特開2018-134037(P2018-134037A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-134037農業フィルム用コーティング剤組成物及び農業用改質熱可塑性高分子フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-134037(P2018-134037A)
(43)【公開日】2018年8月30日
(54)【発明の名称】農業フィルム用コーティング剤組成物及び農業用改質熱可塑性高分子フィルム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20180803BHJP
   A01G 13/02 20060101ALI20180803BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20180803BHJP
   C09D 101/08 20060101ALI20180803BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20180803BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180803BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20180803BHJP
   B32B 23/18 20060101ALI20180803BHJP
   B32B 23/22 20060101ALI20180803BHJP
【FI】
   A01G9/14 S
   A01G13/02 D
   C09D5/02
   C09D101/08
   C09D1/00
   C09D7/12
   B32B23/08
   B32B23/18
   B32B23/22
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-31097(P2017-31097)
(22)【出願日】2017年2月22日
(11)【特許番号】特許第6348197号(P6348197)
(45)【特許公報発行日】2018年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】潮谷 和史
【テーマコード(参考)】
2B024
2B029
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
2B024DB01
2B024DB07
2B024DB10
2B024EA01
2B029EB02
2B029EB16
2B029EB30
2B029EC09
4F100AA20B
4F100AH06B
4F100AJ06B
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK36B
4F100AK52B
4F100AK64A
4F100AK65A
4F100AK66A
4F100AK68A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10B
4F100CA02B
4F100DE01B
4F100EH46B
4F100EJ55A
4F100GB01
4F100JB16A
4F100JK09
4F100JM01B
4J038AA011
4J038BA021
4J038DL032
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA08
4J038NA05
4J038PB02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】農業用ハウスに張られた後において、初期の流滴性が良好であり、且つ長期間使用される間に農業用ハウスの骨材と繰り返し接触し、しかもかかる接触が乾燥状態と湿潤状態とが繰り返される状況下で行なわれた場合であっても良好な流滴性を維持することができる農業フィルム用コーティング剤組成物及びかかる組成物を用いた改質熱可塑性高分子フィルムを提供する。
【解決手段】農業フィルム用コーティング剤組成物として、無機コロイドゾルと、特定のセルロース誘導体と、水溶性架橋剤とを特定割合で含有して成るものを用いた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機コロイドゾルを固形分換算で30〜70質量%、下記のセルロース誘導体を20〜60質量%及び水溶性架橋剤を1〜30質量%(合計100質量%)の割合で含有してなることを特徴とする農業フィルム用コーティング剤組成物 。
セルロース誘導体:カルボキシメチルセルロース金属塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースから選ばれる少なくとも一つ
【請求項2】
