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特開2018-141353駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-141353(P2018-141353A)
(43)【公開日】2018年9月13日
(54)【発明の名称】駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20180817BHJP
【FI】
   E02B5/08 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-25408(P2018-25408)
(22)【出願日】2018年2月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-36419(P2017-36419)
(32)【優先日】2017年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】有城 典男
(72)【発明者】
【氏名】板山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 和哉
(57)【要約】
【課題】洪水や浸水等によって、水処理設備が水没等しても、水処理設備の駆動装置を水没等から守ることができ、水の引いた後すぐに水処理設備の使用ができる駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備を提供すること。
【解決手段】除塵機(水処理設備)100を駆動する駆動軸101に駆動装置10を取り付ける。駆動装置10に、この駆動装置10を覆う駆動部カバー部材51を取り付ける。駆動部カバー部材51は、下方に向けて解放した開口部53を有する。また駆動軸101が駆動部カバー部材51を貫通する部分にシール機構30を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理設備を駆動する駆動軸を備えた駆動装置を覆うため、駆動部カバー部材が取り付けられ、
前記駆動部カバー部材には、下方に向けて解放した開口部が形成されると共に、前記駆動軸がこの駆動部カバー部材を貫通する部分に設けたシールを覆うシールケースが繋げられていることを特徴とする駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備。
【請求項2】
水処理設備を駆動する駆動軸を備えた駆動装置を覆うため、駆動部カバー部材が取り付けられ、
前記駆動部カバー部材には、下方に向けて解放した開口部を形成し、
一方、前記駆動軸が前記駆動部カバー部材を貫通する部分にシールを設けるか、又は前記駆動軸を密閉する駆動軸防水カバーを設けることを特徴とする駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備であって、
前記駆動軸が前記駆動部カバー部材を貫通する部分に設けたシールは、外からの水の浸入を防止すると共に、内部空気を外に出さないようにシールを配し、且つ給脂する構造としたことを特徴とする駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備であって、
前記駆動装置は前記駆動軸のラジアル荷重を受け、前記シールを覆うシールケースにはスライド機能を持たせたことを特徴とする駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備。
【請求項5】
水処理設備を駆動する駆動軸に、前記駆動軸よりも下方に位置する駆動装置の出力軸を、動力伝達機構を介して回転駆動可能に連結した水処理設備において、
前記駆動装置を覆う駆動部カバー部材を取り付け、
前記駆動部カバー部材には、下方に向けて解放した開口部が形成されると共に、前記出力軸又は当該出力軸に連結される動力伝達機構の駆動装置側回転軸が、シールを介して貫通することを特徴とする駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備であって、
前記動力伝達機構の前記出力軸に連結される駆動装置側回転軸は、その両側が軸受けによって回転自在に軸支され、且つ、前記駆動部カバー部材は、前記駆動装置側回転軸と前記出力軸を連結するカップリング部及び前記駆動装置の両者を覆っていることを特徴とする駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備。
【請求項7】
水処理設備を駆動する駆動軸に、前記駆動軸よりも上方に位置する駆動装置の出力軸を、動力伝達機構を介して回転駆動可能に連結した水処理設備において、
前記動力伝達機構の少なくとも一部と前記駆動装置とを覆う駆動部カバー部材を取り付けると共に、
前記駆動部カバー部材には、下方に向けて解放した開口部が形成されていることを特徴とする駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備。
【請求項8】
請求項1乃至7の内の何れかに記載の駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備であって、
前記駆動部カバー部材の側壁部及び前記開口部を用いて、この駆動部カバー部材の内部に外気を導入する導入口を備えた吸気通路を形成したことを特徴とする駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備。
【請求項9】
請求項1乃至8の内の何れかに記載の駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備であって、
前記駆動部カバー部材内に、水に触れるとガスを発生するガス発生剤を設置したことを特徴とする駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備。
【請求項10】
請求項9に記載の駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備であって、
前記ガス発生剤は、取付高さの異なる複数位置に設置されていることを特徴とする駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場やポンプ場等の比較的低地に設置される水処理設備に関し、特に、洪水時や浸水時などに水没する可能性のある除塵機やベルトコンベアやスクリューコンベア等に用いて好適な駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の集中豪雨等により、ポンプ場、下水処理場等の水処理設備が水没することが多数発生している。このような水没時、又は水没後、ただちに運転を行いたい設備として、ポンプの他に、例えば除塵機がある。即ち、例えば水没後にポンプを運転すると、このポンプの上流側に設置したスクリーンに大量のごみが集まってこれを閉塞し、水が流れなくなり、ポンプの運転に支障をきたす虞がある。このため、ポンプの運転と共に、除塵機を運転する必要が生じる。
