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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-133316(P2018-133316A)
(43)【公開日】2018年8月23日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20180727BHJP
【FI】
   H01R13/42 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-28377(P2017-28377)
(22)【出願日】2017年2月17日
(71)【出願人】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】行武 広章
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE04
5E087EE14
5E087FF02
5E087GG13
5E087GG16
5E087GG35
5E087RR02
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】コンタクトの小さな変位量で大きな接触圧を確保できると共に生産性に優れたコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、コンタクト20と、収容部40を有するハウジング30と、を備えている。収容部40は、コンタクト20の突出方向から突出方向と垂直な方向の一方側にかけて開口している。コンタクト20は、ハウジング30に固定される固定部22と、接続対象物と接触する接触部25と、弾性変形するバネ部(第一湾曲部23A)と、接触部25に対してバネ部とは反対側に設けられた係止部27と、を備えている。ハウジング30は、係止部27の突出方向への移動を制限することによりバネ部が弾性変形した状態を維持する張出部35を備えている。コンタクト20は、係止部27から、突出方向と垂直な方向の一方側とは反対側である他方側に向けて延び、他方側へ向けて突出方向とは反対側へ傾斜した傾斜部28をさらに備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯板状で屈曲した導電性のコンタクトと、前記コンタクトの一部を突出させた状態で前記コンタクトの他の一部を収容する収容部を有するハウジングと、を備えたコネクタであって、
前記収容部は、前記コンタクトの突出方向から前記突出方向と垂直な方向の一方側にかけて開口しており、
前記コンタクトは、
前記ハウジングに固定される固定部と、
前記収容部から突出し、接続対象物と接触する接触部と、
前記固定部と前記接触部との間に設けられ、前記固定部と前記接触部との前記突出方向の離間距離が小さくなるように弾性変形するバネ部と、
前記接触部に対して前記バネ部とは反対側に設けられた係止部と、を備えており、
前記ハウジングは、前記係止部の前記突出方向への移動を制限することにより前記バネ部が弾性変形した状態を維持する係止受部を備えており、
前記コンタクトは、前記係止部から、前記突出方向と垂直な方向の前記一方側とは反対側である他方側に向けて延び、前記他方側へ向けて前記突出方向とは反対側へ傾斜した傾斜部をさらに備えている、
コネクタ。
【請求項2】
前記係止受部は、前記収容部の前記突出方向の端部に設けられた張出部である、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記係止受部は、前記収容部の幅方向両側から張出した一対の張出部であり、
前記係止部は、前記一対の張出部の両方によって前記突出方向への移動を制限され、
前記傾斜部は、前記係止部の幅方向両側から延びている、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタとして、収容凹部が形成された樹脂製のハウジングと、金属板を帯板状に打ち抜き加工した後に折り曲げ加工したコンタクトと、を組み合わせたコネクタが知られている(例えば、特許文献1(第1図、第3図)参照)。このコネクタでは、コンタクトをハウジングの収容凹部に差し込むことでコンタクトがハウジングに組み込まれているため、製造が容易である。
【0003】
ところで、この種のコネクタが接続対象物と安定した接続を実現するためには、コンタクトで適切な接触圧を確保する必要がある。
