より広角方向では、広角方向中の所定広角方向でのレドーム部材12のビーム透過率がほぼ最適化されるように、狭角方向でのレドーム部材12の厚さより大きい一定値D’に設定されており、(3)狭角方向でのレドーム部材12のより小さい一定値Dである厚さと、広角方向でのレドーム部材12のより大きい一定値D’である厚さと、の間で段差状に変化する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0025】
(第1実施形態の平面アンテナ装置)
第1実施形態の平面アンテナ装置の構成を
図1に示す。
図1の中段には、第1の具体例として、平面アンテナ装置1の第1の透視平面図を示す。
図1の下段には、第2の具体例として、平面アンテナ装置1の第2の透視平面図を示す。
図1の上段には、平面アンテナ装置1の第1、2の透視平面図について、平面アンテナ装置1のA−A断面図を示す。
【0026】
平面アンテナ装置1は、平面アンテナ素子111が形成されるアンテナ基板11と、平面アンテナ素子111を覆うレドーム部材12と、を備える。平面アンテナ装置1の第1の透視平面図では、平面アンテナ素子111は、単体アンテナ素子である。平面アンテナ装置1の第2の透視平面図では、平面アンテナ素子111は、アンテナアレイであり、例えば、アレイ中央に配置される給電回路112により給電される。
【0027】
レドーム部材12の厚さは、平面アンテナ素子111から見て所定方向θ
Sより狭角方向では、レドーム部材12での平面アンテナ素子111の励振波長λ
gの約1/2(半波長型レドーム部材の場合)又は約1/4(サンドイッチ型レドーム部材の場合)である一定値Dである。ここで、サンドイッチ型レドーム部材の場合は、上述の約λ
g/4の厚さを有するコア部材をスキン部材で挟まれている。
【0028】
レドーム部材12の厚さは、平面アンテナ素子111から見て所定方向θ
Sより広角方向では、広角方向中の所定広角方向でのレドーム部材12のビーム透過率がほぼ最適化されるように、狭角方向でのレドーム部材12の厚さより大きい一定値D’に設定されている。ここで、上述のD’については、
図2、3を用いて説明する。
【0029】
レドーム部材12の厚さは、狭角方向でのレドーム部材12のより小さい一定値Dである厚さと、広角方向でのレドーム部材12のより大きい一定値D’である厚さと、の間で段差121を伴って変化する。ここで、平面アンテナ装置1の第1の透視平面図では、段差121は、単体アンテナ素子を囲むように単体アンテナ素子の周囲に形成されている。そして、平面アンテナ装置1の第2の透視平面図では、段差121は、アンテナアレイに沿ってアンテナアレイの外側に形成されている。
【0030】
本開示のレドーム部材の厚さの計算方法を
図2に示す。平面アンテナ素子111から見た指向方向θにおいて、つまり、レドーム部材12における入射角θにおいて、レドーム部材12での電波の反射量は減少することが望ましい。
【0031】
ここで、レドーム部材12での反射波の弱干渉の条件は、2D(θ)cosφ=mλ
gである。ただし、φはレドーム部材12における屈折角であり、mは1などの整数であり、m=1は半波長型レドーム部材の場合に対応する。そして、レドーム部材12でのスネルの屈折の法則は、sinθ/sinφ=n=√ε
rである。ただし、nはレドーム部材12の屈折率であり、ε
rはレドーム部材12の比誘電率である。
【0032】
よって、レドーム部材12での入射角θに対するレドーム厚さD(θ)は、mλ
g/2√(1−(sinθ/√ε
r)
2)に設計されることが望ましい。しかし、レドーム部材12の設計及び製造を容易にするために、レドーム部材12を曲面加工するよりも、段差121を形成することが望ましい。
【0033】
本開示のレドーム部材の厚さの設計例を
図3に示す。
図3の各段では、
図2に示した計算値は同様であるが、
図1に示した段差の設計値は異なっている。
【0034】
図3の上段では、レドーム部材12の厚さは、平面アンテナ素子111から見て所定方向θ
S(本例では、≒70°)より狭角方向では、レドーム部材12での平面アンテナ素子111の励振波長λ
