【解決手段】樹脂供給装置(10)は、チャンバ(30)を構成するチャンバ蓋(31)およびチャンバ本体(32)と、チャンバ本体(32)の開口縁(32a)に設けられ、チャンバ蓋(31)とチャンバ本体(32)との間をシールするシールリング(33)と、シールリング(33)に沿ってチャンバ本体(32)に設けられ、チャンバ蓋(31)とチャンバ本体(32)との間で加重を受ける加重受け(37)と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0021】
(実施形態1)
本発明の実施形態に係る樹脂供給装置10(ライティングディスペンサ)について、主として
図1〜
図3を参照して説明する。
図1〜
図3は樹脂供給動作に係る樹脂供給装置10を説明するための図である。この樹脂供給装置10は、供給部20(吐出部)およびチャンバ30を備え、真空状態としたチャンバ30内で供給部20からの液状の樹脂RをワークW(被供給物)に供給(塗布)するものである。本実施形態では、樹脂供給装置10が三次元(XYZ)直交座標系にあるものとして説明し、
図1などに示す上下方向(鉛直方向)がZ軸と平行な方向に対応し、横方向(水平方向)がX軸およびY軸と平行な方向となる。
【0022】
本実施形態では、ワークWとして、例えば複数のチップ部品100(例えば半導体チップ)が行列状にフリップチップ接続(バンプ接続)された円板形状のキャリア101(例えば半導体ウェハ)を適用する。このため、ワークWは、狭隘部102(チップ部品100とキャリア101との間)を有する。また、本実施形態では、樹脂Rとして、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂といった液状(溶融した状態を含む)の熱硬化性樹脂を適用する。このような樹脂Rが供給されたワークWに対しては、成形金型91(
図9参照)を用いて、例えばeWLB(Embedded Wafer Level Ballgrid-Array Package)と呼ばれる成形工程の樹脂成形がなされる。
【0023】
樹脂供給装置10は、供給部20を構成するにあたり、液状の樹脂Rが貯留されるシリンジ21と、シリンジ21の先端に設けられ、樹脂Rを吐出するノズル22(チューブノズル)と、シリンジ21内に挿入され、樹脂Rを押し付けるプランジャ23と、を備える。シリンジ21はシリンジケース25(カートリッジホルダ)に収納される。これにより、シリンジ21を容易に交換することができる。また、プランジャ23は駆動部80(Z軸駆動機構)によってZ軸方向に上下動(往復動)することができる。これにより、プランジャ23によって押し付けられた樹脂Rをノズル22から吐出させることができる。また、シリンジケース25は、駆動部70(Z軸駆動機構)によってZ軸方向に上下動(往復動)することができる。これにより、シリンジケース25、シリンジ21を介してノズル22がZ軸方向に移動することができ、後述の液切りをすることができる。なお、駆動部70、80としては、モータによってレール上を移動するスライダや、リンク構造を用いた多間接ロボットなど任意の移動構造を備えたものを用いることができる。
【0024】
また、樹脂供給装置10は、例えば弾性体で構成されたノズル22(チューブノズル)を摘むように設けられ、ノズル22の開閉を行うピンチバルブ24と、このピンチバルブ24の駆動を行うバルブ駆動部26(例えばエアシリンダで駆動される)と、を備える。ピンチバルブ24はバルブ駆動部26に設けられ、バルブ駆動部26はシリンジケース25に設けられる。樹脂供給装置10では、ピンチバルブ24が開いた状態でプランジャ23が下動してシリンジ21内の樹脂Rを押し出す方向に流動させることでノズル22から樹脂Rが吐出される。他方、プランジャ23の下動が停止すると共にピンチバルブ24が閉じてノズル22からの樹脂Rの吐出が停止される。
【0025】
吐出停止の後には、液状の樹脂Rの液切りを行うことで、樹脂Rがノズル22から垂れてしまうのを防止することができる。樹脂Rの液切りとは、樹脂Rをノズル22から下方に吐出してワークWに供給し、樹脂Rがその自重によってノズル22から切り離されず引き伸ばされた状態(ドローリング状態)となった場合に、ノズル22から切り離すことをいう。本実施形態においては、樹脂Rを吐出し終わったノズル22を上下動することでワークWとの距離の伸縮を繰り返し、ノズル22から切り離す方法を想定している。チャンバ30が閉じられた状態で液切りが行われることによりホコリなどの巻き込みなどを防止することができる。なお、液切りの手法としてはこれに限らず、ノズル22の先端から物理的に切り取るような手法や、ノズル22に連通し分岐した経路を介してエアを導入し、切り離す手法でもよい。
【0026】
また、樹脂供給装置10は、一対のチャンバ部31、32(一方をチャンバ蓋31、他方をチャンバ本体32とする)を有するチャンバ30(例えば鋼材から構成される)を備える。樹脂供給装置10では、チャンバ30内にセットされたワークWに対して、チャンバ蓋31側に設けられたノズル22から液状の樹脂Rが吐出して供給される。また、樹脂供給装置10は、温度調節部(例えばヒータやクーラ)を備えることで、チャンバ30の内部温度を調節してもよく、供給される樹脂Rの温度を調節してもよい。
【0027】
チャンバ蓋31は、蓋駆動部50(XYZ軸駆動機構)によってXYZ軸方向に往復動することができる。蓋駆動部50としては、前述した一軸(Z軸)用の駆動部70、80を三軸(XYZ軸)のそれぞれに対応させたものを用いることができる。これにより、チャンバ本体32に対してチャンバ蓋31をZ軸に沿う方向(鉛直方向)に上下動させる(近づけたり、遠ざけたりさせる)ことで、チャンバ30を開閉することができる。また、後述するが、蓋駆動部50により、チャンバ30が閉じられた状態でチャンバ本体32に対してチャンバ蓋31を移動(水平移動)させるができる。これによれば、チャンバ30が真空状態においてもチャンバ蓋31およびこれに設けられるノズル22を移動させることができる。すなわち、真空状態で任意の吐出位置においてワークWの面内に樹脂Rを供給することができる。
【0028】
また、樹脂供給装置10は、チャンバ本体32(例えば有底筒状体を構成する容器)の開口縁32a(例えば上面視円形状、上面視矩形状、又は、上面視多角形状)に設けられ、チャンバ蓋31とチャンバ本体32との間をシールするシールリング33(例えばOリング)を備える。これにより、チャンバ蓋31とチャンバ本体32とがシールリング33を介して接する状態となって、チャンバ30が閉じられた状態(内部が密閉された状態)となる。なお、シールリング33の高さ調節のためにシールリング33下に調節部材(例えば板やシート)を設けてもよい。
