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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-1370(P2018-1370A)
(43)【公開日】2018年1月11日
(54)【発明の名称】振動低減制御装置、及びロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20171208BHJP
【FI】
   B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-134318(P2016-134318)
(22)【出願日】2016年7月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】的場 俊亮
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707BS15
3C707HS29
3C707KS23
3C707KV04
3C707KV08
3C707KX07
3C707MT05
(57)【要約】
【課題】細胞等の振動に弱い搬送対象を搬送ロボットによって搬送する場合に、ロボットアームの関節を駆動させるモータ等に起因する微弱な振動によって、細胞等がダメージを受ける可能性があった。
【解決手段】振動低減制御装置10は、ロボットアームの先端に取り付けられたエンドエフェクタの振動を取得する取得部11と、エンドエフェクタを加振するアクチュエータ12と、取得部11によって取得された振動に応じて、エンドエフェクタの振動が低減するようにアクチュエータ12を制御する制御部13と、を備える。このようにして、ロボットアームからエンドエフェクタに伝わる振動を、エンドエフェクタにおいて発生させた振動によって打ち消すことにより、例えば、搬送時に搬送対象に対してダメージを与えないようにすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端に取り付けられたエンドエフェクタの振動を取得する取得部と、
前記エンドエフェクタを加振するアクチュエータと、
前記取得部によって取得された振動に応じて、前記エンドエフェクタの振動が低減するように前記アクチュエータを制御する制御部と、を備えた振動低減制御装置。
【請求項2】
前記制御部による前記アクチュエータの制御によって、前記エンドエフェクタの100Hz以上の周波数の振動が低減される、請求項1記載の振動低減制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、エンドエフェクタの振動を検知するエラーセンサであり、
前記エンドエフェクタに伝わる振動を検知するリファレンスセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記リファレンスセンサによって検知された振動をも用いて前記アクチュエータを制御する、請求項1または請求項2記載の振動低減制御装置。
【請求項4】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に取り付けられたエンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタの振動が低減するように制御する、請求項1から請求項3のいずれか記載の振動低減制御装置と、を備えたロボット。
【請求項5】
前記ロボットアームと前記エンドエフェクタとは、ダンパを介して接続されている、請求項4記載のロボット。
【請求項6】
前記エンドエフェクタは、前記ロボットアームに固定される固定部と、作業を行う作業部と、を備えており、
前記固定部と前記作業部とは、ダンパを介して接続されている、請求項4記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのエンドエフェクタの振動を低減する振動低減制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たわみや振動を低減することができるロボットハンドが知られている(特許文献1参照)。そのロボットハンドでは、ロボットハンドの上下面に一対の圧電素子アクチュエータが、長さ方向に等間隔に複数設けられており、その複数の圧電素子アクチュエータを用いることによって、たわみや振動を検知し、また、その圧電素子アクチュエータに電圧を印加することにより、たわみや振動を低減することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−73803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたロボットハンドにより、巨大なガラス基板等に生じうるたわみや振動を低減することはできる。