しかし、接触圧はコンタクトの変位量に依存する一方で、各種電気機器の小型化が進むにつれて、それに用いられるコネクタも小型化が求められている。コネクタを小型化すると、適切な接触圧を確保するために必要となる、コンタクトが変位するスペースを充分に確保できなくなるという問題がある。
【0004】
このような問題に対処できるコネクタとして、予めコンタクトを途中まで弾性変形させた状態(プリロード状態)でハウジングに保持させておきつつ、接続対象物とコンタクトが接触した際にさらに弾性変形させるようにしたコネクタが知られている(例えば、特許文献2(第5図、第2図)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−256563号公報
【特許文献2】特開2006−164682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のコネクタでは、特許文献2の第5図に示される非プリロード状態から、特許文献2の第2図に示されるプリロード状態にするための工程が別途必要となり、生産性が良くないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、コンタクトの小さな変位量で大きな接触圧を確保できると共に生産性に優れたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様に係るコネクタは、帯板状で屈曲した導電性のコンタクトと、前記コンタクトの一部を突出させた状態で前記コンタクトの他の一部を収容する収容部を有するハウジングと、を備えたコネクタであって、前記収容部は、前記コンタクトの突出方向から前記突出方向と垂直な方向の一方側にかけて開口しており、前記コンタクトは、前記ハウジングに固定される固定部と、前記収容部から突出し、接続対象物と接触する接触部と、前記固定部と前記接触部との間に設けられ、前記固定部と前記接触部との前記突出方向の離間距離が小さくなるように弾性変形するバネ部と、前記接触部に対して前記バネ部とは反対側に設けられた係止部と、を備えており、前記ハウジングは、前記係止部の前記突出方向への移動を制限することにより前記バネ部が弾性変形した状態を維持する係止受部を備えており、前記コンタクトは、前記係止部から、前記突出方向と垂直な方向の前記一方側とは反対側である他方側に向けて延び、前記他方側へ向けて前記突出方向とは反対側へ傾斜した傾斜部をさらに備えている。
【0009】
第一の態様に係るコネクタでは、コンタクトが係止部を備え、ハウジングが係止受部を備えている。係止受部は、コンタクトの係止部の突出方向への移動を制限することによりバネ部が弾性変形した状態を維持する。
このため、コンタクトがプリロード状態になっているので、接触部の小さな変位量(突出方向とは反対側の変位量)で接触対象物に対する大きな接触圧を確保できる。
【0010】
また、ハウジングは、コンタクトの一部を突出させた状態でコンタクトの他の一部を収容する収容部を有しており、収容部は、コンタクトの突出方向から当該突出方向に垂直な方向の一方側にかけて開口している。
このため、コンタクトの一部を収容部に収容させる作業(コンタクトをハウジングに組み込む作業、以下「組込み作業」という。)を、収容部に対して突出方向に垂直な方向の一方側からコンタクトを差し込むことで行うことができる。
【0011】
さらに、コンタクトは、係止部から、突出方向と垂直な方向の一方側とは反対側である他方側に向けて延び、当該他方側へ向けて突出方向とは反対側へ傾斜した傾斜部を備えている。換言すると、傾斜部は、係止部からコンタクトの差込み方向前側に向けて延びており、差込み方向前側へ向けて突出方向とは反対側へ傾斜している。
したがって、組込み作業において、上述のようにコンタクトを収容部に差し込むときに、傾斜部をハウジングの係止受部に当接させることで、コンタクトの係止部をハウジングの係止受部に誘い込み、固定部と接触部との突出方向の離間距離が小さくなるようにコンタクトのバネ部を弾性変形させることができる。
つまり、ハウジングの収容部にコンタクトを差し込むことで、収容部にコンタクトの一部を収容させるだけでなく、コンタクトをプリロード状態にすることができる。
【0012】
第二の態様に係るコネクタは、第一の態様において、前記係止受部は、前記収容部の前記突出方向の端部に設けられた張出部である。
【0013】
第二の態様に係るコネクタでは、係止受部が、収容部の突出方向の端部に設けられた張出部であるので、収容部のうち、係止受部に対して突出方向と反対側の空間を大きく確保できる。つまり、コンタクトがプリロード状態からさらに弾性変形する際に、その弾性変形(変形ストローク)を許容する空間を大きく確保できる。よって、充分な接触圧をより一層確保しやすい。
