【実施例】
【0040】
(実施例1)
東方鍼灸製作所で市販中の鍼灸針を、アセトン、エタノール、精製水にそれぞれ10分ずつ、40kHzの強度で超音波処理して洗浄を行い、洗浄した鍼灸針は、
図2の(a)の写真の左側にあるものである。
【0041】
次に、
図1に示されたように、前記洗浄した鍼灸針を(+)極に、炭素電極を(−)極に連結した後、鍼灸針と炭素電極を電解液に入れた後、DC 30Vを1時間加える陽極酸化処理して多孔性鍼灸針を製造し、その写真を
図2の(a)に示し、右側の鍼灸針が陽極酸化処理後の多孔性鍼灸針である。
【0042】
この際、陽極酸化処理時に使用された電解液は、フルオリン化アンモニウム(Ammonium Fluoride、NH
4F)0.3重量%及び精製水2重量%を含有するエチレングリコール(Etlylene Glycole、C
2H
4(OH)
2)水溶液50mlを使用した。
【0043】
実験例1:SEM(scanning electron microscope)測定
前記実施例1で使用した陽極酸化処理前の鍼灸針のSEM(商品名S−4800、製造社Hitachi)測定写真を
図2の(b)に示し、実施例1で製造した多孔性鍼灸針の表面に対するSEM測定写真を
図2の(c)及び
図2の(d)、
図3に示した。
【0044】
図2の(b)と、(c)及び(d)のSEM測定写真を比較してみれば、陽極酸化処理前の鍼灸針は、滑らかな表面を有していたが、これを陽極酸化処理した後には、3,000nmサイズ以下のホールが多量形成されていることが確認できた。
【0045】
また、
図2の(d)を参照すれば、表面広さ100μm
2(横×縦、10μm×10μm)当たり10個以上のホールが形成されたことが確認できた。
【0046】
また、
図3を参照すれば、ホールの深さが2.58μm程度で形成されたことが確認できた。
【0047】
実験例2:EDS(Energy Dispersive Spectrometer)測定
前記実施例1で使用した陽極酸化処理前後の鍼灸針に対するEDS測定を通じて鍼灸針の成分変化を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0048】
この際、EDS測定は、20keVの高エネルギービームを針の表面に放出して得られた特定X−rayを検出及び分析して測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
前記表1のEDS測定結果を参照すれば、陽極酸化処理工程の前・後で鍼灸針の成分に変化がないことが確認でき、これは、EDS特性上、発生する誤差範囲を勘案したとき、陽極酸化の前と後の鍼灸針の成分に変化がほとんどないことが確認できた。
【0051】
(実施例2)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造するにあたって、電圧をDC 35Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造し、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を
図4に示した。
図4を参照すれば、ホールが良好に形成されていることが確認でき、但し、実施例1と比較するとき、ホールの均一性が多少劣る傾向にあった。
【0052】
(実施例3)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造するにあたって、電圧をDC 40Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造し、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を
図5に示した。
図5を参照すれば、ホールが一部形成されているが、非常に不均一であり、鍼灸針が切れる問題があった。
【0053】
(実施例4)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造し、電圧をDC 25Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造した。そして、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を
図6に示し、ホールが良好に形成されていることが確認できる。但し、実施例1と比較するとき、ホールの均一性が多少劣る傾向にあった。
【0054】
(実施例5)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造するにあたって、電圧をDC 20Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造した。そして、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を