セルロース誘導体が、2質量%水溶液の20℃での粘性率が1〜600mPa・sのものである請求項1記載の農業フィルム用コーティング剤組成物 。
【請求項3】
水溶性架橋剤が、水溶性メラミンである請求項1又は2記載の農業フィルム用コーティング剤組成物 。
【請求項4】
無機コロイドゾルを固形分換算で40〜67質量%、セルロース誘導体を30〜50質量%及び水溶性架橋剤を3〜25質量%(合計100質量%)の割合で含有しており、且つセルロース誘導体/水溶性架橋剤=10/1〜10/5(質量比)の比率で含有する請求項1〜3のいずれか一つの項記載の農業フィルム用コーティング剤組成物 。
【請求項5】
無機コロイドゾルを固形分換算で100質量部に対し、更にポリエーテル変性シリコーンを0.1〜50質量部の割合で含有する請求項1〜4のいずれか一つの項記載の農業フィルム用コーティング剤組成物 。
【請求項6】
熱可塑性高分子フィルムの表面処理面に、請求項1〜5のいずれか一つの項記載のコーティング剤組成物 が固形分として0.15〜0.5g/m付着していることを特徴とする農業用改質熱可塑性高分子フィルム。
【請求項7】
表面処理が、コロナ放電処理である請求項6記載の農業用改質熱可塑性高分子フィルム。
【請求項8】
熱可塑性高分子フィルムが、ポリオレフィン系樹脂フィルムである請求項6又は7記載の農業用改質熱可塑性高分子フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウスの被覆材として用いられる農業フィルム用のコーティング剤組成物及びかかるコーティング剤組成物を付着させた農業用改質熱可塑性高分子フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ハウスの被覆材として、熱可塑性高分子フィルムが広く使用されている。しかし、熱可塑性高分子フィルムそれ自体は疎水性の性質を持つため、曇りを生じて日光の透過を低下し易く、結果として農作物の生育不良を引き起こすという問題があり、また付着した水滴が落下して農作物に病害を発生させるという問題もある。このため、従来から、農業フィルムには防曇剤を添加したものや流滴剤をコーティングしたものが使用されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかし、これらの従来手段には、農業用ハウスに張られた後において、初期の流滴性は得られるものの、長期間使用される間にハウスの骨材と繰り返し接触し、しかもかかる接触が乾燥状態と湿潤状態とが繰り返される状況下で行なわれると、流滴性が失われていくという問題がある。従来手段では実際の耐用性に劣るのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−298954号公報
【特許文献2】特開平11−10783号公報
【特許文献3】特開2004−255807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、農業用ハウスに張られた後において、初期の流滴性が良好であり、且つ長期間使用される間に農業用ハウスの骨材と繰り返し接触し、しかもかかる接触が乾燥状態と湿潤状態とが繰り返される状況下で行なわれた場合であっても良好な流滴性を維持することができる農業フィルム用コーティング剤組成物及びかかる組成物を用いた農業用改質熱可塑性高分子フィルムを提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、無機コロイドゾルと、特定のセルロース誘導体と、水溶性架橋剤とを特定割合で含有して成るものが農業フィルム用コーティング剤組成物として正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、無機コロイドゾルを固形分換算で30〜70質量%、下記のセルロース誘導体を20〜60質量%及び水溶性架橋剤を1〜30質量%の割合で含有してなることを特徴とする農業フィルム用コーティング剤組成物に係る。また本発明は、かかる農業フィルム用コーティング剤組成物を付着させた農業用改質熱可塑性高分子フィルムに係る。
【0007】
セルロース誘導体:カルボキシメチルセルロース金属塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースから選ばれる少なくとも一つ
【0008】
先ず、本発明に係る農業フィルム用コーティング剤組成物(以下、本発明の組成物という)について説明する。本発明の組成物は、無機コロイドゾルを固形分換算で30〜70質量%、前記のセルロース誘導体を20〜60質量%及び水溶性架橋剤を1〜30質量%の割合で含有してなるものであるが、無機コロイドゾルを固形分換算で40〜67質量%、前記のセルロース誘導体を30〜50質量%及び水溶性架橋剤を3〜25質量%の割合で含有しており、且つセルロース誘導体/水溶性架橋剤=10/1〜10/5(質量比)の比率で含有してなるものが好ましい。
【0009】
