【解決手段】 中央脚部13A、Bと、この中央脚部13A、Bの両側に配された左右脚部11A、B、12A、Bとを備えたコア部10と、中央脚部13A、Bの周囲に導線を巻回してなるコイル部20と、コイル部20の熱を外部に放出する熱伝達シート30とを備え、コイル部20は、平角線をエッジワイズ巻きにて前記中央脚部の周囲に巻回するようにして構成され、巻回されたコイル部20の周囲を熱伝達シート30に当接するように配設されてなる。
前記コイル部の一巻きの巻回形状において、前記熱伝達シートに当接する側の下底が上底に対して1.5倍以上の長さであり、かつ内角の中で最小のものが60度以上である台形形状とされていることを特徴とする請求項1記載のリアクトル。
前記コイル部の一巻きの巻回形状が、四角形または五角形をなし、前記熱伝達シートに当接する辺の長さが、全辺の中で最大の長さであり、かつ内角の中で最小のものが60度以上であることを特徴とする請求項1記載のリアクトル。
前記中央脚部および前記左右脚部を含む平面に直交する方向である上下方向には、前記中央脚部に巻回されるコイル部の高さよりも、前記左右脚部のボビンの高さを大きく設定し、該左右脚部のボビンに囲まれる空間内に封止樹脂を充填したときに、該充填された封止樹脂が外部に溢れることがなく、かつ前記コイル部全体を被覆し得る構成とされていることを請求項1〜4のうちいずれか1項記載のリアクトル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リアクトルとしては、送電系統用の大容量のものから、通信器部品にいたるまで、使用用途に応じて種々のタイプのものが知られているが、特に、大容量のものでは、コイルにおける発熱量が大きいことから、リアクトルサイズの小型化を図るために、放熱の効率化を一層図りうる技術の出現が望まれていた。特に、例えば多層のソレノイド巻きによってコイルを形成した場合、最外周に位置する導線を熱伝達シートに押し当てても、コイル発熱量の大きい内周で発生した熱を熱伝達シートに伝達するのは、時間がかかり効率が良くない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、特に、大容量用において、サイズの小型化を図った場合にも、発生した熱を、部品外部に効率的に放出し得るリアクトルおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るリアクトルおよびリアクトルの製造方法は、以下の特徴を備えている。
本発明に係るリアクトルは、
中央脚部と、この中央脚部の両側に配された左右脚部とを備えたコア部と、
該中央脚部の周囲に導線を巻回してなるコイル部と、
該コイル部の熱を外部に放出する熱伝達シートとを備え、
前記コイル部は、平角線をエッジワイズ巻きにて前記中央脚部の周囲に巻回するようにして構成され、巻回された該コイル部の周囲を前記熱伝達シートに当接するように配設さ
れてなることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記コイル部の一巻きの巻回形状において、前記熱伝達シートに当接する側の下底が上底に対して1.5倍以上の長さであり、かつ内角の中で最小のものが60度以上である台形形状とされていることが好ましい。
また、前記コイル部の一巻きの巻回形状が、四角形または五角形をなし、前記熱伝達シートに当接する辺の長さが、全辺の中で最大の長さであり、かつ内角の中で最小のものが60度以上であることが好ましい。
【0008】
また、前記中央脚部と前記左右脚部との、該中央脚部の延びる方向に直交する断面形状において、
前記脚部の配列方向の左右幅は、前記中央脚部の方が大きいのに対し、前記脚部の配列方向と直交する方向の上下長さは前記左右脚部の方が大きく形成されて、前記断面形状の断面積が互いに近づくように設定されていることが好ましい。
【0009】