【0029】
ところで、樹脂供給装置10は、真空状態としたチャンバ30内でノズル22からワークWに向けて液状の樹脂RをワークWに吐出して供給する。このため、樹脂供給装置10では、ノズル22がチャンバ30内に設けられるよう構成される。具体的には、樹脂供給装置10は、保持部34(凹部)と、シールリング36(Oリング)と、を備える。保持部34は、チャンバ蓋31の中央部においてノズル22を収容するようにチャンバ蓋31の面31a(チャンバ本体32側にある面31a)から凹んで設けられ、チャンバ蓋31を貫通するシリンジケース25を保持する。また、シールリング36は、シリンジケース25と保持部34(チャンバ蓋31)との間をシールしている。これにより、チャンバ30が閉じられた状態において駆動部70によってシリンジケース25を上下動させたとしてもチャンバ30内を密閉状態とすることができる。
【0030】
ここで、チャンバ蓋31とチャンバ本体32の大きさについて説明する。チャンバ30を閉じた状態とするため、チャンバ本体32の開口(開口縁32aの内側)がチャンバ蓋31によって塞がれる(覆われる)。すなわち、平面視(上面視)において、チャンバ蓋31の大きさがチャンバ本体32の開口よりも大きい。具体的には、チャンバ30が閉じられた状態を維持しながら、チャンバ本体32に対してチャンバ蓋31を水平移動させることができるようなチャンバ蓋31の大きさとなる。換言すれば、Y軸方向およびX軸方向において、真空を維持しながらノズル22をワークWの一端から他端に亘って移動させることができるようなチャンバ蓋31の大きさとなる。このため、
図3に示すように、ノズル22の位置がチャンバ本体32内にセットされたワークWの最外周に達すると、チャンバ蓋31がY軸方向およびX軸方向に大きくはみ出ることとなる。
【0031】
また、樹脂供給装置10は、チャンバ30の内部圧力を調節する圧調節部41と、チャンバ30内に通じ、圧調節部41と連通される路42(例えばチャンバ本体32の底部を貫通する孔)と、を備える。樹脂供給装置10では、閉じられた状態(密閉状態)のチャンバ30内が、例えば真空ポンプを備える圧調節部41によってエアが排出されて真空状態(減圧状態)となる。このようにエアが排出された真空状態のチャンバ30とすることができるので、ワークWに樹脂Rを供給したときに樹脂R内においてエアを抱え込んでしまう不具合を防止することができる。
【0032】
また、樹脂供給装置10は、チャンバ蓋31とチャンバ本体32との間で加重を受ける加重受け37(例えば鋼材から構成される)を備える。この加重受け37は、円形のシールリング33に沿ってチャンバ本体32に設けられることで、シールリング33の過度な潰れを防止する。加重受け37としては、例えば円形のシールリング33に沿ってチャンバ本体32に複数設けられた構成とすることができる。この場合、複数の加重受け37によってチャンバ蓋31にかかる大気圧を支持しながらチャンバ本体32上の任意の高さにチャンバ蓋31を位置させる。これにより、シールリング33の過度な潰れを防止して、チャンバ蓋31とチャンバ本体32との接触による摩擦を防止し、シール性を確保してチャンバ30を真空状態とすることができる。また、複数の加重受け37によってチャンバ蓋31を多点で受けることとなるので、加重を分散させることができる。また、複数の加重受け37がシールリング33の外側に設けられること、すなわちチャンバ30内に複数の加重受け37がないことで、チャンバ30内のエアの除去が容易になる。また、チャンバ30が開いた状態では、チャンバ本体32からチャンバ蓋31へ向かう高さにおいて加重受け37よりシールリング33が高い。言い換えると、チャンバ30が開いた状態で、チャンバ蓋31に対して加重受け37よりシールリング33が近い位置に配置される。これによれば、チャンバ30が閉じられた状態では、チャンバ蓋31をシールリング33に確実に接した状態とすることができ、シール性を確保してチャンバ30を真空状態とすることができる。
【0033】
ところで、樹脂供給装置10では、チャンバ30が閉じられた状態(チャンバ構造が保持された状態)で、チャンバ本体32に対してチャンバ蓋31(ワークWに対してシリンジ21)が水平方向に移動するように構成されている。具体的には、加重受け37としてボールローラが用いられる。ボールローラは、例えば、自由回転球体と、この自由回転球体を一部突出させた状態(これにてチャンバ蓋31と接する)で回転保持する球体受け(着座)と、を備えて構成される。これによれば、チャンバ30内を真空状態とすることでチャンバ蓋31に大気圧が加えられる状態においても、点動体であるボールローラにおける転がり方式での加重受け構造とすることで、例えばすべり方式における加重受け構造と比較して、極めて円滑にチャンバ蓋31を水平方向に移動させることができる。
【0034】
特にワークWが大判化することでチャンバ本体32も大型化させる必要があるときには大気圧によってチャンバ蓋31に加えられる力が大きくなるため、加重受け37に加わる力も大きくなる。このため、加重受け37に加わる力に応じた個数の加重受け37を設けることで、それぞれの加重受け37に加わる力を分散化して小さくすることで、チャンバ蓋31を円滑に移動させることができる。なお、加重受け37としては、チャンバ蓋31に加えられるに応じて、ボールローラのような転がり加重受けのみならず滑り加重受けを用いたりすることもできる。なお、シールリング33と加重受け37のチャンバ蓋31に対する摺動のし易さを確保するために、これらの間に潤滑剤を塗布しておいてもよい。
【0035】
また、樹脂供給装置10は、チャンバ30内に設けられる重量計40を備える。樹脂供給装置10では重量計40にワークWがセットされ、重量計40はワークWの重量を計測する。この重量計40では、ワークWがセットされた状態で、ワークWに吐出される樹脂Rの重量が計測される。これによれば、真空状態のチャンバ30内においてワークWに吐出して供給される樹脂Rをリアルタイムで計測することができる。
【0036】
また、樹脂供給装置10は、チャンバ本体32の底部を貫通して設けられ、駆動部44(
図7参照)によってZ軸方向に上下動(往復動)するピン43と、このピン43とチャンバ本体32との間をシールするシールリング45(
