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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-132580(P2018-132580A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20180727BHJP
【FI】
   G02B7/02 A
   G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-24741(P2017-24741)
(22)【出願日】2017年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号
(74)【代理人】
【識別番号】100086818
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】水島 正康
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA05
2H044AJ02
(57)【要約】
【課題】外部からレンズ鏡筒に衝撃が加わった際の光学性能の変化を低減できるレンズ鏡筒及び撮像装置を提供する。
【解決手段】1枚以上のレンズを保持するレンズ鏡筒であって、前記1枚以上のレンズの光軸方向の位置が固定された第1の鏡筒と、該第1の鏡筒に設けられる保持部に保持され、前記光軸方向に延伸した案内部材と、前記案内部材に案内されて前記光軸方向に移動する第2の鏡筒と、前記第1の鏡筒に結合した外装部材と、前記外装部材を前記第1の鏡筒に対して締結する複数の締結部材と、前記外装部材との間で前記光軸方向に隙間を形成し、前記第1の鏡筒と前記光軸方向に結合する結合部材と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚以上のレンズを保持するレンズ鏡筒であって、
前記1枚以上のレンズの光軸方向の位置が固定された第1の鏡筒と、
該第1の鏡筒に設けられる保持部に保持され、前記光軸方向に延伸した案内部材と、
前記案内部材に案内されて前記光軸方向に移動する第2の鏡筒と、
前記第1の鏡筒に結合した外装部材と、
前記外装部材を前記第1の鏡筒に対して締結する複数の締結部材と、
前記外装部材との間で前記光軸方向に隙間を形成し、前記第1の鏡筒と前記光軸方向に結合する結合部材と、
を有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記光軸方向から見て、前記結合部材は前記複数の締結部材より前記案内部材に近い位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記保持部は、最も入射側のレンズの入射側より順に第1の保持部と、第2の保持部とを備え、
前記第1の鏡筒は、前記光軸方向に突出した突出部を有し、
前記突出部は、最も入射側のレンズの入射側より順に前記結合部材が結合される結合穴と、前記第1の保持部とを有することを特徴とする請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記結合穴と前記第1の保持部と前記第2の保持部は、同一軸上に設けられることを特徴とする請求項3に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記光軸方向から見て、前記結合部材は前記複数の締結部材と同一円周上にあり、前記結合部材は前記複数の締結部材の内の2つの間に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記結合部材は、前記光軸方向に最も入射側のレンズの入射側より順に頭部と、軸部と、螺合部を備え、それぞれの径が順に小さくなる軸ビスであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記外装部材は、前記軸部が収容される穴部を有し、前記光軸方向における前記穴部の長さは前記軸部の長さより短いことを特徴とする請求項6に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記軸部の径は、前記穴部の径より小さいことを特徴とする請求項7に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記第1の鏡筒は、ザグリ穴を有し、