【0003】
除塵機は、水没後、スクリーン、レーキ、チェーン、スプロケット等において、運転に支障の漂着物を取り除けば、あとは駆動装置さえ駆動できれば運転できる。従って、前記駆動装置を水没による運転不能から守る要求が高まっている。
【0004】
水没を防止するための従来の方策としては、駆動装置を除塵機の駆動軸側とチェーン掛けにすることで、通常より高い位置に駆動装置を設置する方法が知られている。また、駆動装置全体を密閉容器に入れて水の流入を防ぐ方法もあった。
【0005】
特許文献1には、モータ本体の周囲を防水カバーで覆い、防水カバーの冷却空気の入り口と出口を完全に仕切り、前記入り口から防水カバー内に導入した冷却空気を、モータ本体に設けた空気導入口からその内部に導入してモータ本体内を冷却し、冷却後の空気を、モータ本体に設けた空気導出口と、防水カバーの出口を介して外部に排出する構成の車両のワイパー駆動用モータが開示されている。
【0006】
特許文献2には、出力軸が下向き以外でも防水できる、モータハウジングと出力軸間のシール構造が開示されている。
【0007】
特許文献3には、下部が解放された浸水防止カバーによって電気ボックスを覆う構成であって、前記浸水防止カバーに、熱気排出誘導管と熱気排出孔を設けると共に、別途空気供給管を備え、浸水防止カバー内の空気圧力を利用して電気ボックスへの浸水を防止する構成が開示されている。
【0008】
特許文献4には、真空式下水道システムのマンホールに設置される真空ポンプを、下端が開放された水没防止ドーム内に収める構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−354745号公報
【特許文献2】特許第5402829号公報
【特許文献3】特許第5886958号公報
【特許文献4】特許第5909395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前述した、駆動装置をできるだけ高い位置に設置する方法では、設置場所の利用できる天井までの空間寸法に制約があること、また高い位置に設置することにより、通常使用での維持管理が面倒で、作業性が悪化すること等の問題があった。
【0011】
また、前述した、駆動装置全体を密閉容器に収納する方法では、モ−タ放熱の問題から余裕のある大きなモータ容量にする必要があり、設備が大型化し、これに伴ってコストが増大したり、納期が長期化する等の虞があった。
【0012】
また、特許文献1には、モータ本体を防水カバーによって覆う構造が開示されてはいるが、水処理設備用の駆動モータではなく、また水没を想定しているものでもなく、従って、水処理設備(特に、除塵機の駆動装置)に用いて好適な構造の防水カバーではない。即ち、特許文献1は、車両のワイパー駆動用モータの防水を図るものであるが、モータ本体内部の冷却や吸排気効率を目的とした構成となっており、水没ではなく水を被った場合の防水を目的とするものである。しかも、モータ本体に穴あけ加工する必要が生じ、防水カバーのみで防水性を得る構造にはなっていない。
【0013】
特許文献2には、モータハウジングと出力軸間のシール構造が開示されてはいるが、本願のような防水カバーによる防水構造は開示されていない。
【0014】
特許文献3には、電気設備の電源を制御する電気スイッチボックスの浸水防止カバーが開示されてはいるが、水処理設備(特に、除塵機の駆動装置)に用いて好適な構造の防水カバーにはなっていない。また熱気排出孔は、浸水防止カバー内部の熱気を排出するためのものであり、そのために熱気排出誘導管を浸水防止カバー内に設置する必要があり、施工が煩雑になる。
【0015】
特許文献4には、マンホール内に設置された真空ポンプの水没防止ドームが開示されてはいるが、水処理設備(特に、除塵機の駆動装置)に用いて好適な構造の防水カバーにはなっていない。
【0016】
本発明は、上記従来の課題に鑑み成されたものであり、その目的とするところは、洪水や浸水等によって、水処理設備が水没等しても、水処理設備の駆動装置を水没等から守ることができ、水の引いた後すぐに水処理設備の使用が可能となり、また簡単な構成で施工が容易であり、また駆動装置の冷却が可能な駆動装置用防水カバーを備えた水処理設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、水処理設備を駆動する駆動軸を備えた駆動装置を覆うため、駆動部カバー部材が取り付けられ、前記駆動部カバー部材には、下方に向けて解放した開口部が形成されると共に、前記駆動軸がこの駆動部カバー部材を貫通する部分に設けたシールを覆うシールケースが繋げられていることを特徴としている。
水処理設備としては、例えば、下水処理場やポンプ場に設置される沈砂池機械や除塵機やベルトコンベアやスクリューコンベア等があるが、本発明はこれらに限られない。また駆動装置は、駆動軸の端部に取り付けても良いし、駆動軸の途中に取り付けても良い。
本発明によれば、洪水や浸水等によって水処理設備が水没等しても、水処理設備の駆動装置を水没等から守ることができる。そして水が引いた後、すぐに支障なく水処理設備を稼働することができる。
また本発明は、駆動部カバー部材によって駆動装置を覆うという簡単な構成なので、施工が容易であり、且つ駆動装置自体を加工する必要がないので一般に使用されている汎用の駆動装置を使用することができる。
【0018】
また本発明は、水処理設備を駆動する駆動軸を備えた駆動装置を覆うため、駆動部カバー部材が取り付けられ、前記駆動部カバー部材には、下方に向けて解放した開口部を形成し、一方、前記駆動軸が前記駆動部カバー部材を貫通する部分にシールを設けるか、又は前記駆動軸を密閉する駆動軸防水カバーを設けることを特徴としている。
水処理設備としては、上記と同様、例えば、下水処理場やポンプ場に設置される沈砂池機械や除塵機やベルトコンベアやスクリューコンベア等があるが、本発明はこれらに限られない。また駆動装置は、駆動軸の端部に取り付けても良いし、駆動軸の途中に取り付けても良い。
本発明によれば、洪水や浸水等によって水処理設備が水没等しても、水処理設備の駆動装置を水没等から守ることができる。そして水が引いた後、すぐに支障なく水処理設備を稼働することができる。
また本発明は、駆動部カバー部材によって駆動装置を覆うという簡単な構成なので、施工が容易であり、且つ駆動装置自体を加工する必要がないので一般に使用されている汎用の駆動装置を使用することができる。
【0019】
また本発明は、上記特徴に加え、前記駆動軸が前記駆動部カバー部材を貫通する部分に設けたシールが、外からの水の浸入を防止すると共に、内部空気を外に出さないようにシールを配し、且つ給脂する構造としたことを特徴としている。