gの約1/2である一定値Dである。そして、レドーム部材12の厚さは、平面アンテナ素子111から見て所定方向θ
Sより広角方向では、広角方向中の所定広角方向(本例では、≒70°)でのレドーム部材12の厚さの計算値に等しい一定値D’に設定されている。よって、狭角方向と比べて広角方向の方に重点を置きつつ、レドーム部材12の設計及び製造を容易にすることができる。
【0035】
図3の中段では、レドーム部材12の厚さは、平面アンテナ素子111から見て所定方向θ
S(本例では、≒45°)より狭角方向では、レドーム部材12での平面アンテナ素子111の励振波長λ
gの約1/2である一定値Dである。そして、レドーム部材12の厚さは、平面アンテナ素子111から見て所定方向θ
Sより広角方向では、広角方向中の所定広角方向(本例では、≒70°)でのレドーム部材12の厚さの計算値に等しい一定値D’に設定されている。よって、狭角方向及び広角方向に等しく重点を置きつつ、レドーム部材12の設計及び製造を容易にすることができる。
【0036】
図3の下段では、レドーム部材12の厚さは、平面アンテナ素子111から見て所定方向θ
S(本例では、≒45°)より狭角方向では、レドーム部材12での平面アンテナ素子111の励振波長λ
gの約1/2である一定値Dである。そして、レドーム部材12の厚さは、平面アンテナ素子111から見て所定方向θ
Sより広角方向かつ所定方向θ
S’ (本例では、≒70°)より狭角方向では、この角度範囲中の所定広角方向(本例では、≒45°)でのレドーム部材12の厚さの計算値に等しい一定値D’に設定されている。さらに、レドーム部材12の厚さは、平面アンテナ素子111から見て所定方向θ
S’より広角方向では、広角方向中の所定広角方向(本例では、≒70°)でのレドーム部材12の厚さの計算値に等しい一定値D”に設定されている。よって、
図3の上段及び中段と比べて、レドーム部材12の設計及び製造を複雑にするものの、狭角方向及び広角方向に等しく重点をさらに置くことができる。
【0037】
よって、単体の平面アンテナ素子111が形成される平面アンテナ装置1において、レドーム部材12の設計及び製造を容易にしつつ、平面アンテナ素子111をレドーム部材12で覆うときでも、平面アンテナ装置1の指向性を広角方向まで広げることができる。
【0038】
ここで、レドーム部材12の断面形状を段差形状にすれば、レドーム部材12の設計及び製造を容易にできるが、ビーム透過率が必ずしも最適化されないビーム入射角θが存在する。そこで、アンテナ基板11とレドーム部材12との間の距離d
ARは、アンテナ基板11とレドーム部材12との間のビームの反復反射に起因する、平面アンテナ素子111のビーム指向性のリップルがほぼ発生しないように、設定されている。そして、平面アンテナ素子111と段差121との間のアンテナ基板11の面内方向の距離は、d
ARsinθ
Sに設定されている。ここで、上述のd
ARについては、
図4、5を用いて説明する。
【0039】
本開示のアンテナ基板−レドーム部材間距離の設計原理を
図4に示す。
図4には、アンテナ基板11とレドーム部材12との間のビームの反復反射に起因する、レドーム部材12における再放射点122に関連して、従来技術(自社出願の特開2015−061231号公報)の基板平面のアンテナ素子のモノパルス測角方式を示す。
【0040】
ここで、アンテナ基板11とレドーム部材12との間のビームの反復反射に起因して、レドーム部材12における放射点(平面アンテナ素子111と放射点との間のアンテナ基板11の面内方向の距離d
ARsinθ)のみならず、レドーム部材12における再放射点122(平面アンテナ素子111と再放射点122との間のアンテナ基板11の面内方向の距離d
OR=3d
ARsinθ)が生じる。すると、平面アンテナ素子111のビーム指向性は、再放射点122を回折源とする回折波の影響を受ける。よって、平面アンテナ素子111のビーム指向性は、リップルを生じ得る(例えば、
図6の第3欄を参照。)。
【0041】