前記軸部は、前記穴部および前記ザグリ穴と径が同一で嵌合することを特徴とする請求項7に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記結合部材は、前記光軸方向から見て、180度方向に対称的に設けられることを特徴とする請求項9に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記結合部材は、前記光軸方向に最も入射側のレンズの入射側より順に頭部と、螺合部とを備え、前記螺合部は前記頭部より径が小さいビスであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記第2の鏡筒は、前記光軸方向の移動により焦点位置または焦点距離を変更するレンズを備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項13】
前記外装部材は環状部材であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項14】
被写体を撮像する撮像素子と、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及び撮像装置に関し、焦点位置や焦点距離を変更可能な撮像装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレンズ鏡筒において、レンズを保持した鏡筒を、ガイドバーで直進案内して、レンズの光軸方向に移動させることにより、撮影における焦点位置の変更(フォーカス)や焦点距離の変更(ズーム)を行うものが知られている。
【0003】
このようなレンズ鏡筒には、鏡筒を高精度で位置決めすることが要求され、場合によっては光学性能値を確認しながら、一部のレンズ群の傾き・偏芯状態を変化させる光学調整を行うこともある。当然ながら、このように位置決めされたレンズ等の位置がずれてしまうと光学性能が劣化してしまうため、位置ずれが発生しにくいレンズ鏡筒が求められている。位置ずれを発生させる原因としては、経年劣化・ユーザーによる長年の繰り返し使用、不注意による落下等の衝撃などがある。
【0004】
特に落下等の衝撃に着目すると、従来技術として特許文献1には、固定鏡筒と外装環状部材との間にバネなどの緩衝部材を配置し、外部からの衝撃に対し固定鏡筒に伝わる衝撃を低減させるレンズ鏡筒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−35371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、緩衝部材という部品が増え、そのためのスペースが必要であり大型化する。 また、ユーザーが外装部品に触れたり力をかけた場合、緩衝部材による反発力(バネ力)が弱いと、ガタを感じてしまいユーザーに不安を与えるという問題点がある。さらには、それを解決するためにバネ力を強くした場合、緩衝部材と固定鏡筒、緩衝部材と外装部材との摩擦力が増大するという別の問題点を生ずる。
【0007】
本発明の目的は、外部からレンズ鏡筒に衝撃が加わった際の光学性能の変化を低減できるレンズ鏡筒及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るレンズ鏡筒は、1枚以上のレンズを保持するレンズ鏡筒であって、前記1枚以上のレンズの光軸方向の位置が固定された第1の鏡筒と、該第1の鏡筒に設けられる保持部に保持され、前記光軸方向に延伸した案内部材と、前記案内部材に案内されて前記光軸方向に移動する第2の鏡筒と、前記第1の鏡筒に結合した外装部材と、前記外装部材を前記第1の鏡筒に対して締結する複数の締結部材と、前記外装部材との間で前記光軸方向に隙間を形成し、前記第1の鏡筒と前記光軸方向に結合する結合部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る撮像装置は、上記レンズ鏡筒を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部からレンズ鏡筒に衝撃が加わった際の光学性能の変化を低減できるレンズ鏡筒及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るレンズ鏡筒の断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るレンズ鏡筒の一部を表す部分斜視図である。
図3】第1の実施形態に係る軸ビス25の位置での断面図である。
図4】前環20に関連した図3の部分拡大図である。
図5】本発明の実施形態に係る一般のビス22の位置での断面図である。
図6図5の部分拡大図である。
図7】第2の実施形態に係る軸ビス26の位置での断面を示す部分拡大図である。
図8】比較例として一般のビス21を備える従来例を表す部分斜視図である。
図9】比較例として一般のビス21の位置での従来例の断面図である。
図10図9の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
《第1の実施形態》
(レンズ鏡筒および撮像装置)
