【解決手段】所定の構造のトリアジン環構造をポリマー主鎖構造中に有する高分子(A)、無機微粒子(B)、および酸性官能基を有する表面処理剤(C)を含み、前記高分子(A)が、ガラス転移温度(Tg)を有している熱可塑性高分子であり、前記無機微粒子(B)の個数基準のメジアン径(Dn50)が1nm以上20nm以下である、有機無機複合組成物である。
前記無機微粒子(B)が酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、および酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の粒子を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機無機複合組成物。
前記無機微粒子(B)および前記表面処理剤(C)の含有量との重量比が、前記高分子(A)、前記無機微粒子(B)および前記表面処理剤(C)の合計量100重量%に対して、5重量%以上80重量%未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機無機複合組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一側面は、下記成分(A)、成分(B)および成分(C)を含む、有機無機複合組成物に関する。なお、本明細書において、下記「成分(A)、成分(B)および成分(C)を含む、有機無機複合組成物」を、単に「本発明に係る組成物」とも称する。
【0011】
(1)成分(A):下記一般式(1)で示されるトリアジン環構造をポリマー主鎖構造中に有する高分子;
【0013】
式中、R
1は、置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、芳香族アミノ基、アルキルチオール基、または芳香族チオール基を示す;
(2)成分(B):無機微粒子;および
(3)成分(C):酸性官能基を有する表面処理剤。
【0014】
このとき、前記高分子(A)が、ガラス転移温度(Tg)を有している熱可塑性高分子であり、前記無機微粒子(B)の個数基準のメジアン径(Dn50)が1nm以上20nm以下である。
【0015】
本発明に係る有機無機複合組成物は、高い屈折率を有する。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、かような効果が得られ得るメカニズムは、以下のように推測される。
【0016】
本発明に係る組成物は、成分(A)としてトリアジン環構造をポリマー主鎖構造中に有する高分子(以下、トリアジン環含有高分子ともいう)を含む。トリアジン環含有高分子は、熱可塑性であるが、ビニルポリマーのような熱可塑性樹脂と比較して耐熱性に優れるだけでなく、屈折率も1.7以上と高いという利点がある。また、トリアジン環構造をポリマー主鎖構造中に有することで熱可塑性とすることができ、硫黄原子を導入したエピスルフィド高分子化合物およびチオウレタン高分子のような屈折率1.7以上となるが可塑性がない材料と比較して、射出成形等で加工しやすい。
【0017】
ここで、高分子単体では、屈折率の上昇に伴い、ガラス転移温度が上昇することが課題になるが、本発明に係る組成物はかような高屈折率のトリアジン環含有高分子に加えて、更に成分(B)として無機微粒子を含むため、より一層屈折率が高く、射出成形に適したものとなる。
【0018】
この際、無機微粒子を透明に分散させるためにはレイリー散乱による透過光の減衰を抑制する必要があり、可視光の範囲で無色透明を維持するためには粒子サイズを1nm以上20nm以下にし、樹脂中に一次粒子の状態で均一に分散させる必要がある。しかし、粒子サイズが小さくなるにつれて凝集しやすくなり、均一に分散させることは非常に難しい。本発明によれば、酸性官能基を有する表面処理剤を用いることによって、無機酸化物ナノ粒子などの無機微粒子の表面を修飾する。これによって、水分散体として調製されることの多い上記無機微粒子の表面の水酸基などが表面処理剤で被覆されるため、有機樹脂への分散性が向上しうる。その結果、無機微粒子が樹脂中に均一に分散されて樹脂と無機微粒子との相分離が生じにくくなる。その結果、高い透明性が得られると同時に、高分子および無機微粒子の屈折率に応じた高い屈折率が得られうる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0020】
本明細書において、また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0021】
<成分(A)>
成分(A)は、下記一般式(1)で示されるトリアジン環構造をポリマー主鎖構造中に有する高分子である;
【0023】
上記一般式(1)において、R
1は、それぞれ独立して、置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アリールアミノ基、アルキルチオ基、またはアリールチオ基を示す。
【0024】
好ましくは、R
1は、それぞれ独立して、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上14以下のアリール基、炭素数7以上20以下のアラルキル基、アミノ基、炭素数6以上14以下のアリールアミノ基、炭素数1以上10以下のアルキルチオ基、および炭素数6以上14以下のアリールチオ基からなる群から選択される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。かような置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1以上3以下のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)、カルボキシル基、スルホ基[−SO