これによって、駆動装置が水没した際に、シール部分から駆動部カバー部材の内部に水が浸入することはなく、また駆動部カバー部材内の空気圧が上昇しても内部の空気が外部に漏れることを防止でき、これらによって効果的な防水効果を得ることができる。
【0020】
また本発明は、上記特徴に加え、前記駆動装置が前記駆動軸のラジアル荷重を受け、前記シールを覆うシールケースにスライド機能を持たせたことを特徴としている。
これによって、駆動軸の駆動装置側の軸受を省略することができ、その構造を簡素化することができる。
【0021】
また本発明は、水処理設備を駆動する駆動軸に、前記駆動軸よりも下方に位置する駆動装置の出力軸を、動力伝達機構を介して回転駆動可能に連結した水処理設備において、前記駆動装置を覆う駆動部カバー部材を取り付け、前記駆動部カバー部材には、下方に向けて解放した開口部が形成されると共に、前記出力軸又は当該出力軸に連結される動力伝達機構の駆動装置側回転軸が、シールを介して貫通することを特徴としている。
水処理設備としては、上記と同様、例えば、下水処理場やポンプ場に設置される沈砂池機械や除塵機やベルトコンベアやスクリューコンベア等があるが、本発明はこれらに限られない。
本発明によれば、洪水や浸水等によって水処理設備が水没等しても、駆動装置を水没等から守ることができる。そして水が引いた後、すぐに支障なく水処理設備を稼働することができる。
また本発明は、駆動部カバー部材によって駆動装置を覆うという簡単な構成なので、施工が容易であり、且つ駆動装置自体を加工する必要がないので一般に使用されている汎用の駆動装置を使用することができる。
【0022】
また本発明は、上記特徴に加え、前記出力軸に連結される前記動力伝達機構の駆動装置側回転軸の両側が軸受けによって回転自在に軸支され、且つ、前記駆動部カバー部材は、前記駆動装置側回転軸と前記出力軸を連結するカップリング部及び前記駆動装置の両者を覆っていることを特徴としている。
本発明によれば、駆動装置側回転軸を確実に軸支できると同時に、カップリング部も水没等から守ることができる。
【0023】
また本発明は、水処理設備を駆動する駆動軸に、前記駆動軸よりも上方に位置する駆動装置の出力軸を、動力伝達機構を介して回転駆動可能に連結した水処理設備において、前記動力伝達機構の少なくとも一部と前記駆動装置とを覆う駆動部カバー部材を取り付けると共に、前記駆動部カバー部材には、下方に向けて解放した開口部が形成されていることを特徴としている。
水処理設備としては、上記と同様、例えば、下水処理場やポンプ場に設置される沈砂池機械や除塵機やベルトコンベアやスクリューコンベア等があるが、本発明はこれらに限られない。
本発明によれば、洪水や浸水等によって水処理設備が水没等しても、駆動装置を水没等から守ることができる。そして水が引いた後、すぐに支障なく水処理設備を稼働することができる。
また本発明は、駆動部カバー部材によって駆動装置を覆うという簡単な構成なので、施工が容易であり、且つ駆動装置自体を加工する必要がないので一般に使用されている汎用の駆動装置を使用することができる。特に本発明では、水処理設備を駆動する駆動軸よりも上方に位置する駆動装置に対して駆動部カバー部材を設置したので、シール機構を用いる必要もなく、より簡単な構造の駆動部カバー部材によって、駆動装置と共に動力伝達機構の一部まで覆うことができる。
【0024】
また本発明は、上記特徴に加え、前記駆動部カバー部材の側壁部及び前記開口部を用いて、この駆動部カバー部材の内部に外気を導入する導入口を備えた吸気通路を形成したことを特徴としている。
駆動部カバー部材の側壁部及び開口部を利用して吸気通路(ダクト)を形成したので、吸気通路を簡単な構成で、容易且つコンパクトに形成することができる。そして、この吸気通路によって、水処理設備が水没していない通常運転時に、駆動部カバー部材の内部に外気を容易に導入することができ、これによって駆動装置の発生熱を放熱して冷却することができる。これによって、例え駆動装置を駆動部カバー部材によって覆っても、モータ容量を余裕のある大きなモータ容量にする必要がなく、設備の小型化が図れ、またコストの低減化や納期の短縮化を図ることができる。
【0025】
また本発明は、上記特徴に加え、前記駆動部カバー部材内に、水に触れるとガスを発生するガス発生剤を設置したことを特徴としている。
本発明によれば、駆動部カバー部材内に水が浸入した際に、カバー内気圧を上昇させることができる。このため、駆動部カバー部材の高さ寸法を短く形成することができ、駆動装置防水カバーの小型化を図ることができる。
【0026】
また本発明は、上記特徴に加え、前記ガス発生剤が、取付高さの異なる複数位置に設置されていることを特徴としている。
本発明によれば、駆動部カバー部材内への水の浸入高さに応じて、段階的にカバー内気圧を高くすることができるので、不必要にカバー内気圧を高圧にすることが避けられ、またガス発生剤を過剰に消費することも防止できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、洪水や浸水等によって、水処理設備が水没等しても、水処理設備の駆動装置を水没等から守ることができ、水の引いた後すぐに水処理設備の使用が可能となり、また簡単な構成で施工が容易であり、また駆動装置の冷却も効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1(a)は除塵機100の一部と駆動装置10と駆動装置防水カバー50の要部概略構成図、図1(b)は除塵機100の一部と駆動装置10と駆動装置防水カバー50´の要部概略構成図、図1(c)は図1(b)の駆動装置防水カバー50´を矢印A方向から見た図である。
図2】駆動装置防水カバー50を取り付けた駆動装置10の拡大概略断面図である。
図3】水没時のシール機構30の位置におけるカバー部材51内の空気圧とカバー部材51外の水圧についての説明図である。
図4】駆動装置防水カバー50を設置した駆動装置10の一具体例を示す概略断面図である。
図5図4の要部拡大概略断面図である。
図6】駆動装置防水カバー50の他の実施形態を示す図である。
図7】駆動装置防水カバー50の他の実施形態を示す図である。
図8】除塵機100の一部と駆動装置10と他の実施形態に係る駆動装置防水カバー50の要部概略構成図である。
図9】他の実施形態に係る駆動装置防水カバー50を設置した駆動装置10の一具体例を示す概略断面図である。
図10】駆動装置防水カバー50を設置した駆動装置10の他の例を示す要部概略断面図である。
図11】除塵機100Aと動力伝達機構200Aと駆動装置10Aと駆動装置防水カバー50Aの要部概略構成図である。
図12】除塵機100Bと動力伝達機構200Bと駆動装置10Bと駆動装置防水カバー50Bの要部概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、下水処理場やポンプ場等において、洪水や浸水により、水没した水処理設備(例えば沈砂池機械や除塵機等)の駆動装置を水没から守る駆動軸防水カバーに関するものである。本実施形態では、図面を参照して、除塵機の場合を例にして詳細に説明する。
