【課題】吸着剤を備える形態で吸引式ガス検知器を使用する場合と吸着剤を備えない形態で吸引式ガス検知器を使用する場合とで、部材点数の増加や構成の複雑化を招くことなく、切り替え作業の簡素化を図ることができる。
【解決手段】フィルター部3には、吸引部により吸引されるガスを流通させて検知器本体に導くガス流通路31が備えられ、ガス流通路31には、ガスの流通方向の上流側から順に、流通するガスに対して作用するフィルター32、流通するガスに対して吸着作用する吸着剤33を収容可能な吸着剤収容空間34が配置され、吸着剤収容空間34に吸着剤33を収容させる吸着剤収容形態と、吸着剤収容空間34に吸着剤33を収容させずに使用する吸着剤非収容形態とに切り替えてフィルター部3を使用可能に構成されている。
前記フィルター部は、前記ガス流通路における前記フィルターよりもガスの流通方向の上流側部位を構成するための上流側流通部と、前記ガス流通路における前記フィルターよりもガスの流通方向の下流側部位を構成するための下流側流通部とに分離自在に構成され、
前記下流側流通部は、前記吸着剤収容空間が形成された分離不能な筒状体にて構成されている請求項1に記載の吸引式ガス検知器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸引式ガス検知器では、吸引するガスに妨害ガス等が含まれていると、検知対象ガスの検知に悪影響を与える可能性がある。そこで、吸引するガスに妨害ガス等が含まれている可能性がある場合には、妨害ガス等を吸着する吸着剤を備える形態で吸引式ガス検知器を使用するのが好ましい。このように、吸引式ガス検知器を使用するときには、ひとつの形態に固定して使用するのではなく、吸引するガス等の各種の状況に応じて、吸着剤を備える形態と吸着剤を備えない形態とに切り替えて吸引式ガス検知器を使用している。
【0006】
上記特許文献1に記載の検知器は、フィルター部にフィルターが備えられているだけであるので、吸着剤を備える場合には、フィルター部とは別に、吸着剤を収容した吸着剤収容部材を設けることが必要となる。そこで、吸着剤を備える形態で吸引式ガス検知器を使用する場合には、例えば、検知器本体に吸着剤収容部材を装着し、更に、吸着剤収容部材にフィルター部を装着することで、フィルター部とは別に吸着剤収容部材を設けている。一方、吸着剤を備えない形態で吸引式ガス検知器を使用する場合には、上記特許文献1に記載の検知器の如く、検知器本体にフィルター部を装着することで、フィルター部のみを設けている。
【0007】
しかしながら、上述のような吸引式ガス検知器では、吸着剤を備えない形態から吸着剤を備える形態に切り替える場合に、吸着剤を収容する作業に加えて、吸着剤を収容した吸着剤収容部材を装着する等の作業が必要となり、切り替え作業の複雑化を招くことになる。また、吸着剤を備える形態にて吸引式ガス検知器を使用する場合には、フィルター部とは別に、吸着剤収容部材を設けなければならず、部材点数の増加や構成の複雑化を招くことになる。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、吸着剤を備える形態で吸引式ガス検知器を使用する場合と吸着剤を備えない形態で吸引式ガス検知器を使用する場合とで、部材点数の増加や構成の複雑化を招くことなく、切り替え作業の簡素化を図ることができる吸引式ガス検知器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、検知器本体と、その検知器本体に対して着脱自在なフィルター部とが備えられ、
前記検知器本体には、装着された前記フィルター部を通してガスを吸引する吸引部と、その吸引部により吸引されるガスから検知対象ガスを検知する検知部とが備えられた吸引式ガス検知器において、
前記フィルター部には、前記吸引部により吸引されるガスを流通させて前記検知器本体に導くガス流通路が備えられ、
前記ガス流通路には、ガスの流通方向の上流側から順に、流通するガスに対して作用するフィルター、流通するガスに対して吸着作用する吸着剤を収容可能な吸着剤収容空間が配置され、
前記吸着剤収容空間に吸着剤を収容させる吸着剤収容形態と、前記吸着剤収容空間に吸着剤を収容させずに使用する吸着剤非収容形態とに切り替えて前記フィルター部を使用可能に構成されている点にある。
【0010】
