【解決手段】送電方向判定装置2は、調整変圧器11の一次側及び二次側の電圧を計測する電圧計測器21,22と、通電タップの切り替えの際に、単位期間ごとに計測された調整変圧器11の一次側及び二次側電圧のそれぞれについて、電圧の変化量の絶対値を積算期間において積算して一次側及び二次側電圧変化量の積算値を取得し、各積算期間について、一次側の積算値と二次側の積算値との差である電圧変化量差を算出し、複数の電圧変化量差における絶対値が最大の電圧変化量差に対応する積算期間の積算値が、一次側が二次側より大きければ逆送電と判定し、二次側が一次側より大きければ順送電と判定する判定部23を備える。このようにしてより正確な判定を行うことができ、送電方向の誤判定を回避することができる。
前記判定部は、前記第1及び第2の値の大小関係を判断する際に、第1の値が第2の値よりも閾値を超えて大きい場合に、第1の値が第2の値よりも大きいと判断し、第2の値が第1の値よりも前記閾値を超えて大きい場合に、第2の値が第1の値よりも大きいと判断し、第1の値と第2の値との差の絶対値が前記閾値より小さい場合に、前回の判定結果と同じ判定とする、請求項1または請求項2記載の自動電圧調整器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのような自動電圧調整器における送電方向の判定において、誤判定を回避したいという要望があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、自動電圧調整器における送電方向の判定において、誤判定を回避することができる送電方向判定装置、及びその送電方向判定装置を備えた自動電圧調整器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明による自動電圧調整器は、複数のタップを有する調整変圧器と、調整変圧器の通電タップを切り替えるタップ切替器と、調整変圧器の一次側及び二次側の電圧を計測する電圧計測器と、調整変圧器の電圧の計測結果に応じてタップ切替器を制御するタップ切替制御器と、タップ切替器によって通電タップが切り替えられる際に、電圧計測器によって単位期間ごとに計測された調整変圧器の一次側電圧の変化量に関する第1の値と、電圧計測器によって単位期間ごとに計測された調整変圧器の二次側電圧の変化量に関する第2の値とについて、第1の値が第2の値よりも大きい場合に、逆送電と判定し、第2の値が第1の値よりも大きい場合に、順送電と判定する判定部と、を備え、タップ切替制御器は、判定部による判定結果を用いてタップ切替器を制御し、タップ切替器は、通電タップを切り替えた後の不感期間においては、通電タップの切り替えを行わない、ものである。
このような構成により、通電タップを切り替えた後の電圧動揺が残っている状態において、通電タップの切り替えが行われないようにすることができる。その結果、送電方向の判定において、その電圧動揺に起因する誤判定を回避することができるようになる。
【0011】
また、本発明による自動電圧調整器では、判定部は、電圧計測器によって単位期間ごとに計測された調整変圧器の一次側電圧及び二次側電圧のそれぞれについて、単位期間ごとの電圧の変化量の絶対値を所定の積算期間において積算することによって、一次側電圧変化量の積算値及び二次側電圧変化量の積算値を積算期間ごとに取得する積算器と、各積算期間について、一次側電圧変化量の積算値と二次側電圧変化量の積算値との差である電圧変化量差を算出する差算出器と、差算出器によって積算期間ごとに算出された複数の電圧変化量差における絶対値が最大の電圧変化量差に対応する積算期間において、第1の値である一次側電圧変化量の積算値が第2の値である二次側電圧変化量の積算値よりも大きい場合に、逆送電と判定し、二次側電圧変化量の積算値が一次側電圧変化量の積算値よりも大きい場合に、順送電と判定する判定器と、を備えてもよい。
このような構成により、一次側及び二次側の電圧変化量の積算値を用いて送電方向の判定を行う場合において、上記の誤判定を回避することができるようになる。
【0012】
また、本発明による自動電圧調整器では、判定部は、第1及び第2の値の大小関係を判断する際に、第1の値が第2の値よりも閾値を超えて大きい場合に、第1の値が第2の値よりも大きいと判断し、第2の値が第1の値よりも閾値を超えて大きい場合に、第2の値が第1の値よりも大きいと判断し、第1の値と第2の値との差の絶対値が閾値より小さい場合に、前回の判定結果と同じ判定としてもよい。
このような構成により、大小関係を判断する対象が近い値である場合には、送電方向の判定を保留することによって、誤判定を回避することができるようになる。
【0013】
また、本発明による送電方向判定装置は、自動電圧調整器において送電方向を判定する送電方向判定装置であって、自動電圧調整器が有する調整変圧器の一次側及び二次側の電圧を計測する電圧計測器と、自動電圧調整器において通電タップが切り替えられる際に、電圧計測器によって単位期間ごとに計測された調整変圧器の一次側電圧の変化量に関する第1の値と、電圧計測器によって単位期間ごとに計測された調整変圧器の二次側電圧の変化量に関する第2の値とについて、第1の値が第2の値よりも閾値を超えて大きい場合に、逆送電と判定し、第2の値が第1の値よりも閾値を超えて大きい場合に、順送電と判定し、第1の値と第2の値との差の絶対値が閾値より小さい場合に、前回の判定結果と同じ判定とする判定部と、を備えたものである。
このような構成により、第1及び第2の値が近い場合には、送電方向の判定を保留することによって、誤判定を回避することができるようになる。
【0014】
