3D038CC06
3D038CC11
3D038CC20
(57)【要約】
【課題】望ましい特性をもつ燃料遮断弁を提供する。
【解決手段】燃料遮断弁は、制御弁3を提供する。制御弁3は、燃料タンクの内部と外部を連通する連通口8を備える。制御弁3は、連通口8を区画形成する固定の弁座7を備える。制御弁3は、燃料タンク内の燃料の液面に浮かんで移動するフロート51を備える。制御弁3は、フロート51と弁座7との間に設けられ、弁座7と密着して連通口8を閉塞する密着部材61を備える。制御弁3は、密着部材61とフロート51との間に設けられ、弁座7と密着部材61との衝突に起因する音を抑制する音抑制部91を備える。制御弁3が閉状態に移行する際に弁座7と密着部材61とが衝突する衝撃を音抑制部91が分散、吸収する。これにより大きな音が発生して燃料タンクの外部に伝わることを効果的に抑制する。このため、燃料遮断弁としての望ましい特性を得ることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(2)の内部と外部を連通する連通口(8)と、
前記連通口を区画形成する固定の弁座(7)と、
前記燃料タンク内の燃料の液面に浮かんで移動するフロート(51)と、
前記フロートと前記弁座との間に設けられ、前記弁座と密着して前記連通口を閉塞する密着部材(61)と、
前記密着部材と前記フロートとの間に設けられ、前記弁座と前記密着部材との衝突に起因する音を抑制する音抑制部(91)と、を備えた燃料遮断弁。
【請求項2】
前記音抑制部は、前記弁座と対向する位置に設けられている請求項1に記載の燃料遮断弁。
【請求項3】
前記音抑制部は、前記フロートに対向する前記密着部材の面に設けられている凹凸部(63、263、363、463、563、863、963、1063)である請求項1または請求項2に記載の燃料遮断弁。
【請求項4】
前記凹凸部は、前記密着部材が前記フロートに装着された状態を保持する装着保持凸部(63c)と、
前記密着部材の外周に設けられた外周凸部(63d)と、を備え、
前記装着保持凸部は、前記外周凸部よりも幅が大きく形成されている請求項3に記載の燃料遮断弁。
【請求項5】
前記密着部材の厚みは、外周部に近づくほど薄くなっている請求項3または請求項4に記載の燃料遮断弁。
【請求項6】
前記フロートと接触する前記凹凸部の接触面は、曲面形状である請求項3から請求項5のいずれかに記載の燃料遮断弁。
【請求項7】
前記音抑制部は、前記フロートの上面であって、前記密着部材と対向する面に設けられている溝部(55)である請求項1または請求項2に記載の燃料遮断弁。
【請求項8】
前記音抑制部は、前記密着部材と前記フロートとの間に設けられている吸音材(81)である請求項1または請求項2に記載の燃料遮断弁。
【請求項9】
前記密着部材は、前記弁座との接触面に平坦部(62)が設けられている請求項1から請求項8のいずれかに記載の燃料遮断弁。
【請求項10】
さらに、樹脂製のハウジング(21)と、
前記ハウジング内に延び出して前記ハウジングの内部を上下に仕切っている仕切板(25)と、を備え、
前記弁座は前記仕切板に設けられており、
前記仕切板よりも下方に仕切られる空間は前記燃料タンクの内部に連通され、前記仕切板よりも上方に仕切られる空間は燃料蒸気処理装置(4)に連通されている請求項1から請求項9のいずれかに記載の燃料遮断弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、燃料タンクの通気通路に設けられる燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃料タンクの通気通路に設けられる燃料遮断弁を開示する。燃料遮断弁は、燃料タンクの通気通路を開閉する。燃料遮断弁は、液体燃料が通気通路に漏れ出すことを防ぐことが求められる。燃料遮断弁は、燃料タンク内の液面上昇にともない、通気通路を閉じる液面感知弁の機能を有する。燃料遮断弁は、燃料タンクが所定角度以上に傾斜すると、通気通路を閉じる傾斜感知弁の機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−180264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の構成では、フロートが上昇して通気通路を閉じる際に、通気通路側の開口である弁座とフロート側の弁体とが接触することで音が発生する場合がある。