(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-1329(P2018-1329A)
(43)【公開日】2018年1月11日
(54)【発明の名称】ねじ締付装置用緩衝器
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20171208BHJP
【FI】
B23P19/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-130765(P2016-130765)
(22)【出願日】2016年6月30日
【新規性喪失の例外の表示】申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】315008902
【氏名又は名称】有限会社サワ
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】澤村 捷郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ねじ部材がワーク部材に接触することによって生じるドライバビットに対する外力による衝撃を吸収するねじ締付装置用の緩衝器を提供する。
【解決手段】第1部材11が弾性部材13の電動ドライバ側の第1端部131に当接する当接部112を有し、第2部材12が弾性部材13のドライバビット側の第2端部132を支持する支持部122と、ドライバビットを把持可能な把持孔123とを有し、弾性部材13が当接部112と支持部122との間において、第2部材12を第1部材11から離間する方向に付勢する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ドライバと該電動ドライバによって回転駆動されるドライバビットとを備えるねじ締付装置用の緩衝器であって、
前記ドライバビットの回転軸方向に挿入孔が穿設された第1部材と、
前記挿入孔にその内周面に沿って前記回転軸方向に摺動可能に内挿される摺動部を有する第2部材と、
前記第1部材及び前記第2部材のうち少なくとも前記第2部材の外周面に配置される弾性部材と、
前記回転軸と同軸に設けられ前記第1部材と前記電動ドライバとを着脱可能に連結する連結軸とを備え、
前記第1部材が前記弾性部材の前記電動ドライバ側の第1端部に当接する当接部を有し、
前記第2部材が前記弾性部材の前記ドライバビット側の第2端部を支持する支持部と、前記ドライバビットを把持可能な把持孔とを有し、
前記弾性部材が前記当接部と前記支持部との間において、前記第2部材を前記第1部材から離間する方向に付勢する
緩衝器。
【請求項2】
前記第2部材の前記回転軸方向の相対的移動距離に基づき前記ドライバビットに対する外力を検出する検出機構を備える請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記当接部が、前記弾性部材の前記第1端部の位置を調整可能であるように前記回転軸方向に移動自在に配設される請求項1又は請求項2に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性部材を有する緩衝器に関し、特に、ドライバビットの先端に保持されたねじ部材をワーク部材に締め付けるためのねじ締付装置用の緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の組み立てを行う自動組み立てラインにおいて、多数の同一構造のワーク部材にねじ部材を締め付けるために、ねじ締付装置が用いられる。ねじ締付装置は、通常、電動ドライバと、電動ドライバに連結されるドライバビットと、ドライバビットに接続されるねじ保持器とを備え、ロボットアームの先端部に取付ステーを介して設置される。このようなねじ締付装置では、設計データから算出したねじ穴位置のデータに基づき、ねじ保持器によってねじ部材を真空吸引したドライバビットを、ワーク部材に設けられたねじ穴の真上に移動させ、ねじ部材がねじ穴と噛み合う程度の直上に配置したとき、ドライバビットを下降させながらねじ締付軸回り方向に回転させることによって、ねじ部材をワーク部材に締め付ける。
【0003】
しかしながら、例えば、算出したねじ穴位置データとワーク部材の寸法公差等が原因で、ドライバビットがねじ部材を配置する位置と実際のねじ穴位置との間にズレが生じてしまうことにより、ねじ締付が正常になされないことがある。このような場合、つまりねじ部材のねじ穴位置で「浮き上がり」が生じた場合、ねじ部材が所定のねじ穴位置以外の位置でワーク部材に接触することで生じるドライバビットに対する外力による衝撃によって、ドライバビット、ねじ保持器、ロボット、ワーク部材等が破損することがあり、修理や交換のために自動組み立てラインが中断してしまうおそれがある。
【0004】
従来、このような不都合を回避するためのねじ締付装置として、
