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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-136445(P2018-136445A)
(43)【公開日】2018年8月30日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20180803BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20180803BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20180803BHJP
【FI】
   G09G3/36
   G09G3/20 641P
   G09G3/20 631B
   G09G3/20 612U
   G09G3/20 660V
   G09G3/20 631V
   G09G3/20 632G
   G09G3/20 642J
   G02F1/133 575
   G02F1/133 570
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-30825(P2017-30825)
(22)【出願日】2017年2月22日
(71)【出願人】
【識別番号】591128453
【氏名又は名称】株式会社メガチップス
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】藤浪 健太
【テーマコード(参考)】
2H193
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H193ZA04
2H193ZD23
2H193ZD24
2H193ZD27
2H193ZE01
2H193ZF12
2H193ZF19
5C006AA11
5C006AA22
5C006AF11
5C006AF44
5C006AF45
5C006AF46
5C006AF47
5C006AF85
5C006BF02
5C006BF05
5C006FA14
5C006FA23
5C006FA41
5C006FA55
5C080AA10
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD01
5C080DD06
5C080DD22
5C080EE29
5C080JJ01
5C080JJ02
5C080JJ04
5C080JJ05
5C080JJ07
(57)【要約】
【課題】回路規模の増加を抑えつつ、視野角改善処理後の画像データの圧縮による画質の低下を改善することができる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置では、入力画像データに基づいて、視野角改善処理の強さを決定し、強さ情報を圧縮し、圧縮情報を伸張する。第1の伸張情報に基づいて、視野角改善処理を入力画像データに施し、視野角改善処理の逆変換を現在のフレームの画像データに施し、逆変換データを圧縮し、圧縮データおよび圧縮情報を格納する。フレームバッファから読み出された圧縮データを伸張し、フレームバッファから読み出された圧縮情報を伸張し、第2の伸張情報に基づいて、再変換を伸張データに施す。1フレーム前の画像データに基づいて、オーバドライブ処理を現在のフレームの画像データに施し、オーバドライブデータに対応する画像を表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データの中間階調の画素の画素値を、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを組み合わせて表現するように変換する視野角改善処理において、前記入力画像データに基づいて、前記中間階調の画素の画素値を前記高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値に変換する割合を表す前記視野角改善処理の強さを決定して強さ情報を出力する強さ決定部と、
前記強さ情報を圧縮して圧縮情報を出力する圧縮部と、
前記圧縮情報を伸張して第1の伸張情報を出力する第1の伸張部と、
前記第1の伸張情報に基づいて、前記視野角改善処理を前記入力画像データに施して現在のフレームの画像データとして出力する第1の画像処理部と、
前記第1の伸張情報に基づいて、前記視野角改善処理の逆変換を前記現在のフレームの画像データに施して逆変換データを出力する逆変換部と、
前記逆変換データを圧縮して圧縮データを出力する画像圧縮処理部と、
前記圧縮データおよび前記圧縮情報を格納するフレームバッファと、
前記フレームバッファから読み出された圧縮データを伸張して伸張データを出力する画像伸張処理部と、
前記フレームバッファから読み出された圧縮情報を伸張して第2の伸張情報を出力する第2の伸張部と、
前記第2の伸張情報に基づいて、前記逆変換のさらに逆変換である再変換を前記伸張データに施して前記現在のフレームの画像データの1フレーム前の画像データとして出力する再変換部と、
前記1フレーム前の画像データに基づいて、オーバドライブ処理を前記現在のフレームの画像データに施してオーバドライブデータを出力するオーバドライブ部と、
前記オーバドライブデータに対応する画像を表示する液晶表示パネル部とを備える液晶表示装置。
【請求項2】
前記逆変換部は、前記現在のフレームの画像データにおいて、前記高階調の画素の画素値と前記低階調の画素の画素値とが近づくように、前記高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値の少なくとも一方を逆変換し、
前記再変換部は、前記伸張データにおいて、前記逆変換された高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値が前記逆変換される前の画素値に近づくように、前記逆変換された高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値の少なくとも一方を再変換する請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
入力画像データの中間階調の画素の画素値を、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを組み合わせて表現するように変換する視野角改善処理において、前記入力画像データに基づいて、前記中間階調の画素の画素値を前記高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値に変換する割合を表す前記視野角改善処理の強さを決定して強さ情報を出力する強さ決定部と、
前記強さ情報を圧縮して圧縮情報を出力する圧縮部と、
前記圧縮情報を伸張して第1の伸張情報を出力する第1の伸張部と、
前記第1の伸張情報に基づいて、前記視野角改善処理を前記入力画像データに施して現在のフレームの画像データとして出力する第1の画像処理部と、
前記入力画像データを圧縮して圧縮データを出力する画像圧縮処理部と、
前記圧縮データおよび前記圧縮情報を格納するフレームバッファと、
前記フレームバッファから読み出された圧縮データを伸張して伸張データを出力する画像伸張処理部と、
前記フレームバッファから読み出された圧縮情報を伸張して第2の伸張情報を出力する第2の伸張部と、
前記第2の伸張情報に基づいて、前記視野角改善処理を前記伸張データに施して前記現在のフレームの画像データの1フレーム前の画像データとして出力する第2の画像処理部と、
前記1フレーム前の画像データに基づいて、オーバドライブ処理を前記現在のフレームの画像データに施してオーバドライブデータを出力するオーバドライブ部と、
前記オーバドライブデータに対応する画像を表示する液晶表示パネル部とを備える液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1の画像処理部は、前記中間階調の画素の画素値を、前記高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値に変換する第1および第2のLUTを備え、
前記第1および第2のLUTは、前記高階調の画素の輝度と前記低階調の画素の輝度との平均が、前記中間階調の画素の輝度と等しくなるように設定される請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1の画像処理部は、前記第1および第2のLUTを1セットとして、前記視野角改善処理の強さが異なる2以上の前記セットを備え、
