特開2018-132784(P2018-132784A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-132784近視制御光学素子及びムスカリン様作用薬を組み込むレンズ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-132784(P2018-132784A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】近視制御光学素子及びムスカリン様作用薬を組み込むレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20180727BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20180727BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20180727BHJP
【FI】
   G02C7/04
   A61K31/46
   A61P27/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-94414(P2018-94414)
(22)【出願日】2018年5月16日
(62)【分割の表示】特願2013-157442(P2013-157442)の分割
【原出願日】2013年7月30日
(31)【優先権主張番号】13/563,322
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】キャレド・シェハーブ
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・エイチ・シェドン・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】シュ・チェン
【テーマコード(参考)】
2H006
4C086
【Fターム(参考)】
2H006BB06
2H006BC07
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB15
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA58
4C086NA10
4C086ZA33
4C086ZC42
(57)【要約】
【課題】 眼用レンズを提供する。
【解決手段】 コンタクトレンズなどの眼用装置は、近視を制御することでも既知である治療薬と組み合わされた、近視制御光学素子を組み込むことにより、各個人での近視の進行を抑制又は阻止するための、薬剤送達機構を作り出すことができる。近視制御光学素子を組み込む、任意数のコンタクトレンズを、アトロピン、硫酸アトロピン一水和物、及び/又はピレンゼピンなどの治療薬と組み合わせることができる。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズであって、
第1の材料から形成され、かつ近視制御光学素子を組み込む、コンタクトレンズと、
前記コンタクトレンズを形成する前記第1の材料に添加されるか又は組み込まれるかの少なくとも一方である混合物中に組み込まれた抗ムスカリン剤と、を含み、前記抗ムスカリン剤が、既定の期間にわたって眼の中に溶出するように構成され、前記抗ムスカリン剤が、硫酸アトロピン一水和物と緩衝生理食塩水の溶液を含み、
前記第1の材料は、ナラフィルコンBを含み、
前記硫酸アトロピン一水和物は、最初の1時間以内に1.8mg以上の累積量、次の1時間以内で2.5mg以上3.8mg以下の累積量、次の9時間に4mg以上の累積量となるプロファイルで硫酸アトロピン一水和物を放出する量で、前記コンタクトレンズに含まれている、眼用レンズ。
【請求項2】
前記第1の材料が、ハイドロゲルを含む、請求項1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
【請求項3】
前記第1の材料が、シリコンハイドロゲルを含む、請求項1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
【請求項4】
前記コンタクトレンズ内に組み込まれる、光発色剤を更に含む、請求項1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
【請求項5】
前記コンタクトレンズが、終日装用レンズを含む、請求項1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
【請求項6】
前記コンタクトレンズが、再使用可能レンズを含む、請求項1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用レンズに関し、より詳細には、近視の進行を、遅延、遅滞、又は防止するように設計された、眼用レンズに関する。本発明の眼用レンズは、アトロピン、硫酸アトロピン一水和物、及びピレンゼピンを含む、ムスカリン様作用薬と組み合わされた近視制御光学素子を含むことにより、近視の進行の制御を改善する効果を作り出す。
【背景技術】
【0002】
近視又は近眼は、像からの光線が網膜に到達する前にそれらの光線が一点に集束する、眼の光学的欠陥若しくは屈折性欠陥である。近視は、一般的には、眼球の軸長が長すぎるか、又は角膜前面が過度に勾配があることにより生じる。近視は、合衆国の人口の33パーセントに至るまで、また世界の一部の地域では、人口の75パーセントに至るまで、影響を及ぼしている。この屈折異常の原因は、不明である。しかしながら、その原因は、遺伝的要因と環境的要因との組み合わせによる可能性が最も高い。マイナスの屈折力の球面レンズを利用して、近視を矯正することができる。このマイナスの屈折力のレンズは、入射光線を発散させることにより、像の焦点を、網膜黄斑上へと後退させる。本明細書に記載されるように、これらの矯正レンズは、近視を処置するが、近視の進行を防止するものではない。
【0003】
特に子供の場合に、近視の進行を遅延若しくは遅滞させるための数多くの方法が提案され、開発されている。これらの方法としては、多焦点レンズの利用、1つ以上の収差が導入されたレンズの利用、収差を制御するレンズの利用、軸外屈折力レンズの利用、角膜の整形、眼の訓練、及び薬理療法若しくは薬剤治療が挙げられる。
【0004】
