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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-136809(P2018-136809A)
(43)【公開日】2018年8月30日
(54)【発明の名称】中継器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20180803BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20180803BHJP
【FI】
   G08B17/00 C
   G08B25/00 520C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-31706(P2017-31706)
(22)【出願日】2017年2月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】岡戸 朋紘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 丈知
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA32
5C087BB03
5C087BB74
5C087CC04
5C087CC06
5C087CC12
5C087CC22
5C087CC48
5C087DD04
5C087DD05
5C087DD23
5C087DD26
5C087EE19
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF03
5C087FF04
5C087FF05
5C087FF25
5C087GG54
5C087GG64
5C087GG79
5G405AA03
5G405BA01
5G405CA15
5G405CA23
5G405CA27
5G405CA38
5G405DA04
5G405DA16
5G405DA21
5G405EA27
5G405EA38
5G405EA43
5G405EA46
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気錠の作動用にリレーを使用しても、伝送線が短絡した際にはリレーが作動せず受信機が動作停止した際にはリレーが作動して電気錠のロック状態を解除させることができる中継器を提供する。
【解決手段】火災報知システム等を構成する中継器50に、伝送線の電圧を監視する電圧監視回路53と、電圧監視回路の出力に基づいて伝送線の短絡と受信機から供給される電圧の低下を区別して判別し制御信号を生成する伝送電圧低下判別回路51と、所定の端末機器を第1状態と第2状態に作動させるためのラッチ型リレー57とを設ける。伝送電圧低下判別回路は、伝送線の短絡であると判別した場合はラッチ型リレーを電圧低下検出前の状態にさせる制御信号を生成し、受信機から供給される電圧の低下であると判別した場合はラッチ型リレーを電圧低下検出前の状態と異なる状態に作動させる制御信号を生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2以上の端末機器が接続される端子を備え、受信機に接続された伝送線を介して前記受信機から電力の供給を受けて動作し、前記端子に接続されている端末機器に対して前記伝送線を介して前記受信機から受信した信号を送信する機能を備えた中継器であって、
前記伝送線の電圧を監視する電圧監視回路と、
前記電圧監視回路の出力に基づいて前記伝送線の短絡と前記受信機から供給される電圧の低下を区別して判別し制御信号を生成する伝送電圧低下判別回路と、
所定の端末機器を第1状態と第2状態に作動させるためのラッチ型リレーと、を備え、
前記伝送電圧低下判別回路は、前記伝送線の短絡であると判別した場合は前記ラッチ型リレーを電圧低下検出前の状態にさせる制御信号を生成し、前記受信機から供給される電圧の低下であると判別した場合は前記ラッチ型リレーを電圧低下検出前の状態と異なる状態に作動させる制御信号を生成するように構成されていることを特徴とする中継器。
【請求項2】
前記伝送電圧低下判別回路は、前記電圧監視回路が前記伝送線の電圧低下を検出した後、所定時間経過しても前記伝送線の電圧が回復しない場合に、前記ラッチ型リレーを電圧低下検出前の状態と異なる状態に作動させる制御信号を生成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の中継器。
