【解決手段】マルチコプター100は、機体110に揚力を与える水平ロータユニット130A〜130D及び固定翼120A、120Bと、機体に推力を与える推進ロータユニット140A、140Bとを備える。制御装置150は、水平ロータユニットにより生じる第一揚力FL1と、固定翼により生じる第二揚力FL2との合計が目標値となるように、水平ロータユニット及び推進ロータユニットの出力を同時に制御する。
前記制御装置が、機体を上昇飛行から水平飛行に移行させるとき、前記垂直離着陸手段による前記第一揚力を次第に下げながら、前記固定翼による前記第二揚力を次第に上げるようにして、前記垂直離着陸手段及び前記推力発生手段を同時に制御する、請求項1又は2に記載の無人航空機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の回転翼型機では、外側ロータユニットの回転翼の回転数を低くしても、小さな揚力で機体を傾ける大きなモーメントを発生させることができ、姿勢制御の応答時間を短くすることができる。
【0006】
ところで、一般的な回転翼型機は、垂直軸を有する上昇用の回転翼を有しているため、優れたホバリング能力を有している。また、水平飛行する際、機体の進行方向側を前下がりとなるように傾けて前方への推力を得ている。すなわち、回転翼型機は、水平方向における推力を得るために、前後の回転翼の回転数を変えて機体を傾け、回転翼のピッチ角を変えている。このように、回転翼のピッチ角を変えることで、回転翼型機は水平飛行が可能であるが、例えばラジコン飛行機のような固定翼型機に比較して長距離飛行や高速飛行には不向きである。
【0007】
また、バッテリ駆動である回転翼型機は、飛行時間や飛行距離が蓄電容量に応じて制限されてしまう。特に、機体を小型化すると、搭載できるバッテリの容量を大きくできないため、飛行時間や飛行距離が更に短くなる。
【0008】
このような回転翼型機での不足点を補うためには、例えば飛行機の固定翼による飛行能力を組み込むことが考えられる。この場合、機体の左右に固定翼を設け、更に機体の例えば後方に、推進用の回転翼を配置することができる。そして、例えばホバリング状態から水平飛行する際、上昇用の回転翼による推力から推進用の回転翼による推力に徐々に切り換えるように制御することで、高速飛行が可能になるものと考えられる。
【0009】
しかし、発明者らがこれまで行ってきた試作実機を使った飛行実験では、特にホバリング状態(垂直飛行モード)から水平飛行状態(水平飛行モード)に移行する際の機体の姿勢制御が難しく、飛行を常に安定させるには、自律制御に更に高度のロバスト性が求められていた。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、垂直飛行モード及び水平飛行モード間の移行の際の飛行制御を安定させることができる等の無人航空機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明は、固定翼と、垂直離着陸手段と、推力発生手段と備える無人航空機であって、前記垂直離着陸手段及び前記推力発生手段を制御する制御装置を備え、前記制御装置が、前記垂直離着陸手段により生じる第一揚力と、前記固定翼により生じる第二揚力との合計が目標値となるように、前記垂直離着陸手段及び前記推力発生手段の出力を制御することを特徴とする。
【0012】
また、無人航空機は、前記垂直離着陸手段が複数の回転翼を有し、前記制御装置が、前記複数の回転翼を制御する垂直飛行制御部と、前記推力発生手段を制御する水平飛行制御部と、前記垂直飛行制御部及び前記水平飛行制御部の連携制御を統括する統括制御部とを備え、前記統括制御部が、対気速度に基づいて前記固定翼による前記第二揚力を求め、機体の全体揚力の目標値に前記第二揚力をフィードバックして前記第一揚力を生じさせるための指令値を前記垂直飛行制御部に出力することが好ましい。
【0013】
また、無人航空機は、前記制御装置が、機体を上昇飛行から水平飛行に移行させるとき、前記垂直離着陸手段による前記第一揚力を次第に下げながら、前記固定翼による前記第二揚力を次第に上げるようにして、前記垂直離着陸手段及び前記推力発生手段を同時に制御することが好ましい。
【0014】
また、無人航空機は、前記推力発生手段が、機体のロール軸と平行な回転軸を有する回転翼を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る無人航空機によれば、回転翼による第一揚力と、固定翼による第二揚力との合計を目標値とする制御により、機体の姿勢を安定させることができる。そのため、例えば水平飛行への移行制御を安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の無人航空機として、複数の回転翼を備えるマルチコプターに適用した場合の実施形態を、図面を参照しながら説明する。まず、