また、前記中央脚部および前記左右脚部を含む平面に直交する方向である上下方向には、前記中央脚部に巻回されるコイル部の高さよりも、前記左右脚部のボビンの高さを大きく設定し、該左右脚部のボビンに囲まれる空間内に封止樹脂を充填したときに、該充填された封止樹脂が外部に溢れることがなく、かつ前記コイル部全体を被覆し得る構成とされていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るリアクトルの製造方法は、
中央脚部と、この中央脚部の両側に左右脚部が配されるようにしてコア部を所定の磁路状に配置し、
該中央脚部の周囲に平角線からなる導線をエッジワイズ巻きにより巻回してコイル部を形成し、
巻回された該コイル部の周囲部分の一部を、外部に熱を放出する熱伝達シートに押し当てたことを特徴とするものである。
【0011】
ここで、上述した「エッジワイズ状に巻く」あるいは「エッジワイズ巻き」とは、平角線材の一方の側縁である短辺を内径面として縦に巻いて板状に積層することをいうものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリアクトルによれば、中央脚部の周囲に巻回するコイル部として、平角線を用いているので大容量の電流を流すのに好適である。しかもこの平角線を中央脚部の周囲に、エッジワイズ巻きにより巻回しており、コイル部の各一巻きは、内周、外周が同じ平角線材の一方の側縁と他方の側縁として形成されているので、高温となりやすいコイル内周部からコイル外周部に当接されている熱伝達シートに、速やかに熱を伝達することができる。
【0013】
したがって、大容量用のリアクトルにおいて、サイズの小型化を図った場合にも、発生した熱を、部品外部に効率的に放出することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るリアクトルについて図面を参照しつつ説明する。
リアクトルは、例えば、自動車に搭載される各種機器の電気回路要素として使用され、コア部と、このコア部に巻回されるコイル部を備えており、通常は、コイル部周囲に、コイルボビンを介してコア部が挿通され、これらがケース内に収納され充填材等により固定された構成とされる。
本実施形態のリアクトルは、コンパクトなサイズの割に大電流を扱う場合にも、好適に用いることができる。
〈リアクトルの主要構成〉
【0016】
本実施形態のリアクトル1は、略E字状の部分コア(
図1では一方の部分コアのみが示されている)10Aと、この部分コア10Aに対向する部分コア10B(
図3(B)を参照)とが組み合わされたコア部10の中央脚部13A、Bの周囲に巻回されたコイル部20とを備えている。
この中央脚部13A、Bは断面台形状とされており、また、この周囲に巻回されるコイル部20も平角線がエッジワイズ巻きによって台形状に巻回されてなる。コイル部20は平角線を用いることにより、比較的、大電流に対応することができる。
【0017】
図示するように、コイル部20は、断面が、上底に比べて下底が長い台形状とされており、下底を構成する大きい外周面が熱伝導シート30上に広い面積に亘って当接されている(熱伝達シート30側の辺あるいは面を下底と称する)。このような、リアクトルはコンパクトな構成とされるほど、放熱が難しくなるが、本実施形態のリアクトルにおいては、平角線をエッジワイズ巻きにより巻回しているため、コイル部20の各一巻きは、内周、外周が同じ平角線材の一方の側縁と他方の側縁として形成されていることになり、高温となりやすいコイル内周部から、コイル外周部に当接されている熱伝達シート30に、速やかに熱を伝達することができる。
【0018】
熱伝達シート30は、ケース50の底面壁部を介して図示されないヒートシンク(水冷の場合は水:以下同じ)と対向しており、熱伝達シート30に伝達された熱はヒートシンクから外部に放出される。
したがって、大容量用のリアクトルにおいて、サイズの小型化を図った場合にも、発生した熱を、部品外部に効率的に放出することが可能である。
【0019】
また、部分コア10A、B(以下、部分コア10A、Bを組み合わせてコア部10とも称する)の左右脚部11A、12Aは、コイル部20の台形の外形状に沿うように、上方においては幅広で、下方に向かうと幅狭となるように形成されている。これにより、コイル部20の形状を台形状に許容しつつ、リアクトルの磁気特性を効率的に向上させることができる。
