特開2018-134462(P2018-134462A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-134462(P2018-134462A)
(43)【公開日】2018年8月30日
(54)【発明の名称】多孔性鍼灸針及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61H 39/08 20060101AFI20180803BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20180803BHJP
【FI】
   A61H39/08 B
   A61H39/08 Z
   A61M37/00 505
   A61M37/00 520
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-81199(P2018-81199)
(22)【出願日】2018年4月20日
(62)【分割の表示】特願2016-554196(P2016-554196)の分割
【原出願日】2014年7月17日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0022655
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515168374
【氏名又は名称】テグ キョンブク インスティトゥート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イン、ス イル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヘ リム
(72)【発明者】
【氏名】ラズク、アブドゥル
【テーマコード(参考)】
4C101
4C167
【Fターム(参考)】
4C101DA20
4C101EA06
4C101EB14
4C167AA71
4C167BB05
4C167CC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表面にマイクロ乃至ナノサイズのホールが多量に形成された多孔性鍼灸針及びその製造方法を提供する。
【解決手段】鍼灸針の表面に、100μm当たり5〜20個の薬物が担持される、平均直径が0.05μm〜3μmであっり、平均深さが1μm〜3μmのホールを備えた比表面積が0.0150m/g〜0.0350m/gの多孔性構造を、エチレングリコール水溶液及びグリセロール水溶液の中から選択された電解液を用いて陽極酸化処理工程を施すことにより形成させる構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面広さ100μm2当たり5〜20個のホール(hole)を表面に含むことを特徴とする多孔性鍼灸針。
【請求項2】
前記ホールは、平均直径が0.05μm〜3μmであることを特徴とする請求項1に記載の多孔性鍼灸針。
【請求項3】
前記ホールは、平均深さが1μm〜3μmであることを特徴とする請求項1に記載の多孔性鍼灸針。
【請求項4】
前記ホールの内部に薬物が担持されることを特徴とする請求項1に記載の多孔性鍼灸針。
【請求項5】
鍼灸針の表面に付着したメチレンブルー溶液の量を測定した後、比表面積を計算する方法に基づいて測定するとき、比表面積が0.0150m2/g〜0.0350m2/gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性鍼灸針。
【請求項6】
EDS(Energy Dispersive Spectrometer)測定時に、鉄(Fe)45%〜46%、クロム(Cr)17%〜19%、炭素(C)30%〜34%、ニッケル(Ni)2%〜3%及びアルミニウム(Al)1.5%〜2%を含むことを特徴とする請求項5に記載の多孔性鍼灸針。
【請求項7】
針に陽極酸化処理工程を施し、針の表面に多孔性構造を形成させることを特徴とする多孔性鍼灸針の製造方法。
【請求項8】
前記陽極酸化処理工程は、
前記針及び炭素電極を含む電解液内で行い、
前記針は、(+)極として使用し、前記炭素電極は、(−)極として使用し、
30分〜2時間20V〜38Vの直流を加えて行うことを特徴とする請求項7に記載の多孔性鍼灸針の製造方法。
【請求項9】
前記電解液は、エチレングリコール水溶液及びグリセロール水溶液の中から選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項8に記載の多孔性鍼灸針の製造方法。