3H]、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホン酸基[−PO(OH)
2]、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、チオール基、ホスホニル基、およびスルホニル基等が例示できる。
【0025】
アルキル基としては、直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。このうち、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がさらに好ましい。
【0026】
アリール基としては、炭素数6以上14以下のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、インデニル基等が挙げられる。このうち、炭素数6以上12以下のアリール基がより好ましい。
【0027】
アラルキル基としては、炭素数7以上20以下のアラルキル基が好ましく、炭素数6以上14以下のアリール−炭素数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、炭素数6以上12以下のアリール−炭素数1以上6以下のアルキル基がさらに好ましい。炭素数6以上14以下のアリール基としては、前記のアリール基が例示できる。炭素数6以上14以下アリール−炭素数1以上6以下のアルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0028】
アリールアミノ基(芳香族アミノ基)としては、アニリノ基、p−カルボキシアニリノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等が挙げられる。
【0029】
アルキルチオ基(アルキルチオール基)としては、メチルチオ基、エチルチオ基、t−ブチルチオ基、ジ−tert−ブチルチオ基、2−メチル−1−エチルチオ基、2−ブチル−1−メチルチオ基等が挙げられる。
【0030】
アリールチオ基(芳香族チオール基)としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0031】
好ましくは、R
1は、酸性官能基を含む。すなわち、R
1は、酸性官能基で置換されたアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アリールアミノ基、アルキルチオ基、またはアリールチオ基である。これによって無機微粒子表面への結合性が向上し、無機微粒子の樹脂内への分散性が向上しうる。特には、R
1は、カルボキシル基を含むことが好ましい。R
1の一部にカルボキシル基を有することで、トリアジン環含有高分子に無機微粒子を相分離することなく均一に分散させる効果がより向上しうる。
【0032】
好ましくは、成分(A)は、前記トリアジン環構造が下記一般式(2)で表される高分子である。一般式(2)で表される高分子において、トリアジン環とR
2の結合はチオエーテル基である。
【0034】
式中、R
1は上記で定義した通りであり、R
2は、芳香環を有する二価の基(2価の芳香族基)を表す。
【0035】
一般式(2)のように、トリアジン環とR
2との結合としてチオエーテル構造をとることで、より高屈折率とすること、およびガラス転移温度を80℃以上200℃以下の範囲に収めることができる。ガラス転移温度を上記範囲に制御することで射出成型性が向上しうる。また、R
2基として芳香環を有する二価の基を導入することで分子間相互作用がより促進され高屈折率が得られうる。
【0036】
芳香環を有する二価の基としては、例えば炭素数6以上30以下の芳香族基が挙げられ、例えば、R
2としてはフェニレン基、ナフチレニン基、ビフェニレン基、ジフェニルエーテルまたはジフェニルスルフィドから誘導される二価の基、ビスフェノール類から由来する二価の基、等の芳香族基が例示できる。これらの芳香族基にアルキレン基が結合した基であってもよい。これらの基は置換基を有していてもよい。かような置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1以上3以下のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)、カルボキシル基、スルホ基[−SO
3H]、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホン酸基[−PO(OH)
2]、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、チオール基、ホスホニル基、およびスルホニル基等が例示できる。
【0037】
好ましくは、上記R
2は、下記式で表される少なくとも1つを含む。
【0039】
上記式中、Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいアルキレン基である。アルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基が好ましく、例えば、アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1,2−ジメチルエチレン基等が挙げられる。これらの基は置換基を有していてもよく、置換基としては上記と同様のものが用いられうる。
【0040】
R
2として上記の基を含むトリアジン環含有高分子であれば、より高い屈折率が得られうるため好ましい。また、高屈折率を維持したまま、有機溶媒への溶解度が向上し、さらにガラス転移温度を80℃以上200℃以下の範囲に収めることができる。