図1及び
図2を参照し、マルチコプターの構成について説明する。なお、
図1は、本発明の一実施形態によるマルチコプター100の外観斜視図であり、
図2はマルチコプター100を示す平面図である。
【0018】
これらの図に示すように、マルチコプター100は、機体110の左右に固定翼120A、120Bを備えている。なお、飛行をより安定させるための乱流翼121A、121Bを、固定翼120A、120Bの端部に備えてもよい。
【0019】
機体110には、円形状の貫通口111が4つ形成されている。なお、貫通口111は4つに限らず、6つ以上であってもよい。これらの貫通口111は、機体110の重心G(正確には機体110、固定翼120A、120Bを含めた全体の重心)を中心とした円周方向に沿って形成されている。
【0020】
また、それぞれの貫通口111の中には、垂直離着陸手段である水平ロータユニット130A〜130Dが配置されている。本実施形態では、水平ロータユニット130A〜130Dが、機体110の重心Gを中心とした対称位置に4つ配置されているが、6つ以上であってもよい。
【0021】
それぞれの水平ロータユニット130A〜130Dは、貫通口111内に掛け渡された支持フレーム112に固定されている。それぞれの水平ロータユニット130A〜130Dは、垂直軸モータ131と、垂直軸モータ131のモータ軸132に取り付けられた回転翼133とを備えている。なお、垂直軸モータ131は、例えばサーボモータを用いることができる。ここで、互いに隣接する水平ロータユニット130A、130Bの回転翼133、133は、互いに逆向きに取り付けられている。同様に、水平ロータユニット130C、130Dの回転翼133、133も、互いに逆向きに取り付けられている。重心Gに対し互いに対称の位置関係にある例えば水平ロータユニット130A、130Dの回転翼133、133は、同じ向きに取り付けられている。
【0022】
また、詳細については後述するが、水平ロータユニット130A、130Dの回転翼133、133が、例えば時計回り方向(CW:clockwise)に回転し、水平ロータユニット130B、130Dの回転翼133、133が、例えば反時計回り方向(CCW:counterclockwise)に回転するように駆動される。なお、本明細書では、時計回り方向(CW)への回転を正転とし、反時計回り方向(CCW)への回転を逆転として説明されている。
【0023】
また、それぞれの水平ロータユニット130A〜130Dの回転翼133の回転数制御により、上昇、下降は勿論のこと、ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸のそれぞれの軸周りでの姿勢が補正される。
【0024】
なお、水平ロータユニット130A〜130Dについては、貫通口111内の中央に限らず、機体110の下方に吊り下げられてもよいし、機体110の上方に突き出すように配置してもよい。
【0025】
マルチコプター100の推力発生手段として、機体110の後部には、2つの推進ロータユニット140A、140Bが設けられている。それぞれの推進ロータユニット140A、140Bは、水平軸モータ141と、水平軸モータ141のモータ軸142に取り付けられた回転翼143とを備えている。回転翼143が取り付けられるモータ軸142は、機体110のロール軸と同方向(平行)に設けられている。
【0026】
なお、推進ロータユニット140A、140Bの水平軸モータ141は、例えばサーボモータを用いることができる。また、本実施形態では、推進ロータユニット140A、140Bを2個配置した場合としているが、この例ら限らず、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。また、推進ロータユニット140A、140Bの水平軸モータ141と、上記の水平ロータユニット130A〜130Dの垂直軸モータ131とは、同じ仕様のものであってもよいし、異なる仕様のものであってもよい。
【0027】
また、機体110の下方には、水平ロータユニット130A〜130D及び推進ロータユニット140A、140Bを制御する制御装置150が設けられている。制御装置150の詳細については後述する。
【0028】