【請求項10】
前記電解液は、フルオリン化アンモニウム0.1〜0.5重量%及び水1〜5重量%を含有するエチレングリコール水溶液であることを特徴とする請求項8に記載の多孔性鍼灸針の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にマイクロ乃至ナノサイズのホールが多量に形成されている鍼灸針及びこれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
針は、皮膚を透過するように製作された装置であって、一般的に強度と生物学的安全性が確認された金属で製作され、伝統的な鍼灸針は、図1に示されたように、針先、針体及び針柄で構成され、石、金、銀、銅、鉄、骨及び刺のような材質を使用して製造した。最近、技術が発達するに伴い、針の材質として、堅固で、容易に折れず、腐食に強くて、且つ人体に有害でないステンレス鋼304または316L等を使用している。
【0003】
一般的に多く使用される注射針の太さと表面状態によって、刺鍼時に患者が感じる苦痛が異なるため、従来の多くの技術は、患者の苦痛程度を減少させる方向に発展した。例えば、刺鍼時に針と人体組織間の摩擦を低減する方法として、針の表面にシリコーン(Silicone)膜を塗布するか、または針の表面を滑らかに加工して表面粗さを低減することによって、針が組織に侵透するときに生ずる抵抗を減少させて、患者が感じる苦痛を低減した。また、針の太さが細いほど、針の挿入時に患者の苦痛が減少するため、次第に細い針が製造及び使用されている。
【0004】
注射針(注射用針)の使用目的は、注射針を通じて血管及び筋肉等の身体組織に特定の薬物を注入することにあり、注射針を挿入することによって、直接的な治療効果を期待しない。しかし、鍼灸針は、薬物の注入を目的とせず、針を経絡、経血のような特定の部位に挿入することによって、治療効果を図る。したがって、組織に針を挿入する目的において両者間に根本的な差異が存在する。
【0005】
すなわち、注射針とは異なって、鍼灸針は、刺鍼時に針の身体組織に対する物理的な刺激が重要に扱われる。しかし、針治療効果とは関係なく、刺鍼時に患者が感じる苦痛を低減しようとする目的で針の表面を滑らかにする一般注射針の製造方法と類似に針を作っている。また、針の表面の状態によって患者が感じる苦痛は低減できるが、針治療効果が同一であるというどんな実験結果もない。
【0006】
これとは対照的に、針と組織に関する研究によれば(H.Langevin、2002、Faseb)、刺鍼後に、針を左右に回すことによって、連結組織(connective tissue)が針の表面に巻かれるようになって、その刺激によって針治療効果が現われるという結果が発表された。この研究結果は、針の表面と連結組織間の結合力が針治療効果に重要であることを意味する。すなわち、針の表面の物性に変化を与えて、両者間の結合力を増加させれば、針治療効果を増進させることができることを意味する。しかし、今までは、鍼灸針の製造時に針の表面の粗さを低減する技術が適用されて来、これは、両者間の結合力を減少させる方向だけで研究が進行されたことを意味する。
【0007】
なお、一般的に針の製造に使用されている針の表面の物性を変化させる技術は、化学物質を針の表面に塗布するものであった。この技術の目的は、塗布物質によって大きく2つに分けられ、潤滑目的でシリコーン(silicone)等のような物質を塗布する場合と、抗菌及び治療目的でサリチル酸のような物質を塗布する場合があるが、このような技術によって製造された針は、針の表面と連結組織間の結合力が減少する問題がある。
【0008】
なお、一般注射針と鍼灸針の素材として主に使用されるものは、ステンレス鋼(stainless steel)であり、その中でも、SS304及びSS0316Lが多く使用され、これらは、いずれもオステナイト系に属する。このようなステンレス鋼の表面粗さを低減する方法のうち1つは、電解研磨(electropolishing)であり、特にSS304及びSS0316Lに良好に適用される技術である。電解研磨は、電解液内で研磨しようとする金属に電気を加えれば、電気分解によって当該金属の表面に粘性がある初期酸化層が生成され、金属酸化物の不動態被膜が形成され、相対的に屈曲があり、突出した面がさらに多く研磨されるようになり、全体的に、当該金属の表面が平坦になる技術である。この技術を適用して、前記ステンレス鋼の表面粗さを調整する。
【0009】
