【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、完全なデータ消去を行うには、消去の方式(消去した情報が復元されない処理自体の信頼性)も重要であるが、所定の消去処理が確実かつ完全に実行されたこと、すなわち、情報が格納されている記憶領域の全域に亘って処理が途中で中止されることなく最後まで行われることが必要である。
【0007】
しかしながら、例えば業務で使用されていたPCを処分するにあたって専門業者にデータ消去が依頼されることもあるものの、消去処理をPCの使用者や社内管理者任せになされているケースも少なくない。このため、不注意から消去処理が実施されずに、あるいは、何らかのアクシデントから処理が完全に行われずに記憶装置内にデータが残留したままPCが処分され、情報が外部に漏洩する事故が現実に生じている。
【0008】
したがって、PCを所有・使用していた者ではなく、客観的な第三者の立場からデータ消去を確認し、消去が確実に行われたことを保証するサービスを提供することは情報漏洩を防ぎ、PC資源の再利用を図る観点からも有意義であると考えられる。しかも、そのような消去の確認作業は、短時間で効率良く実施できる必要がある。なぜなら、記憶装置の容量は今後益々増大すると予想され、社会全体として膨大な数量になる記憶装置に対応できることが望ましいからである。
【0009】
一方、本発明者の提案に係る前記特許文献に記載の発明は、いずれもノートPCを置き忘れたり盗難に遭ったときに離れた場所からPC内のデータを遠隔消去できるようにしたもので、上記のような第三者的な立場からデータ消去を効率良く確認・保証しようするものではない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、記憶装置のデータ消去が確実に行われたことを迅速に効率良く確認し保証できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係るデータ消去方法は、コンピュータの記憶装置内に格納されている情報を消去用データで上書きすることにより消去するとともに、このデータ消去が当該コンピュータで行われたことを管理サーバが判定するものである。なお、本発明において「記憶装置」とは、主記憶装置(メインメモリ)を指すものではなく、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)のような補助記憶装置(記録装置)を意味する。
【0012】
上記消去用データは、管理サーバに予め記憶させてある識別データを一部に含むランダムなデータ列である。また当該データ消去方法は、上記コンピュータが実行するステップとして、記憶装置の記憶領域に消去用データを上書きすることにより、当該記憶領域内に格納されている情報を消去する消去ステップと、この消去ステップで記憶領域に書き込まれた消去用データに含まれる前記識別データを読み出す読出しステップを含む。
【0013】
また管理サーバが実行するステップとして、前記読出しステップで記憶装置から読み出された識別データを、管理サーバに予め記憶させてある識別データと比較する比較ステップと、この比較ステップで、記憶装置から読み出された識別データと、管理サーバに予め記憶させてある識別データとが一致したときに上記コンピュータでデータ消去が実行されたと判定する判定ステップを含む。
【0014】
ランダムなデータで上書きすることにより消去を行えば、消去されたデータの復元可能性を低下させ安全性を向上させることが出来ることが知られている一方で、そのような処理を行い、上書き処理が記憶装置の全域に亘って完全に行われたか確認しようとした場合には、非常に時間がかかることが予想される。しかも、記憶容量が大きくなればなるほど作業に要する時間は長くなる。また特に、第三者的な立場から(例えば業界団体や公的機関等が)消去の認定を行う(客観的な立場から証明書を発行する)ようなサービスを考えた場合、膨大な数量の記憶装置に対して確認作業を行う必要性が予想される。
【0015】
そこで、本発明のデータ消去方法では、ランダムなデータ列である消去用データを上書きすることによりデータ消去を行うが、この消去用データには特有のデータ列である識別データを含ませてあり、処理対象であるコンピュータで消去処理を行った後に、当該識別データを読み出してこれを管理サーバに提供する。管理サーバには予め当該識別データを記憶させてあり、消去処理が終了したコンピュータから読み出された識別データと、管理サーバが予め記憶している識別データとを管理サーバが比較し、両識別データが一致することを確認することでデータ消去が完了したと判定する。