特に運転音が静かなタイプの車両ではその音が運転手や同乗者に聞こえてしまい走行時の快適さを損なうことがある。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、燃料遮断弁にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、燃料遮断弁における閉時の接触音の発生を抑制あるいは発生した音を小さくする特性をもつ燃料遮断弁を提供することである。
【0006】
開示される他のひとつの目的は、弁の静音性と弁の耐久性を両立した燃料遮断弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された燃料遮断弁は、燃料タンクの内部と外部を連通する連通口(8)と、連通口を区画形成する固定の弁座(7)と、燃料タンク内の燃料の液面に浮かんで移動するフロート(51)と、フロートと弁座との間に設けられ、弁座と密着して連通口を閉塞する密着部材(61)と、密着部材とフロートとの間に設けられ、弁座と密着部材との衝突に起因する音を抑制する音抑制部(91)とを備える。
【0008】
開示される燃料遮断弁によると、密着部材とフロートとの間に音抑制部を備えることで、制御弁が閉状態に移行する際に弁座と密着部材とが衝突する衝撃により大きな音が発生して燃料タンクの外部に伝わることを効果的に抑制することができる。
【0009】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】燃料貯蔵装置のブロック図である。
図2】燃料遮断弁の開状態を示す断面図である。
図3】燃料遮断弁の閉状態を示す断面図である。
図4】第1実施形態の密着部材の底面図である。
図5図4のV−V線における断面を示す断面図である。
図6】第2実施形態の密着部材の断面図である。
図7】第3実施形態の密着部材の断面図である。
図8】第4実施形態の密着部材の断面図である。
図9】第5実施形態の密着部材の断面図である。
図10】第6実施形態の燃料遮断弁の閉状態を示す断面図である。
図11】第7実施形態の燃料遮断弁の閉状態を示す断面図である。
図12】第8実施形態の密着部材の底面図である。
図13】第9実施形態の密着部材の底面図である。
図14】第10実施形態の密着部材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0012】
(第1実施形態)
図1において、燃料貯蔵装置1は、燃料タンク2、制御弁3、および燃料蒸気処理装置(EV)4を備える。燃料貯蔵装置1は、乗り物に搭載されている。乗り物は、走行車両または船舶などである。燃料貯蔵装置1は、乗り物に搭載された内燃機関に燃料を供給する。内燃機関は、移動用の動力を供給する。燃料貯蔵装置1は、燃料ポンプ、燃料フィルタ、燃料噴射装置などの燃料供給装置を含むことができる。
【0013】
制御弁3は、燃料タンク2に設けられている。制御弁3は、燃料タンク2の上部の壁面に設けられている。制御弁3は、燃料タンク2に設けられた燃料供給装置、例えばポンプモジュールに設けられてもよい。制御弁3は燃料タンク2に対して複数設けられてもよい。
【0014】
制御弁3は、燃料遮断弁である。燃料タンク2と燃料蒸気処理装置4との間には通気のための通気通路6が設けられている。制御弁3は、通気通路6の燃料タンク2側の端部に設けられている。通気通路6は、燃料タンク2から燃料蒸気処理装置4への気体の排出に利用される。通気通路6は、換気通路、または呼吸通路とも呼ばれる。制御弁3は、燃料タンク2内部と外部との通気を制御する。制御弁3は、燃料タンク用通気制御弁とも呼ばれる。制御弁3は、通気通路6を開閉する。制御弁3は、燃料タンク2内に空気室を形成する。制御弁3は、燃料タンク用の液面感知弁および傾斜感知弁の両方を提供する。
【0015】
制御弁3は、燃料タンク2と燃料蒸気処理装置4との間の通気を許容することによって給油口を経由して給油装置5からの給油を許容する。制御弁3は、燃料タンク2の中に空気室を残すための筒状のケースでもある。別の見方では、制御弁3は、空気室を形成するために、燃料タンク2の所定の位置から垂下されている。