【0030】
図1(a)は除塵機100の一部と、除塵機100を駆動する駆動装置10と、駆動装置10に取り付けられる駆動装置防水カバー50とを示す要部概略構成図である。なお図1(a)は、除塵機100及び駆動装置10が水没した状態を示している。同図に示すように、除塵機100は、その駆動軸101に一対のスプロケット103を取り付け、これらスプロケット103にそれぞれ図示しないレーキを取り付けたチェーンを巻き掛けて構成されている。この除塵機100の周囲には、除塵機カバー105が被せられている。また前記駆動軸101の前記両スプロケット103の外側部分は、除塵機カバー105に取り付けた軸受107に回転自在に軸支されている。駆動軸101の一方の端部側は軸受107から突出し、その軸端には、この駆動軸101を回転駆動する駆動装置10が取り付けられ、さらにこの駆動装置10にはこれを覆うように駆動装置防水カバー50が設置されている。
【0031】
図2は前記駆動装置防水カバー50を取り付けた駆動装置10の拡大概略断面図であり、図2(a)は駆動装置防水カバー50の上部の部分を水平方向に切断して上から見た図(同図(b)のA−A断面矢視図)、図2(b)は駆動装置防水カバー50の部分を垂直方向に切断して正面から見た図(同図(a)のB−B断面矢視図)である。これらの図に示すように、駆動軸101の軸端は、駆動装置10内に挿入されており、この駆動装置10によって駆動される。
【0032】
駆動装置防水カバー50は、駆動装置10を覆う駆動部カバー部材(以下「カバー部材」という)51と、シール機構30とを具備して構成されている。カバー部材51は、例えば鋼板製の板材を箱形に形成し、駆動装置10の下に必要とされるだけの空間を形成した上でその最下部に開口部53を設けて構成されている。開口部53以外(その上面と側面)は密閉性を有している。ここで前記駆動装置10の下に必要とされるだけの空間とは以下の空間をいう。即ち、駆動装置10の水没の深さに伴ってカバー部材51内の水位が上昇するが、この水位上昇でカバー部材51内の空気が押し縮められてカバー部材51内の気圧が上がり、その時の水没水深の水圧と釣り合う。そして想定される水没水深に対するカバー部材51内の水位が、前記駆動装置10よりも下に位置するように見込んだ空間を前記必要とされる空間として設定している。
【0033】
カバー部材51の側面には、前記駆動軸101との間でシールを行うシール機構30を伴った貫通部54が形成されている。
【0034】
カバー部材51の、前記シール機構30から離れた側の2つの隅部には、縦方向に向かう一対の吸気通路(ダクト)55が形成されている。吸気通路55は、例えば鋼板製の板材57をカバー部材51の隅部に、ビス止め又は溶接等で固定することで、容易に作製することができ、カバー部材51に予め作製しておけば施工(カバー部材51の設置)が容易になる。即ち、カバー部材51の設置後に配管等を設置する煩わしい施工は不要になる。吸気通路55の上端はカバー部材51の天面から所定寸法離れた導出口55aとなっており、また下端は開口部53に面した導入口55bとなっており、これによって導入口55bから吸い込んだ空気を、カバー部材51内の上部まで導いて導出口55aから排出する構成になっている。また吸気通路55は、この例では平面視形状が三角形状である。
【0035】
また駆動装置10は、下部のギアボックス10aの上にモータ10bを設置して構成されている。モータ10bの上部には、このモータ10bを冷却する冷却用ファン59が設置されている。そして駆動装置10を駆動した際にこの冷却用ファン59を回転することで、図2(b)に矢印で示すように、カバー部材51内の上部の空気が、モータ10bの上部側から下方に流されて、駆動装置10、即ち、モータ外面フィン部を冷却する。
【0036】
そして除塵機100が水没していない通常運転時は、駆動装置10を駆動することで駆動軸101を回転し、除塵機100を通常運転させる。同時に、上述したように、モータ10bの冷却ファン59によって駆動装置10に冷却用の空気を供給し、これを冷却する。即ち、冷却用ファン59を駆動すると、吸気通路55の下端の導入口55bから導出口55aに向けて外部の冷たい空気が導入され、冷却用ファン59に供給され、冷却用ファン59の周囲の風と合流させて駆動装置10に供給されるので、効果的に駆動装置10を冷却できる。冷却後の暖められた空気は、開口部53から下方向に向けてスムーズに排気できる。これによって駆動装置10の熱を効率よく放熱させることができる。もし吸気通路55を設置していないと、冷却用ファン59は、カバー部材51内部の暖められた空気のみをモータ10b(駆動装置10)に送気することになって、駆動装置10の効果的な冷却ができなくなるが、この実施形態では吸気通路55を設けたので、外部の空気をカバー部材51内に効率的に導入できて駆動装置10を効果的に冷却できる。本発明は、駆動装置10の防水・水没対策のためにカバー部材51を設置する構成であるが、これによって密閉性が高くなった駆動装置10から発生する熱の滞留の問題も上記のように解消することができる。
【0037】
次に、図1(a)に示すように、除塵機100が水没した時は、駆動装置10も水面下に位置するため、カバー部材51の開口部53からその内部に水が入ってくるが、カバー部材51は、上述のように、下部の開口部53以外は密閉構造となっているので、例えばカバー部材51の駆動装置10よりも下部の空間の高さ寸法が、カバー部材51の天面から駆動装置10までの空間の高さ寸法とほぼ同じ高さ寸法とした場合、駆動装置10の水深Hが10mになった時、カバー部材51内の空気の体積は半分(1/2)になり、圧力は2気圧になって釣り合うことになる。このため図1に示すように、駆動装置10には水が浸入せず、水没しないことになる。なおこのとき、駆動装置10は停止している。
【0038】
図1(a)に基づいて、このことを式で説明すると以下のようになる。即ち、除塵機100が水没した時、次式が成立する。
PV=一定、より、
P0×V0=P1×V1
V0:カバー部材51内体積(高さhcの体積、駆動装置10の体積はここでは無視する)
P0:大気圧(水没前のカバー部材51内圧力、大気圧で水柱10m分)
V1:水没時のカバー部材51内空気の体積
(高さhvの体積、駆動装置10の体積はここでは無視する)
P1:水没時のカバー部材51内空気の圧力
これより、10m水没時(水面が駆動装置10付近より10mの所)
P0×V0=(P0+P10)×V1
P10:水頭10m分の水圧
P10は、大気圧と同じなので、P0+P10=2×P0
となり、
V1=1/2×V0
即ち、体積は半分となる。
【0039】
上記式が成り立つので、水没時の想定水深が深い場合(例えば地下等に設置されている場合)は、防水カバー30の駆動装置10下の空間(その高さ寸法)を大きくし、想定水深が浅い場合は、防水カバー30の駆動装置10下の空間(その高さ寸法)を小さくし、無駄なく設計することができる。