前記第1の画像処理部は、前記第1の伸張情報に応じて、前記2以上のセットを切り替えて使用する請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1の画像処理部は、所望の視野角改善処理の強さに応じて、前記入力画像データの画素の画素値と前記現在のフレームの画像データの画素の画素値とをブレンドすることにより、前記入力画像データの画素の画素値と前記現在のフレームの画素の画素値との中間的な強さを持つ視野角改善処理の強さの変換特性を計算して使用する請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記強さ決定部は、前記入力画像データに基づいて、前記入力画像データに対応する画像におけるエッジ部分を検出するエッジ検出部を備え、前記エッジ部分に前記視野角改善処理を施さない、もしくは、前記エッジ部分における前記視野角改善処理の強さを弱めるように、前記エッジ部分の強さ情報を決定する請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記強さ決定部は、前記入力画像データのRGB毎に独立して前記エッジ部分の視野角改善処理の強さを計算し、前記エッジ部分のRGBの視野角改善処理の強さの中の最低値を前記エッジ部分の視野角改善処理の強さに決定する請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記強さ決定部は、前記入力画像データの色空間を色相および輝度を含む色空間に変換する色空間変換部と、前記入力画像データの色相に基づいて、特定の色の領域を判定する色相判定部と、前記入力画像データの輝度に基づいて、特定の輝度の領域を判定する輝度判定部を備え、前記特定の色および前記特定の輝度の領域に前記視野角改善処理を施さない、もしくは、前記特定の色および前記特定の輝度の領域における視野角改善処理の強さを弱めるように、前記特定の色および前記特定の輝度の領域の強さ情報を決定する請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記強さ情報は、Nビット(Nは1以上の整数)のデータとして表され、
前記圧縮部は、前記入力画像データの一定数の画素毎に、前記一定数の画素の強さ情報の値の中の最小値を代表値として選択して前記強さ情報の解像度を下げることにより前記一定数の画素の強さ情報の値を1つの強さ情報の値に圧縮し、
前記第1および第2の伸張部は、前記1つの強さ情報の値を単純拡大して前記一定数の画素の強さ情報の値とすることにより前記1つの強さ情報の値を前記一定数の画素の強さ情報の値に伸張し、かつ、隣接する2つの一定数の画素の強さ情報の境界から、前記隣接する2つの一定数の画素の強さ情報のうちの前記値が大きい方の一定数の画素の強さ情報の最大で半分までの強さ情報の値を、前記隣接する2つの一定数の画素の強さ情報のうちの前記値が小さい方の一定数の画素の強さ情報の値に近づけるように段階的に下げて線形補間する請求項1ないし9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記強さ情報は、Nビット(Nは1以上の整数)のデータとして表され、
前記圧縮部は、前記入力画像データの画素毎に、現在の画素の強さ情報の値と前記現在の画素の1つ前の画素の強さ情報の値との差分を符号に符号化して1画素当たりの前記強さ情報のビット数を減らすことにより前記強さ情報の値を圧縮し、
前記第1および第2の伸張部は、前記符号を復号化することにより前記強さ情報の値に伸張し、
前記圧縮部、ならびに、前記第1および第2の伸張部は、伸張後の前記強さ情報の値が、圧縮前の前記強さ情報の値よりも大きくならないように前記符号化および復号化を行う請求項1ないし10のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記圧縮部は、前記差分がプラスの一定値以上である場合に前記差分を第1の符号に符号化し、前記差分がゼロ以上かつ前記プラスの一定値よりも小さい場合に前記差分を第2の符号に符号化し、前記差分がマイナスの一定値以上かつゼロよりも小さい場合に前記差分を第3の符号に符号化し、前記差分が前記マイナスの一定値よりも小さい場合に前記差分を第4の符号に符号化し、
前記第1および第2の伸張部は、前記1つ前の画素の強さ情報の値と前記プラスの一定値とを加算することにより前記第1の符号を復号化し、前記1つ前の画素の強さ情報の値を前記現在の画素の強さ情報の値とすることにより前記第2の符号を復号化し、前記1つ前の画素の強さ情報の値から前記マイナスの一定値を減算することにより前記第3の符号を復号化し、前記現在の画素の強さ情報の値をゼロにすることにより前記第4の符号を復号化する請求項11に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理として、視野角改善処理およびオーバドライブ処理を画像データに施して、画像処理後の画像データに対応する画像を表示する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
階調補正として、例えば、液晶表示パネル部の視野角が狭いという問題を改善するために、視野角特性の悪い中間階調の画素(ピクセル)の画素値を、視野角特性の良い高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを組み合わせて表現するように変換する視野角改善処理がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、エッジ部分および特定の色の領域等に視野角改善処理を行うと画質の劣化として知覚されるため、エッジ検出および色相判定等を用いて視野角改善処理の強さを場所によって変更することにより画質を改善することができる(特許文献2参照)。
【0004】
一方、液晶表示パネル部の応答速度を改善するために、現在のフレームの1フレーム前の画像データの画素の画素値を参照して、現在のフレームの画像データの対応する画素の出力値を決定するオーバドライブ処理がある。オーバドライブ処理では、1フレーム前の画像データの保存用のフレームバッファのメモリ容量を削減する目的で1フレーム前の画像データの圧縮処理が行われる。
【0005】
上記の圧縮手法では、隣接画素の画素値の相関が高い場合には高い圧縮率を得ることができるが、隣接画素の画素値の相関が低い場合には高い圧縮率を得ることができない。あるいは、圧縮率を一定にすると、圧縮伸張による誤差が大きくなる。視野角改善処理が施された画像は高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とが隣接して配置されることから隣接画素間の画素値の相関が低くなり、圧縮率が下がるか、圧縮率を一定にすると画質が劣化する。
【0006】
また、1フレーム前の画像の画質の劣化によりオーバドライブ処理で誤差が発生し、液晶表示装置の表示品質が低下する。
【0007】
これに対し、例えば、視野角改善処理が施される前の画像データをフレームバッファに保存することにより圧縮による画質の低下の問題は解決可能であるが、現在のフレームの画像データだけでなく、1フレーム前の画像データに対しても視野角改善処理を行う必要があり、エッジ検出および色相判定等を用いて視野角改善処理の強さの調整等を行う場合はラインバッファ等の大きな回路が必要となるため、回路規模の増加が無視できない。
【0008】
また、圧縮前に、視野角改善処理の簡易的な逆変換を行うことにより圧縮による画質の低下を改善することは可能であるが、視野角改善処理の強さが場所によって異なる場合は実際の処理と逆変換との間で不一致が発生し、画質が劣化する。この場合にも、視野角改善処理の強さによって逆変換の処理を変更することにより対応可能であるが、伸張時に視野角改善処理の強さ情報が必要となるため、フレームバッファのメモリ容量が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−148719号公報
【特許文献2】特許第5080658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、視野角改善処理およびオーバドライブ処理を行う液晶表示装置において、回路規模の増加を抑えつつ、視野角改善処理後の画像データの圧縮による画質の低下を改善することができる液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、入力画像データの中間階調の画素の画素値を、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを組み合わせて表現するように変換する視野角改善処理において、前記入力画像データに基づいて、前記中間階調の画素の画素値を前記高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値に変換する割合を表す前記視野角改善処理の強さを決定して強さ情報を出力する強さ決定部と、
前記強さ情報を圧縮して圧縮情報を出力する圧縮部と、
前記圧縮情報を伸張して第1の伸張情報を出力する第1の伸張部と、
前記第1の伸張情報に基づいて、前記視野角改善処理を前記入力画像データに施して現在のフレームの画像データとして出力する第1の画像処理部と、
前記第1の伸張情報に基づいて、前記視野角改善処理の逆変換を前記現在のフレームの画像データに施して逆変換データを出力する逆変換部と、
前記逆変換データを圧縮して圧縮データを出力する画像圧縮処理部と、
前記圧縮データおよび前記圧縮情報を格納するフレームバッファと、
前記フレームバッファから読み出された圧縮データを伸張して伸張データを出力する画像伸張処理部と、
前記フレームバッファから読み出された圧縮情報を伸張して第2の伸張情報を出力する第2の伸張部と、
前記第2の伸張情報に基づいて、前記逆変換のさらに逆変換である再変換を前記伸張データに施して前記現在のフレームの画像データの1フレーム前の画像データとして出力する再変換部と、
前記1フレーム前の画像データに基づいて、オーバドライブ処理を前記現在のフレームの画像データに施してオーバドライブデータを出力するオーバドライブ部と、
前記オーバドライブデータに対応する画像を表示する液晶表示パネル部とを備える液晶表示装置を提供する。
【0012】