一方、ロボットアームの関節で用いられているモータ等に起因してロボットアームの手先部分に生じる微小な振動を低減させることはできないという問題があった。そのような振動は、100〜1000Hz程度の周波数の微小な振動であり、従来、低減の対象とはなっていなかった。しかしながら、近年、ロボットアームの手先部分の微小な振動も低減したいという課題がある。例えば、医療用の細胞や薬品等が搬送ロボットによって搬送される場合には、微小な振動が細胞や薬品等に悪影響を及ぼす可能性がある。より具体的には、細胞を培養しているシャーレを搬送ロボットによって搬送する際に、ロボットアームの先端に取り付けられたハンドの振動がシャーレに伝わり、シャーレ内の水面が揺れることによって細胞にストレスが掛かり、細胞が死滅する恐れがある。
一般的に言えば、ロボットアームの先端に取り付けられたエンドエフェクタにおける振動を低減したいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記事情に応じてなされたものであり、ロボットアームの先端に取り付けられたエンドエフェクタにおける振動を低減させることができる振動低減制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による振動低減制御装置は、ロボットアームの先端に取り付けられたエンドエフェクタの振動を取得する取得部と、エンドエフェクタを加振するアクチュエータと、取得部によって取得された振動に応じて、エンドエフェクタの振動が低減するようにアクチュエータを制御する制御部と、を備えたものである。
このような構成により、ロボットアームからエンドエフェクタに伝わる微小な振動を、エンドエフェクタをアクチュエータで加振することによって低減させることができる。その結果、例えば、エンドエフェクタによって細胞等を搬送する場合であっても、振動に起因する悪影響を細胞等に与えないようにすることができる。
【0007】
また、本発明による振動低減制御装置では、制御部によるアクチュエータの制御によって、エンドエフェクタの100Hz以上の周波数の振動が低減されてもよい。
このような構成により、100Hz以上といった、今まで低減の対象となっていなかった比較的高い周波数の振動を低減することができるようになる。
【0008】
また、本発明による振動低減制御装置では、取得部は、エンドエフェクタの振動を検知するエラーセンサであり、エンドエフェクタに伝わる振動を検知するリファレンスセンサをさらに備え、制御部は、リファレンスセンサによって検知された振動をも用いてアクチュエータを制御してもよい。
このような構成により、リファレンスセンサによって検知された振動をも用いてエンドエフェクタにおける振動を低減させることにより、より精度の高い振動の低減が可能となる。
【0009】
また、本発明によるロボットは、ロボットアームと、ロボットアームの先端に取り付けられたエンドエフェクタと、エンドエフェクタの振動が低減するように制御する、振動低減制御装置と、を備えたものである。
このような構成により、ロボットアームからエンドエフェクタに伝わる微小な振動を、エンドエフェクタをアクチュエータで加振することによって低減させることができる。
【0010】
また、本発明によるロボットでは、ロボットアームとエンドエフェクタとは、ダンパを介して接続されていてもよい。
このような構成により、例えば、エンドエフェクタに伝わる振動成分をダンパによって減衰させることができると共に、振動低減制御装置によってアクティブに振動を減衰させたことに起因する、高い周波数成分のより小さい振幅の振動もダンパで抑制することができる。
【0011】
また、本発明によるロボットでは、エンドエフェクタは、ロボットアームに固定される固定部と、作業を行う作業部と、を備えており、固定部と作業部とは、ダンパを介して接続されていてもよい。
このような構成により、例えば、作業部に伝わる振動成分をダンパによって減衰させることができると共に、振動低減制御装置によってアクティブに振動を減衰させたことに起因する、高い周波数成分のより小さい振幅の振動もダンパで抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による振動低減制御装置等によれば、ロボットアームからエンドエフェクタに伝わる微小な振動を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態による振動低減制御装置の構成を示すブロック図