また、他の技術は、強力なレーザーを使用して表面を加工する技術(laser ablation)であって、強力なレーザーパルスビーム(pulse beam)を金属に入射させて、表面物質を瞬間的にアブレーション(ablation)させて柄を作る方法である。この際、レーザーの出力を調節し、柄の深さを調節できる。現在、この技術は、金属だけでなく、半導体製造用シリコン基板(wafer)にマーキング(marking)用として使用されている。なお、鍼灸針の表面処理方法として最も多く使用されるものは、機械的研磨(grinding)であって、針の先端部を形成し、表面粗さを減少させる方向に開発されて来た。しかし、このような技術は、方向性を有する表面を形成することが難しい。
【0010】
これより、針の表面に物理的形態の変化を与えて、結合組織と接する針の表面における有効面積(effective area)を拡張し、両者間の結合力を向上させた鍼灸針を製造する技術(韓国特許公開2008−0112759号公報)があるが、針の表面の粗さに起因して、皮膚に損傷を加えることができるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来の鍼灸針の表面粗さによる皮膚損傷の問題を防止できると共に、鍼灸針を通じて薬物を効果的に人体内に伝達できる新しい鍼灸針及びこのように鍼灸針を効果的に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、多孔性鍼灸針に関し、針の表面広さ100μm2(横×縦、10μm×10μm)当たり5〜20個のホール(hole)を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい一実施例として、本発明の多孔性鍼灸針において、前記ホールは、平均直径が0.05μm〜3μmであり、前記ホールは、平均深さが1μm〜3μmであることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい一実施例として、本発明の多孔性鍼灸針は、前記ホールに薬物が担持されることを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい一実施例として、本発明の多孔性鍼灸針は、鍼灸針の表面に付着したメチレンブルー溶液の量を測定した後、比表面積を計算する方法に基づいて測定するとき、比表面積0.0100m2/g以上、好ましくは、比表面積0.0150m2/g〜0.0350m2/gであることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい一実施例として、本発明の多孔性鍼灸針は、鉄(Fe)45〜46%、クロム(Cr)17〜19%、炭素(C)30〜34%、ニッケル(Ni)2〜3%及びアルミニウム(Al)1.5〜2%を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様は、前述した本発明の多孔性鍼灸針を製造する方法に関し、針に陽極酸化処理工程を施し、針の表面に多孔性構造を形成させて、多孔性鍼灸針を製造することを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい一実施例として、前記陽極酸化処理工程の前に、針を洗浄する工程を行うことができ、前記洗浄する工程は、陽極酸化処理工程前の針をアセトンで超音波処理(sonication)し、エタノールで超音波処理した後、精製水内でさらに超音波処理して行うことができる。
【0019】
本発明の好ましい一実施例として、前記陽極酸化処理工程は、前記針及び炭素電極を含む電解液内で行い、前記針は、(+)極として使用し、前記炭素電極は、(−)極として使用し、30分〜2時間20V〜38Vの直流を加えて行うことを特徴とする。
【0020】
本発明の他の好ましい一実施例として、本発明の製造方法において、前記電解液は、エチレングリコール水溶液及びグリセロール水溶液の中から選択された1種以上を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の他の好ましい一実施例として、本発明の製造方法において、前記電解液は、フルオリン化アンモニウム0.1〜0.5重量%及び水1〜5重量%を含有するエチレングリコール水溶液であることを特徴とする。
【0022】
