前記無機微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、およびチタン酸バリウムからなる群から選択される少なくとも一種の粒子を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機無機複合組成物。
前記ポリカーボネートの含有量に対する、前記無機微粒子および前記表面処理剤の含有量が、重量比で5/95以上80/20未満(前記無機微粒子および前記表面処理剤の合計量/前記ポリカーボネート)である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機無機複合組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一側面は、下記成分(A)、成分(B)および成分(C)を含む、有機無機複合組成物に関する。なお、本明細書において、下記「成分(A)、成分(B)および成分(C)を含む、有機無機複合組成物」を、単に「本発明に係る組成物」とも称する。
【0011】
(1)成分(A):下記一般式(1−3)および(1−4)からなる群から選択される繰り返し単位Y
1を含む、ポリカーボネート:
ただし、上記ポリカーボネートの少なくとも一部は、下記一般式(1−1)および(1−2)からなる群から選択される繰り返し単位X
1を含み、有機無機複合組成物における繰り返し単位X
1の総モル数mと繰り返し単位Y
1の総モル数nとの比が0<(m/n)≦0.12を満たす;
【0013】
上記一般式(1−1)および(1−2)において、X
21およびX
22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、炭素数1以上30以下の脂肪族基、炭素数4以上30以下の脂環式基、炭素数6以上30以下の芳香族基および複素環基からなる群から選択される基を表し;
【0015】
上記一般式(1−3)および(1−4)において、Y
21、Y
22およびY
23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族基を表し;pは1≦p<nの関係を満たす整数である;
(2)成分(B):無機微粒子;
(2)成分(C):下記一般式(2)で示される表面処理剤
【0017】
上記一般式(2)において、R
21はフェニル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基およびピリジル基からなる群から選択される基であり;R
22は単結合、または炭素数1以上6以下のアルキレン基であり;R
23はカルボキシル基、およびチオール基からなる群から選択される基であり;R
24は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、および炭素数6以上24以下のアリール基からなる群から選択される基である。
【0018】
本発明に係る組成物は、高い屈折率を有し、光透過性および耐熱性に優れ、且つ射出成形に適した物性(ゲル化しにくく、金型離型性に優れる)を有する有機無機複合組成物を提供することができる。本発明の技術的範囲を制限するものでは無いが、かような効果が得られ得るメカニズムは、以下のように推測される。
【0019】
本発明に係る組成物は、成分(A)としてポリカーボネートを含む。ポリカーボネートは、ビニルポリマーのような熱可塑性樹脂と比較して耐熱性に優れるだけでなく、屈折率も高いという利点がある。本発明に係る組成物はかような高屈折率のポリカーボネートに加えて、更に成分(B)として無機微粒子を含むため、より一層屈折率が高いものとなる。
【0020】
また、成分(A)のポリカーボネートは、一般式(1−1)および(1−2)で示されるように側鎖にカルボキシル基を有するカルボキシル基含有ポリカーボネートであるため、組成物中での無機微粒子の分散性が向上し、光透過性に優れたものとなることが期待される。また、ポリカーボネートの側鎖に含まれる酸性基がカルボキシル基であるため、硫酸基の場合のような金型腐食や、リン酸基の場合のような金型離型性の低下といった問題も生じにくい。一方、ポリカーボネートの側鎖に含まれるカルボキシル基の数を増やすことで無機微粒子の分散性向上が期待されるものの、カルボキシル基数が過度に多いとポリカーボネートのゲル化が進行するという課題が存在することを本発明者らは見出した。かような問題点に対し、本発明者らは、ポリカーボネートの側鎖に含まれるカルボキシル基の数を一定程度に抑え、更に成分(C)として上記一般式(2)で示される表面処理剤を配合することにより、無機微粒子の優れた分散性を達成しつつもポリカーボネートのゲル化進行を抑制できることを見出した。具体的には、ポリカーボネートを、繰り返し単位X
1の総モル数mと繰り返し単位Y
1の総モル数nとの比が0<(m/n)≦0.12を満たす関係にすることで、かような効果が得られることを見出した。成分(C)は、無機微粒子との相互作用点であるR
23や、置換基であるR
24として硫酸基やリン酸基を含まないため、上記の金型腐食や金型離型性の低下といった問題も生じにくい。
【0021】
さらに、本発明者らは、ポリカーボネート、無機微粒子および表面処理剤を含む組成物において、ポリカーボネートとしてカルボキシル基含有ポリカーボネートが含まれることで、側鎖にカルボキシル基を含まないポリカーボネートのみを用いた場合と比べて、ポリカーボネートのガラス転移温度が同程度であっても組成物としての耐熱性がより一層優れたものになるという利点があることをも見出した。これは、わずかではあるが、カルボキシル基が存在することにより、3次元の架橋構造を形成することによるものと推測される。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0023】
本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
【0024】
<成分(A)>
成分(A)は、上記一般式(1−3)および(1−4)からなる群から選択される繰り返し単位Y
1を含む、ポリカーボネートである。かような繰り返し単位Y
1を含むポリカーボネートの少なくとも一部は、上記一般式(1−1)および(1−2)からなる群から選択される繰り返し単位X
1をさらに含む。すなわち、本発明に係る組成物は、(1)繰り返し単位X
1および繰り返し単位Y
1を含む共重合体、(2)繰り返し単位Y
1を含む重合体と、繰り返し単位X
1および繰り返し単位Y
1を含む共重合体とを含むブレンド、のいずれのポリカーボネートを含んでいてもよい。また、本発明に係る有機無機複合組成物では、組成物に含まれるポリカーボネートの繰り返し単位X
1の総モル数m(すなわち、一般式(1−1)および(1−2)で表される構成単位の総モル数)と、繰り返し単位Y
1の総モル数n(すなわち、一般式(1−3)および(1−4)で表される構成単位の総モル数)との比が0<(m/n)≦0.12を満たすことを特徴の一つとする。(m/n)の関係が0を超えることで、無機微粒子の分散性が向上し、組成物としての耐熱性が優れたものとなる。(m/n)が0.12を超えると、ポリカーボネートのゲル化が進行しやすくなるため好ましくない。mおよびnは、好ましくは0.005≦(m/n)≦0.1の関係を満たし、ゲル化を抑制しつつより一層金型離型性が優れたものになるという観点から、より好ましくは0.01<(m/n)≦0.08の関係を満たす。なお、(m/n)の関係は、X
1の原料モノマーとY
1の原料モノマーとの仕込み比(モル比)を調整することにより制御することができる。
【0025】
X
1は上記一般式(1−1)および(1−2)からなる群から選択される繰り返し単位である。組成物に含まれるポリカーボネートにおけるX
1の存在率は、無機微粒子の分散性および組成物としての耐熱性と、ポリカーボネートのゲル化進行抑制とのバランスの観点から、X
1とY
1との合計100モル%に対して、一実施形態では0モル%を超えて12モル%以下であり、好ましくは0.5モル%以上10モル%以下であり、より好ましくは1モル%を超えて8モル%以下である。
【0026】
上記一般式(1−1)および(1−2)において、X
21およびX