本発明に供する無機コロイドゾルとしては、いわゆるシリカゾルやアルミナゾル等が挙げられ、水分散液として市販されているものを使用することができ、これらは単独で用いても併用してもよい。シリカゾルとしては、スノーテックスAK、スノーテックスAK−L(以上、いずれも日産化学社製の商品名)等のカチオン性酸性シリカゾル、スノーテックス30、スノーテックス30L、スノーテックスZL(以上、いずれも日産化学社製の商品名)、カタロイドSI−30、カタロイドSI−45P、カタロイドSI−80P(以上、いずれも日揮触媒化成社製の商品名)等のアニオン性アルカリ性シリカゾル、スノーテックスO、スノーテックスOL(以上、いずれも日産化学社製の商品名)、カタロイドSN(日揮触媒化成社製の商品名)等のアニオン性酸性シリカゾルが挙げられ、アルミナゾルとしては、アルミナゾル100、アルミナゾル200、アルミナゾル520(以上、いずれも日産化学社製の商品名)、カタロイドAS−1、カタロイドAS−2(以上、いずれも日揮触媒化成社製の商品名)等のカチオン性酸性アルミナゾルが挙げられる。
【0010】
かかる無機コロイドゾルとしては、無機コロイドゾルの存在下に、シラノール形成性有機シラン化合物を加水分解し、生成したシラノール化合物を縮合重合して、無機コロイドゾルの固形分粒子の表面に縮合重合物を付着させたもの(以下、これを改質無機コロイドゾルという)を使用することもできる。無機コロイドゾルの改質に用いるシラノール形成性有機シラン化合物としては、1)トリアルコキシシラン類、2)ジアルコキシシラン類、3)モノアルコキシシラン類等が挙げられる。トリアルコキシシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられ、ジアルコキシシラン類としてはジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられ、モノアルコキシシラン類としては、トリメチルメトキシシラン等が挙げられる。なかでもシラノール形成性有機シラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが好ましい。かかるシラノール形成性有機シラン化合物は、無機コロイドゾルの固形分換算100質量部に対して、1〜30質量部の割合で用いるのが好ましい。
【0011】
本発明の組成物に供するセルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース金属塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースから選ばれる少なくとも一つである。これらは単独で用いることもできるし、併用することもできる。かかるセルロース誘導体としては、2質量%水溶液の20℃での粘性率が1〜600mPa・sのものが好ましく、1〜400mPa・sのものがより好ましい。
【0012】
本発明の組成物に供する水溶性架橋剤としては、水溶性メラミン、水溶性エポキシ、水溶性オキサゾリン、水溶性アジリジン等が挙げられるが、水溶性メラミンが好ましい。水溶性メラミンとしては、市販されているものを使用することができ、これには例えば、ニカラックMX−035、ニカラックMW−22、ニカラックMW−12LF(以上、いずれも三和ケミカル社製の商品名)、ベッカミンM−3、ベッカミンMA−S、ベッカミンJ−101(以上、いずれもDIC社製の商品名)が挙げられる。
【0013】
本発明の組成物には更にポリエーテル変性シリコーンを含有することができる。かかるポリエーテル変性シリコーンは、前記無機コロイドゾルの固形分換算100質量部に対し、0.1〜50質量部の割合で用いる。
【0014】
かかるポリエーテル変性シリコーンとしては、市販されているものをそのまま使用することができる。そのような市販品としては例えば、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(以上、いずれもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の商品名)、X22−4952、X−22−4272、KF−6123、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−644、KF−6204、X−22−4515、KF−6004(以上、いずれも信越シリコーン社製の商品名)、SH8700、SH8410、SH8400、L−7002、FZ−2104、FZ−77、L−7604、FZ−2203、FZ−2208(以上、いずれも東レダウコーニング社製の商品名)等が挙げられるが、なかでもTSF4440、KF−354L、KF−945、SH8400、KF−6004等、HLBが4〜16のものが好ましい。
【0015】
次に、本発明に係る改質熱可塑性高分子フィルム(以下、本発明のフィルムという)について説明する。本発明のフィルムは、熱可塑性高分子フィルムの表面処理面に、前記した本発明の組成物が固形分として0.15〜0.5g/m付着しているものである。