図7参照)と、を備える。このピン43は、搬送装置に対するワークWの受け渡しに用いられる。搬送装置からワークWを受けるときは、ピン43は上動して先端がチャンバ本体32から突出する(
図1参照)。ピン43から重量計40へワークWをセットするときは、ピン43は下動してチャンバ本体32の底部側へ退避する(
図2参照)。
【0037】
次に、樹脂供給装置10の動作方法(樹脂供給方法となる)について説明する。樹脂供給装置10は、CPU(中央演算処理装置)およびROM、RAMなどの記憶部を有する制御部(不図示)を備えている。記憶部に記録された各種制御プログラムをCPUが読み出して実行することで、樹脂供給装置10を構成する各部(機構)の動作が制御される。各部が動作することが樹脂供給装置10の動作となる。なお、樹脂供給装置10が樹脂成形装置に組み込まれる場合には、樹脂成形装置の制御部によって樹脂供給装置10が制御される構成としてもよい。
【0038】
図1に示す樹脂供給装置10は、チャンバ30にワークWが供給される前の状態である。ここでは、チャンバ30が開いており、またシリンジ21のノズル22がピンチバルブ24によって閉じられ、プランジャ23が上方で待機している。このようにチャンバ30が開いている状態で、例えば搬送装置や作業者によって搬送されるワークWをチャンバ30にセットする。本実施形態では、搬送装置がワークWをピン43に引渡し、ワークWを受け取ったピン43が下動することで、ワークWが重量計40にセットされる(
図2参照)。
【0039】
続いて、
図2に示すように、チャンバ30を閉じた状態として、その内部のエアを排出して真空状態とする。具体的には、まず、蓋駆動部50によってチャンバ蓋31を下動させていくことで、チャンバ蓋31がシールリング33を押し潰しながら加重受け37と接してチャンバ30を閉じた状態とする。次いで、圧調節部41によってチャンバ30内を減圧していき、所定圧の真空状態とする。ここで、チャンバ蓋31を加重受け37で支持することでシールリング33が潰れすぎてしまうのを防止することができる。なお、この真空状態とする動作の前に、または並行して、チャンバ30の内部温度が所定の値となるように温度調節部(不図示)を制御することで、供給される樹脂Rへの熱の影響を抑制することができる。
【0040】
続いて、真空状態としたチャンバ30内でワークWへの樹脂Rの供給を開始する。具体的には、圧調節部41によってチャンバ30を引き続き真空状態とする。そして、バルブ駆動部26によってピンチバルブ24を駆動させてノズル22を開き、駆動部80によってプランジャ23を下動させてノズル22から樹脂Rを吐出させることで、ワークWへの樹脂Rの供給を可能とする。このとき、重量計40によってワークWの重量、すなわち樹脂Rの重量をリアルタイムで計測しながら樹脂Rが供給されることとなる。
【0041】
続いて、
図3に示すように、ノズル22がワークWの所定位置と対向するようにノズル22を移動させながら、ノズル22から樹脂Rを吐出する。具体的には、圧調節部41によってチャンバ30を引き続き真空状態とする。そして、蓋駆動部50によってチャンバ蓋31を水平移動させてチャンバ蓋31に設けられたノズル22を移動させながら、駆動部80によってプランジャ23を更に下動させてノズル22から樹脂Rを吐出させる。この際、ノズル22がワークWの最外周に達してもシールリング33によって密閉状態(真空状態)が維持されるように、ノズル22の移動範囲はシールリング33の内径より小さいものとなる。ここでは、ワークWの狭隘部102(チップ部品100とキャリア101との間)に掛かるように樹脂Rを供給(塗布)していく。
【0042】
このようにして、所定の塗布パターンとなるようにワークWの表面に樹脂Rを供給(塗布)することができる。塗布パターンとしては、
図4に示すように、例えば、ワークWの表面全体に渦巻き状や格子状とすることができる。ここで、
図4は円板形状のワークWへの樹脂Rの塗布パターンを説明するための図であり、
図4Aは渦巻き、
図4Bは格子の状態を示す。所定量の樹脂Rを供給するにあたり、ノズル22が設けられたチャンバ蓋31を移動させながらワークWの表面全体に樹脂Rを供給することで、例えば、ワークWの表面中央のみに樹脂Rを供給する方式と比較して、成形金型91(
図9参照)を用いてキャビティC内で樹脂Rを圧縮する際に、樹脂Rが流れる距離(熱が加わる時間)を同程度にすることができ、エアが抱え込まれるのを防止することができる。
【0043】
また、チップ部品100の側面を樹脂Rで覆うような
図4Bに示す塗布パターンとしてもよいし、チップ部品100の側面を樹脂Rで覆うか否かを問わずに、格子状等に、チップ部品100の全面に樹脂Rを供給することもできる。ここで、チップ部品100の側面を樹脂Rで覆うような
図4Bに示す塗布パターンとしたときには、後述する工程において大気圧により狭隘部102に樹脂Rをすばやく注入してアンダーフィル(いわゆるキャピラリーアンダーフィルに相当)することができる。更に、型内で樹脂成形を行う際に、狭隘部102におけるエアの排出が適切に行われることで型内における圧縮(成形金型91による加圧)によって、アンダーフィルをより確実に行うこともできる。なお、
図4Bに示すようなチップ部品100間を埋めて樹脂Rを供給しなくとも、チップ部品100の全周に樹脂Rを供給することができれば、
図4Bに示す樹脂Rのライン幅(チップ間幅)よりも狭いライン幅で樹脂Rを供給することもできる。
【0044】
この他、樹脂Rの塗布パターンにおいては種々考えられる。
図5はチップ部品(不図示)が搭載されて狭隘部を有するパネル形状(矩形状)のワークWに対する樹脂Rの塗布パターン(ワークWに対向するノズル22の吐出経路を含む)を説明するための図である。
図5AはワークWの中央部に樹脂Rをドット状(一点)に塗布(センタードット)した状態である。このような簡易な塗布パターンであっても、例えば、真空雰囲気下で樹脂Rの供給を行った後、大気雰囲気下にワークWをおくことで、その圧力差によって狭隘部に樹脂Rを注入させることができる。また、塗布時間を短縮することができる。
図5BはワークWの面内に樹脂Rを多点状に塗布した状態である。この状態では、センタードットと比較して、エアの排出を容易にし、またキャビティC内で樹脂Rを圧縮する際に樹脂Rが流れる距離を同程度にすることができる。
【0045】
図5CはワークWの面内で樹脂Rを例えば略キャビティサイズに大きく渦巻き状に塗布した状態である。この状態では、渦巻き状としてエアの排出を容易にし、キャビティサイズに塗布されることで、キャビティC内で樹脂Rを圧縮する際に、樹脂Rが流れる距離を同程度にすることができる。