そこで、発明者は、自社出願の特開2015−061231号公報を参照して、再放射点122を回折源とする回折波の影響が、平面アンテナ素子111と再放射点122との間のアンテナ基板11の面内方向の距離d
ORに応じて、相違することに着目した。
【0042】
自社出願の従来技術では、
図4の上段に示したように、平面アンテナ素子と基板平面端部との間の距離が「短距離」のときには、回折波の自由空間での波長λ
0が平面アンテナ素子と基板平面端部との間の距離(例えば、1.2λ
0)と比べて同等程度である。よって、モノパルス測角方式において、受信信号の位相差は、反射波の到来角に対して、長周期を有するリップルを生じるのみであり、ほとんど単調に変化すると考えてもよい。
【0043】
本開示では、
図4の上段に示した自社出願の従来技術を参照して、平面アンテナ素子111と再放射点122との間のアンテナ基板11の面内方向の距離d
ORが「短距離」のときには、回折波の自由空間での波長λ
0が上述の距離d
ORと比べて同等程度である。よって、平面アンテナ素子111のビーム指向性は、リップルをほぼ生じないと考えてもよい。
【0044】
自社出願の従来技術では、
図4の下段に示したように、平面アンテナ素子と基板平面端部との間の距離が「長距離」のときには、回折波の振幅が平面アンテナ素子と基板平面端部との間の距離(例えば、8λ
0)において十分に減衰する。よって、モノパルス測角方式において、受信信号の位相差は、反射波の到来角に対して、小振幅を有するリップルを生じるのみであり、ほとんど単調に変化すると考えてもよい。
【0045】
本開示では、
図4の下段に示した自社出願の従来技術を参照して、平面アンテナ素子111と再放射点122との間のアンテナ基板11の面内方向の距離d
ORが「長距離」のときには、回折波の振幅が上述の距離d
ORにおいて十分に減衰する。よって、平面アンテナ素子111のビーム指向性は、リップルをほぼ生じないと考えてもよい。
【0046】
自社出願の従来技術では、
図4の中段に示したように、平面アンテナ素子と基板平面端部との間の距離が「中距離」のときには、回折波の自由空間での波長λ
0が平面アンテナ素子と基板平面端部との間の距離(例えば、4λ
0)と比べて同等程度ではなく、回折波の振幅が平面アンテナ素子と基板平面端部との間の距離(例えば、4λ
0)において十分に減衰しない。よって、モノパルス測角方式において、受信信号の位相差は、反射波の到来角に対して、中程度の周期及び有限の振幅を有するリップルを生じるため、ほとんど単調に変化すると考えることができない。
【0047】
本開示では、
図4の中段に示した自社出願の従来技術を参照して、平面アンテナ素子111と再放射点122との間のアンテナ基板11の面内方向の距離d
ORが「中距離」のときには、回折波の自由空間での波長λ
0が上述の距離d
ORと比べて同等程度ではなく、回折波の振幅が上述の距離d
ORにおいて十分に減衰しない。よって、平面アンテナ素子111のビーム指向性は、リップルをほぼ生じないと考えることができない。
【0048】
そこで、平面アンテナ素子111と再放射点122との間のアンテナ基板11の面内方向の距離d
ORを「短距離」に設定することが望ましい。つまり、アンテナ基板11とレドーム部材12との間の距離d
ARを「短距離」に設定することが望ましい。すると、レドーム部材12の設計及び製造を小型化しつつ、平面アンテナ素子111のビーム指向性のリップルがほぼ発生しない(例えば、
図6の第4欄を参照。)。
【0049】
本開示のアンテナ基板−レドーム部材間距離の設計方法を
図5に示す。
図5では、レドーム部材12における様々な入射角θ(=80°、70°、60°、50°)において、自由空間での平面アンテナ素子111の励振波長λ
0を単位として、平面アンテナ素子111と再放射点122との間のアンテナ基板11の面内方向の距離d
ORを縦軸に示し、アンテナ基板11とレドーム部材12との間の距離d
ARを横軸に示す。
【0050】
レドーム部材12における一部の入射角θ(=70°、60°、50°)において、平面アンテナ素子111と再放射点122との間のアンテナ基板11の面内方向の距離d
ORを2λ