【請求項3】
前記伝送線と直列に接続され、前記電圧監視回路の出力に基づいて前記伝送線の電圧が低下した際に前記伝送線を遮断する短絡保護回路を備え、
前記短絡保護回路は、前記電圧監視回路が前記伝送線の短絡であると判別した場合も、前記受信機から供給される電圧の低下であると判別した場合も、前記伝送線を遮断しその遮断状態を維持することを特徴とする請求項1または2に記載の中継器。
【請求項4】
前記所定の端末機器は電気錠であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中継器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知システムや防犯システム等の監視システムに用いられる中継器に関し、特に伝送線の短絡機能およびリレー制御機能を備えた中継器に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内部には火災の発生を知らせるために、火災報知システムが設けられている。火災報知システムは、火災感知器や押釦スイッチを備えた火災発信機、火災報知用のベル、表示灯、排煙装置、防火シャッターなどの端末機器と、感知器や発信機からの信号を受信してベルや表示灯等を作動させるための信号を出力する受信機と、感知器からの信号を受けて火災受信機やベル、排煙装置等へ信号を送信したり端末機器と受信機との間の信号を変換したりする中継器などから構成されている。ここで、ベルや表示灯、中継器は、一般に伝送線を介して受信機から供給される電力で動作するように構成される。
【0003】
また、火災報知システムには、伝送線が短絡した際に短絡を検出して下流側の伝送線を電気的に切り離すことで、すべての感知器が動作しなくなる事態を回避できるようにするため、SCI(ショートサーキットアイソレータ)を設けているものがある。
一方、近年、オフィスや集合住宅のセキュリティを高めるためIDカードなどを用いた認証装置と電気錠とを組み合わせた防犯システムが普及している。また、火災報知システムと防犯システムを融合し、火災報知システムの中継器に電気錠が接続されているシステムもある。
【0004】
上記のような火災監視機能と電気錠によるセキュリティ機能を備えたシステムを採用した設備では、火災発生時に停電等によって受信機が動作停止してシステムがダウンするおそれがある。その際、電気錠がロック状態のままシステムがダウンしてしまうと、内部の人間の円滑な避難行動を阻害するおそれがある。そこで、かかるシステムには、システムがダウンする直前に、電気錠のロック状態を解除するフェールセーフ機能が要求されている。そのため、電気錠が中継器に接続されるシステムでは、中継器に上記のようなフェールセーフ機能を設ける必要がある。
【0005】
なお、受信機には補助電源装置(バッテリ)が設けられ停電時でも動作可能に構成されているものがあるが、停電が長時間に及ぶと電源電圧が次第に低下して伝送線を介して端末機器や中継器に供給される電圧も低下し、システムダウンに至る。
従来、火災やガスなどの感知器とセキュリティ装置とを備えたシステムにおいて、セキュリティ装置が、検知される温度や煙濃度、一酸化炭素濃度に基づいて、あらかじめ設定されている複数のセキュリティレベルのうちのいずれかを判定し、判定したセキュリティレベルが高い場合に電気錠の開錠動作を行うようにした発明が提案されている(例えば特許文献1)。また、中継器やSCIを備えた火災報知システムに関する発明としては、例えば特許文献2に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−8165号公報
【特許文献2】特開2007−323197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、セキュリティ機能を備えたシステムにおける電気錠の施錠とロック状態の解除には、一般に、ソレノイドやモータなどのアクチュエータおよび該アクチュエータに電流を流す電磁リレーが使用されている。そして、電気錠を作動させるための電磁リレーは、電源や監視システムがダウンしても状態が保持されるようにする必要がある。
【0008】