図5Dは例えばセンタードット(
図5A)よりも樹脂Rの高さを低くし(センタードットの低背化)、小さな可動域で小さく渦巻き状に塗布した状態である。この状態では、樹脂Rが型面に対して接触するタイミングを遅らせることで型閉じ動作におけるエアの排出可能な時間を長くしてエアの排出を容易にすることができる。また、一点から樹脂Rを塗布したときには、粘度が高いことで線状に塗布された樹脂Rが不均等に積み上がりながら塗布されることで、均一な形状に塗布することが困難となる場合も考えられるが、小さく渦巻き状に塗布することで、適切な円形等の形状に塗布することもできる。なお、高い位置にある樹脂Rが圧縮されて低い位置に移動する際にエアを抱え込むといった不具合の発生を防止することができる。
【0046】
図5Eは矩形状のワークWの角に合わせて角ができるように渦巻き状に塗布した状態である。この状態では、ワークWの形状に合わせて渦巻き状としてエアの排出を容易に行うことができる。
図5Fは矩形状のワークWに合わせて格子状に一筆書きで塗布した状態である。この状態では、ワークWの形状に合わせて均一幅で樹脂Rを塗布することができる。
図5GはワークWの面内で樹脂Rを中央部から外周部へ向かうような放射状に塗布(点線はノズル22からの吐出なしの経路)した状態である。この状態では、樹脂Rがキャビティ内で圧縮される際に、中央部から外周部へエアの排出を行うことができる。
【0047】
また、チップ部品100への樹脂Rの塗布パターンにおいても種々考えられる。
図6はワークWの要部(チップ部品100)への樹脂Rの塗布パターンを説明するための図である。
図6Aはチップ部品100の全周に渡って一筆書きで樹脂Rを塗布した状態である。
図6Bは隣接するチップ部品100間を覆わずに外周のみ一筆書きで樹脂Rを塗布した状態である。
図6Cは隣接するチップ部品100間(一部の樹脂Rはチップ部品100上にある)を覆って樹脂Rを塗布する状態である。
図6に示すように、塗布パターンを環状とすることで、その内側にある狭隘部102へ樹脂Rが注入され易くなる。
【0048】
このように樹脂Rが所定量供給された後(すなわち塗布パターンが完成した後)、ノズル22からの樹脂Rの吐出を停止する。具体的には、駆動部80によるプランジャ23の下動を停止すると共にピンチバルブ24によってノズル22が閉じられて樹脂Rの吐出を停止する。また、プランジャ23を引き戻して樹脂Rの吐出の停止を補助してもよい。
【0049】
続いて、チャンバ30内からエアを排出することを停止する。具体的には、圧調節部41によるエアの排出を停止することによってチャンバ30の所定圧における真空状態を解除する。圧調整部41の停止によって、真空状態における所定圧からチャンバ30内が加圧されることとなる。これにより、例えばワークW上に供給された樹脂Rの下方において狭隘部102(樹脂Rを充填すべき空間)がある場合に、アンダーフィルがされるように減圧された狭隘部102に周囲の雰囲気の圧力で加圧された樹脂Rが注入される。
【0050】
続いて、閉じられた状態のチャンバ30内でノズル22を上下動(昇降)させる。具体的には、チャンバ蓋31を動かさずにチャンバ30が閉じられた状態で、駆動部70によってシリンジケース25(シリンジ21)を介してノズル22を上下動させる。このようにして、ノズル22の上下動を所定回数繰り返す液切り動作が行われる。本実施形態では、チャンバ30が閉じられ内部が形成されたままの状態で液切り(ノズル22の上下動)が行われる。
【0051】
続いて、チャンバ30を開いた状態とする。具体的には、蓋駆動部50によってチャンバ蓋31を上動させていくことで、チャンバ本体32(加重受け37およびシールリング33)からチャンバ蓋31が遠ざかっていき、チャンバ30が開いた状態となる(
図1参照)。これにより、大気開放され、樹脂Rの周囲から大気圧が加えられることで、狭隘部102へ樹脂Rが注入(充填)される。本実施形態のように、ワークWとしてキャリア101上にチップ部品100がフリップチップ接続により搭載されているときには、チップ部品100とキャリア101を接続する多数のバンプの間に樹脂Rを注入、充填することができ、エアの抱え込み(狭隘部102で樹脂Rのない領域)を抑制することができる。なお、チップ部品100がキャリア101上にフリップチップ接続でない方式でワークW上に搭載される場合であっても、チップ部品100の側面とキャリア101の主面とで構成される角部の空間にエアが溜まってしまうような場合にも樹脂Rを充填できる。
【0052】
なお、再度チャンバ30を閉じてチャンバ30内を真空状態(減圧)とした後、チャンバ30を開いて大気開放(加圧)とする工程を繰り返してもよい。これによれば、狭隘部102へ樹脂Rをより確実に注入することができる。なお、チャンバ30内の加圧は、圧調節部41が例えばコンプレッサなどの加圧装置を備えていれば、チャンバ30を閉じた状態でも行うことができ、エアの抱え込みを解消しながら雰囲気を加圧して狭隘部102へ樹脂R一層確実に注入することができる。
【0053】
その後、チャンバ30が開いている状態で、例えば搬送装置によってワークW(樹脂Rが供給されたもの)が取り出される。この際、重量計40にセットされているワークWは、上動したピン43によって支持(エジェクト)され、搬送装置へ渡される。その後は、樹脂Rが供給されたワークWは、例えば成形金型91(
図9参照)へ搬送されセットされる。次いで、成形金型91で形成されるキャビティC内で圧縮され、樹脂Rが熱硬化される。この圧縮により樹脂Rが加圧されて狭隘部102へ注入されることによって、アンダーフィルをより確実に行うことができる。このように、前述の樹脂供給方法を用いてエアの抱え込みなどの不具合が防止されているので、狭隘部102での未充填などの成形不良が抑制された成形品が製造される。
【0054】
(実施形態2)
本発明の実施形態に係る樹脂供給装置10Aについて、主として
図7および
図8を参照して説明する。
図7および
図8は樹脂供給動作に係る樹脂供給装置10Aを説明するための図である。本実施形態では、前記実施形態1よりもチャンバ蓋31を小さくすることができ、装置の小型化が可能な点で相違するため、以下ではこの点を中心に説明する。なお、樹脂供給装置10Aにおいても前記実施形態1と同様に圧調節部41(
図1参照)を用いてチャンバ30内を真空状態とするが、
図7および
図8では圧調節部41を省略している。また、説明を容易にするために、一部にハッチングを付している。