本構成によれば、フィルター部のガス流通路に吸着剤収容空間が配置されているので、その吸着剤収容空間に対して吸着剤を収容させるか否かを切り替えるという簡易な構成で、吸着剤収容形態と吸着剤非収容形態とに切り替えてフィルター部を使用することができる。吸着剤収容形態にてフィルター部を使用する場合には、例えば、吸着剤を収容した部材等を追加することなく、吸着剤収容空間に吸着剤を収容するだけでよく、部材点数の像や構成の複雑化を招くのを防止することができる。しかも、吸着剤非収容形態にてフィルター部を使用する場合には、吸着剤収容空間に吸着剤を収容しないので、吸着剤収容空間が中空空間となる。よって、吸引部にてガスを吸引するときに、吸着剤収容空間が、吸引されるガスが一旦貯留される貯留空間となり、吸引部によるガスの吸引を安定して行うことができ、吸引部における脈動等の不安定な動きの発生を防止することができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、前記フィルター部は、前記ガス流通路における前記フィルターよりもガスの流通方向の上流側部位を構成するための上流側流通部と、前記ガス流通路における前記フィルターよりもガスの流通方向の下流側部位を構成するための下流側流通部とに分離自在に構成され、
前記下流側流通部は、前記吸着剤収容空間が形成された分離不能な筒状体にて構成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、下流側流通部は、吸着剤収容空間が形成された分離不能な筒状体にて構成されているので、フィルター部を上流側流通部と下流側流通部との2つの部材にて構成することができる。これにより、フィルター部における部材点数の低減を図ることができるとともに、フィルター部の構成の簡素化を図ることができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、前記吸着剤収容空間には、前記吸着剤を投入する投入口が備えられ、
前記投入口は、前記吸着剤収容空間においてガスの流通方向の上流側端部に配置されている点にある。
【0014】
本構成によれば、吸着剤収容空間の投入口から吸着剤を投入することで、吸着剤収容空間に吸着剤を収容することができ、吸着剤非収容形態から吸着剤収容形態への切り替えを簡易に行うことができる。そして、投入口は、吸着剤収容空間においてガスの流通方向の上流側端部に配置されるので、吸着剤収容空間においてガスの流通方向の下流側端部に他の構成を備えるためのスペースを確保しながら、投入口を備えることができ、投入口と他の構成とを効率よく配置することができる。例えば、吸着剤収容空間においてガスの流通方向の下流側端部には、フィルター部を検知器本体に装着するための装着部を備えることができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、前記吸着剤が収容された前記吸着剤収容空間に対して、前記投入口をガスの通過を許容する状態で閉じる閉じ部が備えられている点にある。
【0016】
本構成によれば、閉じ部を備えることで、吸着剤収容空間の投入口を閉じることができるとともに、投入口から吸着剤収容空間へのガスの通過を許容することができる。これにより、閉じ部にて投入口を閉じて、吸着剤収容空間に吸着剤が収容された状態を適切に保持することができるので、流通するガスに対する吸着作用を適切に発揮することができ、妨害ガス等の除去を適切に行うことができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、前記閉じ部は、前記フィルターの下部に設置され、
前記フィルター部を前記吸着剤非収容形態にて使用する場合でも、前記閉じ部を設置した状態で前記フィルター部を使用可能に構成されている点にある。
【0018】
本構成によれば、フィルターの下部に閉じ部が配置されているので、その閉じ部を利用しながら、フィルターの交換作業を行うことができ、交換作業の簡素化を図ることができる。例えば、作業者が指にてフィルターを摘む等によりフィルターを取り外す際に、フィルターの下部に閉じ部が存在することで、フィルターの一部等が閉じ部にて受け止め支持され、フィルターの一部が浮き上がり易くなり、フィルターを摘み易くなる。
【0019】
そして、フィルター部を吸着剤収容形態にて使用する場合だけでなく、フィルター部を吸着剤非収容形態にて使用する場合でも、閉じ部を設置した状態でフィルター部が使用可能となっているので、吸着剤収容形態だけでなく、吸着剤非収容形態にてフィルター部を使用する場合にも、フィルターの交換作業の簡素化を図ることができる。
【0020】
本発明の第6特徴構成は、前記検知器本体には、外部と近距離無線通信可能又は指向性を有する無線通信可能な無線通信部が備えられ、
