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特開2018-132674撮像光学系及びそれを有する撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-132674(P2018-132674A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】撮像光学系及びそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20180727BHJP
【FI】
   G02B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-26625(P2017-26625)
(22)【出願日】2017年2月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号
(74)【代理人】
【識別番号】100086818
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】水間 章
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087MA05
2H087MA07
2H087MA09
2H087PA07
2H087PA16
2H087PB11
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA14
2H087QA21
2H087QA26
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA32
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】 無限遠から近距離へのフォーカシングに際して収差変動、特に色収差の変動を軽減し、全物体距離にわたり高い光学性能が容易に得られる撮像光学系を得ること。
【解決手段】 物体側から像側に順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、2つ以上のレンズ群を含む中間群、負の屈折力の後群より構成され、中間群は開口絞りと、開口絞りよりも物体側に負の屈折力のレンズ群FN、開口絞りよりも像側に正の屈折力のレンズ群FPを有し、無限遠から至近へのフォーカシングに際して第1レンズ群は不動、後群は不動、レンズ群FNは像面側に移動し、レンズ群FPは物体側に移動し、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する撮像光学系であって、レンズ群FPは負レンズFPnを有し、負レンズFPnの材料のアッベ数と部分分散比νdFPn、θgFFPnを各々適切に設定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側に順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、2つ以上のレンズ群を含む中間群、負の屈折力の後群より構成され、
前記中間群は開口絞りと、該開口絞りよりも物体側に配置された負の屈折力のレンズ群FN、該開口絞りよりも像側に配置された正の屈折力のレンズ群FPを有し、
無限遠から至近距離へのフォーカシングに際して、前記第1レンズ群は不動であり、前記後群は不動であり、前記レンズ群FNは像側に移動し、前記レンズ群FPは物体側に移動し、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する撮像光学系であって、
前記レンズ群FPは負レンズFPnを有し、前記負レンズFPnの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdFPn、θgFFPnとするとき、
νdFPn<25.0
θgFFPn<0.615
θgFFPn>−0.001682×νdFPn+0.6438
なる条件式を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項2】
前記レンズ群FPは正レンズFPpを有し、前記正レンズFPpの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdFPp、θgFFPpとするとき、
νdFPp>65.0
θgFFPp<0.55
θgFFPp>−0.001682×νdFPp+0.6438
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項3】
前記レンズ群FNの焦点距離をfFN、前記レンズ群FPの焦点距離をfFPとするとき、
−3.5<fFN/fFP<−1.5
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像光学系。
【請求項4】
前記レンズ群FPは、物体側から像側へ順に配置された正レンズ、正レンズ、負レンズより構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記レンズ群FNは正レンズFNpを有し、前記正レンズFNpの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdFNp、θgFFNpとするとき、
νdFNp<30.0
θgFFNp>0.59
θgFFNp>−0.001682×νdFNp+0.6438
