【解決手段】画像処理装置(10)は、ノイズ低減部(11)と、動きぼけ低減部(12)と、類似画像特定部(13)とを備える。類似画像特定部は、画像処理装置に入力される撮像画像(Fa)のノイズが低減されて得られたノイズ低減画像(Fb)に対して動きぼけが低減されて得られた動きぼけノイズ低減画像(Fc)と、ノイズ低減画像と、を用いて、動きぼけノイズ低減画像に動きぼけを加えた画像と、ノイズ低減画像と、にそれぞれ類似すると共に、ざらつきが予め定められた程度よりも抑えられた類似画像(Fd)を特定する。動きぼけ低減部は、類似画像の動きぼけを低減させることにより、撮像画像の動きぼけおよびノイズが低減された処理後画像(Fe)を得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.実施形態:
A1.装置構成:
図1に示す本実施形態の画像処理部10は、車両に搭載されているカメラECU(Electronic Control Unit)100の一機能部として構成されている。カメラECU100は、同様に車両に搭載されている第1撮像装置201と、第2撮像装置202と、認識処理ECU(Electronic Control Unit)300と、車速センサ210とに接続されている。本実施形態において、2つの撮像装置201、202は、車両前方の領域を互いに共通して撮像可能に設置されており、RGBの各階調値からなる撮像画像を得る。カメラECU100は、2つの撮像装置201、202の各々の撮像により得られた2つの撮像画像を入力し、2つの撮像画像に写った車外の物体の視差を示す視差情報を、認識処理ECU300に出力する。認識処理ECU300は、カメラECU100から入力される視差情報を利用して物体までの距離を特定し、かかる距離と物体とを示す情報を衝突推定ECU400に出力する。衝突推定ECU400は、認識処理ECU300から入力される情報や、車両の速度を示す情報などに基づき、物体と車両とが衝突するか否かを推定し、かかる推定結果および衝突推定時間を示す情報を動作制御ECU500に出力する。動作制御ECU500は、衝突推定ECU400から入力される情報に基づき衝突回避のための動作を実行する。衝突回避動作としては、例えば、ブレーキを作動させる、乗員室に設けられたインストルメントパネルやスピーカーを利用して警告を行う、シートベルトを自動的に巻き取る、衝突を回避する方向に操舵する、などの動作が該当する。
【0011】
カメラECU100は、画像処理部10と、類似度算出部20と、視差算出部30とを備える。カメラECU100は、CPU、ROM、およびRAMを有するマイクロコンピュータとして構成されており、CPUがROMに予め記憶されている制御用プログラムをRAMに展開して実行することにより、画像処理部10、類似度算出部20および視差算出部30として機能する。
【0012】
画像処理部10は、第1撮像装置201および第2撮像装置202がそれぞれ撮像して得た2つの撮像画像を入力し、各撮像画像の動きぼけおよびノイズを低減して、処理結果の画像(以下、「処理後画像」と呼ぶ)を類似度算出部20に出力する。画像処理部10は、ノイズ低減部11と、動きぼけ低減部12と、類似画像特定部13と、移動速度取得部14とを備える。ノイズ低減部11は、2つの撮像画像のノイズを低減する。動きぼけ低減部12は、処理対象の画像の動きボケを低減する。処理対象の画像の1つは、撮像画像である。類似画像特定部13は、後述する動きぼけ及びノイズ低減処理において、類似画像を特定する。類似画像の詳細については、後述する。移動速度取得部は、車速センサ210から出力される車速を示す情報を入力することにより、第1撮像装置201および第2撮像装置202と、物体との相対移動速度を取得する。車両走行中に得られる撮像画像内において、静止した物体、例えば、道路やガードレールやトンネルの壁面などに動きぼけが生じる場合が多い。この場合の相対移動速度は、車速と一致する。そこで、移動速度取得部14は、車速を相対移動速度として取得する。
【0013】