【0014】
第三の態様に係るコネクタは、第一の態様又は第二の態様において、前記係止受部は、前記収容部の幅方向両側から張出した一対の張出部であり、前記係止部は、前記一対の張出部の両方によって前記突出方向への移動を制限され、前記傾斜部は、前記係止部の幅方向両側から延びている。
【0015】
第三の態様に係るコネクタでは、係止部の突出方向への移動を制限する係止受部が、収容部の幅方向両側から張出した一対の張出部であり、係止部は、一対の張出部の両方によって突出方向への移動を制限される。このため、組み込まれたコンタクトが幅方向の片側へ傾いてしまうことが抑制される。さらに、傾斜部が、係止部の幅方向両側からそれぞれ延びている。このため、組込み作業中、傾斜部が一対の張出部の両方に接触するので、組込み作業中に、コンタクトが幅方向の片側へ傾いてしまうことが抑制される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係るコネクタは、コンタクトの小さな変位量で大きな接触圧を確保できると共に生産性に優れるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
図2図1の2−2線断面図である。
図3】実施形態に係る自由状態のコンタクトを示す斜視図である。
図4】実施形態に係る自由状態のコンタクトを示す側面図である。
図5】実施形態に係るハウジングを示す斜視図である。
図6】実施形態に係るハウジングを示す背面図である。
図7図6の7−7線断面図である。
図8】コンタクトをハウジングに組付ける作業中の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るコネクタ10について説明する。
【0019】
<コネクタ>
図1及び図2に示されるように、コネクタ10は、コンタクト20とハウジング30とを備えており、コンタクト20がハウジング30に組み込まれることで構成されている。
【0020】
以下の説明では、まず、ハウジング30に組み込まれる前の状態(自由状態)のコンタクト20と、ハウジング30と、について説明する。そして、ハウジング30にコンタクト20を組み込む作業(「組込み作業」)について説明し、その後、ハウジング30にコンタクト20が組み込まれた状態のコネクタ10(単に「コネクタ10」という。)について説明する。
【0021】
<コンタクト(自由状態)>
まず、図3及び図4を用いて、ハウジング30に組み込まれる前の状態(自由状態)のコンタクト20について説明する。
【0022】
なお、以下のコンタクト20についての説明では、図3及び図4に示される矢印Xをコンタクト前方向、矢印Yをコンタクト幅方向一方側、矢印Zをコンタクト上方向として説明する。また、特記なく前後、上下、幅という語を用いる場合は、コンタクト前後方向の前後、コンタクト上下方向の上下、コンタクト幅方向の幅を示すものとする。
【0023】
コンタクト20は、例えば、板材をプレス加工により帯板状に打ち抜いた後、曲げ加工を施すことで形成されている。コンタクト20の材質は、導電性を有する材質、例えば銅合金である。
【0024】
コンタクト20は、その一端側から他端側へ向けて、基板接続部21Aと、固定部22と、「バネ部」としての第一湾曲部23Aと、第二湾曲部23Cと、第一直線部24と、接触部25と、第二直線部26Aと、第三湾曲部26Bと、第三直線部26Cと、係止部27と、傾斜部28と、を主要な構成部分として備えている。
以下、帯板状のコンタクト20について、接触部25における接触対象物に接触する側の面(上面)を外面とし、外面とは反対側の面を内面として説明する。
【0025】
基板接続部21Aは、板厚方向を前後方向に向けており、上下方向に延びている。基板接続部21Aは、コネクタ10が固定される基板(図示省略)のランドパターンに接続される。基板接続部21Aの上端は、板厚方向外面側へ略90度屈曲した第一屈曲部21Bを介して、固定部22に繋がっている。
【0026】
固定部22は、板厚方向を上下方向に向けており、前後方向に延びている。固定部22の後端付近は、基板接続部21Aと略同一の幅寸法とされた幅狭部22Aとなっており、幅狭部22Aよりも前方側には、幅寸法が幅狭部22Aに対して幅方向両側に拡大された幅広部22Bが形成されている。幅広部22Bの幅方向両側には、係止突起22Tが形成されている。係止突起22Tは、後述するハウジング30の固定溝34(図6図7参照)に圧入されることで、固定部22をハウジング30に対して固定する働きをする。固定部22の他端側(前端側)は、第一湾曲部23Aに繋がっている。