【0041】
好ましい一実施形態では、有機無機複合組成物は、下記のいずれかの繰り返し単位を高分子中の一部に含むトリアジン環含有高分子を含む。
【0043】
成分(A)の数平均分子量(Mn)は、例えば5000以上200000以下であり、好ましくは10000以上150000以下であり、より好ましくは20000以上100000以下である。上記数値範囲とすることにより、組成物の透過率(透明性)や耐熱性が特に優れたものとなり、また、組成物から成形品を得る工程(射出成形や圧縮成形などの金型を用いた成形工程)に適合し、得られた成形品の機械的強度が優れるという利点がある。なお、本明細書において、成分(A)の数平均分子量(Mn)は、実施例に記載のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0044】
成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、例えば10000以上400000以下であり、好ましくは20000以上300000以下であり、より好ましくは40000以上200000以下である。上記数値範囲とすることにより、組成物の透過率(透明性)や耐熱性が特に優れたものとなり、また、組成物から成形品を得る工程(射出成形や圧縮成形などの金型を用いた成形工程)に適合し、得られた成形品の機械的強度が優れるという利点がある。なお、本明細書において、成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0045】
成分(A)の屈折率ndは、例えば1.65以上であり、好ましくは1.7以上である。上記範囲であれば、高屈折率の有機無機複合組成物が得られうる。トリアジン環含有高分子として、例えば、上記一般式(2)のようにトリアジン環に連結する−S−を有する構造をとることでより高屈折率とすることができる。トリアジン環に連結する−NH−構造を有する高屈折率な樹脂が報告されている(例えば、特開2014−162830号公報)が、ガラス転移温度が200℃超となり、成形品を得る工程(射出成形や圧縮成形などの金型を用いた成形工程)に適用することができない。また、R
2基として芳香環を有する二価の基を導入することで分子間相互作用がより促進され高屈折率が得られうる。
【0046】
成分(A)のアッベ数νdは、例えば15以上であり、好ましくは18以上である。なお、本明細書において、成分(A)の屈折率およびアッベ数は、実施例に記載の手法により測定された値である。
【0047】
成分(A)は、ガラス転移温度を有し、すなわち、成分(A)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で300℃まで昇温して10分間保持したサンプルを、降温速度10℃/分で25℃まで冷却して10分間保持した後、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温して測定した示差熱量曲線において変曲点が観察される。このようにガラス転移温度を有する樹脂は、熱可塑性を有し、射出成形により加工することができる。成分(A)のガラス転移温度(Tg)は、例えば80℃以上250℃以下であり、射出成形時のハンドリングと組成物の耐熱性とを考慮すると、成分(A)のTgは80℃以上200℃以下であることが好ましい。成分(A)のTgは、R
1および一般式(2)のR
2の構造などを制御することで調整することができ、例えば、合成の原料モノマーとして用いるトリアジンジチオール化合物のR
1部位に嵩高い構造や剛直な構造を導入する割合を増加することで、成分(A)のTgを高くすることができる。なお、本明細書において、成分(A)のガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した値である。
【0048】
成分(A)の各繰り返し単位はいずれの形態であってもよく、例えば、ブロック状またはランダム状であり得る。
【0049】
成分(A)は、特に制限されず、公知の方法を用いて調製することができる。例えば、一般式(2)で表される構造を繰り返し単位として有するトリアジン環含有高分子は、トリアジンジチオール化合物と、ジハロゲン化された芳香族化合物とを、相間移動触媒の存在下に反応させることにより、製造することができる。
【0051】
(式中、Yはハロゲン原子を表し、R
1は、置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、芳香族アミノ基、アルキルチオール基、または芳香族チオール基を示し;R
2は、芳香環を有する二価の基を表す。)
ここで、Yのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
【0052】
トリアジンジチオール化合物としては、例えば、特に制限されないが、例えば2−アニリノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール、2−(p−カルボキシ)アニリノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール、2−フェニル−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール等が例示できる。ジハロゲン化された芳香族化合物としては、例えば、ジブロモp−キシレン、ジブロモo−キシレン、ジブロモm−キシレン、4,4’−ビス(ブロモメチル)ビフェニルなどを用いることができる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