類似度算出部20は、画像処理部10から出力される2つの処理後画像をそれぞれ予め定められた大きさのブロックに区分し、一方の処理後画像の各ブロックと、他方の処理後画像の各ブロックとの類似度を算出する。ブロックとしては、例えば、8画素×8画素のブロックや8画素×16画素のブロックなど、任意の大きさのブロックを採用してもよい。
【0014】
視差算出部30は、類似度算出部20から入力する類似度を利用して、2つの撮像画像の視差を算出する。本実施形態では、各ブロックの類似度と各ブロックの位置とからなる類似度空間における最適な移動経路を、複数方向に亘って既知のビタビアルゴリズムを用いて算出し、かかる最適な移動経路に基づき各ブロックについての視差を求める。なお、認識処理ECU300は、各ブロックについて算出された視差に基づき周知の距離算出式を用いて距離を算出し、物体までの距離を特定する。
【0015】
車両走行中に2つの撮像装置201、202により得られる撮像画像には、動きぼけとノイズとが含まれる場合がある。特に、夜間に得られた撮像画像やトンネル内で得られた撮像画像には、シャッタースピードの長時間化に伴う動きぼけや、2つの撮像装置201、202の受光素子の増感に伴うノイズが含まれ易い。しかし、後述する動きぼけ及びノイズ低減処理が実行されることにより、各撮像画像の動きぼけおよびノイズが低減される。
【0016】
A2.動きぼけ及びノイズ低減処理:
画像処理部10では、2つの撮像装置201、202から撮像画像が入力されると、
図2に示す動きぼけ及びノイズ低減処理が実行される。なお、動きぼけ及びノイズ低減処理では、入力される2つの撮像画像に対してそれぞれ同じ処理が行われる。そこで、一方の撮像画像について代表して説明し、他方の撮像画像についての説明を省略する。また、2つの撮像装置201、202から入力される撮像画像を、説明の便宜上、共通的に撮像画像Faと呼ぶ。
【0017】
ノイズ低減部11は、撮像画像Faのノイズを低減して、ノイズ低減画像Fbを得る(ステップS105)。本実施形態では、公知のNLM(Non−Lacal Mean)法によりノイズを低減する。すなわち、撮像画像Faを予め定められた大きさのブロックに区分し、注目ブロックを1つずつずらしながら、各注目ブロックについて、類似度が予め定められた度合い以上のブロックを集めて、その類似度に応じた加重平均を求めて注目ブロックの画素値とする処理を行い、ノイズ低減画像Fbを得る。なお、NLM法に限らず、他の任意の方法によりノイズを低減してもよい。
【0018】
動きぼけ低減部12は、ノイズ低減画像Fbの動きぼけを低減して、動きぼけノイズ低減画像Fcを得る(ステップS110)。具体的には、低減部12は、下記式(1)で示される演算を実行することにより、E(l’)を求め、かかるE(l’)が最小となる画像(l’)を、動きぼけノイズ低減画像Fcとして得る。
【0020】
上記式(1)において、bは、ノイズ低減画像Fbを示す。また、Zは窓関数を示し、iは、ブロックの位置を示し、ωiは窓関数の重み付け係数を示し、l’は動きぼけが低減された画像(言い換えると、動きぼけノイズ低減画像Fcの候補画像)を示し、fiは、位置iにおける点広がり関数fの値を示し、λ1は滑らかさを示す係数を示し、∇l’は、動きぼけが低減された画像における隣り合う画素の画素値の変化の大きさ(微分画像)を示す。以降に示す演算において「画像」とは、各画素の輝度値を意味する。輝度値は、例えば、撮像画像Faにおける各画素のRGB値を用いて既知の演算式により求めてもよい。本実施形態において窓関数は、ブロックの横軸(撮像画像Faの横軸と一致する軸:以下、「X軸」と呼ぶ)と平行な方向に沿って中央の重み付け係数が最大値となり、ブロックの両端重み付け係数がゼロとなるように屈曲した直線からなる三角形状の窓関数である。点広がり関数(Point Spread Function:PSF)は、本実施形態では、動きぼけを表す関数として用いられている。2つの撮像装置201、202により得られる撮像画像Faの動きぼけは、画像の中心において動きぼけのベクトル(動きベクトル)が0(ゼロ)となり、画像の中心から外縁に向かうにつれて動きベクトルの大きさ(ノルム)が大きくなる特性を有する。そこで、本実施形態では、動きぼけを点広がり関数を用いて各種演算を行う。なお、撮像画像Faの動きぼけの大きさは、車速に応じて変化する。具体的には、車速が大きくなるにつれて動きぼけの大きさも大きくなる。そこで、本実施形態の動きぼけの低減では、車速センサ210から入力される車速を適用した点広がり関数を用いる。滑らかさを示す係数λ1は、予め予め定められた程度の滑らかさとなるように設定されている。