【0040】
ところで、水没時に、カバー部材51内部の圧力は、水没深さに応じて大きくなるので、カバー部材51には特別な補強は必要ない。また、貫通部54のシール機構30におけるシール外側と内側の圧力差は小さくなる。従って、シール機構30のシールは、小さな圧力差を考慮したシールで良くなり、圧力差をそれほど考慮しなくても良くなる。この点について、以下説明する。ここで図3は水没時のシール機構30の位置におけるカバー部材51内の空気圧と、カバー部材51外の水圧についての説明図である。
【0041】
即ち、シール機構30部分におけるカバー部材51内外の圧力差(水頭差)X(m)は、
駆動装置10の水深:H(m)
カバー部材51に浸入した水の深さ:h(m)
駆動装置10の水深Hからカバー部材51に浸入した水の深さhまでの高さ:b(m)
とすると、
カバー部材51内の空気圧(水頭)は、(H+b)(m)、シール機構30の位置での外圧(水頭)はH(m)となるので、
X=(H+b)−H=b
となる。
【0042】
即ち、カバー部材51内外の圧力差(水頭差)X(m)は、駆動装置10の水深Hからカバー部材51に浸入した水の水深hまでの深さb(m)分だけになり、その圧力差は小さい。
【0043】
ところで、水没対策として、駆動装置10全体を密封容器に入れる構造も考えられるが、この構造の場合、駆動装置10の放熱の問題から、上述したように、余裕のある容量の大きいランクが上の駆動装置10を使用する等の対策が必要となったり、また、水没時の水圧を受けるためその密閉容器は水深に応じた強度が必要となったり、また、貫通部54は水圧に応じたシールが必要となったりし、これらのことから構造が複雑化するが、本実施形態によれば、カバー部材51は、通常運転時、下部を開放しているため、駆動装置10の放熱も容易であり、予め空気の流れる通路を考慮し放熱効果を上げておくこともでき、また、水没時は、カバー部材51の内圧も水圧相当に高くなるので、小さな補強で済むことになる。更に、水没時でも運転が可能であり、水が引いた後、すぐに運転することができる。
【0044】
なお前記2個の軸受107は、一般に空気中で使用するものであるが、回転速度が小さいこともあり、多少水が浸入しても直ぐに運転できなくなることはない。但し、水没後の緊急運転後は、早い時期にオーバーホールするか、交換した方が良い。また2個の軸受107として、水没しても支障のないメタル式軸受を使用すれば、動力効率は若干下がるが、水没した後もそのまま使用を継続できる。
【0045】
図4は上記駆動装置防水カバー50を設置した駆動装置10の一具体例を示す概略断面図、図5はその要部拡大概略断面図である。両図において、前記図1図3と同一部分には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。図4図5に示すように、駆動装置10としては、駆動軸101の入る穴が空いているホローシャフト型を用いている。即ち、駆動軸101の軸端は、駆動装置10の中空シャフトの穴に挿入・固定され、これによって駆動装置10の荷重は、駆動軸101の軸端に支えられ、駆動装置10の架台は無く、本体ケースにも固定されない。駆動装置10は、駆動軸101を中心に回転しないように、一対のトルクアーム11(図では一方のみ示す)によって除塵機カバー105側の部材105aに支持されている(左右両側の部材105aに当接することで駆動装置10が回転しないように支えている)。また軸受107は、支持ボルト(駆動軸昇降用ボルト)109によって、部材105aに連結され支持されている。なお、除塵機100のチェーンの伸びを考慮して、駆動軸101は支持ボルト109によって昇降できる構造となっている。そして駆動軸101を昇降した際、駆動装置10もこれに合わせて昇降し、さらに一対のトルクアーム11も部材105aに当接しながら昇降(摺動)する。
【0046】
カバー部材51の除塵機カバー105側の面には、シール機構30が設置されている。シール機構30は、駆動軸101が貫通する穴を伴ったシールケース31と、この穴と駆動軸101の間に設置されるシール40とを有している。シールケース31の外周部分は、カバー部材51に密閉状態で固定され繋げられている。またシールケース31のカバー部材51を貫通した内側の面は、ボルトにて駆動装置10に固定されている。また前記トルクアーム11は、シールケース31に固定され、その先端は、除塵機カバー105側の部材105aに支持(当接)され、これによって駆動装置10の回転を防止している。なおトルクアーム11は、シールケース31の代わりに、カバー部材51に固定しても良い。カバー部材51は、駆動装置10の取り付けやメンテナンスのため、シールケース31の取付側と、それ以外の部分とを2分割するのが好適である。分割面のフランジ52(図4参照)にはパッキンを取り付けて防水を確保する。
【0047】
シール40は、グリースを充填させ、オイルシールでシールするものであり、図5に示すように、外側からの浸水を防止する2個のシール41と、カバー部材51の内側からの内部空気の漏れを防止する2個のシール43とを具備し、これら両シール41,43の中間部にスペーサ45を入れ、このスペーサ45の部分に給脂できる構成となっている。除塵機100が水没した場合、上述のように、シール40の部分においては、カバー部材51内の空気圧は、その外側の水圧に比べて、カバー部材51内の水面からシール40の高さまでの水頭分だけ高くなるが、このシール40によって確実にシールすることができる。
【0048】
図6図7はそれぞれ、駆動装置防水カバー50の他の実施形態を示す図である。何れの図も、前記図2(a)に相当する部分の図である。図6図7において、前記図1図5に示す実施形態にかかる駆動装置防水カバー50と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1図5に示す実施形態と同じである。
【0049】
即ち、図2(a)では、吸気通路55として平面視が三角形状のものを示したが、図6に示すように、平面視が四角形状のものでも良い。この場合は、例えばL型の鋼材を利用すれば、より簡単に作成できる。また例えば図7に示すように、平面視がカバー部材51の幅と同一の幅の1つの長方形状であっても良い。この場合は、例えば1枚の鋼板材を用いて簡単に作成できる。なお、吸気通路55の形状・構造は、上記各実施形態に限られず、カバー部材51の形状に合わせて、任意に設定可能である。
【0050】
図1(b),(c)は、図1(a)に示す装置の内の駆動装置防水カバー50´の構成を変更した例を示す図であり、図1(b)は除塵機100の一部と駆動装置10と駆動装置防水カバー50´の要部概略構成図、図1(c)は図1(b)の駆動装置防水カバー50´を矢印A方向から見た図である。この実施形態において、前記図1(a)に示す実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1(a)〜図7に示す実施形態と同じである。
【0051】