22は、それぞれ独立に、炭素数1以上30以下の脂肪族基、炭素数4以上30以下の脂環式基、炭素数6以上30以下の芳香族基および複素環基からなる群から選択される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。かような置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1以上20以下のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)、炭素水1〜20のアルコキシル基等が例示できる。
【0027】
上記炭素数1以上30以下の脂肪族基としては、例えば、X
21としてはカルボキシル基で2置換された、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、メチルトリメチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等の、直鎖または分岐鎖の脂肪族基が例示できる。また、例えば、X
22としてはカルボキシル基で1置換された、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、メチルトリメチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等の、直鎖または分岐鎖の脂肪族基が例示できる。
【0028】
上記炭素数4以上30以下の脂環式基としては、例えば、X
21としてはカルボキシル基で2置換された、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基等の脂環式基が例示できる。また、例えば、X
22としてはカルボキシル基で1置換された、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基等の脂環式基が例示できる。
【0029】
上記炭素数6以上30以下の芳香族基としては、例えば、X
21としてはカルボキシル基で2置換された、フェニレン基、ナフチレニル基等の芳香族基が例示できる。また、例えば、X
22としてはカルボキシル基で1置換された、フェニレン基、ナフチレニル基等の芳香族基が例示できる。
【0030】
上記複素環基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選択されるヘテロ原子を環構成原子として1個以上3個以下含む6員以上30員以下の環式基が挙げられる。より具体的には、例えば、X
21としてはカルボキシル基で2置換された、ピリジレン基、キノリレン基、イソキノリレン基、ピラジニレン基、キノキサリニレン基、ピリミジニレン基、インドリレン基、イソインドリレン基、ベンゾイミダソリレン基、ベンゾフリレン基、ベンゾチエニレン基、カルバゾリレン基等の複素環基が例示できる。また、例えば、X
22としてはカルボキシル基で1置換された、ピリジレン基、キノリレン基、イソキノリレン基、ピラジニレン基、キノキサリニレン基、ピリミジニレン基、インドリレン基、イソインドリレン基、ベンゾイミダソリレン基、ベンゾフリレン基、ベンゾチエニレン基、カルバゾリレン基等の複素環基が例示できる。
【0031】
上記のうち、X
21としてはカルボキシル基で2置換された、置換基を有していてもよい、炭素数6以上30以下の、脂環式基または芳香族基であることが好ましい。X
22としてはカルボキシル基で1置換された、置換基または非置換の、炭素数4以上30以下の脂環式基または炭素数6以上30以下の芳香族基であることが好ましい。
【0032】
無機微粒子の分散性および組成物としての耐熱性と、ポリカーボネートのゲル化進行抑制とのバランスの観点から、一般式(1−1)は、好ましくは下記式(1−1a)、式(1−1b)、および式(1−1c)および式(1−1d)で表される基からなる群から選択され、より好ましくは下記式(1−1a)で表される基である:
【0034】
無機微粒子の分散性および組成物としての耐熱性と、ポリカーボネートのゲル化進行抑制とのバランスの観点から、一般式(1−2)は、好ましくは下記式(1−2a)、式(1−2b)および式(1−2c)で表される基からなる群から選択され、より好ましくは下記式(1−2a)で表される基である:
【0036】
Y
1は上記一般式(1−3)および(1−4)からなる群から選択される繰り返し単位である。組成物に含まれるポリカーボネートにおけるY
1の存在率は、無機微粒子の分散性および組成物としての耐熱性と、ポリカーボネートのゲル化進行抑制とのバランスの観点から、X
1とY
1との合計100モル%に対して、一実施形態では88モル%以上100モル%未満であり、好ましくは90モル%以上99.5モル%以下であり、より好ましくは92モル%以上99モル%未満である。
【0037】
組成物に含まれるポリカーボネートの全構成単位中、X
1とY
1との合計は、例えば50モル%以上であり、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは100モル%である。
【0038】
一実施形態では、組成物に含まれるポリカーボネートの構成単位は、0モル%を超えて12モル%以下のX
1と、88モル%以上100モル%未満のY
1(ただし、X
1とY
1との合計量は100モル%である。)とからなる。好ましい別の実施形態では、組成物に含まれるポリカーボネートの構成単位は、0.5モル%以上10モル%以下のX
1と、90モル%以上99.5モル%以下のY
1(ただし、X
1とY
1との合計量は100モル%である。)とからなる。より好ましい別の実施形態では、組成物に含まれるポリカーボネートの構成単位は、1モル%を超えて8モル%以下のX
1と、92モル%以上99モル%未満のY
1(ただし、X
1とY
1との合計量は100モル%である。)とからなる。
【0039】
上記一般式(1−3)および(1−4)において、Y
21、Y
22およびY
23は、それぞれ独立に芳香族基を表し、当該芳香族基は置換基を有していてもよい。かような置換基としては、炭素数1以上20以下のアルキル基(例えば、メチル基、トリメチレン基、イソプロピル基、テトラメチレン基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、第3級アミル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、エイコサニル基など)、炭素数1以上20以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基など)、炭素数6以上20以下のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロオクチル基など)、炭素数6以上20以下のアリール基(例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、第3級ブチルフェニル基、ナフチル基、トリル基など)、炭素数6以上20以下のシクロアルコキシ基(例えば、シクロヘキシルオキシ基など)、および炭素数6以上20以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基など)等が例示できる。
【0040】
Y
21、Y
22およびY
23としては、例えば、フェニレン基、ナフチレニル基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、フルオランテニレン基、フルオレニレン基、9,9−ジメチルフルオレニレン基、9,9−ジフェニルフルオレニレン基、9,9’−スピロビフルオレニレン基等の芳香族連結基を含む構造である。好ましい一実施形態では、Y
21、Y
22およびY
23が、それぞれ独立に下記一般式(3)で示される芳香族基である。これにより、ポリカーボネート単独での屈折率が向上し、一方複屈折が低下するため、レンズとして好ましく使用できるという利点がある。
【0042】
上記一般式(3)において、L
1およびL
2は、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、メチルトリメチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等)、炭素数1以上6以下のアルキレンオキシ基(すなわち、−(CH
2)