0程度以下に設定するためには、アンテナ基板11とレドーム部材12との間の距離d
ARを0.3λ
0程度以下に設定することが望ましい。
【0051】
レドーム部材12における全ての入射角θ(=80°、70°、60°、50°)において、平面アンテナ素子111と再放射点122との間のアンテナ基板11の面内方向の距離d
ORを2λ
0程度以下に設定するためには、アンテナ基板11とレドーム部材12との間の距離d
ARを0.1λ
0程度以下に設定することが望ましい。
【0052】
このように、レドーム部材12の断面形状を段差形状にすれば、レドーム部材12の設計及び製造を容易にできるが、ビーム透過率が必ずしも最適化されないビーム入射角θが存在する。しかし、このような場合であっても、単体の平面アンテナ素子111が形成される平面アンテナ装置1において、平面アンテナ素子111のビーム指向性のリップルがほぼ発生しない。
【0053】
第1実施形態の平面アンテナ装置の指向性を
図6に示す。3種類の曲線が重畳されているが、各々の曲線は送信指向性、受信指向性及び送受平均指向性を示す。
【0054】
図6の第1欄に示したように、
図1に示したレドーム部材12が配置されず、特許文献1等の半波長型レドーム部材も配置されないときには、平面アンテナ装置1の指向性は広角方向まで広げることができる。後述する
図10の第2欄と同様に、
図1に示したレドーム部材12が配置されず、特許文献1等の半波長型レドーム部材が配置されるときには、平面アンテナ装置1の指向性は広角方向(θ≧60°)において利得低下が大きい。
【0055】
後述する
図10の第3欄と同様に、
図1に示したレドーム部材12が配置されるものの、アンテナ基板11とレドーム部材12との間の距離d
ARが
図4の「中距離」であるときには、平面アンテナ装置1の指向性はリップルを発生している。
図6の第2欄に示したように、
図1に示したレドーム部材12が配置されるうえに、アンテナ基板11とレドーム部材12との間の距離d
ARが
図4の「短距離」であるときには、平面アンテナ装置1の指向性はリップルを発生することなく、広角方向まで広げることができる。
【0056】
なお、段差121の位置は、
図1のように平面アンテナ素子111の反対側にあってもよく、
図1と異なり平面アンテナ素子111がある側にあってもよく、
図1と異なり平面アンテナ素子111の両側にあってもよい。ただし、段差121の位置が平面アンテナ素子111の両側にあるときの段差121の高さは、段差121の位置が平面アンテナ素子111の反対側又は平面アンテナ素子111がある側にあるときの段差121の高さ(
図1におけるD’−D)と比べて、1/2にすることが望ましい。
【0057】
(第2実施形態の平面アンテナ装置)
第2実施形態の平面アンテナ装置の構成を
図7に示す。
図7の中段には、第1の具体例として、平面アンテナ装置2の第1の透視平面図を示す。
図7の下段には、第2の具体例として、平面アンテナ装置2の第2の透視平面図を示す。
図7の上段には、平面アンテナ装置2の第1、2の透視平面図について、平面アンテナ装置2のB−B断面図を示す。
【0058】
平面アンテナ装置2は、複数の平面アンテナ素子211が自由空間での各々の平面アンテナ素子211の励振波長λ
0の1/2より広い間隔でアレイ状に形成されるアンテナ基板21と、複数の平面アンテナ素子211を覆うレドーム部材22と、を備える。平面アンテナ装置2の第1の透視平面図では、各々の平面アンテナ素子211は、単体アンテナ素子である。平面アンテナ装置2の第2の透視平面図では、各々の平面アンテナ素子211は、アンテナアレイであり、例えば、アレイ中央に配置される給電回路212により給電される。
【0059】
レドーム部材22の厚さは、各々の平面アンテナ素子211から見て所定方向θ
Sより狭角方向では、レドーム部材22での各々の平面アンテナ素子211の励振波長λ
gの約1/2(半波長型レドーム部材の場合)又は約1/4(サンドイッチ型レドーム部材の場合)である一定値Dである。ここで、サンドイッチ型レドーム部材の場合は、上述の約λ
g/4の厚さを有するコア部材をスキン部材で挟まれている。