前記フィルター部を前記吸着剤収容形態として使用した場合と前記吸着剤非収容形態として使用した場合とで、前記検知器本体に前記フィルター部を装着した状態の全体での長さ方向における前記無線通信部の位置が同一又は略同一位置となるように構成されている点にある。
【0021】
本構成によれば、検知器本体には、外部と各種の情報を通信するために無線通信部が備えられるので、吸引式ガス検知器に関する各種の情報等を外部にて取得することができる。これにより、例えば、吸引式ガス検知器の検査等、吸引式ガス検知器に対する各種の作業を行う際に、取得される各種の情報を有効に活用することができ、作業の効率化を図ることができる。そして、外部にて吸引式ガス検知器に関する各種の情報等を取得するためには、フィルター部を吸着剤収容形態として使用した場合と吸着剤非収容形態として使用した場合との両方において、検知器本体の無線通信部と外部の通信装置との間での無線通信を適切に行えることが求められる。
【0022】
そこで、本構成では、フィルター部のガス流通路に配置された吸着剤収容空間に対して吸着剤を収容するか否かを切り替えることで、吸着剤収容形態と吸着剤非収容形態とに切り替えてフィルター部を使用している。これにより、吸着剤収容形態と吸着剤非収容形態とで、フィルター部の長さが同一又は略同一とすることができることから、フィルター部を吸着剤収容形態として使用した場合と吸着剤非収容形態として使用した場合とで、検知器本体にフィルター部を装着した状態の全体での長さ方向における無線通信部の位置が同一又は略同一位置とするように構成されている。
【0023】
この構成を採用することによって、外部の通信装置を所望の位置に固定すれば、フィルター部を吸着剤収容形態として使用した場合と吸着剤非収容形態として使用した場合とで、検知器本体の無線通信部と外部の通信装置との相対位置関係が変化せず、検知器本体の無線通信部と外部の通信装置との間での無線通信を適切に行うことができる。よって、フィルター部を吸着剤収容形態として使用した場合と吸着剤非収容形態として使用した場合との両方において、吸引式ガス検知器に関する各種の情報等を外部にて取得することができ、吸引式ガス検知器に対する各種の作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る吸引式ガス検知器を用いた検査システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
この検査システムは、
図5に示すように、吸引式ガス検知器1と、その吸引式ガス検知器1の状態を検査する検査装置100とが備えられている。吸引式ガス検知器1は、ガスを吸引してその吸引されるガスから検知対象ガス(例えば、水素やメタン等の可燃性ガス又は一酸化炭素ガス)を検知し、警報等を行うように構成されている。検査装置100は、吸引式ガス検知器1が正常に検知対象ガスを検知するか等の検査を行うように構成されている。
【0026】
まず、
図1〜
図4に基づいて、吸引式ガス検知器1について説明する。
吸引式ガス検知器1は、
図1に示すように、検知器本体2と、その検知器本体2に対して着脱自在なフィルター部3と、そのフィルター部3の先端部に着脱自在なキャップ部5と、そのキャップ部5の先端部に着脱自在なアタッチメント部6とを備えている。キャップ部5とアタッチメント部6とは、フィルター部3の付属品として構成され、
図3に示すように、その内部にガスが流通可能な流通空間が形成されている。
【0027】
図1に戻り、検知器本体2の前面部には、その上方側にディスプレイやランプ部を有して各種の表示を行う表示部21が備えられ、その下方側に各種の操作を行う操作部22が備えられている。検知器本体2の上端部には、ガスを導入する導入部23が備えられ、この導入部23から検知器本体2の内部にガスを導入可能に構成されている。検知器本体2の横側部には、導入部23から検知器本体2の内部に導入されたガスを外部に排出する排気部24が備えられている。
【0028】
検知器本体2には、
図2に示すように、装着されたフィルター部3を通して導入部23から検知器本体2の内部にガスを吸引する吸引部25と、その吸引部25により吸引されるガスから検知対象ガスを検知する検知部26と、外部と無線通信可能な検知器側無線通信部27と、制御部28とが備えられている。制御部28は、吸引部25、検知部26及び検知器側無線通信部27の作動状態を制御するとともに、検知部26の検知結果に基づいて警報等を行うように構成されている。
【0029】