また、本発明による送電方向判定装置では、判定部は、電圧計測器によって単位期間ごとに計測された調整変圧器の一次側電圧及び二次側電圧のそれぞれについて、単位期間ごとの電圧の変化量の絶対値を所定の積算期間において積算することによって、一次側電圧変化量の積算値及び二次側電圧変化量の積算値を積算期間ごとに取得する積算器と、各積算期間について、一次側電圧変化量の積算値と二次側電圧変化量の積算値との差である電圧変化量差を算出する差算出器と、差算出器によって積算期間ごとに算出された複数の電圧変化量差における絶対値が最大の電圧変化量差に対応する積算期間において、第1の値である一次側電圧変化量の積算値が第2の値である二次側電圧変化量の積算値よりも閾値を超えて大きい場合に、逆送電と判定し、二次側電圧変化量の積算値が一次側電圧変化量の積算値よりも閾値を超えて大きい場合に、順送電と判定し、一次側電圧変化量の積算値と二次側電圧変化量の積算値との差の絶対値が閾値より小さい場合に、前回の判定結果と同じ判定とする判定器と、を備えてもよい。
このような構成により、一次側及び二次側の電圧変化量の積算値を用いて送電方向の判定を行う場合において、上記の誤判定を回避することができるようになる。
【0015】
また、本発明による送電方向判定装置では、電圧計測器は、計器用変圧器を有しており、閾値は、計器用変圧器の出力側の電圧に換算した値が、
調整変圧器のタップ幅×計器用変圧器の変圧比/3
となるものであってもよい。
このような構成により、第1の値と第2の値との差の絶対値が、両値の小さい方の値より小さくなった場合に、誤判定の回避のため、送電方向の判定を保留することになる。
【0016】
また、本発明による自動電圧調整器は、送電方向判定装置と、複数のタップを有する調整変圧器と、調整変圧器の通電タップを切り替えるタップ切替器と、調整変圧器の電圧の計測結果に応じてタップ切替器を制御するタップ切替制御器と、を備え、タップ切替制御器は、判定部による判定結果を用いてタップ切替器を制御する、ものであってもよい。
このような構成により、自動電圧調整器において、誤判定の可能性の低減された判定結果を用いてタップ切替制御を行うことができるため、より精度の高い通電タップの切り替えを行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による自動電圧調整器等によれば、例えば、電圧動揺に起因する誤判定や、容量の大きな分散型電源に起因する誤判定を回避することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による自動電圧調整器について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による自動電圧調整器は、誤判定を防止するため、通電タップの切り替え後の不感期間に通電タップを切り替えず、また、一次側電圧の変化量に関する第1の値と二次側電圧の変化量に関する第2の値との差の絶対値が閾値より小さい場合に、前回の判定結果と同じ判定結果とするものである。
【0020】
図1は、本実施の形態による配電用の自動電圧調整器1の構成を示す図である。本実施の形態による自動電圧調整器1は、調整変圧器11と、タップ切替器12と、逆潮流検出器13と、タップ切替制御器14と、電圧計測器21と、電圧計測器22と、判定部23とを備える。なお、
図1で示されるように、電圧計測器21、電圧計測器22、及び判定部23によって送電方向判定装置2が構成されている。
【0021】
調整変圧器11は、複数のタップを有しており、一次側は一次側配電線4に接続され、二次側は二次側配電線5に接続されている。なお、各配電線4,5は、U,V,W三相の配電線であってもよい。また、調整変圧器11は、通常、一次側に複数のタップを有している。なお、複数のタップのうち、通電に使用されるタップを通電タップと呼ぶことにする。
【0022】
タップ切替器12は、タップ切替制御器14から出力されるタップ切替指令に応じて、調整変圧器11の通電タップを切り替える。また、タップ切替器12は、タップ切替の開始時から終了時まで、タップ切替中信号を送電方向判定装置2に出力する。そのタップ切替中信号は、例えば、タップ切替の開始時から終了時までの期間はハイレベルとなり、それ以外はローレベルとなる信号であってもよい。具体的には、タップ切替中信号は、通電タップの切り替えのためのモータの駆動を開始する際にローレベルからハイレベルになり、そのモータの駆動が終了する際にハイレベルからローレベルになる信号であってもよい。そのタップ切替中信号は、例えば、送電方向判定装置2に出力されてもよい。
【0023】
逆潮流検出器13は、電力の逆潮流を検出する。逆潮流検出器13は、例えば、二次側配電線5において、変流器と、変流器の出力、及び二次側の電圧計測器22が有する計器用変圧器(PT)の出力を入力として電力が順潮流か逆潮流かを検出する逆電力継電器(67リレー)とを備えていてもよい。なお、その逆潮流の検出は、一次側配電線4において行われてもよい。
【0024】
タップ切替制御器14は、調整変圧器11の電圧の計測結果に応じてタップ切替器12を制御する。通常、タップ切替制御器14は、調整変圧器11の二次側電圧を目標電圧に保つようにタップ切替器12を制御する。そのため、タップ切替制御器14は、調整変圧器11の二次側電圧、すなわち、電圧計測器22が有する計器用変圧器の出力電圧を用いて、タップ切替指令をタップ切替器12に出力する。タップ切替制御器14は、例えば、電圧計測器22が有する計器用変圧器の出力端子間に直列接続されている電圧調整継電器(90リレー)と、二次側配電線5を流れる負荷電流を検出する変流器の出力が入力される線路電圧降下補償器(LDC)とを備えていてもよい。また、タップ切替制御器14は、逆潮流検出器13による逆潮流の検出結果をも用いて、タップ切替器12を制御してもよい。例えば、逆送時タップ固定型SVRのモードで動作している場合には、タップ切替制御器14は、逆潮流が検出された際に、通電タップが固定されるようにタップ切替器12を制御してもよい。
【0025】