図7に示し、ホールが良好に形成されていることが確認できる。但し、実施例1と比較するとき、ホールの均一性が多少劣る傾向にあった。
【0055】
(実施例6)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造するにあたって、電圧をDC 50Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造した。そして、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を
図8に示し、鍼灸針が切れる問題があり、一部にホールが形成された部分もあるが、大部分の鍼灸針の表面が溶けたように形成される問題があることが確認できた。
【0056】
(実施例7)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造するにあたって、電圧をDC 10Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造し、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を
図9に示した。
図9を参照すれば、ホールがほとんど形成されていないことが確認できた。
【0057】
実験例3:比表面積測定実験
前記実施例1〜実施例7で製造した多孔性鍼灸針に対する比表面積測定実験を行い、その結果を下記表2及び
図10に示した。そして、比表面積実験は、鍼灸針をメチレンブルー溶液に含浸させた後、これを取り出して、蒸留水が収容されたビーカーに担持及び振盪し、鍼灸針の内部に担持されたメチレンブルー溶液が蒸留水にすべて溶解されるようにした。次に、メチレンブルー溶液が溶解された蒸留水の吸光度を測定し、多孔性鍼灸針に担持されたメチレンブルーの量を確認した。これを通じて、鍼灸針の表面に付着したメチレンブルー溶液の量を測定した後、比表面積を計算する方法に基づいて測定した。この際、比表面積を求める方法は、下記数式1に基づいて、陽極酸化前後の鍼灸針に担持されたメチレンブルー水溶液の吸光度を測定し、メチレンブルーの濃度(Concentration)を求めた後、これを利用して下記比例式1に代入し、比表面積を測定した。
【0058】
[数式1]
Concentration(M)=1.667e
−5(M/Abs)×Absorption(Abs)
【0059】
前記数式1において、1.667e
−5(M/Abs)は、濃度を知っているメチレンブルー水溶液を吸光度実験を通じて得たconversion factorである。
【0060】
(比例式1)
Concentration 1:0.0017(m
2/g)=Concentration 2:陽極酸化後に鍼灸針の比表面積
【0061】
前記比例式1で、Concentration 1は、陽極酸化前の鍼灸針に担持されたメチレンブルーの濃度であり、Concentration 2は、陽極酸化後の鍼灸針に担持されたメチレンブルーの濃度である。また、前記陽極酸化前の比表面積は、0.0017(m
2/g)であって、針の厚さと長さ、重さを用いて計算したものである。
【0062】
【表2】
【0063】
前記表2を参照すれば、陽極酸化処理工程を電圧強度DC 20〜38Vで行った実施例1、実施例2、実施例4、実施例5の場合、0.0100m
2/g以上と形成されたことが確認できた。
【0064】
しかし、電圧強度がDC 40V及び50Vであった実施例3及び実施例6の場合、鍼灸針が切れ、ホールがほとんど形成されていなかったため、比表面積を測定できなかった。
【0065】
また、電圧強度がDC 10Vで実施した実施例7の場合、ホールの形成が充分でなく、比表面積が0.0100m
2/g未満の低い結果を示した。
【0066】
図10を参照すれば、30Vの電圧強度で陽極酸化反応を行った実施例1が、吸光度が最も高く、35V電圧強度及び25V電圧強度で陽極酸化反応を行った実施例2及び実施例4の多孔性鍼灸針も、高い吸光度を示した。また、20V電圧強度で実施した実施例5の場合、実施例1、実施例2及び実施例4よりは吸光度が低かったが、10V電圧強度で実施した実施例7よりは吸光度が大きく高いことが確認できた。
【0067】
製造例1:薬物が担持された多孔性鍼灸針の製造
前記実施例1で製造した多孔性鍼灸針をメチレンブルー溶液に浸す方法で多孔性鍼灸針のホールに薬物を担持させた。
【0068】
また、染料が担持された多孔性鍼灸針の重さを測定した結果、鍼灸針の重さが染料担持前には、0.1517gであったが、染料を担持させた後、重さが0.01520gであり、多孔性鍼灸針の重さが0.2%程度と増加し、これから、効果的に薬物がホールに担持されることが確認できた。
【0069】
前記実施例及び実験例を通じて本発明の多孔性鍼灸針の表面にホールが良好に形成され、高い比表面積を有することが確認でき、また、表面に形成されたホールに薬物が良好に担持されることが確認できた。本発明の多孔性鍼灸針を利用して鍼灸針の施術を用いた画期的な治療効果の増大を図ることができるものと期待される。