また、中央脚部13A、Bは、
図2および
図3(B)に示すように、磁性体部分とスペーサー部分(磁性体または非磁性体)とが交互に配設された構成とされている。すなわち
、磁性体部分は、部分コア10Aの中央突設部15Aと、断面台形状の磁性コア片15B、Cと、部分コア10Bの中央突設部15Dとからなり、これら4つの磁性体部分の間に非磁性体部分である第1スペーサー16A、Cおよび第2スペーサー16Bが挟まれている。なお、スペーサー16A〜Cの台形状断面は、磁性体部分の各部15A〜Dの台形状断面よりも一回り小さい大きさとされている。
【0020】
このように、中央脚部13A、Bを、4つに分割された磁性体部分と、これら磁性体部分の間に配された3つの非磁性体部分により構成して、磁性体部分同士の1つの間隔を短くしているので、トータルとしての磁束漏れ量を低減することができる。
勿論、分割する磁性体部分と、その間に位置する非磁性体部分の数はこれ以外の数とすることができる。
【0021】
図3(A)は、リアクトル1の全体的な外観を示すものである。ただし、部分コア10A、Bは他部材により被覆されて外観には表れないので、ボビン40A、Bとコイル部20を取り外した
図3(B)により表す。
すなわち、各部分コア10A、Bは、コイル部20等との間の絶縁性を保持するボビン40A,Bにより被覆されている。またこのボビン40A、Bは、各部分コア10A、Bを被覆した状態で互いに突き合わされてなり(コアの脚部の先端は被覆されていない)、さらに各隅部分には、外方に張り出す張出部42A〜Dが設けられている。
【0022】
アルミ製のケース50は、このような組み付けられたボビン40A、Bの全体を収納するようになっている。また、ケース50の各角部は外方に向かって突出する突出部51A〜Dが設けられており、この突出部51A〜Dによりボビン40A、Bの張出部42A〜Dが収容されるようになっている。
このようにケース50の内壁面には、上記ボビン40A、Bの外側面が当接するようになっていて、ボビン40A、Bがケース50の内部に、丁度収納されるようになっている。
【0023】
このボビン40A、Bの各張出部42A〜Dには、図示されない透孔が穿設されていて、これらの透孔を通してねじ60A〜Dが、ケース50の底部からせり上がった段部(52A〜D)の上面に螺入されるようになっている。すなわち、ねじ60A〜Dをねじ込んでいくことにより、ボビン40A、B全体がケース50の底部に向かって押し下げられ、中央脚部13A、Bを被覆する部分であるボビン40A、Bの下端面がコイル部20の内周面を下方に押圧し、コイル部20の下方外周面は、熱伝達シート30の上面に押圧されることになる。
【0024】
上述したことは、内部状態を示す
図4において、中央脚部13Aを被覆するボビン40Aの下端面がコイル部20の下底部分の内周部に当接されているのに対し、ボビン40Aの上端面がコイル部20の上底部分の内周部とは間隙を空けて対向していて、当接してはいない、ことからも明らかである。
これにより、コイル部20に発生した熱を、熱伝達シート30を介して外部に効率良く放出することができる。
【0025】
なお、熱伝達シート30は、ケース50の底面壁部を介して図示されないヒートシンクと対向しており、熱伝達シート30に伝達された熱はヒートシンクから外部に放出される。
【0026】
このようにして、コア部10、コイル部20およびボビン40A、Bを組み付けたものを一体的にケース50にねじ止めすることができる。なお、実際には、各部材同士は位置決めされた状態で、必要に応じて接着剤で互いに接着される。また、後述するように、絶
縁性接着剤を各部材間に充填することにより、各部材間の相対位置が固定される。
【0027】
前述したように、本実施形態においては、ボビン40A、Bに囲まれた中央孔70内に、シリコン系、ウレタン系およびエポキシ系等の絶縁性樹脂剤71を充填する。初期状態では、このような樹脂は流動性があるので、コア部10とコイル部20の間隙に浸入し、これら両者間の絶縁性を高めることができる。また、このような絶縁性樹脂剤71を用いることにより、上記両者間の間隙が微小であっても絶縁性を確実なものとすることができるので、クリアランスを小さくすることができ、コンパクト化を促進することができる。