また、タップ切替制御器14は、判定部23による判定結果をも用いてタップ切替器12を制御してもよい。判定結果を用いてタップ切替器12を制御するとは、判定結果に応じたモードによってタップ切替器12を制御することであってもよい。送電方向が逆送電である場合には、タップ切替制御器14は、例えば、逆送時タップ固定型SVRのモードで動作してもよく、一次側電圧調整モードで動作してもよい。また、送電方向が順送電である場合には、タップ切替制御器14は、例えば、一般型SVRのモード(二次側電圧調整モード)で動作してもよい。ここで、一般型SVRのモードとは、例えば、二次側の計器用変圧器の出力端子間に直列接続されている90リレーとLDCとによって二次側の電圧を調整するモードである。また、逆送時タップ固定型SVRのモードとは、順潮流の際には二次側電圧調整モードで動作し、逆潮流の際には調整変圧器11のタップを固定するモードである。したがって、逆潮流の際にタップ切替制御器14が固定型SVRのモードとなると、通電タップが固定されることになる。また、一次側電圧調整モードとは、調整変圧器11の一次側電圧を目標電圧に保つようにタップ切替器12を制御するモードである。このモードで動作する場合には、タップ切替制御器14は、例えば、調整変圧器の一次側においても、電圧計測器21が有する計器用変圧器の出力端子間に直列接続されている90リレーと、一次側配電線4を流れる負荷電流を検出する変流器の出力が入力されるLDCとを備えていてもよい。すなわち、タップ切替制御器14は、上記二次側と同様の構成を、一次側にも有することになる。
【0026】
なお、タップ切替器12は、通電タップを切り替えた後の不感期間においては、通電タップの切り替えを行わない。通電タップが切り替えられた直後には、電圧動揺が発生する。したがって、その電圧動揺が発生している期間に通電タップの切り替えが行われ、その通電タップの切り替えに応じた送電方向の判定が行われると、通電タップの切り替えによる電圧変化に電圧動揺の影響が重畳されるため、誤判定となる可能性がある。一方、そのような期間における通電タップの切り替えを行わないようにすることによって、誤判定を回避することができるようになる。そのために、通電タップの切り替え後にタップ切替に関する不感期間を設定する。その不感期間に、結果として再度の通電タップの切り替えが行われなければよい。したがって、通電タップの切り替え後の不感期間には、タップ切替制御器14がタップ切替指令を出力しないようにしてもよく、または、不感期間には、タップ切替器12がタップ切替指令に応じた通電タップの切り替えを行わないようにしてもよい。前者の場合には、タップ切替制御器14は、例えば、タップ切替指令を出力する際に、不感期間であるかどうか判断し、不感期間である場合には、その不感期間が終了するのを待ってタップ切替指令を出力するようにしてもよい。
【0027】
不感期間は、例えば、100(ms)以上であってもよい。また、その不感期間は、例えば、3(s)以下であってもよい。具体的には、不感期間は、300(ms)であってもよく、500(ms)であってもよく、800(ms)であってもよく、その他の長さであってもよい。本実施の形態では、不感期間が500(ms)である場合について主に説明する。SVRにおける通電タップの切り替え後において電圧が動揺している期間が含まれるように不感期間の長さが設定されることが好適である。なお、その不感期間の始期は、通電タップの切り替えが終了した時点である。その通電タップの切り替えが終了した時点は、例えば、タップ切替中信号がハイレベルからローレベルに遷移するタイミングであってもよい。
【0028】
送電方向判定装置2は、自動電圧調整器1において送電方向を判定するものであり、前述のように、電圧計測器21,22と、判定部23とを備える。なお、本実施の形態では、電力の逆潮流が検出された場合に送電方向の判定を行う場合について主に説明するが、そうでなくてもよいことは言うまでもない。すなわち、送電方向判定装置2は、順潮流、逆潮流に関わらず、送電方向の判定を行ってもよい。
【0029】
電圧計測器21は、調整変圧器11の一次側の電圧を計測する。
図2は、電圧計測器21の構成を示すブロック図である。
図2において、電圧計測器21は、計器用変圧器(PT)41と、電圧検出器42と、AD変換器(A/D)43と、サンプルホールド手段44と、移動平均手段45とを備える。
【0030】
計器用変圧器41は、調整変圧器11の一次側電圧を降圧する小容量の変圧器である。電圧検出器42は、計器用変圧器41によって降圧された一次側電圧を検出してAD変換器43に出力する。AD変換器43は、電圧検出器42から入力された一次側電圧をデジタル信号に変換してサンプルホールド手段44に出力する。サンプルホールド手段44は、AD変換器43からの入力、すなわち一次側電圧の値を示すデジタル信号を、一定の単位期間ごとにホールドする。その単位期間は、通電タップの切り替えによる電圧変化の時間や、負荷変動やその他の原因による電圧変動の時間などと比較して十分短い時間であることが好適である。単位期間は、例えば、10(ms)や20(ms)、30(ms)等であってもよい。本実施の形態では、単位期間が20(ms)である場合について主に説明する。移動平均手段45は、サンプルホールド手段44によって単位期間ごとにホールドされた一次側電圧に移動平均処理を行う。その移動平均処理によって、一次側電圧が平滑化されることになる。その移動平均後の一次側電圧は、判定部23に出力される。
【0031】
ここで、単位期間ごとの電圧の検出タイミングの時刻をt0,t1,t2,…とする。その検出タイミングの隣接する時刻の差(例えば、t1−t0)が単位期間となる。また、各検出タイミングで検出された一次側電圧を、V1(t0),V1(t1),V1(t2),…とする。なお、説明の便宜上、移動平均後の一次側電圧も、V1(t0),V1(t1),V1(t2),…とする。
