【解決手段】厚さ30μm以下のシクロオレフィンフィルム1の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との混合物を含有する易接着層2を介し、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層3が積層されたハードコートフィルム10であって、当該ハードコートフィルムは下記条件(A)及び(B)を満たす。
厚さ30μm以下のシクロオレフィンフィルムの少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との混合物を含有する易接着層を介し、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層が積層され、且つ下記条件(A)及び(B)を満たすことを特徴とするハードコートフィルム。
(A)b*値が1.5以下である。
(B)前記ハードコートフィルムに対し、温度43度、湿度50%RHの環境下で、照射照度500W/m2とし、照射時間100時間の紫外線を照射した後に、JIS−K5600−5−6のクロスカット法により測定される前記ハードコート層の残存率が90%以上である。
前記易接着層に含有される前記ポリオレフィン系樹脂と前記チレンアクリル系樹脂との配合比率(重量部)は、ポリオレフィン系樹脂:スチレンアクリル系樹脂=95:5〜70:30の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のハードコートフィルム。
前記ハードコート層は、前記電離放射線硬化型樹脂として、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートを含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「○○〜△△」とは、特に断りのない限り、「○○以上△△以下」を意味するものとする。
【0022】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るハードコートフィルム10は、基材である厚さ30μm以下のシクロオレフィンフィルム1の少なくとも片面に、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との混合物を含有する易接着層2を介し、電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層3が積層されており、且つ当該ハードコートフィルム10は下記条件(A)及び(B)を満たすことを特徴とするものである。
(A)b
*値が1.5以下である。
(B)上記ハードコートフィルムに対し、温度43度、湿度50%RHの環境下で、照射照度500W/m
2とし、照射時間100時間の紫外線を照射した後に、JIS−K5600−5−6のクロスカット法により測定される前記ハードコート層の残存率が90%以上である。
以下、このハードコートフィルム10の構成を詳しく説明する。
【0023】
[基材フィルム]
まず、上記ハードコートフィルム10の基材フィルムについて説明する。
本発明において、ハードコートフィルムの基材フィルムとしては、透明性、耐熱性、寸法安定性、低吸湿性、低複屈折性、及び光学的等方性等に優れるシクロオレフィンフィルム1を用いることを特徴とする。具体的には、シクロオレフィン類単位がポリマー骨格中に交互に又はランダムに重合し分子構造中に脂環構造を有するものであり、ノルボルネン系化合物、単環の環状オレフィン、環状共役ジエンおよびビニル脂環式炭化水素から選択される少なくとも一種の化合物を含んでなる共重合体であるシクロオレフィンコポリマーフィルム又はシクロオレフィンポリマーフィルムが対象となり何れかを適宜選択し使用できる。
【0024】
また、本発明において、上記シクロオレフィンフィルム1は、厚さが30μm以下であることを特徴とし、25μm以下が好ましく、20μm以下が更に好ましい。基材フィルムの厚さが薄くなるほど液晶ディスプレイの薄型化の効果が大きくなるが、薄膜化により機械的強度や、ハンドリング性の低下が懸念されるため、下限値としては厚さが10μm以上であることが好ましく、更に好ましくは13μm以上である。
【0025】
また、上記シクロオレフィンフィルム1の耐熱性については、本発明のハードコートフィルム用途に用いる場合には、試料に温度変化を与えた時にその熱変化を測定する熱重量測定(TG)法や示差走査熱量測定(DSC)法等で測定されるガラス転移温度が、120℃〜170℃程度のフィルムの使用が好ましい。
【0026】
本発明において、上記シクロオレフィンフィルム1の片面に易接着層2を介してハードコート層3を形成する場合には、ハードコート層が形成されないシクロオレフィンフィルム1の裏面には、シクロオレフィンフィルム巻取りの圧着防止やハードコート層を形成時のフィルムの走行性向上を目的に、シクロオレフィンフィルム製膜時に、共押し出し法でシクロオレフィンフィルムとの離型性に優れるポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、或いはポリエステル樹脂を保護層として積層したフィルムとしてもよい。また、裏面に弱粘着層が形成されているポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、或いはポリエステル樹脂等の保護フィルムを貼着したものを用いることも可能である。
【0027】
上記シクロオレフィンフィルム1としては、例えば、市販されているゼオノア(商品名:日本ゼオン株式会社製)、オプティカ(商品名:三井化学株式会社製)、アートン(商品名:JSR株式会社製)、コゼック(商品名:倉敷紡績株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