すなわち、
図3(A)に示すように、本実施形態のリアクトル1は、ボビン40A、Bを組み付けた状態において、ボビン40A、Bに囲まれた中央孔70が構成されるが、この中央孔70には、流動性のある絶縁性樹脂剤71が充填され(中央孔70の最上部まで充填される)、コイル部20全体を含めてオーバーモールドされるように構成されている。これにより、絶縁性樹脂剤71がコア部10とコイル部20の隙間に入り込んで両者の絶縁を確実にとることができる。
【0028】
このように、コイル部20の上底の上面よりも、ボビン40A、Bの中央孔70の開口部位置を高く設定し、ボビン40A、Bに囲まれる中央孔70に絶縁性樹脂剤71を充填したときに、該充填された絶縁性樹脂剤71が外部に溢れることがなく、かつコイル部20全体を被覆し得る構成とすることが好ましい。
【0029】
また、この絶縁性樹脂剤71は、保護層として機能し、各部材が、リアクトル外部の部材と接触等したときに損傷を受ける事態を防止することができる。
本実施形態においては、ボビン40A、Bに囲まれた中央孔70のみに絶縁性樹脂剤71を充填するようにしており、このボビン40A、Bの外周全体を絶縁性樹脂剤71により被覆する場合と比べると、絶縁性樹脂剤71の充填量を大幅に減らすことができる。絶縁性樹脂剤71は単価が高いため、本実施形態によれば、製造コストを大幅に低減することができる。
なお、ボビン40A、Bの外周全体を絶縁性樹脂剤71により被覆しても、絶縁性および保護性のメリットは必ずしも大きくはないので、中央孔70のみに絶縁性樹脂剤71を充填することによっても大きな問題は生じないと考えらえる。
【0030】
上記コア部10は、鉄粉など強磁性材料を微細な粉末にし、その表面を絶縁被膜で覆い、圧縮して固めた圧粉磁心からなる。上記強磁性材料としては、純鉄、またはNi,Cu,Cr,Mo,Mn,C,Si,Al,P,B,NおよびCoの元素から選択される1種以上の添加元素を含有する鉄合金が例として挙げられる。
また、上記コイル部20は平角線を巻回することにより形成されているが、平角線は、
図1等に示すように帯状の扁平な導線であって、例えば、厚みは0.5mm〜6.0mm、幅は1.0
〜16.0mm程度を一般的な形状とする。
なお、ボビン40A、Bは、
図3(A)に示すように、コア部10を被覆するため、各々、部分コア10A、Bを一回り大きくした外形状をなし、成形性、量産性、微細加工性、電気絶縁性、低廉性および機械的な強度等を考慮し、例えばPPS、6,6−ナイロン等の熱可塑性樹脂、フェノール、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等、絶縁性樹脂を用いて成形される。
【0031】
ケース50は、アルミニュームにより形成されているが、その他の種々の材料を用いることができる。
また、
図4に示すように、コア部10(2つの部分コア10A、Bを組み合わせたもの)を流れる磁束に対して、コア断面に狭いところがあると、この部分により磁気特性の劣化が生じるので、本実施形態においては、磁束が流れる方向に直交する断面の面積が略同様の値となるようになっている。すなわち、図示する部分コア10Aにおいても、磁束が
流れる方向に直交する断面の面積、例えば、左右脚部11Aの先端面の面積と、中央脚部13Aの根元部分(中央突出部15Aとコア本体部15Eを合わせたT字形状の部分)の断面の面積が、互いに略等しくなるように形成されている。
勿論、状況に応じて、左右脚部11Aの断面積と、中央脚部13Aの断面積とのいずれかを大きく設定することも可能であり、例えば、初期L値を大きくする目的の下に、左右
脚部11Aの断面積を大きくすることも可能である。
【0032】
また、