図2】同実施の形態によるロボットの構成を示す模式図
図3A】同実施の形態におけるエンドエフェクタを示す平面図
図3B】同実施の形態におけるエンドエフェクタを示す底面図
図4】同実施の形態における振動の低減について説明するための図
図5A】同実施の形態におけるエンドエフェクタと取付部の他の一例を示す平面図
図5B】同実施の形態におけるエンドエフェクタの他の一例を示す平面図
図6】同実施の形態による振動低減制御装置の構成の他の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による振動低減制御装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるロボットは、ロボットアームの先端に取り付けられたエンドエフェクタにおける振動を低減させる振動低減制御装置を備えたものである。
【0015】
図1は、本実施の形態による振動低減制御装置10の構成を示すブロック図であり、図2は、振動低減制御装置10を備えたロボット1の外観の一例を示す模式図であり、図3Aは、ロボットアーム2の先端に取り付けられたエンドエフェクタ24の平面図であり、図3Bは、エンドエフェクタ24の底面図である。
【0016】
本実施の形態において、ロボット1は、ロボットアーム2と、エンドエフェクタ24と、振動低減制御装置10とを備える。ロボット1は、例えば、搬送ロボット、溶接ロボット、組立ロボット、塗装ロボット等であってもよく、または、その他の用途のロボットであってもよい。本実施の形態では、ロボット1が搬送ロボットである場合について主に説明する。また、本実施の形態では、ロボット1が水平多関節ロボットである場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。ロボット1は、例えば、垂直多関節ロボットであってもよく、その他の構成のロボットであってもよい。
【0017】
ロボットアーム2は、直列に接続された複数のアーム21,22と、先端のアーム22に接続された取付部23とを備える。なお、複数のアーム21,22と、取付部23とは、関節によって連結されている。また、アーム21の基端側は、関節によって基台41に回転可能に連結されている。各関節は、例えば、モータによって駆動されてもよい。また、そのモータは、減速機を介して関節を駆動してもよい。各モータは、サーボコントローラによって制御されてもよい。また、ロボット制御装置がサーボコントローラを制御することによって、ロボット1が、所望の動作を行ってもよい。なお、本実施の形態では、ロボットアーム2が2個のアーム21,22と、取付部23とを有する場合について説明するが、そうでなくてもよい。ロボットアーム2の有するアームの個数や軸数は問わない。
【0018】
ロボットアーム2の先端には、エンドエフェクタ24が取り付けられている。そのエンドエフェクタ24は、ロボットアーム2が有する取付部23に取り付けられる。本実施の形態では、そのエンドエフェクタ24が搬送用のハンドである場合について主に説明するが、エンドエフェクタ24は、それ以外のものであってもよい。エンドエフェクタ24は、例えば、把持機構を有するもの、溶接用のもの、塗装用のものなどであってもよい。
【0019】
振動低減制御装置10は、取得部11と、アクチュエータ12と、制御部13とを備える。
取得部11は、ロボットアーム2の先端に取り付けられたエンドエフェクタ24の振動を取得する。取得部11は、エンドエフェクタ24の振動を検知するセンサであってもよい。このセンサは、制御点の近傍における振動を検知するものであってもよい。その場合には、制御点における誤差としての振動が検知されることになる。ここでは、エンドエフェクタ24の振動を検知するセンサをエラーセンサと呼ぶことにする。なお、制御点とは、振動を低減したい位置のことである。例えば、細胞の入ったシャーレをエンドエフェクタ24によって搬送する場合には、そのシャーレの保持される位置が制御点であってもよい。取得部11がエラーセンサである場合には、制御部13は、取得部11によって検知された振動が小さくなるように制御を行うことになる。なお、取得部11は、エンドエフェクタ24以外の振動を検知するセンサ(以下、エラーセンサと区別するため、「リファレンスセンサ」と呼ぶ)と、そのリファレンスセンサによって検知された振動を用いて、エンドエフェクタ24の振動を推定する推定手段とを備えていてもよい。その推定手段は、リファレンスセンサの位置で取得された振動と、あらかじめ用意されたモデルとを用いて、エンドエフェクタ24の振動を推定する。なお、推定手段は、例えば、制御点の位置における振動を推定してもよく、アクチュエータ12の位置における振動を推定してもよく、または、エンドエフェクタ24のその他の位置の振動を推定してもよい。本実施の形態では、取得部11がエラーセンサである場合について主に説明し、取得部11がリファレンスセンサ等を有する場合については後述する。そのため、以下の説明において特に明記しない限りは、取得部11は、エラーセンサであるとする。