【0016】
燃料蒸気処理装置4は、燃料タンク2から排出される気体に含まれる燃料蒸気(ベーパ)を捕捉するキャニスタを備える。燃料蒸気処理装置4は、パージ機構を含む。パージ機構は、所定の条件が成立するとキャニスタに捕捉された燃料蒸気を内燃機関に供給し燃焼させることによって、燃料蒸気を処理する。
【0017】
図2において、制御弁3は、ハウジング21を備えている。ハウジング21は、フロート51を軸方向(図の上下方向)に移動可能に案内する案内部材である。ハウジング21は、中空円筒状である。ハウジング21の内壁には複数のガイドリブ22が設けられている。ガイドリブ22は、フロート51の軸方向に沿って直線状に設けられている。フロート51とハウジング21の内壁との間には、ガイドリブ22により隙間が設けられている。
【0018】
ハウジング21の下方には、制御弁3の底面を構成する円盤状の底板23が装着されている。底板23には、燃料タンク2内部と制御弁3の内部とを通気する通気口24が形成されている。通気口24は、ガイドリブ22の直下に位置して設けられている。底板23は、ハウジング21に対して固定されている。
【0019】
ハウジング21の内壁には、ハウジング21内部に向かって延び出している仕切板25が設けられている。仕切板25は、制御弁3内を上下に仕切って区画している。ハウジング21内部において、仕切板25で仕切られた下方空間にはフロート51が収容されている。ハウジング21の外壁には、接続フランジ26を備えている。接続フランジ26は、燃料タンク2の壁面と溶接されて接着固定されている。仕切板25は燃料タンク2内部から上方に突出した位置に配置されている。
【0020】
制御弁3は、弁座7によって区画形成されている連通口8を備えている。連通口8は燃料タンク2の内部と外部とを連通している。弁座7は、仕切板25に形成されている。制御弁3の仕切板25で区切られた上方空間は、通気通路6につながる接続管9を備えている。弁座7は、燃料タンク2が配される側である下方に向かって突出している。すなわち、弁座7の下端部は、仕切板25の内周端から下方に突出している。弁座7は、円環状である。弁座7の下端部は、断面が半円形の曲面形状をなしている。連通口8の開口面積は、通気通路6の開口面積と同程度である。
【0021】
フロート51は、上面が閉じた筒状かつキャップ状の樹脂(例えばポリアセタール)製の容器である。フロート51は、制御弁3が正規の姿勢、すなわち図示される上下の状態において、開口側が下に位置している。フロート51は、ガイドリブ22によって移動可能に接触して支持されている。フロート51は、制御弁3が正規の姿勢において、その内部に取り込んだ空気などの気体による浮力の作用で燃料の液面に浮くことができる容器体である。フロート51は、制御弁3が正規の姿勢から第1の所定角度を越えて傾くと液面に浮くことができない。例えば車体が上下方向に180度回転した反転姿勢では、フロート51は、内部に燃料を取り入れやすい錘である。フロート51は、反転姿勢などのフロート51内部に浮力を発生させる気体を取り込んでいない状態においては、フロート51の自重により液体燃料中で重力方向に沈む部材である。フロート51の上面の中央部には、円柱状の上面突部52が延び出している。上面突部52の上端には、フロート51の上面と平行にフランジ53が形成されている。フランジ53は、上面突部52の外径よりも外径が大きい。フランジ53の外径は、連通口8の内径よりも小さい。フランジ53は、円盤状である。フロート51は、容器の中心部から下方に伸びる円柱状の柱54を備えている。
【0022】
スプリング71は、フロート51を閉弁方向である上方向へ付勢する付勢部材である。スプリング71は、柱54に装着されている。スプリング71は、正規の姿勢において制御弁3を液面感知弁として機能させる。スプリング71は、正規の姿勢から第1の所定角度を越えて傾くと制御弁3を傾斜感知弁として機能させる。スプリング71は、制御弁3が横倒しになっている横姿勢においても、制御弁3に傾斜感知弁としての機能を発揮させる。スプリング71は、フロート51の内部であって底板23上に圧縮状態で配置されている。よって、スプリング71は、フロート51を下から上へ付勢している。