【0016】
なお、記憶装置への消去用データの書込み時や、記憶装置からの識別データの読出し時には一部にエラーが生じる可能性もあることから、本発明において上記識別データの「一致」とは、完全な一致に限定されるものではなく、識別データ同士の比較において予め定めた一定値以上(例えば90%以上や95%以上など)一致すれば管理サーバは両識別データが一致したと判定する。この一定値(どの程度一致すれば一致と判定するか)は、予め管理サーバに設定しておけば良い。
【0017】
上記のような比較・確認作業では、記憶装置に上書きしたデータのすべてを扱う必要はなく識別データだけを比較するだけ良いから、記憶装置が大容量となっても迅速に作業を行うことができ、膨大な数量の記憶装置に対しても効率良く対応することが出来る。
【0018】
消去用データ内における識別データの数および配置する位置は特に限定されず、消去用データに幾つの(何組の)識別データを含ませても、また識別データを消去用データのどの位置に配置しても良い。ただし、好ましい態様としては、消去用データの先頭部と最後部にそれぞれ識別データを配置する。消去用データの先頭部に第一の識別データ(第一識別データ)が、最後部に第二の識別データ(第二識別データ)が正常に書き込まれていることを管理サーバが確認することにより、当該消去用データのすべてが当該記憶装置に上書きされ、データ消去が全域に亘り(最初から最後まで)行われていると推定できるからである。
【0019】
また、かかる推定(管理サーバによる判断)の信頼性をより一層高めるため、上記第一識別データと第二識別データに加えて消去用データの中間部にも1以上の同様の識別データをさらに含ませ、管理サーバに予め保存しておくこととし、消去処理完了後、これら中間部の識別データも当該記憶装置から読み出して管理サーバで同様の比較確認作業を行うようにしても良い。
【0020】
消去用データのうち識別データ以外の部分については、それがどのようなものであるかは特に問わない。典型的には後述の実施形態のように乱数データとするが、それ以外のデータであって良い。
【0021】
また、消去用データは規則性のないデータ列であり、したがって記憶装置への上書き回数は1回で十分に信頼性を確保できる(要求されるセキュリティレベルによるが、一般的な業務用PCや個人使用のPCの場合等)と考えられるが、特に高度なセキュリティレベルが要求される場合には、安全性(消去の確実性)をさらに向上させるために複数回上書きするようにしても良い。複数回上書きする場合には、例えば、それぞれの書き込み操作で異なるデータ列(例えばランダムなデータ列)を書き込み、最後の書き込み操作で上記識別データを含む消去用データを上書きすれば良い。
【0022】
消去用データを書き込む領域は、当該記憶装置についてデータ消去を望む記憶領域、例えば後述する実施形態のようにデータ領域全域とすることができ、この場合、例えばデータ領域の先頭セクタ(又は先頭から数セクタ/以下同様)に第一識別データを、最終セクタ(又は最後尾の数セクタ/以下同様)に第二識別データを、また先頭セクタと最終セクタの間の全セクタにランダムなデータをそれぞれ上書きする(データ領域全域を消去用データで埋めるように上書きする)。消去の確認作業にあたっては、先頭セクタと最終セクタから識別データをそれぞれ読み出して管理サーバに提供し、管理サーバはこれらの識別データを管理サーバに保存してある識別データと比較すれば良い。これにより、当該データ領域の全セクタについてデータ消去が行われたことを確認することが出来る。
【0023】
なお、上記データ消去を望む記憶領域としては、例えばデータ領域に加えて保護領域(HPA)などの隠し領域も含める(隠し領域もデータ消去の対象とする)ことが出来るが、この場合、消去用データを書き込んでデータ消去を実行する消去実行プログラム(後述の実施形態では消去OS)は、消去対象とならない別の隠し領域に格納しておけば良い。また、当該コンピュータの記憶装置が「Secure Erase」機能が搭載されたSSDの場合には、「Secure Erase」機能によるデータ消去の後に当該コンピュータ(後述の実施形態では消去OS)が識別データを含む上記消去用データによってさらに上書き処理を行うようにしておけば良い。
【0024】
消去処理に係るコンピュータ(記憶装置)から読み出した識別データを管理サーバが入手するには、典型的には後述の実施形態のように、コンピュータ(消去OS)が通信回線(コンピュータネットワーク)を通じて管理サーバへ送信することにより行うが、他の方法によることも可能である。例えば、コンピュータ(消去OS)が、コンピュータに装填されたCDやDVD、フラッシュメモリなどの記憶媒体に識別データを格納するようにしても良く、この場合、管理サーバへの識別データの提供は、ユーザが当該記憶媒体を送付し、あるいは、他のコンピュータを使用して当該記憶媒体から識別データを読出し、当該他のコンピュータから管理サーバへ送信しても良い。
