【解決手段】本発明に係る動力伝達装置1は、複数のギヤ10と、複数のギヤ10を収容するギヤ収容室S1が形成されたハウジング2と、を備え、一方側にギヤ収容室S1に連通する開口を有し、他方側に壁部を有する連通室S2と、壁部32を貫通し、連通室S2とハウジング2の外部とを連通する外側開口部23と、外側開口部23を封止する封止部材24と、連通室S2内に配置され、一方側と他方側とに向って開放している筒状部材20と、を備え、筒状部材20の少なくても一部は、連通室S2の内径よりも小径に形成され、連通室S2は、筒状部材20により、外周側のブリーザ室S5と、ギヤ収容室S1に向って開口する内周側の内周側空間S4とに区分けされていることを特徴とする
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、ブリーザから潤滑油が漏出し難くするためには、ブリーザ室は、上方であり、かつ、ギヤによって掻き上げられた潤滑油が到達し難い箇所に設置されることが好ましい。他方で、上記要件を満たそうとすると、ハウジングが上方に拡張(大型化)してしまい、動力伝達装置が搭載される車両等のレイアウトを制限してしまう。
以上から、ハウジングの大型化を抑制しつつ、ブリーザから潤滑油が漏出することを抑制できることが望まれていた。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、ハウジングの大型化を抑制しつつ、ブリーザから潤滑油が漏出することを抑制できる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る動力伝達装置は、複数のギヤと、前記複数のギヤを収容するギヤ収容室が形成されたハウジングと、を備えた動力伝達装置であって、一方側に前記ギヤ収容室に連通する開口を有し、他方側に壁部を有する連通室と、前記壁部を貫通し、前記連通室と前記ハウジングの外部とを連通する外側開口部と、前記外側開口部を封止する封止部材と、前記連通室内に配置され、前記一方側と前記他方側とに向って開放している筒状部材と、を備え、前記筒状部材の少なくても一部は、前記連通室の内径よりも小径に形成され、前記連通室は、前記筒状部材により、外周側のブリーザ室と、前記ギヤ収容室に向って開口する内周側の内周側空間とに区分けされていることを特徴とする。
【0010】
ハウジングの内部空間において外側開口部を有する連通室として、例えば、外側開口部を介して内部に流入された潤滑油をギヤ収容室に供給するための供給路、又は外側開口部から挿入されたセンサ等を収容するための収容室などが挙げられる。
そして、前記発明によれば、筒状部材を設けることにより、連通室がブリーザ室と内周側空間とに区分けされる。つまり、ハウジングを拡張させることなくブリーザ室を形成することができる。以上から、ブリーザから潤滑油が漏出することを抑制でき、かつ、ハウジングの大型化も抑制できる。
【0011】
また、前記発明において、前記筒状部材の一端側は、前記連通室の内周面に当接し、前記ブリーザ室と前記ギヤ収容室とを仕切っており、前記筒状部材の他端側には、前記ブリーザ室と内周側空間とを連通する連通路が形成されていることが好ましい。
【0012】
前記構成によれば、筒状部材の一端側がギヤ収容室とブリーザ室とを仕切っているため、ギヤ収容室から飛散した潤滑油が直接ブリーザ室に入り込む、ということを防止できる。
【0013】
また、前記発明において、前記封止部材の一部は、前記筒状部材内に入り込み、前記封止部材の外周面と前記筒状部材の内周面との間がラビリンス構造になっていることが好ましい。
【0014】
前記構成によれば、潤滑油が内周側空間に流入したとしても、ラビリンス構造によりさらに連通路側に移動し難くなる。よって、ブリーザから潤滑油が漏出することをより確実に抑制することができる。
【0015】
また、前記発明において、前記筒状部材の他端部は、前記壁部に当接し、前記筒状部材の他端部には、前記連通路を構成する切り欠きが形成されていることが好ましい。
【0016】
前記構成によれば、筒状部材の他端側を遮蔽し、空気の流路が切り欠きに限定されるため、ブリーザから潤滑油が漏出することをより確実に抑制できる。
【0017】