【0060】
レドーム部材22の厚さは、各々の平面アンテナ素子211から見て所定方向θ
Sより広角方向では、広角方向中の所定広角方向でのレドーム部材22のビーム透過率がほぼ最適化されるように、狭角方向でのレドーム部材22の厚さより大きい一定値D’に設定されている。ここで、上述のD’については、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、
図2、3を用いて説明したとおりである。
【0061】
レドーム部材22の厚さは、各々の狭角方向でのレドーム部材22のより小さい一定値Dである厚さと、各々の広角方向でのレドーム部材22のより大きい一定値D’である厚さと、の間で各々の段差221を伴って変化する。ここで、平面アンテナ装置2の第1の透視平面図では、各々の段差221は、各々の単体アンテナ素子を囲むように各々の単体アンテナ素子の周囲に形成されている。そして、平面アンテナ装置2の第2の透視平面図では、各々の段差221は、各々のアンテナアレイに沿って各々のアンテナアレイの外側に形成されている。
【0062】
よって、複数の平面アンテナ素子211が自由空間での各々の平面アンテナ素子211の励振波長λ
0の1/2より広い間隔でアレイ状に形成される平面アンテナ装置2において、レドーム部材22の設計及び製造を容易にしつつ、複数の平面アンテナ素子211をレドーム部材22で覆うときでも、平面アンテナ装置2の指向性を広角方向まで広げることができる。
【0063】
ここで、レドーム部材22の断面形状を段差形状にすれば、レドーム部材22の設計及び製造を容易にできるが、ビーム透過率が必ずしも最適化されないビーム入射角θが存在する。そこで、アンテナ基板21とレドーム部材22との間の距離d
ARは、アンテナ基板21とレドーム部材22との間のビームの反復反射に起因する、各々の平面アンテナ素子211のビーム指向性のリップルがほぼ発生しないように、且つ、各々の平面アンテナ素子211の間のアイソレーションがほぼ達成されるように、設定されている。そして、各々の平面アンテナ素子211と各々の段差221との間のアンテナ基板21の面内方向の距離は、d
ARsinθ
Sに設定されている。ここで、上述のd
ARについては、第2実施形態においても第1実施形態と同様な点は、
図4、5を用いて説明したとおりであるが、第2実施形態においては第1実施形態と異なる点は、
図8を用いて説明する。
【0064】
ここで、アンテナ基板21とレドーム部材22との間のビームの反復反射に起因して、レドーム部材22における放射点(各々の平面アンテナ素子211と各々の放射点との間のアンテナ基板21の面内方向の距離d
ARsinθ)のみならず、アンテナ基板21における基板到達点213(各々の平面アンテナ素子211と各々の基板到達点213との間のアンテナ基板21の面内方向の距離d
OA=2d
ARsinθ)が生じる。すると、各々の平面アンテナ素子211の間のアイソレーションが悪化し得る。
【0065】
本開示のアンテナ基板−レドーム部材間距離の設計方法を
図8に示す。
図8では、レドーム部材22における様々な入射角θ(=80°、70°、60°、50°)において、自由空間での各々の平面アンテナ素子211の励振波長λ
0を単位として、各々の平面アンテナ素子211と各々の基板到達点213との間のアンテナ基板21の面内方向の距離d
OAを縦軸に示し、アンテナ基板21とレドーム部材22との間の距離d
ARを横軸に示す。
【0066】
レドーム部材22における一部の入射角θ(=70°、60°、50°)において、各々の平面アンテナ素子211と各々の基板到達点213との間のアンテナ基板21の面内方向の距離d
OAを2λ
0程度以下に設定するためには、アンテナ基板21とレドーム部材22との間の距離d
ARを0.3λ
0程度以下に設定することが望ましい。
【0067】
レドーム部材22における全ての入射角θ(=80°、70°、60°、50°)において、各々の平面アンテナ素子211と各々の基板到達点213との間のアンテナ基板21の面内方向の距離d
OAを2λ
0程度以下に設定するためには、アンテナ基板21とレドーム部材22との間の距離d