トリアジンジチオール化合物とジハロゲン化された芳香族化合物との反応に用いる相間移動触媒としては、界面重縮合に用いることができる長鎖アルキル第四級アンモニウム塩、クラウンエーテルが好ましく、例えば臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等をより好ましく用いることができる。
【0054】
反応系は、水と有機溶媒との二相系を用いることができ、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン等の有機溶媒と水との二相系とするのが好ましい。反応に際しては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を添加して、−10℃以上100℃以下で2時間以上120時間以下行うのが好ましい。
【0055】
上記によって得られたトリアジン環含有高分子は、再沈澱法、透析法、限外濾過法、抽出法など一般的な精製法により精製してもよい。
【0056】
<成分(B)>
成分(B)である無機微粒子としては、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物等が挙げられる。
【0057】
金属酸化物としては、特に限定されず、例えば、酸化ジルコニウム、イットリア添加酸化ジルコニウム、ジルコン酸鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸スズ、酸化スズ、酸化ビスマス、酸化ニオブ、酸化タンタル、タンタル酸カリウム、酸化タングステン、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ガリウム等、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム等が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、有機無機複合組成物を光学用途に用いる場合には、無機微粒子は、屈折率が高いことが好ましく、屈折率が1.8以上の無機微粒子を用いることが好ましい。具体的には、無機微粒子は、酸化チタン、チタン酸バリウム(屈折率=約2.4)、酸化ジルコニウム(屈折率=約2.1)、チタン酸ストロンチウム、または酸化亜鉛であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一実施形態は、無機微粒子として、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、および酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種の粒子を含む。本発明のより好ましい一実施形態は、無機微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、およびチタン酸バリウムからなる群から選択される。酸化チタンは、主にルチル型(屈折率=約2.7)とアナターゼ型(屈折率=約2.5)の2種類の結晶構造を有するが、アナターゼ型の酸化チタンは光触媒活性が高く、光学的な用途への使用にはあまり適さないためルチル型の酸化チタンであることが好ましい。また、酸化チタンの光触媒活性を低下させるために表面がシリカなどでコーティングされた酸化チタン粒子を用いてもよい。
【0059】
無機微粒子は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
上記無機微粒子の表面には、通常、水酸基、メルカプト基等の16族元素を含む基が存在する。後述するように、本発明に係る組成物においては、これらの基と化学結合を形成することが可能な官能基として酸性官能基を有する表面処理剤を含むため、無機微粒子の表面が表面処理剤により修飾されて分散性が向上する。
【0061】
無機微粒子の個数基準のメジアン径(Dn50)は、1nm以上20nm以下である。無機微粒子の個数基準のメジアン径が20nmを超えると、得られる組成物の透明性が低下してしまう。一方、無機微粒子の個数基準のメジアン径が1nm未満であると、無機微粒子の二次凝集が生じやすくなる。無機微粒子の個数基準のメジアン径は、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。なお、無機微粒子の個数基準のメジアン径(Dn50)は、動的光散乱法による個数基準のメジアン径である。
【0062】
無機微粒子は、屈折率が高いほうが好ましく、具体的には屈折率が1.8以上であることが好ましく、1.9以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。このような無機微粒子を用いることにより、屈折率が高い樹脂組成物を得ることができる。また、無機微粒子の屈折率は高ければ高いほど好ましいが、通常3.0以下である。無機微粒子の屈折率の好ましい範囲は、1.8以上3.0以下であり、より好ましくは1.9以上3.0以下である。
【0063】
無機微粒子の屈折率は、例えば、濃度の異なる無機微粒子分散液の屈折率差を測定することにより、算出することができる。
【0064】
無機微粒子は、特開2011−213505号公報、特開2012−180241号公報等に記載の公知の方法を用いて製造することができる。
【0065】
また、無機微粒子は市販品を用いてもよく、この際、溶媒分散体であってもよい。かような市販品としては、SZR−W、SZR−CW、SZR−M、SZR−CM(酸化ジルコニウム分散液、堺化学工業社製);タイノック(登録商標)RA−6、NRA−10M(酸化チタン分散液、多木化学社製)などが挙げられる。
【0066】
<成分(C)>