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項6】
前記開口絞りはフォーカシングに際して不動であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項7】
前記第1レンズ群は正レンズL1pを有し、前記正レンズL1pの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdL1p、θgFL1pとするとき、
νdL1p>65.0
θgFL1p<0.55
θgFL1p>−0.001682×νdL1p+0.6438
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項8】
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、全系の焦点距離をfとするとき、
f1/f<2.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項9】
バックフォーカスをsk、全系の焦点距離をfとするとき、
sk/f>0.4
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項10】
前記開口絞りの開口径はフォーカシングに際して可変であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の撮像光学系。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の撮像光学系と該撮像光学系によって形成される像を受光する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像光学系に関し、例えばスチルカメラ、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラそして監視用カメラ等の撮像装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影倍率が大きな近距離の撮影が容易な撮像光学系が要望されている。一般に、多くの撮像光学系においては撮影倍率が大きくなるにつれて、フォーカシングに伴う諸収差、例えば色収差の変動が大きくなり、光学性能が低下してくる。従来フォーカシングの際に複数のレンズ群を独立に移動させ、フォーカシングに際しての諸収差の変動を補正する、所謂フローティング方式を採用した撮像光学系が知られている。フローティング方式を用いると、無限遠から近距離へのフォーカシングに際しての収差変動が少なく、近接撮影においても良好な光学性能が容易に得られる。
【0003】
フローティング方式を用いた撮像光学系においてフォーカシングの際に最も物体側の第1レンズ群を移動させるフローティングを用いると、近距離にフォーカシングするときのレンズ群の移動量が多くなる。この結果、被写体との距離(ワーキングディスタンス)が短くなる傾向がある。そこで、従来、近距離へのフォーカシングの際に第1レンズ群を不動とし、他の複数のレンズ群を移動させる撮像光学系が知られている(特許文献1乃至3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−63403号公報
【特許文献2】特開2011−13357号公報
【特許文献3】特開2009−288384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの撮像光学系においては、無限遠から近距への撮影になると、諸収差のうち、特に色収差の変動が増大してくる。このため、フォーカシングに際して2つ以上のレンズ群を移動させるフローティング方式は無限遠から近距離への撮影の際の収差変動を軽減するのに大変有効である。
【0006】
しかしながらフローティング方式を用いてフォーカシングに際して収差変動を軽減し、全物体距離において高い光学性能を得るには、移動させるレンズ群や撮像光学系のレンズ構成等を適切に設定することが重要になってくる。これらの構成が適切でないと、フォーカシングに伴う諸収差の変動が増大し、全物体距離にわたり高い光学性能を得るのが大変難しくなってくる。
【0007】
特に無限遠から、近距離への撮影の際の色収差の変動を軽減するには、開口絞りよりも物体側及び像側のレンズ群のレンズ構成を適切に配置することが重要になってくる。
【0008】
本発明は、無限遠から近距離へのフォーカシングに際して収差変動、特に色収差の変動を軽減し、全物体距離にわたり高い光学性能が容易に得られる撮像光学系の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の撮像光学系は、物体側から像側に順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、2つ以上のレンズ群を含む中間群、負の屈折力の後群より構成され、
前記中間群は開口絞りと、該開口絞りよりも物体側に配置された負の屈折力のレンズ群FN、該開口絞りよりも像側に配置された正の屈折力のレンズ群FPを有し、
無限遠から至近距離へのフォーカシングに際して、前記第1レンズ群は不動であり、前記後群は不動であり、前記レンズ群FNは像側に移動し、前記レンズ群FPは物体側に移動し、フォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する撮像光学系であって、