[易接着層]
次に、上記ハードコートフィルム10の易接着層2について説明する。
本発明において、上記易接着層2は、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との混合物を含有する層である。また、上記易接着層2はさらに紫外線吸収剤を含有することができる。つまり、上記易接着層は、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂と紫外線吸収剤とを含有した混合物層であってもよい。
【0029】
本発明において、上記易接着層2に用いられるポリオレフィン系樹脂は、シクロオレフィンフィルム1とハードコート層3との密着性の付与を目的に配合する樹脂である。本発明者らは、シクロオレフィンフィルムとハードコート層の双方に対し密着性の優れる易接着層用樹脂について鋭意検討を行った結果、柔軟性に優れるポリオレフィン系樹脂が適することを見出した。
【0030】
本発明における上記易接着層2に用いられるポリオレフィン系樹脂は特に限定されるものではないが、基材(シクロオレフィンフィルム)との密着性に優れるものとしてエチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等の2種以上のモノマーで共重合体を構成するものが好ましく、特に共重合体中にプロピレンモノマーを含むものが好ましい。また、その分子量についても特に限定されるものではないが、重量平均分子量10,000〜200,000の範囲にあるものが、柔軟性と密着性のバランスの点で好ましい。その様なポリオレフィン系樹脂としては、例えば、市販されているユニストール(商品名:三井化学株式会社製)、サーフレン(商品名:三菱化学株式会社製)、アローベース(商品名:ユニチカ株式会社製)、アウローレン(商品名:日本製紙株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
なお、このポリオレフィン系樹脂は、柔軟性に優れる樹脂であるため、易接着層を形成しフィルムを巻き取った際にフィルム面同士が圧着し易い問題点がある。そのため、フィルム面同士のブロッキング防止の観点から易接着層へ高硬度な樹脂や無機あるいは有機微粒子の配合、或いはシクロオレフィンフィルムの裏面に保護フィルムの貼着等による圧着防止を施すことが好ましい。
【0032】
上記の無機あるいは有機微粒子の配合においては、配合量(重量部)は、易接着層を形成する樹脂/無機あるいは有機微粒子=99.8/0.2〜95.0/5.0の範囲であることが好ましい。上記無機あるいは有機微粒子の配合量が5.0重量部を超えると透明性の低下やシクロオレフィンフィルムとの密着性が低下するため好ましくない。一方、上記無機あるいは有機微粒子の配合量が0.2重量部未満であると十分な圧着防止効果が発現しない懸念がある。
【0033】
無機微粒子としては、アルミナ、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、酸化セリウム等の微粒子を例示することができ、有機微粒子としては、アクリル、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ポリエチレン、スチレンアクリル、ポリエステル等の微粒子を例示することができる。粒子径としては、例えば0.05μm〜0.20μmの微粒子の使用が好ましい。粒子径が0.05μm未満では、圧着防止効果が低いため好ましくない。一方、粒子径が0.20μmを超えると、それ以上の圧着防止効果は得られず、コスト高となること、外部ヘイズが高くなり透明性の低下を生じ易くなるため好ましくない。
【0034】
また、本発明において、上記易接着層2に含有されるスチレンアクリル系樹脂は、構成単位にアクリルモノマー及びスチレンモノマーを交互に、又はランダムに含んでなるポリマーである。このスチレンアクリル系樹脂は、ハードコート層が形成されてないシクロオレフィンフィルム裏面の保護フィルムと易接着層との圧着防止、及び易接着層とハードコート層との収縮差を少なくし、耐熱条件下におけるクラック発生の防止を目的に配合する樹脂であるため、比較的硬く伸びの少ない樹脂であることが要求される。本発明において、目安としてはガラス転移温度(Tg)が50℃以上である樹脂の使用が望ましい。その様なスチレンアクリル系樹脂としては、例えば、市販されているARUFON樹脂(商品名:東亜合成株式会社製)や、アクリット樹脂(商品名:大成ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
本発明において、上記易接着層2に含有される上記ポリオレフィン系樹脂と上記スチレンアクリル系樹脂との配合比率(重量部)は、95/5〜70/30の範囲であることが好ましい。より好ましくは、90/10〜80/20の範囲である
上記ポリオレフィン系樹脂の配合比率が95重量部を超えると、形成される易接着層が軟らかく伸び易いため、易接着層上にハードコート層を形成した場合、硬く伸び難いハードコート層との収縮差により、耐熱条件下(例えば、100℃で5分間保存)でクラックが発生し易い問題点や、鉛筆硬度が低下し易い問題点がある。一方、上記ポリオレフィン系樹脂の配合比率が70重量部未満では、易接着層とハードコート層との収縮差が小さくなり、耐熱条件下でのクラックの発生は無く良好であるが、易接着層とシクロオレフィンフィルム(基材フィルム)との密着性が低下する問題点がある。
【0036】