検知器側無線通信部27は、外部と近距離無線通信可能又は指向性を有する無線通信可能に構成されている。近距離無線通信又は指向性を有する無線通信については、例えば、近距離で通信可能で且つ指向性の強い無線通信である赤外線無線通信が好適である。また、赤外線無線通信に代えて、近距離でしか通信できない無線通信や、障害物の存在によって通信不能となる電波強度の弱い無線通信を適用することもできる。
【0030】
フィルター部3は、
図3に示すように、上下方向に延びる円筒状に形成され、フィルター部3の内部には、検知器本体2の吸引部25により吸引されるガスを流通させて検知器本体2の導入部23に導くガス流通路31が備えられている。
【0031】
ガス流通路31には、ガスの流通方向の上流側から順に(上方側から下方側に向かって順に)、流通するガスに対して作用するフィルター32、流通するガスに対して吸着作用する吸着剤33を収容可能な吸着剤収容空間34が配置されている。フィルター32は、流通するガスに対して作用することで、水分をカットして、検知器本体2の内部への水分の侵入を防止するように構成されている。吸着剤収容空間34に吸着剤33を収容した場合には、吸着剤33が流通するガスに含まれる妨害ガス等を吸着して除去するように構成されている。
【0032】
ここで、
図3(a)は、吸着剤収容空間34に吸着剤33を収容した状態を示す断面図であり、
図3(b)は、吸着剤収容空間34に吸着剤33を収容していない状態を示す断面図である。
【0033】
フィルター部3は、
図3及び
図4に示すように、ガス流通路31におけるフィルター32よりもガスの流通方向の上流側部位を構成するための上流側流通部35と、ガス流通路31におけるフィルター32よりもガスの流通方向の下流側部位を構成するための下流側流通部36とに分離自在に構成されている。上流側流通部35は、分離不能な筒状体にて構成され、下流側流通部36は、吸着剤収容空間34が形成された分離不能な筒状体にて構成されている。このように、フィルター部3は、ガス流通路31を構成するための部材として、上流側流通部35と下流側流通部36との2つの部材から構成されている。
【0034】
上流側流通部35は、主に
図3に示すように、ガスの流通方向の中間部位(上下方向の中間部位)が上流側部位(上方側部位)及び下流側部位(下方側部位)よりも径方向外側に突出する突出部37を有する円筒状に構成されている。上流側流通部35において突出部37よりもガスの流通方向の上流側部位(上方側部位)には、その外壁部にフィルター側ネジ部38が備えられている。このフィルター側ネジ部38とキャップ部5のキャップ側ネジ部51とを螺合することで、フィルター部3にキャップ部5が装着自在に構成されている。上流側流通部35において突出部37よりもガスの流通方向の下流側部位(下方側部位)には、その外壁部に径方向外側に突出する凸状の係合部39が備えられ、この係合部39と下流側流通部36の被係合部40とを係合することで、下流側流通部36に上流側流通部35を装着自在に構成されている。
【0035】
上流側流通部35には、ガス流通路31として、ガスの流通方向の上流側(上端部)から順に、キャップ部5の流路径よりも大径の第1流路部位31aと、その第1流路部位31aの流路径よりも大径の第2流路部位31bとが備えられている。第1流路部位31aは、上流側流通部35においてガスの流通方向で上流側端部から突出部37に相当する位置までの流路となっており、第2流路部位31bは、上流側流通部35においてガスの流通方向で突出部37に相当する位置から下流側端部までの流路となっている。
【0036】
下流側流通部36では、ガスの流通方向の上流側部位(上端側部位)が上流側流通部35を挿脱可能な開口空間となっており、その内壁部に、上流側流通部35の係合部39と係合可能な凹状の被係合部40が備えられている。上流側流通部35を下流側流通部36に装着する場合には、上流側流通部35を下流側流通部36の開口空間に挿入して回転させて、上流側流通部35の係合部39と下流側流通部36の被係合部40とを係合させることで、上流側流通部35を下流側流通部36に内嵌可能となっている。上流側流通部35を下流側流通部36に装着した状態では、上流側流通部35の突出部37が下流側流通部36におけるガスの流通方向の上流側端部(上端部)に当接している。
【0037】
下流側流通部36におけるガスの流通方向の下流側部位(下方側部位)には、フィルター部3を検知器本体2に装着するための装着用ネジ部41が備えられている。この装着用ネジ部41と検知器本体2のネジ部とを螺合することで、検知器本体2にフィルター部3(下流側流通部36)を装着自在に構成されている。