図1(b)に示す駆動装置防水カバー50´において、前記図1(a)に示す駆動装置防水カバー50と相違する点は、カバー部材51の駆動装置10よりも下側部分の長さを、短く形成した点と、カバー部材51の側壁に点検口(ハンドホール)51hを設け、これに蓋63を着脱自在に密閉して取り付けることで、点検用窓機構を設けた点である。
【0052】
駆動装置10の水没水深が浅い(例えば1〜3m程度)と想定されるような場合は、この例のようにカバー部材51の長さ寸法を短くし、これによってコンパクト化を図ることができる。また、点検窓51hを設けることで、駆動装置10に設置した図示しない油面計などの点検を行うことができる。蓋63は、開閉自在または着脱自在に構成する。また蓋63を透明な窓とすれば、開かなくても内部を点検することができる。窓は固定としても良いし、開閉自在としても良い。なお、この点検用窓機構は、下記する図10図11に示す実施形態にも同様に設置されている。また図1(a),図8図12に示す実施形態などには、この点検用窓機構が記載されていないが、同様に設置することができることは言うまでもない。
【0053】
図8は除塵機100の一部と、駆動装置10と、他の実施形態に係る駆動装置防水カバー50との要部概略構成図であり、前記図1(a)に相当する部分の図である。この実施形態において、前記図1図7に示す実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1図7に示す実施形態と同じである。この実施形態において、前記図1図7に示す実施形態と相違する点は、駆動装置防水カバー50の構造と、軸受部カバー73を設置したこととである。
【0054】
即ちこの実施形態においては、前記駆動装置10から突出する駆動軸101と軸受107を覆う駆動軸防水カバー71を設置している。この駆動軸防水カバー71は、筒状であって、一方側がカバー部材51に密閉して接続され、他方側がシール機構30に密着して一体化されている。ここで、駆動装置10側の軸受107は、シール機構30よりも駆動装置10側に設置されている。シール機構30や軸受107は、前記図5に示すシール機構30や軸受107と同様の構成を具備している。
【0055】
またこの実施形態の場合、駆動軸101の反対側の軸受107の部分も、軸受部カバー73によって覆われている。軸受部カバー73も、前記カバー部材51と同様に、例えば鋼板製の板材を箱形に形成し、収納される軸受107の下に必要とされるだけの空間を形成した上でその最下部に開口部75を設けて構成されている。開口部75以外(その上面と側面)は密閉性を有している。ここで軸受107の下に必要とされるだけの空間とは、前記カバー部材51の場合と同様、想定される水没水深に対する軸受部カバー73内の水位が、前記軸受107よりも下に位置するように見込んだ空間をいう。軸受部カバー73の側面には、駆動軸101との間でシールを行うシール機構79が取り付けられている。シール機構79の構造は、前記シール機構30の構造と同様であり、そのシールケースの外周部分は、軸受部カバー73に密閉状態で固定され繋げられている。
【0056】
以上のように、この実施形態においては、駆動装置10から突出している駆動軸101の部分と軸受107も含めて駆動装置防水カバー50内に収納し、且つ反対側の軸受107も軸受部カバー73内に収納したので、駆動装置10と共に、駆動軸101(駆動装置10から軸受107に至る部分)と、両軸受107の浸水も防止することができる。
【0057】
図9は本発明のさらに他の実施形態に係る駆動装置防水カバー50を設置した駆動装置10の一具体例を示す概略断面図であり、前記図4に相当する部分の図である。この実施形態において、前記図1図7に示す実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1図7に示す実施形態と同じである。この実施形態において、前記図1図7に示す実施形態と相違する点は、駆動装置10側の軸受を省略し、シール機構30のシールケース31を、支持ボルト(駆動軸昇降用ボルト)109によって、部材105aに連結して支持した点である。ここで駆動装置10は駆動軸101のラジアル荷重を受け、また前記シールケース31にスライド機能を持たせた構成としている。なお前記実施形態で用いたトルクアーム11(図4参照)は省略している。このように、駆動装置10側の軸受を省略することで、その構造を簡素化することができる。
【0058】
図10は、本発明のさらに他の実施形態に係る駆動装置防水カバー50を設置した駆動装置10を示す要部概略断面図である。この実施形態において、前記図1図7に示す実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1図7に示す実施形態と同じである。この実施形態において、前記図1図7に示す実施形態と相違する点は、防水カバー50を構成するカバー部材51内の駆動装置10の下側位置に、水に触れるとガスを発生するガス発生剤160,160を上下2段に所定距離離間して設置し、またカバー部材51の上下方向の長さ寸法を短く構成した点である。
【0059】
ガス発生剤160は、トレイ161内に収納されているが、他の各種方法によって設置しても良い。またガス発生剤160としてこの例では、重曹(炭酸水素ナトリウム)を用いているが、水に触れてガスを発生するものであれば、他の各種化学剤を用いても良い。
【0060】
このように構成すれば、除塵機100及び駆動装置10が水没した際、その水深に応じて、カバー部材51の開口部53からその内部に水が浸入し、これによって同時に内部の気圧(カバー内気圧)が上昇する。そして前記浸入した水の水位が、下側のガス発生剤160の位置まで達すると、ガス発生剤160に水が触れ、ガス(炭酸ガス)が発生する。そしてガスの発生により、カバー内気圧がさらに上昇し、水没による水位の上昇が抑えられる(場合によっては水位が押し下げられる)。
【0061】
上記ガスの発生によってもさらにカバー部材51内の水位が上昇して上側のガス発生剤160の位置まで達すると、このガス発生剤160に水が触れ、再びガスが発生する。そしてガスの発生により、カバー内気圧がさらに上昇し、水没による水位の上昇が抑えられる(場合によっては水位が押し下げられる)。このように、カバー内気圧を上昇させることができるので、この実施形態のようにカバー部材51の高さ寸法を短く形成しても、駆動装置10が水没することを防止できる。
【0062】
さらにこの実施形態においては、ガス発生剤160を、取付高さの異なる複数位置に設置したので、カバー部材51内に浸入する水の浸入高さに応じて、段階的にカバー内気圧を高くすることができ、不必要に高圧とすることを避けることができ、またガス発生剤160を過剰に消費することも防止できる。なおガス発生剤160は、1又は3か所以上の複数箇所に設置しても良い。
【0063】
ガス発生剤160として重曹を用いた場合の具体例を説明すると、重曹が水に反応した際の反応式は、以下の通りである。