本発明の他の好ましい一実施例として、本発明の製造方法において、前記陽極酸化処理工程前の針は、EDS(Energy Dispersive Spectometer)測定時に、鉄(Fe)43.5%〜45%、クロム(Cr)11.5%〜13%、炭素(C)35%〜37%、ニッケル(Ni)5%〜6.5%及びアルミニウム(Al)0.5%〜1.2%を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の他の好ましい一実施例として、本発明の製造方法において、前記陽極酸化処理工程後の多孔性鍼灸針は、EDS(Energy Dispersive Spectometer)測定時に、鉄(Fe)45%〜46%、クロム(Cr)17%〜19%、炭素(C)30%〜34%、ニッケル(Ni)2%〜3%及びアルミニウム(Al)1.5%〜2%を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の鍼灸針は、従来の鍼灸針のように、針の外部に突出する形態ではなく、内部に陥没された形態のホールが形成されているので、皮膚損傷の問題がないだけでなく、針の表面に多数のマイクロサイズ乃至ナノサイズを有するホールが均一に形成されていて、表面積が画期的に増加したところ、針による生理学的治療効果を増大させることができる。また、針の表面に形成されたホールに薬物を担持させて、人体内に投入できるので、針による効果を極大化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の多孔性鍼灸針を陽極酸化法によって製造する一例であって、製造する方法に対する概略図である。
図2図2は、陽極酸化処理前後の鍼灸針の表面に対するSEM(Scanning Electron Microscope)測定写真であって、図2の(a)の左側の鍼灸針は、陽極酸化処理前の鍼灸針の写真であり、図2の(a)の右側の鍼灸針は、陽極酸化処理後の多孔性鍼灸針である。また、図2の(b)は、陽極酸化処理前の鍼灸針の表面に対するSEM測定写真であり、図2の(c)及び図2の(d)は、陽極酸化処理後の鍼灸針の表面に対するSEM測定写真である。
図3-9】図3図9は、それぞれ、実施例1〜実施例7で製造したそれぞれの多孔性鍼灸針のSEM測定写真である。
図10図10は、実験例3で実施した多孔性鍼灸針の比表面積測定のための吸光度測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明で使用する用語であるホール(hole)は、針の表面方向から針の内部方向に凹状に形成された孔を意味する。
【0027】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の鍼灸針は、針の表面に多孔性構造を形成した鍼灸針に関し、陽極酸化処理工程を行い、針の表面に微細サイズの、ナノサイズのホールを形成させて製造することができる。
【0028】
また、陽極酸化処理工程前の針は、洗浄工程を行った後に使用でき、この際、洗浄工程は、針の表面に異物等を除去するためのものであって、当業界で一般的な方法を使用でき、好ましくは、針をアセトンで超音波処理(sonication)し、エタノールで超音波処理した後、これをさらに精製水内で超音波処理して行うことができる。この際、それぞれの前記超音波処理時間は、特に限定されないが、5分〜20分程度が適切である。
【0029】
また、前記陽極酸化処理工程前の針は、一般的に販売されている針を使用でき、好ましくは、EDS(Energy Dispersive Spectometer)測定時に、鉄(Fe)43.5%〜45%、クロム(Cr)11.5%〜13%、炭素(C)35%〜37%、ニッケル(Ni)5%〜6.5%及びアルミニウム(Al)0.5%〜1.2%を含む針を使用できる。
【0030】
また、前記陽極酸化処理工程は、針を(+)極に、そして炭素電極を(−)極に連結した後、針と炭素電極を電解液に浸した後、直流(DC)20V〜38Vの電圧を、好ましくは、25V〜35Vの電圧を、さらに好ましくは、28V〜32Vの電圧を30分〜2時間加えて、針の表面に図2のような表面にマイクロサイズ乃至ナノサイズのホールを形成させることができる。前記電圧が20V未満であれば、鍼灸針の表面にホールが生じない問題があり得、38Vを超過すれば、鍼灸針が酸化され、切れる問題があり得るので、前記範囲内の電圧を加えることが好ましい。
【0031】
本発明において、陽極酸化処理工程時に使用する前記電解液は、当業界で陽極酸化工程に使用される電解液を使用できるが、好ましくは、エチレングリコール(Ethylene Glycol)水溶液及びグリセロール水溶液の中から選択された1種以上を含む電解液を使用することが好適である。具体的な例として、フルオリン化アンモニウム(Ammonium Fluoride、NHF)0.1〜0.5重量%、水1〜5重量%及び残量のエチレングリコールを含有するエチレングリコール水溶液を使用できる。