多焦点レンズ及び収差を有するレンズの使用は、公表された数多くの研究で示されるように、それらのレンズが、装用者の遠方視力を損なう恐れがあり、かつ年齢適合対照群に対して、約30パーセント〜50パーセントの、軸方向の伸長及び屈折の差異の、限定された治療有効性を有し得るという点で、幾分不利であることが判明している。上述の他の方法もまた、角膜の整形に伴うような不快感、及び薬理療法若しくは薬剤治療に伴うような、潜在的に望ましくない副作用を含めた不利点を被る。具体的には、非選択的ムスカリン様作用薬のアトロピンは、近視の処置に有用であることが、数多くの研究で示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、所望の効果を達成すると共に、現在利用可能な治療法の不利点を最小限に抑えるための、1つ以上の個人療法の利益を組み合わせた、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための治療法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の、近視制御光学素子及び選択的若しくは非選択的ムスカリン様作用薬を組み込むコンタクトレンズは、従来技術に関連する数多くの不利点を克服する。
【0007】
一態様によれば、本発明は、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズを目的とする。この眼用レンズは、第1の材料から形成され、かつ近視制御光学素子を組み込む、コンタクトレンズと、そのコンタクトレンズを形成する第1の材料に添加されるか又は組み込まれるかの少なくとも一方である混合物中に組み込まれた抗ムスカリン剤と、を含み、この抗ムスカリン剤は、既定の期間にわたって眼の中に溶出するように構成される。
【0008】
世界中の数億の人々が、自らの眼の屈折異常を矯正するために、眼鏡又はコンタクトレンズなどの矯正レンズを装用する。屈折異常は、角膜の歪み、及び/又は眼球の焦点距離と眼の屈折力との不一致によって引き起こされる。例えば、より急勾配の角膜、又は過度に長い眼球の軸長は近視を引き起こし、より平坦な角膜、又は短い眼球の軸長は遠視を引き起こし、不規則に、又はドーナツ状に湾曲した角膜は乱視を引き起こす。これらの屈折異常に関する、現在の標準的な処置は、コンタクトレンズ又は眼鏡などの矯正レンズの装用を伴う。これらの屈折異常に関する、より積極的な処置としては、レーザーアブレーションを利用する角膜の整形、又は有水晶体眼内レンズの挿入を伴い得ることにより、改善された視力を患者に提供する眼科手術が挙げられる。しかしながら、これらの装置、技術、及び/又は手技は、これらの屈折異常若しくは屈折偏差の症候に対処するのみであって、眼球の軸方向の伸長、及びその後の近視の増大を矯正するものではない。これらの外科的介入はまた、重大な有害事象のリスクをもたらす恐れもある。更には、これらの装置及び/又は技術のうちのいずれかを介した矯正を使用しても、遺伝的影響と、環境的影響、例えば、コンピュータ作業及びビデオゲームを含めた、過度の短焦点活動、並びに屋外活動の欠如とは、眼の成長に対して更なる悪影響を及ぼす恐れがある。換言すれば、近視は、引き続き進展及び/又は悪化する。
【0009】
本発明は、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つを目的とする、アトロピン、硫酸アトロピン一水和物、ピレンゼピンなどの選択的若しくは非選択的薬理学的作用剤、及び/又は同様の機能の化合物と共に、近視制御光学素子、多焦点/二重焦点光学素子、単焦点光学素子、及び/又は乱視用光学素子を組み込む、エタフィルコンAなどのハイドロゲル材料、あるいはナラフィルコンA及び/又はナラフィルコンB、ガリフィルコンA又はセノフィルコンAなどのシリコンハイドロゲル(silicon hydrogel)で作製される、組み合わせコンタクトレンズ製品を目的とする。
【0010】
より具体的には、薬理効果、またそれゆえ患者の承諾の増大、並びに近視制御処置結果の増大を利用するために、上述のものを含めた、数多くの選択的又は非選択的拮抗化合物を、より少なく、より安全な投与量で、例えば、1つのコンタクトレンズ当り、そのレンズの0.002〜0.83重量パーセントに相当する、0.0005〜0.5mgで、近視制御光学素子と組み合わせて使用することができる。本発明のレンズの具体的な有利点は、光学素子と治療薬との相乗効果による、治療有効性の増大であると共に、これらの治療薬が、眼に適用される0.25mgの治療薬に相当する、溶液中0.5パーセントを超える投与量で利用される場合、瞳孔拡張の結果である視覚的アーチファクトが最小限に抑えられるか又は存在しない、許容可能かつ機能的な調節が維持されることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の前述の特徴及び利点、並びに他の特徴及び利点は、以下の添付図面に示されるような、本発明の好ましい実施態様のより詳細な説明から、明らかとなるであろう。
図1A】それぞれ硫酸アトロピン一水和物及びアトロピンの化学構造。
図1B】それぞれ硫酸アトロピン一水和物及びアトロピンの化学構造。
図2】本発明による、ACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標)ブランドのコンタクトレンズ、及び1−DAY ACUVUE(登録商標)MOIST(登録商標)ブランドのコンタクトレンズの双方内の様々な溶媒のグラフ表示。
図3A】本発明による、薬剤装填された1−DAY ACUVUE(登録商標)MOIST(登録商標)ブランドのコンタクトレンズに関する、透過率と波長との関係のグラフ表示。
図3B】本発明による、薬剤装填されたACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標)ブランドのコンタクトレンズに関する、透過率と波長との関係のグラフ表示。
図4A】本発明による、薬剤装填された1−DAY ACUVUE(登録商標)MOIST(登録商標)ブランドのコンタクトレンズ内のリゾチーム吸収のグラフ表示。
図4B】本発明による、薬剤装填されたACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標)ブランドのコンタクトレンズ内のリゾチーム吸収のグラフ表示。
図5】本発明による、薬剤装填された1−DAY ACUVUE(登録商標)MOIST(登録商標)ブランドのコンタクトレンズからの、長期的薬剤放出のグラフ表示。
図6】本発明による、薬剤装填された1−DAY ACUVUE(登録商標)MOIST(登録商標)ブランドのコンタクトレンズからの短期的薬剤放出のグラフ表示。