図3に示すように、ロボットアームと電動ドライバとの間にスプリング(又はエアシリンダー)を用いた緩衝機構を設ける構成のものが知られている。このような構成のねじ締付装置は、ねじ部材の浮き上がりによって生じるドライバビットに対する外力による衝撃を緩衝することができる。しかしながら、ロボットアームや電動ドライバの形状はメーカー毎に異なるため、それぞれのねじ締付装置に対応した専用の緩衝機構を設置する必要があり、費用と時間を要するといった問題がある。
【0005】
このため、近年では、例えば特許文献1に示されるように、電動ドライバとドライバビットとの間に、ドライバビットを内挿するビット受け穴を有する被駆動軸を設け、このビット受け穴の底部とビットの底面部との間に弾性部材を介在させる構成の緩衝機構を有するねじ締付装置が提案されている。特許文献1に記載のねじ締付装置は、ロボットアームと電動ドライバとの間にスプリングやエアシリンダーを用いた緩衝機構を設置するのではなく、電動ドライバとドライバビットとの間に弾性部材を配置するという発想に基づき、緩衝機構のコンパクト化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−096296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の緩衝機構は、ドライバビット自体が弾性部材321に当接してこれを支持する構造であるので、ドライバビット33に対して上向きの外力がかかるとドライバビット33が軸方向に上下移動するため、ドライバビットが安定せず、その緩みでいわゆるガタが発生するという問題がある。また、弾性部材321は、被駆動軸31に設けられたビット受け穴内に配置されるため、その動作力(付勢力)や劣化の度合いを目視で確認することができず、調整や交換等が容易ではない。
【0008】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、ねじ締付装置用の緩衝器であって、ねじ部材がワーク部材に接触することによって生じるドライバビットに対する外力による衝撃を吸収することにより、ドライバビット、ねじ保持器、ロボット、ワーク部材等の破損を防ぐことができるとともに、コンパクトで取り扱いが容易な緩衝器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、電動ドライバと該電動ドライバによって回転駆動されるドライバビットとを備えるねじ締付装置用の緩衝器であって、前記ドライバビットの回転軸方向に挿入孔が穿設された第1部材と、前記挿入孔にその内周面に沿って前記回転軸方向に摺動可能に内挿される摺動部を有する第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材のうち少なくとも前記第2部材の外周面に配置される弾性部材と、前記回転軸と同軸に設けられ前記第1部材と前記電動ドライバとを着脱可能に連結する連結軸とを備え、前記第1部材が前記弾性部材の前記電動ドライバ側の第1端部に当接する当接部を有し、前記第2部材が前記弾性部材の前記ドライバビット側の第2端部を支持する支持部と、前記ドライバビットを把持可能な把持孔とを有し、前記弾性部材が前記当接部と前記支持部との間において、前記第2部材を前記第1部材から離間する方向に付勢する緩衝器を提供する(発明1)。
【0010】
ロボットアームと電動ドライバとの間にスプリング(又はエアシリンダー)を設ける構成の緩衝機構は、ロボットアームや電動ドライバの形状に対応した専用の緩衝機構として製造する必要があり、費用と時間を要する。かかる発明(発明1)によれば、ねじ部材がワーク部材に接触することによって生じるドライバビットに対する外力による衝撃を吸収することができることに加え、電動ドライバとドライバビットとの間に配置する構成であることにより、緩衝器のコンパクト化が実現されるので、製造や設置に要する費用と時間を削減することができる。また、摺動部を有する第2部材が、弾性部材のドライバビット側の端部を支持するとともにドライバビットを把持する構造であるので、外力がかかった場合でもドライバビットに緩みが生じることがないため、機械的なガタが発生せず、安定してねじ締付作業を行うことができる。さらに、弾性部材が、第1部材及び第2部材のうち少なくとも摺動部を有する第2部材の外周面に配置されるため、その動作力(付勢力)や劣化の度合いを目視で簡単に確認することができるので、調整や交換等を容易に行うことができる。
【0011】
なお、本発明においてねじ部材とは、螺旋状にねじ山の刻まれた軸部と軸部よりも径の太い頭部からなる一般にねじと呼ばれる固着具のみならず、ボルト、リベット、釘等の平面視円形又は多角形の頭部及び頭部の中心から延設された棒状の軸部を有する部品全般を含む概念である。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記第2部材の前記回転軸方向の相対的移動距離に基づき前記ドライバビットに対する外力を検出する検出機構を備えることが好ましい(発明2)。
【0013】