【0032】
前記エチレングリコール水溶液において、前記フルオリン化アンモニウム(NHF)は、鍼灸針の酸化された成分と結合し、成分が水溶液側に溶ける役目をするものであって、0.1〜0.5重量%、好ましくは、0.2〜0.4重量%を含有するように使用することが好適であるが、この際、その含有量が0.1重量%未満であれば、鍼灸針の表面に生成されるホールの数が減少し、平均深さとサイズが小さくなる問題があり得、含有量が0.5重量%を超過すれば、鍼灸針の表面にホールが生成されずに割れる問題があり得るので、前記範囲内に使用することが好適である。
【0033】
前述した電圧強度、陽極酸化処理時間、NHF濃度等の陽極酸化処理条件を調節し、ホールの平均直径及び平均深さを調節できるが、電圧を高めるか、陽極酸化処理時間を増加させるかまたはNHFの濃度を増加させれば、ホールの平均直径が大きくなり、平均深さが深くなる傾向にある。好ましい一実施例として、電圧強度を30V、陽極酸化処理時間を1時間、NHF濃度を0.3重量%の下で陽極酸化処理を行うことができ、この際、電圧強度、陽極酸化処理時間、NHF濃度をそれぞれ減少させるかまたは増加させて、ホールの深さ及び/またはホールのサイズを調節できる。
【0034】
このように陽極酸化処理工程を行った針に形成されたホールの平均直径は、3μm以下、好ましくは、0.05μm〜3μm、さらに好ましくは、0.05μm〜1μmであることができる。また、形成されたホールの平均深さは、1μm〜3μm、好ましくは、2μm〜3μmであることができる。
【0035】
陽極酸化処理工程後の針は、陽極酸化処理工程前の針と成分に変化がなく、例えば、陽極酸化処理工程前の前述した成分を有する針に陽極酸化処理工程を施す場合、EDS(Energy Dispersive Spectrometer)測定時に、針の成分が鉄(Fe)45%〜46%、クロム(Cr)17%〜19%、炭素(C)30%〜34%、ニッケル(Ni)2%〜3%及びアルミニウム(Al)1.5%〜2%であって、測定誤差範囲内で鍼灸針の成分に大きい変化がないことを確認できる。
【0036】
また、前記のような方法で陽極酸化処理工程を行って製造した多孔性針を浄水された水に洗浄した後、アセトン含有溶液で超音波処理(sonication)する工程をさらに行い、多孔性鍼灸針を製造してもよい。
【0037】
このように陽極酸化工程を通じて製造した本発明の多孔性鍼灸針は、表面広さ100μm2(横×縦、10μm×10μm)当たり5個〜20個の凹状のホール(hole)を、好ましくは、8個〜20個のホールを、さらに好ましくは、10個〜20個のホールを有することができる。また、本発明の多孔性鍼灸針は、このような鍼灸針の表面に付着したメチレンブルー溶液の量を測定した後、比表面積を計算する方法に基づいて測定するとき、比表面積0.0100m2/g以上を、好ましくは、0.0150m2/g〜0.0350m2/gを、さらに好ましくは、0.0300m2/g〜0.0350m2/gの非常に高い比表面積を有することができるところ、経絡に位置する神経系に電子伝達機能を倍加させて、鍼施術による治療効能を大きく増加させることができる。
【0038】
また、本発明の多孔性鍼灸針に形成されているホールの内部に薬物を担持させて鍼施術を行い、人体内に薬物を直接的に伝達することによって、鍼施術による治療効能を倍加させることもできる。
【0039】
以下では、実施例を通じて本発明をさらに具体的に説明するが、下記実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは、本発明の理解を助けるためのものと解釈すべきである。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
東方鍼灸製作所で市販中の鍼灸針を、アセトン、エタノール、精製水にそれぞれ10分ずつ、40kHzの強度で超音波処理して洗浄を行い、洗浄した鍼灸針は、図2の(a)の写真の左側にあるものである。
【0041】
次に、図1に示されたように、前記洗浄した鍼灸針を(+)極に、炭素電極を(−)極に連結した後、鍼灸針と炭素電極を電解液に入れた後、DC 30Vを1時間加える陽極酸化処理して多孔性鍼灸針を製造し、その写真を図2の(a)に示し、右側の鍼灸針が陽極酸化処理後の多孔性鍼灸針である。
【0042】