【0021】
上記式(1)の右辺第1項は、動きぼけが低減された画像l’に対して窓関数の重み付け係数を畳み込んで得られる各画素の輝度値を積算し、その値に点広がり関数、すなわち、動きぼけを適用して(動きぼけを加えて)得られた画像と、動きぼけを低減する前のノイズ低減画像Fbとの差分の大きさ(ノルム)の2乗を意味する。また、式(1)の右辺第2項は、動きぼけが低減された画像自身におけるざらつきの大きさの2乗を意味する。ステップS105でノイズは低減されているものの、わずかなノイズは残る。かかるノイズを含んだ画像に対して点広がり関数を適用した際に(動きぼけを加えた際に)、大きなノイズ(ざらつき)として現れるおそれがある。例えば、過度な先鋭化や平滑化として現れるおそれがある。そこで、そのようなざらつきの大きさを右辺第2項で求めている。上述の右辺の第1項および第2項を足し合わせて得られた値E(l’)が最小になる画像を求め、かかる画像を動きノイズ低減画像Fcとすることで、動きぼけを低減できるだけでなく、動きぼけの低減前の画像と全く異なる(非類似な)画像が得られることを抑制しつつ、動きぼけの低減の際に生じたノイズの増幅を抑制して動きノイズ低減画像Fcを得ることができる。上記式(1)を演算して動きノイズ低減画像Fcを求める演算方法について、さらに詳細に説明する。
【0022】
上記式(1)を演算して動きノイズ低減画像Fcを求める場合、まず、下記式(2)、(3)、(4)、(5)で示すフーリエ変換を行う。式(2)により、画像lを予め定められた大きさのブロックに区分した場合の各ブロックについて、輝度lの周波数特性Lが算出される。式(3)に示す各ブロックにおける点広がり関数fの二次元分布に対するフーリエ変換により、点広がり関数fの周波数特性Fが算出される。式(4)により、X軸方向の微分演算子fxに対するフーリエ変換により、微分演算子fxの周波数特性Fxが算出される。式(5)により、X軸と直交するY軸方向の微分演算子fyに対するフーリエ変換により、微分演算子fyの周波数特性Fyが算出される。なお、微分演算子fxは、下記式(6)で定義され、微分演算子fyは、下記式(7)で定義される。
【0023】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0024】
すべてのブロックについて上記式(2)〜(5)のフーリエ変換が行われた後、各ブロックについて下記式(8)で示す逆フーリエ変換を実行する。式(8)において、左辺xは、動きぼけが低減された後のブロックの輝度の二次元分布を示す。また、式(8)において、括弧内の分子は、周波数特性LとインバースFとの積を意味する。インバースFは、(1/F)であり、動きベクトルfの周波数特性Fを掛け合わせることにより振幅が1となり位相が0(ゼロ)になるものである。式(8)のλは、上記式(1)のλ1と同様に滑らかさを表す係数である。
【0026】
次に、境界効果による影響を軽減するために、上述の窓関数を適用して境界値を0(ゼロ)とする。すべてのブロックについて上記式(8)および窓関数の適用を実行した後、下記式(9)により動きノイズ低減画像Fcを作成する。式(9)において左辺Tは、式(1)においてE(l’)が最小となるときの画像(l’)に相当する。
【0028】
図2に示すように、上述のステップS110の実行後、類似画像特定部13は、ノイズ低減画像Fbと、動きノイズ低減画像Fcとを用いて、以下の条件(i)〜(iii)を可能な限り満たす画像(以下、「類似画像」と呼ぶ)を特定する(ステップS115)。