図7】本発明による、薬剤装填されたACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標)ブランドのコンタクトレンズからの長期的薬剤放出のグラフ表示。
図8】本発明による、薬剤装填されたACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標)ブランドのコンタクトレンズからの短期的薬剤放出のグラフ表示。
図9】本発明による、酸性条件から装填された、ACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標)ブランドのコンタクトレンズ、及び1−DAY ACUVUE(登録商標)MOIST(登録商標)ブランドのコンタクトレンズの双方からの、24時間の期間にわたるアトロピンの累積放出のグラフ表示。
図10A】本発明による、ACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標)ブランドのコンタクトレンズからの、様々な濃度での、硫酸アトロピン一水和物の累積放出のグラフ表示。
図10B】本発明による、1−DAY ACUVUE(登録商標)MOIST(登録商標)ブランドのコンタクトレンズからの、様々な濃度でのアトロピンの累積放出のグラフ表示。
図11A】本発明による、硫酸アトロピン一水和物に浸漬させた、ACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標)ブランドのコンタクトレンズの累積放出のグラフ表示。
図11B】本発明による、硫酸アトロピン一水和物に浸漬させた、1−DAY ACUVUE(登録商標)MOIST(登録商標)ブランドのコンタクトレンズの累積放出のグラフ表示。
図12】近視制御光学素子を含む眼用レンズの図式的表示。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、例えば、近視の進行を有効に遅延又は停止させるための、近視制御コンタクトレンズ内の治療薬、例えばアトロピン及び/又はピレンゼピンの、中濃度〜低濃度、例えばコンタクトレンズの0.25mg/レンズ未満での組み込みに関する。アトロピンは、天然起源のトロパンアルカロイドであり、眼の筋肉内に見出され、かつ瞳孔のサイズ及びレンズの形状の制御に関与する、ムスカリン受容体をブロックすることによって作用する、非選択的抗ムスカリン剤として分類される。アトロピンは、点眼によって、近視の治療に関して有用であることが、研究で実証されている。アトロピンの点眼は、体循環への薬剤の送達、並びに頻脈、体温上昇、及び興奮などの関連する有害効果を、結果としてもたらす。したがって、好ましい送達の方法は、コンタクトレンズを介したものとすることができる。より具体的には、近視の進行を遅延又は停止させるための、アトロピンなどの選択的若しくは非選択的拮抗薬、又は同様の機能の化合物と共に、近視制御光学素子を組み込む、エタフィルコンAなどのハイドロゲル材料、あるいはナラフィルコンA又はナラフィルコンB、ガリフィルコンA又はセノフィルコンAなどのシリコンハイドロゲル(silicon hydrogel)で作製される組み合わせコンタクトレンズ製品である。本質的には、近視制御光学素子と共に、近視制御薬剤を低用量で組み合わせることは、その光学素子又は薬剤のいずれかからの潜在的な副作用が個々に低減された、より多大な治療有効性を結果としてもたらす、望ましい効果を生じさせると考えられる。更には、患者は、この装置の光学素子によって提供される、近視の屈折矯正から恩恵を受けるため、アトロピンなどの薬理学的作用剤の局所滴下と比較して、服薬遵守を改善することができる。
【0013】
本発明の例示的実施形態の説明における、用語を理解することが重要である。例えば、治療薬が1重量パーセントとして記載される場合には、このことは、その溶液中の濃度であり、眼に晒される治療薬の0.5mgに相当し、約30mgの重量のエタフィルコンAレンズに関して、コンタクトレンズ内の1.66重量パーセントの薬剤、又は0.5mg/レンズに相当する。したがって、治療薬が0.5重量パーセントとして記載される場合には、このことは、その溶液中の濃度であり、眼に晒される治療薬の0.25mgに相当し、コンタクトレンズ内の0.83重量パーセントの薬剤、又は0.25mg/レンズに相当し、治療薬が0.01重量パーセントとして記載される場合には、このことは、その溶液中の濃度であり、眼に晒される治療薬の0.005mgに相当し、コンタクトレンズ内の0.016重量パーセントの薬剤、又は0.005mg/レンズに相当する。
【0014】
本発明によれば、アトロピンなどの治療薬は、2つの形態で利用可能であり、すなわち、アトロピン及び硫酸アトロピン一水和物は、テトラヒドロフラン(THF)及び水(1/3、v/v)、エタノール(EtOH)及び水(1/1、v/v)、pH<2を有する酸性水、グリセロール、あるいは好ましくは緩衝生理食塩溶液などの、適切な溶媒又は溶媒系中に溶解させることができる。次いで、この薬剤/溶媒の混合物を、コンタクトレンズ内に組み込むことができる。コンタクトレンズ内に、この薬剤/溶媒を組み込むためには、溶液中に約0.001重量パーセント〜約0.50重量パーセントの範囲の濃度でアトロピン及び/又は硫酸アトロピン一水和物を含む、緩衝生理食塩溶液を有する容器、例えばブリスターパッケージ内に、脱イオン水ですすいだレンズを定置することができる。このブリスターパッケージ内の溶液中に、コンタクトレンズを定置した後、そのブリスターパッケージを封止して、滅菌する。ブリスターパッケージ内のレンズは、約1時間〜約48時間の範囲の期間にわたって薬剤を取り込む。患者の眼の上にコンタクトレンズが定置されると、アトロピン及び/又は硫酸アトロピン一水和物は、所定の期間にわたってレンズから溶出する。レンズを形成する材料、並びにレンズ上に定置される任意の追加的コーティングが、薬剤を取り込む方式の機構及びタイミングを決定する。
【0015】
近視の進行を防止又は遅滞させるために利用することができる、数多くのコンタクトレンズが存在する。例えば、米国特許第7,637,612号(Menezes)では、近視の進行は、正の球面縦収差を提供する少なくとも1つの領域によって取り囲まれる、光学ゾーンの中心に、遠方視力屈折力の区域を有する、多焦点レンズを提供することによって、実質的に防止することができる点が開示される。この少なくとも1つのレンズ領域は、その領域の、レンズの光学中心に最も近い境界から、その領域の最も外側の境界へと移動するにつれて、連続的かつ漸進的に増大する正の球面縦収差を提供する。
【0016】