【0016】
本発明のフィルムに供する熱可塑性樹脂としては、1)ポリオレフィン系樹脂、2)ポリ塩化ビニル系樹脂、3)ポリエステル系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のα−オレフィンの単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等のα−オレフィンの共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル・メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体が挙げられ、ポリ塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・メチルメタクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。これらは複数種類の熱可塑性樹脂をブレンドして使用することもできる。なかでも熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。かかるポリオレフィン系樹脂におけるα−オレフィンの共重合体は、いずれも公知の高活性チーグラー触媒、メタロセン触媒等の均一系触媒を用い、気相法、溶液重合法等によって得られるものがより好ましく、密度が0.86〜0.94g/cm3、MFRが0.01〜20g/10分であるものが特に好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、二つ以上のポリオレフィン系樹脂を混合して用いることもできる。これらの熱可塑性樹脂には、通常使用される酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、防霧剤、保温剤、顔料等を必要に応じて含有することができる。
【0017】
本発明のフィルムに供する熱可塑性高分子フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、例えばインフレーション成形法、Tダイ成形法等が挙げられる。フィルムは単層フィルムでも多層フィルムでもよく、また未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよい。農業用フィルムとしては、インフレーション成形により成形された前記ポリオレフィン系樹脂からなる熱可塑性高分子フィルムが好適である。
【0018】
本発明のフィルムは、前記熱可塑性高分子フィルムの本発明の組成物を塗布することとなる面に表面処理をした後、本発明の組成物を塗布したものが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、火炎処理等、公知の方法で行うことができるが、コロナ放電処理が好ましい。表面処理した面のぬれ張力は35mN/m以上とするのが好ましく、35〜70mN/mとするのがより好ましい。本発明において、ぬれ張力は、JIS−K6768の記載に準じて測定される値である。
【0019】
本発明のフィルムにおいて、前記熱可塑性高分子フィルムに本発明の組成物を塗布する方法としては、公知の塗布法を用いることができる。これには例えば、グラビアコート法、スプレーコート法、浸漬コート法、ロールコート法、ドクターブレードコート法、ワイヤーバーコート法、エアナイフコート法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した本発明によると、農業用ハウスに張られた後において、初期の流滴性が良好であり、且つ長期間使用される間に農業用ハウスの骨材と繰り返し接触し、しかもかかる接触が乾燥状態と湿潤状態とが繰り返される状況下で行なわれた場合であっても良好な流滴性を維持することができるという効果がある。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0022】
試験区分1((改質)無機コロイドゾルの調製)
水39.10部、無機コロイドゾル(A−1)59.61部(固形分23%)を混合し、更にシラノール形成性有機シラン化合物(D−1)としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.29部(固形分100%)を混合して固形分濃度15%の混合液を調製した後、50℃で5時間撹拌してシラノール形成性有機シラン化合物(D−1)を加水分解処理し、更に生成したシラノール化合物を縮合重合させて改質無機コロイドゾル(K−1)を得た。この改質無機コロイドゾル(K−1)は、前記の無機コロイドゾルの固形分粒子にシラノール化合物の縮合重合物が付着しているものであった。同様にして、改質無機コロイドゾル(K−2)〜(K−5)を調製した。以上の各例で調製した改質無機コロイドゾルの内容を表1にまとめて示した。
【0023】
【表1】
【0024】