また、前記発明において、前記連通室は、水平方向に延在し、前記筒状部材の下側面は、前記外側開口部側から前記ギヤ収納室側に向って次第に下側に位置し傾斜していることが好ましい。
【0018】
前記構成によれば、ギヤ収容室から内周側空間に入り込んだ潤滑油、又は外側開口部から内周側空間内に供給された潤滑油は、下側面の傾斜に沿ってギヤ収容室に移動する。よって、潤滑油は、内周側空間に滞留し難くなっており、潤滑油がブリーザ室に移動するおそれを低減できる。
【0019】
また、前記発明において、前記連通室は、水平方向に延在し、前記筒状部材の下側面には、鉛直方向下方に開口する開口部を形成し、前記連通室の下側面であって前記開口部の下方には、前記ギヤ収容室に案内する溝が形成されていることが好ましい。
【0020】
前記構成によれば、内周側空間の一方側に他の部品が配置されていても、潤滑油をギヤ収容室に移動させることができる。よって、内周側空間に潤滑油が滞留することを防止できる。
【0021】
また、前記発明において、前記連通室は、水平方向に延在し、前記筒状部材の一端の上側には、切り欠きが形成され、前記筒状部材の一端側の内周面には、前記切り欠きから流入した潤滑油を貯留する貯留部が設けられていることが好ましい。
【0022】
前記構成によれば、所定量の潤滑油が貯留部に貯留されるため、ギヤが掻き上げる貯留槽の潤滑油が低減し、ギヤの撹拌抵抗の低減化を図ることができる。
また、貯留部の下方に潤滑が必要な部品を配置することで、貯留部から溢れ出た潤滑油を供給することができる。言い換えると、直接潤滑油が飛散して来ないような箇所でも潤滑油を供給することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ハウジングの大型化を抑制しつつ、ブリーザから潤滑油が漏出することを抑制できる動力伝達装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
つぎに、本発明に係る動力伝達装置の実施形態について説明する。また、本説明では、動力伝達装置が四輪車両に搭載された例を挙げる。
【0026】
(第1実施形態)
図1に示すように、動力伝達装置1は、四輪車両の左側の後輪Wの前方に設けられ、その後輪Wに動力(駆動力)を伝達するための装置である。
また、動力伝達装置1の後方には等速ジョイント50が配置されており、動力伝達装置1は、この等速ジョイント50を介して駆動力を後輪Wに伝達するようになっている。
なお、動力伝達装置1に入力される駆動力は、動力伝達装置1の車幅方向内側(右側)に組み付けられた図示しないモータにより生成されている。
【0027】
(動力伝達装置)
動力伝達装置1は、内部空間Sが形成されたハウジング2と、その内部空間Sに収容される一対の歯車10及び筒状部材20と、を備えている。
【0028】
(一対の歯車)
一対の歯車10は、回転軸O1周りに回転する第1傘歯車11と、支軸13に支持されて回転軸O2周りに回転する第2傘歯車12と、により構成されている。なお、回転軸O1は、モータの出力軸と同軸上である。
第1傘歯車11は、モータの出力軸と連結しており、モータにより生成された駆動力が入力される。支軸13の後端は、等速ジョイント50の後述する連結軸51と連結している。また、第1傘歯車11は、第2傘歯車12よりも小径となっている。
以上から、モータにより生成された駆動力は、一対の歯車10により減速されて等速ジョイント50に伝達される。なお、ハウジング2と筒状部材20については後述する。
【0029】
(等速ジョイント)
等速ジョイント50は、支軸13の後端面にスプライン結合により一体回転可能に連結される連結軸51と、連結軸51の後端に形成され、複数の転動溝52aが内周面に形成された外輪部材52と、回転軸O2上に配される伝達軸53と、複数の転動溝54aが外周面に形成され伝達軸53の前端に外嵌固定された内輪部材54と、転動溝52aと転動溝54aとの間で転動する複数のボール55と、を備えている。また、外輪部材52とカバー56との間にシール部材57が介設されている。
この等速ジョイント50によれば、サスペンション装置に支持される後輪Wが上下動し、動力伝達装置1と後輪Wとの距離や角度に変化が生じてもその変化を吸収しつつ、駆動力を後輪Wに伝達することができる。