角膜矯正は、角膜中央部の形状を意図的に変更するように設計されたコンタクトレンズの取り付けの実践である。角膜中央部の曲率を、より平坦化することによって、その角膜の光学的屈折力が減少する。このことは、眼の近視度を低減する効果を有する。特別に設計された剛性のコンタクトレンズを、典型的には、一晩装用し、朝に取り外す。この剛性レンズによって、角膜に対して加えられる圧力が、一時的に角膜中央部を平坦化する。この平坦化により、近視の低減がもたらされるが、この低減は、1日〜3日にわたって徐々に消失する。レンズは、1日〜3日ごとに装用される。角膜矯正レンズを装用する患者は、近視が低減するばかりではなく、近視の進行速度が低減することが、研究により示されている。米国特許出願公開第2010/0328604号(Collinsら)は、角膜矯正処置の前の光学的屈折力から、角膜矯正処置の後の眼の光学的屈折力を差し引くことによって導き出される、角膜トポグラフィー又は眼の波面測定値を使用して設計され、それゆえ近視の進行を遅延させるために利用することができる、レンズを開示している。各レンズは、周縁ゾーンによって更に取り囲まれる周辺ゾーンによって取り囲まれた、中央の光学ゾーンと、患者の目の上に置かれる凹面とを含む。光学ゾーン内の任意の場所でのレンズ屈折力は、角膜矯正処置の前の光学的屈折力から、角膜矯正処置の後の眼の光学的屈折力を差し引いて、そのゾーン内の各場所での光学屈折力を導き出すことによって、導き出される。
【0017】
米国特許出願公開第2010/0195044号(Collinsら)は、近視の進行を遅延又は停止させるための、近方視力及び遠方視力並びに瞳孔径に関する補正係教に従う、波面測定値を使用する、レンズの設計を開示している。この発明では、各レンズは、周縁ゾーンによって更に取り囲まれる周辺ゾーンによって取り囲まれた、中央の光学ゾーンを有する凸面と、患者の目の上に安置される凹面とを含む。光学ゾーン内の任意の場所でのレンズ屈折力は、頂点距離で平均化された波面から導出される屈折力に、各場所での、遠距離平均波面から導出された屈折力と近距離平均波面から導出された屈折力との差、及び頂点の近距離波面から導出された屈折力と頂点の遠距離波面から導出された屈折力との差の、単数倍、偏倍、若しくは倍数から導出される、補正を加えた合計によって説明される。この設計の更なる改良は、瞳孔径に基づき得る。近距離調節レベルに関する自然瞳孔径は、典型的には、遠距離調節レベルに関する自然瞳孔径よりも小さい。それゆえ、中心視覚(軸上)に基づく光学設計に関しては、近距離波面に基づいて眼の成長を制御するために必要とされる光学的屈折力の変化は、近距離波面が測定される際に存在する、より小さい瞳孔に対応する光学ゾーンの直径に制限することができる。この内側中央区域の外側では、光学設計は、遠方視力に関連するものに戻すことができる。
【0018】
米国特許第6,045,578号(Collinsら)は、正の球面収差を誘起することによる、近視の処置及び防止の方法を開示している。近視眼の角膜に、レンズ及び角膜の軸から離れる方向で増大する屈折度数で形成される、外側表面を有するレンズが取り付けられる。レンズの中心部分に入る近軸光線は、対象物の鮮明な像を作り出す網膜上に焦点が合わせられる。角膜の周辺部分に入る周縁光線は、角膜と網膜との間の平面内に焦点が合わせられ、網膜上には、その像の正の球面収差が作り出される。この正の球面収差は、眼の成長を抑制する傾向がある、目に対する生理学的効果を作り出すことにより、眼がより長く成長する傾向を軽減する。
【0019】
米国特許出願公開第2009/0141235号(Collinsら)は、近視及び近視の進行に関連する、眼瞼によって眼に作用する特定の力を、少なくとも部分的に相殺することによって、近視の進行を制御するための手段を開示している。眼瞼の力の分散は、上眼瞼及び下眼瞼の少なくとも一方によって眼に加えられる力の、吸収並びに方向変換の双方を包含する。眼瞼の力の分散は、通常であれば上眼瞼及び下眼瞼の少なくとも一方によって眼に加えられる力を、眼ではなく、その力を吸収するコンタクトレンズに分散させることを含む。眼瞼の力の分散はまた、通常であれば上眼瞼及び下眼瞼の少なくとも一方によって眼に加えられる力を、眼ではない対象物に、また近視に影響を及ぼさない眼の区域に、再分配することも含む。多くの材料特性を活用して、眼瞼の力を分散させることができ、それらの材料特性としては、厚さ、弾性率、ゴム状弾性、空気圧特性、及び水理学的特性が挙げられるが、これらに限定されない。上眼瞼及び下眼瞼によって眼に加えられる力を分散させることは、全体的にレンズを厚くすることによって、又は1つ以上の既定領域内でレンズを厚くすることによって、達成することができる。レンズを厚くすることに対する代替案は、同じく局部的若しくは全体的に、又は1つ以上の既定領域内で、レンズ材料の弾性率を変更することである。このレンズ材料の弾性率は、より高い値、又はより低い値に変更される。
【0020】
米国特許第5,448,312号(Roffmanら)は、視覚系によって同時に見ることが意図される、遠方視力及び近方視力に関する同心性の球面環状ゾーンからなる、多焦点コンタクトレンズの設計を開示している。近距離ゾーンの存在により、近距離の対象物に眼の焦点を合わせることを可能にするための、装用者の調節労力が、実質的に低減される。
【0021】
米国特許第7,625,086号(Wooleyら)は、視覚系によって同時に見ることが意図される、遠方視力及び近方視力に関する同心性の球面環状ゾーンからなる、多焦点コンタクトレンズの設計並びに方法を開示している。近距離ゾーンの存在により、近距離の対象物に眼の焦点を合わせることを可能にするための、装用者の調節労力が、実質的に低減される。
【0022】
上述のように、近視の進行を防止又は遅延させるための、治療薬と組み合わせて利用することができる、数多くのコンタクトレンズの設計が存在する。以下に記載される実験は、アトロピン及び/又は硫酸アトロピン一水和物などの薬剤を、コンタクトレンズ内に組み込むことの実現可能性を示すものである。薬剤は、通常、近視制御光学素子を含むコンタクトレンズ内に装填されるが、以下で説明される実験は、薬剤装填の様々なパラメータ及び結果を実証するために、2つの異なるタイプのレンズを利用する。利用される2つのタイプのレンズは、ACUVUE(登録商標)TrueEye(登録商標)ブランドのコンタクトレンズ(ATE)、及び1−DAY ACUVUE(登録商標)MOIST(登録商標)ブランドのコンタクトレンズ(1DAM)である。ATEレンズは、シリコーンハイドロゲルポリマーのナラフィルコンBを含み、1−DAYレンズは、高含水イオン性ハイドロゲルポリマーのエタフィルコンA、及びポリビニルピロリドン(PVP)を含む。実験で利用する、硫酸アトロピン一水和物及びアトロピンの双方の化学構造を、それぞれ図1A及び図1Bに示す。257nmでの紫外分光光度法を利用して、全てのサンプルを解析した。