前記レンズ群FPは負レンズFPnを有し、前記負レンズFPnの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdFPn、θgFFPnとするとき、
νdFPn<25.0
θgFFPn<0.615
θgFFPn>−0.001682×νdFPn+0.6438
なる条件式を満足することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無限遠から近距離へのフォーカシングに際して収差変動、特に色収差の変動を軽減し、全物体距離にわたり高い光学性能が容易に得られる撮像光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)、(B) 実施例1の撮像光学系の無限遠と至近にフォーカスしているときにおけるレンズ断面図
図2】(A)、(B) 実施例1の撮像光学系の無限遠と至近にフォーカスしているときにおける縦収差図
図3】(A)、(B) 実施例2の撮像光学系の無限遠と至近にフォーカスしているときにおけるレンズ断面図
図4】(A)、(B) 実施例2の撮像光学系の無限遠と至近にフォーカスしているときにおける縦収差図
図5】(A)、(B) 実施例3の撮像光学系の無限遠と至近にフォーカスしているときにおけるレンズ断面図
図6】(A)、(B) 実施例3の撮像光学系の無限遠と至近にフォーカスしているときにおける縦収差図
図7】材料のアッベ数νdと部分分散比θgFの関係を示す図
図8】本発明の撮像装置の要部概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。本発明の撮像光学系は、デジタルカメラ、TVカメラ等の撮像装置に好適なものである。
【0013】
本発明の撮像光学系は、物体側から像側に順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群、2つ以上のレンズ群を含む中間群、負の屈折力の後群より構成されている。中間群は開口絞りと、開口絞りよりも物体側に配置された負の屈折力のレンズ群FN、開口絞りよりも像側に配置された正の屈折力のレンズ群FPを有している。無限遠から至近距離へのフォーカシングに際して、第1レンズ群は不動であり、後群は不動であり、レンズ群FNは像側に移動し、レンズ群FPは物体側に移動し、そしてフォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する。
【0014】
図1(A)、(B)は本発明の実施例1の撮像光学系の無限遠と至近(撮像倍率0.5倍)にフォーカスしているときのレンズ断面図である。図2(A)、(B)は本発明の実施例1の撮像光学系の無限遠にフォーカスを合わせたときと、至近(撮影倍率0.5倍)にフォーカスを合わせたときの諸収差図である。実施例1はFナンバー4.05、撮像画角28.38度の撮像光学系である。
【0015】
図3(A)、(B)は本発明の実施例2の撮像光学系の無限遠と至近(撮像倍率0.5倍)にフォーカスしているときのレンズ断面図である。図4(A)、(B)は本発明の実施例2の撮像光学系の無限遠にフォーカスを合わせたときと、至近(撮影倍率0.5倍)にフォーカスを合わせたときの諸収差図である。実施例2はFナンバー4.05、撮像画角28.38度の撮像光学系である。
【0016】
図5(A)、(B)は本発明の実施例3の撮像光学系の無限遠と至近(撮像倍率0.5倍)にフォーカスしているときのレンズ断面図である。図6(A)、(B)は本発明の実施例3の撮像光学系の無限遠にフォーカスを合わせたときと、至近(撮影倍率0.5倍)にフォーカスを合わせたときの諸収差図である。実施例3はFナンバー4.05、撮像画角28.38度の撮像光学系である。
【0017】
図7は光学部材のアッベ数と部分分散比との関係を示す説明図である。図8は本発明の撮像装置の要部概略図である。
【0018】
レンズ断面図において、左方が物体側(前方)で、右方が像側(後方)である。また、レンズ断面図において、iを物体側からのレンズ群の順番とすると、Liは第iレンズ群を示す。レンズ断面図において、LAは撮像光学系である。L1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は負の屈折力の第4レンズ群である。MLは2つ以上のレンズ群を含む中間群である。RFは負の屈折力の後群である。
【0019】
SPは開放Fナンバーの光束を決定(制限)する開口絞りである。中間群MLは開口絞りSPと開口絞りSPよりも物体側に負の屈折力のレンズ群FN(第2レンズ群L2)と開口絞りSPよりも像側に正の屈折力のレンズ群FP(第3レンズ群L3)を有している。後群EFは第4レンズ群L4に相当している。
【0020】
IPは像面である。像面IPは、撮像光学系LAをデジタルカメラやTVカメラ等の撮像装置用として使用する際には、CCDセンサやCMOSセンサなどの撮像素子(光電変換素子)の撮像面に相当する。銀塩フィルムカメラ等の撮像装置用として使用する際には、フィルム面に相当する。矢印は無限遠から近距離へのフォーカシング(合焦)に際して、各レンズ群の移動軌跡を示している。
【0021】
収差図においてFnoはFナンバーである。球面収差図において、実線のdはd線(波長587.56nm)、2点鎖線のgはg線(波長435.8nm)である。非点収差図で実線のΔSはd線におけるサジタル像面、点線のΔMはd線におけるメリディオナル像面である。歪曲収差はd線について示している。倍率色収差図において2点鎖線のgはg線である。