ここで、前記逆変換部は、前記現在のフレームの画像データにおいて、前記高階調の画素の画素値と前記低階調の画素の画素値とが近づくように、前記高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値の少なくとも一方を逆変換し、
前記再変換部は、前記伸張データにおいて、前記逆変換された高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値が前記逆変換される前の画素値に近づくように、前記逆変換された高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値の少なくとも一方を再変換することが好ましい。
【0013】
また、本発明の第2の態様は、入力画像データの中間階調の画素の画素値を、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを組み合わせて表現するように変換する視野角改善処理において、前記入力画像データに基づいて、前記中間階調の画素の画素値を前記高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値に変換する割合を表す前記視野角改善処理の強さを決定して強さ情報を出力する強さ決定部と、
前記強さ情報を圧縮して圧縮情報を出力する圧縮部と、
前記圧縮情報を伸張して第1の伸張情報を出力する第1の伸張部と、
前記第1の伸張情報に基づいて、前記視野角改善処理を前記入力画像データに施して現在のフレームの画像データとして出力する第1の画像処理部と、
前記入力画像データを圧縮して圧縮データを出力する画像圧縮処理部と、
前記圧縮データおよび前記圧縮情報を格納するフレームバッファと、
前記フレームバッファから読み出された圧縮データを伸張して伸張データを出力する画像伸張処理部と、
前記フレームバッファから読み出された圧縮情報を伸張して第2の伸張情報を出力する第2の伸張部と、
前記第2の伸張情報に基づいて、前記視野角改善処理を前記伸張データに施して前記現在のフレームの画像データの1フレーム前の画像データとして出力する第2の画像処理部と、
前記1フレーム前の画像データに基づいて、オーバドライブ処理を前記現在のフレームの画像データに施してオーバドライブデータを出力するオーバドライブ部と、
前記オーバドライブデータに対応する画像を表示する液晶表示パネル部とを備える液晶表示装置を提供する。
【0014】
上記本発明の第1および第2の態様において、前記第1の画像処理部は、前記中間階調の画素の画素値を、前記高階調の画素の画素値および前記低階調の画素の画素値に変換する第1および第2のLUTを備え、
前記第1および第2のLUTは、前記高階調の画素の輝度と前記低階調の画素の輝度との平均が、前記中間階調の画素の輝度と等しくなるように設定されることが好ましい。
【0015】
また、前記第1の画像処理部は、前記第1および第2のLUTを1セットとして、前記視野角改善処理の強さが異なる2以上の前記セットを備え、
前記第1の画像処理部は、前記第1の伸張情報に応じて、前記2以上のセットを切り替えて使用することが好ましい。
【0016】
また、前記第1の画像処理部は、所望の視野角改善処理の強さに応じて、前記入力画像データの画素の画素値と前記現在のフレームの画像データの画素の画素値とをブレンドすることにより、前記入力画像データの画素の画素値と前記現在のフレームの画素の画素値との中間的な強さを持つ視野角改善処理の強さの変換特性を計算して使用することが好ましい。
【0017】
また、前記強さ決定部は、前記入力画像データに基づいて、前記入力画像データに対応する画像におけるエッジ部分を検出するエッジ検出部を備え、前記エッジ部分に前記視野角改善処理を施さない、もしくは、前記エッジ部分における前記視野角改善処理の強さを弱めるように、前記エッジ部分の強さ情報を決定することが好ましい。
【0018】
また、前記強さ決定部は、前記入力画像データのRGB毎に独立して前記エッジ部分の視野角改善処理の強さを計算し、前記エッジ部分のRGBの視野角改善処理の強さの中の最低値を前記エッジ部分の視野角改善処理の強さに決定することが好ましい。
【0019】
また、前記強さ決定部は、前記入力画像データの色空間を色相および輝度を含む色空間に変換する色空間変換部と、前記入力画像データの色相に基づいて、特定の色の領域を判定する色相判定部と、前記入力画像データの輝度に基づいて、特定の輝度の領域を判定する輝度判定部を備え、前記特定の色および前記特定の輝度の領域に前記視野角改善処理を施さない、もしくは、前記特定の色および前記特定の輝度の領域における視野角改善処理の強さを弱めるように、前記特定の色および前記特定の輝度の領域の強さ情報を決定することが好ましい。
【0020】
また、前記強さ情報は、Nビット(Nは1以上の整数)のデータとして表され、
前記圧縮部は、前記入力画像データの一定数の画素毎に、前記一定数の画素の強さ情報の値の中の最小値を代表値として選択して前記強さ情報の解像度を下げることにより前記一定数の画素の強さ情報の値を1つの強さ情報の値に圧縮し、
前記第1および第2の伸張部は、前記1つの強さ情報の値を単純拡大して前記一定数の画素の強さ情報の値とすることにより前記1つの強さ情報の値を前記一定数の画素の強さ情報の値に伸張し、かつ、隣接する2つの一定数の画素の強さ情報の境界から、前記隣接する2つの一定数の画素の強さ情報のうちの前記値が大きい方の一定数の画素の強さ情報の最大で半分までの強さ情報の値を、前記隣接する2つの一定数の画素の強さ情報のうちの前記値が小さい方の一定数の画素の強さ情報の値に近づけるように段階的に下げて線形補間することが好ましい。
【0021】
また、前記強さ情報は、Nビット(Nは1以上の整数)のデータとして表され、
前記圧縮部は、前記入力画像データの画素毎に、現在の画素の強さ情報の値と前記現在の画素の1つ前の画素の強さ情報の値との差分を符号に符号化して1画素当たりの前記強さ情報のビット数を減らすことにより前記強さ情報の値を圧縮し、
前記第1および第2の伸張部は、前記符号を復号化することにより前記強さ情報の値に伸張し、
前記圧縮部、ならびに、前記第1および第2の伸張部は、伸張後の前記強さ情報の値が、圧縮前の前記強さ情報の値よりも大きくならないように前記符号化および復号化を行うことが好ましい。
【0022】
また、前記圧縮部は、前記差分がプラスの一定値以上である場合に前記差分を第1の符号に符号化し、前記差分がゼロ以上かつ前記プラスの一定値よりも小さい場合に前記差分を第2の符号に符号化し、前記差分がマイナスの一定値以上かつゼロよりも小さい場合に前記差分を第3の符号に符号化し、前記差分が前記マイナスの一定値よりも小さい場合に前記差分を第4の符号に符号化し、
前記第1および第2の伸張部は、前記1つ前の画素の強さ情報の値と前記プラスの一定値とを加算することにより前記第1の符号を復号化し、前記1つ前の画素の強さ情報の値を前記現在の画素の強さ情報の値とすることにより前記第2の符号を復号化し、前記1つ前の画素の強さ情報の値から前記マイナスの一定値を減算することにより前記第3の符号を復号化し、前記現在の画素の強さ情報の値をゼロにすることにより前記第4の符号を復号化することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、伸張後の強さ情報の値が、圧縮前の強さ情報の値よりも大きくならないように、強さ情報が圧縮伸張される。このように、強さ情報を圧縮することにより、必要なフレームバッファのメモリ容量を削減してコストを削減することができる。また、強さ情報の圧縮誤差により、伸張後の視野角改善処理の強さが、圧縮前の視野角改善処理の強さよりも強くなることはないため、画質が劣化することはない。
【0024】
また、本発明の第1の態様では、画像データの圧縮前に、逆変換部により、第1の伸張情報に基づいて、視野角改善処理により変換された低階調の画素の画素値が、高階調の画素の画素値に近づくように簡易的な逆変換が行われる。また、画像データの伸張後に、再変換部により、第2の伸張情報に基づいて、変換された低階調の画素の画素値が、変換前の画素値に近づくように簡易的な再変換が行われる。
【0025】
これにより、視野角改善処理が施された場合であっても、隣接画素間の画素値の相関を高くすることができるため、圧縮効率を向上させることができ、1フレーム前の画像の画質を向上させることができる。また、1フレーム前の画像の画質が向上されることにより、オーバドライブ処理の精度を向上させることができるため、液晶表示装置の表示品質を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の第2の態様では、視野角改善処理が施されていない入力画像データを圧縮するため、画像の圧縮による画質の低下に関する問題は発生しない。また、視野角改善処理を施す2つの画像処理部が必要となるが、ラインバッファおよび多くの演算回路が必要となり回路規模が大きい強さ決定部は1つでよいため、視野角改善処理を施す回路を単純に2つ使用する場合と比較して回路規模の削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の液晶表示装置の構成を表す一実施形態のブロック図である。
図2】視野角改善処理用の第1および第2のLUTの変換特性を表す一例のグラフである。
図3】高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを空間的に多重化した一例の概念図である。