成分(C)である表面処理剤(表面修飾剤)は、無機微粒子を表面修飾するために用いられる。本発明においては、表面処理剤は、少なくとも1つの酸性官能基を有する化合物である。
【0067】
表面処理剤中の酸性官能基は、オキソ酸化合物であり、例えば、カルボキシル基、スルホ基[−SO
3H]、スルフィノ基、ホスホン酸基[−PO(OH)
2]、ホスフィン酸基、リン酸基などのヒドロキシ基を有する官能基;ならびにこれらの塩などが挙げられる。これらのうち、酸性官能基としては、カルボキシル基、ホスフィン酸基、スルホ基が好ましく、カルボキシル基であることが特に好ましい。カルボキシル基を有する表面処理剤を用いると、射出成形時に金型腐食が生じにくく、金型離型性に優れる。
【0068】
具体的には、表面処理剤としては、好ましくは、酢酸、または、下記一般式(3)で表される化合物が採用される。
【0070】
上記一般式(3)において、R
21はフェニル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基およびピリジル基からなる群から選択される基であり;R
22は単結合、または炭素数1以上6以下のアルキレン基であり;R
23はカルボキシル基、スルホ基[−SO
3H]、スルフィノ基、ホスホン酸基[−PO(OH)
2]、ホスフィン酸基、リン酸基などのヒドロキシ基を有する官能基からなる群から選択される基であり;R
24は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、および炭素数6以上24以下のアリール基からなる群から選択される基である。
【0071】
表面処理剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
一般式(3)において、R
21はフェニル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基およびピリジル基からなる群から選択される。無機微粒子の分散性の観点から、好ましくは、R
21はフェニル基、チエニル基、およびフリル基からなる群から選択される。R
21はフェニル基またはチエニル基であることがより好ましい。
【0073】
一般式(3)において、R
22は単結合、または炭素数1以上6以下のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、メチルトリメチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基などの、直鎖または分岐鎖のアルキレン基)である。好ましくは、R
22は単結合、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、およびイソプロピレン基からなる群から選択される。
【0074】
一般式(3)において、R
23はカルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基などのヒドロキシ基を有する官能基からなる群から選択される基である。金型成形性(特に、金型離型性)に優れるという観点から、R
23はカルボキシル基であることが好ましい。
【0075】
一般式(3)において、R
24は水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1以上6以下のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基など)、炭素数1以上6以下のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、n−ヘキソキシ基、シクロヘキシルオキシ基など)、および炭素数6以上24以下のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナントリル基など)からなる群から選択される基である。これらのうち、好ましくは、R
24は水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基からなる群から選択される。
【0076】
一実施形態では、一般式(3)において、R
21はフェニル基、チエニル基、およびフリル基からなる群から選択され;R
22は単結合、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、およびイソプロピレン基からなる群から選択され;R
23はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、およびチオール基からなる群から選択され;R
24は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、および炭素数6以上24以下のアリール基からなる群から選択される。好ましい別の実施形態では、一般式(3)において、R
21はフェニル基、およびチエニル基、からなる群から選択され;R
22は単結合、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、およびイソプロピレン基からなる群から選択され;R
23はカルボキシル基であり;R
24は水素原子である。
【0077】
本発明において好適な表面処理剤としては、具体的には、酢酸、2−チオフェンカルボン酸、3−チオフェンカルボン酸、2−フランカルボン酸、安息香酸、ビフェニル4−カルボン酸、4−メチル安息香酸、ピコリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−チオフェンチオール、2−チオフェンエタンチオール、ベンゼンチオール、ベンゼンメタンチオール、4−メチルベンゼンメタンチオール、フェニルエタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロヘキサンメタンチオール、2−ピリジンチオール、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸などが挙げられる。
【0078】
中でも、透明性、屈折率および透過率のバランスに優れ、金型成形性に優れることから、表面処理剤は、酢酸、2−チオフェンカルボン酸、3−チオフェンカルボン酸、フェニルホスフィン酸および安息香酸からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0079】
表面処理剤の無機微粒子への表面修飾方法は、特に限定されず、例えば、湿式法で修飾してもよいし、乾式法で修飾してもよい。無機微粒子をより効率よく修飾し、さらに、無機微粒子の二次凝集を防止する観点からは、湿式法を用いることが好ましい。無機微粒子を湿式法で修飾する場合には、例えば、無機微粒子の分散液に表面処理剤を添加・撹拌することにより、無機微粒子の表面を修飾することができる。かような手法により調製した表面処理剤と無機微粒子との混合物を、成分(A)と混合することが好ましい。
【0080】
無機微粒子の分散液に用いる溶媒は特に限定されないが、無機微粒子を良好に分散させる観点からは、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール;およびこれらの混合物が好ましく用いられる。また、分散液の安定化のために、例えば、ギ酸、酢酸、塩酸、硝酸などの酸やアルカリなどの他の成分を分散液に添加してもよい。これらの成分は、成分(A)と混合する前に、洗浄や乾燥によって除去してもよい。
【0081】
表面処理剤の添加量は表面修飾が適切に行われるように適宜設定されるが、表面処理剤:無機微粒子の比が、表面処理剤1重量部に対して無機微粒子が1重量部以上100重量部以下の範囲であることが好ましく、5重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。
【0082】
無機微粒子を修飾剤で修飾させるための反応時間は、特に限定されず、通常、1時間以上48時間以下、好ましくは、2時間以上24時間以下である。また、反応温度も特に限定されず、通常、10℃以上100℃以下、好ましくは10℃以上60℃以下、より好ましくは10℃以上40℃以下である。
【0083】
上記反応後、得られた分散液を濃縮してもよい。また、洗浄や濾過により、過剰な修飾剤や他の成分を除去してもよい。
【0084】
<組成物の調製方法>
本発明に係る組成物は、成分(A)、成分(B)、および成分(C)を同時に混合してもよいが、表面処理剤により無機微粒子が効果的に修飾されるという観点から、上述のように成分(B)と成分(C)との混合物を調製した後、当該混合物と成分(A)とを合一することが好ましい。組成物の調製には、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒を用いてもよい。
【0085】
組成物中における各成分の含有量は特に制限されないが、例えば、無機微粒子および表面処理剤の合計の含有量が、高分子、無機微粒子および表面処理剤の合計量100重量%に対して、1重量%以上99重量%以下である。組成物から得られた成形品の屈折率が優れるという観点から、無機微粒子および表面処理剤の合計の含有量は、5重量%以上80重量%未満であることが好ましく、5重量%以上70重量%以下であることがより好ましい。成形物の透過率、機械的強度の観点から、無機微粒子および表面処理剤の合計の含有量は、10重量%以上50重量%以下であることがさらに好ましい。
【0086】
一実施形態では、高分子の含有量は、組成物全体に対して、1重量%以上99重量%以下である。別の実施形態では、高分子の含有量は、組成物全体に対して、20重量%超95重量%以下である。
【0087】
一実施形態では、無機微粒子および表面処理剤の合計量は、組成物全体に対して、1重量%以上99重量%以下である。別の実施形態では、無機微粒子および表面処理剤の合計量は、組成物全体に対して、5重量%以上80重量%未満である。
【0088】
本発明に係る組成物は、任意に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤、可塑剤、着色剤、ブルーイング剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤、その他の樹脂、エラストマー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0089】
本発明の有機無機複合組成物の屈折率ndは、好ましくは1.70以上であり、より好ましくは1.75以上である。有機無機複合組成物の屈折率は、トリアジン環含有高分子および無機微粒子の屈折率および混合比を選択することで調整することができる。また、本発明の有機無機複合組成物のアッベ数νdは、好ましくは20以上であり、より好ましくは25以上である。有機無機複合組成物の屈折率およびアッベ数は、実施例に記載の手法により測定された値である。
【0090】
<成形品、光学部品>
本発明の一実施形態は、上記の有機無機複合組成物を含む、成形品に関する。本発明の別の実施形態は、上記の有機無機複合組成物を含む、光学部品に関する。成形品の形状は、特に制限されず、例えば、レンズ状(球面レンズ、非球面レンズ、フレネルレンズ等)、フィルム状、シート状、板状、棒状、繊維状、プリズム状など任意の形態であってよい。成形品の製造に際しては、例えば、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、塗布法(スピンコーティング法、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、キャスティング成形法等)などの公知の成形方法を利用できるが、本発明に係る組成物は、射出成形に特に適している。成形前に、ヘンシェルミキサー、ニーダ、バンバリーミキサー、押出機などの混練機を用いて原料を混合してもよい。射出成形により成形を行う場合は、例えば、シリンダー温度が150℃以上300℃以下、金型温度が50℃以上100℃以下である。