【0023】
アトロピン及び/又は硫酸アトロピン一水和物をコンタクトレンズ内に装填するための、好適な溶媒を決定するために、アトロピン及び/又は硫酸アトロピン一水和物を溶解させることが既知である様々な溶媒中での膨潤を実行した。水が好適な溶媒である点に留意することが重要である。しかしながら、代替の溶媒中に装填し、かつ/又は代替の溶媒を利用することが必要な場合がある。レンズは、緩衝剤中での保管の結果として存在する、あらゆる塩を除去するために、水中で3日間、水を3回交換して洗浄した。次いで、それらのレンズを、37度Cのオーブン内で48時間乾燥させ、秤量した。各レンズに対して、3回の反復を実行した。上述のものを含めた、様々な溶媒中で、レンズを膨潤させ、この膨潤期間の後にレンズの膨潤質量を測定することによって、溶媒の取り込みを判定した。以下に記載される等式に基づいて、溶媒含有量を判定した。
【数1】
【0024】
2つの薬剤、アトロピン(AT)及び硫酸アトロピン一水和物(ATSM)の概算の溶解度を、様々な溶媒中で評価した。本質的には、所定の溶媒を既知の量の薬剤に徐々に添加して、概算の溶解度を判定した。
【0025】
この膨潤検査及び溶解度検査に基づいて、エタノール/水、及びTHF/水(1:3v/v)を使用して、それぞれ、ATSM及びATをレンズ内に装填した。装填に関しては、膨潤検査でのように、レンズを水中で洗浄し、乾燥させた。乾燥したレンズを秤量して、以下の表1に示す装填溶液中に定置した。4度Cで、48時間の間、レンズを薬液中に維持した。装填に続いて、レンズを乾燥させ、再び秤量することにより、取り込まれた薬剤の量を判定した。種々の装填溶液に関する、レンズ内に取り込まれた薬剤の量を、1DAMレンズに関する以下に記載の表2、及びATEレンズに関する以下に記載の表3で要約する。1DAMレンズ内に、著しく高い濃度で装填された硫酸アトロピン一水和物を除き、装填方法に関わりなく、2つのレンズのタイプ内に、同様の量が装填されたことに留意されたい。しかしながら、ある程度は、後により詳細に説明されるように、装填方法を使用して、レンズ内の薬剤の量を制御することができる。
【表1】
【表2】
【表3】
【0026】
薬剤装填されたレンズは、薬剤の存在に伴う、レンズ特性及びレンズ相互作用の変化が、存在するか否かを判定するために、透明度及びリゾチーム吸着に関して特徴付けた。透明度に関しては、350〜700nmの分光光度法で、吸光度を測定した。125−I標識リゾチームを使用して、タンパク質吸着測定を実行した。タンパク質吸着は、薬剤放出の0時間後、2時間後、及び8時間後に判定した。透過型電子顕微鏡法、すなわちTEM解析もまた、マトリックス内の薬剤分散を評定するために実行した。
【0027】
5つの薬剤装填レンズを全て同時に、1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に定置し、34度Cで振盪水浴中に定置した。一定の間隔でサンプルを採取し、新しいPBSに取り替えた。放出サンプルを分光光度法で解析し、濃度を判定した。同様に、ピークの性質もまた試験して、対照サンプル(適切な緩衝溶液中に新しく調製された薬剤)と比較して何らかの変化が存在するか否かを判定した。単純に又は容易に制御条件を変化させることによって、薬剤の放出速度を変更することが可能であるか否かを判定するために、薬剤の装填及び放出を種々の装填濃度を使用して制御した。様々な薬剤濃度を試験した。ATEレンズの場合には、表4に記載されるように様々な濃度での水中ATSMを試験又は利用した。1DAMの場合には、様々な濃度での、エタノール及び水(1:1)中ATを試験又は利用した。ATEレンズからのATSMの放出に関しては、装填溶液からレンズを取り出してすすぐことにより、緩く物理吸着した薬剤を除去した。1DAMレンズに関しては、レンズを乾燥させて、あらゆる残留エタノールを除去し、放出検査の前に再水和させた。
【表4】
【0028】
更には、薬剤の放出に関しては、反復を基本としてレンズを使用することが望ましい場合がある。したがって、ATEレンズに薬剤を装填して枯渇させ、次いで、反復を基本として再装填し、単一の放出の後に、放出の動態学が同様のものとなるか否かを判定した。第2の装填は、4度Cで一晩、250mg/mLのATSM水溶液中で実施した。装填されたレンズを、PBS中に浸漬して、緩く吸着したあらゆる薬剤を除去し、次いで、37度CでPBS中に放出させた。
【0029】
溶媒含有量検査の結果を、図2に示す。この図に示し得るように、1DAMレンズは、エタノール中及び水中の双方で、良好に膨潤する一方で、シリコーン含有量に基づけば、驚くことではないが、ATEレンズは水中での適度の膨潤と共に、THF中及びエタノール中の双方で良好な膨潤を示す。
【0030】
溶解度の結果を、以下の表5に記載する。この2つの形態のアトロピンの溶解度には、明確な差異が存在し、双方の薬剤を溶解させる明確な傾向を示す溶媒は存在しない。留意点として、硫酸塩一水和物の形態の薬剤は、全般的な溶媒中で、特に水性溶媒中で、遙かに高い溶解度を示す一方で、未修飾形態の薬剤は、THF及びエタノール中で、より可溶性である。グリセロールは、良好な薬剤溶解度を示したが、この溶媒は、レンズからの最終的な除去が困難であることが明らかであり、それゆえ使用しなかったことに留意されたい。薬剤装填に関しては、高い膨潤の必要性と、所望の薬剤溶解度とのバランスを保つために、THFと水、及びエタノールと水(1:3、v/v)の混合物を利用した。
【表5】
【0031】
図3A及び図3Bに要約される透明度の結果は、対照と比較して、種々の薬剤溶媒の組み合わせで装填された場合の、いずれのレンズ材料の透明度の変化も実証するものではない。それゆえ、アトロピン又は硫酸アトロピン一水和物のいずれの存在も、レンズ材料の透明度に悪影響を及ぼすものではないことが明らかである。しかしながら、酸性溶液を使用してATEレンズに装填した場合に、若干の透明度の減少が存在した点に留意することが重要である。
【0032】