本発明においては、上記易接着層2に紫外線吸収剤を含むことが好ましい。このような紫外線吸収剤は、偏向板として液晶ディスプレイに組み込んだ時に紫外線による液晶の劣化を低減する目的で使用されるものである。本発明に使用可能な紫外線吸収剤には、紫外線吸収性に優れることの他に、易接着層用樹脂として用いるポリオレフィン系樹脂やスチレンアクリル系樹脂との相溶性に優れ塗工層表面にブリードアウトしないこと、及び当該紫外線吸収剤を含む易接着層のb
*値の低いことが要求される。なお、このb
*値とは、JIS−Z8722に規定された方法により測定される樹脂フィルムの黄色度の値である。
【0037】
上記のような本発明に使用可能な適性を持つ紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤の使用が有効である。トリアジン系紫外線吸収剤は、他の紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)に比べ分子量が大きいため、易接着層用樹脂との相溶性が良好であればブリードアウトし難く揮発も少ないため、長期に渡る紫外線吸収能を保持可能であり、紫外線に対しても劣化し難いため上記易接着層やハードコート層の変色を軽減できる効果を有している。
【0038】
本発明で使用可能なトリアジン系紫外線吸収剤の具体例を例示すると、Tinuvin 460(商品名:BASF株式会社製)、アデカスタブLAF−70(商品名:株式会社ADEKA製)、KEMISORB 73(ケミプロ化成株式会社製)、チノソーブS(商品名:BASF株式会社製)等が挙げられる。
【0039】
本発明において、上記易接着層2に紫外線吸収剤を含有させる場合、易接着層の樹脂成分に対する紫外線吸収剤の配合比率(重量部)は、易接着層の樹脂成分/紫外線吸収剤=97/3〜80/20の範囲であることが好ましい。紫外線吸収剤の配合比率が20重量部を超えると、ヘイズの上昇やシクロオレフィンフィルムとの密着性の低下、易接着層の黄変、耐熱条件下においてハードコート層にクラックが発生し易くなるため好ましくない。一方、紫外線吸収剤の配合比率が3重量部未満では、十分な紫外線吸収能が得られない。
【0040】
なお、本発明においては、紫外線吸収剤の必要量を、上記易接着層2ではなく、ハードコート層3の方に含有させてもよい。また、紫外線吸収剤の必要量を易接着層2とハードコート層3に分けて含有するようにしてもよい。これについて詳しくは後述する。
【0041】
本発明における上記易接着層2の塗膜厚みは、特に制約されるわけではないが、シクロオレフィンフィルム及びハードコート層との密着性、或いはハードコート層の鉛筆硬度などに悪影響を及ぼさない範囲の0.2μm〜5.0μmの範囲が好適である。なお、易接着層の塗膜厚みは、マイクロメーターで実測することにより測定可能である。
上記易接着層2の塗膜厚みが0.2μm未満では、ハードコート層との密着性の低下や、紫外線吸収剤を易接着層に含有する場合、目標の紫外線吸収性が得られ難くなるため好ましくない。一方、上記易接着層2の塗膜厚みが5.0μmを超えると、ハードコート層の下層に柔軟な易接着層の塗工量が多く形成されることになり、ハードコートフィルムの鉛筆硬度の低下(例えば、鉛筆硬度5Bから鉛筆硬度6Bに低下)や、耐熱条件下(例えば、温度100℃のオーブン中に5分間保存)においてクラックが発生し易くなるため好ましくない。
【0042】
本発明における上記易接着層2には、塗工性の改善を目的にレベリング剤の配合が可能であり、例えばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、例えば易接着層の樹脂成分100重量部に対し0.03重量部〜3.0重量部の範囲での配合が可能である。
【0043】
また、上記易接着層2に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、消泡剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
【0044】
本発明において、上記易接着層2は、上記ポリオレフィン系樹脂と上記スチレンアクリル系樹脂、及び紫外線吸収剤(易接着層に紫外線吸収剤を含有する場合)の他に、その他の添加剤等を適当な有機溶剤に溶解、分散した塗料(易接着層用塗料)を上記シクロオレフィンフィルム上に塗工、乾燥して形成される。この場合の有機溶剤としては、含有される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、その他添加剤)を均一に溶解或いは分散できる溶媒であること、及び塗工時の作業性、乾燥性の観点から、たとえば沸点が50℃〜160℃の有機溶剤の使用が好ましい。そのような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶剤を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することも可能である。
【0045】
本発明において、上記の易接着層用塗料をシクロオレフィンフィルム上に塗工する方法としては、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗工することができる。シクロオレフィンフィルム上に塗工された塗料は、通常50〜120℃程度の温度で乾燥し溶剤を除去し、塗膜を形成させる。
【0046】
[ハードコート層]
次に、上記ハードコートフィルム10のハードコート層3について説明する。