【0038】
下流側流通部36の内部のガス流通路31には、ガスの流通方向の上流側から順に、上流側流通部35を挿脱可能な開口空間、フィルター32を設置するためのフィルター設置部42、吸着剤収容空間34を閉じる閉じ部43を設置するための閉じ部設置部44、吸着剤収容空間34が備えられている。フィルター設置部42と閉じ部設置部44とは、上下に並ぶ状態で備えられ、フィルター32と閉じ部43とが上下に並ぶ状態で設置されている。閉じ部設置部44は、吸着剤収容空間34よりも大径に構成され、フィルター設置部42は、閉じ部設置部44よりも大径に構成されている。
【0039】
吸着剤収容空間34は、流路径が同じでガスの流通方向に所定の長さだけ延びる円柱状に構成されている。吸着剤収容空間34は、妨害ガス等を十分に吸着除去できるだけの吸着剤33を収容できるように、吸着剤33の収容量として十分な収容量が確保されている。吸着剤収容空間34には、吸着剤33を投入する投入口49が備えられ、その投入口49は、吸着剤収容空間34においてガスの流通方向の上流側端部(上端部)に配置されている。吸着剤収容空間34においてガスの流通方向の上流側端部(上端部)の開口が投入口49となっており、吸着剤収容空間34においてガスの流通方向の下流側端部(下端部)の開口が投入口49よりも小径の開口となっている。
【0040】
フィルター部3は、その内部に装着可能な部材として、
図3及び
図4に示すように、第1リング45(例えば、Oリング)、第2リング46(例えば、第1リング45よりも大径のOリング)、フィルター32、閉じ部43、第1当接部47、第2当接部48が備えられている。
【0041】
閉じ部43は、
図3(a)に示すように、吸着剤33が収容された吸着剤収容空間34に対して、投入口49をガスの通過を許容する状態で閉じるように構成されている。閉じ部43は、円筒状に構成され、その外壁部に径方向外側に突出するリブ部43a(
図4参照)が備えられている。閉じ部43は、リブ部43aが下流側流通部36の内壁部に当接する状態で下流側流通部36に対して圧入することで、閉じ部設置部44に設置可能に構成されている。
【0042】
第1当接部47及び第2当接部48は、例えば、金網等にて構成され、吸着剤収容空間34においてガスの流通方向の上流側端部(上端部)と下流側端部(下端部)とに配置されている。第1当接部47及び第2当接部48は、吸着剤収容空間34に収容される吸着剤33に対してガスの流通方向の上流側と下流側とで挟み込んでいる。第1当接部47及び第2当接部48は、吸着剤収容空間34に収容される吸着剤33に当接して、吸着剤収容空間34の外に吸着剤33が移動するのを防止している。
【0043】
上述の如く、フィルター部3には吸着剤収容空間34が備えられているので、
図3(a)に示すように、吸着剤収容空間34に吸着剤33を収容させる吸着剤収容形態と、
図3(b)に示すように、吸着剤収容空間34に吸着剤33を収容させずに使用する吸着剤非収容形態とに切り替えてフィルター部3を使用可能に構成されている。フィルター部3を吸着剤収容形態にて使用するか又は吸着剤非収容形態にて使用するかの切り替えについては、例えば、吸引するガスに、検知対象ガスの検知に悪影響を与える妨害ガス等が含まれているか否か等、各種の状況に応じて切り替えることができる。
【0044】
図3(a)に示すように、吸着剤収容形態に切り替えてフィルター部3を使用し、そのフィルター部3を検知器本体2に装着することで、導入されるガスに対して吸着作用する吸着剤33を装備した吸着剤装備形態に切り替えて吸引式ガス検知器1を使用している。この場合には、吸着剤収容空間34のガスの流通方向の下流側端部に第2当接部48を設置した状態で、吸着剤収容空間34の投入口49から吸着剤33を投入して、吸着剤収容空間34に吸着剤33を収容している。吸着剤収容空間34のガスの流通方向の上流側端部に第1当接部47を設置した状態で、下流側流通部36に対して閉じ部43を圧入して、閉じ部設置部44に閉じ部43を設置して投入口49を閉じている。これにより、吸着剤収容空間34に吸着剤33が収容された状態が保持されている。そして、フィルター設置部42にフィルター32を設置し、下流側流通部36と上流側流通部35との間に第2リング46を介在させる状態で上流側流通部35を下流側流通部36に装着して、フィルター部3を吸着剤収容形態にて使用している。また、キャップ部5及びアタッチメント部6については、上流側流通部35とキャップ部5との間に第1リング45を介在させる状態でフィルター部3にキャップ部5を装着し、そのキャップ部5を外嵌する状態でアタッチメント部6を装着している。