【0022】
本発明の撮像光学系LAは、マクロ撮影に好適なものである。本発明の撮像光学系LAは、物体側から像側に順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1、2つ以上のレンズ群を含む中間群ML、負の屈折力の後群RFより構成されている。
【0023】
中間群MLは開口絞りSPと、開口絞りSPよりも物体側に負の屈折力のレンズ群FN、開口絞りSPよりも像側に正の屈折力のレンズ群FPを有している。無限遠から至近へのフォーカシングに際して、第1レンズ群L1は不動、後群RFは不動、レンズ群FNは像面側に移動し、レンズ群FPは物体側に移動する。そしてフォーカシングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する。
【0024】
本発明の撮像光学系LAは、フォーカシングに際して、第1レンズ群L1を不動とし、撮像光学系LAと被写体との距離(ワーキングディスタンス)が十分長く確保し易くしている。
【0025】
一般に撮影倍率が大きくなるにつれて、フォーカシングに伴う諸収差の変動、特に像面湾曲の変動と色収差の変動が大きくなり、光学性能が低下してくる。このため本発明の撮像光学系LAでは、無限遠から至近へのフォーカシングに際して、開口絞りSPより物体側の負の屈折力のレンズ群FNが像側に移動し、開口絞りSPより像側の正の屈折力のレンズ群FPが物体側に移動するようにしている。これにより近距離の撮影の際に生じる像面湾曲の変動を小さくしている。また、フォーカシングの際に移動するレンズ群に適切な硝材を用いて色収差の変動を軽減している。
【0026】
具体的には開口絞りSPより像側のフォーカシングに際して移動する正の屈折力のレンズ群FPに含まれる負レンズFPnに、以下の条件式(1)乃至(3)を満足する材料を用いている。これによって、無限遠から至近にわたりフォーカシングに際しての色収差の変動を低減している。
【0027】
即ち、負レンズFPnの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdFPn、θgFFPnとする。このとき、
νdFPn<25.0 ・・・(1)
θgFFPn<0.615 ・・・(2)
θgFFPn>−0.001682×νdFPn+0.6438 ・・・(3)
なる条件式を満足している。
【0028】
条件式(1)、(2)、(3)は、開口絞りSPよりも像側に配置されたフォーカシングの際に移動する正の屈折力のレンズ群FPに含まれる負レンズFPnの材料の、アッベ数と部分分散比に関する。
【0029】
ここでg線(波長435.8nm)、F線(波長486.1nm)、d線(波長587.6nm)、C線(波長656.3nm)に対する材料の屈折率をそれぞれNg、NF、Nd、NCとする。このとき、材料のアッベ数νdと部分分散比θgFは以下の式で定義される。
【0030】
νd=(Nd−1)/(NF−NC) ・・・(a)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC) ・・・(b)
図7は材料のアッベ数νdと部分分散比θgFの関係を示した説明図である。図7においては、例として株式会社オハラ社製の製品名:PBM2(νd=36.26、θgF=0.5828)と製品名:NSL7(νd=60.49、θgF=0.5436)の材料を示す。
【0031】
いま、これらの材料の2点を結んだ線を基準線とする。低分散材料に関しては、基準線より上側に位置するものを使用するのが二次スペクトルの補正に対し効果的であり基準線から離れるほど補正効果が高まる。
【0032】
このようにフォーカシングの際に移動するレンズ群FP内の負レンズFPnに、アッベ数と部分分散比の適切な値となる材料を用いて、フォーカシングに際しての色収差の変動を低減して、至近において高い光学性能を得ている。特に倍率色収差に関しては、像高が増すにつれてのg線の曲がりを抑えている。
【0033】
条件式(1)、(2)、(3)を満足する材料は、高分散でありながら低異常分散を有している。これにより、色収差の補正を効果的に行っている。条件式(1)の上限を超えると、色消し(色収差の補正)が不十分となり、軸上色収差の補正が困難となる。条件式(2)の上限を超えると、負レンズFPnの材料の異常分散性が大きくなり、倍率色収差を良好に補正することが困難となる。条件式(3)を満足しないと負レンズFPnの材料の異常分散性が小さくなりすぎて倍率色収差を良好に補正するのが困難になる。
【0034】
各実施例において好ましくは条件式(1)、(2)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
νdFPn<24.9 ・・・(1a)
θgFFPn<0.613 ・・・(2a)
各実施例によれば、以上のように材料を選択することによって、軸上色収差、倍率色収差を良好に補正した近距離の撮影に好適な撮像光学系を得ている。
【0035】
本発明において、更に好ましくは次の条件式のうち1つ以上を満足するのが良い。レンズ群FPは正レンズFPpを有し、正レンズFPpの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdFPp、θgFFPpとする。レンズ群FNの焦点距離をfFN、レンズ群FPの焦点距離をfFPとする。レンズ群FNは正レンズFNpを有し、正レンズFNpの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdFNp、θgFFNpとする。