【0020】
取得部11は、エンドエフェクタ24の振動を検知できる位置に取り付けられるものとする。取得部11は、図3Bで示されるように、エンドエフェクタ24に取り付けられることが好適である。取得部11がエンドエフェクタ24に取り付けられる場合には、エンドエフェクタ24の周縁部ではない位置、例えば、中心付近などに取り付けられることが好適である。また、取得部11は、例えば、制御点の近傍に設けられてもよい。制御点における振動を適切に取得できるようにするためである。また、エンドエフェクタ24が板状の部材である場合に、取得部11は、アクチュエータ12の裏面側の位置に設けられてもよい。すなわち、取得部11とアクチュエータ12とは、エンドエフェクタ24である板状の部材を介して対向する位置に設けられてもよい。本実施の形態では、その場合について主に説明する。なお、取得部11は、通常、アクチュエータ12の発生させた振動も含む振動を検知することになる。すなわち、取得部11は、外乱としての振動と、アクチュエータ12の発生させた振動との両方の成分を含む振動を検知することになる。また、取得部11は、例えば、圧電素子を用いて振動を検知するセンサであってもよく、加速度センサであってもよく、磁界を用いたセンサであってもよく、振動を検知できるその他のセンサであってもよい。磁界を用いたセンサは、例えば、被測定物の表面に渦電流を発生させ、距離に比例した磁束密度の変化を検出するものであってもよい。その被測定物の表面は、金属であるものとする。なお、取得部11は、1次元方向の振動を検知するものであってもよく、2次元方向、3次元方向の振動を検知するものであってもよい。取得部11が1次元方向の振動を検知するものである場合には、取得部11が振動を検知可能な方向を、振動を低減したい方向にすることが好適である。また、取得部11は、液体コンデンサを用いたものであってもよい。液体コンデンサは、液状の誘電体を用いたコンデンサである。その液体コンデンサは、振動に応じた揺れによって内部の液状の誘電体が移動することにより、容量が変化するものであることが好適である。なお、その容量の変化は、その液体コンデンサに印加した電圧の変化によって検知できる。したがって、取得部11は、その液体コンデンサに印加した電圧の変化を検知することによって、振動を検知してもよい。また、取得部11は、エンドエフェクタ24等の振動を適切に検知できるように取り付けられることが好適である。そのセンサをエンドエフェクタ24等に取り付ける方法は、具体的には、ネジ止めや、クランプによる固定、接着剤による接着、蝋付け、マグネットによる磁着等であってもよい。なお、より広い周波数帯域の振動や、より大きい振動に対応できる観点からは、ネジやクランプによってセンサを取り付けることが好適である。
【0021】
アクチュエータ12は、エンドエフェクタ24を加振する。このアクチュエータ12によるエンドエフェクタ24の加振によって、エンドエフェクタ24における振動が低減されることになる。アクチュエータ12は、エンドエフェクタ24を振動させるものであるため、エンドエフェクタ24に取り付けられることが好適である。アクチュエータ12も、エンドエフェクタ24の周縁部ではない位置、例えば、中心付近などに取り付けられることが好適である。エンドエフェクタ24を適切に加振できるようにするためである。また、アクチュエータ12は、通常、1次元方向について振動を発生させるものである。そのアクチュエータ12が振動を発生させる方向が、振動を低減させたい方向となるようにアクチュエータ12を取り付けることが好適である。アクチュエータ12は、例えば、圧電素子を用いてエンドエフェクタ24を加振するものであってもよく、スピーカと同様に、コイルと磁石とを用いてエンドエフェクタ24を加振するものであってもよく、その他の機構によってエンドエフェクタ24を加振するものであってもよい。なお、コイルと磁石とを用いたアクチュエータ12は、例えば、振動板(コーン紙)のないスピーカと同様の構造であってもよく、骨伝導スピーカと同様の構造であってもよい。すなわち、電気信号によって駆動される部材(例えば、コイルであってもよく、磁石であってもよい)の振動が、エンドエフェクタ24に伝わるようになっていてもよい。アクチュエータ12の個数は、1個であってもよく、複数であってもよい。なお、ロボット1は、微小な振動を低減したいものであり、通常、それほど大きくないものである。