図4図2の視野角改善処理用のLUTの変換特性および、このLUTの視野角改善処理の強さを50%の強さにした場合の変換特性を表す一例のグラフである。
図5A】視野角改善処理を行う前の一例のカラー画像である。
図5B図5Aに示す画像においてエッジ部分を検出して、図5Aの画像におけるエッジ部分のみを表した画像である。
図5C図5Aに示す画像において色相判定を行って、図5Aの画像における青色部分の視野角改善処理の強さを0(黒)に決定した画像である。
図6A】圧縮前の水平方向の4画素の強さ情報を表す一例の概念図である。
図6B図6Aの4画素の強さ情報を平均画素法により圧縮した1つの強さ情報を表す概念図である。
図6C図6Aの4画素の強さ情報を、最小値を代表値として選択することにより圧縮した1つの強さ情報を表す概念図である。
図7】強さ情報を符号化する場合の処理の流れを表す一例のフローチャートである。
図8】符号化前および復号化後の画素の画素値を表す一例の概念図である。
図9A】圧縮前の強さ情報をグレースケール画像として可視化した一例の画像である。
図9B図9Aの画像において、強さ情報の解像度を1/4に下げた画像である。
図9C図9Bの画像において、1画素当たりの強さ情報のビット数を減らした画像である。
図10A】圧縮前の水平方向の4画素の強さ情報を表す一例の概念図である。
図10B図10Aの4画素の強さ情報を、最小値を代表値として選択することにより圧縮した1つの強さ情報を単純拡大して伸張した4画素の強さ情報を表す概念図である。
図10C図10Bの伸張後の強さ情報を線形補間した強さ情報を表す概念図である。
図11A】逆変換部による低階調の画素の画素値の変換特性を表す一例のグラフである。
図11B図11Aの変換特性の50%の強さの変換特性を表すグラフである。
図12】本発明の液晶表示装置の構成を表す別の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の液晶表示装置を詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の液晶表示装置の構成を表す一実施形態のブロック図である。図1に示す液晶表示装置10は、画像処理として、視野角改善処理およびオーバドライブ処理を入力画像データ(入力画像)に施して、画像処理後の入力画像データに対応する画像を表示する。液晶表示装置10は、強さ決定部12と、圧縮部14と、第1の伸張部16と、画像処理部18と、逆変換部20と、画像圧縮処理部22と、フレームバッファ24と、画像伸張処理部26と、第2の伸張部28と、再変換部30とを備えている。
【0030】
強さ決定部12、圧縮部14、第1の伸張部16および画像処理部18は、入力画像データ(現在のフレームの画像データ)に視野角改善処理を施す視野角改善処理部32を構成する。なお、液晶表示装置10は、図示しない、オーバドライブ部と、液晶表示パネル部とを備えている。
【0031】
強さ決定部12には、入力画像データが外部から入力される。強さ決定部12は、入力画像データに基づいて視野角改善処理の強さを決定して、視野角改善処理の強さを表す強さ情報を出力する。
【0032】
入力画像データは、例えば、RGB(赤緑青)色空間の画像データであるが、YUV(Y:輝度およびUV:色差)色空間のように、RGB色空間以外の色空間の画像データを使用してもよい。
【0033】
視野角改善処理の強さは、入力画像データの中間階調の画素の画素値を、視野角改善処理後の高階調の画素の画素値および低階調の画素の画素値に変換する割合を表す。強さ情報は、例えば、入力画像データの1画素毎に1つの強さ情報が用いられる。
【0034】
続いて、圧縮部14には、強さ情報が強さ決定部12から入力される。圧縮部14は、強さ情報を圧縮して、圧縮後の強さ情報である圧縮情報を出力する。
【0035】
圧縮部14における圧縮手法は特に限定されず、例えば、圧縮効率を高めるために不可逆圧縮が使用されるが、可逆圧縮も利用可能である。
【0036】
続いて、第1の伸張部16には、圧縮情報が圧縮部14から入力される。第1の伸張部16は、圧縮情報を伸張して、伸張後の圧縮情報である第1の伸張情報を出力する。
【0037】
第1の伸張部16における伸張手法は、圧縮部14における圧縮手法に一致する伸張手法が使用される。
【0038】
続いて、画像処理部18には、入力画像データが外部から入力され、第1の伸張情報が第1の伸張部16から入力される。画像処理部18(第1の画像処理部)は、視野角改善処理を現在のフレームの入力画像データに施すものであり、第1の伸張情報に基づいて、視野角改善処理を入力画像データに施して、視野角改善処理後の入力画像データを現在のフレームの画像データとして出力する。
【0039】
続いて、逆変換部20には、現在のフレームの画像データが画像処理部18から入力され、第1の伸張情報が第1の伸張回路16から入力される。逆変換部20は、隣接画素との相関が高いことを利用して画像データを圧縮するアルゴリズムを使用することを前提として、第1の伸張情報に基づいて、視野角改善処理の簡易的な逆変換(逆ガンマ変換)を現在のフレームの画像データに施して、逆変換後の現在のフレームの画像データである逆変換データを出力する。
【0040】
逆変換部20は、現在のフレームの画素データにおいて、視野角改善処理により変換された低階調の画素の画素値が、高階調の画素の画素値に近づくように逆変換を行う。あるいは、逆変換部20は、高階調の画素の画素値が、低階調の画素の画素値に近づくように逆変換してもよいし、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とが近づくように、高階調の画素の画素値および低階調の画素の画素値の両方を逆変換してもよい。
【0041】
続いて、画像圧縮処理部22には、逆変換データが逆変換部20から入力される。画像圧縮処理部22は、逆変換データを圧縮して、圧縮後の逆変換データである圧縮データを出力する。
【0042】
画像圧縮処理部22における圧縮手法は特に限定されないが、例えば、隣接画素の相関が高いことを利用して周辺画素(符号化対象画素に隣接した画素)の画素値から注目画素(符号化対象画素)の画素値の予測を行い、その予測値と実際値との差分を符号化するJPEG(Joint Photographic Experts Group)−LS(lossless)およびJPEG DPCM(differential PCM)等を利用することができる。
【0043】
また、画像圧縮処理部22は、圧縮手法として、例えば、YUV422形式(Y:輝度、U:輝度と青色成分との差、V:輝度と赤色成分との差)等の色空間のように、人間の目に知覚されづらい色差成分を間引き、2/3から1/2程度にデータ量を圧縮する手法、および、隣接画素との差分のみを保存することにより1/2程度にデータ量を圧縮する手法等をさらに組み合わせて利用することができる。
【0044】
続いて、フレームバッファ24には、圧縮データが画像圧縮処理部22から入力され、圧縮情報が圧縮部14から入力される。フレームバッファ24は、圧縮データおよび圧縮情報を格納(保存)する。
【0045】
続いて、画像伸張処理部26には、フレームバッファ24から読み出された圧縮データが入力される。画像伸張処理部26は、フレームバッファ24から読み出された圧縮データを伸張して、伸張後の圧縮データである伸張データを出力する。
【0046】
画像伸張処理部26における伸張手法は、画像圧縮処理部22における圧縮手法に一致するものが使用される。例えば、圧縮手法がJPEG−LSである場合には、伸張手法としてJPEG−LSが使用される。
【0047】
続いて、第2の伸張部28には、フレームバッファ24から読み出された圧縮情報が入力される。第2の伸張部28は、フレームバッファ24から読み出された圧縮情報を伸張して、伸張後の圧縮情報である第2の伸張情報を出力する。
【0048】
第2の伸張部28における伸張手法は、第1の伸張部16における伸張手法と同じものが使用される。従って、圧縮部14が圧縮情報を不可逆圧縮する場合であっても、第1および第2の伸張情報は同一となるため、第1および第2の伸張情報の間には圧縮情報の圧縮伸張による誤差は発生しない。
【0049】
続いて、再変換部30には、伸張データが画像伸張処理部26から入力され、第2の伸張情報が第2の伸張部28から入力される。再変換部30は、第2の伸張情報に基づいて、逆変換のさらに逆変換である簡易的な再変換(ガンマ変換)を伸張データに施して、再変換後の伸張データを現在のフレームの1フレーム前の画像データとして出力する。
【0050】
再変換部30は、伸張データにおいて、逆変換部20により逆変換された低階調の画素の画素値が、逆変換される前の画素値に近づく(戻る)ように再変換を行う。あるいは、再変換部30は、逆変換された高階調の画素の画素値が、逆変換される前の画素値に近づくように再変換してもよいし、逆変換された高階調の画素の画素値および低階調の画素の画素値の両方が、逆変換される前の画素値に近づくように変換してもよい。
【0051】
続いて、図示しないオーバドライブ部には、現在のフレームの画像データが画像処理部18から入力され、1フレーム前の画像データが再変換部30から入力される。オーバドライブ部は、1フレーム前の画像データに基づいて、オーバドライブ処理を現在のフレームの画像データに施して、オーバドライブ処理後の現在のフレームの画像データであるオーバドライブデータを出力する。
【0052】
最後に、図示しない液晶表示パネル部には、オーバドライブデータがオーバドライブ部から入力される。液晶表示パネル部は、オーバドライブデータに対応する画像を表示する。