【0025】
また、本発明に係るデータ消去プログラム、コンピュータおよびデータ消去管理サーバは、上記データ消去方法と同様の特徴を備える。
【0026】
具体的には、本発明に係るデータ消去プログラムは、コンピュータの記憶装置内に格納されている情報を消去用データで上書きすることにより消去するデータ消去プログラムであって、前記消去用データは、管理サーバに予め記憶させてある識別データを一部に含むランダムなデータ列であり、前記データ消去プログラムは、前記記憶装置の記憶領域に前記消去用データを上書きすることにより、当該記憶領域内に格納されている情報を消去する消去ステップと、前記消去ステップで前記記憶領域に書き込まれた消去用データに含まれる識別データを読み出す読出しステップを前記コンピュータに行わせる。
【0027】
また、上記データ消去プログラムは、読出しステップで読み出した識別データを管理サーバへ送信する識別データ送信ステップと、読出しステップで読み出した識別データが管理サーバに予め記憶されている識別データと一致した場合に管理サーバにより発行される消去証明書を管理サーバからコンピュータネットワークを通じて受信する消去証明受信ステップを前記コンピュータにさらに行わせることがある。
【0028】
また、本発明に係るコンピュータは、上記本発明に係るデータ消去プログラムを備えたものである。
【0029】
さらに、本発明に係るデータ消去管理サーバは、コンピュータの記憶装置内に格納されている情報を、識別データを一部に含むランダムなデータ列である消去用データで上書きすることにより消去するデータ消去が、当該コンピュータで行われたことを判定する管理サーバであって、前記識別データを記憶する検証データ記憶部と、前記コンピュータでデータ消去が行われた後に前記記憶装置から読み出された識別データを格納する読出しデータ記憶部と、当該読出しデータ記憶部に格納された識別データを、前記検証データ記憶部に記憶されている識別データと比較し、読出しデータ記憶部に格納された識別データが検証データ記憶部に記憶されている識別データと一致したときにデータ消去が行われたと判定するデータ消去判定部とを備えている。
【0030】
また、上記データ消去プログラムならびにデータ消去管理サーバにおいても前記データ消去方法と同様に、好ましくは識別データが、消去用データの先頭部に配置される第一識別データと、消去用データの最後部に配置される第二識別データとを含む。
【0031】
さらに、上記データ消去管理サーバならびに前記データ消去方法では、データ消去が実行されたと管理サーバが判定した場合に、データ消去が行われたことを示す消去証明書を管理サーバが発行するようにしても良い。客観的な第三者の立場からデータ消去が完了していることを示すためである。
【0032】
具体的には、当該消去証明書を管理サーバが発行する証明書発行ステップを前記本発明に係るデータ消去方法に含める。また本発明に係るデータ消去管理サーバでは、データ消去判定部によりデータ消去が行われたと判定された場合に上記消去証明書を発行する消去証明発行部をさらに備える。
【0033】
消去証明書には、例えばコンピュータを特定する情報(型名、型番、製造番号等)や、記憶装置を特定する情報(型名、型番、製造番号等)、記憶装置の容量、消去の方式を示す情報、上書き回数、データ消去を行った日付(年月日・時刻等)などの情報を含めることが出来る。
【0034】
また、このような消去証明書を発行する態様では、データ消去完了後、前記コンピュータが識別データを管理サーバ(データ消去管理サーバ)へ送信し、管理サーバは消去証明書を当該コンピュータへ送信するようにしても良い。
【0035】
すなわち、当該態様に係るデータ消去方法では、前記読出しステップで読み出した識別データを前記コンピュータがコンピュータネットワークを通じて管理サーバへ送信する識別データ送信ステップと、前記証明書発行ステップで発行した消去証明書を前記管理サーバがコンピュータネットワークを通じて前記コンピュータへ送信する証明書送信ステップとをさらに含む。
【0036】
また、当該態様に係るデータ消去管理サーバは、コンピュータネットワークを通じて前記コンピュータから送信される前記識別データを受信するとともに、前記消去証明発行部によって発行された前記消去証明書を前記コンピュータへコンピュータネットワークを通じて送信する証明要求受付部をさらに備える。