ARを0.1λ
0程度以下に設定することが望ましい。
【0068】
このように、レドーム部材22の断面形状を段差形状にすれば、レドーム部材22の設計及び製造を容易にできるが、ビーム透過率が必ずしも最適化されないビーム入射角θが存在する。しかし、このような場合であっても、複数の平面アンテナ素子211が自由空間での各々の平面アンテナ素子211の励振波長λ
0の1/2より広い間隔でアレイ状に形成される平面アンテナ装置2において、各々の平面アンテナ素子211のビーム指向性のリップルがほぼ発生せず、各々の平面アンテナ素子211の間のアイソレーションがほぼ達成される。
【0069】
なお、段差221の位置は、
図7のように平面アンテナ素子211の反対側にあってもよく、
図7と異なり平面アンテナ素子211がある側にあってもよく、
図7と異なり平面アンテナ素子211の両側にあってもよい。ただし、段差221の位置が平面アンテナ素子211の両側にあるときの段差221の高さは、段差221の位置が平面アンテナ素子211の反対側又は平面アンテナ素子211がある側にあるときの段差221の高さ(
図7におけるD’−D)と比べて、1/2にすることが望ましい。
【0070】
(第3実施形態の平面アンテナ装置)
第3実施形態の平面アンテナ装置の構成を
図9に示す。
図9の中段には、第1の具体例として、平面アンテナ装置3の第1の透視平面図を示す。
図9の下段には、第2の具体例として、平面アンテナ装置3の第2の透視平面図を示す。
図9の上段には、平面アンテナ装置3の第1、2の透視平面図について、平面アンテナ装置3のC−C断面図を示す。
【0071】
平面アンテナ装置3は、複数の平面アンテナ素子311が自由空間での各々の平面アンテナ素子311の励振波長λ
0の約1/2である間隔でアレイ状に形成されるアンテナ基板31と、複数の平面アンテナ素子311を覆うレドーム部材32と、を備える。平面アンテナ装置3の第1の透視平面図では、各々の平面アンテナ素子311は、単体アンテナ素子である。平面アンテナ装置3の第2の透視平面図では、各々の平面アンテナ素子311は、アンテナアレイであり、例えば、アレイ中央に配置される給電回路312により給電される。ここで、自由空間での各々の平面アンテナ素子311の励振波長λ
0の約1/2である間隔は、可視領域が広がり過ぎずグレーティングローブが発生しにくい間隔である。
【0072】
レドーム部材32の厚さは、複数の平面アンテナ素子311から見て外側方向且つ両端の平面アンテナ素子311から見て所定方向θ
Sより狭角方向では、レドーム部材32での両端の平面アンテナ素子311の励振波長λ
gの約1/2(半波長型レドーム部材の場合)又は約1/4(サンドイッチ型レドーム部材の場合)である一定値Dである。ここで、サンドイッチ型レドーム部材の場合は、上述の約λ
g/4の厚さを有するコア部材をスキン部材で挟まれている。
【0073】
レドーム部材32の厚さは、複数の平面アンテナ素子311から見て外側方向且つ両端の平面アンテナ素子311から見て所定方向θ
Sより広角方向では、広角方向中の所定広角方向でのレドーム部材32のビーム透過率がほぼ最適化されるように、外側方向且つ狭角方向でのレドーム部材32の厚さより大きい一定値D’に設定されている。ここで、上述のD’については、第3実施形態においても第1実施形態と同様に、
図2、3を用いて説明したとおりである。
【0074】
レドーム部材32の厚さは、複数の平面アンテナ素子311から見て内側方向では、外側方向且つ狭角方向でのレドーム部材32の厚さと等しい一定値Dである。そして、レドーム部材32の厚さは、外側方向且つ狭角方向でのレドーム部材32のより小さい一定値Dである厚さと、外側方向且つ広角方向でのレドーム部材32のより大きい一定値D’である厚さと、の間で段差321を伴って変化する。ここで、平面アンテナ装置3の第1の透視平面図では、段差321は、複数の単体アンテナ素子を囲むように複数の単体アンテナ素子の周囲に形成されている。そして、平面アンテナ装置3の第2の透視平面図では、段差321は、両端のアンテナアレイに沿って両端のアンテナアレイの外側に形成されている。