【0053】
次に、画像処理部18についてさらに説明する。
【0054】
画像処理部18は、視野角改善処理を行うために、例えば、中間階調の画素の画素値を、高階調の画素の画素値および低階調の画素の画素値に変換する第1および第2のLUT(look-up table:ルックアップテーブル)を備える。第1および第2のLUTは、高階調の画素の輝度と低階調の画素の輝度との平均が、中間階調の画素の輝度と等しくなるように設定される。
【0055】
図2は、視野角改善処理用の第1および第2のLUTの変換特性を表す一例のグラフである。図2のグラフの横軸はLUTへの入力値を表し、縦軸はLUTからの出力値を表す。また、実線は、第1のLUTの変換特性を表し、破線は、第2のLUTの変換特性を表す。なお、LUTへの入力値およびLUTからの出力値は、入力画像データおよび現在のフレームの画像データを0から1までの値で表したものである。
【0056】
xをLUTへの入力値、yをLUTからの出力値として、例えば、図2のグラフに示すように、高階調の画素の画素値への変換用の第1のLUTの変換特性をy=x^0.6とし、低階調の画素の画素値への変換用の第2のLUTの変換特性をy=x^1.4とすることにより、第1および第2のLUTとして、高階調の画素の輝度と低階調の画素の輝度との平均が、中間階調の画素の輝度とほぼ等しくなるLUTを得ることができる。
【0057】
一般的に、視野角改善処理は、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを空間的および時間的の少なくとも一方に多重化して表示することにより実施され、高階調の画素の輝度と低階調の画素の輝度との平均に対応する輝度が人間の目に知覚される。
【0058】
空間的多重化の場合、画素の位置に応じて、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値のどちらを出力するかを決定する。例えば、マトリックスで表示される領域において、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを千鳥状に表示する方法がある。
【0059】
図3は、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを空間的に多重化した一例の概念図である。図3の左側は、2×2のマトリックスで表示された中間階調の領域の画素値に対応する画像を表す。この中間階調の領域を空間的に多重化する場合、例えば、図3の右側に示すように、2×2のマトリックスの右上および左下の画素を高階調の画素の画素値で表示し、左上および右下の画素を低階調の画素の画素値で表示する。
【0060】
また、時間的多重化の場合、例えば、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを、1フレーム毎に交互に入れ替えて出力する方法がある。
【0061】
なお、空間的多重化の場合、2×2のマトリックスに限らず、任意の形状の中間階調の領域において、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを任意のパターンで配置して表示することができる。また、時間的多重化の場合、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを、1フレーム毎に入れ替えて出力することに限らず、複数フレーム毎に入れ替えて出力してもよい。
【0062】
また、視野角改善処理の強さを変更する方法として、例えば、第1および第2のLUTを1セットとして、視野角改善処理の強さが異なる2以上のセットを備え、第1の伸張情報に応じて、2以上のセットを切り替えて使用する方法がある。
【0063】
あるいは、視野角改善処理前の画像データ(入力画像データ)および視野角改善処理後の画像データ(現在のフレームの画像データ)から、例えば、両者の中間的な強さを持つ視野角改善処理の強さの変換特性を計算して使用する方法もある。この方法は、例えば、所望の視野角改善処理の強さに応じて、視野角改善処理前の画像データと処理後の画像データとをブレンドすることによりを実現できる。
【0064】
図4は、図2の視野角改善処理用のLUTの変換特性および、このLUTの視野角改善処理の強さを50%の強さにした場合の変換特性を表す一例のグラフである。図4のグラフの横軸はLUTへの入力値、縦軸はLUTからの出力値を表す。また、破線は、図2の視野角改善処理用のLUTの変換特性を表し、実線は、このLUTの視野角改善処理の強さの50%の強さの変換特性を表す。なお、LUTへの入力値およびLUTからの出力値は、図2の場合と同じである。
【0065】
図4のグラフに示すように、LUTの視野角改善処理の強さが50%の強さの場合の変換特性は、図2の視野角改善処理用のLUTの変換特性と比べ、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値との差が小さくなり、視野角改善処理の強さが弱くなっている。なお、LUTの視野角改善処理の強さの50%の強さの変換特性に限らず、ブレンドの比率に応じて、視野角改善処理用のLUTから、任意の視野角改善処理の強さの変換特性を実現することができる。
【0066】
次に、強さ決定部12についてさらに説明する。
【0067】
強さ決定部12は、前述のように、入力画像データに基づいて視野角改善処理の強さを決定する。視野角改善処理の強さを表す強さ情報は、例えば、1画素あたり8ビットの値(データ)として表現される。強さ情報が0の場合、視野角改善処理は施されず、強さ情報が255の場合、最大強さの視野角改善処理が施されることを意味する。なお、強さ情報は、1画素あたり8ビットのデータに限らず、Nビット(Nは1以上の整数)のデータとすることができる。
【0068】
視野角改善処理が施された場合、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値との組み合わせにより、エッジ部分において明暗のパターンが見えたり、液晶特性および人間の視覚特性により、特定の色または輝度の領域においてチラツキまたは粒状感を感じたりする等の副作用が発生することがある。そのため、エッジ部分、および、特定の色または輝度の領域における視野角改善処理の強さを制御する必要がある。
【0069】
高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値との差が小さい、つまり、視野角改善処理の強さが弱いLUTを使用することにより副作用を軽減することができるが、視野角改善処理の効果も低下するため、視野角改善処理の強さを画素毎に変更できることが望ましい。
【0070】
強さ決定部12は、入力画像データに基づいて、エッジ部分を検出するエッジ検出部を備えている。また、強さ決定部12は、入力画像データの色空間を色相および輝度を含む色空間に変換する色空間変換部と、入力画像データの色に基づいて、特定の色の領域を判定する色相判定部と、入力画像データの輝度に基づいて、特定の輝度の領域を判定する輝度判定部とを備えている。
【0071】
エッジ検出部は、例えば、ラインバッファおよび3×3のフィルタ等を使用してエッジ部分を検出する。強さ決定部12は、視野角改善処理をエッジ部分に施さない、もしくは、エッジ部分における視野角改善処理の強さを弱めるように、エッジ部分の強さ情報を決定する。
【0072】
強さ決定部12は、例えば、入力画像データのRGB毎に独立してエッジ部分の視野角改善処理の強さを計算し、エッジ部分のRGBの視野角改善処理の強さの中の最低値を、エッジ部分の視野角改善処理の強さに決定することにより良好な結果が得られる。図5Aは、視野角改善処理を行う前の一例のカラー画像、図5Bは、上記方法により図5Aに示す画像のエッジ部分を検出し、エッジ部分のRGBの視野角改善処理の強さの中の最低値を、エッジ部分の視野角改善処理の強さに決定した画像である。
【0073】
色空間変換部は、例えば、RGB色空間の入力画像データをHLS(H:色相、L:輝度:S:彩度)色空間の画像データ等に変換する。強さ決定部12は、例えば、視野角改善処理を特定の色および特定の輝度の領域に施さない、もしくは、特定の色および特定の輝度の領域における視野角改善処理の強さを弱めるように、特定の色および特定の輝度の領域の強さ情報を決定する。図5Cは、図5Aに示す画像において色相判定を行って、図5Aの画像における青色部分の視野角改善処理の強さを0(黒)に決定した画像である。
【0074】
なお、強さ決定部12は、エッジ検出部のみを備えていてもよいし、色空間変換部、色相判定部および輝度判定部のみを備えていてもよいし、エッジ検出部、ならびに、色空間変換部、色相判定部および輝度判定部の両方を備えていてもよい。
【0075】
また、強さ決定部12は、色相判定部および輝度判定部の少なくとも一方を備えていてもよい。この場合、強さ決定部12は、視野角改善処理を特定の色および特定の輝度の少なくとも一方の領域に施さない、もしくは、特定の色または特定の輝度の少なくとも一方の領域における視野角改善処理の強さを弱めるように、特定の色および特定の輝度の少なくとも一方の領域の強さ情報を決定する。
【0076】
次に、圧縮部14についてさらに説明する。
【0077】
強さ情報を1画素あたり8ビットの値として表現した場合、入力画像データの1画素当たりのデータ容量がRGBの24ビットであるとすると、必要なフレームバッファ24のメモリ容量が1.33倍(=(24+8)/24)となり回路規模が増加する。