【0036】
第1レンズ群L1は正レンズL1pを有し、正レンズL1pの材料のアッベ数と部分分散比を各々νdL1p、θgFL1pとする。第1レンズ群L1の焦点距離をf1、全系の焦点距離をfとする。バックフォーカスをskとする。このとき次の条件式のうち1つ以上を満足するのが良い。
νdFPp>65.0 ・・・(4)
θgFFPp<0.55 ・・・(5)
θgFFPp>−0.001682×νdFPp+0.6438 ・・・(6)
−3.5<fFN/fFP<−1.5 ・・・(7)
νdFNp<30.0 ・・・(8)
θgFFNp>0.59 ・・・(9)
θgFFNp>−0.001682×νdFNp+0.6438 ・・・(10)
νdL1p>65.0 ・・・(11)
θgFL1p<0.55 ・・・(12)
θgFL1p>−0.001682×νdL1p+0.6438 ・・・(13)
f1/f<2.0 ・・・(14)
sk/f>0.4 ・・・(15)
次に前述の各条件式の技術的意味について説明する。
【0037】
条件式(4)、(5)、(6)は、フォーカシングの際に移動する正の屈折力のレンズ群FP内に含まれる正レンズFPpの材料のアッベ数と部分分散比に関する。条件式(4)、(5)、(6)を満足する材料は、低分散でありながら、異常分散性を有している。これにより、色収差の補正に効果的に行っている。
【0038】
条件式(4)の下限を超えると、色消しが不十分となり、色収差の補正が困難となる。条件式(5)の下限を超えると、正レンズFPpの材料の異常分散性が小さくなり、倍率色収差を良好に補正することが困難となる。条件式(6)を満足しないと正レンズの材料の異常分散性が小さくなりすぎて倍率色収差を良好に補正するのが困難になる。
【0039】
条件式(7)は、至近において像面湾曲をより適切に補正するためのものである。条件式(7)の下限を超えて開口絞りSPより像側にある正の屈折力のレンズ群FPの屈折力が強くなると、像面湾曲が過補正となり好ましくない。条件式(7)の上限を超えてレンズ群FPの屈折力が弱くなると、像面湾曲が補正不足となり好ましくない。
【0040】
条件式(8)、(9)、(10)は、開口絞りSPよりも物体側に配置されたフォーカシングの際に移動する負の屈折力のレンズ群FNに含まれる正レンズFNpの材料のアッベ数と部分分散比に関する。条件式(8)、(9)、(10)を満足する材料は、異常分散性を有している。これによって、色収差の補正を効果的に行っている。条件式(8)の上限を超えると、色消しが不十分となり、色収差の補正が困難となる。
【0041】
条件式(9)の下限を超えると、正レンズFNpの材料の異常分散性が小さくなり、倍率色収差を良好に補正することが困難となる。条件式(10)を満足しないと正レンズL1pの材料の異常分散性が小さくなりすぎて倍率色収差を良好に補正するのが困難になる。
【0042】
条件式(11)、(12)、(13)は、第1レンズ群L1に含まれる正レンズL1pの材料のアッベ数と部分分散比に関する。条件式(11)、(12)、(13)を満足する材料は、低分散でありながら、異常分散性を有している。これによって、色収差の補正を効果的に行っている。条件式(11)の下限を超えると、色消しが不十分となり、軸上色収差の補正が困難となる。
【0043】
条件式(12)の下限を超えると、正レンズL1pの材料の異常分散性が小さくなり、倍率色収差を良好に補正することが困難となる。条件式(13)を満足しないと正レンズの材料の異常部分分散性が小さくなりすぎて倍率色収差の補正が困難になる。
【0044】
条件式(14)は、第1レンズ群L1の焦点距離と全系の焦点距離の比に関する。条件式(14)は、全系の小型化及び軽量化を図りつつ、良好な光学性能を得るためのものである。条件式(14)の上限を超えて第1レンズ群L1の正の屈折力が弱くなると、全系が大型化してくるので良くない。
【0045】
条件式(15)は、バックフォーカスと全系の焦点距離の比に関する。条件式(15)は、全系の小型化及び軽量化を図りつつ、良好な光学性能を得るためのものである。また条件式(15)の下限を超えてバックフォーカスが短くなりすぎると、各レンズ群の屈折力が強くなり、高い光学性能を維持するのが困難になる。
【0046】
各実施例において更に好ましくは条件式(4)、(5)、(7)、(8)、(9)、(11)、(12)、(14)、(15)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
νdFPp>66.5 ・・・(4a)
θgFFPp<0.545 ・・・(5a)
−3.00<fFN/fFP<−1.52 ・・・(7a)
νdFNp<29.5 ・・・(8a)
θgFFNp>0.595 ・・・(9a)
νdL1p>67.0 ・・・(11a)
θgFL1p<0.547 ・・・(12a)
f1/f<1.5 ・・・(14a)
sk/f>0.5 ・・・(15a)
各実施例において好ましくは次の構成をとるのが良い。また各実施例において、フォーカシングの際に移動するレンズ群FPは物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力のレンズ(正レンズ)、正の屈折力のレンズ(正レンズ)、負の屈折力のレンズ(負レンズ)より構成されることが好ましい。上述のようにすることで、フォーカシングの際の球面収差の変動を低減することが容易となり、画面周辺まで良好な光学性能を得ることができる。