【0045】
図3(b)に示すように、吸着剤非収容形態に切り替えてフィルター部3を使用し、そのフィルター部3を検知器本体2に装着することで、吸着剤33を装備しない吸着剤非装備形態に切り替えて吸引式ガス検知器1を使用している。この場合には、吸着剤収容空間34への吸着剤33の投入は行わず、まず、下流側流通部36に対して閉じ部43を圧入して、閉じ部設置部44に閉じ部43を設置している。そして、フィルター設置部42にフィルター32を設置し、下流側流通部36と上流側流通部35との間に第2リング46を介在させる状態で上流側流通部35を下流側流通部36に装着して、フィルター部3を吸着剤非収容形態にて使用している。また、キャップ部5及びアタッチメント部6については、吸着剤装備形態と同様に、上流側流通部35とキャップ部5との間に第1リング45を介在させる状態でフィルター部3にキャップ部5を装着し、そのキャップ部5を外嵌する状態でアタッチメント部6を装着している。
【0046】
図3(a)に示すように、吸着剤収容形態だけでなく、
図3(b)に示すように、吸着剤非収容形態にてフィルター部3を使用する場合にも、閉じ部43を設置している。フィルター部3のフィルター32を交換する際には、下流側流通部36から上流側流通部35を取り外すことで、フィルター設置部42に設置されたフィルター32を露出させる。そして、作業者が指にてフィルター32を摘む等によりフィルター設置部42からフィルター32を取り外すようにしている。このとき、フィルター32の下部に閉じ部43が設置されていると、フィルター32の一部等が閉じ部43にて受け止め支持され、フィルター32の一部がフィルター設置部42から浮き上がり易くなり、フィルター32を摘み易くなる。よって、吸着剤収容形態だけでなく、吸着剤非収容形態にてフィルター部3を使用する場合にも、フィルター32の交換作業等の簡素化を図ることができる。
【0047】
上述の如く、吸着剤収容空間34に吸着剤33を収容するか否かによって、吸着剤収容形態と吸着剤非収容形態とに切り替えているので、吸着剤収容形態にてフィルター部3を使用して吸着剤装備形態にて吸引式ガス検知器1を使用する場合と、吸着剤非収容形態にてフィルター部3を使用して吸着剤非装備形態にて吸引式ガス検知器1を使用する場合とで、フィルター部3を共通のものとすることができる。これにより、フィルター部3を検知器本体2に装着したときに、吸着剤装備形態にて吸引式ガス検知器1を使用する場合(吸着剤収容形態にてフィルター部3を使用する場合)と、吸着剤非装備形態にて吸引式ガス検知器1を使用する場合(吸着剤非収容形態にてフィルター部3を使用する場合)とで、検知器本体2とフィルター部3とが並ぶ方向における吸引式ガス検知器1の長さが同一又は略同一となる。
【0048】
以上のことから、検知器本体2には検知器側無線通信部27が備えられているが、その検知器側無線通信部27の位置について、吸着剤装備形態にて吸引式ガス検知器1を使用する場合(吸着剤収容形態にてフィルター部3を使用する場合)と、吸着剤非装備形態にて吸引式ガス検知器1を使用する場合(吸着剤非収容形態にてフィルター部3を使用する場合)とで、検知器本体2とフィルター部3とが並ぶ方向における検知器側無線通信部27の位置が同一又は略同一位置となる。
【0049】
次に、
図5及び
図6に基づいて、検査装置100について説明する。
検査装置100には、
図5に示すように、吸引式ガス検知器1を装着自在な装着部101が前面に複数(例えば、4つ)設けられ、検査対象の吸引式ガス検知器1を装着部101に装着させることで、検査対象の吸引式ガス検知器1に対する各種の検査を行うように構成されている。装着部101に対して着脱自在なアダプタ102が備えられ、吸引式ガス検知器1は、そのアダプタ102を介して装着部101に装着可能に構成されている。
【0050】
装着部101の前面部には、その開口を閉塞するカバー103が着脱可能に備えられ、吸引式ガス検知器1が装着されない装着部101にはカバー103が取り付けられている。ちなみに、吸引式ガス検知器1を装着部101に装着させる際には、キャップ部5からアタッチメント部6を取り外して、吸引式ガス検知器1を装着部101に装着させている。
【0051】
検査装置100の前面には、装着部101に加えて、ディスプレイ104やその他操作スイッチ及びスピーカ等の機器が備えられ、ディスプレイ104の下方側部位にガス容器105の複数(例えば、2つ)が着脱可能に構成されている。ガス容器105は、検査対象の吸引式ガス検知器1に備えられた検知部26が感応する特定成分を含む原料ガスを貯留可能としている。