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。図1は、1枚以上のレンズを光軸方向に保持する本発明の実施形態に係るレンズ鏡筒の断面図である。レンズ鏡筒1は、マウント17に固定され、マウント17を介して、専用のカメラ本体に取り付け可能である。そして、マウント17は、光軸方向に固定された第1の鏡筒としてのメイン鏡筒2に対して、間に外装環18を挟みこんでビス27を含む複数のビスで固定される。
【0014】
カメラ本体には、光学的な被写体像を電気信号に変換する撮像素子が備えられている。そして、カメラ本体は、レンズ鏡筒1によって結像された被写体像を撮像素子によって電気信号に変換し、カメラ本体に備えるメモリに画像情報として記録する。
【0015】
レンズ鏡筒1は結像光学系を構成する複数のレンズ群L1〜L5を備えており、入射した被写体からの光をカメラの撮像素子に結像させる。本実施形態のレンズ鏡筒1は、光学系として焦点距離が一定の、いわゆる単焦点レンズのレンズ系を備える。図1は、レンズ鏡筒1において無限遠に焦点を合わせた状態を示している。
【0016】
レンズ群L4は焦点位置を調節するフォーカスレンズであり、光軸方向に移動する第2の鏡筒としての4群鏡筒11によって保持される。4群鏡筒11は、光軸方向に延伸した案内部材としてのガイドバー12に対してスライド可能に嵌合するスリーブ部11aが形成されており、図示しないラック部材が光軸方向に4群鏡筒11と一体的になるように組み付けられている。
【0017】
また、4群鏡筒11には、U字形状溝(不図示)が形成されており、U字形状溝にはサブガイドバー14がスライド可能に嵌合している。これによって、4群鏡筒11はガイドバー12を中心に回転することなく、フォーカスレンズL4の軸を光軸に一致させた状態を保持できる。
【0018】
そして、図3に示すリードスクリュー13aは、ステッピングモーターの出力軸に一体形成され、回転駆動される。リードスクリュー13aには、4群鏡筒11に組み付けられたラックが係合しており、リードスクリュー13aが回転することによって、4群鏡筒11がガイドバー12により直進案内されながら光軸方向に移動する。
【0019】
メイン鏡筒2には、ガイドバー12の第1の保持部として基準穴2a(図1)が形成されており、ガイドバー12の先端12aが基準穴2aに嵌合され位置決め支持されている。また、ガイドバー12の後端12bは、調整コマ16に形成された第2の保持部としての基準穴16a(図1)に嵌合されることで、ガイドバー12は光軸と略平行に保持される。
【0020】
調整コマ16は、5群鏡筒15に対して、光軸直交方向に移動可能に保持され、光学性能等を満足する所定の位置に移動された後、接着剤等で5群鏡筒15に固定される。つまり、調整コマ16を光軸直交方向に移動させることで、ガイドバー12の先端12aを基準にして後端12bを移動させることで、ガイドバーを光軸に対してわずかに倒けることを可能としている。これによって、光軸に対してレンズ群L4の傾きを発生させ、光学性能の調整を可能としている。5群鏡筒15は調整コマ16だけでなく、レンズ群L5も保持しており、メイン鏡筒2にビス固定されている。
【0021】
同様に、メイン鏡筒2において、光軸を挟んでガイドバー12に対向するサブガイドバー14(図1)の先端が基準穴2b(図1)に嵌合され位置決め支持されている。また、サブガイドバー14の後端は、5群鏡筒15に形成された基準穴に嵌合されることで、サブガイドバー14は光軸と略平行に保持される。
【0022】
MFリング19は、光軸方向において外装環18と押え環28との間で、光軸を中心に回転可能に保持される。ユーザーがMFリング19を回転させると、不図示の回転検出センサーが回転方向と回転角度を検出する。検出された結果に応じて、ステッピングモーターに通電することにより、4群鏡筒11を光軸方向に移動させることで焦点位置を変更する。また、当然ながら、ユーザーがカメラのレリーズボタン等を押すことによって、被写体像のコントラストを参照しながら4群鏡筒11を移動させるなどの方法で行う、いわゆるオートフォーカスをすることも可能である。
【0023】
外装部材として環状部材である前環20は、押え環28の被写体側(最も入射側に近いレンズの入射側)に配置され、レンズ鏡筒1の最も被写体側の外装部品である。この前環20は、メイン鏡筒2に対して、図2以降で詳述するビスによって固定される。
【0024】
(比較例における構成)
まず、本実施形態の理解を容易にするために、比較例として従来例について、図8乃至図10を用いて説明する。図8は、比較例として一般のビス21乃至24を備える従来例を表す部分斜視図である。理解を容易にするために、関連部品以外は表示していない。
【0025】