この際、陽極酸化処理時に使用された電解液は、フルオリン化アンモニウム(Ammonium Fluoride、NHF)0.3重量%及び精製水2重量%を含有するエチレングリコール(Etlylene Glycole、C(OH))水溶液50mlを使用した。
【0043】
実験例1:SEM(scanning electron microscope)測定
前記実施例1で使用した陽極酸化処理前の鍼灸針のSEM(商品名S−4800、製造社Hitachi)測定写真を図2の(b)に示し、実施例1で製造した多孔性鍼灸針の表面に対するSEM測定写真を図2の(c)及び図2の(d)、図3に示した。
【0044】
図2の(b)と、(c)及び(d)のSEM測定写真を比較してみれば、陽極酸化処理前の鍼灸針は、滑らかな表面を有していたが、これを陽極酸化処理した後には、3,000nmサイズ以下のホールが多量形成されていることが確認できた。
【0045】
また、図2の(d)を参照すれば、表面広さ100μm2(横×縦、10μm×10μm)当たり10個以上のホールが形成されたことが確認できた。
【0046】
また、図3を参照すれば、ホールの深さが2.58μm程度で形成されたことが確認できた。
【0047】
実験例2:EDS(Energy Dispersive Spectrometer)測定
前記実施例1で使用した陽極酸化処理前後の鍼灸針に対するEDS測定を通じて鍼灸針の成分変化を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0048】
この際、EDS測定は、20keVの高エネルギービームを針の表面に放出して得られた特定X−rayを検出及び分析して測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
前記表1のEDS測定結果を参照すれば、陽極酸化処理工程の前・後で鍼灸針の成分に変化がないことが確認でき、これは、EDS特性上、発生する誤差範囲を勘案したとき、陽極酸化の前と後の鍼灸針の成分に変化がほとんどないことが確認できた。
【0051】
(実施例2)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造するにあたって、電圧をDC 35Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造し、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を図4に示した。
図4を参照すれば、ホールが良好に形成されていることが確認でき、但し、実施例1と比較するとき、ホールの均一性が多少劣る傾向にあった。
【0052】
(実施例3)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造するにあたって、電圧をDC 40Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造し、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を図5に示した。図5を参照すれば、ホールが一部形成されているが、非常に不均一であり、鍼灸針が切れる問題があった。
【0053】
(実施例4)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造し、電圧をDC 25Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造した。そして、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を図6に示し、ホールが良好に形成されていることが確認できる。但し、実施例1と比較するとき、ホールの均一性が多少劣る傾向にあった。
【0054】
(実施例5)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造するにあたって、電圧をDC 20Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造した。そして、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を図7に示し、ホールが良好に形成されていることが確認できる。但し、実施例1と比較するとき、ホールの均一性が多少劣る傾向にあった。
【0055】