1〜6−O−*(*はジフェニルフルオレン骨格との連結部を示す。)で表される基であり、より具体的には、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、イソプロピレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基、メチルトリメチレンオキシ基、ペンチレンオキシ基、ヘキシレンオキシ基等)、炭素数3以上12以下のシクロアルキレン基(例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基等)、および炭素数6以上20以下のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフチレニル基等)からなる群から選択され;R
31、R
32、R
33およびR
34は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、炭素数6以上20以下のシクロアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数6以上20以下のシクロアルコキシ基、および炭素数6以上20以下のアリールオキシ基からなる群から選択される基であり;aおよびbは、それぞれ独立して0以上3以下の整数である。
【0043】
好ましい一実施形態では、一般式(3)において、L
1およびL
2が、それぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、およびイソプロピレンオキシ基からなる群から選択され;R
31、R
32、R
33およびR
34が、それぞれ独立して水素原子、メチル基、トリメチレン基、イソプロピル基、テトラメチレン基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、およびシクロヘキシル基からなる群から選択される基であり;aおよびbは、それぞれ独立して0以上2以下の整数である。
【0044】
別の好ましい一実施形態では、一般式(3)において、L
1およびL
2が、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、およびイソプロピレンオキシ基からなる群から選択され;R
31、R
32、R
33およびR
34が水素原子であり;aおよびbは、それぞれ独立して0または1である。
【0045】
好ましい一実施形態では、組成物は、X
1が一般式(1−1)で表され且つY
1が上記一般式(1−3)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート、および/またはX
1が一般式(1−2)で表され且つY
1が上記一般式(1−4)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネートを含む。
【0046】
成分(A)の数平均分子量(Mn)は、例えば4,000以上200,000以下であり、好ましくは6,000以上100,000以下であり、より好ましくは10,000以上50,000以下である。上記数値範囲とすることにより、組成物の透過率(透明性)が特に優れたものとなり、また、組成物から得られた成形品の機械的強度が優れるという利点がある。なお、本明細書において、成分(A)の数平均分子量(Mn)は、実施例に記載のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0047】
成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、例えば10,000以上500,000以下であり、好ましくは15,000以上200,000以下であり、より好ましくは20,000以上100,000以下である。上記数値範囲とすることにより、組成物の透過率(透明性)が特に優れたものとなり、また、組成物から得られた成形品の機械的強度が優れるという利点がある。なお、本明細書において、成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0048】
成分(A)の屈折率は、例えば1.5以上2.0以下であり、アッベ数とのバランスを考慮すると、ポリカーボネートの屈折率は1.6以上1.8以下であることが好ましく、1.6を超えて1.7以下であることがより好ましい。成分(A)の屈折率は、例えば合成の原料モノマーとして用いるテトラカルボン酸二無水物(例えば、ピロメリット酸無水物等)の配合割合や、一般式(3)におけるaやbの値を制御することで調整することができ、より具体的には、合成の原料モノマーとして用いるテトラカルボン酸二無水物(例えば、ピロメリット酸無水物等)の配合割合を減少させたり、一般式(3)におけるaやbの値を小さくしたりすることで、成分(A)の屈折率を高くすることができる。なお、本明細書において、成分(A)の屈折率は、実施例に記載の手法により測定された値である。
【0049】
成分(A)のガラス転移温度(Tg)は、例えば100℃を超えて250℃以下であり、射出成形時のハンドリングと組成物の耐熱性とを考慮すると、ポリカーボネートのTgは110℃以上180℃以下であることが好ましい。組成物から得られた成形品の機械的強度を考慮すると、ポリカーボネートのTgは155℃以上180℃以下であることがより好ましい。成分(A)のTgは、例えば合成の原料モノマーとして用いるテトラカルボン酸二無水物(例えば、ピロメリット酸無水物等)の配合割合や、一般式(3)におけるaやbの値を制御することで調整することができ、より具体的には、合成の原料モノマーとして用いるテトラカルボン酸二無水物(例えば、ピロメリット酸無水物等)の配合割合を増加させたり、一般式(3)におけるaやbの値を小さくしたりすることで、成分(A)のTgを高くすることができる。なお、本明細書において、成分(A)のガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した値である。
【0050】
成分(A)の各繰り返し単位はいずれの形態であってもよく、例えば、ブロック状またはランダム状であり得る。
【0051】
一般式(1−1)で表される繰り返し単位および一般式(1−3)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネートは、芳香族ジオール成分とカーボネート原料との反応物であるポリカーボネート前駆体と、テトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより、製造することができる。
【0052】
芳香族ジオール成分としては特に制限されないが、例えば下記一般式(3a)で示される芳香族ジオール成分(例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス−4−ヒドロキシフェニルフルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のフルオレン化合物)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−エチリデンビスフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン、4,4’−(α−メチルベンジリデン)ビスフェノール等が例示できる。芳香族ジオール成分は1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。屈折率とガラス転移温度との観点から、好ましくは、下記一般式(3a)で示される芳香族ジオール成分が例示できる。
【0054】
上記一般式(3a)において、L
1、L
2、R
31、R
32、R
33、R
34、a、およびbは、上記一般式(3)と同様であり、一般式(3)についての記載が適宜適用される。
【0055】
本発明の目的効果が阻害されない程度において、成分(A)の合成には、芳香族ジオール成分以外の他のジオール成分を用いてもよい。他のジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール等の脂環式ジオールが例示できる。
【0056】