前環20は、レンズ鏡筒1の最も被写体側(最も入射側のレンズの入射側)に配置される環状部材であり、前側かつ外径側を外装部として有している。前環20は、固定筒であるメイン鏡筒2に対して、不図示の位置決め部によってレンズの光軸方向に直交する面内で位置決めされた状態で、光軸方向にビス21乃至24の4本の一般のビスによって固定される。4本の一般のビス21乃至24は、レンズの光軸方向から見たとき、光軸を中心とする同一円周上で略4等分した位相(周方向位置)に配置される。
【0026】
図9はビス21が配置された位相の断面図であり、図10はその部分拡大図である。ビス21は一般のビスであり、前環20に形成された貫通穴20a(図10)を通して、メイン鏡筒2に設けられた結合穴としてのビス穴2c(図8)にネジ止めされる。ビス穴2cは、メイン鏡筒2のフランジ部から光軸方向で被写体側に突出した突出部2d(図8)に設けられている。より具体的には、本実施形態では、ビス穴2c、基準穴2a、基準穴16aは同一軸上に設けられるが、ビス穴2c、基準穴2a、基準穴16aの全てが同一軸上になくてもよい。ビス穴2c、基準穴2a、基準穴16aのうち少なくとも2つが同一軸上にあったり、ビス穴2c、基準穴2a、基準穴16aの全てが互いに異なる軸にあったりする構成であってもよい。
【0027】
そして、ビス21は、メイン鏡筒2の突出部2dにおけるビス穴2cにネジ込まれ、ビス頭部21aが前環20に突き当たって止まる。このとき、ビス頭部21aと前環20は当接(接触)している。ネジ込み後は、ネジの軸方向に、ネジ締結による図10に示す力F2、F3が発生する。
【0028】
また、図9において、ビス22、ビス23、ビス24は、前環20に形成された貫通穴を通してメイン鏡筒2のフランジ部に設けられたビス穴にネジ止めされる。ビス22、ビス23、ビス24と、ビス21とは、ビス穴が設けられている位置がフランジ部であるか突出部2dであるかが違っており、光軸方向に被写体側からビス締結をすることで前環20をメイン鏡筒2に対して固定することは同じである。ビス22、ビス23、ビス24のそれぞれの位相(周方向位置)における断面図は省略するが、ビス21の位相(周方向位置)における断面図である図9および図10と同様である。
【0029】
次に、この比較例において外部からレンズ鏡筒1に衝撃が加わる場合について説明する。レンズ鏡筒1の外観は、図9に示すように、被写体側から順に前環20、押え環28、MFリング19、外装環18、マウント17で構成されている。
【0030】
通常は、ユーザーはレンズ鏡筒1を撮像素子を備えるカメラ本体に装着して使用するが、不注意などによりレンズ鏡筒1が装着されたカメラ本体をレンズ鏡筒1と共に落下させてしまうことがある。また、レンズ鏡筒1をカメラ本体に着脱させる際に落下させてしまう場合もある、また、ストラップなどで首や肩からぶら下げたまま移動する際に、レンズ鏡筒1を壁や机などに振り当ててしまう場合もある。このような場合、レンズ鏡筒1に衝撃などの想定外の外力がかかる。
【0031】
上述した場面を想定すると、ほとんどの場合において、床と衝突するのは前環20である。そして、床との衝突の際に、前環20には衝撃による図10に示す力F1がかかる。前環20は、エンジニアリングプラスチックや金属を材料とした円環形状の成型品であり、衝撃等に対して十分な強度を有するように設計されているため、塑性変形は起こらない。しかし、弾性変形は起こる。ここで、塑性変形とは、力を加えて変形させたとき、力を取り除いたときにも変形が残る恒久変形のことであり、弾性変形とは力を取り除けば元の寸法に戻る変形のことである。
【0032】
前環20が床と衝突した際に、前環20は、図9および図10の下方向に向かって移動するように変形する。前環20とビス21のビス頭21aとの間には摩擦力μ1F2が、前環20とメイン鏡筒2との間には摩擦力μ2F3が、前環20の移動(変位)を妨げるように働く。しかし、落下などの衝撃による力F1はそれを上回るため、前環20は図中の下方向に向かって変形する。その結果、前環20は、前環20の貫通穴20aとビス21のネジ部21cとの隙間が詰まるまで変形する。
【0033】
ビス21はビス穴2cに締結されることでメイン鏡筒2と一体化しており、力F1はビス21を通じてメイン鏡筒2の突出部2dを同じく下方向に押し、メイン鏡筒2の突出部2dは下方向に向かって変形する。このような前環20と突出部2dの変形は弾性変形であり、本来であれば衝撃による荷重が開放された後は、元の寸法に戻るはずである。しかし、実際には、上述した2つの摩擦力に邪魔をされ、元に戻ろうとする途中で止まってしまい、十分に元に戻ることができない。
【0034】
ここで、上述したような途中で止まった状態を説明する。前環20は、変形によって初期位置よりも下にずれている。また、突出部2dも下にずれた前環20に引っ張られて変形し、初期位置よりも下にずれた状態となっている。そして、このような状態が上述した2つの摩擦力によって保持されてしまう。
【0035】