【0023】
制御弁3は密着部材61を備えている。密着部材61は、フロート51の上面とフランジ53の間である上面突部52に装着されている。密着部材61の上面は、凹凸のない平坦部62を備えている。平坦部62は、密着部材61の上面に環状に広がっている。密着部材61は、凹凸部63を備えている。凹凸部63はフロート51上面と接触する側である密着部材61の下面に設けられている。凹凸部63は、後に詳述する音抑制部91としての機能を有する。音抑制部91である凹凸部63は、少なくとも弁座7と対向する位置を含むように密着部材61の下面全体に形成されている。密着部材61としては、弾性や可撓性を有する材料が使用可能である。使用可能な材料の例としては、ゴム、エラストマーなどがあげられる。密着部材61は、上面突部52に対して隙間なく装着されている。
【0024】
フロート51が燃料からの浮力を受けておらず底板23に載置された状態では、密着部材61と弁座7との間に気体が自由に流通可能な空間が生じた状態である。フロート51が底板23に載置されている状態では、制御弁3が開放された開状態が維持される。燃料タンク2内の燃料蒸気などの気体は、底板23の通気口24を通過し、隣接するガイドリブ22の間の隙間を通って制御弁3内部の上方に向かう。その後、密着部材61と弁座7との間の空間を通って通気通路6へと流れ出る。燃料タンク2内部の燃料が消費されるなどした場合には、空気などの気体が通気通路6から密着部材61と弁座7との間の空間を通って制御弁3内部に流入する。その後、流入した空気は、隣接するガイドリブ22の間の隙間を通り、底板23の通気口24を通過して燃料タンク2内部へと流れ込む。このようにして制御弁3を介して燃料タンク2内部の圧力が調整される。
【0025】
制御弁3内部に液体燃料が侵入した場合も、気体と同様に、通気口24を通過して燃料タンク2内部に戻される。この時、通気口24をガイドリブ22の直下に配置したため、ガイドリブ22やハウジング21の内壁を伝って下方に落ちてくる液体燃料をスムーズに燃料タンク2内部に戻すことができる。
【0026】
図3において、密着部材61と弁座7とは密着した閉状態である。制御弁3の閉状態において、弁座7の下端部は密着部材61上面であるシール面の平坦部62と当接して密着する。密着部材61は弁座7の下端部に沿って沈み込んで変形することで、弁座7の下端部をなす曲面形状に沿って密着する。
【0027】
燃料の液面が通気口24に到達すると、燃料はハウジング21内を上昇する。燃料がフロート51に浮力を生じさせると、フロート51は燃料から受けた浮力により持ち上げられる。フロート51は、浮力を受けながらガイドリブ22にガイドされて制御弁3内部を上に移動する。この時、ガイドリブ22は、フロート51が連通口8の開口からずれた位置で移動することを防止する。液面の上昇が続くとフロート51も上昇を続け、やがて密着部材61と弁座7が隙間なく接触した状態すなわち弁が閉塞された閉状態となる。閉状態では通気通路6と制御弁3との間での気体や液体のやり取りが不可能となる。密着部材61が沈み込んで密着することにより、高い密閉性を維持して制御弁3および燃料タンク2の内部を密閉状態とする。このように密着部材61は弁座7に対する弁体として機能する。
【0028】
走行時には、車全体の振動などの影響により燃料の液面が上下動する場合がある。この場合、フロート51も燃料液面に追従して上下動を起こすことがある。このため、制御弁3が開状態と閉状態とを繰り返すことがある。開状態から閉状態に移行する際には、弁座7と密着部材61とが衝突する。この衝突による衝撃で音が発生する。特に燃料の液面が高い状態では、車の走行時の振動や、傾斜面の走行時の影響によるフロート51の上下動を引き起こしやすい。すなわち、弁座7と密着部材61の衝突音が繰り返し発生しやすい。この衝突の衝撃を密着部材61のシール面の裏側に形成した音抑制部91である凹凸部63において分散、吸収する。これにより、衝撃音の発生を抑制あるいは発生した衝撃音を小さくする。
【0029】