【0091】
上記の光学部品は、ディスプレイ(例えば、スマートフォン用ディスプレイ、液晶ディスプレイおよびプラズマディスプレイ等)、撮影装置(例えば、カメラおよびビデオ等)、光ピックアップ、プロジェクタ、光ファイバー通信装置(例えば、光増幅器等)、自動車用ヘッドランプなどにおける、光を透過する光学部品(パッシブ光学部品)として好適に利用することができる。かようなパッシブ光学部品としては、例えば、レンズ、フィルム、光導波路、プリズム、プリズムシート、パネル、光ディスク、LEDの封止材等を挙げることができる。かような光学部品は、必要に応じて、反射防止層、光線吸収層、ハードコート層、アンチグレア層等の各種の機能層を有していてもよい。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により詳細に本発明を説明するが、これらは何ら本発明を限定するものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「重量部」を意味する。
【0093】
<評価方法>
(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw))
高分子濃度が0.1重量%となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルターでろ過したものを測定試料とした。数平均分子量および重量平均分子量の測定は、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により行った。分子量の標準物質としては、単分散ポリスチレンを使用した。
【0094】
(ガラス転移温度(Tg))
示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で300℃まで昇温して10分間保持したサンプルを、降温速度10℃/分で25℃まで冷却して10分間保持した後、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温して測定を行った。測定終了後は10℃/分で室温(25℃)まで冷却した。
【0095】
(屈折率およびアッベ数の測定)
組成物の屈折率およびアッベ数は以下の手法によって測定した。組成物にDMFを加え、固形分濃度を10重量%にしたゾルをポリイミドフィルムにキャストした。その後、キャスト膜を乾燥させてフィルム(膜厚200μm±10μm)を作製した。得られた透明フィルムをプリズムカプラ(Model2010、メトリコン社製)で波長473nm、594nm、657nmでの屈折率を測定した。測定した値からC線(656.3nm)、d線(587.6nm)、F線(486.1nm)での屈折率を計算により算出した。それら3波長での屈折率の値を用いて、アッベ数νdを算出した。樹脂の屈折率およびアッベ数についても、組成物の場合に準じて測定および算出した。
【0096】
<各成分の合成>
(合成例1 酸化ジルコニウム微粒子(Dn50=3nm)/安息香酸(表面処理剤)/DMF分散液の調製)
攪拌機および温度計を装備したセパラブルフラスコに、酸化ジルコニウム/メタノール/酢酸分散液(堺化学工業株式会社製、SZR−M、一次粒子の個数基準のメジアン径(Dn50)3nm、酸化ジルコニウムの屈折率:2.1、固形分(酸化ジルコニウムとして)30重量%)100.00重量部と、粒子分散剤(表面処理剤)として安息香酸(以下、「BA」とも称する。)6.00重量部とを加え、35℃で5時間撹拌した。その後、分散液をエバポレーターで濃縮し、メタノールと酢酸とを留去して白色の粉末を得た。さらに、得られた粉末をヘキサンで洗浄し、ろ過することにより過剰の酢酸およびBAを除去した白色の粉末を得た。得られた粉末をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に分散させ、酸化ジルコニウム微粒子/安息香酸との合計量(固形分)が30重量%であるDMF分散液を作製した。
【0097】
(合成例2 トリアジン環含有高分子[1]の合成)
100mLのフラスコに、2−アニリノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(三協化成株式会社製ジスネットAF)2.00g(8.46mmol)を入れ、純水を14mL添加後、10MのNaOH水溶液1.69mLを添加し70℃に加熱した。ジブロモp−キシレン2.23g(8.46mmol)をニトロベンゼン15mLに溶解後、前記水溶液に添加した。臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム123mgを添加し、70℃で24時間激しく撹拌した。反応液をメタノール中に滴下し、再沈殿させることで白色のトリアジン環含有高分子[1]を得た。得られたトリアジン環含有高分子[1]は数平均分子量:60000、重量平均分子量:125000、Tg:125℃、屈折率(nd、587.6nm):1.729、アッベ数νd22.0であった。
【0098】
【化8】
【0099】
<実施例1>
合成例2で得たトリアジン環含有高分子[1]1.0重量部をDMF9.0重量部に溶解させ、そこに合成例1で製造した酸化ジルコニウム微粒子/安息香酸の合計量(固形分)が30重量%であるDMF分散液を3.0重量部加え、室温で1時間撹拌し有機無機複合組成物のゾルを得た。ゾルのキャスト膜を乾燥させて得られたフィルムの屈折率ndは1.750、アッベ数νdは26.5であった。