したがって、エンドエフェクタ24もあまり大きくないと考えられるため、通常、エンドエフェクタ24に取り付けられるアクチュエータ12は1個である。また、ロボットアーム2やエンドエフェクタ24を伝わる低減対象の振動の周波数は、100〜1000Hz程度である。したがって、その振動の波長は、ロボットアーム2等の幅と比較すれば十分大きなものであり、全体として見れば、ロボットアーム2等は1次元に延びているものとみなすことができる。したがって、その1次元に延びるリンク列の基端側から伝わる振動は、ダクトにおけるアクティブノイズキャンセル等と同様に、1個のアクチュエータ12によって適切に低減できると考えられる。アクチュエータ12をエンドエフェクタ24に取り付ける方法も、ネジ止めや、クランプによる固定、接着剤による接着、蝋付け、マグネットによる磁着等であってもよい。なお、より広い周波数帯域の振動や、より大きな振幅の振動をエンドエフェクタ24に伝えることができる観点からは、ネジやクランプによってアクチュエータ12を取り付けることが好適である。
【0022】
制御部13は、取得部11によって取得された振動に応じて、エンドエフェクタ24の振動が低減するようにアクチュエータ12を制御する。この制御は、いわゆる音声のアクティブノイズキャンセルと同様の手法によって行われてもよい。制御部13は、例えば、アクチュエータ12によって発生される振動の大きさ、周波数、位相の少なくとも一つを制御してもよい。制御部13は、通常、それらのすべてを制御するものである。制御部13は、例えば、取得部11によって検知された外乱としての振動の逆位相の振動を、アクチュエータ12によって発生させるようにする制御を行ってもよい。なお、取得部11が検知した振動にはアクチュエータ12の発生させた加振成分も含まれるため、制御部13は、検知された振動から加振成分を除去した外乱成分を用いて、振動を低減させる制御を行ってもよい。制御部13は、例えば、適応制御を行ってもよく、または、その他の制御を行ってもよい。また、制御部13による制御は、通常、フィードバック制御である。すなわち、制御部13は、取得部11によって検知された振動が小さくなるように制御を行ってもよい。ここでは、フィードバック制御が行われる場合について主に説明し、フィードフォワード制御が行われる場合については後述する。適応制御によって振動を低減させる場合には、制御部13は、例えば、取得部11によって取得された振動の情報から、振動の周波数と位相と大きさを解析する適応フィルタと、解析した周波数、大きさの逆位相成分の振動を発生させるようにアクチュエータ12を制御するコントローラとを備えていてもよい。制御部13による制御によって、例えば、100Hz以上の周波数の振動が低減されてもよい。また、その制御によって、例えば、1000Hz以下の周波数の振動が低減されてもよい。100Hz以上、1000Hz以下の振動が低減されるように制御が行われる場合には、例えば、取得部11やアクチュエータ12は、それらの周波数帯域の振動の取得や、加振を行うことができるものであることが好適である。なお、結果として、取得部11によって取得された振動を用いてエンドエフェクタ24の振動が低減されるのであれば、制御部13による制御の方法は問わない。
【0023】
通常、エンドエフェクタ24の有する構成要素に電源を供給するためのパワーラインがロボットアーム2に設けられている。したがって、振動低減制御装置10の各構成要素は、例えば、そのパワーラインからの電源を用いて動作してもよい。また、図3A図3Bでは明記していないが、取得部11と制御部13とは、取得部11によって取得された振動に関する信号を制御部13が受け取ることができるようにするため、電気的に接続されているものとする。
【0024】
ここで、図4を用いて、搬送対象の振動を低減する方法について説明する。図4(a)で示されるように、振動低減の制御を行わない場合には、ロボットアーム2の振動がエンドエフェクタ24に伝わり、そのエンドエフェクタ24の振動が、エンドエフェクタ24によって搬送されている搬送対象に伝わることになる。一方、図4(b)で示されるように、振動低減の制御を行った場合には、ロボットアーム2の振動がエンドエフェクタ24に伝わるが、エンドエフェクタ24において、その振動が検知され、その振動を打ち消す逆位相の加振成分が加えられることによって、結果として、エンドエフェクタ24における振動が低減されることになる。したがって、エンドエフェクタ24によって搬送されている搬送対象における振動が低減されることになり、例えば、細胞や薄いウェハなどの振動に弱いものを搬送している場合であっても、搬送対象にダメージを与えないように搬送することが可能となる。