【0047】
また各実施例において、フォーカシングの際に開口絞りSPは不動であることが好ましい。開口絞りSPを不動にすることで、第1レンズ群L1の光線の入射高さを低くすることができ、全系の小型・軽量化が容易になる。
【0048】
各実施例において、高い光学性能を得るには、フォーカシングの際に開口絞りSPの開口径が可変であることが好ましい。開口絞りSPの開口径を可変にすることで、至近におけるコマフレアの低減が容易となる。フォーカシングに際して移動するレンズ群はレンズ群FNとレンズ群FPであることが良い。特に、各実施例において、フォーカシングの際に移動するレンズ群は2つであることが好ましい。これによれば移動するレンズ群の屈折力が強くなるのを軽減しつつ、製造誤差に対する敏感度が高くなるのを防止するのが容易となる。
【0049】
各実施例の撮像光学系LAは、物体側から像側へ順に配置された、次のレンズ群より構成されている。正の屈折力の第1レンズ群L1、負の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3、負の屈折力の第4レンズ群L4から構成されている。
【0050】
各レンズ群は以下、物体側から像側へ順に次のレンズより構成されている。第1レンズ群L1は両凸形状の正レンズG1、両凸形状の正レンズG2(L1P)、両凹形状の負レンズG3から構成されている。
【0051】
第2レンズ群L2は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズG4、両凹形状の負レンズG5、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズG6(FNp)から構成されている。
【0052】
第3レンズ群L3は、両凸形状の正レンズG7、両凸形状の正レンズG8(FPp)、像側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズG9(FPn)から構成されている。実施例1、3では正レンズG8が正レンズFPpに相当し、実施例2では正レンズG7が正レンズFPpに相当する。
【0053】
第4レンズ群L4は、像側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズG10、両凹形状の負レンズG11から構成されている。無限遠から至近へのフォーカシングに際して、第1レンズ群L1と第4レンズ群L4は不動、第2レンズ群L2は像側へ移動し、第3レンズ群L3は物体側へ移動する。第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の間隔が狭まるように移動する。
【0054】
尚、後述する数値データに示すように本発明に係る撮像光学系LAは焦点距離135mm、撮影画角28度であるので有効画面は対角線長で60mmに達し、ライカ版サイズより大きな有効画面を得ている。又面積の大きな撮像素子を用いて高解像力の画像か得られる一方、ライカ版カメラでアオリ撮影等も容易である。
【0055】
次に、本発明の撮像光学系を用いた一眼レフカメラシステム(撮像装置)の実施例を、図8を用いて説明する。
【0056】
図8において、10は一眼レフカメラ本体、11は本発明による撮像光学系を搭載した交換レンズである。12は交換レンズ11を通して得られる被写体像を受光するフィルムや撮像素子などの記録手段である。13は交換レンズ11からの被写体像を観察するファインダー光学系、14は交換レンズ11で形成された被写体像を記録手段12とファインダー光学系13に切り替えて伝送するための回動するクイックリターンミラーである。
【0057】
ファインダーで被写体像を観察する場合は、クイックリターンミラー14を介してピント板15に結像した被写体像をペンタプリズム16で正立像としたのち、接眼光学系17で拡大して観察する。撮影時にはクイックリターンミラー14が矢印方向に回動して被写体像は記録手段12に結像して記録される。18はサブミラー、19は焦点検出装置である。
【0058】
このように本発明の撮像光学系を一眼レフカメラ等の交換レンズ等の撮像装置に適用することにより、高い光学性能を有した撮像装置を得ている。また、本発明の撮像光学系はクイックリターンミラー14等を有さないミラ−レスの一眼レフカメラでも良いし、レンズ交換式ではない構成のものでも適用できる。
【0059】
次に本発明の撮像光学系の実施例1乃至3に対応する数値データ1乃至3を示す。数値データにおいて、iは物体側から数えた面番号を示す。riは物体側より順に、第i番目のレンズ面の曲率半径、diは第i番目のレンズ厚又は空気間隔、ndiとνdiは第i番目のレンズの材質のd線の屈折率とアッベ数である。間隔が可変のところは物体距離(撮像倍率)が変化したときの値である。
【0060】
又前述の各条件式と実施例1乃至3の関係をそれぞれ表1に示す。表1において「OK」とは条件式を満足することを示す。(絞り)は光束を制限する部材を意味している。焦点距離とFナンバーを示す。半画角は光線追跡値による画角を示す。BFはバックフォーカスである。レンズ全長は無限遠物体にフォーカスしているときの第1レンズ面から像面までの距離である。
(数値データ1)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 82.416 8.48 1.65844 50.9