ここで、水平ロータユニット130A〜130D及び推進ロータユニット140A、140Bは、機体110の前後中心線(ロール軸)に沿って左右均等に配置されている。また、水平ロータユニット130A〜130D及び推進ロータユニット140A、140Bは、機体110の重心G(正確には機体110、固定翼120A、120Bを含めた全体の重心)の位置がずれないように、機体110に配置されている。また、制御装置150についても、機体110の重心Gの位置がずれないように、機体110の略中央に配置されている。このように、水平ロータユニット130A〜130D、推進ロータユニット140A、140B及び制御装置150を、機体110の重心Gの位置がずれないように、機体110の適宜の位置に配置することで、マルチコプター100の水平姿勢制御を安定化できる。
【0029】
次に、
図3A、3B、3Cを参照し、水平ロータユニット130A〜130Dによる上昇などの動作制御の概要について説明する。なお、
図3Aは上昇制御を説明するための図であり、
図3Bはロール軸まわりのロール制御を説明するための図であり、
図3Cはヨー軸周りのヨー制御(方向制御)を説明するための図である。
【0030】
上述したように、水平ロータユニット130A及び水平ロータユニット130Dの回転翼133が正転(例えばCW)し、水平ロータユニット130B及び水平ロータユニット130Cの回転翼133が逆転(例えばCCW)するように駆動される。これにより、隣り合う回転翼133の回転による反作用が打ち消され、マルチコプター100の姿勢が安定する。また、水平ロータユニット130A〜130Dの回転翼133が同時に回転することで、ジャイロ効果により、上昇姿勢などが安定する。
【0031】
ここで、
図3Aに示すように、上昇制御を行う場合、それぞれの回転翼133の回転数が予め決められた値(例えばプログラムの指令値)となるように制御される。このとき、機体110には回転翼133による揚力が矢印方向に発生し、その揚力が機体110の重量を超えると、マルチコプター100が上昇する。
【0032】
次に、
図3Bに示すように、ロール制御を行う場合、水平ロータユニット130A〜130Dの回転翼133の回転数が変えられる。すなわち、水平ロータユニット130B、130D側の回転数が、水平ロータユニット130A、130C側の回転数より高くなるように制御される。これにより、水平ロータユニット130B、130D側の回転翼133による揚力が水平ロータユニット130A、130C側の回転翼133による揚力より高くなり、マルチコプター100の機体110は矢印方向に傾く。
【0033】
次に、
図3Cに示すように、ヨー制御を行う場合、水平ロータユニット130A〜130Dの回転翼133の回転数が変えられる。すなわち、水平ロータユニット130A、130Dの回転翼133の回転数が、水平ロータユニット130B、130Cの回転翼133の回転数より高くなるように制御される。このとき、水平ロータユニット130A、130Dの正転する回転翼133の回転による反作用が、水平ロータユニット130B、130Cの逆転する回転翼133の回転による反作用より大きくなる。これにより、マルチコプター100の機体110が矢印方向に向きを変える。
【0034】
なお、一般的なマルチコプターは、周知のとおり、例えば水平飛行する際、機体の進行方向側を前下がりとなるように傾けることで、前方への推力が得られる。ただし、本実施形態のマルチコプター100は、以下に説明するように、推力を推進ロータユニット140A、140Bによって得るようにしており、水平飛行時にも水平姿勢が保たれる。これにより、固定翼120A、120Bで生じる第二揚力FL2を最大にするとともに、風などの外乱による制御への影響を可及的に小さくしている。
【0035】
次に、
図4を参照し、制御装置150の構成について説明する。制御装置150は、垂直離着陸手段である水平ロータユニット130A〜130D、及び、推力発生手段である推進ロータユニット140A、140Bを同時に制御する。
【0036】
より詳細には、制御装置150は、水平ロータユニット130A〜130Dの各垂直軸モータ131の回転数を制御する垂直飛行制御部(VFC:vertical flight controller)163と、推進ロータユニット140A、140Bの各垂直軸モータ131の回転数を制御する水平飛行制御部(HFC:horizontal flight controller)162と、垂直飛行制御部162及び水平飛行制御部163の連携制御を統括する統括制御部161とを備えている。
【0037】
また、制御装置150は、GPS(global positioning system)センサ155、対気速度センサ151、ジャイロセンサ153などの各種センサからの検出信号を入力する。なお、制御装置150には、図示はしないが、機体110の高度を推定するための気圧センサからの信号を入力してもよい。また、マルチコプター100の飛行による調査目的に応じて機体110に取り付けた可視カメラ、赤外線カメラ、γ線量測定器、ガス検出器などの各種計測機器からの情報信号を入力することもできる。更に、これらの機器で計測された情報を、基地装置に無線送信する送信部や、マルチコプター100を遠隔操縦するための操縦信号を受信する受信部などを設けてもよい。