【0032】
電圧計測器22は、調整変圧器11の二次側の電圧を計測するものであり、二次側電圧を処理対象とする以外は、電圧計測器21と同様の構成を有するものであるため、その詳細な説明を省略する。各検出タイミングで検出された二次側電圧を、V2(t0),V2(t1),V2(t2),…とする。なお、説明の便宜上、移動平均後の二次側電圧も、V2(t0),V2(t1),V2(t2),…とする。
【0033】
なお、電圧計測器21,22の構成は、
図2に示されたものでなくてもよい。例えば、電圧計測器21,22の外部に計器用変圧器が存在する場合には、電圧計測器21,22は、計器用変圧器41を有していなくてもよい。また、電圧計測器21,22は、例えば、移動平均手段45を有していなくてもよい。
【0034】
判定部23は、タップ切替器12によって通電タップが切り替えられる際に、電圧計測器21によって単位期間ごとに計測された調整変圧器11の一次側電圧の変化量に関する第1の値と、電圧計測器22によって単位期間ごとに計測された調整変圧器11の二次側電圧の変化量に関する第2の値とを用いて送電方向の判定を行う。その判定は、上記のように、逆潮流検出器13によって逆潮流が検出された場合に行われてもよい。判定部23は、第1の値が第2の値よりも閾値を超えて大きい場合に、逆送電と判定し、第2の値が第1の値よりも閾値を超えて大きい場合に、順送電と判定する。ここで、第1の値が第2の値よりも閾値を超えて大きいとは、第1の値が、第2の値に閾値を足したものよりも大きいことを意味している。なお、判定部23は、第1の値と第2の値との差の絶対値が閾値より小さい場合に、前回の判定結果と同じ判定とする。そのように、前回の判定結果を用いることがあるため、少なくとも最新の判定結果は、記録媒体等において保持されることが好適である。なお、1回目の判定時には前回の判定結果が存在しないため、前回の判定結果の初期値は、例えば、手入力で設定されてもよい。例えば、二次側に大規模な分散型電源がある場合には、送電方向を順送電とする判定結果が、前回の判定結果の初期値として設定され、そのような分散型電源がない場合には、送電方向を逆送電とする判定結果が、前回の判定結果の初期値として設定されてもよい。なお、上記閾値は、0より大きい正の実数である。
【0035】
ここで、第1及び第2の値は、例えば、上記特許文献1(特開2000−295774号公報)と同様に、電圧の変化量であってもよい。その電圧の変化量は、上記特許文献1に記載されているように、例えば、あるタイミングで検出された電圧と、別のタイミングで検出された電圧との差分であってもよく、電圧の微分値であってもよい。また、第1及び第2の値は、電圧の変化量の絶対値であってもよい。また、第1及び第2の値は、例えば、電圧の変化量の積算値であってもよい。本実施の形態では、この場合について主に説明する。すなわち、
図3で示されるように、判定部23が、積算器51,52と、差算出器53と、判定器54とを備える場合について説明する。
【0036】
積算器51は、電圧計測器21によって単位期間ごとに計測された調整変圧器11の一次側電圧について、単位期間ごとの電圧の変化量の絶対値を所定の積算期間において積算することによって、一次側電圧変化量の積算値を積算期間ごとに取得する。すなわち、積算器51は、移動平均後の一次側電圧V1(t0),V1(t1),V1(t2),…について、単位期間ごとの電圧の変化量の絶対値ΔV1iを次式のように算出する。
ΔV1i=|V1(ti)−V1(t(i−1))|
【0037】
なお、その変化量の絶対値ΔV1iは、i=1〜Zの各iについて算出される。Zは、時刻tZが判定を行う期間の終期となる正の整数値である。時刻tZは、例えば、タップ切替中信号がハイレベルからローレベルに遷移する時点であってもよく、その後の不感期間の終期であってもよい。本実施の形態では、後者の場合について主に説明する。また、ここでは、変化量として差分値を用いる場合について説明するが、変化量は、例えば、微分値であってもよい。
【0038】
その後、積算器51は、その変化量の絶対値ΔV1iを、所定の積算期間において積算し、その積算結果である一次側電圧変化量の積算値Σ
iΔV1を次式のように算出する。
【数1】
【0039】
その一次側電圧変化量の積算値Σ
iΔV1は、i=1〜Z−14の各iについて算出される。したがって、始期が単位期間ごとにずれている複数の積算期間について、積算値が算出されることになる。なお、例えば、始期が単位期間の2倍ごとにずれている複数の積算期間や、始期が単位期間の3倍ごとにずれている複数の積算期間について積算値が算出されてもよい。その場合には、例えば、一次側電圧変化量の積算値Σ
iΔV1は、i=1〜Z−14のうち、奇数のiについてのみ算出されてもよく、3の倍数のiについてのみ算出されてもよい。また、ここでは、隣接した15個の単位期間を積算期間としているが、それは一例である。積算期間をそれ以外にしたい場合には、上式の右辺の総和の上限を変更すればよい。例えば、隣接したP個の単位期間を積算期間とする場合、すなわち、単位期間のP倍を積算期間とする場合には、上式の右辺の総和の上限を、i+P−1にすればよい。その積算期間は、調整変圧器11の通電タップの切り替えによる電圧変化の期間より長く設定されることが好適である。一方、それ以外の要因による電圧変動が積算期間にできるだけ含まれない方が、判定結果がより正確なものとなる。したがって、積算期間は、調整変圧器11の通電タップの切り替えによる電圧変化の期間と同程度に設定されてもよい。
【0040】