【0027】
第一湾曲部23Aは、板厚方向内面側に湾曲している。これにより、第一湾曲部23Aは、その一端側では前方へ延びているが、上方へ向けて次第に方向転換した後、他端側では後方かつ上方の斜め方向へ延びている。第一湾曲部23Aの他端側が延びる方向は、後方向に対して若干上方へ傾いた方向になっている。第一湾曲部23Aの他端側は、直線状に延びる転換部23Bを介して、第二湾曲部23Cに繋がっている。
【0028】
第二湾曲部23Cは、第一湾曲部23Aとは反対側(板厚方向外面側)に湾曲している。第二湾曲部23Cは、その他端側で後方かつ上方の斜め方向に延びている。第二湾曲部23Cの他端側は、第一直線部24に繋がっている。
【0029】
第一直線部24は、後方かつ上方の斜め方向に直線状に延びている。具体的には、第一直線部24が延びる方向は、水平方向に対して約60度になっている。
【0030】
第一直線部24の他端付近(上端付近)は、第一直線部24の他の部分と比較して、幅寸法が小さくなっている。換言すると、第一直線部24は、第一湾曲部23Aや第二湾曲部23Cと同じ幅寸法の幅広部24Aと、幅寸法が変化する変化部24Bと、幅広部24Aよりも小さい幅寸法の幅狭部24Cと、を備えている。第一直線部24の他端側(上端側)は、接触部25に繋がっている。
【0031】
接触部25は、板厚方向内面側へ屈曲しており、上方へ凸となる形状になっている。接触部25は、相手側基板のランドパターンなどの「接触対象物」と接触する部分である。接触部25の他端側(後端側)は、第二直線部26Aに繋がっている。
【0032】
第二直線部26Aは、後方かつ下方の斜め方向(後方側へ向かって緩やかに下り勾配となった方向)へ直線状に延びている。第二直線部26Aの他端側は、第三湾曲部26Bに繋がっている。
【0033】
また、上述した第一直線部24、接触部25、及び第二直線部26Aには、その幅方向中央に、外面側(上方側)へ突出するビード29が一体に形成されている。ビード29は、第一直線部24の延在方向中間部から接触部25を跨いで第二直線部26Aの延在方向中間部までの範囲に形成されている。
【0034】
第三湾曲部26Bは、板厚方向内面側へ向けて湾曲している。第三湾曲部26Bの他端は、第三直線部26Cに繋がっている。
【0035】
第三直線部26Cは、後方かつ下方の斜め方向(後方へ向かって急な下り勾配となった方向)へ直線状に延びている。第三直線部26Cは、第二直線部26Aよりも急な下り勾配になっている。第三直線部26Cの他端は、板厚方向外面側へ向けて屈曲した第二屈曲部26Dを介して、係止部27に繋がっている。
【0036】
係止部27は、後方かつ上方の斜め方向(具体的には、後方へ向けて若干上り勾配となった方向)に直線状に延びている。これにより、係止部27の外面(上面)も、後方へ向けて若干上り勾配となっている。係止部27の一端側(前端側)であって幅方向の両端部は、傾斜部28に繋がっている。
【0037】
傾斜部28は、第三直線部26C及び第二屈曲部26Dの幅方向外側に対応する部分を切り離し、接続部28Aにおいて板厚方向内側へ屈曲させることで形成されている。このため、傾斜部28は、幅方向に並んで一対形成されている。傾斜部28は、その基端部の板厚方向内面側へ屈曲した接続部28Aと、接続部28Aから前方かつ下方の斜め方向に直線状に延びる本体部28Bと、を備えている。本体部28Bの外面(上面)は、接続部28Aの外面を介して係止部27の外面に滑らかに接続されている。
【0038】
図4に示されるように、係止部27及び傾斜部28は、共に前方に向かって下方側に傾斜している点では共通しているが、傾斜部28の方が係止部27よりも、前方へ向かって急な下り勾配になるように傾斜している。
【0039】
図3に示されるように、係止部27の幅寸法W3は、第一直線部24の幅狭部24C、接触部25、第二直線部26A、第三湾曲部26B、第三直線部26C及び第二屈曲部26Dの幅寸法W1よりも大きく、また、第一直線部24の幅広部24Aの幅寸法W2よりも大きくなっている。
また、傾斜部28の幅寸法W4(一対の傾斜部28を併せてみたときの幅寸法)は、係止部27の幅寸法W3と略同一である。したがって、傾斜部28の幅寸法W4は、第一直線部24の幅狭部24C、接触部25、第二直線部26A、第三湾曲部26B、第三直線部26C及び第二屈曲部26Dの幅寸法W1よりも大きく、また、第一直線部24の幅広部24Aの幅寸法W2よりも大きくなっている。
【0040】
(コンタクトの弾性変形の仕方)