本発明において、上記ハードコート層3に含まれる樹脂としては、被膜を形成する樹脂であれば特に制限なく用いることができるが、特にハードコート層の表面硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)を付与し、また、紫外線の露光量によって架橋度合を調節することが可能であり、ハードコート層の表面硬度の調節が可能になるという点で電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、紫外線(以下、「UV」と略記する。)や電子線(以下、「EB」と略記する。)を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではないが、塗膜硬度及びハードコート層が3次元的な架橋構造を形成するために1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するUVまたはEBにて硬化可能な多官能アクリレートからなるものが好ましい。分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するUVまたはEB硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等を挙げることができる。なお、多官能アクリレートは単独で使用するだけでなく、2種以上の複数を混合し使用してもよい。
【0048】
さらに、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、重量平均分子量が700〜3600の範囲内であるポリマーを用いることが好ましく、重量平均分子量700〜3000の範囲のものがより好ましく、重量平均分子量700〜2400がさらに好ましい。重量平均分子量が700未満であると、UVやEB照射により硬化した際の硬化収縮が大きく、ハードコートフィルムがハードコート層面側に反りかえる現象(カール)が大きくなり、その後の加工工程を経るに不具合が生じ、加工適性が悪い。また、重量平均分子量が3600を超えると、ハードコート層の柔軟性が高まるが、硬度が不足するため適さない。
【0049】
また、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、重量平均分子量が1500未満である場合は、1分子中の官能基数は3個以上10個未満であることが望ましい。また、上記電離放射線硬化型樹脂の重量平均分子量が1500以上である場合は、1分子中の官能基数は3個以上20個以下であることが望ましい。上記範囲内であれば、耐熱条件下(例えば、100℃で5分間保存)でのクラックの発生を抑えつつ、カールが抑制でき、適切な加工適性を維持できる。
【0050】
また、上記ハードコート層3に含まれる樹脂としては、上述の電離放射線硬化型樹脂の他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル、スチレン−アクリル、繊維素等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ、珪素樹脂等の熱硬化性樹脂をハードコート層の硬度、耐擦傷性を損なわない範囲内で配合してもよい。
【0051】
本発明においては、上記ハードコート層3に紫外線吸収剤を含有してもよい。上記ハードコート層3に使用可能な紫外線吸収剤は、紫外線吸収性に優れることの他に、ハードコート層用樹脂として用いる電離放射線硬化型樹脂との相溶性に優れ、ハードコート層のb
*値の低いことが望ましい。なお、このb
*値については、前述したとおりである。
【0052】
上記ハードコート層3に用いられる紫外線吸収剤としては前述した易接着層2に含まれる紫外線吸収剤と同様のものを挙げることができる。すなわち、上記ハードコート層3に含有する紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤の使用が有効である。トリアジン系紫外線吸収剤の具体例は、前述の易接着層に含まれるトリアジン系紫外線吸収剤の具体例と同様のものを挙げることができる。
【0053】
本発明のハードコート層3に紫外線吸収剤を含有させる場合、ハードコート層の樹脂成分(電離放射線硬化型樹脂)に対する紫外線吸収剤の配合比率(重量部)は、ハードコート層に用いる電離放射線硬化型樹脂/紫外線吸収剤=97/3〜90/10の範囲であることが好ましい。上記紫外線吸収剤の配合比率が10重量部を超えるとヘイズの上昇、耐擦傷性の低下、シクロオレフィンフィルム(基材)と易接着層との密着性の低下、及びハードコート層のb
*値が高くなるため好ましくない。一方、紫外線吸収剤の配合比率が3重量部未満では、十分な紫外線吸収能が得られない。
【0054】
本発明においては、上述したように、紫外線吸収剤の必要量を易接着層2とハードコート層3のいずれか一方にのみ含有してもよいが、このような態様に限らず、たとえば紫外線吸収剤の必要量を易接着層2とハードコート層3にそれぞれ分けて含有するようにしてもよい。
この場合、上記易接着層2及び上記ハードコート層3に含まれる紫外線吸収剤の総量が、上記易接着層及び上記ハードコート層の樹脂成分の総量に対して、5〜30重量部であることが好ましい。より好ましくは5〜25重量部、更に好ましくは10〜25重量部である。紫外線吸収剤の総量が30重量部を超えるとヘイズの上昇、耐擦傷性の低下、シクロオレフィンフィルムと易接着層との密着性の低下、ハードコートフィルムのb
*値が高くなるため好ましくない。一方、紫外線吸収剤の総量が5重量部未満では、十分な紫外線吸収能が得られない。
なお、紫外線吸収剤の各層への含有量については、特に制限はないが、各層の塗工厚み、各層との密着性、及び各層の塗膜強度等の観点から総合的に判断し含有量の設定を行うことができる。その様な中で、ハードコート層3よりも易接着層2に紫外線吸収剤を多く配合する方が、ハードコートフィルムのb
*値をより低く抑制でき、好ましい。
【0055】