表1において、
割合(部):固形分換算の割合(部)
A−1:カチオン性酸性シリカゾル
A−2:カチオン性酸性シリカゾル/カチオン性酸性アルミナゾル=50/50(質量比)の混合物
A−3:アニオン性酸性シリカゾル
A−4:アニオン性酸性シリカゾル/カチオン性酸性アルミナゾル=75/25(質量比)の混合物
A−5:アニオン性アルカリ性シリカゾル
【0025】
D−1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
D−2:γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン
D−3:メチルトリエトキシシラン
【0026】
試験区分2(農業フィルム用コーティング剤組成物の調製)
・実施例1
固形分濃度15%の改質無機コロイドゾル(K−1)26.5部、水467部、セルロース誘導体(B−1)5部、固形分濃度70%の水溶性架橋剤(C−1)1.4部及びポリエーテル変性シリコーン(S−1)0.01部を撹拌し、固形分濃度2%の農業フィルム用コーティング剤組成物(X−1)を得た。
【0027】
・実施例2〜27及び比較例1〜5
実施例1の場合と同様にして、実施例2〜27及び比較例1〜5の農業フィルム用コーティング剤組成物(X−2)〜(X−27)及び(rx−1)〜(rx−5)を得た。以上の各例で調製した農業フィルム用コーティング剤組成物の内容を表2にまとめて示した。




























【0028】
【表2】
【0029】
表2において、
(改質)無機コロイドゾル、セルロース誘導体及び水溶性架橋剤の割合:固形分としての質量部
質量比:セルロース誘導体/水溶性架橋剤
ポリエーテル変性シリコーンの割合:(改質)無機コロイドゾルの固形分換算100質量部に対する質量部
K−1〜K−5:表1に記載の改質無機コロイドゾル
A−1〜A−5:表1に記載の無機コロイドゾル
【0030】
B−1:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2%水溶液の20℃での粘性率50mPa・s)
B−2:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2%水溶液の20℃での粘性率3mPa・s)
B−3:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2%水溶液の20℃での粘性率400mPa・s)
B−4:メチルセルロース(2%水溶液の20℃での粘性率4mPa・s)
B−5:カルボキシメチルセルロースナトリウム(2%水溶液の20℃での粘性率150mPa・s)
B−6:ヒドロキシエチルセルロース(2%水溶液の20℃での粘性率100mPa・s)
【0031】
C−1:水溶性メラミン(三和ケミカル製の商品名ニカラックMX−035)
C−2:水溶性メラミン(DIC製の商品名ベッカミンMA−S)
C−3:水溶性メラミン(DIC製の商品名ベッカミンM−3)
rc−1:非水溶性メラミン(三和ケミカル製の商品名ニカラックMX−750)
【0032】
S−1:ポリエーテル変性シリコーン(HLB=14)
S−2:ポリエーテル変性シリコーン(HLB=16)
S−3:ポリエーテル変性シリコーン(HLB=4)
【0033】
試験区分3(農業フィルム用コーティング剤組成物の評価)
試験区分2で調製した各例の農業フィルム用コーティング剤組成物の混合性を以下の方法で評価した。結果を表3にまとめて示した。
【0034】
・混合性の評価
試験区分2で調製した各例の農業フィルム用コーティング剤組成物を沈降管に100ml入れ、20℃、24時間の条件で静置した後、農業フィルム用コーティング剤組成物の状態を以下の基準で評価した。
【0035】
溶液混合性の評価基準
◎:沈降物及び不溶物が認められず、混合性に優れる
×:沈降物及び不溶物が認められ、混合性に劣る
【0036】
試験区分4(農業用改質熱可塑性高分子フィルムの製造)
・実施例28
エチレン・1−ブテン共重合体(エチレン共重合比率95%、密度0.920g/cm3、MFR2.1g/10分)を、直径75mmでリップ間隙3mmのダイを取り付けたインフレーション成形機に供し、樹脂押し出し温度200℃及びBUR=1.8の条件下でインフレーション成形を行ない、厚さ150μmのオレフィン重合体フィルムを作製した。次いで、このオレフィン重合体フィルムにコロナ処理放電を施し、コロナ放電処理面のぬれ張力を42mN/mとした後、かかるコロナ放電処理面に試験区分2で調製した農業フィルム用コーティング剤組成物(X−1)を固形分として0.3g/mとなるようグラビアコート法により塗布し、70℃に温調した温風乾燥炉に1分間滞留させて、農業用改質熱可塑性高分子フィルムを得た。
【0037】
・実施例29〜54及び比較例6〜10
実施例1の場合と同様にして、実施例29〜54及び比較例6〜10の農業用改質熱可塑性高分子フィルムを得た。以上の各例で製造した改質熱可塑性高分子フィルムの内容を表3にまとめて示した。