【0025】
以上のように、本実施の形態によるロボット1によれば、ロボットアーム2の関節を駆動するモータ等に起因するエンドエフェクタ24の振動を、エンドエフェクタ24をアクチュエータ12で加振することによって低減することができる。その結果、例えば、振動による影響を受けやすいものを搬送している場合であっても、その搬送対象に与えるダメージを低減することができる。また、100Hz以上などの、機械的に見て比較的高い周波数の振動を低減させることができる。また、例えば、1個のアクチュエータ12を用いて振動を低減する場合には、小型のエンドエフェクタ24にも適用することができる。
【0026】
なお、エンドエフェクタ24を取付部23に取り付ける際に、図5Aで示されるように、ダンパ31を介して取り付けてもよい。すなわち、エンドエフェクタ24は、ダンパ31を介して、ロボットアーム2に接続されてもよい。ダンパ31は、ロボットアーム2からエンドエフェクタ24に伝わる振動の少なくとも一部を吸収できるものである。ダンパ31は、例えば、ゴムやスポンジ、ウレタンなどの弾性部材であってもよく、振動を低減可能なその他の機構等を有するものであってもよい。ダンパ31は、例えば、速度に対して抵抗となるものであってもよい。ロボット1がダンパ31を有することによって、例えば、ロボットアーム2からエンドエフェクタ24に伝わる振動成分を低減することができる。また、振動低減制御装置10によってアクティブに振動を減衰させたことに起因して、高い周波数成分のより小さい振幅の振動が発生しうるが、その振動もダンパ31によって抑制することができる。したがって、ダンパ31は、機械的なローパスフィルタであると考えることもできる。
【0027】
また、エンドエフェクタ24は、図5Bで示されるように、ロボットアーム2に固定される固定部24aと、作業を行う作業部24bとを有していてもよい。作業部24bは、固定部24aに接続されており、エンドエフェクタ24が実行する作業を行う部分であり、例えば、搬送対象が載置される部分であってもよく、搬送対象を把持する部分であってもよく、溶接トーチであってもよく、塗装手段(例えば、スプレーガン等)であってもよく、その他の作業を行うものであってもよい。図5Bでは、作業部24bが把持部である場合について示している。その固定部24aと作業部24bとは、図5Bで示されるように、ダンパ32を介して接続されていてもよい。すなわち、エンドエフェクタ24は、固定部24aと、作業部24bと、両者の間に設けられたダンパ32とを有していてもよい。ダンパ32は、固定部24aから作業部24bに伝わる振動の少なくとも一部を吸収できるものである。ダンパ32は、上述のダンパ31と同様のものであり、その説明を省略する。なお、取得部11及びアクチュエータ12は、図5Bで示されるように固定部24aに取り付けられてもよく、または、作業部24bに取り付けられてもよい。
【0028】
また、本実施の形態では、振動低減制御装置10の各構成要素がエンドエフェクタ24に設けられている場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、振動低減制御装置10の制御部13は、ロボットアーム2に設けられていてもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、エンドエフェクタ24が取付部23に取り付けられる場合について説明したが、そうでなくてもよい。エンドエフェクタ24は、ロボットアーム2のアームに直接、取り付けられてもよい。
【0030】
ここで、取得部11がリファレンスセンサと推定手段とを有する場合について簡単に説明する。リファレンスセンサは、エラーセンサの取付位置よりも、ロボット1の基端側に取り付けられることが好適である。エンドエフェクタ24に伝わる外乱としての振動を適切に検知できると共に、アクチュエータ12の発生させた振動を検知しないようにするためである。そのように、リファレンスセンサは、通常、アクチュエータ12の発生させた振動を含まない振動を検知することになる。リファレンスセンサは、例えば、取付部23に取り付けられてもよく、それ以外のロボットアーム2の位置に取り付けられてもよい。推定手段は、例えば、リファレンスセンサの位置から推定位置までの振動の伝達経路のモデルを用いて、振動の推定を行ってもよい。リファレンスセンサが取付部23等に取り付けられる場合には、周縁部ではない位置、例えば、中心付近などに取り付けられることが好適である。なお、リファレンスセンサは、取付位置が異なる以外は、上述のエラーセンサと同様のものであり、その詳細な説明を省略する。また、取得部11がリファレンスセンサを有する場合には、制御部13は、通常、フィードフォワード制御を行うことになる。すなわち、制御部13は、推定手段によって推定された振動を用いて、制御点の振動が低減されるように制御を行うものとする。その制御も、音声のアクティブノイズキャンセルと同様の手法によって行われてもよい。なお、制御に用いられる振動が、エラーセンサによって検知されたものか、推定手段によって推定されたものかが違う以外は、制御部13による制御は、上述の制御と同様のものであってもよい。すなわち、フィードフォワード制御を行う場合であっても、制御部13は、例えば、適応制御を行ってもよく、100〜1000Hzの振動を低減する制御を行ってもよい。