【0052】
装着部101は、前面側に開口する矩形断面凹部として形成されている。装着部101の内部奥面側には、吸引式ガス検知器1に点検用ガス等のガスを供給するためのガス供給部106と、吸引式ガス検知器1から排出された排気を吸引して外部に排出するための排気吸引部107と、アダプタ102のアダプタ側コネクタ109に接続可能な装着部側コネクタ108とが備えられている。
【0053】
アダプタ102には、
図6に示すように、アダプタ側コネクタ109と、検査装置側無線通信部110と、アダプタ側制御部111とが備えられている。アダプタ側制御部111は、検査装置側無線通信部110の作動状態を制御するように構成されている。そして、装着部101にアダプタ102が装着されて、アダプタ102のアダプタ側コネクタ109と装着部101の装着部側コネクタ108とが接続されると、アダプタ側制御部111と検査装置100の検査装置側制御部(図示は省略)とが各種の情報を通信自在となっている。
【0054】
検査装置側無線通信部110は、外部と近距離無線通信可能又は指向性を有する無線通信可能に構成されている。近距離無線通信又は指向性を有する無線通信については、例えば、近距離で通信可能で且つ指向性の強い無線通信である赤外線無線通信が好適である。また、赤外線無線通信に代えて、近距離でしか通信できない無線通信や、障害物の存在によって通信不能となる電波強度の弱い無線通信を適用することもできる。
【0055】
アダプタ102には、
図6に示すように、ガス供給部106からの点検用ガスを吸引式ガス検知器1のキャップ部5に案内する給気案内路112と、吸引式ガス検知器1の排気部24からの排気を排気吸引部107に案内する排気案内路113とが備えられている。排気案内路113には、吸引式ガス検知器1が装着部101に装着された状態において、吸引式ガス検知器1の排気部24と対向する位置に装着部用フィルター114が備えられている。
【0056】
検査対象の吸引式ガス検知器1に対する検査を行う場合には、
図6に示すように、まず、装着部101に吸引式ガス検知器1を装着させる。吸引式ガス検知器1の制御部28にて吸引部25を作動させて吸引式ガス検知器1を作動状態として、その作動状態の吸引式ガス検知器1を装着部101に挿入し、吸引式ガス検知器1のキャップ部5の先端部を給気案内路112に接続させ、吸引式ガス検知器1の排気部24を排気案内路113の上流側端部と対向する位置に配置させて、装着部101に吸引式ガス検知器1を装着させる。
【0057】
そして、装着部101に対して適正な位置に吸引式ガス検知器1が装着されると、吸引式ガス検知器1の検知器側無線通信部27とアダプタ102の検査装置側無線通信部110とが対向する位置関係となり、検知器側無線通信部27と検査装置側無線通信部110との間で無線通信が可能となる。これにより、検査装置100の検査装置側制御部(図示は省略)は、アダプタ側制御部111を介して、検知器側無線通信部27と検査装置側無線通信部110との間での無線通信が可能となったことを検出することで、装着部101に対して適正な位置に吸引式ガス検知器1が装着されたことを判定している。
【0058】
装着部101に対して適正な位置に吸引式ガス検知器1が装着されると、検査装置100の検査装置側制御部(図示は省略)は、吸引式ガス検知器1に対して各種の検査を行うための処理を順次行う。
【0059】
例えば、検査装置100の検査装置側制御部(図示は省略)は、検知器側無線通信部27と検査装置側無線通信部110との間での無線通信により、アダプタ側制御部111を介して吸引式ガス検知器1の制御部28から吸引式ガス検知器1の電池残量情報を取得することで、吸引式ガス検知器1の電池残量を確認する検査を行う。そして、検査装置100の検査装置側制御部(図示は省略)は、ガス供給部106を大気開放させて、吸引式ガス検知器1がガス供給部106から大気を吸引する状態として、吸引式ガス検知器1の吸引流量が所望の範囲内にあるか否かを確認する検査を行う。また、検査装置100の検査装置側制御部(図示は省略)は、検査用ガス(ガス容器105に貯留されている原料ガス、又は、その原料ガスを大気にて希釈したガス)をガス供給部106に供給して、吸引式ガス検知器1がガス供給部106から検査用ガスを吸引する状態として、吸引式ガス検知器1の警報機能が正常であるか否かを確認する検査を行う。吸引式ガス検知器1の吸引流量や警報機能の検査を行う場合にも、検査装置100の検査装置側制御部(図示は省略)は、検知器側無線通信部27と検査装置側無線通信部110との間での無線通信により、アダプタ側制御部111を介して吸引式ガス検知器1の制御部28との間で各種の情報を送受信している。