カーボネート原料としては特に制限されないが、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトルイルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ホスゲン、ブロムホスゲンなどのカルボニルハライド、2価フェノールのジハロホルメートなどのハロホルメートなどを用いることができる。カーボネート原料は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
ポリカーボネート前駆体の合成には界面重合法やエステル交換法等の従来公知の手法を採用することができ、例えば、必要に応じて重合触媒の存在下、上記の芳香族ジオール成分とカーボネート原料との重合反応によって得られる。反応温度は特に制限されないが、エステル交換法の場合、例えば130℃以上350℃以下であり、好ましくは160℃以上300℃以下である。反応は窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、必要に応じて減圧下で行ってもよい。上記の重合触媒としては、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等のチタン化合物、酸化スズ、ジ−n−ブチルスズラウレート、ジ−n−ブチルスズオキサイド、ジブチルスズジアセテート等のスズ化合物、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物などが挙げられる。こうして得られたポリカーボネート前駆体の少なくとも一部をテトラカルボン酸二無水物とのエステル化反応に供する。
【0058】
上記で得られたポリカーボネート前駆体の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基とをエステル化することで、一般式(1−1)で表される繰り返し単位および一般式(1−3)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネートを得ることができる。エステル化反応においては、テトラカルボン酸二無水物とポリカーボネート前駆体との仕込み比率(モル比)を、0/100を超えて12/88以下(テトラカルボン酸二無水物/ポリカーボネート前駆体)とする。これにより、(m/n)を0<(m/n)≦0.12とすることができる。無機微粒子の分散性および組成物としての耐熱性と、ポリカーボネートのゲル化進行抑制とのバランスの観点から、好ましい別の実施形態では、エステル化反応の仕込み比率(モル比)は、0.5/99.5以上10/90以下(テトラカルボン酸二無水物/ポリカーボネート前駆体)である。より好ましい別の実施形態では、エステル化反応の仕込み比率は、エステル化反応の仕込み比率(モル比)は、1/99を超えて8/92以下(テトラカルボン酸二無水物/ポリカーボネート前駆体)である。
【0059】
テトラカルボン酸二無水物としては特に制限されないが、例えば下記式(1−1e)で表されるテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。テトラカルボン酸二無水物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
上記式(1−1e)において、X
3は炭素数1以上30以下の脂肪族基、炭素数6以上30以下の脂環式基、炭素数6以上30以下の芳香族基および複素環基からなる群から選択される基であり、これらの基は、一般式(1−1)について説明した置換基を有していてもよい。X
3は、置換基または非置換の、炭素数6以上30以下の、脂環式基または芳香族基であることが好ましい。より好ましくは、X
3は、
【0064】
より具体的には、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、などが挙げられる。
【0065】
テトラカルボン酸成分二無水物とポリカーボネート前駆体とのエステル化反応は、70℃以上150℃以下、好ましくは80℃以上130℃以下で行う。反応時間は特に制限されないが、例えば1時間以上20時間以下、好ましくは3時間以上12時間以下である。反応溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルムおよび塩化メチレン等を挙げることができるが、これらに制限されない。エステル化反応触媒としては、アミン(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等)、ピリジン(例えば、4−ジメチルアミノピリジン等)、四級アンモニウム塩、イミダゾール、アミド、ホスフィン(トリフェニルホスフィン等)、有機金属塩などが挙げられる。
【0066】
一般式(1−2)で表される繰り返し単位および一般式(1−4)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネートは、モノカルボン酸ジオール成分、芳香族ジオール成分、およびカーボネート原料を重合反応させることにより製造することができる。重合反応においては、モノカルボン酸ジオール成分と芳香族ジオール成分との仕込み比率(モル比)を、0/100を超えて12/88以下(モノカルボン酸ジオール成分/芳香族ジオール成分)とする。これにより、(m/n)を0<(m/n)≦0.12とすることができる。無機微粒子の分散性および組成物としての耐熱性と、ポリカーボネートのゲル化進行抑制とのバランスの観点から、好ましい別の実施形態では、エステル化反応の仕込み比率(モル比)は、0.5/99.5以上10/90以下(モノカルボン酸ジオール成分/芳香族ジオール成分)である。より好ましい別の実施形態では、エステル化反応の仕込み比率は、エステル化反応の仕込み比率(モル比)は、1/99を超えて8/92以下(モノカルボン酸ジオール成分/芳香族ジオール成分)である。
【0067】
モノカルボン酸ジオール成分としては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2,4−ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、3,4−ジヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸等のカルボキシル基を有するジオール成分が例示できる。モノカルボン酸ジオール成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
一般式(1−2)で表される繰り返し単位および一般式(1−4)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネートの合成に用いられる芳香族ジオール成分およびカーボネート原料は、上記ポリカーボネート前駆体で説明した内容と同様である。また、当該ポリカーボネートの重合反応についても、上記ポリカーボネート前駆体で説明した内容に準じて行うことができ、上記の重合方法に関する記載が適宜適用される。
【0069】
上記によって得られたポリカーボネートは、再沈澱法、透析法、限外濾過法、抽出法など一般的な精製法により精製してもよい。
【0070】
<成分(B)>
成分(B)である無機微粒子としては、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物等が挙げられる。
【0071】
金属酸化物としては、特に限定されず、例えば、酸化ジルコニウム、イットリア添加酸化ジルコニウム、ジルコン酸鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸スズ、酸化スズ、酸化ビスマス、酸化ニオブ、酸化タンタル、タンタル酸カリウム、酸化タングステン、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ガリウム等、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。
【0072】