(i)動きぼけノイズ低減画像Fcに動きぼけを加えた画像に類似する。
(ii)ノイズ低減画像Fbに類似する。
(iii)ざらつきが抑えられている。
具体的には、類似画像特定部13は、下記式(10)で示される演算を実行することによりE(b’)を求め、かかるE(b’)が最小となる画像(b’)を、類似画像Fdとして特定する。
【0030】
上記式(10)において、b’は、類似画像(より正確には、類似画像の候補となる画像)を示す。また、λ2は、滑らかさを示す予め定められた係数を示し、∇b’は、類似画像(より正確には、類似画像の候補となる画像)における隣り合う画素の画素値の変化の大きさ(微分画像)を示す。なお、b、Z、i、ωi、l’ fiは、いずれも、上記式(1)と同じであるので、その詳細な説明を省略する。上述の類似画像の候補となる画像を「仮の類似画像」とも呼ぶ。
【0031】
上記式(10)の右辺第1項は、動きぼけノイズ低減画像Fc(l’)に対して窓関数の重み付け係数を畳み込んで得られる各画素の輝度値を積算し、その値に点広がり関数、すなわち、動きぼけを適用して(動きぼけを加えて)得られた画像と、類似画像Fd(b’)との差分の大きさ(ノルム)の2乗を意味する。また、式(10)の第2項は、類似画像Fd(b’)自身におけるざらつきの大きさの2乗を意味する。また、式(10)の第3項は、撮像画像Faと類似画像Fdとの差分の(ノルム)の2乗を意味する。このような右辺の第1ないし第3項を足し合わせて得られたE(b’)が最小になる画像(仮の類似画像)を求め、かかる仮の類似画像を類似画像Fdとして特定する。このような演算により、ノイズ低減画像Fcに動きぼけを加えた画像と、ノイズ低減画像Fbとに、それぞれ類似すると共に、ざらつきが予め定められた程度よりも抑えられた画像を、類似画像Fdとして特定できる。
【0032】
図2に示すように、上述のステップS115の実行後、動きぼけ低減部12は、ステップS115で得られた類似画像Fdの動きぼけを低減することにより、処理後画像Feを得る(ステップS120)。具体的には、動きぼけ低減部12は、下記式(11)で示される演算を実行することにより、E(l)を求め、かかるE(l)が最小となる画像(l)を、処理後画像Feとして得る。
【0034】
上記式(11)は、上記式(1)において、l’をlに置き換え、bをb’に置き換えた式とほぼ等しい。式(11)においてγは、滑らかさを示す予め定められた係数を示し、右辺第2項は、処理後画像Fe自身におけるざらつきを大きさの2乗を意味する。上述のように、上記ステップS115で得られる類似画像Fdは、ノイズ低減画像Fcに動きぼけを加えた画像と、ノイズ低減画像Fbとに類似しており、動きぼけを含む画像である。したがって、このような画像に対して、上記式(11)の演算結果を利用して動きぼけを低減することにより、動きぼけとノイズとがいずれも低減された画像を、処理後画像として得ることができる。
【0035】
図3に示す撮像画像Fa1は、車両がトンネル内を走行中に第1撮像装置201によって得られた撮像画像の一例である。撮像画像Faの中心から外縁に向かうにつれて動きぼけが大きくなっているのが分かる。
【0036】
図4に示す画像F1mは、
図3に示す撮像画像Faに対して、上述した本実施形態の動きぼけ及びノイズ低減処理を行って得られた処理後画像Feに基づき視差を求め、かかる視差から得られた測距結果(距離の推定結果)を模式的に示している。画像F1mでは、2つの撮像装置201、202から物体までの距離の長短を示す濃淡の画像内における相違が明確になっている。例えば、道路に相当する領域Ar1における各位置までの距離の長短が明確になっており、道路の各位置までの距離が正確に特定されていることが分かる。
【0037】
図5は、
図4に示す画像F1mを用いて物体を認識した結果を画像F1nとして模式的に表わしている。画像F1nでは、道路として認識した領域が明るい領域として表わされ、道路以外として認識された領域が暗い領域として表わされている。