【0030】
(ハウジング)
ハウジング2は、後方に向って開口する有底筒部状の本体部3と、本体部3の後開口部3aを閉塞する蓋部4と、により構成されている。
【0031】
蓋部4の中央部には、等速ジョイント50の連結軸51を挿通させるための中央孔5が形成されている。
蓋部4の前面には、前方に突出する環状の第1突出部6が形成されている。
蓋部4の第1突出部6の内周面には、支軸13の後端を支持する後側軸受7が嵌め込まれている。
また、第1突出部6は、本体部3の後開口部3a内に圧入されて後開口部3aに嵌合している。これにより、蓋部材4と本体部3とが連結し、ハウジング2を構成している。
また、第1突出部6の外周面と、本体部3の内周面との間には、Oリング8が介在しており、本体部3と蓋部4との隙間から潤滑油が漏出しないようになっている。
【0032】
(内部空間)
ハウジング2の内部空間Sは、一対の歯車10を収容する後側のギヤ収容室S1と、筒状部材20を収容し、かつ、ギヤ収容室S1に連通する前側の連通室S2と、を備えている。
【0033】
ギヤ収容室S1と連通室S2とのそれぞれは、回転軸O2を中心とする略円筒状の空間である。ギヤ収容室S1の内径r1は、連通室S2の内径r2よりも大径となっている。このため、ギヤ収容室S1の前方には、回転軸O2を中心とする環状の段差面15が形成されている。
【0034】
図2に示すように、段差面15には、後方に突出する環状の第2突出部16が形成されている。第2突出部16の内周側には、支軸13の前端を支持する前側軸受17が嵌め込まれている。
なお、第2突出部16の内径は、連通室S2の内径r2よりも大径に形成されている。よって、第2突出部16の径方向内側には、段差面15の一部である内周段差面15aが形成されている。
【0035】
図1に示すように、ギヤ収容室S1の下部は、潤滑油を貯留する貯留槽19を構成している。
貯留槽19に貯留される潤滑油は、第2傘歯車12の下側が浸るような量に設定されている。このため、モータの駆動により第2傘歯車12が回転すると、第2傘歯車12が潤滑油を掻き上げて潤滑油が飛散する。
この結果、貯留槽19の潤滑油の油面Rよりも上方に配置された前側軸受17、後側軸受7、第1傘歯車11のそれぞれに潤滑油が供給され、各部品の冷却及び潤滑を図ることができる。
なお、ギヤ収容室S1の下方に位置する下壁部30には、貯留槽19内の潤滑油を排出するための排出口19aが形成されている。また、排出口19aは、封止部材19bにより封止されている。
【0036】
本実施形態の前側軸受17と後側軸受7は、テーパーベアリングである。
また、テーパーベアリングの向きは、第2傘歯車12の回転による遠心力を受けて外輪側に移動する潤滑油が、外輪の内周面の傾斜に沿ってギヤ収容室S1側に移動する(
図1の矢印A1,A2参照)ように配置されている。
このため、前側軸受17に供給された潤滑油は、前方の連通室S2ではなく、ギヤ収容室S1に向って吐き出される(
図1の矢印A1参照)。
また、後側軸受7に供給された潤滑油は、後方の等速ジョイント50ではなく、ギヤ収容室S1に向って吐き出される(
図1の矢印A2参照)。
【0037】
なお、蓋部4の後面に突設された環状部4aと、等速ジョイント50の外輪部材52との間には、オイルシール58が設けられている。このため、仮に後側軸受7に供給された潤滑油が後方に吐き出されたとしても、外部に漏出しないようになっている。
【0038】
(連通室)
図2に示すように、連通室S2の上方に位置する上壁部31には、上下方向に貫通するブリーザ孔21が形成されている。また、そのブリーザ孔21には、ブリーザパイプ22が差し込まれている。
連通室S2の前方に位置する前壁部32には、前後方向に貫通して連通室S2とハウジング2の外部とを連通する給油口(外側開口部)23が形成されている。この給油口23は、ハウジング2内に潤滑油を供給するための給油口である。
また、給油口23には、フィラープラグ24が螺合しており、給油口23が封止されている。
なお、前壁部32の前面とフィラープラグ24の頭部との間には環状のシール部材24aが設けられ、潤滑油が給油口23から漏出しないようになっている。