図4に示すように、中央脚部13Aと左右脚部11A、12Aとの、該中央脚部13Aの延びる方向に直交する断面形状において、脚部配列方向の左右幅は、中央脚部13Aのほうが大きいのに対し、脚部配列方向と直交する上下方向長さは左右脚部11A、12Aの方が長く形成されており、両者の断面形状の断面積が互いに近い値となるように設定されている。この場合にも、状況に応じて、上記一方の断面形状を上記他方の断面形状に比べて大きく設定することが可能である。
また、前述したように、本実施形態においては、左右脚部11Aの断面形状が独特の形状とされており、中央脚部13A、Bのコイル部20が断面台形状とされているので、そのコイル部20の外周部に沿うように、上方部分においては幅広となるように、また下方部分においては幅狭となるように構成されている。これにより、スペースの効率化を図りつつ、磁気特性の向上を図ることができる。
【0033】
ところで、本実施形態においては、前述したように、中央脚13A、Bを断面台形状に構成し、その周囲を巻回するコイル部20の形状を断面台形状となるようにしている。このようにコイル部20を断面台形状としているのは、コイル20の全体の長さに対する、コイル20の熱伝達シート30に当接する長さの割合を高めるためである。つまり、断面台形状とすれば、下底が上底よりも長くなるので、両側片が同一の長さであれば、断面長方形状の場合よりも、コイル部20の熱伝達シート30と当接する割合が高まり放熱効果を上げることができる理屈である。
【0034】
図5は、コア部10Dおよびコイル部20Aが、断面台形状(台形様形状)である場合に、ヒートシンク80Aと接触している熱伝達シート30Aに、コイル部20Aの外周面が当接している様子を示すものである。
図5によれば、コイル部20Aが断面台形状の場合に、このコイル部20Aの外周面と熱伝達シート30Aの接触割合が大きくなる様子を示している。
このような観点からすれば、下底に対して上底を小さくしていくほど放熱効果を向上させることができることになる。したがって、上底を極限まで小さくした三角形状のものは放熱効果をさらに向上させることができることになる。
【0035】
図6は、本発明の変更形状に係るリアクトルの概念を示すものであり、コア部10Eおよびコイル部20Bが、断面三角形状(三角形様形状)である場合に、ヒートシンク80Bと接触している熱伝達シート30Bに、コイル部20Bの外周面が当接している様子を示すものである。
図6によれば、コイル部20Bが断面三角形状の場合に、このコイル部20Bの外周面と熱伝達シート30Bの接触割合が、さらに大きくなる様子を示している。ただし、コイル部20Bを三角形状とした場合、三角形の頂点では、内角が鋭角となり、平角線を縦方向に折り曲げることが難しくなる。特に、60度を大幅に下回った場合には、折り曲げ時に平角線に損傷を生じる虞があるので、内角を60度以上とするように配慮することが肝要である。
【0036】
これに対し、
図7は、従来技術1に係るリアクトルの概念を示すものであり、コア部110Dおよびコイル部120Aが、断面円形状(円形様形状)である場合に、ヒートシンク180Aと接触している熱伝達シート130Aに、コイル部120Aの外周面が当接している様子を示すものである。
図7によれば、コイル部120Aが円形状の場合に、この
コイル部120Aの外周面と熱伝達シート130Aは略点接触(実際には線接触)となり放熱性は大幅に低下する様子を示している。
【0037】
また、
図8は、従来技術2に係るリアクトルの概念を示すものであり、コア部110Eおよびコイル部120Bが、断面正方形状(正方形様形状)である場合に、ヒートシンク180Bと接触している熱伝達シート130Bに、コイル部120Bの外周面が当接している様子を示すものである。
図8によれば、コイル部120Bが正方形状の場合に、下方に位置する辺は、上方に位置する辺と等しい長さとなり、上述した実施形態のようにコイル部20Aを台形状とする場合や、上述した変更形状のようにコイル部20Bを三角形状とする場合と比べて、コイル部120Bの外周面と熱伝達シート130Bの接触割合が小さくなるので、放熱性が低下する様子を示している。
【0038】
また、本実施形態においては、リアクトル1を製造する際に、インサート成形の手法を用いている。
すなわち、コア部10を成形した後、このコア部10とコイル部20とを、