【0038】
【表3】
【0039】
表3において、
F−1:エチレン・1−ブテン共重合体(エチレン共重合比率95%、密度0.920g/cm、MFR2.1g/10分)
F−2:エチレン・1−ヘキセン共重合体(エチレン共重合比率96%、密度0.930g/cm、MFR1.0g/10分)
F−3:エチレン・酢酸ビニル共重合体(エチレン共重合比率93%、MFR1.5g/10分)
F−4:ポリエチレン(密度0.927g/cm、MFR4.0g/10分)
F−5:エチレン−プロピレン共重合体(エチレン共重合比率4%、密度0.90g/cm、MFR8.0g/10分)
X−1〜X−27,rx−1〜rx−5:表2に記載の農業フィルム用コーティング剤組成物
【0040】
試験区分5(農業用改質熱可塑性高分子フィルムの評価)
試験区分4で製造した各例の農業用改質熱可塑性高分子フィルムについて、農業フィルム用コーティング剤組成物の塗布性、初期流滴性、流滴持続性、Dry耐擦傷性、Wet耐擦傷性について下記に示す評価を行った。結果を表4にまとめて示した。
【0041】
・塗布性の評価
試験区分4で製造した各例の改質熱可塑性高分子フィルムにおいて、コーティング剤組成物の付着状況を目視観察し、塗布性を以下の基準で評価した。
【0042】
塗布性の評価基準
◎:塗布むらは発生せず、均一に付着状態が観察され塗布性に非常に優れる。
○:一部に塗布むらが発生しているものの、ほぼ均一に付着しており塗布性に優れる。
△:一部にはじきが発生し、付着していない部分が観察され塗布性に劣る。
×:全体にはじきが発生し、付着していない事が観察され塗布性に著しく劣る。
【0043】
・初期流滴性及び流滴持続性の評価
試験区分4で製造した各例の農業用改質熱可塑性高分子フィルムを、塗布面が内側となるようテストハウスに張り、ハウスの内温30℃、ハウスの外温10℃及び15度の傾斜面の条件で、水滴付着状況を観察し、水滴防止効果すなわち流滴性を評価した。初期流滴性として水滴の付着面積が10%未満となるまでに要した時間を測定し以下の基準で評価した。また、流滴持続性として30日間連続で置いた後の水滴の付着状態を目視観察し以下の基準で評価した。
【0044】
初期流滴性評価基準
◎:展張後15分未満(初期流滴性に非常に優れる)。
○:展張後15分以上30分未満(初期流滴性に優れる)。
△:展張後30分以上60分未満(初期流滴性に劣る)。
×:展張後60分の水滴の付着面積が10%以上(初期流滴性に著しく劣る)。
【0045】
流滴持続性評価基準
◎:水滴の付着が無く、流滴持続性に非常に優れる。
○:水滴の付着面積が10%未満であり、流滴持続性に優れる。
△:水滴の付着面積が10%以上〜50%未満であり、流滴持続性に劣る。
×:水滴の付着面積が50%以上であり、流滴持続性に著しく劣る。
【0046】
・Dry耐擦傷性の評価
試験区分4で製造した各例の農業用改質熱可塑性高分子フィルムについて、摩擦試験機(学振型染色堅牢度試験機、大栄科学精機製作所社製)のアームの摩擦面にビニールテープを貼って300gの荷重をかけた状態で農業用改質熱可塑性高分子フィルムの塗布面100cmに10往復摩擦させた後、摩擦させた部分に湯気を当て、水滴が付着して生じる曇り部分により、塗膜の剥離程度を観察し、塗膜の耐剥離強度をDry耐擦傷性として以下の基準で評価した。
【0047】
Dry耐擦傷性の評価基準
◎:塗膜の剥がれがなく、耐擦傷性に非常に優れる。
○:塗膜の剥がれ面積が10%未満であり、耐擦傷性に優れる。
△:塗膜の剥がれ面積が10%以上〜50%未満であり、耐擦傷性に劣る。
×:塗膜の剥がれ面積が50%以上であり、耐擦傷性に著しく劣る。
【0048】
・Wet耐擦傷性の評価
試験区分4で製造した各例の農業用改質熱可塑性高分子フィルムの塗布面100cmに水をたらして濡れた状態とし、摩擦試験機(学振型染色堅牢度試験機、大栄科学精機製作所社製)のアームの摩擦面にビニールテープを貼って300gの荷重をかけた状態で前記の濡れた状態の塗布面に10往復摩擦させた後、摩擦させた部分に湯気を当て、水滴が付着して生じる曇り部分により、塗膜の剥離程度を観察し、塗膜の耐剥離強度をWet耐擦傷性として以下の基準で評価した。
【0049】
Wet耐擦傷性の評価基準
◎:塗膜の剥がれ無しがなく、耐擦傷性に非常に優れる。
○:塗膜の剥がれ面積が10%未満であり、耐擦傷性に優れる。
△:塗膜の剥がれ面積が10%以上〜50%未満であり、耐擦傷性に劣る。
×:塗膜の剥がれ面積が50%以上であり、耐擦傷性に著しく劣る。
【0050】
【表4】
【0051】
表1〜表3に対応する表4の結果からも明らかなように、本発明によると、農業用ハウスに張られた後において、初期の流滴性が良好であり、且つ長期間使用される間に農業用ハウスの骨材と繰り返し接触し、しかもかかる接触が乾燥状態と湿潤状態とが繰り返される状況下で行なわれた場合であっても良好な流滴性を維持することがわかる。