図4に示されるように、コンタクト20の第一直線部24に後方向の荷重F1が作用したり、接触部25に下方向の荷重F2が作用したりすると、コンタクト20のうち主として第一湾曲部23Aが弾性変形する。
すると、図3図4に示される自由状態と比較して、固定部22と接触部25との上下方向の離間距離が小さくなる。また、第一湾曲部23Aよりも他端側の部分(つまり係止部27や傾斜部28)が、幅方向の軸周りに若干回転する(図2参照)。
別の説明をすると、第一湾曲部23A付近に幅方向の仮想的な軸を想定した場合、当該仮想軸を中心として第一湾曲部23Aよりも他端側の部分が若干回転するような変形をする。これにより、係止部27や傾斜部28は、幅方向の軸周りに若干回転しながら下方へ変位する(図2参照)。
【0041】
<ハウジング>
次に、図5図7を用いて、ハウジング30について説明する。
【0042】
なお、以下のハウジング30についての説明では、図5図7に示される矢印Xをハウジング前方向、矢印Yをハウジング幅方向一方側、矢印Zをハウジング上方向として説明する。また、特記なく前後、上下、幅という語を用いる場合は、ハウジング前後方向の前後、ハウジング上下方向の上下、ハウジング幅方向の幅を示すものとする。
【0043】
ハウジング30は、合成樹脂で一体に成形されており、全体として略直方体形状となっている。
【0044】
ハウジング30は、基板に載置される底板部31と、底板部31から立設された複数(本実施形態では4つ)の壁部32と、を備えている。複数の壁部32は、それぞれ壁厚方向を幅方向に向け、幅方向に並んで設けられている。
【0045】
これら底板部31と壁部32とによって、溝孔状の収容部40が3つ形成されている。収容部40は、コンタクト20の一部(例えば接触部25)を上方へ突出させた状態で、他の一部(例えば固定部22や第一湾曲部23A)を収容する部分(空間)となる(図1参照)。
【0046】
3つの収容部40は互いに略同一の構造とされている。
【0047】
以下、説明の簡略化のため、3つの収容部40のうち最も幅方向一方側(図6の最も左側)の収容部40についてのみ説明する。
【0048】
図5に示されるように、収容部40は上方へ向けて開口していると共に後方へ向けて開口しており、1つの大きな開口となっている。つまり、収容部40は、上方から後方にかけて開口している。
【0049】
また、収容部40は、前方へ向けても開口している(図7参照)。ただし、複数の壁部32は、それらの前方側かつ上方側の端部において、天板部33により幅方向に連結されている。この天板部33によって、上方から後方へかけての開口と前方の開口とは分離されている。
【0050】
壁部32の下端部には、壁部32を壁厚方向に抉ったような形状の固定溝34が形成されている。固定溝34は、収容部40を形成する一対の壁部32の両方に形成されている。これにより、収容部40の下端部における幅寸法D3は、収容部40の上下方向中間部における幅寸法D2よりも大きくなっている。収容部40の下端部には、組込み状態においてコンタクト20の固定部22が配置され、固定溝34には固定部22の係止突起22Tが圧入される。
【0051】
壁部32の上端部には、収容部40の幅方向内側へ向けて張り出すように一対の「係止受部」としての張出部35が形成されている。張出部35は、収容部40を形成する一対の壁部32の両方に形成されている。これにより、収容部40の上端部における幅寸法D1は、収容部40の上下方向中間部における幅寸法D2よりも小さくなっている。
【0052】
張出部35は、略直方体形状に張出している。これにより、図7に示されるように、張出部35は、収容部40の幅方向内側を向いた側面35Sと、下方向を向いた下面35Lと、ハウジング後方向を向いた後面35Rと、を有している。張出部35の下面35Lと後面35Rとの間には、「誘込み面」としての下角面35K1が形成されている。下角面35K1は、張出部35の下面35Lと後面35Rとの間の角部を面取りしたような形状となっている。
【0053】
また、張出部35の側面35Sと後面35Rとの間には、横角面35K2が形成されている。横角面35K2は、張出部35の側面35Sと後面35Rとの間の角部を面取りしたような形状となっている。
【0054】
(コンタクト20との寸法関係)
収容部40の上端部における幅寸法D1は、コンタクト20の第三直線部26Cなどの幅寸法W1やコンタクト20の第一直線部24の幅広部24Aの寸法W2よりも大きく(W1、W2<D1)、係止部27の幅寸法W3や傾斜部28の幅寸法W4よりも小さい(D1<W3、W4)。
【0055】