積算器52は、電圧計測器22によって単位期間ごとに計測された調整変圧器11の二次側電圧について、単位期間ごとの電圧の変化量の絶対値を所定の積算期間において積算することによって、二次側電圧変化量の積算値を積算期間ごとに取得する。積算器52は、調整変圧器11の二次側電圧について積算を行う以外は、積算器51と同様のものであり、その詳細な説明を省略する。なお、積算器52は、移動平均後の二次側電圧V2(t0),V2(t1),V2(t2),…について、単位期間ごとの電圧の変化量の絶対値ΔV2iを、i=1〜Zについて次式のように算出する。
ΔV2i=|V2(ti)−V2(t(i−1))|
【0041】
また、積算器52は、その変化量の絶対値ΔV2iの積算結果である二次側電圧変化量の積算値Σ
iΔV2を次式のように算出する。
【数2】
【0042】
差算出器53は、各積算期間について、一次側電圧変化量の積算値Σ
iΔV1と二次側電圧変化量の積算値Σ
iΔV2との差である電圧変化量差ΔΣViを次式のように算出する。
ΔΣVi=Σ
iΔV1−Σ
iΔV2
【0043】
その電圧変化量差ΔΣViは、i=1〜Z−14の各iについて算出される。通常、負荷変動や変電所におけるタップ切替等によってSVRの電圧変動が生じる場合には、一次側の電圧変動と二次側の電圧変動とが同様のものになる。一方、調整変圧器11の通電タップの切り替えの際には、一次側の電圧変化と、二次側の電圧変化とが異なるものになる。したがって、上記のように電圧変化量差が算出されることによって、負荷変動等による電圧変動は相殺され、タップ切替による電圧変化量が残ることになる。その結果、電圧変化量の絶対値の積算結果の差を用いて送電方向の判定を行うことにより、タップ切替時の負荷変動等の影響を低減した送電方向の判定を実現できるようになる。
【0044】
判定器54は、差算出器53によって積算期間ごとに算出された複数の電圧変化量差ΔΣVi(i=1〜Z−14)における絶対値が最大の電圧変化量差を特定する。その絶対値が最大である電圧変化量差が、調整変圧器11のタップ切替に応じた電圧変化量差となる。負荷変動等による電圧変動では、一次側と二次側で同程度の変化が起こるのに対して、タップ切替による電圧変動では、一次側と二次側で異なる電圧変化が起こるからである。ここでは、ΔΣVmが、絶対値が最大の電圧変化量差であったとする。なお、mは、1〜Z−14のいずれかの整数である。判定器54は、絶対値が最大の電圧変化量差ΔΣVmに対応する積算期間において、一次側電圧変化量の積算値Σ
mΔV1が二次側電圧変化量の積算値Σ
mΔV2よりも閾値を超えて大きい場合に、逆送電と判定し、二次側電圧変化量の積算値Σ
mΔV2が一次側電圧変化量の積算値Σ
mΔV1よりも閾値を超えて大きい場合に、順送電と判定し、一次側電圧変化量の積算値Σ
mΔV1と二次側電圧変化量の積算値Σ
mΔV2との差の絶対値が閾値より小さい場合に、前回の判定結果と同じ判定とする。その判定結果は、タップ切替制御器14に出力されてもよい。
【0045】
閾値をTH(>0)とすると、判定器54は、次のように判定を行うことになる。
ΔΣVm>THである場合:送電方向は逆送電である
ΔΣVm<−THである場合:送電方向は順送電である
|ΔΣVm|<THである場合:送電方向は前回の判定結果と同じである
したがって、絶対値が最大の電圧変化量差ΔΣVmに対応する積算期間において、一次側電圧変化量の積算値と二次側電圧変化量の積算値との大小関係を比較して判定を行うことは、その絶対値が最大の電圧変化量差ΔΣVmを用いて判定を行うことである、ということができる。判定器54は、その絶対値が最大の電圧変化量差ΔΣVmと閾値THとを比較することによって判定を行うことになる。
なお、電圧変化量差は、二次側電圧変化量の積算値Σ
iΔV2から、一次側電圧変化量の積算値Σ
iΔV1を減算した値であってもよい。
【0046】
なお、自動電圧調整器1の二次側に存在する分散型電源の容量が大きい場合には、通電タップの切り替えによる電圧変化が一次側と二次側で同程度になることもあり得る。そのような場合に、一次側の積算値や二次側の積算値を用いた判定を行うと、誤判定となる可能性もありうる。したがって、そのような場合には、誤判定となることを回避するため、上記のように、確実に判定された(すなわち、閾値を超える差のある値を用いて判定された)過去の最新の結果を用いることによって、誤判定を回避することができると考えられる。
【0047】
また、積算値を用いて判定を行う場合には、上記第1の値は、一次側電圧変化量の積算値Σ
mΔV1となり、上記第2の値は、二次側電圧変化量の積算値Σ
mΔV2となる。なお、ΔΣVm=THである場合には、例えば、送電方向を逆送電としてもよく、前回の判定結果と同じとしてもよい。また、ΔΣVm=−THである場合には、例えば、送電方向を順送電としてもよく、前回の判定結果と同じとしてもよい。
【0048】
ここで、上記閾値THについて説明する。閾値THは、
|(第1の値)−(第2の値)|<TH
である場合に、「(第1の値)−(第2の値)」の正負が信頼できないと思われる程度の値に設定されることが好適である。例えば、閾値は、計器用変圧器41の出力側の電圧に換算した値が、
調整変圧器のタップ幅×計器用変圧器の変圧比/3
となるものであってもよい。すなわち、電圧計測器21,22の移動平均後の電圧を用いて上記の判定処理が行われる場合には、閾値THとして、調整変圧器11のタップ幅×計器用変圧器41の変圧比/3を用いてもよい。一方、電圧計測器21,22の移動平均後の電圧に対してさらに別の処理(例えば、1/2にする処理等)を行う場合には、調整変圧器のタップ幅×計器用変圧器の変圧比/3の値に対して、その別の処理に応じた換算を行った値を、閾値THとして用いてもよい。そのように、閾値として、上記のものを用いた場合には、第1の値と第2の値との比「第1の値/第2の値」が1/2より大きく、2より小さい範囲内では、前回の判定結果が用いられることになる。すなわち、第1の値:第2の値が、1:2から2:1の範囲では、第1及び第2の値のどちらが大きいかが明確でないとして、前回の判定結果が用いられることになる。なお、閾値THとして、それ以外の値を用いてもよいことは言うまでもない。また、調整変圧器11のタップ幅とは、通電タップの1段階の切り替えに応じて変化する電圧の幅のことである。例えば、通電タップを隣のタップに切り替えることによって調整変圧器11の電圧が100(V)変化する場合には、タップ幅は、100(V)となる。