【0038】
垂直飛行制御部162は、統括制御部161から出力される旋回(ヨー)角速度指令信号及び揚力指令信号に従って、垂直離着陸手段である水平ロータユニット130A〜130Dを使い、機体110の上昇、下降、ホバリング、旋回を含む水平姿勢制御を自律的に行う。垂直飛行制御部162が出力する、第一揚力FL1を生じさせるための制御量信号は、水平ロータ駆動部164で増幅され、それにより水平ロータユニット130A〜130Dの各垂直軸モータ131が、制御された回転数で駆動される。
【0039】
垂直飛行制御部162は、ジャイロセンサ153からの検出信号に基づいて、マルチコプター100を自律制御することができる。ジャイロセンサ153は、例えば6軸ジャイロセンサであり、その場合には、ロール軸周りの角速度ω
R及びロール軸方向の加速度α
R、ピッチ軸周りの角速度ω
P及びピッチ軸方向の加速度α
P、ヨー軸周りの角速度ω
Y及びヨー軸方向の加速度α
Yの検出信号が、垂直飛行制御部162に入力される。
【0040】
次に、水平飛行制御部163は、統括制御部161から出力される推力指令信号に従って、推力発生手段である推進ロータユニット140A、140Bを使って、機体110をロール軸方向に前進飛行させる制御を行う。水平飛行制御部163が出力する制御量信号は、推進ロータ駆動部165で増幅され、推進ロータユニット140A、140Bの各水平軸モータ141が、制御された回転数で駆動される。例えばナビゲータ170が、予め登録された飛行計画に従い算出した推力の指令信号を水平飛行制御部163に出力し、GPSセンサ155から得られる対地速度GS(ground speed)を水平飛行制御部163にフィードバックすることができる。
【0041】
本実施形態では、マルチコプター100が飛行中、水平ロータユニット130A〜130Dの回転翼133が回転することにより生じる第一揚力LF1と、固定翼120A、120Bの上下の気圧差により生じる第二揚力LF2との合計が、ナビゲータ170が指令する全体揚力の目標値となるように、各水平ロータユニット130A〜130Dの回転翼133の回転数及び各推進ロータユニット140A、140Bの回転翼143の回転数を同時に制御する。
【0042】
統括制御部161による、この制御動作の詳細は以下のように説明される。
まず、ナビゲータ170は、予め登録された飛行計画に従い算出した垂直速度指令信号を高度指令制御部168に出力する。高度指令制御部168は、ナビゲータ170より指令された垂直速度を得るべき機体100の全体揚力の目標値を算出する。
また、ナビゲータ170は、飛行計画に従い算出した旋回指令信号を旋回指令制御部167に出力する。旋回指令制御部167は、ナビゲータ170より指令された方角に機首が向くように、旋回(ヨー)角速度指令信号を垂直飛行制御部162に出力する。
【0043】
対気速度センサ151は、例えば機体110に加わる動圧と、対気速度センサ151の周囲の静圧との差により、大気中でのマルチコプター100の対気速度AS(airspeed)を検出する。揚力変換要素169は、対気速度センサ151から得た対気速度ASに基づき、固定翼120A、120Bにより生じる第二揚力LF2を演算する。なお、揚力変換要素169では、第二揚力LF2を演算するため、対気速度AS、空気密度、固定翼120A、120Bの総面積及び揚力係数を引数として予め記述される非線形関数が用いられる。
【0044】
高度指令制御部168は、ナビゲータ170より指令された垂直速度で機体100を上昇又は下降させる全体揚力の目標値から、固定翼120A、120Bにより生じている第二揚力LF2の値を減算することでフィードバック制御を行う。つまり、高度指令制御部168は、その減算した値を、水平ロータユニット130A〜130Dで生じさせる第一揚力LF1を得るための指令値として、垂直飛行制御部162に揚力指令信号を出力する。これにより、固定翼120A、120Bによる第二揚力LF2を補完する第一揚力LF1が、水平ロータユニット130A〜130Dにより生じることとなる。
【0045】
なお、高度指令制御部168は、ジャイロセンサ153から得られるヨー軸方向の加速度α
Yを入力して、第一揚力LF1を得るための揚力指令信号の指令値を随時補正してもよい。
【0046】
このように、本実施形態のマルチコプター100は、垂直飛行制御部162及び水平飛行制御部163が、互いに連携して、水平ロータユニット130A〜130D及び推進ロータユニット140A、140Bの出力を同時に制御することで、機体110の水平姿勢を保持し、飛行を安定することができる。