他方、収容部40の上下方向中間部における幅寸法D2は、コンタクト20の第三直線部26Cなどの幅寸法W1、コンタクト20の第一直線部24の幅広部24Aの寸法W2、係止部27の幅寸法W3や傾斜部28の幅寸法W4よりも大きい(W1、W2、W3、W4<D2)。
【0056】
また、収容部40の上下方向中間部における幅寸法D2と、コンタクト20の係止部27の幅寸法W3との差(つまり、D2−W3)は、張出部35の張出し量(つまり、(D2−D1)/2)よりも小さい。
【0057】
また、収容部40の下端部における幅寸法D3は、コンタクト20の固定部22の最大寸法W5(係止突起における幅寸法)よりも若干小さくなっている。
【0058】
<組込み作業>
次に、図8を用いて、コンタクト20をハウジング30に組み込む作業(「組込み作業」)について説明する。
【0059】
組込み作業は、ハウジング30の後方からコンタクト20を収容部40に差し込むことで行う。具体的には、収容部40の下端部に沿うようにコンタクト20の固定部22を差込み、コンタクト20の係止突起22Tを固定溝34に圧入する。
このとき、固定部22の幅広部22Bの後端に治具等を用いて前方向の力(図3の矢印P参照)を加えることにより行い、コンタクト20の接触部25を治具などで下方へ向けて押圧してコンタクト20を撓ませることは行わない。
【0060】
コンタクト20の固定部22の幅広部22Bがハウジング30の固定溝34に入ると、ハウジング30に対するコンタクト20の姿勢(角度)が定まる。具体的には、コンタクト上下方向と、ハウジング上下方向とが一致する。
また、コンタクト20の固定部22の幅広部22Bがハウジング30の固定溝34に入ると、ハウジング30に対するコンタクト20の固定部22の高さ位置が定まる。具体的には、コンタクト20の固定部22の高さ位置と、ハウジング30の収容部40の下端部(固定溝34が形成された部分)の高さ位置が一致する。
【0061】
そのまま組込み作業を進めると、図8に示されるように、コンタクト20の傾斜部28が、ハウジング30の張出部35に当接する。このとき、コンタクト20の傾斜部28は、ハウジング30の張出部35から斜め下方向き(後方かつ下方の斜め方向)の反力を受ける。
【0062】
さらに組込み作業を進めると、コンタクト20の傾斜部28をハウジング30の張出部35が登るようにして当接状態が続き、傾斜部28の基端部側(係止部27側、後方側)に近づくにつれて徐々にコンタクト20の第一湾曲部23Aが撓んでいく。
別の説明をすると、コンタクト20の傾斜部28がハウジング30の張出部35から斜め下方向の反力を受けるため、コンタクト20の傾斜部28が下方へ移動していき、これによりコンタクト20の第一湾曲部23Aが次第に弾性変形していく。
【0063】
その後、ハウジング30の張出部35は、傾斜部28と繋がる係止部27にまで到達し、コンタクト20の差し込み作業が完了する。具体的には、コンタクト20の係止部27の上面とハウジング30の張出部35の下面35Lとが当接した状態となる(図2参照)。
【0064】
<組込み状態>
次に、コンタクト20がハウジング30に組み込まれた状態(「組込み状態」)のコネクタ10(以下、単に「コネクタ10」という。)について説明する。
【0065】
なお、以下のコネクタ10についての説明では、図1及び図2に示される矢印Xをコネクタ前方向、矢印Yをコネクタ幅方向一方側、矢印Zをコネクタ上方向として説明する。また、特記なく前後、上下、幅という語を用いる場合は、コネクタ前後方向の前後、コネクタ上下方向の上下、コネクタ幅方向の幅を示すものとする。なお、コネクタ10の前後、上下、幅方向は、ハウジング30の前後、上下、幅方向と一致している。
【0066】
コネクタ10は、コンタクト20と、コンタクト20が組み込まれたハウジング30と、を備えている。
【0067】
図2に示されるように、コンタクト20のうち、第一直線部24の一部、接触部25、第二直線部26A、第三湾曲部26B及び第三直線部26Cの一部は、収容部40から突出している。これにより、コンタクト20の接触部25は、ハウジング30の上面30Aよりも上方に位置しており、接触対象物と接触可能になっている。
【0068】
また、コンタクト20の固定部22に形成された係止突起22Tがハウジング30の固定溝34に圧入されており、コンタクト20の固定部22がハウジング30の収容部40の下端部に固定されている。
【0069】
コンタクト20の第一湾曲部23Aは、自由状態よりもさらに板厚方向内面側へ湾曲している。これにより、固定部22と接触部25との上下方向の離間距離が、自由状態と比較して小さくなっている。この状態で、コンタクト20の係止部27の上面がハウジング30の張出部35の下面35Lに接触している。