【0049】
なお、この判定部23による判定は、逆潮流が検出され、その後に通電タップの切り替えが行われた際に行われることになる。その通電タップの切り替えは、SVRにおける電圧調整のために行われるため、通常、逆潮流が検出されても、その直後に通電タップの切り替えが行われるとは限らないため、逆潮流の検出から、送電方向の判定までの期間が長くなることもあり得る。したがって、逆潮流が検出された場合に送電方向の判定を行う場合には、例えば、逆潮流が検出された際に、SVRにおける電圧調整と関係なく、送電方向の判定のために通電タップを強制的に変更してもよい。
【0050】
次に、送電方向判定装置2の動作の一例について
図4のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)判定部23は、逆潮流が検出されたかどうか判断する。そして、逆潮流が検出された場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、逆潮流が検出されるまでステップS101の処理を繰り返す。
【0051】
(ステップS102)判定部23は、通電タップが切り替え中であるかどうか判断する。そして、通電タップが切り替え中である場合には、ステップS103に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。なお、判定部23は、例えば、タップ切替器12から出力されるタップ切替中信号を用いて、通電タップが切り替え中であるかどうかを判断してもよい。
【0052】
(ステップS103)電圧計測器21,22はそれぞれ、調整変圧器11の一次側電圧及び二次側電圧を単位期間ごとに計測する。その計測された一次側電圧及び二次側電圧は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。なお、電圧計測器21,22は、その計測を、例えば、通電タップが切り替え中である期間(タップ切替中信号がハイレベルである期間)に行ってもよく、不感期間を含めて行ってもよい。
【0053】
(ステップS104)積算器51,52は、一次側電圧の変化量と、二次側電圧の変化量とを、単位期間ごとに算出する。その算出された変化量は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0054】
(ステップS105)積算器51,52は、一次側電圧変化量の積算値と、二次側電圧変化量の積算値とを、積算期間ごとに算出する。その算出された積算値は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0055】
(ステップS106)差算出器53は、積算期間ごとに、一次側電圧変化量の積算値(第1の値)と二次側電圧変化量の積算値(第2の値)との差である電圧変化量差を算出する。ここでは、その電圧変化量差が、一次側電圧変化量の積算値から二次側電圧変化量の積算値を減算したものであるとする。その算出された電圧変化量差は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0056】
(ステップS107)判定器54は、絶対値が最大である電圧変化量差を特定する。
【0057】
(ステップS108)判定器54は、特定した電圧変化量差がTH(閾値)より大きいかどうか判断する。そして、特定した電圧変化量差がTHより大きい場合には、ステップS109に進み、そうでない場合には、ステップS111に進む。
【0058】
(ステップS109)判定器54は、送電方向が逆送電であると判定する。
【0059】
(ステップS110)判定器54は、送電方向の判定結果を保存する。その判定結果は、例えば、それまでに保存されている判定結果に上書きで保存されてもよい。そして、ステップS101に戻る。
【0060】
(ステップS111)判定器54は、特定した電圧変化量差が、−THより小さいかどうか判断する。そして、特定した電圧変化量差が−THより小さい場合には、ステップS112に進み、そうでない場合には、ステップS113に進む。
【0061】
(ステップS112)判定器54は、送電方向が順送電であると判定する。そして、ステップS110に進む。
【0062】
(ステップS113)判定器54は、送電方向を、前回の判定結果と同じにする。すなわち、判定器54は、前回の判定時に保存した判定結果を読み出して、その判定結果を、今回の判定結果とする。そして、ステップS110に進む。
なお、
図4のフローチャートにおいて、ステップS103〜S106の処理を並列的に行ってもよい。また、ステップS101〜S113の処理は、SVRにおいて順潮流から逆潮流に変わった際にのみ行われてもよい。また、逆潮流が検出されたかどうかに関係なく判定を行う場合には、ステップS101が存在しなくてもよい。また、
図4のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。また、
図4のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0063】
次に、本実施の形態による自動電圧調整器1の動作の具体例について、