【0055】
樹脂供給装置10Aは、チャンバ蓋31を移動させる蓋駆動部50A(XZ軸駆動機構またはYZ軸駆動機構)と、チャンバ30内に設けられ、ワークWがセットされるセット台51と、セット台51を回転させる台駆動部52(回転駆動機構)と、を備える。蓋駆動部50Aとしては、前述した一軸(Z軸)用の駆動部70、80を二軸(XZ軸またはYZ軸)のそれぞれに対応させたものを用いることができ、水平方向(X軸またはY軸方向)および鉛直方向(Z軸方向)にチャンバ蓋31(ノズル22)を移動させることができる。また、台駆動部52としては、セット台51に取り付けられる回転軸53がベルト54を介してモータ55によって回転駆動するものを用いることができ、回転方向(水平方向)にセット台51を移動させることができる。また、回転軸53がチャンバ本体32の底部で貫通して設けられるため、樹脂供給装置10Aは回転軸53とチャンバ本体32との間をシールするシールリング57を備える。
【0056】
これによれば、チャンバ30が真空状態においてもワークWに対してチャンバ蓋31およびこれに設けられるノズル22を相対的に移動させることができる。すなわち、任意の吐出位置においてワークWの面内に樹脂Rを供給することができる。また、ワークセット側として回転するセット台51を設けることで、樹脂供給側としてノズル22が設けられるチャンバ蓋31の移動範囲(可動範囲)を小さくすることができる。具体的には、チャンバ蓋31の水平方向における移動範囲が、前記実施形態1ではX軸およびY軸方向であるのに対して、本実施形態ではY軸方向またはX軸方向のいずれかにおける半径分の距離だけでよい。すなわち、ワークWの中心部から一端部までノズル22を移動させる動作と平行してワークWを回転させることで、ワークWの全面に対して渦巻き状に樹脂Rを塗布することができる。また、このような構成において、ノズル22の進退動作と、ワークWの回転とを組み合わせることで、ワークWにおいて任意の直線または曲線の放射状の塗布も可能である。このため、本実施形態では、前記実施形態1よりもチャンバ蓋31を小さくすることができる。また、チャンバ蓋31が小さくなるので、樹脂供給装置10A全体のフットプリントを小さく(省スペース化)することができる。
【0057】
また、樹脂供給装置10Aは、セット台51に設けられ、例えばワークWを挟むように固定するチャック56を備える。これによれば、ノズル22からワークWに吐出される樹脂Rに粘着性があり、樹脂RによってワークWの回転が阻止されるような場合であっても、セット台51の回転に合わせてワークWを安定して回転させることができる。
【0058】
また、樹脂供給装置10Aは、チャンバ30外に設けられ、チャンバ本体32を貫通するピン61を介してワークWがセットされる重量計60と、重量計60に起立して設けられるピン61と、を備える。重量計60およびピン61は、駆動部63(Z軸駆動機構)によってZ軸方向に上下動(往復動)することができる。これによれば、前記実施形態1の重量計40のようにチャンバ30内に設けることなく、ワークWに供給される樹脂量を計測することができる。このため、チャンバ30の容量を小さくすることができる。また、重量計60がチャンバ30外に設けられるので、チャンバ30内が真空状態となった後に計測可能な安定した状態となるまで待機することなく計測することができる。この点を踏まえて前記実施形態1では真空状態でも計測可能な重量計40を用いているが高額となってしまうため、本実施形態では低額な重量計60を用いることで樹脂供給装置10Aの製造コストを低減することができる。また、チャンバ30の容量が小さくなることで、例えば圧調節部41としての真空ポンプにかかる負荷を抑制することができる。
【0059】
また、樹脂供給装置10Aは、チャンバ30外へピン61が退避した状態で、ピン61が貫通していたチャンバ本体32の孔32bを塞ぐシャッタ62を備える。シャッタ62としては、例えば駆動部(不図示)によってスライド可能な構成のものを用いることができる。チャンバ30が閉じられた状態で孔32bをシャッタ62で塞ぐ(シールする)ことでチャンバ30内を密閉状態とすることができる。
【0060】
シャッタ62は、ピン61を貫通させるための孔62aと、回転軸53を貫通させるための孔62bとを備える。ワークWの重量が計測される状態で孔32bと孔62aとが連通するように、シャッタ62は移動する(位置する)。また、ワークWが計測される状態と樹脂Rが供給される状態との間でシャッタ62が移動する(位置する)こととなるが、この間で回転軸53がシャッタ62と接触しないような大きさで孔62aが形成されている。
【0061】
ところで、樹脂供給時においては、ピン61をチャンバ30外に退避させなくとも、チャンバ30内に留まらせておくことが考えられる。この場合、チャンバ30内を密閉状態とするため、孔32bにおいてチャンバ本体32とピン61との間をシールするシールリングを設けておく必要がある。このため、ピン61を介しての重量計60による計測が、正確にできないおそれが生じる。この点、本実施形態では、孔32bでのシールに関してシールリングを用いるのではなくシャッタ62を設けている。これにより、チャンバ30外に重量計60を設ける構成であっても正確に重量計測することができる。なお、孔32bや孔62aの径がピン61の径よりも大きいことで、ピン61がチャンバ本体32に接触せずに、ピン61を介して重量計60によってワークWの重量が計測される。
【0062】
次に、樹脂供給装置10Aの動作方法(樹脂供給方法となる)について説明する。なお、前記実施形態1と重複する工程は概略して説明する。
【0063】
まず、
図7に示すように、樹脂Rが供給される前のワークWの重量を計測した後、セット台51へワークWをセットする。具体的には、チャンバ30が開いている状態で、予めピン61の先端がセット台51よりも高い位置となるように、駆動部63によって重量計60およびピン61を上動させておく。この状態で、例えば搬送装置や作業者によって搬送されるワークWをピン61にセットし、樹脂Rが供給される前のワークWの重量を重量計60で計測する。そして、駆動部63によって重量計60およびピン61を下動させて、ピン61からセット台51へワークWを渡した後、チャック56によってワークWをセット台51に固定してセットする。
【0064】
続いて、ピン61をチャンバ本体32から退避させた後、シャッタ62をスライドさせてピン61が貫通していた孔32bを塞ぐ(シャッタ62が閉じた状態となる)。その後、チャンバ30を閉じた状態として、圧調節部41によってチャンバ30内のエアを排出