図4において、密着部材61は、円盤状である。密着部材61は、ゴム製である。密着部材61は、シート状である。密着部材61は、中心部に装着用開口部64が形成されている。密着部材61は、装着用開口部64をフロート51のフランジ53側から上面突部52に通してフロート51に装着されている。密着部材61の円形の装着用開口部64を囲むように同心円状に複数の凹面63aと凸部63bが交互に設けられている。この凹面63aと凸部63bは、音抑制部91としての凹凸部63である。凹凸部63のパターンは、上面突部52を軸として回転した場合であっても、同一の形状が保たれるように形成している。装着用開口部64の周囲には、凸部63bよりも幅広な凸形状である装着保持凸部63cが円環状に形成されている。すなわち、装着保持凸部63cの幅Lcは、凸部63bの幅Lrよりも幅が大きい。密着部材61の外周部に位置して外周凸部63dが形成されている。凸部63bの幅Lrと外周凸部63dの幅Leとは同じ大きさである。
【0030】
図5において、密着部材61には、弁座7と接触して密閉するシール面である上面に凹凸のない平坦部62が形成されている。密着部材61には、シール面とは逆側の下面に装着保持凸部63cと外周凸部63dが形成されている。密着部材61の下面はフロート51に対向する面である。装着保持凸部63cは、密着部材61の最も内周側に位置している。装着保持凸部63cは、上面突部52に隙間なく装着された状態を保持する。外周凸部63dは、密着部材61の最も外周側に位置している。装着保持凸部63cと外周凸部63dとの間には複数の凹面63a、凸部63bが交互に形成されている。凹面63aを基準面とした凸部63bの下端面までの高さH1は、密着部材61の厚さTのおよそ半分の高さである。凹面63aを基準面とした装着保持凸部63cの下端面までの高さは、凸部63bの下端面までの高さH1と同じ高さである。凹面63aを基準面とした外周凸部63dの下端面までの高さは、凸部63bの下端面までの高さH1と同じ高さである。凸部63bと装着保持凸部63cと外周凸部63dのそれぞれの下端面がフロート51の上面と接触する。なお、凸部63bの高さH1は均一でなくともよい。すなわち、凸部63bとして高さの高いものと低いものとが交互に並んでもよい。あるいは、凸部63bとして高さの高いものと低いものとがランダムに並んでもよい。
【0031】
複数の凹面63aの幅Wは内周側であっても外周側であっても同じ大きさである。なお、凹面63aの幅Wは場所によらず同じ大きさでなくともよい。例えば、弁座7に対向する位置の凹面63aほどその幅Wが小さくなるように形成するなどしてもよい。この場合、弁座7に対向する位置の凸部63bの密度を高めることができるため、密着部材61の耐久性を高めることができる。
【0032】
密着部材61の平坦部62と弁座7との接触による衝撃は、密着部材61自身の弾性による衝撃の吸収に加えて、複数の凸部63bに衝撃が分散して効果的に吸収される。また、凹面63aが形成されているため、密着部材61が上下方向の応力に対して柔軟に撓むことが可能である。
【0033】
凹凸部63のパターンは、上面突部52を軸として回転した場合であっても、同一の形状が保たれるため、装着時に向きを気にする必要がないため容易に製造可能である。
【0034】
装着保持凸部63cが凸部63bよりも幅広に形成されているため、装着時の破れなどの損傷を防止することができる。さらに、装着後の経年劣化などによって密着部材61と上面突部52との間に隙間ができることを防止することができる。外周凸部63dが形成されているため、外周部に対して応力が加わった場合の衝撃を吸収して、密着部材61の外周部の損傷を防止することができる。装着保持凸部63cおよび外周凸部63dも凹凸部63を構成し、音抑制部91としての吸音作用を発揮する。
【0035】
上述した実施形態によると、弁座7と密着部材61との接触により発生した衝撃は、密着部材61を振動させるが、外周凸部63d、凸部63b、装着保持凸部63cのそれぞれの凸形状に分散して伝わる。そして、それぞれの凸形状が振動して衝撃が吸収され、燃料タンク2の外部へ大きな音が伝達されることを防止する。
【0036】
凹凸部63がない場合の密着部材61に比べて、密着部材61が大きく撓むことが可能である。このため、密着部材61が衝撃を受けた際にその衝撃を密着部材自身が撓むことで吸収することが可能となり、音の発生を効果的に防止することができる。
【0037】