【0078】
これに対し、画像データの場合と同様に、強さ情報を圧縮してフレームバッファ24に格納することが考えられるが、不可逆圧縮の場合、圧縮前後の強さ情報の間に圧縮誤差が発生して圧縮前後の画像データの間に不一致が発生し、画質が劣化する。液晶表示装置10では、強さ情報を一旦圧縮した後に、圧縮した強さ情報(圧縮情報)を画像データの圧縮前後において伸張した強さ情報(第1および第2の伸張情報)を使用することにより、圧縮前後の画像データの間の不一致が解消される。
【0079】
その一方で、この方式では、圧縮で劣化した強さ情報を使用して視野角改善処理を行うため、圧縮誤差により、視野角改善処理の強さが強くなったり弱くなったりする。視野角改善処理の強さが弱くなる場合は、視野角改善処理の効果が低下する、あるいは、視野角圧縮処理が施されなくなるのみであるが、視野角改善処理の強さが強くなった場合は、本来視野角改善処理が施されるべきではないところに施される、あるいは、本来よりも視野角改善処理の強さが強くなり、画質の劣化として知覚されやすくなるという特性がある。
【0080】
この問題に対し、圧縮部14は、伸張後の視野角改善処理の強さが、圧縮前の視野角改善処理の強さよりも強くなる圧縮誤差が発生しないように、例えば、強さ情報の解像度および1画素当たりの強さ情報のビット数を削減することにより、強さ情報を圧縮する。
【0081】
まず、強さ情報の解像度を削減する場合について説明する。
【0082】
視野角改善処理において、視野角改善処理の強さが急激に変わる場合、人間の目に変化が知覚されやすいという特性があるため、強さの急激な変化は極力避けることが望ましい。強さの急激な変化を減らす方法としてローパスフィルタ等を用いる方法があるが、一旦、強さ情報の解像度を下げた後、後述する様に、適切な補間をしつつ伸張することにより、ローパスフィルタと同様の効果を得つつデータ量の削減が可能である。
【0083】
強さ情報の解像度をどの程度下げるかは任意に決めることができるが、例えば、水平方向の解像度を1/4にする、つまり、4画素の強さ情報の値を1つの強さ情報の値に圧縮することにより、画質、回路規模およびデータ削減量のバランスを良好にすることができる。
【0084】
ただし、強さ情報の解像度を下げる際に、最近傍法および平均画素法等の一般的な縮小アルゴリズムを使用した場合、圧縮後の視野角改善処理の強さが、圧縮前の視野角改善処理の強さよりも強くなることがある。圧縮部14は、例えば、入力画像データの一定数の画素毎に、一定数の画素の強さ情報の値の中の最小値を代表値として選択して強さ情報の解像度を下げることにより、視野角改善処理の強さが強くならないようにすることを優先して一定数の画素の強さ情報の値を1つの強さ情報の値に圧縮するアルゴリズムを使用する。
【0085】
図6Aは、圧縮前の水平方向の4画素の強さ情報を表す一例の概念図、図6Bは、図6Aの4画素の強さ情報を平均画素法により圧縮した1つの強さ情報を表す概念図、図6Cは、図6Aの4画素の強さ情報を、最小値を代表値として選択することにより圧縮した1つの強さ情報を表す概念図である。図6A図6Bおよび図6Cは、4画素の強さ情報の値を1つの強さ情報の値に圧縮することにより強さ情報の解像度を削減する一例であり、その横軸は水平方向の画素の並び、縦軸は強さ情報の値を表す。
【0086】
図6Aは、水平方向の4画素の強さ情報の値が、左側の画素から順に4,1,2,1の場合の一例である。
【0087】
図6Bに示すように、平均画素法により圧縮した強さ情報の値は、(4+1+2+1)/4=2となる。このように、平均画素法を使用することにより、例えば、圧縮前の値が1であった画素の強さ情報の圧縮後の値は2となる。つまり、圧縮前の強さ情報の値よりも圧縮後の強さ情報の値の方が大きくなり、本来よりも強い視野角改善処理が施されることになるため、この部分の画質が劣化する。
【0088】
一方、図6Cに示すように、最小値を代表値として選択することにより圧縮した強さ情報の値は、最小値の1になる。このように、最小値を代表値として選択することにより、圧縮後の強さ情報の値が、圧縮前の強さ情報の値よりも小さくなることはあっても大きくなることはなく、本来施されない部分に視野角改善処理が施されることも、本来よりも強い視野角改善処理が施されることもないため、画質が劣化することはない。
【0089】
続いて、1画素当たりの強さ情報のビット数を削減する場合について説明する。
【0090】
視野角改善処理の強さは、エッジ部分を除いて一定であることが多いため、一般的な画像の圧縮手法、例えば、隣接画素の画素値の差分をとって符号に符号化する差分符号化を使用して強さ情報を圧縮伸張することが可能である。ただし、圧縮部14、ならびに、第1および第2の伸張部16,28は、伸張後の強さ情報の値が、圧縮前の強さ情報の値よりも大きくならないように、つまり、量子化の際の誤差がより弱まる方向にのみ出るように符号化および復号化を行う。
【0091】
例えば、表1に示す符号化テーブルを用いて、入力画像データの画素毎に、現在の画素の強さ情報の値とその1つ前(直前)の画素の強さ情報の値との差分をとって符号に符号化する場合の一例を挙げて説明する。
【0092】
【表1】
【0093】
表1の符号化テーブルに示すように、圧縮部14は、前述の差分が+20(プラスの一定値)以上である場合に差分を符号11b(第1の符号)に符号化する。一方、第1および第2の伸張部16,28は、1つ前の画素の強さ情報の値とプラスの一定値とを加算することにより符号11bを復号化する。つまり、復号化後の強さ情報の値は、1つ前の画素の強さ情報の値+20となり、符号化前の強さ情報の値よりも小さくなることはあっても大きくなることはない。
【0094】
差分が0(ゼロ)以上で、かつ、+20(プラスの一定値)よりも小さい場合に差分は符号10b(第2の符号)に符号化される。また、1つ前の画素の強さ情報の値を現在の画素の強さ情報の値とすることにより符号10bは復号化される。つまり、復号化後の強さ情報の値は、1つ前の画素の強さ情報の値と同じ値となり、符号化前の強さ情報の値よりも大きくなることはない。
【0095】
差分が-20(マイナスの一定値)以上で、かつ、0よりも小さい場合に差分は符号01b(第3の符号)に符号化される。また、1つ前の画素の強さ情報の値からマイナスの一定値を減算することにより符号01bは復号化される。つまり、復号化後の強さ情報の値は、1つ前の画素の強さ情報の値-20となり、符号化前の強さ情報の値よりも大きくなることはない。
【0096】
差分が-20(マイナスの一定値)よりも小さい場合に差分は符号00b(第4の符号)に符号化される。符号00bは、差分がマイナスの一定値よりも小さい場合であっても、視野角改善処理の強さが強くなる方向に誤差が発生しないようにするために設けられている。また、現在の画素の強さ情報の値を0にすることにより符号00bは復号化される。つまり、復号化後の強さ情報の値は、1つ前の画素の強さ情報の値に関わらず0となり、符号化前の強さ情報の値よりも大きくなることはない。
【0097】
続いて、強さ情報を符号化する際の処理の流れについて説明する。
【0098】
図7は、強さ情報を符号化する場合の処理の流れを表す一例のフローチャートである。図7のフローチャートは、1ラインに含まれる画素の画素値(強さ情報の値)を順次符号化する場合の一例である。
【0099】
図7のフローチャートに示すように、1ラインの画素の画素値の符号化が開始される(Line start)と、まず、1ラインの最初の画素の1つ前の画素の画素値Preが画素値の中央値である128に設定される(Pre=128)(ステップS1)。
【0100】
続いて、1ラインの最後の画素の画素値が符号化されたか否かが判定される(Line ended?)(ステップS2)。
【0101】
その結果、最後の画素の画素値が符号化された場合(ステップS2においてYES)、1ラインに含まれる全ての画素の画素値の符号化が終了となる(Finish)。
【0102】
一方、最後の画素の画素値が符号化されていない場合(ステップS2においてNO)、1ラインの画素のうちの注目画素の画素値Pixel dataが、現在の画素の画素値Curとして設定される(Pixel data->Cur)(ステップS3)。
【0103】
続いて、現在の画素の画素値Curが、1つ前の画素の画素値Pre+20以上であるか否かが判定される(Cur>=Pre+20)(ステップS4)。つまり、CurとPreとの差分Cur-Preが+20以上であるか否かが判定される。
【0104】
その結果、CurがPre+20以上である場合(Cur>=Pre+20)(ステップS4においてYes)、現在の画素の画素値の符号Outputとして、Cur-Preが11bに符号化される(ステップS5)。また、Preが、Pre=Pre+20に更新された後(ステップS6)、ステップS2へ戻る。
【0105】
一方、CurがPre+20よりも小さい場合(ステップS4においてNo)、続いて、CurがPre以上であるか否かが判定される(Cur>=Pre)(ステップS7)。つまり、Cur-Preが0以上であるか否かが判定される。
【0106】
その結果、CurがPre以上である場合(Cur>=Pre)(ステップS7においてYes)、Outputとして、Cur-Preが10bに符号化された後(ステップS8)、ステップS2へ戻る。
【0107】
一方、CurがPreよりも小さい場合(ステップS7においてNo)、続いて、CurがPre-20以上であるか否かが判定される(Cur>=Pre-20)(ステップS9)。つまり、Cur-Preが-20以上であるか否かが判定される。