図5を用いて説明する。この具体例では、単位期間が20(ms)であり、積算期間が300(ms)であるとする。また、この具体例では、500(ms)の不感期間も含めて一次側電圧及び二次側電圧の計測が行われるものとする。また、この具体例では、計器用変圧器41の変圧比が1/60であり、調整変圧器11のタップ幅が100(V)であるとする。そのため、計器用変圧器41の出力側の電圧に換算した値が0.55(≒100/(60×3))となる閾値THを用いるものとする。また、この具体例では、タップ切替制御器14は、一般型SVRのモードと、逆送時タップ固定型SVRのモードとで動作可能であるとする。
【0064】
まず、タップ切替制御器14が一般型SVRのモードで操作している際に、逆潮流検出器13によって逆潮流が検出されたとする。また、その後に、タップ切替制御器14が、二次側の電圧を調整するためにタップ切替指令をタップ切替器12に出力したとする。すると、タップ切替器12は、そのタップ切替指令に応じて、タップ切替中信号をハイレベルに遷移させる。そのタップ切替中信号の立ち上がりに応じて、判定部23は、逆潮流が検出され、また、通電タップが切り替え中であると判断し、電圧計測器21,22に、単位期間(20ms)ごとの一次側電圧と二次側電圧とのサンプリングを開始させる(ステップS101,S102)。その結果、電圧計測器21において、一次側電圧V1(t0),V1(t1),V1(t2),…が計測され、また、電圧計測器22において、二次側電圧V2(t0),V2(t1),V2(t2),…が計測される(ステップS103)。電圧計測器21,22は、タップ切替中信号がハイレベルである期間と、それに続く500(ms)の不感期間とを含む判定期間において、一次側電圧及び二次側電圧のサンプリングを行う。なお、
図5の一次側電圧V1及び二次側電圧V2に関し、実線で示されているのが移動平均前の電圧であり、破線で示されているのが移動平均後の電圧である。以後の変化量の算出や積算値の算出等は、その移動平均後の値を用いて行われる。
【0065】
次に、積算器51は、電圧計測器21によってサンプリングされた一次側電圧V1(t0),V1(t1),V1(t2),…,V1(tZ)を用いて、単位期間ごとの電圧の変化量の絶対値ΔV11,ΔV12,…,ΔV1Zを算出する。また、積算器52は、電圧計測器22によってサンプリングされた二次側電圧V2(t0),V2(t1),V2(t2),…,V2(tZ)を用いて、単位期間ごとの電圧の変化量の絶対値ΔV21,ΔV22,…,ΔV2Zを算出する(ステップS104)。
【0066】
その後、積算器51は、単位期間ごとの電圧の変化量の絶対値ΔV11,ΔV12,…,ΔV1Zを用いて、一次側電圧変化量の積算値Σ
1ΔV1,Σ
2ΔV1,…,Σ
Z-14ΔV1を算出する。また、積算器52は、単位期間ごとの電圧の変化量の絶対値ΔV21,ΔV22,…,ΔV2Zを用いて、二次側電圧変化量の積算値Σ
1ΔV2,Σ
2ΔV2,…,Σ
Z-14ΔV2を算出する(ステップS105)。
【0067】
なお、
図5で示されるように、時刻t=tNから負荷変動が発生したとする。その負荷変動の影響は、一次側と二次側とにおいて同程度になる。また、時刻t=tNからt(N+15)の積分期間において、タップ切替による電圧変化も生じたとする。その電圧変化は、主に二次側にのみ生じている。
図5から明らかなように、時刻t=tNからt(N+15)の積分期間における一次側電圧変化量の積算値Σ
N+1ΔV1は、D1となる。また、その積分期間における二次側電圧変化量の積算値Σ
N+1ΔV2は、D2+D3+D4となる。ここで、D2は、時刻t=tNからt(N+6)までの積算値であり、D3は、時刻t=t(N+6)からt(N+11)までの積算値であり、D4は、時刻t=t(N+11)からt(N+15)までの積算値である。
【0068】
差算出器53は、積算器51によって算出された一次側電圧変化量の積算値Σ
1ΔV1,Σ
2ΔV1,…,Σ
Z-14ΔV1と、積算器52によって算出された二次側電圧変化量の積算値Σ
1ΔV2,Σ
2ΔV2,…,Σ
Z-14ΔV2とを用いて、積算期間ごとに、両者の差である電圧変化量差ΔΣV1,ΔΣV2,…,ΔΣV(Z−14)を算出する(ステップS106)。
【0069】
なお、
図5の時刻t=tNからt(N+15)の積分期間については、ΔΣV(N+1)=D1−D2−D3−D4≒−D3となる。負荷変動による電圧変化よりも、通電タップの切り替えによる電圧変化の方が大きいからである。
【0070】
判定器54は、差算出器53によって算出された電圧変化量差ΔΣV1,ΔΣV2,…,ΔΣV(Z−14)のうち、絶対値が最大のものを特定する(ステップS107)。ここでは、ΔΣV(N+1)が特定されたとする。その電圧変化量差は、THより大きくないが、−THよりも小さかったとする(ステップS108,S111)。すると、判定器54は、送電方向が順送電であると判定し、その判定結果をタップ切替制御器14に出力する(ステップS112)。また、判定器54は、その判定結果を最新の判定結果として記録媒体に蓄積する(ステップS110)。このようにして、送電方向を判定する一連の処理が終了となる。
【0071】
タップ切替制御器14は、判定結果を受け取ると、その判定結果に応じて、一般型SVRのモードを継続することになる。なお、判定器54によって、送電方向が逆送電であると判定された場合(ステップS109)には、タップ切替制御器14は、動作モードを逆送時タップ固定型SVRのモードに切り替える。その結果、逆潮流が発生しているため、調整変圧器11の通電タップは固定されることになる。また、絶対値が最大である電圧変化量差の絶対値が、THよりも小さい場合には、前回の判定結果と同じ判定が行われる(ステップS113)。その結果、不確定な測定結果に基づいて、不適切なタップ切替が行われることを回避することができるようになる。
【0072】
また、タップ切替制御器14は、タップ切替中信号がローレベルになってから不感期間(500ms)が終わるまでは、電圧調整が必要な状況になっても、タップ切替指令をタップ切替器12に出力しないものとする。その結果、電圧動揺が残っている状況において再度の通電タップの切り替えが行われないようにすることができ、誤判定を回避できる。