【0060】
このように、吸引式ガス検知器1に対して各種の検査を行うときだけでなく、装着部101に吸引式ガス検知器1を装着させるときにも、検知器側無線通信部27と検査装置側無線通信部110との間での無線通信を行っている。吸引式ガス検知器1に対して各種の検査を行うためには、検知器側無線通信部27と検査装置側無線通信部110との間での無線通信を適切に行うことが必要となっている。
【0061】
ここで、吸引式ガス検知器1は、上述の如く、吸着剤33を装備した吸着剤装備形態(
図3(a)参照)に切り替えて使用する場合と、吸着剤33を装備しない吸着剤非装備形態(
図3(b)参照)に切り替えて使用する場合とがある。これにより、吸着剤装備形態にて吸引式ガス検知器1を使用する場合でも、吸着剤非装備形態にて吸引式ガス検知器1を使用する場合でも、検知器側無線通信部27と検査装置側無線通信部110との間での無線通信を適切に行うことが求められる。
【0062】
上述の如く、吸引式ガス検知器1は、吸着剤装備形態にて使用する場合と、吸着剤非装備形態にて使用する場合とで、検知器本体2とフィルター部3とが並ぶ方向における検知器側無線通信部27の位置が同一又は略同一位置となっている。また、検査装置側無線通信部110は、装着部101に装着されたアダプタ102に固定されているので、検査装置側無線通信部110の位置は固定となっている。これにより、吸着剤装備形態の吸引式ガス検知器1が装着部101に装着された場合と吸着剤非装備形態の吸引式ガス検知器1が装着部101に装着された場合との両方において、検知器側無線通信部27と検査装置側無線通信部110との相対位置関係が、お互いに対向する位置関係となり、検知器側無線通信部27と検査装置側無線通信部110との間における赤外線無線通信可能範囲内となっている。
【0063】
このように、検知器側無線通信部27と検査装置側無線通信部110とは、吸着剤装備形態の吸引式ガス検知器1が装着部101に装着された場合であっても、吸着剤非装備形態の吸引式ガス検知器1が装着部101に装着された場合であっても、無線通信可能に構成されている。また、検査装置100としても、検査装置側無線通信部110は、装着部101に装着された吸着剤装備形態の吸引式ガス検知器1に対しても、装着部101に装着された吸着剤非装備形態の吸引式ガス検知器1に対しても、近距離無線通信可能又は指向性を有する無線通信可能(赤外線無線通信可能)に構成されている。よって、吸着剤装備形態の吸引式ガス検知器1が装着部101に装着された場合であっても、吸着剤非装備形態の吸引式ガス検知器1が装着部101に装着された場合であっても、装着部101に対して吸引式ガス検知器1を適正な位置に装着することができるとともに、吸引式ガス検知器1に対する各種の検査を適切に行うことができる。
【0064】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、フィルター部3は、上流側流通部35と下流側流通部36との2つの部材から構成しているが、例えば、1つ又は3つ以上の部材から構成することもでき、フィルター部3をいくつの部材から構成するかは適宜変更が可能である。
【0065】
(2)上記実施形態において、フィルター部3は上下方向に延びる円筒状に形成しているが、この形状に限るものではなく、その他の形状を適用することもできる。
【0066】
(3)上記実施形態において、吸着剤収容空間34を円柱状の空間としているが、この形状に限るものではなく、その他の形状を適用することもできる。また、吸着剤収容空間34におけるガスの流通方向での長さを変更する等により、吸着剤収容空間34の容量についても適宜変更が可能である。
【0067】
(4)上記実施形態では、吸着剤収容空間34の投入口49を閉じる閉じ部43が円筒状に形成されているが、この形状に限るものではなく、その他の形状を適用することもできる。また、第1当接部47、第2当接部48、及び、閉じ部43を備えずに、又は、別の部材を備えて実施することもできる。
【0068】
(5)上記実施形態では、検査装置100の装着部101に吸引式ガス検知器1を装着するに当たり、アダプタ102を介して装着部101に吸引式ガス検知器1を装着しているが、例えば、アダプタ102を省略して、吸引式ガス検知器1を装着部101に直接装着することもできる。この場合には、検査装置側無線通信部110が装着部10に備えられることになる。