これらの中でも、有機無機複合組成物を光学用途に用いる場合には、無機微粒子は、屈折率が高いことが好ましく、屈折率が1.8以上の無機微粒子を用いることが好ましい。具体的には、無機微粒子は、酸化チタン、チタン酸バリウム(屈折率=約2.4)、酸化ジルコニウム(屈折率=約2.1)であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一実施形態は、無機微粒子として、酸化ジルコニウム、酸化チタン、およびチタン酸バリウムからなる群から選択される少なくとも一種の粒子を含む。本発明のより好ましい一実施形態は、無機微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、およびチタン酸バリウムからなる群から選択される。酸化チタンは、主にルチル型(屈折率=約2.7)とアナターゼ型(屈折率=約2.5)の2種類の結晶構造を有するが、アナターゼ型の酸化チタンは光触媒活性が高く、光学的な用途への使用にはあまり適さないためルチル型の酸化チタンであることが好ましい。また、酸化チタンの光触媒活性を低下させるために表面がシリカなどでコーティングされた酸化チタン粒子を用いてもよい。
【0073】
無機微粒子は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
上記無機微粒子の表面には、通常、水酸基、メルカプト基等の16族元素を含む基が存在する。後述するように、本発明に係る組成物においては、これらの基と化学結合を形成することが可能な官能基(より具体的には、カルボキシル基、およびチオール基からなる群から選択される基)を有する表面修飾剤を含むため、無機微粒子の表面が表面修飾剤により修飾されて分散性が向上する。
【0075】
無機微粒子のメジアン径は、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。無機微粒子のメジアン径が15nm以下であることで、粒子径が小さいため得られる組成物の透明性が高まる。一方、無機微粒子のメジアン径は、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましい。無機微粒子のメジアン径が1nm以上であることで、結晶性が高まり、屈折率がバルクの状態に近くなる。なお、無機微粒子のメジアン径は、動的光散乱法による個数基準のメジアン径である。無機微粒子のメジアン径は、1nm以上15nm以下であることが好ましく、3nm以上10nm以下であることがより好ましい。
【0076】
無機微粒子は、屈折率が高いほうが好ましく、具体的には屈折率が1.8以上であることが好ましく、1.9以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。このような無機微粒子を用いることにより、屈折率が高い樹脂組成物を得ることができる。また、無機微粒子の屈折率は高ければ高いほど好ましいが、通常3.0以下である。無機微粒子の屈折率の好ましい範囲は、アッベ数とのバランスを考慮すると、1.8以上3.0以下であり、より好ましくは1.9以上3.0以下である。
【0077】
無機微粒子の屈折率は、例えば、濃度の異なる無機微粒子分散液の屈折率差を測定することにより、算出することができる。
【0078】
無機微粒子は、特開2011−213505号公報、特開2012−180241号公報等に記載の公知の方法を用いて製造することができる。
【0079】
また、無機微粒子は市販品を用いてもよく、この際、溶媒分散体であってもよい。かような市販品としては、SZR−W、SZR−CW、SZR−M、SZR−K(酸化ジルコニウム分散液、堺化学工業社製);タイノック(登録商標)RA−6、NRA−10M(酸化チタン分散液、多木化学社製)などが挙げられる。
【0080】
<成分(C)>
成分(C)である表面修飾剤(以下、単に「修飾剤」とも称する。)は、無機微粒子を表面修飾するために用いられる。本発明においては、表面修飾剤は、上記の一般式(2)で表される化合物が採用される。
【0081】
表面修飾剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
一般式(2)において、R
21はフェニル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基およびピリジル基からなる群から選択される。無機微粒子の分散性の観点から、好ましくは、R
21はフェニル基、チエニル基、およびフリル基からなる群から選択される。組成物から得られた成形品の機械的強度が優れるという観点から、R
21はチエニル基であることがより好ましい。
【0083】
一般式(2)において、R
22は単結合、または炭素数1〜6のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、メチルトリメチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基などの、直鎖または分岐鎖のアルキレン基)である。好ましくは、R
22は単結合、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、およびイソプロピレン基からなる群から選択される。
【0084】
一般式(2)において、R
23はカルボキシル基、およびチオール基からなる群から選択される基である。金型成形性(特に、金型離型性)に優れるという観点から、R
23はカルボキシル基であることが好ましい。
【0085】
一般式(2)において、R
24は水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1以上6以下のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基など)、炭素数1以上6以下のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、n−ヘキソキシ基、シクロヘキシルオキシ基など)、および炭素数6以上24以下のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナントリル基など)からなる群から選択される基である。これらのうち、好ましくは、R
24は水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基からなる群から選択される。
【0086】
一実施形態では、一般式(2)において、R
21はフェニル基、チエニル基、およびフリル基からなる群から選択され;R
22は単結合、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、およびイソプロピレン基からなる群から選択され;R
23はカルボキシル基、およびチオール基からなる群から選択され;R
24は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、および炭素数6以上24以下のアリール基からなる群から選択される。好ましい別の実施形態では、一般式(2)において、R
21はフェニル基、およびチエニル基、からなる群から選択され;R
22は単結合、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、およびイソプロピレン基からなる群から選択され;R
23はカルボキシル基であり;R
24は水素原子である。
【0087】
本発明において好適な表面修飾剤としては、具体的には、2−チオフェンカルボン酸、3−チオフェンカルボン酸、2−フランカルボン酸、安息香酸、ビフェニル4−カルボン酸、4−メチル安息香酸、ピコリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−チオフェンチオール、2−チオフェンエタンチオール、ベンゼンチオール、ベンゼンメタンチオール、4−メチルベンゼンメタンチオール、フェニルエタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロヘキサンメタンチオール、2−ピリジンチオールなどが挙げられる。
【0088】
中でも、透明性、屈折率および透過率のバランスに優れることから、表面修飾剤は、3−チオフェンカルボン酸、安息香酸、およびフェニルエタンチオールからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0089】
表面修飾剤の無機微粒子への表面修飾方法は、特に限定されず、例えば、湿式法で修飾してもよいし、乾式法で修飾してもよい。無機微粒子をより効率よく修飾し、さらに、無機微粒子の二次凝集を防止する観点からは、湿式法を用いることが好ましい。無機微粒子を湿式法で修飾する場合には、例えば、無機微粒子の分散液に表面修飾剤を添加・撹拌することにより、無機微粒子の表面を修飾することができる。かような手法により調製した表面修飾剤と無機微粒子との混合物を、成分(A)と混合することが好ましい。