タンパク質(リゾチーム)吸着の結果を、図4A及び図4Bに示す。驚くことではないが、1DAMレンズは、全般的に、ATEレンズよりも多くのタンパク質を取り込んだ。試験された装填方法に応じて、薬剤の存在に伴い、タンパク質吸着に一部の若干の変化が存在した。例えば、1DAMレンズは、エタノール溶液又は酸性溶液中のいずれかで装填された場合、リゾチーム吸着の減少を初期に示したが、そのレンズに関連するリゾチームの濃度は、薬剤の放出と共に増大した。全ての放出時間で、かつ全ての装填方法で、対照と比較して、ATEレンズに関連するタンパク質の濃度が増大する傾向が存在した。この時点では、これらの増大が、装填溶媒への曝露の結果であったのか、又は薬剤の存在によるものであったのかは不明である。アトロピン及び硫酸アトロピン一水和物の存在に伴い、1DAMレンズでは、若干の差異が存在するが、それらの差異は比較的小さく、溶媒に依存するものと思われる。しかしながら、ATEレンズでは、全般的に、薬剤が存在する場合には、取り込まれるリゾチームの増大が存在し、この増大は、全ての放出時間で観察される。
【0033】
全てのサンプルの、透過型電子顕微鏡法、すなわちTEM解析が、マトリックス内部での薬剤粒子の均一な分散を実証した点に留意することが重要である。
【0034】
薬剤放出濃度を確立するために、5つの薬剤装填レンズを、1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中に定置し、34℃で振盪水浴中に定置した。この1mL溶液を一定の間隔で採取し、新しいPBS溶液に取り替えた。溶液のサンプルを分光光度法で解析し、放出された薬剤の濃度を判定した。
【0035】
図5は、1DAMレンズからの、AT及びATSMの緩慢な若しくは非突発的な放出を示し、図6は、1DAMレンズからの、AT及びATSMの突発的期間の放出を示す。1DAMレンズからの放出に関して、図5に示される結果は、より親水性のATSM分子が、より迅速に、より大量に放出されることを実証する。測定可能な放出は、60時間を超える期間にわたって発生した。全ての場合の放出は、急速な突発の後に続く、比較的緩慢な漸進的放出によって、典型的に表されるものであった。
【0036】
図7は、ATEレンズからの、AT及びATSMの緩慢な若しくは非突発的な放出を示し、図8は、ATEレンズからの、AT及びATSMの突発的期間の放出を示す。図7に示されるように、1DAMレンズと比較して、幾分低いATSMの放出速度が、ATEレンズを利用して達成された。換言すれば、薬剤装填がほぼ同じであるという事実にも関わらず、ATEレンズからは、より少ない量の薬剤が放出されたことを、図の比較から認めることができる。更には、初期の小さい突発の後、ATEレンズからの、全ての分子の比較的一定の放出が達成されており、ATEレンズが殆ど同じ量のAT及びATSMを取り込んだという事実にも関わらず、放出は、終日装用の期間にわたる、より緩慢なものであった。
【0037】
薬剤装填の増大/レンズからの放出の制御の手段として、強酸性溶液を試験した。HCl中25mg/mLの溶液内で装填されたATの放出に関して、結果を示す。放出は、この装填によって、比較的影響されることがなく、それゆえ、このことが、放出の動態学を変更する有効な方法である可能性が低いことを認めることができる。この場合の放出は、恐らくは、レンズの表面上の薬剤の結晶化による、極めて激しい突発によって特徴付けられた。2つのレンズタイプ間には、実質的な差異が存在しなかった。
【0038】
図10Aは、250mg/mL〜10mg/mLの装填溶液濃度での、ATEレンズからのATSMの放出速度を示し、一方で図10Bは、20mg/mL〜5mg/mLの装填溶液濃度での、1DAMレンズからのATの放出速度を示す。装填濃度を変更する単純な技術を使用して、アトロピン及び硫酸アトロピン一水和物の放出速度を制御することが可能である点を、図10A及び図10Bから認めることができる。明らかに、単純な変更によって、比較的容易に眼内での生理学的に適切な濃度の獲得を達成することができる。
【0039】
上記で簡潔に述べたように、1日に1回滴下される、0.5パーセントのアトロピン液滴は、近視の進行を遅延させる有効性を示す。50μLの液滴体積、及び各導入で1滴が滴下されると想定すると、毎日の、各眼の中に滴下されるアトロピンの対応する量は、約0.5mgである。しかしながら、この体積の95パーセントまでもが、全ての液滴の滴下と同時に失われる。更には、80パーセントもの薬剤が、コンタクトレンズから送達される際に失われる点もまた、想定することができる。それゆえ、これらの想定に基づくと、合計0.0005〜0.50mgの薬剤が、コンタクトレンズから送達されなければならない。それゆえ、このレンズから放出される量は、アトロピンを使用する処置に関して適切であることが明らかである。
【0040】
ATEレンズ及び1DAMレンズからの、ATSM溶液中での膨潤を伴う、数日間の期間にわたるコンタクトレンズからの放出を、それぞれ、図11A及び図11Bに示す。明らかに、双方の場合で、レンズは、アトロピンの溶液中で膨潤し、薬剤を放出することができる。このことは、薬剤を送達する、潜在的に適切な方法とすることができる。
【0041】
これらの実験の結果に基づくと、終日装用コンタクトレンズからの、アトロピン及び硫酸アトロピン一水和物の双方の放出は、薬剤を送達する有望な方法を表すと考えられる。試験された終日装用レンズの双方の変型からの、薬剤放出の動態学を調節することにより、放出媒体中の薬剤の、治療的に適切な濃度をもたらすことが可能である。UV解析によって示されるような、取り込み及び放出に伴う薬剤の化学構造の変化は、存在しなかった。しかしながら、恐らくは、最も興味深い結果は、その後の水溶液中での膨潤で、レンズによって取り込まれ、同じ動態学で放出される薬剤の能力であった。このことにより、再使用可能レンズからの放出もまた可能であり得ることが示唆される。換言すれば、患者は、治療薬の溶液を与えられることにより、所定の期間コンタクトレンズを浸漬させ、次いで、そのレンズを再使用することができる。
【0042】
上述のように、米国特許第7,637,612号(Menezes)は、近視制御光学素子を有するレンズを説明している。図12は、Menezesの例示的なレンズを示す。
【0043】
図12は、光学ゾーン1202及び非光学的レンズ状ゾーン1204を有する、レンズ1200を示す。光学ゾーン1202は、中央ゾーン1206及び周辺ゾーン1208を含む。中央ゾーン1206は、レンズの光軸に中心が配置されており、レンズの光学中心から測定される、約0.5〜2mmの、好ましくは、約1〜1.5mmの半径を有する。中央ゾーン1206内部の屈折力は、実質的に一定の遠方視力屈折力であり、約−0.50ジオプター〜約−12.00ジオプターである。周辺ゾーン1208内の、正の屈折力の追加により、装用者の遠方視力を矯正するために必要な屈折力に追加される屈折力を意味する、遠方視力屈折力に関する過剰矯正を、中央ゾーン1206内に提供することが、望ましい場合がある。この過剰矯正の量は、中央ゾーン1206の直径、及び提供される正の球面収差の大きさに応じて変化する。しかしながら、典型的には、この過剰矯正は、約0.25〜約1.00ジオプターである。