【0100】
(合成例3 酸化ジルコニウム微粒子(Dn50=8nm)/安息香酸(表面処理剤)/DMF分散液の調製)
合成例1において、酸化ジルコニウム微粒子の粒子径(個数基準のメジアン径)を3nmから8nmである酸化ジルコニウム/メタノール/酢酸分散液(堺化学工業株式会社製、SZR−GM、酸化ジルコニウムの屈折率:2.1、固形分(酸化ジルコニウムとして)30重量%)に変更した以外は同様の手法で、酸化ジルコニウム微粒子と安息香酸とを含むDMF分散液を作製した。
【0101】
<実施例2>
合成例2で得たトリアジン環含有高分子[1]1.0重量部をDMF9.0重量部に溶解させ、そこに合成例3で製造した酸化ジルコニウム微粒子/安息香酸の合計量(固形分)が30重量%であるDMF分散液を3.0重量部加え、室温で1時間撹拌し有機無機複合組成物のゾルを得た。ゾルのキャスト膜を乾燥させて得られたフィルムの屈折率ndは1.756、アッベ数νdは26.8であった。
【0102】
(合成例4 酸化ジルコニウム微粒子(Dn50=3nm)/3−チオフェンカルボン酸(表面処理剤)/DMF分散液の調製)
合成例1において、表面処理剤を安息香酸から3−チオフェンカルボン酸に変更した以外は同様の手法で、酸化ジルコニウム微粒子と3−チオフェンカルボン酸とを含むDMF分散液を作製した。
【0103】
<実施例3>
合成例2で得たトリアジン環含有高分子[1]1.0重量部をDMF9.0重量部に溶解させ、そこに合成例4で製造した酸化ジルコニウム微粒子/3−チオフェンカルボン酸の合計量(固形分)が30重量%であるDMF分散液を3.0重量部加え、室温で1時間撹拌し有機無機複合組成物のゾルを得た。ゾルのキャスト膜を乾燥させて得られたフィルムの屈折率ndは1.753、アッベ数νdは25.2であった。
【0104】
(合成例5 酸化ジルコニウム微粒子(Dn50=3nm)/フェニルホスフィン酸(表面処理剤)/DMF分散液の調製)
合成例1において、表面処理剤を安息香酸からフェニルホスフィン酸に変更した以外は同様の手法で、酸化ジルコニウム微粒子とフェニルホスフィン酸とを含むDMF分散液を作製した。
【0105】
<実施例4>
合成例2で得たトリアジン環含有高分子[1]1.0重量部をDMF9.0重量部に溶解させ、そこに合成例5で製造した酸化ジルコニウム微粒子/フェニルホスフィン酸の合計量(固形分)が30重量%であるDMF分散液を3.0重量部加え、室温で1時間撹拌し有機無機複合組成物のゾルを得た。ゾルのキャスト膜を乾燥させて得られたフィルムの屈折率ndは1.751、アッベ数νdは24.8であった。
【0106】
(合成例6 トリアジン環含有高分子[2]の合成)
100mLのフラスコに、2−アニリノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(三協化成株式会社製ジスネットAF)1.80g(7.61mmol)、2−(p−カルボキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール0.24g(0.846mmol)、を入れ、純水を14mL添加後、10MのNaOH水溶液1.78mLを添加し70℃に加熱した。ジブロモm−キシレン2.23g(8.46mmol)をニトロベンゼン15mLに溶解後、前記水溶液に添加した。臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム123mgを添加し、室温で24時間激しく撹拌した。反応液をメタノール中に滴下し、再沈殿させることで白色のトリアジン環含有高分子[2]を得た。得られたトリアジン環含有高分子[2]は数平均分子量:20000、重量平均分子量:50000、Tg:122℃、屈折率(nd、587.6nm):1.730、アッベ数22.0であった。
【0107】
【化9】
【0108】
<実施例5>
合成例6で得たトリアジン環含有高分子[2]1.0重量部をNMP9.0重量部に溶解させ、そこに合成例4で製造した酸化ジルコニウム微粒子/フェニルホスフィン酸の合計量(固形分)が30重量%であるDMF分散液を3.0重量部加え、室温で1時間撹拌し有機無機複合組成物のゾルを得た。ゾルのキャスト膜を乾燥させて得られたフィルムの屈折率ndは1.750、アッベ数νdは24.9であった。
【0109】
<合成例7>
50mLのフラスコに、4,4’−チオビスベンゼンチオール(東京化成製)1.0g(4.23mmol)、ジブロモp−キシレン1.14g(4.23mmol)をNMP5mLに溶解させた。炭酸カリウム584mg(4.23mmol)を添加し、100℃で24時間激しく撹拌した。反応液を水中に滴下し、再沈殿させることで白色の高分子[3]を得た。得られた高分子[3]は数平均分子量:5000、重量平均分子量:12000、Tg:150℃、屈折率(nd、587.6nm):1.705、アッベ数17.5であった。
【0110】
【化10】
【0111】
<比較例1>
合成例7で得た高分子[3]1.0重量部をDMF9.0重量部に溶解させ、そこに合成例5で製造した酸化ジルコニウム微粒子/フェニルホスフィン酸の合計量(固形分)が30重量%であるDMF分散液を3.0重量部加え、室温で1時間撹拌し有機無機複合組成物のゾルを得た。フィルムを得るため、ポリイミドフィルム上にキャスト膜を作製したが、溶媒が揮発する過程で、濁りが生じ、得られたフィルムは白濁状態となった。
【0112】
【表1】
【0113】
上記のように、本発明に係る有機無機複合組成物は、屈折率が高く、成形性に優れるため、スマートフォン用レンズ等の用途に特に適している。