【0090】
無機微粒子の分散液に用いる溶媒は特に限定されないが、無機微粒子を良好に分散させる観点からは、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール;およびこれらの混合物が好ましく用いられる。また、分散液の安定化のために、例えば、ギ酸、酢酸、塩酸、硝酸などの酸やアルカリなどの他の成分を分散液に添加してもよい。これらの成分は、成分(A)と混合する前に、洗浄や乾燥によって除去してもよい。
【0091】
表面修飾剤の添加量は表面修飾が適切に行われるように適宜設定されるが、表面修飾剤:無機微粒子=1:1以上100以下(重量比)であることが好ましく、1:2以上20以下(重量比)であることがより好ましい。
【0092】
無機微粒子を修飾剤で修飾させるための反応時間は、特に限定されず、通常、1時間以上48時間以下、好ましくは、2時間以上24時間以下である。実施例5時間また、反応温度も特に限定されず、通常、10℃以上100℃以下、好ましくは10℃以上60℃以下、より好ましくは10℃以上40℃以下である。
【0093】
上記反応後、得られた分散液を濃縮してもよい。また、洗浄や濾過により、過剰な修飾剤や他の成分を除去してもよい。
【0094】
<組成物の調製方法>
本発明に係る組成物は、成分(A)、成分(B)、および成分(C)を同時に混合してもよいが、表面修飾剤により無機微粒子が効果的に修飾されるという観点から、上述のように成分(B)と成分(C)との混合物を調製した後、当該混合物と成分(A)とを合一することが好ましい。組成物の調製には、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの溶媒を用いてもよい。
【0095】
組成物中における各成分の含有量は特に制限されないが、例えば、ポリカーボネートの含有量に対する、無機微粒子および表面処理剤の含有量が、重量比で1/99以上99/1以下(無機微粒子および表面処理剤の合計量/ポリカーボネート)である。組成物から得られた成形品の機械的強度が優れるという観点から、ポリカーボネートの含有量に対する、無機微粒子および表面処理剤の含有量が、重量比で5/95以上80/20未満(無機微粒子および表面処理剤の合計量/ポリカーボネート)であることが好ましく、5/95以上70/30以下(無機微粒子および表面処理剤の合計量/ポリカーボネート)であることがより好ましい。透過率の観点から、ポリカーボネートの含有量に対する、無機微粒子および表面処理剤の含有量は、重量比で10/90以上45/55以下(無機微粒子および表面処理剤の合計量/ポリカーボネート)であることがさらに好ましい。
【0096】
一実施形態では、ポリカーボネートの含有量は、組成物全体に対して、1重量%以上99重量%以下である。別の実施形態では、ポリカーボネートの含有量は、組成物全体に対して、20重量%超95重量%以下である。
【0097】
一実施形態では、無機微粒子および表面処理剤の合計量は、組成物全体に対して、1重量%以上99重量%以下である。別の実施形態では、無機微粒子および表面処理剤の合計量は、組成物全体に対して、5重量%以上80重量%未満である。
【0098】
本発明に係る組成物は、任意に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤、可塑剤、着色剤、ブルーイング剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤、その他の樹脂、エラストマー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0099】
<成形品、光学部品>
本発明の一実施形態は、上記の有機無機複合組成物を含む、成形品に関する。本発明の別の実施形態は、上記の有機無機複合組成物を含む、光学部品に関する。成形品の形状は、特に制限されず、例えば、レンズ状(球面レンズ、非球面レンズ、フレネルレンズ等)、フィルム状、シート状、板状、棒状、繊維状、プリズム状など任意の形態であってよい。成形品の製造に際しては、例えば、射出成形、圧縮成形、押出成形、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、塗布法(スピンコーティング法、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、キャスティング成形法等)などの公知の成形方法を利用できるが、本発明に係る組成物は、射出成形に特に適している。成形前に、ヘンシェルミキサー、ニーダ、バンバリーミキサー、押出機などの混練機を用いて原料を混合してもよい。射出成形により成形を行う場合は、例えば、シリンダー温度が260〜330℃、金型温度が80〜140℃である。
【0100】
上記の光学部品は、ディスプレイ(例えば、スマートフォン用ディスプレイ、液晶ディスプレイおよびプラズマディスプレイ等)、撮影装置(例えば、カメラおよびビデオ等)、光ピックアップ、プロジェクタ、光ファイバー通信装置(例えば、光増幅器等)、自動車用ヘッドランプなどにおける、光を透過する光学部品(パッシブ光学部品)として好適に利用することができる。かようなパッシブ光学部品としては、例えば、レンズ、フィルム、光導波路、プリズム、プリズムシート、パネル、光ディスク、LEDの封止剤等を挙げることができる。かような光学部品は、必要に応じて、反射防止層、光線吸収層、ハードコート層、アンチグレア層等の各種の機能層を有していてもよい。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により詳細に本発明を説明するが、これらは何ら本発明を限定するものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「重量部」を意味する。
【0102】
<評価方法>
(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw))
熱可塑性樹脂濃度が0.1重量%となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、孔径0.2μmのポリ4フッ化エチレン製メンブレンフィルターでろ過したものを測定試料とした。数平均分子量および重量平均分子量の測定は、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により行った。分子量の標準物質としては、単分散ポリスチレンを使用した。
【0103】
(ガラス転移点(Tg))
示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で300℃まで昇温して10分間保持したサンプルを、降温速度10℃/分で25℃まで冷却して10分間保持した後、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温して測定を行った。測定終了後は10℃/分で室温(25℃)まで冷却した。
【0104】
(屈折率の測定)
組成物の屈折率は以下の手法によって測定した。組成物にジクロロメタンを加え、固形分濃度を10重量%にしたゾルをポリイミド基板にキャストした。その後、キャスト膜を乾燥させてフィルム(膜厚200μm±10μm)を作製した。得られたフィルムをアタゴ社製「DM−M4」でナトリウムD線(nD、波長:589nm)の屈折率を測定した。樹脂の屈折率についても、組成物の場合に準じて屈折率を測定した。
【0105】
(透過率、測定)
透過率(測定波長:380〜780nm)、は前記屈折率の測定と同様の手法で作製したフィルムを用いて、スガ試験機製Haze Meter NDH 5000Wを用いて測定した。
【0106】
(YIの測定)
YI(ASTM E313−73/ASTM D1925)は前期屈折率の測定と同様の手法で作製したフィルムを用いて、コニカミノルタ製分光測色計CM−3610A(測定波長:360nm〜740nm)を用いて測定した。
【0107】
(碁盤目剥離試験)