2 -318.233 0.20
3 51.284 10.91 1.49700 81.5
4 -107.029 2.40 1.91082 35.3
5 111.402 (可変)
6 129.518 1.80 1.83481 42.7
7 33.612 5.21
8 -202.934 1.60 1.65412 39.7
9 32.129 5.35 2.00100 29.1
10 274.715 (可変)
11(絞り) ∞ (可変)
12 115.670 4.69 1.69680 55.5
13 -67.540 0.20
14 66.218 6.45 1.49700 81.5
15 -43.353 1.60 1.85478 24.8
16 -99.522 (可変)
17 -65.005 4.12 1.95375 32.3
18 -34.479 1.95 1.65160 58.5
19 56.191
像面 ∞

各種データ
焦点距離 133.00
Fナンバー 4.05
半画角(度) 14.19
像高 33.63
レンズ全長 183.76
BF 78.33
無限 至近
d 5 4.04 19.81
d10 22.15 6.37
d11 19.94 11.39
d16 4.35 12.89

レンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 104.40
2 6 -71.94
3 11 ∞
4 12 42.19
5 17 -56.59


(数値データ2)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 102.034 8.33 1.59522 67.7
2 -201.968 0.20
3 49.734 11.28 1.59522 67.7
4 -84.997 2.40 1.88300 40.8
5 105.270 (可変)
6 162.022 1.80 1.83481 42.7
7 33.040 5.37
8 -91.966 1.60 1.68893 31.1
9 34.392 5.53 2.00069 25.5
10 -314.937 (可変)
11(絞り) ∞ (可変)
12 192.903 4.67 1.59522 67.7
13 -61.303 0.20
14 70.275 7.18 1.77250 49.6
15 -41.988 1.71 1.85478 24.8
16 -541.177 (可変)
17 -138.637 5.23 1.92119 24.0
18 -32.269 1.60 1.88100 40.1
19 68.318
像面 ∞

各種データ
焦点距離 133.00
Fナンバー 4.05
半画角(度) 14.19
像高 33.63
レンズ全長 182.15
BF 74.66
無限 至近
d 5 4.33 16.86
d10 19.91 7.37
d11 21.57 13.20
d16 4.58 12.96

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 92.99
2 6 -70.11
3 11 ∞
4 12 43.10
5 17 -53.87


(数値データ3)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd
1 96.442 8.21 1.63854 55.4
2 -224.162 0.20
3 52.355 11.24 1.49700 81.5
4 -88.851 2.40 1.83400 37.2
5 134.493 (可変)
6 223.406 1.80 1.83400 37.2
7 35.743 5.13
8 -127.855 1.60 1.62588 35.7
9 36.635 5.25 2.00069 25.5
10 2428.708 (可変)
11(絞り) ∞ (可変)
12 121.669 4.73 1.72916 54.7
13 -64.364 0.20
14 96.103 5.77 1.49700 81.5
15 -44.265 1.60 1.85478 24.8
16 -118.952 (可変)
17 -64.977 3.70 2.00100 29.1
18 -39.374 1.60 1.65160 58.5
19 76.518
像面 ∞

各種データ
焦点距離 133.02
Fナンバー 4.05
半画角(度) 14.19
像高 33.63
レンズ全長 182.61
BF 77.40
無限 至近
d 5 4.23 18.57
d10 21.86 7.52
d11 20.00 10.47
d16 5.67 15.20

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離
1 1 96.08
2 6 -71.99
3 11 ∞
4 12 46.93
5 17 -66.27

【0061】
【表1】
【符号の説明】
【0062】
LA 撮像光学系 L1 第1レンズ群 L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群 L4 第4レンズ群 ML 中間群
RF 後群 SP 開口絞り FN レンズ群 FP レンズ群
FPn 負レンズ FPp 正レンズ FNp 正レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8