一方、本発明者らは、伝送線が短絡した際に短絡を検出して下流側(短絡した側)の伝送線を電気的に切り離して伝送線全体が機能しなくなるのを防止するSCIの機能と、伝送電圧の低下で電気錠を解錠させるフェールセーフ機能を有する中継器について検討を行なった。その結果、伝送電圧の低下でフェールセーフ機能を働かせるように構成していると、受信機が動作停止した際にのみリレーが作動して電気錠のロック状態を解除したいにもかかわらず、伝送線が短絡した際にもリレーが作動して電気錠のロック状態を解除してしまうという課題があることが明らかとなった。
【0009】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、電気錠の作動用にリレーを使用しても、伝送線が短絡した際にはリレーが作動せず受信機が動作停止した際にはリレーが作動して電気錠のロック状態を解除させることができる中継器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、
1または2以上の端末機器が接続される端子を備え、受信機に接続された伝送線を介して前記受信機から電力の供給を受けて動作し、前記端子に接続されている端末機器に対して前記伝送線を介して前記受信機から受信した信号を送信する機能を備えた中継器であって、
前記伝送線の電圧を監視する電圧監視回路と、
前記電圧監視回路の出力に基づいて前記伝送線の短絡と前記受信機から供給される電圧の低下を区別して判別し制御信号を生成する伝送電圧低下判別回路と、
所定の端末機器を第1状態と第2状態に作動させるためのラッチ型リレーと、を備え、
前記伝送電圧低下判別回路は、前記伝送線の短絡であると判別した場合は前記ラッチ型リレーを電圧低下検出前の状態にさせる制御信号を生成し、前記受信機から供給される電圧の低下であると判別した場合は前記ラッチ型リレーを電圧低下検出前の状態と異なる状態に作動させる制御信号を生成するように構成したものである。
【0011】
上記構成によれば、電気錠等の端末機器の作動用にラッチ型リレーを使用しても、伝送線が短絡した際にはリレーが作動せず、受信機が動作停止して受信機から供給される電圧が低下した際にはリレーが作動し、フェールセーフ機能が働いて端末機器を安全側の状態に変化させることができる。
【0012】
ここで、望ましくは、前記伝送電圧低下判別回路は、前記電圧監視回路が前記伝送線の電圧低下を検出した後、所定時間経過しても前記伝送線の電圧が回復しない場合に、前記ラッチ型リレーを電圧低下検出前の状態と異なる状態に作動させる制御信号を生成するように構成する。
かかる構成によれば、伝送線上にSCI(ショートサーキットアイソレータ)の機能を設けているシステムでは、伝送線が短絡してもSCIによって伝送線の電圧が回復するので、伝送線の電圧低下を検出した後、所定時間経過した時点で伝送線の電圧が回復していなければ受信機が動作停止したということであるので、ラッチ型リレーを電圧低下検出前の状態と異なる状態に作動させる制御信号を生成することによって、フェールセーフ機能が働いて端末機器を安全側の状態に変化させることができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記伝送線と直列に接続され、前記電圧監視回路の出力に基づいて前記伝送線の電圧が低下した際に前記伝送線を遮断する短絡保護回路を備え、
前記短絡保護回路は、前記電圧監視回路が前記伝送線の短絡であると判別した場合も、前記受信機から供給される電圧の低下であると判別した場合も、前記伝送線を遮断しその遮断状態を維持するようにする。
かかる構成によれば、中継器がSCI(ショートサーキットアイソレータ)の機能を有するため、伝送線の電圧低下を検出する回路を、SCI機能の回路とフェールセーフ機能の回路とで共用することができるので、中継器に簡単な回路を追加するだけで、伝送線上に設けるSCIの数を減らすことができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記所定の端末機器は電気錠であるようにする。
かかる構成によれば、受信機が動作停止した際にラッチ型リレーが作動して、フェールセーフ機能が働き電気錠のロック状態を解除させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気錠の作動用にリレーを使用しても、伝送線が短絡した際にはリレーが作動せず受信機が動作停止した際にはリレーが作動して電気錠のロック状態を解除させることができる中継器を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る中継器を適用して有効な火災報知システムの構成例を示すシステム構成図である。