連通室S2の下方に位置する下壁部33と第2突出部16の下部には、下方に窪む供給溝25が形成されている。
【0039】
(筒状部材)
筒状部材20は、圧延鋼板を筒状に加工して成る部品である。
筒状部材20は、回転軸O2を中心とする円筒状を呈している。
筒状部材20の外径r3は、連通室S2の内径r2よりも小径となっている。
以上から、連通室S2は、筒状部材20により、外周側の外周側空間S3と、前記ギヤ収容室S1に向って開口する内周側の内周側空間S4と、に区分けされている。
外周側空間S3は、回転軸O2を中心とする環状の空間となっている。
外周側空間S3においてブリーザ孔21に接している上側部分は、圧力上昇に伴い積極的に空気が排出されるブリーザ室S5を構成している。
【0040】
図3に示すように、筒状部材20の後端には、径方向外側に延在するフランジ20aが形成されている。
このフランジ20aは、内周段差面15aと前側軸受17の外輪との間に挟み込まれている。このため、筒状部材20は、前後方向に移動しないように固定されている。なお、フランジ20aと前側軸受17の外輪との間には、シム17aが介設されている。
【0041】
筒状部材20は、フランジ20aの内端から前方に向って次第に縮径するテーパ部27と、テーパ部27の前端から径方向内側に延びる段差部28と、段差部28の内端から同一径のまま前方に延びる同一径部29と、を備えている。
テーパ部27の後側の下面には、上下方向に貫通する供給孔27aが形成されている。
この供給孔27aは、供給溝25の入口25aに対し、上方に形成されている。
【0042】
同一径部29の前端部29aは、前壁部32と離間している。このため、筒状部材20と前壁部32との間には、内周側空間S4と外周側空間S3(ブリーザ室S5)とを連通する連通路26が形成されている。
【0043】
同一径部29の前端部29aは、フィラープラグ24の軸部24bの外周面を囲っている。また、前端部29aの内周面と軸部24bの外周面との隙間は、狭小となっており、ラビリンス構造を形成している。
同一径部29の内径は、給油口23よりも大径に形成されている。よって、給油口23から連通室S2に供給された潤滑油は、外周側空間S3でなく、内周側空間S4の方に流入する。
この結果、内周側空間S4内に流入した潤滑油は、テーパ部27の傾斜に沿って後方に移動し(矢印B1参照)、さらに供給孔27aを通過して、供給溝25の入口25aに流入する(矢印B2参照)。
そして、潤滑油は、供給溝25の出口25bから流出することでギヤ収容室S1に移動し(矢印B3参照)、貯留槽19に貯留されることとなる。
以上から、内周側空間S4は、潤滑油を供給するための供給路を構成している。また、供給孔27aと供給溝25によれば、潤滑油が前側軸受17に堰きとめられることなく、スムーズにギヤ収容室S1に移動する。この結果、潤滑油が内周側空間S4内に滞留し難くなり、潤滑油がブリーザ室S5に移動するおそれを低減できる。
【0044】
つぎに、ギヤ収容室S1の潤滑油が高温になり、ギヤ収容室S1内の圧力が上昇した場合について説明する。
ギヤ収容室S1と内周側空間S4とは、前側軸受17における複数のローラの間(隙間)と、供給溝25と、を介して連通している。
よって、ギヤ収容室S1内の圧力が上昇すると、ギヤ収容室S1内の空気は、前側軸受17の複数のローラ間を通過して内周側空間S4に移動する(
図3の矢印C1参照)。また、内周側空間S4内に移動した空気は、連通路26を通過し、外周側空間S3に移動する(矢印C2)。
一方で、ギヤ収容室S1の圧力上昇に伴い、供給溝25に入り込んだ空気は、外周側空間S3の下側に移動する(矢印C3参照)。
このように、ブリーザ室S5は、第2傘歯車12に掻き上げられた潤滑油や、貯留部19に貯留された潤滑油が直接入り込まない離間した位置に配置されるため、ハウジング2内の圧力が上昇した場合、潤滑油の漏出が生じることなく上昇した圧力をハウジング2外に開放することができる。
【0045】
ここで、潤滑油が空気と同じように前側軸受17の複数のローラ間を通過し、内周側空間S4に流入する可能性があるものの、テーパ部27の下側に付着した場合には、テーパ部27の傾斜に沿って後方に移動する(
図3の矢印B1参照)。