そして、メイン鏡筒2の突出部2dには、突出方向と反対側にガイドバー12を保持する保持部としての基準穴2aが設けられている。突出部2dが変形によって下方向にずれるため、基準穴2aも下方向にずれ、結果的にガイドバー12の前側(被写体側)の先端部12a(図1)も下方向にずれる。これによって、ガイドバー12は、ガイドバー12の後端部12b側の基準穴2b(図1)の位置を基準(支点)にして、下方向に倒れる(撓む)。結果として、4群鏡筒11とレンズ群L4の傾きが初期状態とは変化してしまう。そして、レンズ群L4の傾きが変化すると光学性能が変化し、初期状態の光学性能からは劣化してしまう。
【0036】
また、落下やストラップによる吊り下げ状態での振り当てにおいて、前環20ではなく、押え環28(図1)が床などに衝突する場合がある。押え環28の内径側には前環20が配置されており、押え環28が力F1によって図9図10の下方向に移動(変位)するように弾性変形し、前環20に衝突するまで変形する。前環20に衝突した後は、上述の説明と同様である。
【0037】
レンズ鏡筒に衝撃が加わることによる問題に対しては、固定鏡筒と外装環状部材との間にバネなどの緩衝部材を配置し、外部からの衝撃に対し固定鏡筒に伝わる衝撃を低減させることが考えられる(特許文献1)。しかし、この手法では、光軸方向前方(被写体側)からの衝撃を緩和できるものの、外径方向からの衝撃には対応できない。また、緩衝部材という部品が増え、そのためのスペースが必要となり、大型化とコストアップを招く。
【0038】
また、外装環状部材にユーザーが触れたり力をかけることもできるため、光軸方向に緩衝部材を潰す方向に力を加えると、外装環状部材にガタが生じたり、ガタ感を手に感じたりするなど、ユーザーに不安を与えるという問題点もある。
【0039】
そして、この問題点は、緩衝部材のチャージ力を強めることで解決でき、例えば緩衝部材がバネであった場合は、バネ力を強くして、ユーザーが加える力程度では動かないようにすることができる。しかし、そのような対策(手法)をとると、緩衝部材と固定部材、緩衝部材と外装環状部材との摩擦力であるμ1F2とμ2F3が増大してしまう。すなわち、緩衝部材のチャージ力を強めるということは、F2やF3を大きくすることに相当する。
【0040】
また、バネ力を大きくするためには、例えばバネがコイルバネであった場合、コイルの線径やコイルの直径を大きくする必要があり、大型化してしまう。コイルバネでなく、板バネ等であっても、バネ力を大きくするためには大型化を伴なうことは変わらない。
【0041】
(本実施形態における構成)
次に、上述した比較例における問題を解消する、本発明の実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係るレンズ鏡筒の一部を表す部分斜視図である。上述した比較例における締結部材としての一般的なビス21の替りに、本実施形態では結合部材としての軸ビス25が設けられる。これ以外の部材については、比較例で述べたものと同一符号の部材は、比較例で述べたものと同一の構成および機能を備える。
【0042】
すなわち、外装部材としての前環20については、レンズ鏡筒1の最も被写体側(最も入射側のレンズの入射側)に配置される環状部材であり、前側かつ外径側を外装部として有している。そして、前環20は、固定筒であるメイン鏡筒2に対して、不図示の位置決め部によってレンズの光軸方向に直交する面内で位置決めされた状態で、光軸方向に4本のビスによって固定される。4本のビスは、レンズの光軸方向から見たとき、光軸を中心とする同一円周上で略4等分した位相(周方向位置)に配置される。
【0043】
ここで、本実施形態では、4本のビスのうち3本のビス22乃至24は比較例と同様に締結部材としての一般的なビスである。しかし、4本のビスのうちビス25は一般的なビスではなく、以下に説明する結合部材としての軸ビスを用いる。
【0044】
図2は、本実施形態に係るレンズ鏡筒の一部を表す部分斜視図であり、図3および図4は、本実施形態に係る軸ビス25の位置での断面図および部分拡大図である。図2に示すように、ビス25は、最も入射側のレンズの入射側(被写体側)より順に、ビス頭部25a、軸部25b、螺合部としてのネジ部25cを有しており、それぞれの径が順に小さくなっている。そして、ビス25は、軸部25bが収容される穴部としての、前環20に形成された貫通穴である穴部20aを通して、メイン鏡筒2にネジ止めされる。
【0045】
ここで、ビス25をネジ込みすると、ネジ部25cがメイン鏡筒2のビス穴2cにネジ込まれながらビス25は光軸方向に移動し、軸部25bがメイン鏡筒2の座面2eに突き当たって止まる。このとき、ビス25の頭部25aと前環20との間にはガタAが設けられており、ビス25の頭部25aと前環20とは当接(接触)しない。すなわち、光軸方向における穴部20aの長さは軸部25bの長さより短い。
【0046】