【0108】
その結果、CurがPre-20以上である場合(Cur>=Pre-20)(ステップS9においてYes)、Outputとして、Cur-Preが01bに符号化される(ステップS10)。また、Preが、Pre=Pre-20に更新された後(ステップS11)、ステップS2へ戻る。
【0109】
一方、CurがPre-20よりも小さい場合(ステップS9においてNo)、Outputとして、Cur-Preが00bに符号化される(ステップS12)。また、Preが、Pre=0に更新された後(ステップS13)、ステップS2へ戻る。
【0110】
これ以後の動作は、1ラインの最後の画素になるまでステップS2から前述の動作が繰り返し行われる。
【0111】
続いて、強さ情報の符号化および復号化について具体例を挙げて説明する。
【0112】
図8は、符号化前および復号化後の画素の画素値を表す一例の概念図である。図8は、1ラインの最初の画素から6画素までのCurが、180,170,160,150,100,50の場合の一例である。
【0113】
符号化する場合、図8に示すように、まず、1ラインの最初の画素は、Cur=180、Pre=128である。この場合、Cur>=Pre+20であるため、Cur-PreがOutput=11bに符号化され、Pre=Pre+20=148に更新される。
【0114】
以下順に、2番目の画素は、Cur=170、Pre=148である。同じく、Cur>=Pre+20であるため、Cur-PreがOutput=11bに符号化され、Pre=Pre+20=168に更新される。続いて、3番目の画素は、Cur=160、Pre=168である。この場合、Cur>=Pre-20であるため、Cur-PreがOutput=01bに符号化され、Pre=Pre-20=148に更新される。続いて、4番目の画素は、Cur=150、Pre=148である。この場合、Cur>=Preであるため、Cur-PreがOutput=10bに符号化され、Pre=148が維持される。続いて、5番目の画素は、Cur=100、Pre=148である。この場合、Cur<Pre-20であるため、Cur-PreがOutput=00bに符号化され、Pre=0に更新される。続いて、6番目の画素は、Cur=50、Pre=0である。この場合、Cur>=Pre+20であるため、Cur-PreがOutput=11bに符号化され、Pre=Pre+20=20に更新される。
【0115】
一方、復号化する場合、図8に示すように、まず、1ラインの最初の画素は、Pre=128、Output=11bであるため、復号化後の画素値は、Pre+20=148となる。
【0116】
以下順に、2番目の画素は、Pre=148、Output=11bであるため、復号化後の画素値は、Pre+20=168となる。続いて、3番目の画素は、Pre=168、Output=01bであるため、復号化後の画素値は、Pre-20=148となる。続いて、4番目の画素は、Pre=148、Output=10bであるため、復号化後の画素値は、3番目の画素の復号化後の画素値と同じ148となる。続いて、5番目の画素は、Pre=148、Output=00bであるため、復号化後の画素値は、0となる。続いて、6番目の画素は、Pre=0、Output=11bであるため、復号化後の画素値は、Pre+20=20となる。
【0117】
上記のように、表1の符号化テーブルに従って強さ情報を符号化することにより、復号化後の強さ情報の値が、符号化前の強さ情報の値よりも大きくなることはなく、本来施されない部分に視野角改善処理が施されることも、本来よりも強い視野角改善処理が施されることもないため、画質が劣化することはない。また、表1の符号化テーブルの場合、8ビットの強さ情報が2ビットの符号に符号化されるため、強さ情報のデータ量を1/4の2ビットに減らすことができる。
【0118】
なお、表1のように、8ビットの強さ情報を2ビットの符号に符号化することに限らず、任意のビット長の符号に符号化してもよい。また、任意の値のプラスおよびマイナスの一定値を用いて強さ情報の値を判定してもよい。また、表1に示す符号化方式に限らず、誤差低減のために予測値を用いるより高度な符号化方式等を利用することもできる。また、符号化された強さ情報を、エントロピー符号化等の一般的な可逆圧縮手法により、更に圧縮してもよい。
【0119】
解像度およびビット数の削減処理により、強さ情報のデータ量を1/16程度、つまり、1画素当たりの強さ情報を8ビットから0.5ビットに圧縮することが可能である。画像データのデータ量が1/3程度、つまり、1画素当たりの画像データが24ビットから8ビットに圧縮された場合を仮定すると、強さ情報は画像データの約6%(=0.5/8)程度の容量となり、強さ情報がフレームバッファ24のメモリ容量および帯域等に与える影響を大幅に低減することができる。
【0120】
図9Aは、圧縮前の強さ情報をグレースケール画像として可視化した一例の画像、図9Bは、図9Aの画像において、強さ情報の解像度を1/4に下げた画像、図9Cは、図9Bの画像において、1画素当たりの強さ情報のビット数を減らした画像である。これらの図に示すように、伸張後の強さ情報の値が、圧縮前の強さ情報の値よりも大きくならないように強さ情報圧縮するため、強さ情報を圧縮するに従って、画像が黒くなる、つまり、視野角改善処理の強さが弱くなる。
【0121】
次に、第1および第2の伸張部16、28についてさらに説明する。
【0122】
第1および第2の伸張部16、28は、圧縮部14における圧縮の手順と逆の手順で圧縮情報の伸張を行う。例えば、可逆圧縮および差分符号化された強さ情報は、可逆圧縮および差分符号化に一致する伸張手法を使用して伸張される。一方、削減された解像度を復元する場合、復元後の強さ情報の値が、削減前の強さ情報の値よりも大きくならないように、圧縮後の1つの強さ情報の値を単純拡大して、伸張後の一定数の画素の強さ情報の値とすることにより、1つの強さ情報の値を一定数の画素の強さ情報の値に伸張する。
【0123】
図10Aは、圧縮前の水平方向の4画素の強さ情報を表す一例の概念図、図10Bは、図10Aの4画素の強さ情報を、最小値を代表値として選択することにより圧縮した1つの強さ情報を単純拡大して伸張した4画素の強さ情報を表す概念図、図10Cは、図10Bの伸張後の強さ情報を線形補間した強さ情報を表す概念図である。図10A図10Bおよび図10Cは、圧縮した1つの強さ情報の値を4画素の強さ情報の値に伸張することにより強さ情報の解像度を復元する例であり、その横軸は水平方向の画素の並び、縦軸は強さ情報の値を表す。
【0124】
図10Aは、圧縮前の水平方向の1番目の4画素の強さ情報の値が、左側の画素から順に4,3,3,4であり、2番目の4画素の強さ情報の値が、4,1,1,2であり、3番目の4画素の強さ情報の値が、3,4,4,3の場合の一例である。
【0125】
図10Bに示すように、単純拡大による伸張後の1番目の4画素の強さ情報の値は3となり、2番目の4画素の強さ情報の値は1となり、3番目の4画素の強さ情報の値は3となる。単純拡大の場合、4画素毎の境界部分において強さ情報の急激な変化が現れる。
【0126】
第1および第2の伸張部16、28は、図10Cに示すように、変化部分を線形補間して滑らかに繋ぐように復元する。この際も、伸張後の強さ情報の値が、圧縮前の強さ情報の値よりも大きくならないように、隣接する2つの4画素の強さ情報の境界から、隣接する2つの4画素の強さ情報のうちの値が大きい方の4画素の強さ情報の最大で半分までの強さ情報の値を、隣接する2つの4画素の強さ情報のうちの値が小さい方の4画素の強さ情報の値に近づけるように段階的に下げて線形補間することにより滑らかに繋ぐ。
【0127】
図10Bに示すように、1番目の4画素の強さ情報の値の3は、2番目の4画素の強さ情報の値の1よりも大きい。この場合、図10Cに示すように、両者の境界部分から、1番目の4画素の強さ情報のうちの1画素(4画素目)の強さ情報の値を3から2に下げる。また、3番目の4画素の強さ情報の値の3は、2番目の4画素の強さ情報の値の1よりも大きい。この場合も両者の境界部分から、3番目の4画素の強さ情報のうちの1画素(1画素目)の強さ情報の値を3から2に下げる。
【0128】
このように、隣接する2つの4画素の強さ情報の値の変化部分を線形補間して滑らかに繋ぐことにより、隣接する2つの4画素の強さ情報の境界部分において強さ情報の急激な変化が現れるのを解消することができる。また、隣接する4画素の強さ情報のうち、値が小さい方の4画素の強さ情報を上げるのではなく、値が大きい方の4画素の強さ情報の値を下げることにより、伸張後の強さ情報の値が、圧縮前の強さ情報の値よりも大きくなることはないため、画質が劣化することはない。
【0129】
なお、境界部分から最大で半分までの強さ情報に制限するのは、4画素の強さ情報の両側の4画素の強さ情報の各々に対応するためである。また、4画素に限らず、任意の画素数を単位として解像度の削減および復元を行うことができる。
【0130】
次に、逆変換部20についてさらに説明する。
【0131】
逆変換部20は、第1の伸張情報に基づいて、視野角改善処理により変換された高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とができるだけ近い値になるように逆変換することにより隣接画素間の相関を高め、画像圧縮処理部22における圧縮効率を改善する。例えば、低階調の画素の画素値にのみ下記式(1)の変換を適用し、低階調の画素の画素値(輝度)を上げることにより高階調の画素の画素値に近づけることができる。