組成物にジクロロメタンを添加して固形分濃度を5重量%に調整したゾルを、スピンコート(1,000rpm×30秒)でSUS基板上に塗布した。次いで、塗膜をホットプレート上で35℃×5分、次いで50℃×10分で乾燥させた後、乾燥塗膜を基板ごとオーブンに入れて150℃×3hrで加熱した。その後、JIS K5600−5−6:1999に準拠し、温度23℃×相対湿度50%RHの条件で試験を行った。1mm間隔で10マス×10マスの100マスのクロスカットを形成し、セロハンテープ剥離後の残存する被膜の様子を目視で確認し、以下のように評価した。なお、剥離テープはニチバン株式会社製を用いた:
A:残存するマスの数が10以下である
B:残存するマスの数が11以上25以下である
C:残存するマスの数が26以上50以下である
D:残存するマスの数が51以上である。
【0108】
残存するマスの数が25以下(すなわち判定がAまたはB)であれば実用上問題なく射出成形に使用できるが、製品歩留まりや金型の洗浄等を考慮すると10以下(判定がA)であると好ましい。
【0109】
(耐熱性試験)
前記手法でYI(初期YI)を測定したサンプルを250℃のオーブンに入れ、15分加熱した後のYI(加熱後YI)を再度測定し、以下の計算式(1)でYI変化率を求めた。
【0110】
【数1】
【0111】
耐熱性は、以下のように評価した:
A:YI変化率が50%未満
B:YI変化率50%以上100%未満
C:YI変化率が100%以上
D:加熱時に膜が劣化し、加熱後YIを測定できない。
【0112】
スマートフォンのカメラ等に使用されるレンズへ組成物を適用するためには高い耐熱性が必要であるため、加熱後YIの変化率は50%未満(すなわちA判定)であることが必要である。
【0113】
(強度試験)
組成物にジクロロメタンを加えて固形分濃度を10重量%にしたゾルを、80℃×5時間、次いで150℃×8時間乾燥させた後、ジェットミルで粉砕して組成物の粉末を得た。得られた2.5gの粉末を、縦30mm、横30mm、厚さ1.5mmに圧縮成形(圧力:10MAaPa)した。圧縮成形したサンプルをSUS基板上に配置し、サンプルに対して直径10mmの鉄球を高さ200mmから落下させた。サンプルを目視で確認し、以下のように強度を評価した:
A:無傷
B:表面に傷が発生するが、ひび割れは無し
C:ひび割れがあり。
【0114】
表面に傷がつく程度(B判定)であれば実用上問題なく射出成形に使用できるが、射出成形時のエジェクタピンで傷がつく可能性を考慮すると、無傷(A判定)であることが好ましい。
【0115】
<各成分の合成>
(合成例1 酸化ジルコニウム微粒子/3−チオフェンカルボン酸(表面処理剤)/ジクロロメタン分散液の調製)
攪拌機および温度計を装備したセパラブルフラスコに、酸化ジルコニウム/メタノール/酢酸分散液(堺化学工業株式会社製、SZR−M、一次粒子の個数基準のメジアン径(直径)3nm、酸化ジルコニウムの屈折率:2.1、固形分(酸化ジルコニウムとして)20重量%)100.00部と、表面処理剤として3−チオフェンカルボン酸(以下、「TA」とも称する。)4.00部を加え、35℃で5時間撹拌した。その後、分散液をエバポレーターで濃縮し、メタノールと酢酸とを留去して白色の粉末を得た。さらに、得られた粉末をヘキサンで洗浄し、ろ過することにより過剰の酢酸およびTAを除去した白色の粉末を得た。得られた粉末をジクロロメタンに分散させ、酸化ジルコニウム微粒子/3−チオフェンカルボン酸との合計量(固形分)が10重量%であるジクロロメタン分散液を作製した。
【0116】
(合成例2 酸化ジルコニウム微粒子/安息香酸(表面処理剤)/ジクロロメタン分散液の調製)
合成例1において、表面処理剤を3−チオフェンカルボン酸から安息香酸に変更した以外は同様の手法で、酸化ジルコニウム微粒子と安息香酸とを含むジクロロメタン分散液を作製した。
【0117】
(合成例3 酸化ジルコニウム微粒子/フェニルエタンチオール(表面処理剤)/ジクロロメタン分散液の調製)
合成例1において、表面処理剤を3−チオフェンカルボン酸からフェニルエタンチオールに変更した以外は同様の手法で、酸化ジルコニウム微粒子とフェニルエタンチオールとを含むジクロロメタン分散液を作製した。
【0118】
(合成例4 酸化ジルコニウム微粒子/ジクロロメタン分散液の調製)
酸化ジルコニウム/メタノール/酢酸分散液(堺化学工業株式会社製、SZR−M、酸化ジルコニウムの屈折率:2.1、固形分20重量%)をエバポレーターで濃縮した後、ヘキサンで洗浄し、ろ過することにより白色の粉末(酸化ジルコニウム粉末)を得た。得られた粉末をジクロロメタンに分散させ、酸化ジルコニウム微粒子が10重量%であるジクロロメタン分散液を作製した。
【0119】
【表1】
【0120】
(合成例5 カルボキシル基含有ポリカーボネートの合成)
攪拌機および流出装置付きの100mlの反応容器に9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下、「BPEF」とも称する。)21.17部(0.048mol)、9,9−ビス−4−ヒドロキシフェニルフルオレン(以下、「BPF」とも称する。)7.25部(0.021mol)、ジフェニルカーボネート14.49部(0.068mol)、触媒として酸化亜鉛(和光純薬工業株式会社製、粒径:1μm以上)4.3×10
−3部を加え、窒素雰囲気下で30分かけて180℃まで加温し、溶融状態になった時点で撹拌を開始した。200℃まで昇温した後、減圧を開始し、反応容器内圧力を20kPaに調整し、さらに240℃まで加温した。次いで真空度を1kPaまで上げて1時間反応させた。次いで270℃に昇温し、真空度を200Paまで上げ、1時間反応を行い、ポリカーボネート前駆体を合成した。
【0121】
撹拌容器および温度計を装備した1000mlの4つ口フラスコに、得られたポリカーボネート前駆体全量をγ−ブチロラクトン345部に溶解させ、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸無水物0.30部を加えた。ここに触媒として4−ジメチルアミノピリジン0.012部を添加し、窒素雰囲気下で、100℃×6時間反応させた。その後室温まで冷却した。得られたポリマーを1Lのメタノールに滴下し、ポリマーの沈殿物を析出させた。ろ過により触媒を除去した後、乾燥してペレット化したカルボキシル基含有ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートは数平均分子量:18,600、重量平均分子量:37,500、Tg:162℃、屈折率(nD、589nm):1.652であった。
【0122】
(合成例6 カルボキシル基含有ポリカーボネートの合成)
ポリカーボネート前駆体に対するピロメリット酸無水物の量を0.75部とした以外は合成例5と同様の手法で、カルボキシル基含有ポリカーボネートを合成した。得られたポリカーボネートは数平均分子量:21,400、重量平均分子量:43,000、Tg:168℃、屈折率(nD、589nm):1.648であった。
【0123】
(合成例7 カルボキシル基含有ポリカーボネートの合成)
攪拌機および流出装置付きの100mlの反応容器にBPEF 30.05部(0.069mol)、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(以下、「DHBA」とも称する。)0.11部(0.001mol)部、ジフェニルカーボネート14.84部(0.069mol)、触媒として酸化亜鉛(和光純薬工業株式会社製、粒径:1μm以上)4.5×10
−3部を加え、窒素雰囲気下で30分かけて180℃まで加温し、溶融状態になった時点で撹拌を開始した。200℃まで昇温した後、減圧を開始し、反応容器内圧力を20kPaに調整し、さらに240℃まで加温した。次いで真空度を1kPaまで上げて1時間反応させた。次いで270℃に昇温し、真空度を200Paまで上げ、3時間反応を行った。得られたポリマーを300gのジクロロメタンに溶解させた後、1Lのメタノールに滴下し、ポリマーの沈殿物を析出させた。ろ過によって触媒を除去した後、乾燥してペレット状のカルボキシル基含有ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートは数平均分子量:20,800、重量平均分子量:38,900、Tg:153℃、屈折率(nD、589nm):1.632であった。
【0124】