図5および図6は、一般のビスであるビス22が配置された位相(周方向位置)の断面図および部分拡大図である。ビス22は、前環20に形成された貫通穴20a(図6)を通して、メイン鏡筒2にネジ止めされる。ビス22は、ビス25が有する軸部25bを有していないため、メイン鏡筒2のビス穴2cにネジ込まれると、ビス22の頭部22aが前環20に突き当たって止まる。このとき、ビス22の頭部22aと前環20は当接(接触)している。
【0047】
ビス23、ビス24においてもビス22と同様の構成であり、前環20をメイン鏡筒2に対して、光軸方向からビス固定する。ビス23、24が配置された位相(周方向位置)の断面図および部分拡大図は省略するが、図5および図6と同様である。
【0048】
次に、本実施形態の効果について、図3および図4を参照して説明する。レンズ鏡筒1の外観は、被写体側から順に前環20、押え環28、MFリング19、外装環18、マウント17で構成されている。ここで、比較例としての従来例で説明したように、ユーザーの不注意などによりレンズ鏡筒1に想定外の外力がかかる場合がある。そして、上述したように、殆どの場合において、床と衝突するのは前環20である。
【0049】
床と衝突するとき、前環20には、比較例で説明した衝撃による力F1がかかる。前環20は、エンジニアリングプラスチックを材料とした円環形状の成型品であり、ユーザーの不注意による落下などによる衝撃に対して十分な強度を有するように設計されている。このため、塑性変形は起こらないが、弾性変形領域内での変形は起こる。
【0050】
床と衝突した際に、図4に図示する前環20は、図中の下方向に向かって移動(変位)するように変形し、貫通穴20aとビス25との隙間が詰まり、ビス25に衝突するまで変形する。そして、ビス25は、ビス穴2cに締結されることでメイン鏡筒2と一体化しており、力F1はビス25を通じてメイン鏡筒の突出部2d(図2)を同じく下方向に押し、メイン鏡筒2の突出部2dは下方向に向かって変形する。
【0051】
そして、メイン鏡筒2の突出部2dは下方向に向かって弾性変形するが、塑性変形には至らず、ガタA(図4)が存在することで時間の経過とともに元の位置・形状・寸法に戻り、同様に、前環20も元の位置・形状・寸法に戻る。すなわち、ビス25の頭部25aと前環20との間にはガタAが設けられており、接しておらず、比較例で示した摩擦力μ1F2は発生せずゼロである。
【0052】
また、前環20とメイン鏡筒2は接しており、ビス22〜24の締結によって発生する力F4がかかっているが、F4は前述したF2やF3と比較するとかなり小さい。よって、メイン筒2と前環20の間で、前環20の移動を妨げるように働く摩擦力μ2F4は、前環20の移動を妨げるほど大きくはない。
【0053】
結果として、前環20は、上述した力F1による弾性変形状態からスムーズに初期状態に戻り、メイン鏡筒2の突出部2dも初期状態に戻る。したがって、比較例に示したような、ガイドバー12の後端部12b側の基準穴2b(図1)の位置を基準(支点)にして、ガイドバー12が下方向に倒れ(撓み)も発生しない。これにより、4群鏡筒11とレンズ群L4の傾きは初期状態が保持され、初期状態に保持していた光学性能は保たれる。
【0054】
また、落下やストラップによる吊り下げ状態での振り当てにおいて、前環20ではなく、押え環28が床などに衝突する場合がある。押え環28の内径側には前環20が配置されており、押え環28が力F1によって図中下方向に移動するように弾性変形し、前環20に衝突するまで変形する。前環20に衝突した後の力Fの伝達については、上述と同様である。
【0055】
また、まれに、MFリング19に力Fがかかるようなケースも存在するが、MFリング19は押え環28と径嵌合して回転する摺動部を有しており、摺動部を介して押え環28に力F2を伝達する。それ以降は、上述と同様である。
【0056】
このように、本実施形態では、衝撃によってレンズ鏡筒1に力F1が加わり、弾性変形が起こっても、変形状態から元に戻るため、光学性能の劣化は起こらない。
【0057】
ここで、前環20は外観部品であり、ユーザーが触れたり力を加えたりすることもできる。しかし、図2に示すように、円環状の部品である前環20は、軸部25aを有し前環とビス頭との間にガタAを有するビス25と、ガタAがなく通常に締結されている一般のビス22〜24で締結されている。そして、軸部を有するビス25は、光軸方向から見てビス25と同一円周上に設けられる一般のビス22、23の周方向の位置の間に配置されている
そして、前環20が円環形状で十分な強度を有していることと相俟って、仮に前環20のビス25が配置されている位相に被写体側に向かう力をユーザーが前環20に加えたとしても、ガタが生じたり、ガタを手に感じたりすることはない。図4に示すガタAの大きさは、0.4mm程度以下が好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば0.5mm以上で1mm以下としても良い。