衝撃が最初に加わる弁座7と対向する位置に音抑制部91である凹凸部63を設けるため、衝撃が他の部品や燃料タンク2内に伝播する前の段階で効果的に吸音作用を発揮することができる。
【0038】
衝撃が最も大きく加わる弁座7と対向する位置の裏側に音抑制部91である凹凸部63を設けるため、衝撃が他の部品や燃料タンク2内に伝播する前の段階で効果的に吸音作用を発揮することができる。
【0039】
音抑制部91である凹凸部63を密着部材61と一体に形成したため、複数の部材をフロート51に対して装着する必要がなく、大量生産が可能である。
【0040】
(第2実施形態)
本実施形態において、先行する実施形態とは密着部材61の厚みが外周部に近づくほど薄くなっている点が異なる。
【0041】
図6において、凹面263aを基準面とした凸部263bの下端面までの高さHr2は外周部の近くに位置する凸部263bほど低くなっている。凹面263aを基準面とした外周凸部263dの下端面までの高さHe2は凸部263bの高さHr2よりも低くなっている。外周凸部263dが最も高さの低い凸形状である。装着保持凸部263cの凹面263aを基準面とした高さHc2は凸部263bの高さHr2よりも高い。装着保持凸部263cが最も高さの高い凸形状である。密着部材61全体としては外周部に近づくにつれて厚みが薄くなる円錐状に近い形状である。少なくとも装着保持凸部263cの下端面がフロート51の上面と接触する。
【0042】
上述した実施形態によると、密着部材61が弁座7と接触した状態であっても、外周凸部263dがフロート51上面と接触せずに自由に撓むことができる。このため、音抑制部91である凹凸部263が衝撃を吸収しやすい。
【0043】
車が180度回転した反転姿勢において、密着部材61の凹凸部263とフロート51の間の空間内には燃料が流れ込む。このため、空気などの気体が凹凸部263にたまりにくい。したがって、密着部材61がフロート51に対して作用させる浮力を小さくできるので、燃料を遮断する機能を迅速かつ確実に発揮することができる。
【0044】
なお、外周凸部263dの一部に切欠きを設けるなどして、凹面263aと外部空間とを連通させるようにしてもよい。これにより、反転姿勢において凹面263aとフロート51との間に空気がたまることをより確実に防止することができる。
【0045】
なお、外周部に外周凸部263dを形成せず、凹面263aと同じ高さとしてもよい。あるいは、外周部の厚みを凹面263aにおける厚さよりも薄くするなどして、密着部材61の中で外周部を最も薄くしてもよい。これにより、外周部に近いほど大きく撓むことができるため、柔軟性が高く衝撃を吸収しやすい。
【0046】
(第3実施形態)
本実施形態において、先行する実施形態とは密着部材61の弁座7とのシール面である上面と下面の両面に凹凸形状を備えている点が異なる。
【0047】
図7において、密着部材61の上面に上面凹面363eと上面凸部363fが設けられている。上面凹面363eと上面凸部363fは弁座7と対向する位置を避けた外周側に設けられている。なお、上面凹面363eと上面凸部363fは弁座7と対向する位置を避けた位置であればどこに設けてもよい。例えば、弁座7とは接触しない内周側に凹凸形状を設けるようにしてもよい。
【0048】
凹面363aを基準面とした凸部363bの下端面までの高さH3は密着部材61の厚さTの半分よりも低い。凹面363aを基準面とした外周凸部363dの下端面までの高さは凸部363bの高さH3と同じ高さである。凹面363aを基準面とした装着保持凸部363cの下端面までの高さは凸部363bの高さH3と同じ高さである。外周凸部363dと凸部363bと装着保持凸部363cのそれぞれの下端面がフロート51の上面と接触する。上面凹面363eを基準面とした上面凸部363fの上端面までの高さHu3は凸部363bの高さH3と同じ高さである。
【0049】
上述した実施形態によると、弁座7と密着部材61との衝突に伴う衝撃を密着部材61の上面に形成した上面凹面363eと上面凸部363fでも吸収する。このため、より多くの箇所で効果的に吸音可能である。
【0050】
燃料蒸気や液体燃料にさらされる密着部材61が膨潤による変形を起こす場合がある。このような場合であっても、密着部材61の両面に設けた凹凸形状で変形量を吸収できる。このため、シール性能に寄与する平坦部62が膨潤による変形の影響を大きく受けてシール性能が悪化することを防止できる。