つまり、ハウジング30の張出部35は、係止部27がこれ以上コネクタ上方への移動することが制限しており、コンタクト20の第一湾曲部23Aが弾性変形した状態を維持している。
【0070】
また、コンタクト20の第一湾曲部23Aよりも係止部27側(他端側)は、自由状態と比べて、幅方向の軸周りに若干回転した状態になっている。
具体的には、自由状態でコンタクト前後方向(固定部22の延在方向)に対して約60度傾いていた第一直線部24は、その延在方向を固定部22の延在方向(コネクタ前後方向)に対して約45度の方向に向けている。また、自由状態でコンタクト上下方向(固定部22の板厚方向)に対して傾いていた第三直線部26Cは、その延在方向を固定部22の板厚方向(コネクタ上下方向)に向けている。
【0071】
また、自由状態でコンタクト前後方向(固定部22の延在方向)に対して傾いていた係止部27は、その延在方向を固定部22の延在方向(コネクタ前後方向)に対して平行に向けている。他方、傾斜部28は、固定部22の延在方向に対する傾きを自由状態と比較して小さくしているものの、依然として、固定部22の延在方向(コネクタ前後方向)に対して傾いている。
【0072】
<作用・効果>
次に、本実施形態のコネクタ10の作用及び効果について説明する。
【0073】
本実施形態に係るコネクタ10では、コンタクト20が係止部27を備え、ハウジング30が張出部35を備えている。張出部35は、コンタクト20の係止部27の突出方向(コネクタ上方向)への移動を制限することにより第一湾曲部23Aが弾性変形した状態を維持する。
このため、コンタクト20がプリロード状態になっているので、接触部25の小さな変位量(突出方向とは反対側の変位量、コネクタ下方向の変位量)で接触対象物に対する大きな接触圧を確保できる。
【0074】
また、ハウジング30は、コンタクト20の一部(例えば接触部25)を突出させた状態でコンタクト20の他の一部(例えば固定部22)を収容する収容部40を有しており、収容部40は、コンタクト20の突出方向(コネクタ上方向)から当該突出方向に垂直な方向の一方側(コネクタ後方向)にかけて開口している。
このため、コンタクト20の一部を収容部40に収容させる作業(組込み作業)を、収容部40に対して突出方向に垂直な方向の一方側(コネクタ後方向)からコンタクト20を差し込むことで行うことができる。
【0075】
さらに、コンタクト20は、係止部27から、突出方向と垂直な方向の一方側とは反対側である他方側(コネクタ前方向)に向けて延び、当該他方側(コネクタ前方向)へ向けて突出方向とは反対側(コネクタ下方向)へ傾斜した傾斜部28を備えている。換言すると、傾斜部28は、係止部27からコンタクト20の差込み方向前側に向けて延びており、差込み方向前側へ向けて突出方向とは反対側(コネクタ下方向)へ傾斜している。
したがって、組込み作業において、上述のようにコンタクト20を収容部40に差し込むときに、図8に示されるように傾斜部28をハウジング30の張出部35(係止受部)に当接させることで、コンタクト20の係止部27をハウジング30の張出部35に誘い込み、固定部22と接触部25との突出方向の離間距離が小さくなるようにコンタクト20の第一湾曲部23A(バネ部)を弾性変形させることができる。
つまり、ハウジング30の収容部40にコンタクト20を差し込むことで、収容部40にコンタクト20の一部を収容させるだけでなく、コンタクト20をプリロード状態にすることができる。
【0076】
また、本実施形態に係るコネクタ10では、係止部27の突出方向(コネクタ上方向)への移動を制限する係止受部が、収容部40の突出方向の端部(コネクタ上端部)に設けられた張出部35であるため、収容部40のうち、張出部35(係止受部)に対して突出方向と反対側(ハウジング下方向)の空間を大きく確保できる。つまり、コンタクト20がプリロード状態からさらに弾性変形する際に、その弾性変形(変形ストローク)を許容する空間を大きく確保できる。よって、充分な接触圧をより一層確保しやすい。
【0077】
また、本実施形態に係るコネクタ10では、係止部27の突出方向(コネクタ上方向)への移動を制限する係止受部が、収容部40の幅方向両側から張出した一対の張出部35であり、係止部27は、一対の張出部35の両方によって突出方向(コネクタ上方向)への移動を制限される。このため、組み込まれたコンタクト20が幅方向の片側へ傾いてしまうことが抑制される。さらに、本実施形態に係るコネクタ10では、傾斜部28が、係止部27の幅方向両側からそれぞれ延びている。このため、組込み作業中、傾斜部28が一対の張出部35の両方に接触するので、組込み作業中に、コンタクトが幅方向の片側へ傾いてしまうことが抑制される。