かかる発明(発明2)によれば、検出機構によって、第2部材の回転軸方向の相対的移動距離を測定することができるので、この測定値を検出データとして利用することで、例えば、所定以上の外力がドライバビットにかかった場合には、ねじ締付装置を停止させることにより故障を防いだり、ドライバビットの位置を微調整することによりドライバビットを実際のねじ穴に追従させたりすることが可能となる。
【0014】
上記発明(発明1,2)においては、前記当接部が、前記弾性部材の前記第1端部の位置を調整可能であるように前記回転軸方向に移動自在に配設されることが好ましい(発明3)。
【0015】
かかる発明(発明3)によれば、弾性部材の第1端部の位置を調整することにより、弾性部材が第2部材に及ぼす付勢力を調節することができるので、どのような大きさ・材質のワーク部材に対しても、緩衝機能を発揮することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のねじ締付装置用の緩衝器によれば、ねじ部材がワーク部材に接触することによって生じるドライバビットに対する外力による衝撃を吸収することができることに加え、電動ドライバとドライバビットとの間に配置する構成であることにより、緩衝器のコンパクト化が実現されるので、製造や設置に要する費用と時間を削減することができる。また、摺動部を有する第2部材が、弾性部材のドライバビット側の端部を支持するとともにドライバビットを把持する構造であるので、ドライバビットに対して外力がかかった場合でもドライバビットに緩みが生じることがないため、機械的なガタが発生せず、安定してねじ締付作業を行うことができる。さらに、弾性部材が、第1部材及び第2部材のうち少なくとも摺動部を有する第2部材の外周面に配置されるため、その動作力(付勢力)や劣化の度合いを目視で簡単に確認することができるので、調整や交換等を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は本発明の一実施形態に係るねじ締付装置用緩衝器を示す概略構成図であり、
図1(b)は
図1(a)の中央縦断面図である。
【
図2】
図2は
図1(a)のねじ締付装置用緩衝器における電動ドライバを連結した状態を示す模式的斜視図である。
【
図3】
図3は従来の緩衝機構が設けられたねじ締付装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るねじ締付装置用緩衝器について、適宜図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
【0019】
本実施形態に係るねじ締付装置用の緩衝器1は、
図1(a)、(b)に示すように、電動ドライバと電動ドライバによって回転駆動されるドライバビットとの間に配置され、ドライバビットの回転軸(以下、回転軸Xと称する。)方向に挿入孔111が穿設された第1部材11と、挿入孔111にその内周面に沿って回転軸X方向に摺動可能に内挿される摺動部121を有する第2部材12と、第1部材11及び第2部材12のうち少なくとも第2部材12の外周面に配置される弾性部材13と、回転軸Xと同軸に設けられ第1部材11と電動ドライバとを着脱可能に連結する連結軸14と、ドライバビットにかかる外力を検出する検出機構15と、第1部材11を電動ドライバに固定するための固定部材16とを主に備える。
【0020】
<第1部材>
第1部材11は概略円筒形状の部材であり、その軸方向一方の端部からもう一方の端部に向かって、第1部材11の中心軸と同軸に円筒形状の挿入孔111が穿設されており、軸方向もう一方の端部中央には連結軸14の一端が差し込まれる貫通孔113が穿設されている。
【0021】
第1部材11はその外周面に、弾性部材13の電動ドライバ側の第1端部131に当接する当接部112を有する。当接部112は、弾性部材13の第1端部131の位置を調整可能であるように回転軸X方向に移動自在に配設される。このような構成であることにより、第1端部131の位置を調整することで、弾性部材13が第2部材12に及ぼす付勢力を調節することができるので、どのような大きさ・材質のワーク部材に対しても、緩衝機能を発揮することが可能となる。
【0022】
当接部112の具体的構成は特に限定されないが、本実施形態においては、当接部112は、いわゆるアジャストリングとして機能する。すなわち、当接部112は内周面にねじ溝が切られたリング形状を有しており、第1部材11の外周面に形成されたねじ山に螺合されることで、第1部材11に対して回転軸Xを軸心として回転することにより、回転軸X方向に移動自在であるように配設される。
【0023】
また、第1部材11は、連結軸14を挿通可能な貫通孔113を有しており、この貫通孔113に電動ドライバに連結された連結軸14を挿通することにより、第1部材11が連結軸14を介して電動ドライバに連結される。貫通孔113に挿通された連結軸14を第1部材11に固定する方法としては公知の種々の方法が採用でき、例えばねじ込み式、カプラ式等を採用することができる。なお、電動ドライバに連結軸14を連結する方法としては電動ドライバにドライバビットを連結する従来の方法が採用でき、例えばねじ込み式、カプラ式等を採用することができる。