【0044】
周辺ゾーン1208は、最も内側の境界1210、すなわちレンズの光学中心に最も近い境界から、周辺ゾーン1208の最も外側の境界1212へと移動するにつれて、連続的かつ漸進的に増大する、正の球面縦収差を提供する。周辺ゾーン1208内の球面縦収差の増大は、レンズの光学中心から約2.5mmの半径で、約0.25〜約2ジオプターとすることができ、好ましくは、約0.5〜約1.50ジオプターである。周辺ゾーン1208は、約0.5〜約3.5mmの、好ましくは、約1〜約2mmの幅を有し得る。
【0045】
図12に示すように、中央ゾーン1206及び周辺ゾーン1208は、それらの間に不連続接合部を有するゾーンである。代替的実施形態では、実質的に一定の遠方視力屈折力と正の球面縦収差との間には、不連続接合部が存在せず、実質的に一定の遠方視力屈折力、及び正の球面縦収差の双方が1つのゾーンを形成する。
【0046】
本発明のレンズを設計する際、正の球面縦収差は、装用者の眼球の収差の矯正を超えて導入される。それゆえ、本発明の目的上、好ましくは、レンズ装用者の球面収差が最初に決定され、次いで、その収差の矯正に必要な球面収差が提供される。あるいは、0.1D/mmなどの、母集団平均を、球面収差に関して使用することができる。球面収差は、任意の既知で簡便な方法によって測定することができ、その方法としては、市販の収差計の使用によるものが挙げられるが、これに限定されない。
【0047】
数多くの数学関数のうちのいずれかを使用して、本発明のレンズの光学ゾーンを設計することができ、それらの数学関数としては、球面、非球面、スプライン、円錐曲線、多項式などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、中央ゾーンは、好ましくは球面であり、中央ゾーンと周辺ゾーンとの間には円滑な移行が存在する。そのような円滑な移行は、大きさ並びに一次導関数及び二次導関数が連続的である、数学関数を使用することによって、確実にすることができる。
【0048】
アトロピン、硫酸アトロピン一水和物、及びピレンゼピンが本明細書で説明されるが、抗ムスカリン剤のクラスの他の薬剤を利用することもできる。例えば、ラセアニソダミン、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、テレンゼピン、ヌベンゼピン、及びリスペンゼピンを含めた、他の抗ムスカリン剤を、本発明に従って利用することができる。更には、他のクラスの薬剤又は治療薬、例えば、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、キンピロール、及びレボドパを含めた、ドーパミン作用薬もまた、本発明に従って利用することができる。
【0049】
上述の発明は、近視の進行の制御を増強するための相乗効果を作り出す、アトロピン及び硫酸アトロピン一水和物を含めた、ムスカリン様作用薬と組み合わされた、近視進行光学素子を含む、眼用レンズ、具体的にはコンタクトレンズを目的とする。しかしながら、眼用レンズ、具体的にはコンタクトレンズを利用して、多様な治療薬を送達することができる点に留意することが重要である。例えば、このコンタクトレンズは、数多くの疾病及び疾患の処置、抑制、並びに防止のうちの1つ以上のための、様々な製剤、薬品、及び/又は活性薬剤を送達するように構成することができる。このコンタクトレンズを使用して、硫酸アトロピン、ホマトロピン、スコポラミンHBr、シクロペントレートHCl、トロピカミド、及びフェニレフリンHClを含めた、散瞳薬並びに毛様体筋麻痺薬を送達することができる。このコンタクトレンズは、アレルギーの処置、抑制、及び防止のうちの1つ以上のための、アゼラスチンHCl、二フマル酸エメダスチン、エピナスチンHCl、フマル酸ケトチフェン、レボカバスチンHCl、オロパタジンHCl、マレイン酸フェニラミン、及びリン酸アンタゾリンを送達するように、構成することができる。このコンタクトレンズを使用して、肥満細胞安定化剤、例えば、クロモリンナトリウム、ロドキサミドトロメタミン、ネドクロミルナトリウム、及びペルミロラストカリウムを送達することができる。このコンタクトレンズを使用して、リン酸デキサメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、フルオロメタロン、酢酸フルオロメタロン、エタボン酸ロテプレドノール、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、メドリゾン、リメキソロン、及びフルオシノロンアセトニドを含めた、コルチコステロイドを送達することができる。このコンタクトレンズを使用して、フルルビプロフェンナトリウム、スプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ケトロラクトロメタミン、シクロスポリン、ラパマイシンメトトレキサート、アザチオプリン、及びブロモクリプチンを含めた、非ステロイド性抗炎症剤を送達することができる。このコンタクトレンズを使用して、トブラマイシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、スルフイソキサゾロンジオラミン、スルファセタミドナトリウム、バンコマイシン、ポリミキシンB、アミカシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、スルフイソキサゾールジオラミン、スルファセタミドナトリウムテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ジクロキサシリン、セファレキシン、アモキシシリン/クラブラン酸、セフトリアキソン、セフィキシム、エリスロマイシン、オフロキサシン、アジスロマイシン、ゲンタマイシン、スルファジアジン、及びピリメタミンを含めた、抗感染症剤を送達することができる。このコンタクトレンズを使用して、ジピベフリンを含めた、エピネフリン;アプラクロニジン及びブリモニジンを含めた、α−2アドレナリン受容体;ベタキソロール、カルテオロール、レボブノロール、メチプラノロール、及びチモロールを含めた、β遮断剤;カルバコール及びピロカルピンを含めた、直接縮瞳剤;フィゾスチグミン及びエコチオフェートを含めた、コリンエステラーゼ阻害剤;アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミド、及びメタゾラミドを含めた炭酸脱水酵素阻害剤;ラタノプロスト、ビマトプロスト、ウラボプラスト、ウノプロストーンシドフォビル、及びトラボプロストを含めた、プロスタグランジン並びにプロスタミドを含めた、緑内障の処置、抑制、及び防止のうちの1つ以上のための薬剤を送達することができる。