(実施例6)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造するにあたって、電圧をDC 50Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造した。そして、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を図8に示し、鍼灸針が切れる問題があり、一部にホールが形成された部分もあるが、大部分の鍼灸針の表面が溶けたように形成される問題があることが確認できた。
【0056】
(実施例7)
前記実施例1と同一の方法で多孔性鍼灸針を製造するにあたって、電圧をDC 10Vで1時間加えて、多孔性鍼灸針を製造し、そのSEM測定を前記実施例1と同一の方法で測定し、その結果を図9に示した。図9を参照すれば、ホールがほとんど形成されていないことが確認できた。
【0057】
実験例3:比表面積測定実験
前記実施例1〜実施例7で製造した多孔性鍼灸針に対する比表面積測定実験を行い、その結果を下記表2及び図10に示した。そして、比表面積実験は、鍼灸針をメチレンブルー溶液に含浸させた後、これを取り出して、蒸留水が収容されたビーカーに担持及び振盪し、鍼灸針の内部に担持されたメチレンブルー溶液が蒸留水にすべて溶解されるようにした。次に、メチレンブルー溶液が溶解された蒸留水の吸光度を測定し、多孔性鍼灸針に担持されたメチレンブルーの量を確認した。これを通じて、鍼灸針の表面に付着したメチレンブルー溶液の量を測定した後、比表面積を計算する方法に基づいて測定した。この際、比表面積を求める方法は、下記数式1に基づいて、陽極酸化前後の鍼灸針に担持されたメチレンブルー水溶液の吸光度を測定し、メチレンブルーの濃度(Concentration)を求めた後、これを利用して下記比例式1に代入し、比表面積を測定した。
【0058】
[数式1]
Concentration(M)=1.667e−5(M/Abs)×Absorption(Abs)
【0059】
前記数式1において、1.667e−5(M/Abs)は、濃度を知っているメチレンブルー水溶液を吸光度実験を通じて得たconversion factorである。
【0060】
(比例式1)
Concentration 1:0.0017(m2/g)=Concentration 2:陽極酸化後に鍼灸針の比表面積
【0061】
前記比例式1で、Concentration 1は、陽極酸化前の鍼灸針に担持されたメチレンブルーの濃度であり、Concentration 2は、陽極酸化後の鍼灸針に担持されたメチレンブルーの濃度である。また、前記陽極酸化前の比表面積は、0.0017(m2/g)であって、針の厚さと長さ、重さを用いて計算したものである。
【0062】
【表2】
【0063】
前記表2を参照すれば、陽極酸化処理工程を電圧強度DC 20〜38Vで行った実施例1、実施例2、実施例4、実施例5の場合、0.0100m2/g以上と形成されたことが確認できた。
【0064】
しかし、電圧強度がDC 40V及び50Vであった実施例3及び実施例6の場合、鍼灸針が切れ、ホールがほとんど形成されていなかったため、比表面積を測定できなかった。
【0065】
また、電圧強度がDC 10Vで実施した実施例7の場合、ホールの形成が充分でなく、比表面積が0.0100m2/g未満の低い結果を示した。
【0066】
図10を参照すれば、30Vの電圧強度で陽極酸化反応を行った実施例1が、吸光度が最も高く、35V電圧強度及び25V電圧強度で陽極酸化反応を行った実施例2及び実施例4の多孔性鍼灸針も、高い吸光度を示した。また、20V電圧強度で実施した実施例5の場合、実施例1、実施例2及び実施例4よりは吸光度が低かったが、10V電圧強度で実施した実施例7よりは吸光度が大きく高いことが確認できた。
【0067】
製造例1:薬物が担持された多孔性鍼灸針の製造
前記実施例1で製造した多孔性鍼灸針をメチレンブルー溶液に浸す方法で多孔性鍼灸針のホールに薬物を担持させた。
【0068】
また、染料が担持された多孔性鍼灸針の重さを測定した結果、鍼灸針の重さが染料担持前には、0.1517gであったが、染料を担持させた後、重さが0.01520gであり、多孔性鍼灸針の重さが0.2%程度と増加し、これから、効果的に薬物がホールに担持されることが確認できた。
【0069】
前記実施例及び実験例を通じて本発明の多孔性鍼灸針の表面にホールが良好に形成され、高い比表面積を有することが確認でき、また、表面に形成されたホールに薬物が良好に担持されることが確認できた。本発明の多孔性鍼灸針を利用して鍼灸針の施術を用いた画期的な治療効果の増大を図ることができるものと期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10