【0073】
以上のように、本実施の形態による自動電圧調整器1によれば、通電タップを切り替えた後の電圧動揺が残っている状況においては、再度の通電タップの切り替えが行われないようにすることができる。その結果、送電方向の判定において、その電圧動揺に起因する誤判定を回避することができ、判定の精度を向上させることができる。また、一次側電圧の変化量に関する第1の値と、二次側電圧の変化量に関する第2の値とを比較する際に、閾値を用いて大小関係を判断することにより、第1及び第2の値が近い状況において、誤判定を行うことを回避することができる。また、その閾値として、計器用変圧器41の出力側の電圧に変換した値が、調整変圧器11のタップ幅×計器用変圧器41の変圧比/3となるものを用いることによって、第1及び第2の値の小さい方の値が大きい方の値の半分よりも大きい場合のように、両者が近似している場合には、第1及び第2の値の大小関係を用いた判定を行わないようにすることができ、誤判定を適切に回避することができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、判定器54が、第1及び第2の値の大小関係を判断する際に、閾値を用いる場合について説明したが、そうでなくてもよい。判定器54は、閾値を用いないで、すなわち上記閾値を0として判定を行ってもよい。その場合には、判定器54は、例えば、第1及び第2の値の大小関係を判断する際に、第1の値が第2の値よりも大きい場合に、逆送電と判定し、第2の値が第1の値よりも大きい場合に、順送電と判定してもよい。その場合であっても、不感期間が設定されることによって、誤判定の可能性を低減することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、不感期間が設定され、その不感期間においては通電タップの切り替えが行われない場合について説明したが、そうでなくてもよい。すなわち、不感期間の設定が行われなくてもよい。そのような場合であっても、第1及び第2の値の大小関係を判断する際に閾値が用いられることによって、誤判定の可能性を低減することができる。
【0076】
また、上記のように、第1及び第2の値は、積算値でなくてもよい。第1及び第2の値が積算値でない場合には、判定部23は、例えば、逆潮流が検出され、通電タップが切り替えられる際に、単位期間ごとに計測された一次側電圧の変化量である第1の値と、単位期間ごとに計測された二次側電圧の変化量である第2の値との大小関係を用いて、送電方向の判定を行ってもよい。その処理の詳細については、例えば、上記特許文献1を参照されたい。
【0077】
また、本実施の形態では、タップ切替器12から出力されるタップ切替中信号を用いて、通電タップが切り替え中であるかどうかが判断される場合について説明したが、そうでなくてもよい。他の方法を用いて、通電タップが切り替え中であるかどうかが判断されてもよい。例えば、通電タップを切り替えるモータが駆動中であるかどうかに応じて通電タップが切り替え中であるかどうかが判断されてもよい。
【0078】
また、本実施の形態では、電力の逆潮流が検出された際に送電方向の判定を行う場合について主に説明したが、そうでなくてもよいことは上記のとおりである。逆潮流が検出されたかどうかに関わらず、送電方向の判定を行う場合には、自動電圧調整器1は、逆潮流検出器13を備えていなくてもよい。なお、自動電圧調整器1が逆潮流検出器13を備えていない場合には、タップ切替制御器14は、判定部23による判定結果を用いたタップ切替器12の制御を行ってもよい。すなわち、タップ切替制御器14は、順潮流、逆潮流の検出結果に代えて、順送電、逆送電の判定結果を用いて制御を行ってもよい。具体的には、逆送時タップ固定型SVRの場合には、タップ切替制御器14は、順送電と判定されたときには二次側電圧を調整するように制御し、逆送電と判定されたときには通電タップが固定されるように制御してもよい。また、完全逆送型のSVRの場合には、タップ切替制御器14は、順送電と判定されたときには二次側電圧を調整するように制御し、逆送電と判定されたときには一次側電圧を調整するように制御してもよい。このような制御が行われることによって、例えば、逆送電時に順潮流となっている場合にも、自動電圧調整器1において適切な電圧調整が行われるようになる。
【0079】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0081】
また、上記実施の形態で説明した各構成要素のうち、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、磁気ディスクや半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。
【0082】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
前記判定器は、前記第1及び第2の値の大小関係を判断する際に、第1の値が第2の値よりも閾値を超えて大きい場合に、第1の値が第2の値よりも大きいと判断し、第2の値が第1の値よりも前記閾値を超えて大きい場合に、第2の値が第1の値よりも大きいと判断し、第1の値と第2の値との差の絶対値が前記閾値より小さい場合に、前回の判定結果と同じ判定とする、請求項1記載の送電方向判定装置。
前記判定器は、前記第1及び第2の値の大小関係を判断する際に、第1の値が第2の値よりも閾値を超えて大きい場合に、第1の値が第2の値よりも大きいと判断し、第2の値が第1の値よりも前記閾値を超えて大きい場合に、第2の値が第1の値よりも大きいと判断し、第1の値と第2の値との差の絶対値が前記閾値より小さい場合に、前回の判定結果と同じ判定とする、請求項4記載の自動電圧調整器。