し始め、真空状態(減圧状態)とする。
【0065】
続いて、
図8に示すように、真空状態としたチャンバ30内で、ワークWに対して相対的にノズル22を移動させながら、ノズル22から樹脂Rを吐出して供給する。具体的には、圧調節部41によってチャンバ30を引き続き真空状態とする。そして、台駆動部52によってセット台51を回転(水平移動)させてセット台51にセットされたワークWを移動させながら、蓋駆動部50Aによってチャンバ蓋31を水平移動させてチャンバ蓋31に設けられたノズル22を移動させる。このとき、チャンバ蓋31は、前記実施形態1とは異なり、Y軸方向またはX軸方向のいずれか一方に水平移動する。バルブ駆動部26によってピンチバルブ24を駆動させてノズル22を開き、駆動部80によってプランジャ23を下動させることで、ワークWへノズル22から樹脂Rを吐出して供給する。前記実施形態1で説明した所定の塗布パターンのうち渦巻き状や放射状といった塗布パターンとなるようにワークWの表面に樹脂Rを供給(塗布)することができる。
【0066】
続いて、チャンバ30内からエアを排出することを停止する。具体的には、圧調節部41によるエアの排出を停止することによってチャンバ30の所定圧における真空状態を解除する。これにより、減圧された狭隘部102に周囲の雰囲気の圧力で加圧された樹脂Rが注入される。また、ノズル22の上下動を所定回数繰り返して液切りを行う。
【0067】
続いて、閉じられた状態のチャンバ30内で樹脂Rの供給量を計測する。具体的には、シャッタ62をスライドさせて孔32bと孔62aとを連通させる(シャッタ62が開いた状態となる)。これにより、チャンバ30が大気開放され、狭隘部102への樹脂Rの注入(充填)が促進される。また、ピン61がチャンバ30内へ進入可能な状態となる。そして、駆動部63によって重量計60およびピン61を上動させて、チャンバ本体32を貫通したピン61でワークWを持ち上げる。これにより、ワークWの重量を重量計60で計測して、樹脂供給前の重量と比較することで、樹脂Rの供給量を計測することができる。なお、樹脂供給量が所定量に達していなければ、ワークWをセット台51にセットし、真空状態のチャンバ30内で樹脂Rを再度供給する。
【0068】
樹脂Rが所定量供給された後、チャンバ30を開いた状態とする。具体的には、蓋駆動部50Aによってチャンバ蓋31を上動させていくことで、チャンバ本体32からチャンバ蓋31が遠ざかっていき、チャンバ30が開いた状態となる。その後、例えば搬送装置によってワークW(樹脂Rが供給されたもの)が取り出され、例えば成形金型91(
図9参照)へ搬送される。この際、セット台51にセットされているワークWは、チャック56が解除された後、上動したピン43によって支持(エジェクト)され、搬送装置へ渡される。なお、その後は、樹脂Rが供給されたワークWを成形金型91へセットし、成形金型91が有するキャビティC内で樹脂Rが熱硬化される。前述の樹脂供給方法を用いてエアの抱え込みなどの不具合が防止されているので、狭隘部102での未充填などの成形不良が抑制された成形品が製造される。
【0069】
(実施形態3)
まず、本発明の実施形態に係る樹脂成形装置90について、主として
図9および
図19を参照して説明する。
図9は樹脂成形方法(樹脂成形装置90)を説明するための図(断面図)である。
図19は樹脂成形装置90を説明するための図(概略構成図)である。
【0070】
樹脂成形装置90は、自動機として、供給部97、プレス部98、収納部99およびこれらの間でワークWや樹脂Rを搬送する搬送装置104(搬送部)を備える。供給部97は、前述の樹脂供給装置10を備え、ワークWや樹脂Rをプレス部98へ供給する準備などを行う。また、プレス部98は、キャビティCを有する成形金型91を備え、キャビティC内で樹脂Rを熱硬化させる。この成形金型91は、公知のプレス機構によって型開閉可能な一対の金型(一方を上型92、他方を下型93とする)を備え、下型93にワークWがセットされ、上型92にキャビティC(凹部)が設けられて「上キャビティ成形」を行う。なお、上型92にワークWがセットされ、下型93にキャビティC(凹部)が設けられて「下キャビティ成形」を行う金型構成としてもよい。また、収納部99は、樹脂成形されたワークW(成形品)を収納する準備などを行う。なお、樹脂成形装置90は各部を制御する制御部105を備えており、この制御部105が樹脂供給装置10、10Aの制御部として兼用されるが、別々に用いられてもよい。
【0071】
なお、自動機である樹脂成形装置90の別の構成としては、ワークWの収納も可能な供給部97、前述の樹脂供給装置10を備えた樹脂Rの供給部、プレス部98およびこれらの間でワークWや樹脂Rを搬送する搬送装置104(搬送部)を備えた構成としてもよい。供給部97は、ワークWをプレス部98へ供給する準備し、成形が行われたワークWを収納する。また、樹脂Rの供給部はワークWやリリースフィルムに対して、任意に樹脂Rを供給することができる。
【0072】
成形金型91は、キャビティC(凹部)を構成するため、キャビティ駒94(第1金型ブロック)およびこれを囲むクランパ95(第2金型ブロック)を備える。成形金型91では、上型92にキャビティCが設けられるため、キャビティCの底部がキャビティ駒94の下面、キャビティCの側部がクランパ95の内壁面で構成される。また、成形金型91は、上型92と下型93との間(金型内部)をシールするシールリング96(例えばOリング)を備える。なお、図示しないが、樹脂成形装置90は、成形金型91の内部圧力を調節する圧調節部(例えば真空ポンプ)や内部温度(成形温度)を調節する温度調節部(例えばヒータ)を備える。
【0073】
次に、樹脂成形方法(樹脂成形装置90の動作方法となる)について説明する。まず、例えば前述の樹脂供給装置10を用いて、ワークW上に樹脂Rを供給する(
図9A)。続いて、樹脂Rが供給されたワークWを搬送装置104によって、樹脂供給装置10から型開いた状態の成形金型91へ搬入し、チップ部品100をキャビティC側に向けてワークWを成形金型91(下型93の上面)にセットする(
図9B)。
【0074】
続いて、成形金型91を型閉じしていき、キャビティCを減圧(真空)状態とする(