このコンタクトレンズを使用して、ホミビルセンナトリウム、ホスカルネットナトリウム、ガンシクロビルナトリウム、バルガンシクロビルHCl、トリフルリジン、アシクロビル、及びファムシクロビルを含めた、抗ウイルス剤を送達することができる。このコンタクトレンズを使用して、テトラカインHCl、プロパラカインHCl、プロパラカインHCl及びフルオレセインナトリウム、ベノキシネート及びフルオレセインナトリウム、並びにベノキシネート及びフルオレクソンジナトリウムを含めた、局部麻酔剤を送達することができる。このコンタクトレンズを使用して、フルコナゾール、フルシトシン、アンホテリシンB、イトラコナゾール、及びケトカオナゾールを含めた、抗真菌剤を送達することができる。このコンタクトレンズを使用して、アセトアミノフェン及びコデイン、アセトアミノフェン及びヒドロコドン、アセトアミノフェン、ケトロラク、イブプロフェン、並びにトラマドールを含めた、鎮痛剤を送達することができる。このコンタクトレンズを使用して、塩酸エフェドリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン、及びオキシメタゾリンを含めた、血管収縮剤を送達することができる。このコンタクトレンズを使用して、ビタミンA、D、及びビタミンE、ルテイン、タウリン、グルタチオン、ゼアキサンチン、脂肪酸などを含めた、ビタミン、酸化防止剤、並びに栄養補助食品を送達することができる。
【0050】
このコンタクトレンズは、本明細書で説明される治療薬のいずれかに関連し得る、あらゆる潜在的な、明るい光の視覚障害を低減するように機能する、追加的な材料又は薬剤を組み込むことができる点に、留意することが重要である。例えば、光発色剤をレンズ内に組み込むことにより、明るい光の視覚障害を低減することができる。別の例示的な代替的実施形態では、中性フィルター染料をレンズ内に組み込むことにより、明るい光の視覚障害を低減することができる。
【0051】
最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものが、図示及び説明されるが、説明及び図示される特定の設計並びに方法からの逸脱は、当業者には自ら想到されるものであり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用することができる点が明らかである。本発明は、説明及び図示される特定の構成に制約されるものではなく、添付の特許請求の範囲に含まれ得る全ての改変と一致するように構成されるべきである。
【0052】
〔実施の態様〕
(1) 近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズであって、
第1の材料から形成され、かつ近視制御光学素子を組み込む、コンタクトレンズと、
前記コンタクトレンズを形成する前記第1の材料に添加されるか又は組み込まれるかの少なくとも一方である混合物中に組み込まれた抗ムスカリン剤と、を含み、前記抗ムスカリン剤が、既定の期間にわたって眼の中に溶出するように構成される、眼用レンズ。
(2) 前記第1の材料が、ハイドロゲルを含む、実施態様1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
(3) 前記第1の材料が、シリコンハイドロゲル(silicon hydrogel)を含む、実施態様1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
(4) 前記抗ムスカリン剤が、アトロピンを含む、実施態様1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
(5) 前記抗ムスカリン剤が、硫酸アトロピンを含む、実施態様1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
【0053】
(6) 前記抗ムスカリン剤が、ピレンゼピンを含む、実施態様1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
(7) 前記抗ムスカリン剤混合物が、緩衝生理食塩溶液中に溶解されたアトロピンを含む、実施態様4に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
(8) 前記抗ムスカリン剤混合物が、緩衝生理食塩溶液中に溶解された硫酸アトロピンを含む、実施態様5に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
(9) 前記抗ムスカリン剤混合物が、緩衝生理食塩溶液中に溶解されたピレンゼピンを含む、実施態様6に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
(10) 前記コンタクトレンズ内に組み込まれる、光発色剤を更に含む、実施態様1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
【0054】
(11) 前記コンタクトレンズ内に組み込まれる中性フィルター染料を更に含む、実施態様1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
(12) 前記コンタクトレンズが、終日装用レンズを含む、実施態様1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
(13) 前記コンタクトレンズが、再使用可能レンズを含む、実施態様1に記載の、近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズ。
(14) 近視の進行の抑制、防止、及び/又は制御のうちの少なくとも1つのための眼用レンズであって、
第1の材料から形成され、かつ近視制御光学素子を組み込む、コンタクトレンズと、
前記コンタクトレンズを形成する前記第1の材料に添加されるか又は組み込まれるかの少なくとも一方である混合物中に組み込まれたドーパミン作用薬と、を含み、前記ドーパミン作用薬が、既定の期間にわたって眼の中に溶出するように構成される、眼用レンズ。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12