この結果、供給孔27a、供給溝25を介して、潤滑油が貯留槽19に戻る(
図3の矢印B2,B3参照)。
【0046】
また、内周側空間S4に流入した潤滑油がテーパ部27の上側に付着した場合、テーパ部27の傾斜に沿って前方に移動するものの(矢印D1参照)、段差部28で止まる。そして、潤滑油は自重により段差部28に沿って下方に移動し、テーパ部27の下側に移動する(
図3の矢印D2参照)。この結果、テーパ部27の傾斜により後側に移動し(
図3の矢印B1参照)、供給孔27a、供給溝25を介して、潤滑油が貯留槽19に戻る(
図3の矢印B2,B3参照)。
【0047】
さらに、テーパ部27及び段差部28を飛び越えて更に前方に潤滑油が移動したとしても、ラビリンス構造となっている同一径部29とフィラープラグ24の軸部24bとの間で止まる。
【0048】
以上から、ギヤ収容室S1内の潤滑油は、ブリーザ室S5に到達し難い構造になっているため、ブリーザパイプ22から潤滑油が漏出する可能性が極めて低い。
【0049】
以上、第1実施形態によれば、連通室S2が筒状部材20によりブリーザ室S5(外周側空間S3)と内周側空間S4とに区分けされるため、ハウジング2の拡張を最小限に抑えながらブリーザ室S5を形成することができる。つまり、ブリーザから潤滑油が漏出することを抑制できるとともに、ハウジング2の大型化も抑制することができる。
また、筒状部材20が前側軸受17により固定されているため、筒状部材20を固定するためのボルト等が不要となり、組み立てが容易である。
【0050】
以上、第1実施形態について説明した。
実施形態において、動力伝達装置が四輪車両に搭載された例を挙げたが、本発明の動力伝達装置は、二輪車両や三輪車両又は船舶などに適用されてもよい。
また、実施形態の筒状部材20は、圧延鋼板を加工して成るが、耐熱性の高い樹脂材により形成されてもよい。
また、筒状部材20のフランジ20aを挟み込む部品として、前側軸受17が用いられているが、他の部品より挟み込んでもよい。
また、筒状部材20の固定方法として、筒状部材20にフランジ20aを形成し、そのフランジ20aを挟み込むことで固定しているが、ボルトによる固定、スナップリングによる固定、又は、筒状部材20の一部が連通室S2の内周面に内嵌されることによる固定であってもよい。
また、ブリーザ室S5は、筒状部材20のフランジ20aにより後側(ギヤ収容室S1側)が仕切られているが、他の部品により仕切るように構成してもよい。
また、連通室S2の内周側空間S4は、給油口23を介して供給された潤滑油をギヤ収容室S1に流入させるための給油路を構成しているが、センサ等を収容するための空間として利用してもよい。
また、連通室S2の筒状部分は、円筒状に形成されているが、四角筒状などの多角形筒状であってもよい。
また、連通室S2は、ギヤ収容室S1に対し水平方向に位置しているが、ギヤ収容室S1に対して上方に設けられていてもよく、特に限定されない。
【0051】
(第2実施形態)
次に第2実施形態の動力伝達装置について説明する。
図4に示すように、第2実施形態の筒状部材20Aは、同一径部29の前端部29aが前壁部32に当接しており、第1実施形態の筒状部材20と異なっている。
図5に示すように、第2実施形態の筒状部材20Aは、同一径部29を貫通する連通路26Aが形成されており、第1実施形態の筒状部材20と異なっている。
以下において、相違点に絞って第2実施形態の筒状部材20Aについて説明する。
【0052】
図4に示すように、筒状部材20Aは、前端部29aが前壁部32に当接しているため、両端部が前後方向から挟み込まれた構造となっている。
【0053】
また、
図4,
図5に示すように、同一径部29の前端部29aは、径方向外側に折り返され、前壁部32に当接する面積が大きくなっている。このため、潤滑油が前端部29aと前壁部32との間から外周側空間S3内に浸入することを確実に抑制できる。
【0054】
連通路26Aは、同一径部29の周方向の一部を貫通して成る孔である。このため、環状を呈している第1実施形態の連通路26よりも流路が小さくなっている。よって、内周側空間S4内に入り込んだ潤滑油が連通路26Aに到達する確率が極めて低い。
【0055】