本発明においては、上記ハードコート層3に無機酸化物微粒子を含有させ、表面硬度(耐擦傷性)の更なる向上を図ることも可能である。この場合、無機酸化物微粒子の平均粒子径は5〜50nmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは平均粒子径10〜20nmの範囲である。平均粒子径が5nm未満であると、十分な表面硬度を得ることが困難である。一方、平均粒子径が50nmを超えると、ハードコート層の光沢、及び透明性が低下し易く、また、可撓性も低下するおそれがある。
【0056】
本発明において、上記無機酸化物微粒子としては、例えばアルミナやシリカなどを挙げることができる。これらの中でも、アルミニウムを主成分とするアルミナは高硬度を有するため、シリカよりも少ない添加量で効果を得られることから特に好適である。
【0057】
本発明において、無機酸化物微粒子の含有量は、ハードコート層3の電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10.0重量部であることが好ましい。無機酸化物微粒子の含有量が0.1重量部未満であると、表面硬度(耐擦傷性)の向上効果が得られ難い。一方、含有量が10.0重量部を超えると、ヘイズが上昇するため好ましくない。
【0058】
本発明のハードコート層3を形成するためのハードコート塗料には、光重合開始剤を含むことができる。そのような光重合開始剤としては、市販のIRGACURE 651やIRGACURE 184(いずれも商品名:BASF社製)などのアセトフェノン類、また、IRGACURE 500(商品名:BASF社製)などのベンゾフェノン類を使用できる。
【0059】
上記ハードコート層3には、塗工性の改善を目的にレベリング剤の使用が可能であり、たとえばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、ハードコート層の樹脂の固形分100重量部に対し0.03重量部〜3.0重量部の範囲での配合が可能である。また、タッチパネル用途等において、タッチパネル端末のカバーガラス(CG)、透明導電部材(TSP)、液晶モジュール(LCM)等との接着を目的に光学透明粘着剤OCRを用いた対接着性が要求される場合には、表面自由エネルギーの高い(凡そ40mJ/cm
2以上)アクリル系レベリング剤やフッ素系のレベリング剤の使用が好ましい。
【0060】
上記ハードコート層3に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、消泡剤、表面張力調整剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
【0061】
上記ハードコート層3は、上述の電離放射線硬化型樹脂、及び紫外線吸収剤(ハードコート層に紫外線吸収剤を含有する場合)の他に、光重合開始剤、その他の添加剤等を適当な溶媒に溶解、分散したハードコート塗料を上記易接着層上に塗工、乾燥した後、UV又はEB等の電離線を照射することにより、光重合が起こりハード性に優れるハードコート層を得ることができる。溶媒としては、配合される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、光重合開始剤、その他添加剤等)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶剤を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することもできる。
【0062】
上記ハードコート層3を形成するハードコート塗料の塗工方法については、特に限定はないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設した後、通常50〜120℃程度の温度で乾燥する。
【0063】
本発明において、上記ハードコート層3は、さらに下記の条件を満たすことが好ましい。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜100mJ/cm
2で硬化させた前記電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作製する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、前記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率が8%以上45%以下である。
【0064】
上記条件を満たすことで、すなわちハードコート層3の伸度(伸び率)を所定の範囲にコントロールすることにより、ハードコート層は前述のカールが抑制され、加工適性に優れるハードコートフィルムを得ることができる。
ハードコート層3が上記条件を満たすために、ハードコート層に含有される電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、EBECRYL−5129(商品名:ダイセル・オルネクス株式会社製)、NKオリゴ U−6LPA(商品名:新中村化学工業株式会社製)、ArtResin UN−908(商品名:根上工業株式会社製)、ユニディック17−806(商品名:DIC株式会社製)、ACRIT 8UX−015A(商品名:大成ファインケミカル株式会社製)等を好ましく挙げることができる。
【0065】
上記ハードコート層3の塗膜厚さは、特に制約されるわけではないが、例えば1.0μm〜5.0μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは1.5μm〜3.5μmの範囲である.塗膜厚さが1.0μm未満では、必要な耐擦傷性の低下、及び鉛筆硬度が低下するため好ましくない。また、塗膜厚さが5.0μmを超えた場合は、カールが強く発生しやすく製造工程などで取扱い性が低下するため好ましくない。なお、ハードコート層の塗膜厚さは、マイクロメーターで実測することにより測定可能である。