【0078】
また、本実施形態に係るコネクタ10では、接触部25と固定部22との突出方向(コンタクト上下方向)の離間距離が小さくなるように第一湾曲部23Aが弾性変形すると、係止部27や傾斜部28が固定部22に対して回転する。
このため、ハウジング30に組み込まれた状態で、突出方向に垂直な方向(コネクタ前後方向)に対して傾斜している傾斜部28は、組込み作業中の状態(具体的には、傾斜部28がハウジング30の張出部35が当接する前の自由状態)では、さらに大きく傾斜している。具体的には、図4に示される自由状態の傾斜部28の上下方向の寸法α0は、図2に示される組み込まれた状態の傾斜部28の上下方向の寸法α1よりも大きい。
したがって、係止部27を張出部35の下面35Lまで誘い込む距離(突出方向の距離、本実施形態ではα0+β)を大きくとることができ、その結果、組込み作業においてコンタクト20の第一湾曲部23Aを大きく弾性変形させることができる。
【0079】
また、本実施形態に係るコネクタ10では、ハウジング30の張出部35に「誘込み面」としての下角面35K1が形成されている。このため、下角面35K1のハウジング上下方向の寸法βだけ、係止部27を張出部35まで誘い込む距離を大きくとることができる。よって、コンタクト20をより一層大きなプリロード状態にすることができる。
【0080】
また、本実施形態のコネクタ10では、ハウジング30の収容部40の下端部に固定溝34が形成されており、コンタクト20の固定部22に形成された係止突起22Tが固定溝34に圧入されることで、コンタクト20がハウジング30に組み込まれる。つまり、ハウジング30及びコンタクト20は、組込み作業中におけるコンタクト20の差込み軌跡を規制する差込み軌跡規制機構を備えているといえる。このため、差込み作業において、コンタクト20の傾斜部28をハウジング30の張出部35(の下角面35K1)に上手く当接させ、スムーズに組込み作業を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態のコネクタ10の組込み方法では、コンタクト20の接触部25や第一直線部24などを治具等で押圧してコンタクト20を撓ませることなく、ハウジング30にコンタクト20を組み込む。
このため、コンタクトの接触部を治具等で押圧してコンタクトを撓ませながらハウジングにコンタクトを組み込む組込み方法と比較して、組込みの際に治具等と接触する接点部に損傷が生じる虞を低減することができる。また、ハウジングにコンタクトを組み込んだ後、コンタクトの接触部などを治具等で押圧してコンタクトをプリロード状態にする方法と比較して、生産性に優れ、かつ製造時にコンタクト20に損傷が生じにくいコネクタ10とすることができる。
【0082】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上記実施形態では、傾斜部28が、その基端部の板厚方向内面側へ屈曲した接続部28Aと、接続部28Aから前方かつ下方の斜め方向に直線状に延びる本体部28Bと、を備えている例を説明した。しかし本発明はこれに限定されない。
例えば、傾斜部28の本体部28Bが直線状に延びていなくてもよく、傾斜部全体がコンタクト幅方向から見て曲がっていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、3つのコンタクト20を備えているコネクタ10について説明した。しかし、本発明に係るコネクタはこれに限定されず、少なくとも1つのコンタクトを備えていればよい。
【0084】
また、上記実施形態では、コンタクト20の接触部25や第一直線部24などを治具等で押圧してコンタクト20を撓ませることなく、ハウジング30にコンタクト20を組み込む組込み方法を説明した。しかし、本発明に係るコネクタは、この組込み方法によって製造されたコネクタに限定されない。例えば、コンタクト20の接触部25などを補助的に治具で抑えつつ、コンタクト20を収容部40に差し込んで製造されたコネクタであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 コネクタ
20 コンタクト
22 固定部
23A 第一湾曲部(バネ部)
25 接触部
27 係止部
28 傾斜部
30 ハウジング
34 固定溝
35 張出部(係止受部)
40 収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8