【0051】
(第4実施形態)
本実施形態において、先行する実施形態とは密着部材61のフロート51との接触面が曲面形状である点が異なる。
【0052】
図8において、密着部材61の凸部463bの下端面であるフロート51との接触面は半円形状である。
【0053】
凹面463aを基準面とした凸部463bの下端面までの高さH4は密着部材61の厚さTの半分よりも大きい。凹面463aを基準面とした外周凸部463dの下端面までの高さは凸部463bの高さH4と同じ高さである。凹面463aを基準面とした装着保持凸部463cの下端面までの高さは凸部463bの高さH4と同じ高さである。外周凸部463dと凸部463bと装着保持凸部463cのそれぞれの下端面がフロート51の上面と接触する。
【0054】
上述した実施形態によると、フロート51と密着部材61とが曲面で接触するため、フロート51に対して垂直な上下方向だけでなく水平方向にも衝撃力を分散させやすい。すなわち、弁座7からの応力が増大した場合に、凸部463bが上下方向だけでなく水平方向にも変形する。水平方向にも衝撃力を分散することで、凸部463bがフロート51上面に接触した状態を保ちながら、弁座7が密着部材61に対してより大きく撓んで沈み込むことが可能である。したがって、密着部材61が応力に耐え切れずに破損しにくい。このため、密着部材61の耐久性を高めることが可能である。
【0055】
(第5実施形態)
本実施形態において、先行する実施形態とは密着部材61の凹凸部563の断面形状が波型である点が異なる。
【0056】
図9において、凹凸部563はその断面が角のない滑らかな正弦波形状で形成されている。凹面563aと凸部563bの形状はどちらも連続した滑らかな曲面形状である。
【0057】
凹面563aを基準面とした凸部563bの下端面までの高さH5は密着部材61の厚さTの半分よりも小さい。複数の凸部563bの下端面がフロート51の上面と接触する。
【0058】
上述した実施形態によると、凹凸部563の形状として凹面563aにも凸部563bにも角になる部分が存在しない。このため、角となる部分に水平方向にずれようとする衝撃力が集中することがない。特に、上下方向の衝撃力に加えて、前後左右の方向すなわち水平方向にずらそうとする力が大きく加わる場合であっても、凹凸部563が衝撃による割れや損傷を起こしにくい。このため、長期的に安定してシール性能と吸音性能を発揮できる。
【0059】
なお、凹凸部563の波型としては滑らかな正弦波形状に限られない。例えば三角波やのこぎり波のような形状であってもよい。
【0060】
(第6実施形態)
本実施形態において、先行する実施形態とはフロート51の上面に音抑制部91を設けている点が異なる。
【0061】
図10において、フロート51の上面であって、少なくとも弁座7と対向する位置を含む領域に音抑制部91としての溝部55を備えている。この溝部55はフロート51の上部においてフロート51の中心軸から同心円状に複数設けられた円環状の溝である。
【0062】
上述した実施形態によると、衝突時の空気流は複数の溝部55に分散されて流れる。細長い溝部55を通る過程で空気流のエネルギーは減衰する。このように弁座7と密着部材61との衝突による衝撃を溝部55で形成した空間に逃がすことで音の発生と伝播を抑制する。ゴム製の密着部材61に比べて強度が高い樹脂材料に溝部55を形成している。このため、密着部材61に凹凸部63を形成する場合に比べてより長期的に安定して吸音効果を得ることができる。
【0063】
なお、溝部55が円環状の溝である場合を例に説明したが、溝部55の形状としては衝撃を吸収できる空間が形成されればよい。したがって、円環状以外にも直線状や格子状など様々な形状で溝を形成してもよい。
【0064】
密着部材61に音抑制部91としての凹凸部63が存在するものを使用して、密着部材61とフロート51の両方で吸音するようにしてもよい。その場合、凹凸部63と溝部55とで別々のパターンを採用することが好ましい。例えば、密着部材61側の凹凸部63のパターンとして円環状を採用し、フロート51の溝部55のパターンとして格子状を採用するなどが可能である。別々のパターンとすることで、密着部材61側の凸部63bが溝部55にはまり込むことを防止できる。これにより、溝部55にはまり込んだ密着部材61が弁座7に対して傾斜して接触するなどして、シール性能が悪化してしまうことを防止できる。