【0066】
本発明のハードコート層3は、JIS K5600−5−4に規定される鉛筆硬度が5B以上を有するハードコート層であることが好ましく、より好ましくは鉛筆硬度4B以上であり、更に好ましくは鉛筆硬度3B以上である。
【0067】
[ハードコートフィルム]
上記のようにして得られた本発明の一実施形態に係るハードコートフィルム10は、下記条件(A)及び(B)を満たすことが重要である。
(A)b
*値が1.5以下である。
(B)上記ハードコートフィルムに対し、温度43度、湿度50%RHの環境下で、照射照度500W/m
2とし、照射時間100時間の紫外線を照射した後に、JIS−K5600−5−6のクロスカット法により測定される前記ハードコート層の残存率が90%以上である。
【0068】
本発明のハードコートフィルムは、b
*値が1.5以下であることが重要であり、好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.6以下である。b
*値については前記したとおりである。b
*値が1.5以下であることにより、フィルム黄変による視認性の悪化を防止することができる。
【0069】
また、本発明のハードコートフィルムは、上記条件(B)を満たすことにより、耐光性(耐光密着性)に優れるハードコートフィルムである。
【0070】
また、本発明のハードコートフィルムは、さらに下記条件(C)及び(D)を満たすことが好ましい。
(C)ヘイズが1%以下である。
(D)380nm波長における光線透過率が25.0%以下である。
【0071】
本発明のハードコートフィルムは、ヘイズが1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.3%以下である。
【0072】
また、本発明のハードコートフィルムは、380nm波長における光線透過率が25.0%以下であることが好ましく、より好ましくは20.0%以下である。
【0073】
上記の条件(A)及び(B)、または条件(A)〜(D)を満たすようなハードコートフィルム10は、例えば前記易接着層及び前記ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤の総量を、適宜調整することで達成することができる。
【0074】
厚さ30μm以下のシクロオレフィンフィルムは、前述の理由により、通常紫外線吸収剤が含まれていないために、塗布されたハードコート層は紫外線照射による耐久性(シクロオレフィンフィルムとの耐光密着性)が低くなる。そのため、上述したとおり、易接着層とハードコート層のいずれか一方の層に、または両方の層にそれぞれ紫外線吸収剤を含有することで、紫外線照射による密着耐久性を改善できる。ただし、易接着層やハードコート層に紫外線吸収剤が含有されることでヘイズや光線透過率、b
*値が上昇しやすく黄変の原因となるおそれもある。
【0075】
本発明においては、このような観点から、前にも説明したように、前記易接着層2及び前記ハードコート層3に含まれる紫外線吸収剤の総量は、5〜30重量部の範囲に調整されることが好ましく、より好ましくは5〜25重量部、更に好ましくは10〜25重量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記の範囲に調整されることで、本発明のハードコートフィルムは、上記の条件(A)及び(B)、もしくは条件(A)〜(D)を満たし易くなる。
【0076】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、厚さ30μm以下の薄膜のシクロオレフィンフィルムを基材として用い光学部材用途のハードコートフィルムを薄膜化でき、かつ、ハード性(表面硬度)、密着性、耐久性(特に耐光性、耐熱性、耐湿熱性など)、加工性(カール特性)、光学特性(ヘイズ、透明性など)、視認性(b
*値)にも優れるハードコートフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0077】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0078】
[実施例1]
<易接着層塗料の調製>
まず、スチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」(固形分100%、東亜合成株式会社製、ガラス転移温度58℃)40部を、攪拌機を用いて酢酸エチル160部中へ攪拌しながら少量ずつ添加し樹脂溶解を行い濃度20%の溶解液を作製した。
次いで、ポリオレフィン系樹脂「サーフレンP−1000(商品名)」(固形分20%、三菱化学株式会社製)85部と上記のスチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」(固形分20%)15部とを配合し、酢酸ブチル/トルエン=85/15(重量%)にて固形分濃度10%となるまで希釈し易接着層塗料を調製した。
【0079】
<ハードコート層塗料の調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「ARTRESIN UN−908(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:9、重量平均分子量:3600、根上工業株式会社製)100部を主剤とし、TINUVIN 460(トリアジン系紫外線吸収剤、BASF社製)10部、イルガキュア184(光重合開始剤、BASF社製)3.5部と、TINUVIN 292(ヒンダードアミン系光安定化剤、BASF社製)2.5部と、レベリング剤RS75(フッ素系レベリング剤、DIC株式会社製)0.3部を酢酸ブチル/n−プロピルアルコール=50/50(重量部)で紫外線硬化型樹脂の塗料中の固形分濃度が35%となるまで希釈し十分攪拌してハードコート層塗料を調製した。