図3(A)に示すようにケース50内に収納した状態で、インサート成形機内にセットし、さらに絶縁性樹脂剤71をボビン40A、Bの中央孔70内に充填した後、金型内で一体成形処理を行う。
これにより、迅速かつ確実に、絶縁性を確保しつつ、リアクトル1の全体を一体化することができる。
(変更態様)
【0039】
本発明のコイル部品としては上記実施形態および上記変更形状のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
例えば、コア部やコイル部の断面形状としても、上記実施形態および上記変更形状のものに限られるものではなく、それ以外の種々の形状やタイプのものに変更が可能である。例えば、上述した断面台形状のコア部やコイル部に替えて、五角形状のコア部やコイル部を用いることも可能である。この場合には、頂点における内角が大きくなり平角線の折り曲げ処理時に平角線が損傷する虞は小さくなるが、その一方で、平角線の折り曲げに要する工数が増加し、製造効率が低下することに配慮する必要がある。
【0040】
上述したコイル部の断面形状を台形状とした場合、効率の観点から考慮すると、上底に対して下底が1.5倍以上の長さであり、かつ最小の内角が60度以上となるように形成することが好ましい。
また、一般的に、前記コイル部の断面形状を台形以外の四角形または五角形とした場合、効率の観点から考慮すると、熱伝達シートに当接する辺の長さが、全辺の中で最大であり、かつ最小の内角が60度以上となるように形成することが好ましい。
【0041】
また、本実施形態のリアクトル1においては、E字状の各部分コア10A、Bの対応する脚部11A、B、12A、B、13A、Bの先端を互いに突き合わせて組み合わせられるが、互いの先端部分は、全体として曲面形状をなすように面取りをしてもよい。このような曲面形状とすることにより、直流重畳特性を良好なものとすることができる。
以下本発明の実施例に係るリアクトルについて、比較例と比較しつつ説明する。
【実施例】
【0042】
実施例として、実施形態と同様の、
図9(A)に示す断面台形状のコア部10Fおよびコイル部20Dに形成し、表1に示す如く、各部材の熱伝導率(W/m・k)を設定する
ことにより実施例サンプルを作製した。これと同時に、比較例として、
図9(B)に示す断面長方形状のコア部110Fおよびコイル部120Dに形成し、表1に示す如く、各部材の熱伝導率(W/m・k)を設定することにより比較例サンプルを作製した。
なお、実施例と比較例とで、中央脚部13F、113Fと左右脚部11F、12F、111F、112Fの断面積は互いに同じとなるように設定した。また、実施例と比較例の何れも、コア部10F、110Fとコイル部20D、120Dとの距離は2.3mmに設定した。他部材については同じ大きさとした。また、絶縁性樹脂剤71は実施形態における中央孔70のみに充填した。
【0043】
雰囲気温度は、実施例、比較例、共に85℃(無風時)に設定した。
このようにして作製した実施例サンプルと比較例サンプルについて、上記条件の下で、コイル部20D、120Dに、DC100Aに高周波のリップル電流を重畳させた波形の電流を通電したときのシミュレーションを行い、通電開始時から3000秒経過時の平均温度(各部品内での平均温度)および最大温度(部品内で最高温度となる部位の温度)について導出し、この導出した温度から放熱効果を評価した。
【0044】
表2に示すように、実施例と比較例とでは、コイル部20D、120Dの温度が平均値で3.55℃相違した。すなわち、実施例のものでは、比較例のものよりも平均値で3.55℃も優れた放熱効果が得られた。温度上昇値の比較では、実施例のものでは、比較例のものよりも7.6%優れた測定結果が得られた。
また、
図10に示すように、温度分布に関し、実施例のもの(
図10(A))では、比較例のもの(
図10(B))よりも、ヒートシンク(下方)からの冷却効果が効果的に得られていることが明らかである。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】