2NaHCO→NaCO+CO+H
【0064】
これは、重曹168g(2mol)から、CO(1mol、標準状態で22.4l)が発生することを意味する。
【0065】
ここで、カバー部材51内の容量120lで、水深10mまで水没したとしても、前記カバー部材51内に水が浸入しないようにするためには、カバー内気圧を2倍にすればよい。即ち、防水カバー50内に追加されるガス量120l(標準状態)があれば、水位は防水カバー50の下端まで下がる。そのために必要なガスCO量は、120/22.4(mol)となり、これだけのCOを発生させる重曹の必要量は、(120/22.4)×84×2→900gとなる。
【0066】
図11は、本発明のさらに他の除塵機100Aと動力伝達機構200Aと駆動装置10Aと駆動装置防水カバー50Aとを示す概略構成図であり、図11(a)はその側面概略構成図、図11(b)はその正面概略構成図(図11(a)のA−A断面矢視図)である。同図に示すように除塵機100Aは、その駆動軸101Aに一対のスプロケット103Aを取り付け、これらスプロケット103Aにそれぞれ図示しないレーキを取り付けたチェーンを巻き掛けて構成されている。この除塵機100Aの周囲には、除塵機カバー105Aが被せられている。また前記駆動軸101Aの前記両スプロケット103Aの外側部分は、除塵機カバー105Aに取り付けた軸受107Aに回転自在に軸支されている。駆動軸101Aの一方の端部側は軸受107Aから突出し、その軸端には、動力伝達機構200Aの一部を構成する従動側ホイール201Aが取り付けられている。
【0067】
駆動装置10Aは、前記除塵機100Aを設置した床面210A上に併設して設置された架台150A上に載置されている。駆動装置10Aは横置きに設置され、ギアボックス10aAの一方の側にモータ10bAを設置して構成されている。モータ10bAの端部には、このモータ10bAを冷却する冷却用ファン59Aが設置されている。そして駆動装置10Aを駆動した際に冷却用ファン59Aを回転することで、矢印Cで示すように、周囲の空気が、モータ10bAからギアボックス10aA側に向けて流されて、駆動装置10Aが冷却される。
【0068】
駆動装置10Aの出力軸13Aは、カップリング部201Aを介して動力伝達機構200Aに接続されている。動力伝達機構200Aは、駆動装置側回転軸203Aと、駆動装置側回転軸203Aを軸支する一対の軸受205A,207Aと、駆動装置側回転軸203Aの前記一対の軸受205A,207Aの間の位置に取り付けられる駆動側ホイール209Aと、駆動側ホイール209Aと前記従動側ホイール201A間に巻き掛けられるチェーン211Aと、前記従動側ホイール201Aとを具備して構成されている。駆動装置側回転軸203Aの端部は、前記カップリング部201Aによって前記出力軸13Aに連結されている。一対の軸受205A,207Aは、夫々床面210A上に設置した基台213A,215A上に取り付けられている。
【0069】
駆動装置防水カバー50Aは、駆動装置10Aを覆う駆動部カバー部材(以下「カバー部材」という)51Aと、シール機構30Aと、を具備して構成されている。カバー部材51Aは、例えば鋼板製の板材を箱形に形成し、駆動装置10Aの下に必要とされるだけの空間を形成した上でその最下部に開口部53Aを設けて構成されている。開口部53A以外(その上面と側面)は密閉性を有している。カバー部材51Aの側面には、前記駆動装置側回転軸203Aとの間でシールを行うシール機構30Aを伴った貫通部54Aが形成されている。
【0070】
カバー部材51Aの、前記シール機構30Aから離れた側の側面には、縦方向に向かう吸気通路(ダクト)55Aが形成されている。吸気通路55Aは、上記各実施形態と同様に、例えば鋼板製の板材をカバー部材51Aの側面(例えばその隅部など)に、ビス止め又は溶接等で固定することで、容易に作製することができ、カバー部材51Aに予め作製しておけば施工(カバー部材51Aの設置)が容易になる。吸気通路55Aの上端はカバー部材51Aの天面から所定寸法離れた冷却用ファン59A近傍位置に開口する導出口55aAとなっており、また下端は開口部53Aに面した導入口55bAとなっており、これによって導入口55bAから吸い込んだ空気を、カバー部材51A内の冷却用ファン59A近傍まで導く構成になっている。吸気通路55Aは、上記図2(a),図6図7等に示す吸気通路55と同様の形状となっている。
【0071】
そして除塵機100Aが水没していない通常運転時は、駆動装置10Aを駆動することで出力軸13Aを回転し、その動力を動力伝達機構200Aを介して駆動軸101Aに伝達し、除塵機100Aを通常運転させる。同時に、冷却ファン59Aによって駆動装置10Aに冷却用の空気を供給し、これを冷却する。冷却後の空気は、駆動装置防水カバー50Aの吸気通路55Aを設けた反対側の側壁付近の開口部53Aから排出される。これによって、効果的に駆動装置10Aを冷却できる。
【0072】
次に、駆動装置10Aが水没した時は、カバー部材51Aの開口部53Aからその内部に水が入ってくるが、カバー部材51Aは、上述のように、下部の開口部53A以外は密閉構造となっているので、浸入した水の体積分だけカバー部材51A内の空気が圧縮されて気圧が上昇し、浸入する水の量が制限される。このため、所定の水没水深までは駆動装置10Aには水が浸入せず、水没しなくなる。なおこのとき、駆動装置10Aは停止している。架台150Aの高さを高くして、その分、カバー部材51Aの駆動装置10Aよりも下側の部分の長さを下方に延ばせば、より深い水没深さにも対応できる。
【0073】
即ちこの駆動装置防水カバー50Aによれば、上記各実施形態と同様に、洪水や浸水等によって除塵機100Aなどの水処理設備が水没等しても、駆動装置10Aを水没等から守ることができる。そして水が引いた後、すぐに支障なく水処理設備を稼働することができる。またカバー部材51Aによって駆動装置10Aを覆うという簡単な構成なので、施工が容易であり、且つ駆動装置10A自体を加工する必要がないので一般に使用されている汎用の駆動装置10Aを使用することができる。
【0074】
またこの駆動装置防水カバー50Aによれば、動力伝達機構200Aの駆動装置側回転軸203Aの両側が軸受け205A,207Aによって回転自在に軸支され、且つ、駆動装置防水カバー50Aは、駆動装置側回転軸203Aと出力軸13Aを連結するカップリング部201A及び駆動装置10Aの両者を覆っているので、駆動装置側回転軸203Aを確実に軸支できると同時に、カップリング部201Aも容易に水没等から守ることができる。
【0075】
なおこの例では、出力軸13Aにカップリング部201Aによって連結された駆動装置側回転軸203Aが、シール機構30Aを介して、カバー部材51Aを貫通する構成を示したが、出力軸13A自体がシール機構30Aを介してカバー部材51Aを貫通する構成とすることもできる(このときカップリング部201Aはカバー部材51Aの外側に位置する)。