【0031】
また、本実施の形態では、エンドエフェクタ24の振動を低減させる制御のために、エラーセンサで検知された振動を用いる場合や、リファレンスセンサで検知された振動を用いる場合について説明したが、その制御のため、両方を用いるようにしてもよい。すなわち、取得部11が、エラーセンサである場合に、取得部11とは別のリファレンスセンサによって検知された振動をも用いて制御が行われてもよい。図6は、リファレンスセンサ14によって検知された振動も用いてエンドエフェクタ24の振動を低減させる制御を行う振動低減制御装置20の構成を示すブロック図である。図6において、振動低減制御装置20は、取得部11と、アクチュエータ12と、リファレンスセンサ14と、制御部15とを備える。取得部11及びアクチュエータ12は、上記説明と同様のものである。なお、図6において、取得部11は、エラーセンサであるとする。
【0032】
リファレンスセンサ14は、エンドエフェクタ24に伝わる振動を検知するセンサである。このリファレンスセンサ14は、上述のリファレンスセンサと同様のものであり、その説明を省略する。
【0033】
制御部15は、取得部11によって検知された振動と、リファレンスセンサ14によって検知された振動とを用いて、エンドエフェクタ24の振動が低減するようにアクチュエータ12を制御する。この制御も、音声のアクティブノイズキャンセルと同様の手法によって行われてもよい。その場合には、取得部11は、エラー信号を検知するものとなり、リファレンスセンサ14は、リファレンス信号を検知するものとなる。また、この制御は、フィードフォワード制御であってもよく、または、そうでなくてもよい。制御部15は、リファレンスセンサ14によって取得された振動を用いて、制御点での振動を推定し、その推定した振動を用いて、取得部11で取得された振動が小さくなるように制御を行ってもよい。なお、2個のセンサによって検知された振動の信号を用いる以外は、制御部15は、制御部13と同様のものであり、その説明を省略する。
【0034】
また、例えば、振動を低減する機能を有しないロボットに本実施の形態による振動低減制御装置10,20を後付けで装着するようにしてもよい。そのようにすることで、装着前よりも、ロボットアーム2の先端に取り付けられたエンドエフェクタ24の振動が低減されることになる。
【0035】
また、上述のように、エンドエフェクタ24は、搬送対象の載置されるハンド以外のものであってもよい。例えば、搬送対象を把持する把持部を有するハンドや、溶接のための溶接トーチを有するエンドエフェクタ、組立のための作業を行うエンドエフェクタ、塗装のための作業を行うエンドエフェクタ等であってもよい。
【0036】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0039】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0040】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現されうる。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0041】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上より、本発明による振動低減制御装置等によれば、エンドエフェクタの振動を低減できるという効果が得られ、例えば、振動に弱いものを搬送する搬送ロボットにおけるハンドの振動を低減させる装置等として有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 ロボット
2 ロボットアーム
10、20 振動低減制御装置
11 取得部
12 アクチュエータ
13、15 制御部
14 リファレンスセンサ
24 エンドエフェクタ
24a 固定部
24b 作業部
31、32 ダンパ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6