図2】SCI(ショートサーキットアイソレータ)の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明に係る中継器の一実施例の概略構成を示すブロック図である。
図4】実施例の中継器の動作を示すもので、(A)は伝送線の短絡発生時のタイミングチャート、(B)は伝送電圧低下時のタイミングチャートである。
図5】他の実施例における中継器の動作を示すもので、(A)は伝送線の短絡発生時のタイミングチャート、(B)は伝送電圧低下時のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る中継器およびそれを使用した火災報知システムの一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る中継器を適用して有効な火災報知システムの構成例を示す。
図1に示す火災報知システムは、感知器や発信機からの信号を受信してベルや表示灯等を作動させるための信号を出力する火災受信機10と、該火災受信機10に接続されたループ状の伝送線20と、伝送線20の途中に設けられた複数の火災感知器31、火災発信機32、SCI40、中継器50とを備え、中継器50にベル61、排煙装置62、防火シャッター63、電気錠64などの端末機器が接続されている。
【0018】
伝送線20は2本の配線(信号線とコモン線)で構成されている。火災感知器31、SCI40、中継器50には、伝送線20を介して火災受信機10から動作電圧が供給される。図1に示すシステムでは、伝送線20が火災受信機10から見てループ状をなすように配設されているが、火災受信機10と反対側の端部に終端器が設けられ一方向の伝送線として配設されるシステムもある。
【0019】
図2にSCI40の概略構成が示されている。図2において、L1は伝送線20を構成する一方の配線(信号線)、L2は伝送線20を構成する他方の配線(コモン線)である。SCI40は、配線L2と直列をなすように設けられた一対のスイッチ素子41a,41bと、スイッチ素子41a,41bと並列に設けられたダイオード42a,42bと、配線L1の電圧を監視しスイッチ素子41a,41bのオン、オフ状態を制御する信号を生成する制御回路43と、伝送線20の配線L1からの電圧を受けて制御回路43の動作電圧を生成する定電圧回路44などを備えている。制御回路43は定電圧回路44からの電圧を監視することで配線L1の電圧を間接的に監視することができる。
【0020】
上記のような構成により、例えば図1の符号Aで示すような箇所で伝送線20上において短絡事故を発生した場合、伝送線20の配線L1の電圧が低下するため、制御回路43が短絡発生を検出して、スイッチ素子41a,41bをオフさせる。すると、火災受信機10から短絡箇所が切り離されるため、短絡箇所Aの反対側の伝送線20の配線L1の電圧が上昇し、ダイオード42aを通して電流が流れることで、SCI40を挟んで短絡箇所Aの反対側の伝送線は通信が可能な状態に復帰し、反対側の伝送線上の感知器および中継器は動作可能になり、動作を継続することができる。短絡発生から通信可能な状態への復帰までは、数ms(ミリ秒)で完了することができる。
【0021】
図2に示すように、伝送線20がループ状をなすように配設されている場合、伝送線20の反対側からも火災受信機10より電圧が供給されるため、SCI40を挟んで短絡箇所Aの反対側の伝送線上の感知器も動作可能になる。
なお、図2のSCI40においては、スイッチ素子41a,41bとしてFET(電界効果トランジスタ)を使用することができ、その場合には、FETの基体に存在する寄生ダイオードを、図2におけるダイオード42a,42bとして利用することができる。
【0022】
次に、図3を用いて、中継器50の構成および機能について説明する。
本実施例の中継器50は、図3に示すように、CPU(中央処理装置)とROMやRAMなどのメモリを内蔵しROMに格納されているプログラムに従って動作するMCU(マイクロコンピュータユニット)などからなる制御回路51と、伝送線20の配線L1からの電圧を受けて制御回路51を含む内部回路の動作電圧を生成する電源装置としての定電圧回路52と、伝送線20の配線L1の電圧を監視する伝送電圧監視回路53を備えている。伝送電圧監視回路53は例えばコンパレータあるいはAD変換回路で構成することができ、伝送電圧監視回路53の出力が制御回路51に入力されることで、伝送電圧が所定の電圧以下であるか否か判断される。
【0023】