なお、該ハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量100mJ/cm
2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作製する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作製し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は18.3%であった。
【0080】
<ハードコートフィルムの作製>
シクロオレフィンフィルムとして厚さ13μmのゼオノアフィルムZF14(日本ゼオン株式会社製)の片面に上記の易接着層塗料をバーコーターを用いて塗工し、90℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ乾燥固化し、塗膜厚み2.0μmの易接着層を形成させ、易接着層塗布フィルムを得た。
次に、その易接着層塗布フィルムの易接着層上に、上記のハードコート層塗料を、バーコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ、塗膜厚み2.5μmの塗工層を形成した。これを、塗工面より60mmの高さにセットされたUV照射装置を用い、UV照射量150mJ/cm
2にて硬化させてハードコート層を形成し、本実施例のハードコートフィルムを作製した。
【0081】
[実施例2]
実施例1の易接着層塗料に、アデカスタブLAF−70(トリアジン系紫外線吸収剤、株式会社ADEKA製)を10部配合したこと、及びハードコート層塗料のTINUVIN 460の配合量を5部とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0082】
[実施例3]
実施例2の易接着層塗料に含まれるアデカスタブLAF−70を15部とし、且つハードコート層塗料に含まれるTINUVIN 460の配合量を0部(つまり配合せず)とした以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0083】
[実施例4]
実施例2のハードコート層塗料のTINUVIN 460を10部とした以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0084】
[実施例5]
実施例1のハードコート層塗料のTINUVIN 460を5部とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0085】
[実施例6]
実施例3のハードコート層塗料のTINUVIN 460を15部とした以外は、実施例3と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0086】
[実施例7]
実施例2のハードコート層塗料の紫外線硬化型樹脂を、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「ACRIT 8UX−015A(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:15、重量平均分子量:2000、大成ファインケミカル株式会社製)100部に変更し、実施例2のハードコート層塗料の紫外線吸収剤をKEMISORB 73に変更した以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0087】
[実施例8]
実施例2のシクロオレフィンフィルム基材をシクロオレフィンコポリマーフィルムである「OPTICA 50μm(商品名)」(三井化学株式会社製)とした以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0088】
[比較例1]
実施例1のハードコート層塗料のTINUVIN 460を0部(配合せず)とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0089】
[比較例2]
実施例2の易接着層塗料のサーフレンP1000とARUFON UG−4070との混合比率を100/0とした以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0090】
[比較例3]
実施例2の易接着層塗料のサーフレンP1000とARUFON UG−4070との混合比率を0/100とした以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0091】
以上のようにして作製した実施例及び比較例の各ハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表1に示した。なお、表1中には、紫外線吸収剤を「UVA」と略記した。
【0092】
(1)塗膜の厚み
易接着層及びハードコート層の塗膜の形成厚みは、Thin−Film Analyzer F20(商品名)(FILMETRICS社製)を用いて測定した。
【0093】
(2)密着性(初期密着性、湿熱密着性及び耐光密着性)
初期密着性は、JIS−K5600−5−6に準じて、通常条件下、すなわち恒温恒湿条件下(23℃、50%RH)で、碁盤目剥離試験治具を用い1mm