図9C)。具体的には、プレス機構によって上型92に対して下型93を近づけていく。これにより、下型93に設けられているシールリング96が上型92のクランパ95にタッチし、キャビティCにワークW(キャリア101)上のチップ部品100および樹脂Rが収容される。このとき、圧調節部(不図示)によってエアの排出をすることで、金型内部を減圧状態とすることができる。
【0075】
続いて、成形金型91を更に型閉じていくことで、上型92と下型93との間でワークW(キャリア101)をクランプし(
図9D)、圧縮成形を行う(
図9E)。このとき、温度調節部(不図示)によって成形金型91は成形温度に加熱されているので、樹脂RはキャビティC内で熱硬化(加熱、硬化)される。樹脂Rが圧縮(加圧)されて狭隘部102へ注入されることなるが、前述の樹脂供給方法を用いてエアの抱え込みなどの不具合が防止されているので、狭隘部102での未充填などの成形不良が抑制された成形品(ワークW)が形成される。その後、成形金型91を型開きした状態とし、搬送装置104によって成形金型91からワークW(成形品)が取り出され、収納部99に搬出される。
【0076】
本実施形態では、樹脂成形前に前述の樹脂供給方法によってワークWと樹脂Rとの間にエアが混入するのを抑制している。このため、ワークW(成形品)の樹脂成形部において、エア混入によるボイドの発生を抑制することができる。また、ワークWでは、狭隘部102においてもエアの混入が抑制されているため、ボイドの発生を抑制してアンダーフィルが行われる。
【0077】
(実施形態4)
まず、本発明の実施形態に係る樹脂成形装置90Aについて、主として
図10を参照して説明する。
図10は樹脂成形方法(樹脂成形装置90A)を説明するための図(断面図)である。なお、樹脂成形装置90Aの概略構成は前述した樹脂成形装置90(
図19)と同様である。
【0078】
樹脂成形装置90Aが備える成形金型91Aは、公知のプレス機構によって型開閉可能な一対の金型(一方を上型92、他方を下型93とする)を備え、上型92にワークWがセットされ、下型93にキャビティC(凹部)が設けられて「下キャビティ成形」を行う。本実施形態では、「下キャビティ成形」を行う点、及び、異なる2種類の樹脂R、Raを用いて成形する点で前記実施形態3と相違するため、以下ではこの点を中心に説明する。
【0079】
次に、樹脂成形方法(樹脂成形装置90Aの動作方法)について説明する。まず、例えば前述の樹脂供給装置10を用いて、ワークW上に樹脂Rを供給する(
図10A)。更に、樹脂供給装置10によれば、減圧された狭隘部102に周囲の雰囲気の圧力で加圧された樹脂Rを注入させることができる(
図10B)。ここで、ワークWの狭隘部102へ樹脂Rが充填されたことで、チップ部品100とキャリア101との接続部分が封止されていることから成形を完了してもよい。
【0080】
しかしながら、チップ部品100の外周も樹脂封止することで一体化して機械的な強度を保持したり、チップ部品100外周も樹脂封止により被覆したほうがよい場合には、以下の工程を行う。具体的には、樹脂Rが供給されたワークWを搬送装置104によって、樹脂供給装置10から型開いた状態の成形金型91Aへ搬入し、チップ部品100をキャビティC側に向けてワークWを成形金型91A(上型92の下面)にセットする(
図10C)。このワークWは、例えば上型92の下面で開口する路(孔)を介して吸引装置によって上型92の下面に吸着保持される。また、ワークWに供給されている樹脂Rとは別の樹脂RaをキャビティC内に供給する。ここで、別の樹脂Raとは、樹脂供給装置10を用いる工程とは別の工程で供給されるものであり、材質が同じものであっても異なってもよい。また、樹脂供給装置10での樹脂Rは液状であったが、樹脂Raは液状、顆粒状、粉状、シート状であってもよい。また、樹脂Raは、適宜の搬送装置104により搬送できるが、例えば、金型面を覆って型面と樹脂Raとの接触を防止するリリースフィルムに樹脂Raを搭載した状態でキャビティC内に供給することができる。
【0081】
続いて、成形金型91Aを型閉じしていき、キャビティCを減圧(真空)状態とする(
図10D)。これにより、上型92に設けられているシールリング96が下型93のクランパ95にタッチし、キャビティCにチップ部品100および樹脂R、Raが収容される。
【0082】
続いて、成形金型91Aを更に型閉じていくことで、上型92と下型93との間でワークW(キャリア101)をクランプし、圧縮成形を行う(
図10E)。このとき、温度調節部(不図示)によって成形金型91Aは成形温度に加熱されているので、樹脂R、RaはキャビティC内で熱硬化(加熱、硬化)される。前述の樹脂供給方法を用いてエアの抱え込みなどの不具合が防止されているので、狭隘部102での未充填などの成形不良が抑制された成形品(ワークW)が形成される。また、例えば、狭隘部102の充填に適した樹脂Rと、放熱性やシールド性などに優れチップ部品100の封止に適した樹脂Raを用いて成形品を形成することができる。その後、成形金型91Aを型開きした状態とし、搬送装置104によって成形金型91AからワークW(成形品)が取り出され、収納部99に搬出される。
【0083】
(実施形態5)
本発明の実施形態に係る樹脂成形方法について、主として
図11〜
図14を参照して説明する。
図11〜
図14は樹脂成形方法を説明するための図(斜視図)である。本実施形態では、例えば、ワークWへの樹脂Rの供給には前述の樹脂供給装置10、10Aを用いることができ、樹脂成形には前述の樹脂成形装置90、90Aを用いることができるが、樹脂成形には「上キャビティ成形」を行う樹脂成形装置90が好ましい。
【0084】
まず、樹脂Rが供給される前のワークW(被供給物)を準備する(
図11)。ワークWとしては、複数のチップ部品100(例えば半導体チップなど)が行列状にフリップチップ接続(バンプ接続)された円板形状のキャリア101(例えば半導体ウェハ、配線層が形成されたガラス板など)を適用する。
【0085】
続いて、例えば樹脂供給装置10を用いて、ワークW上に樹脂Rを供給する(
図12)。ここでは、ワークW(キャリア101)全面に隙間を空けて液状の樹脂Rを渦巻き状に塗布して供給することで、ワークW上において樹脂Rに覆われたチップ部品100がない状態とする。
【0086】
続いて、樹脂Rが供給されたワークWを型開きした成形金型91へセットした後、成形金型91を型閉じることで、シールリング96をクランパ95にタッチさせ、更にワークWをクランプする。このとき、型閉じされたキャビティCを含む金型内部は減圧されている。このように、周囲雰囲気を減圧することによってチップ部品100とキャリア101との間(