【0132】
y=x^n … 式(1)
ここで、xは低階調の画素の画素値の入力値、yは低階調の画素の画素値の出力値、nは強さ情報(第1の伸張情報)の値から決まる係数である。
【0133】
nの決め方は、視野角改善処理のために使用するLUTの変換特性および視野角改善処理の強さの表現方法によって変わるが、低階調の画素の画素値が、高階調の画素の画素値に近づくように調整する。
【0134】
例えば、前述のように、視野角改善処理の第1および第2のLUTの変換特性がy=x^0.6およびy=x^1.4であり、視野角改善処理前の画像データと処理後の画像データとをブレンドすることにより所望の視野角改善処理の強さを実現する場合、下記式(2)により、視野角改善処理の強さに関わらず、高階調の画素の画素値と低階調の画素の画素値とを概ね揃えることができる。
【0135】
n=1−0.57m … 式(2)
ここで、mは、強さ情報を0から1までの値で表現したものであり、0は視野角改善処理なし、1は最大強さの視野角改善処理を意味する。
【0136】
図11Aは、逆変換部による低階調の画素の画素値の変換特性を表す一例のグラフ、図11Bは、図11Aの変換特性の50%の強さの変換特性を表すグラフである。これらのグラフの横軸は入力値、縦軸は出力値を表す。また、破線は高階調の画素の画素値の変換特性であり、細実線は低階調の画素の画素値の変換特性の入力値、太実線は、前述の式(1)による低階調の画素の画素値の変換特性の出力値を表す。なお、入力値および出力値は、図2の場合と同じである。
【0137】
図11Aおよび図11Bのグラフに示すように、式(1)による低階調の画素の画素値の変換特性の出力値は、高階調の画素の画素値の変換特性に近いものとなるため、逆変換部20による逆変換後の低階調の画素の画素値は、高階調の画素の画素値に近い値となる。
【0138】
次に、液晶表示装置10の動作を説明する。
【0139】
まず、強さ決定部12により、入力画像データに基づいて視野角改善処理の強さが決定され、強さ決定部12から強さ情報が出力される。
【0140】
続いて、圧縮部14により、強さ情報が圧縮され、圧縮部14から圧縮情報が出力される。
【0141】
続いて、第1の伸張部16により、圧縮情報が伸張され、第1の伸張部16から第1の伸張情報が出力される。
【0142】
続いて、画像処理部18により、第1の伸張情報に基づいて、視野角改善処理が入力画像データに施され、画像処理部18から視野角改善処理後の入力画像データが現在のフレームの画像データとして出力される。
【0143】
続いて、逆変換部20により、第1の伸張情報に基づいて、視野角改善処理の逆変換が現在のフレームの画像データに施され、逆変換部20から逆変換データが出力される。
【0144】
続いて、画像圧縮処理部22により、逆変換データが圧縮され、画像圧縮処理部22から圧縮データが出力される。
【0145】
続いて、圧縮データおよび圧縮情報がフレームバッファ24に格納される。
【0146】
続いて、フレームバッファ24から圧縮データが読み出され、画像伸張処理部26により、フレームバッファ24から読み出された圧縮データが伸張され、画像伸張処理部26から伸張データが出力される。
【0147】
また、フレームバッファ24から圧縮情報が読み出され、第2の伸張部28により、フレームバッファ24から読み出された圧縮情報が伸張され、第2の伸張部28から第2の伸張情報が出力される。
【0148】
続いて、再変換部30により、第2の伸張情報に基づいて、再変換が伸張データに施され、再変換部30から再変換後の伸張データが1フレーム前の画像データとして出力される。
【0149】
続いて、図示しないオーバドライブ部により、1フレーム前の画像データに基づいて、オーバドライブ処理が現在のフレームの画像データに施され、オーバドライブ部からオーバドライブデータが出力される。
【0150】
そして、オーバドライブデータに対応する画像が、図示しない液晶表示パネル部に表示される。
【0151】
上記のように、液晶表示装置10では、伸張後の強さ情報の値が、圧縮前の強さ情報の値よりも大きくならないように、強さ情報が圧縮伸張される。強さ情報を圧縮することにより、必要なフレームバッファ24のメモリ容量を削減してコストを削減することができる。また、強さ情報の圧縮誤差により、伸張後の視野角改善処理の強さが、圧縮前の視野角改善処理の強さよりも強くなることはないため、画質が劣化することはない。
【0152】
また、液晶表示装置10では、画像データの圧縮前に、逆変換部20により、第1の伸張情報に基づいて、視野角改善処理により変換された低階調の画素の画素値が、高階調の画素の画素値に近づくように簡易的な逆変換が行われる。また、画像データの伸張後に、再変換部30により、第2の伸張情報に基づいて、変換された低階調の画素の画素値が、変換前の画素値に近づくように簡易的な再変換が行われる。
【0153】
これにより、視野角改善処理が施された場合であっても、隣接画素間の画素値の相関を高くすることができるため、圧縮効率を向上させることができ、1フレーム前の画像の画質を向上させることができる。また、1フレーム前の画像の画質が向上されることにより、オーバドライブ処理の精度を向上させることができるため、液晶表示装置10の表示品質を向上させることができる。
【0154】
なお、液晶表示装置10のように、視野角改善処理を施して逆変換し、圧縮伸張して再変換する構成に限らず、現在のフレームおよび1フレーム前の画像データの各々について視野角改善処理を施す構成とすることもできる。
【0155】
図12は、本発明の液晶表示装置の構成を表す別の実施形態のブロック図である。図12に示す液晶表示装置40は、図1に示す液晶表示装置10と比べて、逆変換部20および再変換部30を備えておらず、画像処理部34を備えている。
【0156】
つまり、液晶表示装置40は、強さ決定部12と、圧縮部14と、第1の伸張部16と、画像処理部18と、画像圧縮処理部22と、フレームバッファ24と、画像伸張処理部26と、第2の伸張部28と、画像処理部34と、オーバドライブ部と、液晶表示パネル部とを備えている。また、第2の伸張部28および画像処理部34は、伸張データ(1フレーム前の画像データ)に視野角改善処理を施す視野角改善処理部36を構成する。
【0157】
強さ決定部12、圧縮部14、第1の伸張部16、画像処理部18、フレームバッファ24、画像伸張処理部26、第2の伸張部28、オーバドライブ部および液晶表示パネル部の構成および作用は液晶表示装置10の場合と同じである。
【0158】
続いて、画像圧縮処理部22には、入力画像データが外部から入力される。画像圧縮処理部22は、入力画像データを圧縮して、圧縮後の入力画像データである圧縮データを出力する。
【0159】
続いて、画像処理部34には、伸張データが画像伸張処理部26から入力され、第2の伸張情報が第2の伸張部28から入力される。画像処理部34(第2の画像処理部)は、視野角改善処理を1フレーム前の入力画像データ(伸張データ)に施すものであり、第2の伸張情報に基づいて、視野角改善処理を伸張データに施して、視野角改善処理後の伸張データを1フレーム前の画像データとして出力する。
【0160】
画像処理部34は、画像処理部18と同じ構成および作用を有するものであり、例えば、第1および第2のLUTに相当する第3および第4のLUTを備えている。
【0161】
次に、液晶表示装置10の動作を説明する。
【0162】
強さ決定部12、圧縮部14、第1の伸張部16および画像処理部18の動作は、液晶表示装置10の場合と同じである。
【0163】
また、画像圧縮処理部22により、入力画像データが圧縮され、画像圧縮処理部22から圧縮データが出力される。
【0164】
フレームバッファ24、画像伸張処理部26および第2の伸張部28の動作も、液晶表示装置10の場合と同じである。
【0165】
続いて、画像処理部34により、第2の伸張情報に基づいて、視野角改善処理が伸張データに施され、画像処理部34から視野角改善処理後の伸張データが1フレーム前の画像データとして出力される。
【0166】
オーバドライブ部および液晶表示パネル部の動作も、液晶表示装置10の場合と同じである。
【0167】
液晶表示装置10においても、伸張後の強さ情報の値が、圧縮前の強さ情報の値よりも大きくならないように、強さ情報が圧縮伸張されるため、メモリ容量および画質について液晶表示装置10と同じ効果を得ることができる。
【0168】
また、液晶表示装置40では、視野角改善処理が施されていない入力画像データを圧縮するため、画像の圧縮による画質の低下に関する問題は発生しない。また、視野角改善処理を施す2つの画像処理部が必要となるが、ラインバッファおよび多くの演算回路が必要となり回路規模が大きい強さ決定部12は1つでよいため、視野角改善処理を施す回路を単純に2つ使用する場合と比較して回路規模の削減が可能である。
【0169】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0170】
10、40 液晶表示装置
12 強さ決定部
14 圧縮部
16 第1の伸張部
18、34 画像処理部
20 逆変換部
22 画像圧縮処理部
24 フレームバッファ
26 画像伸張処理部
28 第2の伸張部
30 再変換部
32、36 視野角改善処理部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12