また、連通路26Aの周方向の位置に関し、同一径部29の左側の壁部に形成されている。
ここで、連通路26Aが同一径部29の下側の壁部に形成された場合、給油口23から供給された潤滑油が連通路26Aを介して外周側空間S3に流れ込んでしまう。
一方で、連通路26Aが同一径部29の上側の壁部に形成された場合、連通路26Aとブリーザ孔21との距離が近くなり、連通路26Aを通過した潤滑油がブリーザ孔21に到達し易くなる。
よって、第2実施形態の連通路26Aによれば、給油口23から供給された潤滑油が流入し難くなるとともに、連通路26Aを通過した潤滑油がブリーザ孔21に到達し難くなる。
【0056】
また、連通路26Aは、段差部28から前方に離れている。このため、段差部28に沿って移動する潤滑油(
図4の矢印E参照)が連通路26Aに到達しないようになっている。
【0057】
以上、第2実施形態の筒状部材20Aによっても、連通室S2をブリーザ室S5(外周側空間S3)と内周側空間S4とに区分けでき、ハウジング2の拡張を最小に抑えながらブリーザ室S5を形成することができる。
【0058】
以上、第2実施形態について説明したが、本発明において連通路26の変形例は、第2実施形態の連通路26Aに限定されない。例えば、
図6に示すように、同一径部29の前端部29aの一部を切り欠いて成る連通路26Bであってもよい。このような連通路26Bであっても、第2実施形態の連通路26Aと同等な効果を生じることができる。
【0059】
次に第3実施形態の動力伝達装置について説明する。
図7に示すように、第3実施形態のハウジング2Cは、第2突出部16Cに第1切り欠き40が形成されており、第1実施形態のハウジング2と異なっている。
図8に示すように、第3実施形態の筒状部材20Cは、フランジ20aから後方に延出するリング部41が形成されており、第1実施形態の筒状部材20と異なっている。
さらに、第3実施形態の筒状部材20Cは、内周側の上方に潤滑油を貯留できる貯留部42が形成されており、第1実施形態の筒状部材20と異なっている。
以下、第1実施形態との相違点に絞って第3実施形態について説明する。
【0060】
なお、第3実施形態の筒状部材20Cは、同一径部29の前端部29aが前壁部32に当接している点と、同一径部29を貫通する連通路26Aが形成されている点において、第1実施形態の筒状部材20と異なるが、第2実施形態と同じであるため、説明は省略する。
【0061】
図7に示すように、第1切り欠き40は、第2突出部16Cの上部に設けられている。筒状部材20Cのリング部41の上部には、第1切り欠き40に対応する第2切り欠き41aが形成されている(
図8参照)。
このため、ギヤ収容室S1の上面に付着した潤滑油が自重により下方に移動した場合、第1切り欠き40及び第2切り欠き41aを通過し、貯留部42内に流入する(
図7の矢印F参照)。
【0062】
貯留部42は、第1切り欠き40及び第2切り欠き41aを通過した潤滑油を所定量貯留することができるようになっている。
貯留部42は、前方がテーパ部27によって覆われており、潤滑油の貯留量が所定量を超えた場合、後方(ギヤ収容室S1側)に向って潤滑油が溢れ出すようになっている。
この結果、前側軸受17の前側に潤滑油が流れ落ちて、前側軸受17に対し前方から潤滑油が供給されるようになる(
図7の矢印F2参照)。そして、前側軸受17に潤滑油は、前記したようにギヤ収容室S1側に吐き出され(
図7の矢印F3参照)、貯留槽19に戻る。
【0063】
以上、第3実施形態の筒状部材20Cによっても、連通室S2をブリーザ室S5(外周側空間S3)と内周側空間S4とに区分けでき、ハウジング2の拡張を最小に抑えながら
ブリーザ室S5を形成することができる。
また、所定量の潤滑油が貯留部42に貯留されるため、貯留槽19に貯留する潤滑油が低減する。よって、第2傘歯車12が貯留槽19を掻き上げる際の撹拌抵抗を低減させることができる。さらに、飛散した潤滑油が直接供給され難い前側軸受17の前側に潤滑油を供給されるため、前側軸受17の前側の熱を積極的に回収することで内部圧力の上昇を抑え、ブリーザパイプ22からの潤滑油の漏出の要因を排除するとともに、前側軸受17の潤滑性能を向上させることができる。