【0065】
(第7実施形態)
本実施形態において、先行する実施形態とは音抑制部91としての吸音材81を密着部材61と別に設けている点が異なる。
【0066】
図11において、密着部材61とフロート51の間に位置して密着部材61よりも一回りサイズの大きな吸音材81を備えている。吸音材81は円盤状である。吸音材81は密着部材61よりも柔らかいゴム製である。密着部材61は吸音材81に対してわずかに沈み込んだ状態となる。なお、吸音材81の形状は円盤状に限られない。例えば、矩形のシートや、多角形のシートを用いてもよい。吸音材81は1枚の円盤状のシートに限られない。例えば、上面突部52を挟んで対向する位置に複数枚のシートを貼り付けるなどして装着してもよい。
【0067】
上述した実施形態によると、弁座7と密着部材61の接触に伴い発生する衝撃を吸音材81が吸収して減衰させる。このため、大きな衝突音の発生を効果的に抑制することができる。
【0068】
弁座7と対向する位置を含む密着部材61の下面全体を覆うように吸音材81を配している。このため、広い面積で衝撃を吸収し大きな衝突音の発生を効果的に抑制できる。
【0069】
(第8実施形態)
本実施形態において、先行する実施形態とは密着部材61の凹凸部を放射状に設けている点が異なる。
【0070】
図12において、密着部材61の外周部をなす外周凸部863dが設けられている。装着保持凸部863cから外周凸部863dに向かって放射状に凸部863bが設けられている。凸部863bと外周凸部63dの間には略三角形状の凹面863aが設けられている。外周部に近づくほど、凹面863aの占める割合が多くなる。このため、外周部に近づくほど柔軟に撓むことができる。これにより、衝撃を効果的に吸収して、音の発生および伝播を抑制できる。
【0071】
(第9実施形態)
本実施形態において、先行する実施形態とは密着部材61の凹凸部を半球状に設けている点が異なる。
【0072】
図13において、半球状の凸部963bが装着保持凸部963cから外周凸部963dに向かって放射状に複数並んでおり、凸部963bと装着保持凸部63cと外周凸部963dを除く部分が一体の凹面963aとして形成されている。
【0073】
(第10実施形態)
本実施形態において、先行する実施形態とは密着部材61の凹凸部を格子状に設けている点が異なる。
【0074】
図14において、装着保持凸部1063cと外周凸部1063dとの間の領域において、凸部1063bが直線状であって縦横が直交するように格子状に並んでいる。直交する凸部1063bで囲まれる領域に小さな面積を有する矩形状の凹面1063aが形成される。
【0075】
以上に述べた実施形態によると、制御弁3が閉状態に移行する際に弁座7と密着部材61とが衝突する際の衝撃により大きな音が発生して燃料タンク2の外部に伝わることを効果的に抑制することができる。
【0076】
(他の実施形態)
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【符号の説明】
【0077】
1 燃料貯蔵装置、 2 燃料タンク、 3 制御弁、 4 燃料蒸気処理装置、 5 給油装置、 6 通気通路、 7 弁座、 8 連通口、 9 接続管、 21 ハウジング、 22 ガイドリブ、 23 底板、 24 通気口、 25 仕切板、 26 接続フランジ、 51 フロート、 52 上面突部、 53 フランジ、 54 柱、 55 溝部、 61 密着部材、 62 平坦部、 63 凹凸部、 63a 凹面、 63b 凸部、 63c 装着保持凸部、 63d 外周凸部、 64 装着用開口部、 71 スプリング、 81 吸音材、 91 音抑制部、 263 凹凸部、 363 凹凸部、 363e 上面凹面 363f 上面凸部、 463 凹凸部、 563 凹凸部、 863 凹凸部、 963 凹凸部、 1063 凹凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14