【0024】
<第2部材>
第2部材12は、第1部材11の挿入孔111にその内周面に沿って回転軸X方向に摺動可能に内挿される円筒形状の摺動部121と、摺動部121のドライバビット側の端部に設けられた、弾性部材13のドライバビット側の第2端部132を支持するフランジ状の支持部122と、支持部122の設けられている端部中央に穿設された、ドライバビットを把持可能な把持孔123とを有する。第2部材12の摺動部121は第1部材11の挿入孔111よりも若干縮径されており、第1部材11の挿入孔111に対して摺動部121をスムーズに往復摺動させることができるように構成されている。
【0025】
支持部122の具体的構成は特に限定されないが、本実施形態においては、支持部122は、第2部材12のドライバビット側の端部に、摺動部121と一体的に設けられている。このように支持部122が摺動部121と一体的に設けられることにより、第2部材12を構成するために特別な部品を追加する必要がなく、部品点数の少ない簡易な構造とすることが可能となる。
【0026】
把持孔123に挿通されたドライバビットを第2部材12に把持する方法としては公知の種々の方法が採用でき、例えばねじ込み式、カプラ式等を採用することができる。
【0027】
ここで、第2部材12の把持孔123により把持されたドライバビットは、第2部材12のドライバビット側に配設される別の把持機構17によって、より確実にドライバビットを第2部材に固定するように構成することができる。
【0028】
把持機構17の具体的構成は特に限定されないが、本実施形態においては、把持機構17は、いわゆるコレットのような構造を有している。コレットは、例えばスクロールチャック等の爪によって対象物を締め付けて固定するメカニカルチャックに比べて、対象物に加わる圧力が小さくて済むため、対象物への負担が少ないながらも強力に対象物を固定できるという利点がある。
【0029】
把持機構17は、ドライバビットを挿通可能な貫通孔171と、貫通孔171の中心から放射状に形成される複数の溝とを有し、回転軸Xの軸心に向かってその外周面を押圧して弾性変位させることにより貫通孔171に挿通されるドライバビットを把持する。把持機構17の外周面を押圧して弾性変位させる方法としては従来の方法が採用でき、例えば、平コレット、角錐コレット等を採用することができる。
【0030】
また、第2部材12は、ドライバビット側の連結軸14を摺接して挿通可能な貫通孔124を有する。貫通孔124がドライバビット側の連結軸14を摺接して挿通可能に形成されていることにより、ドライバビット側の連結軸14によって第2部材12の回転軸X方向への移動が妨げられることを回避することが可能となる。
【0031】
<弾性部材>
弾性部材13は、ドライバビットにかかる外力を吸収するものである。弾性部材13は、少なくとも第2部材12の摺動部121より大きい直径を有し、摺動部121の外周面に配置される。このような構成であることにより、ドライバビットにかかる外力を適切に吸収することができるとともに、付勢力や劣化の度合いを目視で簡単に確認することが可能となる。
【0032】
弾性部材13の具体的構成は特に限定されないが、本実施形態においては、弾性部材13は第1部材11より大きい直径を有するコイルスプリングである。弾性部材13は、第1部材11及び第2部材12の外周面に配置され、これにより当接部112と支持部122との間において、第2部材12を第1部材11から離間する方向に付勢する。このように弾性部材13が、第2部材12の外周面だけではなく第1部材11の外周面にも配置されることにより、第1部材11の当接部112を、弾性部材13の第1端部131の位置を調整可能であるように配設することが可能となる。なお、弾性部材13としては公知の種々のものが採用できるが、特にコイルスプリングが好適に採用できる。
【0033】
弾性部材13の外周には、第2部材12の回転軸X方向の移動に伴い移動するように円筒部材18が設けられる。円筒部材18の具体的構成は、後述する検出機構15が第2部材12の回転軸X方向の相対的移動距離を測定することができ、第2部材12の回転軸X方向の移動に伴い移動するよう構成されていれば特に限定されない。円筒部材18の材質としては、第2部材12の回転軸X方向の移動を妨げないものであれば特に限定されないが、検出機構15による検知し易さの面から、金属が好適に用いられる。
【0034】
<連結軸>
連結軸14は、第1部材11と電動ドライバとを着脱可能に連結するものである。連結軸14は、回転軸Xと同軸に設けられており、電動ドライバ側の後端部はドライバビットの底部と同様の形状を、また、ドライバビット側の先端部は第1部材11の貫通孔113に係合可能な形状を有する。このような構成であることにより、第1部材11と電動ドライバとが強固に連結されるので、電動ドライバの回転駆動を緩衝器1に直接伝達することが可能となる。
【0035】