図1に示す狭隘部102)のエアを排出し、アンダーフィルされた樹脂R内のボイドの発生を防止することができる。なお、エアの排出効果を高めるために、シールリング96がタッチする際に、樹脂Rがキャビティ駒94の下面に接しないような高さで樹脂RがワークWに供給されているのが好ましい(
図9C)。
【0087】
そして、更に型閉じすることによって、液状の樹脂Rを圧縮し(
図13)、キャビティC内で充填された樹脂Rを熱硬化させて成形する(
図14)。渦巻き状(複数の線状)に塗布された液状の樹脂Rは、成形金型91で押し広げられて隣接する線状の樹脂R間の距離分だけ流れることになり、例えば塗布時間の短縮のためにワークWの中央に一点で盛られて供給された樹脂Rが外周まで流れる場合と比較して、樹脂Rの流動距離を削減することができる。これにより、架橋反応により硬化が進行しながら流動していく樹脂の樹脂流動によるチップシフトなどの不具合の発生を防止することができる。また、樹脂流動により生じるフローマークの発生も低減することができる。また、距離が長い場合における流動時の受熱による樹脂Rの硬化を防止してワークWの外周におけるアンダーフィル性を向上することができる。
【0088】
ところで、単に渦巻き状に樹脂RをワークWに塗布して供給した場合、成形金型91で樹脂Rが圧縮されていくと、隣接する線状の樹脂Rどうしが合流することとなるため、減圧が十分でない場合には合流箇所においてエアが抱え込まれてしまうおそれがある。そこで、例えば
図15〜
図18に示すようにワークWにおける所定箇所でエアが流出できる部分がある塗布パターンとすることで、成形金型91で樹脂Rを圧縮していく際にエアの排出を十分に行い、成形不良を防止することができる。なお、樹脂供給装置10、10Aを用いてワークWに樹脂Rを供給するにあたり、チャンバ30内を真空状態とせずとも樹脂R内におけるエアの抱え込みなどの不具合を防止することができる樹脂Rの塗布パターンとして説明する。
【0089】
図15は渦巻き状の一部(所定位置103)を細くして樹脂Rが供給された後のワークWの状態を示す。ここでは、液状の樹脂Rを渦巻き状に供給する際に、ワークWの表面に
図15に示す十字方向や、6方向、8方向など所定方向(所定位置103)や任意間隔で、樹脂Rの高さを低く、または樹脂Rを少なくしている。このような樹脂供給方法としては、例えばノズル22の移動速度を上げることで、その位置における塗布量を他の位置より低下させることができる。また、別の方法としては、ノズル22からの樹脂Rの塗布量を減らすことができる。例えば、ノズル22の開度を下げる(ノズル22を摘む)方法や、プランジャ23の動作速度を遅くする方法が考えられる。これにより、成形金型91で樹脂Rが圧縮される際には、エアが所定位置103を通過できるため、エアの排出を円滑にすることができ、ボイドの発生を防止することができる。
【0090】
図16は途切れさせながら渦巻き状に樹脂Rが供給された後のワークWの状態を示す。ここでは、エアの流動できる空間を設けるために、実質的に多点に塗布するような方法を用いる。この場合、渦巻き状の塗布パターンとなるように移動しているノズル22において、ワークWに近接させたときに樹脂Rを吐出し、離間させたときに吐出された樹脂Rが切り離されるような動作を繰り返すようにする。これにより、完全に塗布を終了させずに次の吐出点に移動させることで、次の吐出点に移動させる動作を即時行うことができる。これにより、吐出点に到達しワークWに近接させたときに樹脂Rを高速に繰り返して吐出することができるため、樹脂Rを高速に供給することができる。また、樹脂Rが塗布された点の間をエアが流動することができ、ボイドの発生を防止できる。また、ノズル22からは少しずつ樹脂Rを吐出することになるので、所定の供給量となるまでワークW全面に樹脂Rを塗布することができる。これによれば、例えば渦巻きの線を高密度に配置した塗布をすることができるため、樹脂Rの流動量を低減しフローマークを減らすこともできる。
【0091】
図17は途切れさせながら直線状に樹脂Rが供給された後のワークWの状態を示す。ここでは、
図16を参照して説明した方法を用いて、エアの流動できる空間を設けるために、実質的に多点に塗布するような直線状の塗布パターンとしている。また、直線状に樹脂Rを供給することで、チップ間に供給する場合に適用することもでき、例えば
図6Bに示すように最終的に一のパッケージ領域として切り分けられる複数のチップの間に塗布する場合に適用することもできる。
【0092】
図18はチップ部品100間に多点で樹脂Rが供給された後のワークWの状態を示す。ここでは、
図16を参照して説明した方法を用いて、例えば、4つの隣接したチップ部品100間に樹脂Rを塗布することで、成形金型91で樹脂Rを圧縮する際に、エアフローを確保しながら樹脂RをキャビティC内で充填させやすくすることができる。
【0093】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0094】
例えば、
図5、
図15〜
図18に示すような各種の樹脂供給方法は、ワークWとしてチップ部品100が搭載されたキャリア101だけでなく、平坦なワークや
図10に示すような下キャビティ成形用において離形成の確保や樹脂漏れ防止などの目的で用いられるリリースフィルムに対しても適用することができる。
【0095】
前記実施形態では、減圧した後に樹脂Rを吐出するノズル22の位置を移動させる構成について説明したが本発明はこれに限定されない。例えば樹脂Rを吐出するノズル22の位置を移動させることでワークW上やリリースフィルム上に任意の形状で樹脂Rを塗布する構成については減圧せずに樹脂Rを供給してもよい。また、例えばリリースフィルム上に任意の形状で樹脂Rを塗布することもできるが、これによりリリースフィルムと樹脂Rとの隙間で挟まれたエアや樹脂R内のエアを排出することもできる。また、シリンジ21やノズル22を複数備えた構成として、塗布時間を短縮させる構成としてもよい。
【0096】
また、例えば
図15〜
図18等に示すような各種の樹脂供給方法は、ワークWにおける所定箇所でエアが流出できる部分がある塗布パターンであり、樹脂Rの吐出を行う際には減圧していなくても、例えば減圧される金型内においてエアが流出(排出)しながら成形することで、ボイドの発生を防止した成形をすることができる。
【0097】
前記実施形態では、チャンバ蓋の加重受けとして、ボールローラを用いたが、例えばコンプレッサからのエアによって加重を受ける構成を用いることができる。