【0075】
よって、複数の平面アンテナ素子311が自由空間での各々の平面アンテナ素子311の励振波長λ
0の約1/2である間隔でアレイ状に形成される平面アンテナ装置3において、レドーム部材32の設計及び製造を容易にしつつ、複数の平面アンテナ素子311をレドーム部材32で覆うときでも、平面アンテナ装置3の指向性を広角方向まで広げることができる。
【0076】
ここで、レドーム部材32の断面形状を段差形状にすれば、レドーム部材32の設計及び製造を容易にできるが、ビーム透過率が必ずしも最適化されないビーム入射角θが存在する。そこで、アンテナ基板31とレドーム部材32との間の距離d
ARは、アンテナ基板31とレドーム部材32との間のビームの反復反射に起因する、各々の平面アンテナ素子311のビーム指向性のリップルがほぼ発生しないように、設定されている。そして、両端の平面アンテナ素子311と段差321との間のアンテナ基板31の面内方向の距離は、d
ARsinθ
Sに設定されている。ここで、上述のd
ARについては、第3実施形態においても第1実施形態と同様に、
図4、5を用いて説明したとおりである。
【0077】
このように、レドーム部材32の断面形状を段差形状にすれば、レドーム部材32の設計及び製造を容易にできるが、ビーム透過率が必ずしも最適化されないビーム入射角θが存在する。しかし、このような場合であっても、複数の平面アンテナ素子311が自由空間での各々の平面アンテナ素子311の励振波長λ
0の約1/2である間隔でアレイ状に形成される平面アンテナ装置3において、各々の平面アンテナ素子311のビーム指向性のリップルがほぼ発生しない。
【0078】
なお、アンテナ基板31とレドーム部材32との間の距離d
ARは、各々の平面アンテナ素子311の間のアイソレーションがほぼ達成されるように、設定されてもよい。つまり、各々の平面アンテナ素子311の間隔が、λ
0/2程度に狭く設定されるため、アンテナ基板31とレドーム部材32との間の距離d
ARは、0.1λ
0程度より短く設定されてもよい。すると、複数の平面アンテナ素子311が自由空間での各々の平面アンテナ素子311の励振波長λ
0の約1/2である間隔でアレイ状に形成される平面アンテナ装置3において、各々の平面アンテナ素子311の間のアイソレーションがほぼ達成される。
【0079】
第3実施形態の平面アンテナ装置の指向性を
図10に示す。平面アンテナ装置3の指向性曲線は、各々の指向方向のゲイン曲線についての包絡曲線である。
【0080】
図10の第1欄に示したように、
図9に示したレドーム部材32が配置されず、特許文献1等の半波長型レドーム部材も配置されないときには、平面アンテナ装置3の指向性は広角方向まで広げることができる。
図10の第2欄に示したように、
図9に示したレドーム部材32が配置されず、特許文献1等の半波長型レドーム部材が配置されるときには、平面アンテナ装置3の指向性は広角方向(θ≧60°)において利得低下が大きい。
【0081】
図10の第3欄に示したように、
図9に示したレドーム部材32が配置されるものの、アンテナ基板31とレドーム部材32との間の距離d
ARが
図4の「中距離」であるときには、平面アンテナ装置3の指向性はリップルを発生している。
図10の第4欄に示したように、
図9に示したレドーム部材32が配置されるうえに、アンテナ基板31とレドーム部材32との間の距離d
ARが
図4の「短距離」であるときには、平面アンテナ装置3の指向性はリップルを発生することなく、広角方向まで広げることができる。
【0082】
なお、段差321の位置は、
図9のように平面アンテナ素子311の反対側にあってもよく、
図9と異なり平面アンテナ素子311がある側にあってもよく、
図9と異なり平面アンテナ素子311の両側にあってもよい。ただし、段差321の位置が平面アンテナ素子311の両側にあるときの段差321の高さは、段差321の位置が平面アンテナ素子311の反対側又は平面アンテナ素子311がある側にあるときの段差321の高さ(
図9におけるD’−D)と比べて、1/2にすることが望ましい。