連結軸14を第1部材11に固定する方法及び、連結軸14を電動ドライバに連結する方法については、上述の通りである。なお、連結軸14の材質としては公知の種々のものが採用できるが、耐摩耗性や強度の面から、ドライバビット同様のクロム−モリブデン高鋼材、炭素鋼、クロム鋼等の超硬金属等が好適に採用できる。
【0036】
<検出機構>
検出機構15は、弾性部材13の外周に設けられる円筒部材18の回転軸X方向の移動距離に基づき、ドライバビットにかかる外力を検出するものである。具体的には、検出機構15は、ねじ部材の浮き上がり等によって生じる第2部材12の回転軸X方向の移動に伴う円筒部材18の移動距離を測定し、この測定値を検出データとして制御機構(図示しない)に出力する。移動距離の測定は、円筒部材18の端部が所定の位置まで移動したことを検知することによって行われてもよいし、円筒部材18の所定の位置の実際の移動距離を測定することによって行われてもよい。制御機構は、この検出データに基づき、例えば、所定以上の外力がドライバビットにかかった場合には、ねじ締付装置を停止させることにより故障を防いだり、ドライバビットの位置を微調整することによりドライバビットを実際のねじ穴に追従させたりすることが可能となる。なお、本実施形態において、検出機構15は後述する固定部材16の外部に設けられているが、円筒部材18の回転軸X方向の移動距離を測定可能に構成されている限り、その取付位置は特に限定されない。
【0037】
<固定部材>
固定部材16は、緩衝器1を電動ドライバに固定するためのものである。固定部材16を用いることにより電動ドライバと緩衝器1とがより強固に連結されるので、ドライバビットが電動ドライバに直接連結されていないことによる電動ドライバの回転に伴うドライバビットのぶれを回避することが可能となる。
【0038】
固定部材16は、概略円筒形状の筺体部161と、筐体部161の側面に設けられる開口部162と、筐体部161の内周側に配置されるベアリング163と、筐体部161の電動ドライバ側の端部に装着される取付部164とを有する。このように筺体部161の側面に開口部162を設けることで、連結軸14の電動ドライバへの脱着作業を容易に行うことが可能となるとともに、電動ドライバのトルクアジャストツマミを回すことにより締め付けトルクを調整することが可能となる。なお、開口部162の開口のサイズは、連結軸14の電動ドライバへの脱着作業や電動ドライバの締め付けトルク調整に十分な大きさを有している限り特に限定されない。
【0039】
ベアリング163は、電動ドライバ側に配置される第1ベアリング1631とドライバビット側に配置される第2ベアリング1632とにより構成されており、固定部材16は、これら第1ベアリング1631と第2ベアリング1632とを介して第1部材11を回転可能に支承する。このように2つのベアリングが間隔をあけて設けられることにより、固定部材16により第1部材11をより安定的に支持することができ、電動ドライバの回転に伴うドライバビットのぶれを回避することが可能となる。
【0040】
取付部164は、緩衝器1と電動ドライバとを一体的にロボットアーム(図示しない)に連結するものである。取付部164の形状としては、電動ドライバをロボットアームに連結可能に構成されている限り特に限定されず公知の種々のものが採用できる。なお、従来、取付ステーとして単独で使用される、電動ドライをロボットアームに連結するための取付部を、緩衝器1の固定部材16と一体化した取付部164として構成することにより、電動ドライバをロボットアームに連結する作業にかかる時間を短縮することが可能となる。
【0041】
図2は、本実施形態の緩衝器1が電動ドライバに連結された状態、すなわち第1部材11が連結軸14を介して電動ドライバに連結されるともに、固定部材16が第1部材11を電動ドライバに固定した状態を示す模式的斜視図である。
図2において、ドライバビットは、ねじ部材を真空吸引するためのねじ保持器に挿通された状態で示されている。
【0042】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記各実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のねじ締付装置用緩衝器は、ねじ締付装置用の緩衝器であって、ねじ部材がワーク部材に接触することによって生じるドライバビットに対する外力による衝撃を吸収することにより、ドライバビット、ねじ保持器、ロボット、ワーク部材等の破損を防ぐことができるとともに、コンパクトで取り扱いが容易であるため、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0044】
1 緩衝器
11 第1部材
111 挿入孔
112 当接部
113 貫通孔
12 第2部材
121 摺動部
122 支持部
123 把持孔
124 貫通孔
13 弾性部材
131 第1端部
132 第2端部
14 連結軸
15 検出機構
16 固定部材
161 筺体部
162 開口部
163 ベアリング
1631 第1ベアリング
1632 第2ベアリング
164 取付部
17 把持機構
171貫通孔
18 円筒部材