また、水平ロータユニット130A〜130Dによる第一揚力に加え、固定翼120A、120Bにより第二揚力LF2を得ることができ、水平ロータユニット130A〜130Dが消費する電力を節約することができる。更に、水平飛行時には、固定翼120A、120Bにより滑空して飛行することができる。これらのことから、飛行時間や飛行距離を、従来よりも大幅に延ばすことができる。
【0047】
次に、
図5の揚力分布図を参照し、制御装置150による自律制御の一例について説明する。なお、
図5の揚力分布図は、無風状態での理想的な場合での揚力の分布を示している。また、
図5においての揚力の大きさは、例えば飛行モード移行区間においての斜線で示す領域の大きさで示している。また、上昇区間、飛行区間、下降区間においての揚力の大きさも、同様である。
【0048】
まず、マルチコプター100が矢印aで示す着陸状態にあるときに、離陸を指令する信号を受信すると、統括制御部161が、垂直飛行制御部162及び水平飛行制御部163に対して動作指令を与える。
【0049】
このとき、垂直飛行制御部162は、揚力指令信号の指令値に従う回転数で、水平ロータユニット130A〜130Dの回転翼133を回転させる。また同時に、水平飛行制御部163は、推力指令信号の指令値に従う回転数で、推進ロータユニット140A、140Bの回転翼143を回転させる。
【0050】
これにより、マルチコプター100は、時刻t0〜時刻t2の間に所定の高度まで前進しながら上昇し、水平飛行に移行する。このとき、揚力分布図から分かる通り、水平飛行速度が上がるにつれて、固定翼120A、120Bによる第二揚力FL2が増し、それに伴い、水平ロータユニット130A〜130Dによる第一揚力FL1が小さくて済むようになる。このことは、制御装置150が、水平ロータユニット130A〜130Dによる第一揚力FL1と、固定翼120A、120Bによる第二揚力FL2との合計が目標値となるように、水平ロータユニット130A〜130D及び推進ロータユニット140A、140Bの出力を滑らかに制御することで実現される。
【0051】
また、マルチコプター100は、矢印cで示す、ホバリングから水平飛行に移行する際に、上述したように全体揚力が目標値になるように、水平ロータユニット130A〜130Dによる第一揚力FL1を次第に下げながら、固定翼120A、120Bによる第二揚力FL2が次第に上がるように、水平ロータユニット130A〜130D及び推進ロータユニット140A、140Bの出力バランスを円滑に制御してもよい。
このようにして、垂直飛行モードから水平飛行モードへの移行に際に、機体110の姿勢を安定させることができる。
【0052】
また、マルチコプター100が時刻t2〜時刻t3の間で矢印dで示す水平飛行を行うとき、垂直飛行制御部162は、水平ロータユニット130A〜130Dを使って、機体110の水平姿勢制御と、ヨー制御(旋回制御)のみ行うことができる。その場合には、マルチコプター100は、固定翼120A、120Bの揚力で滑空し、高速飛行が可能であるとともに、バッテリの消費電力を抑制できるので、航続距離を稼ぐことができる。
【0053】
また、マルチコプター100が矢印dで示す水平飛行の状態にあるとき、ホバリングを指令する信号を受信すると、統括制御部161が垂直飛行制御部162及び水平飛行制御部163に対して動作指令を与える。
【0054】
このとき、水平飛行制御部163は、時刻t3で矢印eで示す水平飛行の状態から、推進ロータユニット140A、140Bの回転翼143の回転数を次第に下げて、飛行速度を下げる。飛行速度の低下により、固定翼120A、120Bによる第二揚力FL2も低下するが、垂直飛行制御部162が時刻t3から水平ロータユニット130A〜130Dの回転翼133の回転数を次第に上げることで、低下した揚力を補完することができる。水平ロータユニット130A〜130Dによる第一揚力FL1が、固定翼120A、120Bによる第二揚力FL2を上回ることで、矢印fで示すように、マルチコプター100は安定したホバリングを行うことができる。
このようにして、水平飛行モードから垂直飛行モードへの移行に際にも、機体110の姿勢を安定させることができる。
【0055】
そして、垂直飛行制御部162がホバリングの状態から着陸する際にも、全体揚力が目標値になるように、水平ロータユニット130A〜130Dによる第一揚力FL1を次第に上げながら、固定翼120A、120Bによる第二揚力FL2が次第に下がるように、水平ロータユニット130A〜130D及び推進ロータユニット140A、140Bの出力バランスを円滑に制御してもよい。
これにより、ホバリング状態の時刻t3から時刻t4の間で、マルチコプター100の高度が次第に下がり、矢印gで示すように安全に着地させることができる。