また、本実施例の中継器50は、伝送線20を介して火災受信機10より受信した信号を当該中継器50に接続されているベル61や排煙装置62、防火シャッター63などの端末機器へ伝送する信号伝送回路としての通信インターフェース回路54、SCIと同様な一対のスイッチ素子55a,55bおよびダイオード56a,56bからなる短絡保護回路55と、電気錠64に対するフェールセーフのための信号を出力するリレー駆動回路(一対の電磁ソレノイド)57aおよび接点57bと、を備える。リレー駆動回路(一対の電磁ソレノイド)57aと接点57bとによってリレー出力回路57が構成される。本実施例では、このリレー出力回路57としてラッチングリレーが用いられている。
【0024】
なお、スイッチ素子55a,55bは、制御回路51により伝送線20の短絡が検出されると、SCIと同様にオフ状態に制御される。一方、リレー出力回路57は、制御回路51による伝送電圧の判定結果に基づいて制御されるように構成されている。この伝送線20の短絡保護機能は、省略することも可能である。本実施例の中継器50は、後に説明するように、伝送線20の短絡と伝送電圧の低下を区別して検出する機能を備えるため、伝送線20の短絡が検出された際に短絡保護回路55を働かせることで、短絡保護回路55を制御する回路を別途設けることなく、SCIの機能を付加することができ、これによって独立して設けるSCIの数を減らすことができる。
【0025】
さらに、本実施例の中継器50には、制御回路51およびリレー出力回路57による上記フェールセーフ機能を外部から有効にするか無効にするか切り替え可能な設定器58が設けられている。
本実施例の中継器50は、上記フェールセーフの機能によって、火災受信機10のバッテリが低下して動作が停止し、伝送線を介して供給される電圧が低下した際にラッチングリレーが作動して電気錠のロック状態を解除させることができる。しかも、本実施例の中継器50は、伝送線20が短絡して一時的に伝送電圧が低下した場合にはラッチングリレーが作動せず、電気錠のロック状態が解除されることはないようになっている。
【0026】
次に、制御回路51による伝送線の電圧低下時における中継器50の制御動作を、図4のタイミングチャートを用いて説明する。図4のうち(A)は伝送線において短絡事故が発生した際のもの、(B)は火災受信機10からの伝送電圧が低下した際のものである。
本実施例の中継器50は、図4(A)および(B)に示すように、伝送電圧が所定の検出レベルVthL以下に下がって電圧監視回路(コンパレータ)53の出力がハイレベルからローレベルに変化したのを制御回路51が検知(タイミングt1)してから所定時間Td1を経過しても伝送電圧監視回路(コンパレータ)53の出力がローレベルのままであれば、短絡保護回路55の制御信号を立ち下げて短絡保護回路55のスイッチ素子55a,55bをオフ状態にして、下流側の伝送線を切り離す(タイミングt2)。
【0027】
より具体的には、電圧監視回路(コンパレータ)53の出力がハイレベルからローレベルに変化した時点(t1)で制御回路51により電圧チェック要求が生成されて伝送電圧監視回路53の出力をチェックし、T1(例えば0.5ms)後に再度電圧チェック要求が生成され、2度続けて伝送電圧監視回路53の出力がローレベルであるのを確認すると、T2(例えば約1ms)後に短絡保護回路55の制御信号を立ち下げて下流側の伝送線を切り離す(タイミングt2)。
【0028】
短絡発生時には、短絡保護により伝送線を切り離された後、自局付近が短絡していなければ伝送電圧が回復して行く。そして、伝送電圧監視回路53が復帰の検出レベルVthHを上回ったことを検知して出力がローレベルからハイレベルに変化し(t3)、これを受けて制御回路51により電圧チェック要求が生成されて伝送電圧監視回路53の出力をチェックし、T1後に再度電圧チェック要求が生成され、2度続けて伝送電圧監視回路53の出力がハイレベルであるのを確認すると、伝送線で短絡が発生したと判断される。そのため、リレー制御パルスUPは生成されず、リレー出力はローレベル(電気錠:閉側)のままとされる。
【0029】
一方、短絡保護回路55の制御信号を立ち下げて短絡保護回路55のスイッチ素子55a,55bをオフ状態にして、下流側の伝送線を切り離した(タイミングt2)後、所定時間Td2を経過した時点(タイミングt4)で、図4(B)に示すように、伝送電圧監視回路(コンパレータ)53の出力が2度続けてローレベルであることが検知された場合には、伝送電圧の低下であると判断して、リレー出力回路57に対する制御信号UPを立ち上げる。これにより、リレー出力がハイレベルに変化して、ラッチングリレーが作動して、電気錠は解錠状態にされることとなる。所定時間Td2は、短絡保護回路55の動作所要時間(30ms)よりも若干長い時間に設定すればよい。