【0076】
図12は、本発明のさらに他の除塵機100B(その一部)と動力伝達機構200Bと駆動装置10Bと駆動装置防水カバー50Bとを示す概略構成図であり、図12(a)はその正面概略構成図、図12(b)はその側面概略構成図、図12(c)はその平面概略構成図である。同図に示すように除塵機100Bは、その駆動軸101Bに一対のスプロケット103Bを取り付け、これらスプロケット103Bにそれぞれ図示しないレーキを取り付けたチェーンを巻き掛けて構成されている。この除塵機100Bの周囲には、除塵機カバー105Bが被せられている。また前記駆動軸101Bの前記両スプロケット103Bの外側部分は、除塵機カバー105Bに取り付けた軸受107Bに回転自在に軸支されている。駆動軸101Bの一方の端部側は軸受107Bから突出し、その軸端には、動力伝達機構200Bの一部を構成する従動側ホイール201Bが取り付けられている。
【0077】
駆動装置10Bは、前記除塵機カバー105Bの天面上に設置された架台150B上に載置されている。駆動装置10Bは横置きに設置され、ギアボックス10aBの一方の側にモータ10bBを設置して構成されている。モータ10bBの端部には、このモータ10bBを冷却する冷却用ファン59Bが設置されている。そして駆動装置10Bを駆動した際にこの冷却用ファン59Bを回転することで、矢印Dで示すように、周囲の空気が、モータ10bBからギアボックス10aB側に向けて流されて、駆動装置10Bを冷却する。
【0078】
駆動装置10Bの出力軸13Bは動力伝達機構200Bに接続されている。動力伝達機構200Bは、出力軸13Bに固定される駆動側ホイール209Bと、駆動側ホイール209Bと前記従動側ホイール201B間に巻き掛けられるチェーン211Bと、前記従動側ホイール201Bとを具備して構成されている。
【0079】
駆動装置防水カバー50Bは、駆動装置10B及び動力伝達機構200Bの一部(駆動側ホイール209B及びチェーン211Bの上部の部分)を覆う駆動部カバー部材(以下「カバー部材」という)51Bを具備して構成されている。カバー部材51Bは、例えば鋼板製の板材を箱形に形成し、駆動装置10Bの下に必要とされるだけの空間を形成した上でその最下部に開口部53Bを設けて構成されている。開口部53B以外(その上面と側面)は密閉性を有している。カバー部材51Bには、斜めに引き出されるチェーン211Bをカバーするための張出部56Bが形成されている。
【0080】
カバー部材51Bの、前記駆動側ホイール209Bから離れた側の側面には、縦方向に向かう吸気通路(ダクト)55Bが形成されている。吸気通路55Bは、上記各実施形態と同様に、例えば鋼板製の板材をカバー部材51Bの1側面の両隅部に、ビス止め又は溶接等で固定することで、容易に作製することができ、カバー部材51Bに予め作製しておけば施工(カバー部材51Bの設置)が容易になる。吸気通路55Bの上端はカバー部材51Bの天面から所定寸法離れた冷却用ファン59B近傍位置に開口する導出口55aBとなっており、また下端は開口部53Bに面した導入口55bBとなっており、これによって導入口55bBから吸い込んだ空気を、冷却用ファン59B近傍まで導く構成になっている。吸気通路55Bは、上記図6に示すと同様の形状となっているが、図2(a)や図7等の形状としても良い。
【0081】
そして駆動装置10Bが水没していない通常運転時は、駆動装置10Bを駆動することで出力軸13Bを回転し、その動力を動力伝達機構200Bを介して駆動軸101Bに伝達し、除塵機100Bを通常運転させる。同時に、冷却ファン59Bによって駆動装置10Bに冷却用の空気を供給し、これを冷却する。冷却後の空気は、カバー部材51Bの吸気通路55Bを設けた反対側の側壁付近の開口部53Bから排出される。これによって、効果的に駆動装置10Bを冷却できる。
【0082】
次に、駆動装置10Bが水没した時は、カバー部材51Bの開口部53Bからその内部に水が入ってくるが、カバー部材51Bは、上述のように、下部の開口部53B以外は密閉構造となっているので、浸入した水の体積分だけカバー部材51B内の空気が圧縮されて気圧が上昇し、浸入する水の量が制限される。このため、所定の水没水深までは駆動装置10Bには水が浸入せず、水没しなくなる。なおこのとき、駆動装置10Bは停止している。架台150Bの高さを高くして、その分、カバー部材51Bの駆動装置10Bよりも下側の部分の長さを下方に延ばせば、より深い水没深さにも対応できる。
【0083】
即ちこの駆動装置防水カバー50Bによれば、上記各実施形態と同様に、洪水や浸水等によって除塵機100Bなどの水処理設備が水没等しても、駆動装置10Bを水没等から守ることができる。そして水が引いた後、すぐに支障なく水処理設備を稼働することができる。またカバー部材51Bによって駆動装置10Bを覆うという簡単な構成なので、施工が容易であり、且つ駆動装置10B自体を加工する必要がないので一般に使用されている汎用の駆動装置10Bを使用することができる。特にこの実施形態の場合、除塵機100Bの駆動軸101Bの上部に駆動装置10Bを設置したので、上記各実施形態で設けたシール機構30,30Aや貫通部54,54Aを設ける必要が無く、カバー部材51Bの構成をより簡単にすることができる。また動力伝達機構200Bの上部の部分も覆えるので、水没時の動力伝達機構200Bの保護も図ることができる。
【0084】
なお、上記図11図12に示す動力伝達機構200A,Bでは、チェーン機構を用いたが、巻掛けベルト機構を用いても良いし、歯車機構を用いても良い。要は、水処理設備を駆動する駆動軸と、駆動装置の出力軸とを、回転駆動可能に連結する構成の動力伝達機構であればよい。
【0085】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態ではカバー部材の下面を全開放としたが、一部分のみを開放する構成としても良い。また本発明を適用する水処理設備は、下水処理場やポンプ場の水処理設備に限定されず、水を処理する設備であれば、どのような水処理設備であってもよい。
【0086】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0087】
10(10A,10B) 駆動装置
30(30A) シール機構
31 シールケース
40 シール
50(50´,50A,50B) 駆動装置防水カバー
51(51A,51B) カバー部材(駆動部カバー部材)
53(53A,53B) 開口部
55(55A,55B) 吸気通路
55a(55aA,55aB) 導出口
55b(55bA,55bB) 導入口
71 駆動軸防水カバー
100(100A,100B) 除塵機(水処理設備)
101(101A,101B) 駆動軸
160 ガス発生剤
13A,13B 出力軸
200A,200B 動力伝達機構
203A 駆動装置側回転軸
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