2のクロスカットを100個作製し、積水化学工業株式会社製の粘着テープNo.252をその上に貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付け後、180度方向に剥離し、ハードコート層の残存個数を4段階評価した。評価基準は下記の通りであり、◎と○評価品(つまりハードコート層の残存率90%以上)を密着性は合格と判定した。
◎:100個
○:99〜90個
△:89〜50個
×:49〜0個
【0094】
また、湿熱密着性(湿熱条件下での経時密着性)は、各ハードコートフィルムを湿熱条件下(80℃、90%RH)に30日間保存した後、上記と同様にして碁盤目剥離試験を行い、ハードコート層の密着性を4段階評価した。評価基準は上記の初期密着性の場合と同様である。
【0095】
また、耐光密着性については、各ハードコートフィルムについて、スガ試験(株)紫外線オートフェードメーター「U48AU」(紫外線カーボンアークランプ)を用いて、試験条件を照射照度500W/m
2、温度43度、湿度50%RHとし、照射時間が100時間の時点で、JIS−K5600−5−6に準じて、ハードコート層の密着性を上記と同様の碁盤目試験法で実施した。評価基準は上記の初期密着性の場合と同様である。
【0096】
(3)ヘイズ
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムのヘイズは、JIS−K7136に基づき、村上色彩技術研究所製ヘイズメーター「HM150」を用いて測定した。
【0097】
(4)耐熱クラック
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムを、100℃の乾燥機中でサンプル掛けを用い5分間吊るし保存した後、ハードコートフィルムを取り出し、クラックの発生有無を目視評価した。クラックの発生程度を次の基準で評価した。
○:クラックの発生なし。
△:試験片端部にクラックが若干みられる。
×:試験片全面にクラックがみられる。
【0098】
(5)鉛筆硬度
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、JIS−K−5600−5−4に準じた試験法により鉛筆硬度を測定した。表面に傷の発生なき硬度を標記した。判定基準については、硬度5B以上は合格とした。
【0099】
(6)耐擦傷性
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、JIS−K−5600−5−10に準じた試験法にて、ハードコート層面を、スチールウール#0000を用い、荷重1kgを掛け10往復摩擦し、傷のつき具合を次の基準で評価した。○評価品を耐擦傷性は良好とした。△評価品も製品として使用可能である。
○:傷の発生なし
△:傷が少し発生する
×:傷が無数に発生する
【0100】
(7)380nm光線透過率
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、日立ハイテクノロジーズ製分光光度計U−3310を用いて測定した。測定は、波長範囲250〜800nm、スキャンスピード300nm/minで測定し、波長380nmでの光線透過率を検出した。評価基準については、光線透過率25%未満を合格とした。
【0101】
(8)カール特性
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、
図2のように塗布方向(図示のMD方向)を基軸とした1辺10cmの正方形菱形状の試験片を切り出し、水平面にハードコート層面を上にして設置し、23℃、50%RH環境下に30分間保存した後、反り立っている4頂点(A,B,C,D)の水平面からの高さを測定し、その平均値をカール高さとした。評価基準については、カール高さ40mm以下であれば実用上用いることができ、数値が低いほど好ましい。
【0102】
(9)b
*値
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、村上色彩技術研究所製SPECTROPHOTOMETETR DOT−3Cにて測定した。評価基準については、b
*値が1.5以下を合格と判定した。
【0103】
【表1】
【0104】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例によれば、ハード性(表面硬度)、密着性、耐久性(特に耐光性、耐熱性、耐湿熱性など)、加工性(カール特性)、光学特性(ヘイズ、透明性など)、視認性(b
*値)に優れるハードコートフィルムを得ることができる。また、厚さ30μm以下の薄膜のシクロオレフィンフィルムを基材として用いているため、光学部材用途のハードコートフィルムを薄膜化できる。
また、たとえば実施例2と実施例3の対比から、紫外線吸収剤をハードコート層よりも易接着層に多く配合する方が、ハードコートフィルムのb
*値をより低く抑制でき、より好ましいことがわかる。易接着層は、基材フィルムとハードコート層の中間層であり、表層のハードコート層がよりクリア層であった方がハードコートフィルムのb
*値が低くなり視認性が向上する。
【0105】
これに対し、紫外線吸収剤を易接着層とハードコート層のいずれにも含有していない比較例1では、紫外線照射による耐久性が劣り、特に耐光密着性、透明性(380nm光線透過率)が劣っている。また、易接着層とハードコート層の両層に紫外線吸収剤を含有しているが、易接着層にポリウレタン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂を併用していない比較例2、3では、耐熱条件下でクラックが発生しやすい問題点(比較例2)や、基材との密着性(特に湿熱条件下での経時密着性や耐光密着性)が劣る問題点(比較例3)がある。