(合成例8 カルボキシル基含有ポリカーボネートの合成)
攪拌機および流出装置付きの100mlの反応容器にBPEF 16.21部(0.037mol)、BPF 12.95部(0.037mol)、DHBA 0.34部(0.002mol)部、ジフェニルカーボネート16.28部(0.076mol)、触媒として酸化亜鉛(和光純薬工業株式会社製、粒径:1μm以上)4.5×10
−3部を加え、窒素雰囲気下で30分かけて180℃まで加温し、溶融状態になった時点で撹拌を開始した。200℃まで昇温した後、減圧を開始し、反応容器内圧力を20kPaに調整し、さらに240℃まで加温した。次いで真空度を1kPaまで上げて1時間反応させた。次いで270℃に昇温し、真空度を200Paまで上げ、3時間反応を行った。得られたポリマーを300gのジクロロメタンに溶解させた後、1Lのメタノールに滴下し、ポリマーの沈殿物を析出させた。ろ過によって触媒を除去した後、乾燥してペレット状のカルボキシル基含有ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートは数平均分子量:18,200、重量平均分子量:37,400、Tg:178℃、589nm屈折率(nD):1.656であった。
【0125】
(合成例9 カルボキシル基含有ポリカーボネートの合成)
攪拌機および流出装置付きの100mlの反応容器にBPF 27.37部(0.078mol)、DHBA 0.37部(0.002mol)、ジフェニルカーボネート17.26部(0.081mol)、触媒として酸化亜鉛(和光純薬工業株式会社製、粒径:1μm以上)4.5×10
−3部を加え、窒素雰囲気下で30分かけて180℃まで加温し、溶融状態になった時点で撹拌を開始した。200℃まで昇温した後、減圧を開始し、反応容器内圧力を20kPaに調整し、さらに240℃まで加温した。次いで真空度を1kPaまで上げて1時間反応させた。次いで270℃に昇温し、真空度を200Paまで上げ、3時間反応を行った。得られたポリマーを300gのジクロロメタンに溶解させた後、1Lのメタノールに滴下し、ポリマーの沈殿物を析出させた。ろ過によって触媒を除去した後、乾燥してペレット状のカルボキシル基含有ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートは数平均分子量:9,200、重量平均分子量:19,300、Tg:185℃、屈折率(nD、589nm):1.672であった。
【0126】
(合成例10 比較例)
攪拌機および流出装置付きの100mlの反応容器にBPEF 28.06部(0.064mol)、DHBA 1.35部(0.009mol)、ジフェニルカーボネート15.59部(0.073mol)、触媒として酸化亜鉛(和光純薬工業株式会社製、粒径:1μm以上)4.5×10
−3部を加え、窒素雰囲気下で30分かけて180℃まで加温し、溶融状態になった時点で撹拌を開始した。200℃まで昇温した後、減圧を開始し、反応容器内圧力を20kPaに調整し、さらに240℃まで加温した。次いで真空度を1kPaまで上げて1時間反応させた。次いで270℃に昇温し、真空度を200Paまで上げ、3時間反応を行った。得られたポリカーボネートはゲル状の物質が大量に発生しており、ジクロロメタンに溶解せず、また均一なペレットが製造できなかった。
【0127】
(合成例11 カルボキシル基を含有しないポリカーボネートの合成)
攪拌機および流出装置付きの100mlの反応容器にBPEF 15.67部(0.036mol)、BPF 12.52部(0.036mol)、ジフェニルカーボネート15.32部(0.072mol)、触媒として酸化亜鉛(和光純薬工業株式会社製、粒径:1μm以上)4.5×10
−3部を加え、窒素雰囲気下で30分かけて180℃まで加温し、溶融状態になった時点で撹拌を開始した。200℃まで昇温した後、減圧を開始し、反応容器内圧力を20kPaに調整し、さらに240℃まで加温した。次いで真空度を1kPaまで上げて1時間反応させた。次いで270℃に昇温し、真空度を200Paまで上げ、3hr反応を行った。得られたポリマーを300gのジクロロメタンに溶解させた後、1Lのメタノールに滴下し、ポリマーの沈殿物を析出させたろ過によって触媒を除去した後、乾燥してペレット状のポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートは数平均分子量:17,600、重量平均分子量:34,100、Tg:162℃、屈折率(nD、589nm):1.653であった。
【0128】
(合成例12 カルボキシル基を含有しないポリカーボネートの合成)
攪拌機および流出装置付きの100mlの反応容器にBPEF 21.17部(0.048mol)、BPF 7.25部(0.021mol)、ジフェニルカーボネート14.49部(0.068mol)、触媒として酸化亜鉛(和光純薬工業株式会社製、粒径:1μm以上)4.3×10
−3部を加え、窒素雰囲気下で30分かけて180℃まで加温し、溶融状態になった時点で撹拌を開始した。200℃まで昇温した後、減圧を開始し、反応容器内圧力を20kPaに調整し、さらに240℃まで加温した。次いで真空度を1kPaまで上げて1時間反応させた。次いで270℃に昇温し、真空度を200Paまで上げ、1時間反応を行った。得られたポリマーを500mlのナス型フラスコ中でテトラヒドロフラン(THF)270部に完全に溶解させた。次にトリエチルアミン2.7mlを加え、窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。冷却後、塩化ホスホリル1.8mlを30分かけて滴下し、そのまま氷冷下1時間撹拌した後、室温に戻しさらに3時間撹拌した。その後純水10mlを加え、1Lのメタノール溶液に少量ずつ滴下し、ポリマーの沈殿物を析出させた。ろ過によって触媒を除去した後、乾燥しペレット状のリン酸基含有ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートは数平均分子量:17,800、重量平均分子量:35,900、Tg:162℃、屈折率(nD、589nm):1.650であった。
【0129】
(合成例13 カルボキシル基含有ビニルポリマーの合成)
窒素導入管、攪拌機および冷却管付きの300mlの反応容器にスチレン80.09部(0.76mol)、β−カルボキシエチルアクリレート2.7部(0.01mol)、トルエン70部を加え、撹拌しながら窒素置換を30分行い、溶媒中の酸素を除去した。その後、撹拌したままアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.80部を加え、窒素雰囲気下で30分かけて70℃まで加温し、そのまま8時間撹拌を行いポリマーを得た。得られたポリマーを2Lのメタノール溶液に少量ずつ滴下し、ポリマーの沈殿物を析出させた。ろ過によって触媒を除去した後、乾燥してペレット状のカルボキシル基含有ビニルポリマーを得た。得られたポリマーは数平均分子量:15,400、重量平均分子量:35,600、Tg:100℃、屈折率(nD、589nm):1.576であった。
【0130】
【表2】
【0131】
<実施例1>
合成例5で得たカルボキシル基含有ポリカーボネート0.85部をジクロロメタン7.65部に溶解させ、そこに合成例1で製造した酸化ジルコニウム微粒子/3−チオフェンカルボン酸との合計量(固形分)が10重量%であるジクロロメタン分散液を1.50部加え、室温で1時間撹拌して有機無機複合組成物のゾルを得た。得られたゾルを用いて上記手法により各種の評価を行った。結果を下記表に示す。
【0132】
<実施例2〜9、比較例1〜4>
樹脂および無機微粒子含有分散液の配合を下記表のように変更した以外は実施例1と同様にして、有機無機複合組成物を得た。結果を下記表に示す。
【0133】
【表3】
【0134】
上記のように、本発明に係る有機無機複合組成物は、屈折率が高く、光透過性に優れ、且つ耐熱性にも優れるため、スマートフォン用レンズ等の耐熱性が要求される用途に特に適している。また、本発明に係る有機無機複合組成物はSUS基板からの剥離性に優れ、含有するポリカーボネートのTgが高く、且つゲル化しにくい性質を有することから、射出成形に適している。さらに、本発明に係る有機無機複合組成物から得られた成形品は、機械的強度にも優れるという利点を有する。