【0030】
(第2実施例)
次に、中継器50に接続される端末機器がベルのような警報器である場合における出力回路の制御方法について説明する。なお、このような機器の場合、上記実施例とは制御論理が逆であり、音響鳴動中に伝送路の短絡が発生した場合には音響鳴動を継続する一方、鳴動中に火災受信機のダウンによって伝送電圧が低下した場合には、鳴動を停止する制御が必要となる。また、ベルのような警報器の場合、上記実施例のリレーによる接点出力による制御ではなく、例えば24Vのような電圧出力のオン、オフで制御される。この電圧出力(24V)のオン、オフにラッチングリレーが使用される。
【0031】
図5には、上記のような機器が接続された中継器50における伝送電圧低下時の中継器50の制御動作のタイミングチャートの例が示されている。図5のうち(A)は伝送線において短絡事故が発生した際のもの、(B)は火災受信機10からの伝送電圧が低下した際のものである。
本実施例は、図5(A)および(B)に示すように、伝送電圧が所定の検出レベルVthL以下に下がって電圧監視回路(コンパレータ)53の出力がハイレベルからローレベルに変化したのを制御回路51が検知(タイミングt1)してから所定時間Td1を経過しても伝送電圧監視回路(コンパレータ)53の出力がローレベルのままであれば、短絡保護回路55の制御信号を立ち下げて短絡保護回路55のスイッチ素子55a,55bをオフ状態にして、下流側の伝送線を切り離す(タイミングt2)。
【0032】
音響鳴動中に短絡が発生した時には、短絡保護により伝送線を切り離された後、自局付近が短絡していなければ伝送電圧が回復して行く。そして、伝送電圧監視回路53が復帰の検出レベルVthHを上回ったことを検知して出力がローレベルからハイレベルに変化し(t3)、これを受けて制御回路51により電圧チェック要求が生成されて伝送電圧監視回路53の出力をチェックし、T1後に再度電圧チェック要求が生成され、2度続けて伝送電圧監視回路53の出力がハイレベルであるのを確認すると、伝送線で短絡が発生したと判断される。そのため、リレー制御パルスUPは生成されず、出力回路制御信号はハイレベルのままとされ、ラッチングリレーがクローズ(警報器:音響鳴動)のままとされる。
【0033】
一方、音響鳴動中に伝送電圧の低下が発生し、短絡保護回路55の制御信号を立ち下げて短絡保護回路55のスイッチ素子55a,55bをオフ状態にして、下流側の伝送線を切り離した(タイミングt2)後、所定時間Td2を経過した時点(タイミングt4)で、図5(B)に示すように、伝送電圧監視回路(コンパレータ)53の出力が2度続けてローレベルであることが検知された場合には、伝送電圧の低下であると判断して、リレー出力回路57に対する制御信号LPを立ち上げる。これにより、出力回路制御信号がローレベルに変化して、ラッチングリレーがオープン側に切り替わって、警報器は音響鳴動を停止することとなる。
【0034】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態の火災報知システムにおいては、伝送線に感知として火災感知器のみ接続されているものを示したが、火災感知器(煙感知を含む)の他に有毒ガスを検知するガス感知器が接続されていても良い。
また、上記実施形態では、フェールセーフ制御の対象となる端末機器として電気錠を例にとって説明したが、対象となる端末機器は電気錠に限定されず、防火扉など他の設備や機器であっても良い。
【0035】
さらに、上記実施形態では、本発明を、火災受信機を備えた火災報知システムに適用した場合について説明したが、本発明は火災報知システムに限定されず、防災監視システムや防犯システムなど、監視対象エリアに配設された複数の端末機器と該端末機器からの信号を受信する受信機とを備えたシステム一般に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 受信機
20 伝送線
31 火災感知器
32 発信機
40 SCI(ショートサーキットアイソレータ)
50 中継器
51 制御回路
53 伝送電圧監視回路(コンパレータ)
55 短絡保護回路
64 端末機器(電気錠)
図1
図2
図3
図4
図5