【0058】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態について、図7を参照して説明する。第1の実施形態と共通の部分は省略し、第1の実施形態と違う部分についてのみ説明する。図7は関連する部品のみ表示しており、関連しない部品は省略してある。
【0059】
ビス26は、ビス頭部26a、軸部26b、ネジ部26cを有しており、前環20に形成された貫通穴20aを通して、メイン鏡筒2にネジ止めされる。ビス26をネジ込みすると、ネジ部26cがメイン鏡筒2のビス穴2cにネジ込まれながら光軸方向に移動し、軸部26bは、メイン鏡筒のザグリ穴2fに挿入される。軸部26bとザグリ穴2fの直径は略一致しており、嵌合となっている。さらに、軸部26bはメイン鏡筒2の座面2eに突き当たって止まる。このとき、頭部26aと前環20との間にはガタAが設けられており、頭部26aと前環20は当接しない。
【0060】
また、ビス26の軸部26bと貫通穴20aの直径が略一致しており、嵌合になっている。これによって、軸部26bを介して、前環20の貫通穴20aと、メイン鏡筒2のザグリ穴2fを略一致(位置合わせ)させることができる。
【0061】
図示は省略するが、例えば光軸を挟んで反対側の位相(180度方向)に同様な構成を対称的に設けることで、メイン鏡筒2に対して前環20の位置を決める(位置合わせを行う)ことができる。そして、反対側の位相においては、前環20の貫通穴を光軸から放射方向に延びた長穴とすることがより望ましい。
【0062】
上記の構成では、軸ビス26によって、前環20とメイン鏡筒2を位置決めすることが可能である。これによって、第1の実施形態では別に設けた位置決め部を省略することが可能となり、小型化やコストダウンを図ることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、位置決めに使用する軸ビスの数は2本としたが、これに限るものではなく、3本以上であっても良い。
【0064】
(変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0065】
(変形例1)
上述した実施形態では、前環20を固定する4本のビスを光軸方向から見て光軸を中心に同一円周上に略等分した位相で配置したが、本発明はこれに限られず、5本以上もしくは3本のビスを同一円周上に配置しても良い。例えば、ガタを有する軸ビス3本と、通常に締結される一般ビス3本を周方向に互い違いに配置してもよい。要は、ガタAを有する軸ビスが、通常に締結される2本の一般ビスの周方向位置の間に配置されていればよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、軸ビスと複数の一般ビスとを同一円周上に設けたが、少なくとも1つが径方向にずれて全体が同一円周上に設けられなくても良い。
【0067】
(変形例2)
また、上述した実施形態では、ガタAを有する軸ビス25もしくは26は、メイン鏡筒2の突出部2dに設けられたビス穴2cと結合したが、これに限定されることはなく、突出部2dではない通常のフランジ部などに設けられるビス穴と結合してもよい。
【0068】
(変形例3)
また、上述した実施形態では、結合部材としての軸ビス25もしくは26を軸部を有する軸ビスとしたが、一般ビスを途中までネジ締めをした状態で止めることによって、ガタAを設けても良い。
【0069】
(変形例4)
また、上述した実施形態では、外装部材としての前環20を外部形状が円形で中央に円形開口を備える断面形状(円環形状)としたが、本発明はこれに限られず、例えば外部形状が角形(四角形など)で中央に円形開口を備える断面形状としても良い。
【0070】
(変形例5)
また、上述した実施形態では、焦点距離が不変の単焦点レンズを前提に、光軸方向に移動する第2の鏡筒として焦点位置を調節するフォーカスレンズを保持する構成を示したが、本発明はこれに限られない。光軸方向に移動する第2の鏡筒として、焦点距離を調節するズームレンズを保持するものであっても良い。
【0071】
さらには、上述した実施形態では、レンズ鏡筒としてカメラ本体に着脱可能な交換レンズを例にとって説明したが、これに限ることはなく、レンズ一体型カメラに使用されるレンズ鏡筒など、種々のレンズ鏡筒に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
2 メイン鏡筒(第1の鏡筒)
2a 基準穴
11 4群鏡筒(第2の鏡筒)
12 ガイドバー
16a・・基準穴
20 前環
22〜24 一般ビス
25、26 軸ビス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10