図5に示すように、画像内の道路のうち、画像の外縁、特に中心から遠い画像の隅の2つの領域Ar11、Ar12は、いずれも道路の一部として正しく認識されている。これは、かかる領域Ar11、Ar12の動きぼけおよびノイズが低減されたことにより、正確に距離を測定(推定)でき、道路の一部として正確に認識できたためである。なお、道路の認識は、例えば、UV−display法を用いて実現できる。
【0038】
他方、比較例における測距結果を模式的に表わす
図6の画像F2mからも理解できるように、本実施形態の動きぼけ及びノイズ低減処理を実行しないで視差を求め、かかる視差から撮像装置から物体までの距離を測定(推定)する比較例では、かかる距離の長短を表す濃淡の相違が
図4に示す本実施形態の相違に比べて明確ではなく、推定される距離と実際の距離とにずれが生じている。例えば、道路に相当する領域Ar1における各位置までの距離の長短が斑状になって不明確であり、道路の各位置までの距離の推定精度が低いことが分かる。
【0039】
したがって、
図7に示すように、比較例の物体の認識結果を模式的に表わす画像F2nでは、画像内の道路のうち、上述した画像の隅の2つの領域Ar11、Ar12は、いずれも道路以外の物体として認識されており、誤認識が生じている。これは、かかる領域Ar11、Ar12の動きぼけ及びノイズに起因してかかる領域Ar11、Ar12までの距離が正確に測定(推定)できず、道路の一部であると認識できなかったためである。
【0040】
以上説明した本実施形態の画像処理部10によれば、動きぼけノイズ低減画像Fcに動きぼけを加えた画像と、ノイズ低減画像Fbと、にそれぞれ類似すると共に、ざらつきが予め定められた程度よりも抑えられた類似画像Fdを特定し、かかる類似画像Fdの動きぼけを低減することにより処理後画像Feを得るので、撮像画像Faの動きぼけとノイズとを低減することができる。したがって、2つの撮像画像Faの視差を精度良く測定(推定)でき、物体を正確に認識できる。
【0041】
また、類似画像Fdは、動きぼけノイズ低減画像Fcに動きぼけを加えた画像と、ノイズ低減画像Fbと、にそれぞれ類似すると共に、ざらつきが予め定められた程度よりも抑えられた画像であるので、撮像画像Faから大きく異なる画像が処理後画像Feとして得られることを抑制できると共に、動きぼけ低減のためにノイズが増幅されてしまい過剰なエッジ強調や平滑化された画像が処理後画像Feとして得られることを抑制できる。
【0042】
また、類似画像特定部13は、動きぼけノイズ低減画像Fcに動きぼけを加えた画像と仮の類似画像との各画素の画素値の差分の大きさと、ノイズ低減画像Fbと仮の類似画像との各画素の画素値の差分の大きさと、ざらつきを示す仮の類似画像における隣接する画素の画素値の変化の大きさと、の合計が最も小さくなるときの仮の類似画像を、類似画像として特定するので、ノイズ低減画像Fcに動きぼけを加えた画像とノイズ低減画像Fbとにそれぞれ類似すると共に、ざらつきが予め定められた程度よりも抑えられた画像を、類似画像Fdとして特定できる。
【0043】
また、画像処理部10は、撮像画像Faを撮像する2つの撮像装置201、202の移動速度に相当する車速を取得する移動速度取得部を、さらに備えており、動きぼけ低減部12は、動きぼけを低減する対象の画像である対象画像(ステップS105における撮像画像Fa、およびステップS120における類似画像Fd)の各画素位置の動きベクトルを移動速度から求める予め定められた演算式(点広がり関数f)を利用して、動きベクトルとは逆相の特性を、対象画像の周波数特性を示す画像周波数特性(周波数特性L)に与えることにより、対象画像のノイズを低減するので、撮像する時刻が異なる複数の画像を用いて動きベクトルを求め、かかる動きベクトルとは逆相の特性を画像周波数特性に与えてノイズを低減する方法に比べて、処理負荷を低減でき、処理速度の高速化を実現できる。
【0044】
B.変形例:
B1.変形例1:
上記実施形態では、2つの撮像装置201、202により得られる2つの撮像画像Faを用いて視差を算出していたが、本開示はこれに限定されない。3台以上の撮像装置により得られた3つ以上の撮像画像を用いて視差を算出してもよい。また、ステレオカメラを搭載した1台の撮像装置により得られる2つの撮像画像を用いて視差を算出してもよい。
【0045】
B2.変形例2:
上記実施形態では、動きぼけ及びノイズ低減処理の対象となる画像は、視差を算出するために2つの撮像装置201、202により得られる撮像画像Faであったが、本開示はこれに限定されない。車両の電子ミラー(車両のサイドミラーに相当する機能を実現する表示装置)に表示するために車両の側方や後方を撮像する撮像装置により得られる撮像画像であってもよい。また、ドライブレコーダー用の撮像装置により得られる撮像画像であってもよい。すなわち、一般には、移動体に搭載された撮像装置または自身が移動可能な撮像装置により得られた撮像画像を、本開示に適用できる。
【0046】
B3.変形例3:
上記実施形態では、画像処理部10は、車両に搭載されるカメラECU100の一機能として構成されていたが、本開示はこれに限定されない。画像処理部10を、カメラECU100とは独立した1つの装置、すなわち、画像処理装置として構成してもよい。この構成を適用する場合、画像処理装置は、車両に搭載されなくてもよい。例えば、上述の変形例2のように、動きぼけ及びノイズ低減処理の対象となる画像がドライブレコーダー用の撮像画像により得られる撮像画像である場合、ドライブレコーダーに記録されている撮像画像データを、有線又は無線のネットワークを介して、或いは、記録媒体を介して画像処理装置に転送し、画像処理装置において動きぼけ及びノイズ低減処理を実行してもよい。この構成においても、動きぼけ及びノイズが低減された撮像画像を得ることができるので、かかる撮像画像を用いて、各種アプリケーションを実行できる。
【0047】
B4.変形例4:
上記実施形態において、動きぼけ低減部12は、式(1)に示すE(l’)が最小となるl’を求めることにより、前記動きぼけノイズ低減画像Fcを得ていたが、本発明はこれに限定されない。ノイズ低減画像Fbから動きぼけを低減可能な任意の演算式により動きぼけノイズ低減画像Fcを得てもよい。また、類似画像特定部13は、式(10)に示すE(b’)が最小となるb’を求めることにより、類似画像Fdを得ていたが、本発明は、これに限定されない。動きぼけノイズ低減画像Fcとノイズ低減画像Fbとを用いて上記条件(i)〜(iii)を満たす画像を特定可能な任意の演算式により類似画像Fdを得てもよい。また、動きぼけ低減部12は、式(11)に示すE(l)が最小となるlを求めることにより、処理後画像Feを得ていたが、本発明はこれに限定されない。類似画像Fdから動きぼけを低減可能な任意の演算式により処理後画像Feを得てもよい。
【0048】
B5.変形例5:
上記実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、ノイズ低減部11、低減部12、類似画像特定部13、移動速度取得部14のうちの少なくとも1つの機能部を、集積回路、ディスクリート回路、またはそれらの回路を組み合わせたモジュールにより実現してもよい。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピューター読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピューター内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピューターに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0049】
本発明は、上記実施形態および変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する本実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。